February 03, 2012

2047.J・エドガー

22_640 アメリカ連邦捜査局を創設して、半世紀ものあいだ長官を務めたJ・エドガー・フーバーの伝記映画。
 「8人の大統領が恐れた男」といわれるフーバーの真実の姿は、アメリカ近・現代史の裏面を語る。

150pxusfbiseal_svg  FBIは右の紋章ににも記されているように、司法省所属の機関。
 といっても半ば独立した組織で、国家の安全に関わる公安事件や政府当局者の汚職、誘拐など複数の洲にまたがる広域事件、銀行強盗など巨大犯罪を捜査する。

 1924年、フーバーが29才で司法省捜査局長に任じられてのがその始まりとされるが、彼の指導によって組織化・綱紀粛正・科学捜査導入など捜査手法の近代化によって、現在は3万人を超える巨大な権力機構となった。

340895_100x100_003 フーバーはFBIの組織力をもって、大統領をはじめ国内外の有力者・著名人のスキャンダルを調査し、その秘密ファイルをもって政治的恐喝を行ったとされる。
 「大統領が最も恐れた男」といわれた由縁である。

340895_100x100_001  映画を製作したのは名匠クリント・イーストウッド。
  20代から77歳で亡くなるまでのフーバーを、レオナルド・ディカプリオに演じさせ、愛国者・正義の守護神といわれた男の、もうひとつの素顔を緻密な構成と映像で描ききった。

 アメリカの安全と正義を守った強い男の素顔、それはマザコンで脅迫観念とコンプレックスに悩む同性愛者でもあったのだ。

340895_100x100_002  映画は人生の終盤にさしかかったフーバー長官が、ゴーストライターに「回顧録」を書き取らせるシーンからはじまる。
 彼の語るFBIの歴史、30年代のギャング団壊滅、40年代のスパイ網摘発、50年代の「赤狩り」、そして「リンドバーク幼児誘拐事件」の解決・・・。
 そこに、正義感を持った「臆病者の嘘」が散りばめられていく過程を、イーストウッドはクールに描いていく。

340895_100x100_005  ディカプリオはもとより、母親役のオスカー女優ジュディ・デンチ、彼を生涯サポートした副長官役のアーミー・ハマー、個人秘書役ナオミ・ワッツの演技力が、作品を重厚なものにした。

 FBIが活躍する多くの映画のような娯楽性はないが、フーバーという一人の人間の強さと弱さがきっちりと描かれているだけに、感動を覚える。 

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February 01, 2012

2046.アニマル・キングダム

2_012_640 日本で公開されるオーストラリア映画は少ないが、問題作はよく目にする。
 この「アニマル・キングダム」もそのひとつで、2年前のサンダンス映画祭でグランプリを獲った作品。

 出演しているオーストラリアの大女優ジャッキー・ウィーヴァーが、昨年のアカデミー賞にノミネイトされたので日本での公開を待っていた。

338974_100x100_007  メルボルンで実際に起こった警察官殺害事件と、その容疑者となった犯罪者ファミリー(アニマル・キングダム)をモデルに、デヴィッド・ミショッドが脚本を書き監督した作品である。

 ミショッドは、ナタリー・ポートマンが出演した「メタルヘッド」('10)の脚本家として知られるが、今回初めて長編映画のメガホンを執った。

 母親が薬物中毒死したため、祖母のもとに引き取られた高校生が主人公。引き取られた家が、祖母をゴッドマザーとする犯罪者ファミリーだったことから、話は展開する。

338974_100x100_006  「鮮烈なバイオレンスと狂気。異形の家族愛と絆」とうたうが、居場所を捜す青年の成長の物語といったほうが判りやすい。

 ハリウッドのギャング映画のような、派手な撃ち合いはないが、ファミリーひとりひとりが抱く破滅への慄きの中で、無表情の青年がやがて自分の意思を主張していく過程が見せ場となる。

338974_100x100_001338974_100x100_004  主人公を演じるのは新人のジェームズ・フレッシュヴィル。
 その彼を、祖母役のジャッキー・ウィーヴァーや部長刑事役のガイ・ピアース(「英国王のスピーチ」'10)など、オーストラリアのベテラン俳優たちが支える。
 そう、主人公の伯父で狡猾なギャング役も名優のベン・メルデルソーン(「ノウイング」'09)だった。

 2年前のオーストラリア・アカデミー賞(AFI賞)で、作品賞など10部門で受賞。クエンティン・タランティーノが最高傑作というのも、アンチ・ハリウッドから見ると頷ける。

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January 30, 2012

2045.ALWAYS三丁目の夕日'64

2_010_640_2  日本アカデミー賞をはじめ国内のほとんどの映画賞に選ばれた「ALWAYS三丁目の夕日」('05)、翌々年「続編」が製作されたが今回は5年ぶりの登場である。

 時は昭和39年、1964年の東京下町が舞台。
 日本が高度経済成長に向う時代、新幹線開通しオリンピックがやってきた。
 まさに「貧乏だったけれど、活気があった」時代、「希望と夢がもてた」時代である。

2_011_640 主要な登場人物と役者はこれまでと同じ、ただそれぞれ年月を経て成長(老化)している。

 売れなかった作家(吉岡秀隆)は飲み屋のママ(小雪)と結婚して、あの孤児(須賀健太)を育てている。彼はもう東大を目指す受験生である。

339701_100x100_004  車修理工場を経営している気の短いオヤジ(堀真一)と優しいオカミさん(薬師丸ひろ子)夫婦、集団就職で青森からやってきて工場で働く少女(堀北真希)は年頃の娘に成長した。

 この二組の家族と彼らを取り巻く人たちの、「親別れ」「子別れ」「結婚」「出産」が今回の物語である。
 そこに私たちは、市井に暮らす人たちのささやかな喜びを見て、感動を分けてもらうのだ。

339701_100x100_001 監督・脚本・VFXと第1作目から三役をこなしてきた山崎貴は、今最も元気のいい監督だろう。
 「続三丁目の夕日」の後も、「名もなき恋の歌]('08)「SPACE BATTLESFIPヤマト」('10)「もののけ島のナキ」('11)と話題作を監督して今回へとつなぐ。

339701_100x100_019 「三丁目の夕日」で懐かしい昭和30年代を再現し、特殊効果ではトップ・プロダクションとなった「白組」と、アニメ・CGを得意とする映画制作会社として世界に知られるようになった「ROBOT」も健在である。

 そして小学館「ビッグコミックオリジナル」に連載中の西岸良平の原作単行本は、1800万部を超える大ベストセラーとなった。

 映画の舞台となった1964年の東京オリンピック、当時のテレビ中継に熱狂する市井の人たちが物語を展開していく。
 その頃まだ駆け出しのテレビ・ディレクターだった私は、放送でレスリングとマラソンの中継を担当した。
 映画でも実況中継場面が映し出されるが、駒沢体育館でのレスリング競技で次々と揚がる日の丸に感動したことを、今懐かしく思い出している。 

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January 28, 2012

2044.本所・まち歩き

120109_009_640120109_022_640120109_041_640120109_042_640

 江戸東京の「舟めぐり・まち歩き」。
 「日本橋川」「人形町」に続いて今回は「本所」、地下鉄押上駅を下車して東京スカイツリーを望む業平・十間橋からスタートした。

120109_028_640_2  「十間橋」は明暦の大火(1657年)のあと、江戸幕府による「本所・深川」開発のために開削された北十間川に架かる橋。川幅が十間あったのでこう呼ばれた。
 真正面に見えるスカイツリーが川面に写る、という写真スポットのひとつでもある。

120109_004_640   江戸の頃 この一帯は「柳島」と呼ばれ、橋の袂には「北辰妙見大菩薩」を祀る「法性寺」があった。
 また有名な料亭「橋本」もあり、料亭の味と「妙見さま」のご利益、柳の茂る風景を求め、多くの人たちが舟でやってきたという。

120109_640_3  右は広重が描いた「本所絵図・柳しま」、真ん中の建物が橋本、その左が法性寺。
 広重の先輩、葛飾北斎は妙見さまの大の信者、「北辰」から一字もらって北斎と名乗っている。

120109_008_640   関東大震災と東京大空襲で焼け出された寺は、現在マンションの一階部分にあった。。
 庭の片隅に近松門左衛門の供養碑や、江戸落語界の一派
「柳派」の記念碑「昔ばなし柳塚」がある。

120109_039_640  すぐ近く浅草通りにある「春慶寺」も、7階建てのマンション。
 本所開発の一環として、1667(寛文7)年に浅草から移転したこの寺は、池波正太郎の「鬼平犯科帳」に度々登場する。

120109_037_640  外からは見えないが、「東海道四谷怪談」の鶴屋南北の墓があるという。
 
 「なつかしや本所押上春慶寺 鶴屋南北おくつきところ」(宇野信夫)

120109_036_640_2  本所一帯は、幕府の「都市計画」によって、多くの寺院が誘致された。
 しかし震災や戦火で廃寺となったり、移転したりしている。

 右は「大雲寺」跡。初代中村(猿若)勘三郎から13代まで、初代市川羽左衛門から16代、4代~6松本幸四郎、初代~6代尾上菊五郎の菩提寺で「役者寺」と呼ばれたが、関東大震災ですべての堂が消失、昭和に入って江戸川に移転・再建された。

120109_057_640   業平から駒形に歩いてまず「福厳寺」(左)。
 3代将軍家光が寄進した朱塗りの門があるので、「赤門寺」と呼ばれた。
 赤穂浪士の討ち入りを陰から支えた高松藩江戸家老・大石良穀の墓がある。

120109_060_640_2120109_059_640_2   そのすぐ近くにある「桃青寺」(右)は、「芭蕉わらじ脱ぎの寺」と呼ばれる。
 松尾芭蕉が数年寄宿した寺で、芭蕉の俳号「桃青」にちなんで、「芭蕉山桃青寺」と名づけられた

120109_075_640120109_079_640  このほか、初代・2代目志ん生や、日本に野球を紹介した実業家の平岡熈(856~1934)の墓がある「本久寺」などなど。

 落語の「文七元結い」に登場する「達磨横丁」を経て「駒形橋」へ。
 隅田川沿いを歩いて「吾妻橋」を渡る。

120109_084_640120109_085_640_2  向こうに見えるアサヒビール本社は、もともと沼津藩主・水野忠成が11代将軍家斉から賜った庭園「浩養園」の跡。
 幕末には秋田藩佐竹家が所有し「佐竹の庭園」とよばれたが、1900(明治33)に札幌麦酒が買い取りビール工場になる。
 現在は「金色の炎のオブジェ」で有名な、「リバーピア吾妻橋」。

120109_093_640_2 120109_098_640  「舟めぐり・まち歩き」、本所・業平をスタートした今回は、横川~本所~東駒形~吾妻橋と歩いて「浅草寺」が終点。
 
 大震災と空襲で江戸の面影を残す物は少なかったが、いまここ葛飾・本所は「東京スカイツリー」の完成を目前に控え、新しい時代への夢を私たちに語ってくれる。

 「すみだ街歩きガイド」を片手におよそ2時間、14,497歩のウオーキングだった。 

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January 26, 2012

2043.ヒミズ

2_005_640 ブログ2037号('12.01.14)でも紹介したが、園子温のこれまでの作品は監督自身のオリジナル脚本だった。
 しかし今回は、愛読しているコミックを原作とする初めての「実写化」作品である。

 カリスマ漫画家・古谷実の「ヒミズ」は、「週刊ヤングマガジン」に連載されてきた人気コミック、平穏な日常に潜む孤独感を描き多くの若者たちの共感を得た作品として知られる。

 人間の存在そのものが持つ狂気をテーマに、独特の園子温ワールドを展開してきた彼は、そこに「青春純愛物語」を見た。
 だから今作品はポルノを省いたファンタジーとなる。

340494_100x100_006340494_100x100_005 崩壊した家族の中でもがく中学3年の少年と少女の純愛である。
 その二人を染谷将太(「アントキノイノチ」'11)と二階堂ふみ(「ガマの油」'09)が演ずる。

 二人の爆発するような情熱と感情のパフォーマンスは高く評価され、昨年のヴェネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)を受賞した。

340494_100x100_013  映画の導入部は、瓦礫の山となった大震災の被災地のトラックショットである。
 その「廃墟」の中に立ちすくむ主人公の少年、彼の手には拳銃。そこにモーツアルトの「レクイエム」が流れる。

 「ヒズミ」の製作進行中に、東日本大震災が発生した。園子温ワールドは、それに大きな衝撃を受ける。
 作り物の映像では決して描けない世界、彼の脚本は大きく変わったという。
 ラストが原作と正反対になったのは、その所為なのだろう。

340494_100x100_001  「家族の崩壊」「家庭内暴力」「不条理な無差別殺人」「不条理な被災」そして「暴力の連鎖」・・・、現実そのものの中から園子温は必死に「希望」を掘り起こそうとする。

 「ヒズミ(日不見)」、地中を徘徊するモグラに明るい太陽を見せようとした。

340494_100x100_007  オーデションで選ばれた若い二人を支える出演陣は、常連とベテランが顔を並べる。

340494_100x100_009  震災と原発でホームレスとなった元社長・渡辺哲、同じくテント暮らしのカップル・吹越満と神楽坂恵、少年に対しても冷酷なヤクザの親分・でんでん、チンピラ・窪塚洋介、そして少年に暴力を振るい続けるアル中の父親・三石研。
 ほか、古高由里子、鈴木杏、黒澤あすかにアイドル歌手西島隆弘。

340494_100x100_004  詩人でもある園子温は、今回も「詩」をキーワードとした。

 「牛乳の中にいるハエ/その白と黒はよくわかる/
   どんな人かは着ているものでわかる/・・・・
 何だってわかる/じぶんのこと以外は」

 フランスの放浪詩人フランソワ・ヴィヨンの「詩集」である。

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January 24, 2012

2042.マイウェイ

2_008_640  アメリカ国立公文書館で見つかった一枚の写真。ノルマンディー上陸作戦での捕虜尋問の記録、その連合軍係官の前に立つドイツ兵は東洋人だった。

2_009_640 捕虜が語り始めたのは、満州からソ連、ノルマンディーまでを三つの国の軍服を着て生き延びたという、信じられない話だった。

 「シュリ」('79)「ブラザーフッド」('04)など、朝鮮動乱を舞台にした映画で知られるカン・ジュギ監督は、このエピソードを大きく膨らませて「三つの戦争」に翻弄された二人のマラソンランナーを描いた。

Img_p1_1Img_p5  最初の戦争は、「ノモンハン事変」。
 圧倒的なソ連軍戦車に向って狂気な戦いを挑む日本軍指揮官(オダギリジョー)と強制的に兵士にさせられた朝鮮人(キム・ジュンシク)。

 憎しみ合う二人は、かってオリンピックを目指したマラソンランナーのライバルだった。

Img_p1_2_4  第二の戦争は独・ソ戦「ジュコーフスキーの攻防」。
 ソ連軍の捕虜となり酷寒のベルミ収容所で強制労働を強いられた二人は、独・ソ開戦にによってソ連兵として動員される。

Img_p2   最後の戦いが連合軍の「フランス・ノルマンディー上陸作戦」。
 ロシアでドイツ軍の捕虜となった彼らは、今度はドイツ軍兵士となって要塞で再会する。

 憎しみ合い殺し合い寸前まで行った二人は、極限のなかでマラソンランナーとしての友情に目覚める。

 副題にもあるように、京城(現ソウル)からノルマンディーまで二人の足跡は「12,000キロの真実」。
 日本・ソ連・ドイツと三つの軍服を着ることとなった数奇な運命が、綴られていく。

340496_100x100_007_2340496_100x100_005  韓国映画史上最高の25億円の巨費を投じた作品。
 ロケはアジアからヨーロッパまで240日間、のべ7000人のエキストラが動員されて行われた。
 見せ場となった激戦シーンは、ノルマンディー上陸作戦を圧倒的な映像で描いた「プライベートライアン」('98)のスタッフも参加して撮られた。

 日本からは、主人公のオダギリジョーのほか、夏八木勲、鶴見辰吾、佐野史郎、山本太郎 が参加。
 さらに中国の女優ファン・ビンビンなど、国際的に活躍する多くの国の俳優が参加してスケールの大きな「戦争映画」となった。

20110810007fl00007viewrsz150x_2 「昭和の戦争」を描く韓国映画だけに、韓流映画を批判する「ネット右翼」たちが反日映画として嫌悪感を示している。
 しかしここは、ナチの残酷さを絶えず描かれるドイツ人の「大人の態度」を見習うべきであろう。

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January 22, 2012

2041.鹿児島の夕べ

120120_013_640120120_009_640  週末、東京プリンスホテルで開催された「鹿児島の夕べ」、キーワードは「本物。鹿児島県」である。

120120_024_640  「本物の持つ力は、人を元気にします。
 例えば、自然の雄大さに息をのむこと、伝統文化の美しさにひたること、食や温泉の豊かさにつつまれること。
 多彩な魅力を持つ鹿児島県には、ここにしかない本物があふれています。
 さあ、あなたを元気にする鹿児島で、心に力を満たしてください。」
 知事を先頭に、主催たちがこう呼びかける。

120120_023_640  出席したのは、ボランティアで鹿児島PRに務める「薩摩大使」や流通・観光業界の人たち。
 地方自治体が主催する東京でのパーティーには珍しく、会費制である。
 5年前、「鹿児島の人たちの税金でご馳走をいただくのは申し訳ない」と、薩摩大使や県人会から提案された。

120120_020_640  会場には、かごしまブランドの農産物や伝統工芸品、指宿や志布志・奄美・枕崎などのグルメが並び、試食もできる。
 鹿児島の繁華街・天文館からは、きれいどころがやってきて焼酎のサービス。

120120_016_640120120_015_640   そんななか、今年の話題は「宇宙焼酎」だった。

 宇宙焼酎は、昨年5月にスペースシャトルで打ち上げられ、国際宇宙ステーションに16日間滞在した「酵母菌」と「麹菌」えお使って仕込んだもの。
 鹿児島大学と酒造組合が共同して企画した試み、宇宙の時間が「菌」にどんあ影響を与えるかの実験だった。

120120_025_640_2   菌は鹿児島大学で培養され、昨年秋には12社の蔵で仕込まれた。そして先週、試飲会が開かれて大好評だったという。
 会場でも幾つか味わってみたが、上品な甘さとキレ、それになんと言っても「宇宙のロマン」が味わえた。

 「焼酎・宇宙だより」は今週27日から全国で販売されるが、12社の焼酎900ml12本セットで2万4000円。それぞれの蔵の銘品を飲み比べたらいかが。

 「薩摩大使」のひとりとして、ぜひお薦めする。

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January 20, 2012

2040.善き人

Eiga16602  病身の母を介護する「善き息子」。妻の代わりに家事をする「善き夫」。子供たちの面倒を見る「善き父親」。文学を情熱を持って教え子たちに語る「善き教授」。第1次世界大戦を共に闘ったユダヤ人医師の「善き親友」。

 書いた小説がヒットラーに気に入られ、ナチに入党させられた「善き人」は、権力に屈して友人を裏切り、家庭をも崩壊させていく。

 オーストリア生まれのブラジル人監督ヴィセンテ・アモリンは、これを「誰にでも起こりうる寓話」として映像化する。

 イギリスを代表する劇作家C・P・テイラーの、絶筆となった戯曲が原作。
 ロンドン・ブロードウエイ、日本でも2回上演され、「20世紀の舞台劇100本」にも選ばれた人気戯曲である。

20111112002fl00002viewrsz150x  「善き人」を演じたヴィゴ・モーテンセンの抑制された演技が、友情と生存という究極の選択を迫られたインテリの弱さと強さを繊細に見せる。
 「イースタン・プロミス」('07)でアカデミー賞にノミネイトされた彼は、アメリカ生まれだが父親がデンマーク人。北欧人独特の風貌が、「善き人」の心の内の葛藤を見る人に迫る。

 昨年公開された「黄色い星の子供たち」、先々週見た「サラの鍵」など、ナチスのユダヤ人迫害をテーマにした作品は多い。
 しかしナチス時代の「普通のドイツ人」を描いた作品は、あまり見ることがない。
 と同時に、この戯曲が改めて映画化された意味はその「普遍性」にある。

 「優柔不断」「確固たる信念はない」「誘惑に弱い」「現実逃避」「傍観者」「長いものには巻かれる」・・・・・・、私たちは作品の中に自分の姿を見る。
 アモリン監督が言う通り、これは極めて今日的寓話なのである。

 4年前に製作された映画をようやく私たちの目の前に持ってきた、配給会社ブロードメディア・スタジオの選択を多としたい。
 有楽町スバル座の、開館65周年記念作品である。 

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January 18, 2012

2039.フェア・ゲーム

2_002_640  アメリカ政治史上最大のスキャンダルと言われた「プレイム事件」。
 チェイニー元副大統領の首席補佐官ルイス・ビリーに、2年6ヶ月の実刑判決が出て幕を閉じた。
 当時のブッシュ大統領による減刑処置である。

 この事件でCIAエージェントの身分を暴露され、家族ともども生命の危機にさらされたヴァレリー・プレイム・ウイルソン、彼女が書いた回顧録が2007年10月に刊行され再び注目を浴びた。

 本の題名は「フェア・ゲーム~CIAのトップエージェントは、いかにして国家に裏切られたか」。
 ホワイトハウス上級顧問カール・ローヴァーが、ヴァレリー・プレイムを指して言った隠語「フエア・ゲーム」(恰好の餌食)を逆手にとって題名とした。

Maeuri  事件は、ヴァレリーやその夫である元外交官の調査報告を無視して、イラク核開発と大量破壊兵器保持を理由にイラク攻撃に踏み切ったブッシュ政権の欺瞞告発に始まる。

 戦争の大義を縷々述べたブッシュの「一般教書演説」('03.1.28)に対し、元外交官は「イラクがニジェールからウランを極秘に買い付けた」という、ホワイトハウスの言い分に反論する(「ニューヨークタイムス掲載~アフリカで私が見付けられなかったもの」'03.7.6)。

 一方、ネオコンを中心としたホワイトハウスのスタッフは、「ブッシュの戦争」を守るために、元外交官の妻がCIAエージェントだった事をリーク、夫婦の信用を落すプロパガンダを展開する。

340261_01_03_03  双子の幼い子供を抱える夫婦と、マスコミも味方につけたホワイトハウスとの戦いがこうして始まる。
 しかし古巣のCIAは、彼女たちを支える事はしない。CIAは、まさに国家権力の手先だからである。

 映画化は、「ボーン・アイデンティティー」('02)の監督で知られるダグ・リーマンが手をつけた。
 彼は、ヴァレリーの「回顧録」と元外交官の書いた「The Politics of Truth」を元に綿密なリサーチを行い、セミドキュメンタリー・政治サスペンスに仕上げた。

20110811005fl00005viewrsz150x  出演者は主人公である夫婦に、「ミスティック・リバー」('03)「ミルク」('08)で2回オスカーを受賞したショーン・ペンと「21グラム」('03)のナオミ・ワッツ。
 当時のブッシュ大統領や副大統領、国務長官やイラク戦争のニュース映像を駆使しながら、「アメリカの正義とは」「イラク戦争とは何だったのか」を真正面から問う。

340261_01_03_03_2  正義のために行った行為が、逆に夫婦を翻弄して家庭崩壊の危機まで招く。
 「政治的危機」と「家庭崩壊の危機」、回顧録で明らかにされた真実が映像の世界でも露にされていく。

 エンド・ロールに、議会で証言する実在のヴァレリー・プレイムが登場する。
 ナオミ・ワッツそっくりの美人元スパイだった。

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January 16, 2012

2038.「黒田征太郎」特別個展

120115_003_640 120115_011_640  月島川近く、水産物倉庫の3階にある画廊「@btf」。
 音楽に合わせて素手で絵を描いていく「ライブペインティング」で有名な、イラストレーター黒田征太郎の特別個展が開催されている。

120115_007_640  タイトルは「自由と不自由」「キママと原子力」、東京では初めてという3000点を超える膨大な数の原画が並ぶ。

 「黒田征太郎の今。生きるすべて」の展示だそうだ。

120115_004_640  黒田は今年73歳。神戸に生まれ船員など様々な職を経験したあと、ニューヨークに滞在して絵を描き始める。
 1969年にワルシャ国際ポスタービエンナーレ受賞、'85年には講談社出版文化賞も受賞している。

120115_010_640  子供の頃、実家を空襲で焼失した経験もあって、「ピカドンプロジェクト」など平和に関するイラストを描き続けている一方、「癒し」をテーマに「ホスピタルアート」をライフワークとしている。

120115_005_640  住んでいた「阪神淡路大震災」の時もそうだったが、今回の「東日本大震災」では度々被災地に足を運び、子供たちと一緒に絵を描いている。
 今回の特別個展にも、子供たちと共同制作したイラストやグラフィックデザインが数多く展示されている。

 大阪勤務時代、一緒に仕事をした黒田さんの絵を久しぶりに堪能した。

 「黒田征太郎」特別個展は今月末まで、倉庫画廊「@bft」で開催中。入場無料。
 (地下鉄「勝どき駅」下車A2出口より3分、近冨ビル3F)

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January 14, 2012

2037.恋の罪

2_004_640  初めて見た園子温(そのしおん)の問題作「恋の罪」、昨年のカンヌ国際映画祭監督週間に正式出品された。

 若い頃は詩人としても知られていた園は、80年代から数々にインディーズ作品を製作してきたという。
 私がその名前を知ったのは「紀子の食卓」('06)、幸せな家族って何?という映画だったそうだが見てはいない。

51vryk8lzkl__sl160__2   ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した「愛のむきだし」('08)は、カリスマ盗撮男の純愛を実話をもとに描いた4時間の大作。
 その時間の長さを敬遠して、躊躇した。

51ndffcdtzl__sl160_  深い闇の世界に堕ちていく主人公をブラックユーモアのタッチで描いた「冷たい熱帯魚」、埼玉愛犬家殺人事件をベースにした作品も見逃した。
 一昨年のヴェネチア国際映画祭に出品され話題を呼んだ作品だが、近々再公開されるので、必ず見にいこう。

2_005_640 そして今週公開された「ヒミズ」、主演した染谷勝太と二階堂ふみは、昨年のヴェネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)を受賞した。

 脚本・監督の園子温は、いま世界の映画界で鬼才と呼ばれる。

 「恋の罪」に話題を戻そう。
 14年前に渋谷・円山町ラブ・ホテル街であった「東電OL殺人事件」が、作品のベースにある。
 今もなお真犯人をめぐって疑惑が問題とされる事件だが、園は全く異なった次元から捉えた。
 人間内部にある「狂気」、人間そのものが持つ「原罪」、それをセックスを通して描いていく。

20110809005fl00005viewrsz150x  「愛を媒介にしたセックス」「金銭を媒介にしたセックス」「欲情を媒介にしたセックス」、それを水野美紀(子持ちの刑事)、富樫真(エリート準教授)、神楽坂恵(売れっ子作家の妻)が体当たりで演じる。

 サスペンス・ドラマと銘打っているが、ポルノとファンタジーの境界にある映画といえよう。

339085_01_02_03  マーラ作曲「交響曲第5番」と田村隆一の詩が、それを彩る。
 「言葉なんか覚えるんじゃなかった/日本語とほんの少しの外国語を覚えたお陰で/僕はあなたの涙の中に立ち止まる/僕は君の血の中にたった一人で帰ってくる」

 若い頃「ジーパンを履いた朔太郎」と呼ばれた、園子音監督作品を初めて見たのだ。 

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January 12, 2012

2036.ミッション:インポッシブル

340335_02_01_03  今年のお正月映画の大本命、3週連続興行成績はトップである。
 昨年末から全国343館で公開中だが、混雑をさけひと月待って出かけた。

 60年代の人気TVシリーズ「スパイ大作戦」のリメイク版として、第1作が公開されたのが'96年、以後'00年・'06年と続き今回はシリーズ4作目となる。

340335_100x100_012  主役のスーパーヒーローは、第1作からトム・クルーズと変わらないが、監督は毎回「話題の人」が登場するので注目される。

 '96年の1作は「アンタッチャブル」('87)のブライアン・デ・パルマ、続いて「レッドクリフ」('08)で有名なアクション監督ジョン・ウー、3作目は「アルマゲドン」('98)の脚本家で知られるJ・J・エイブラムスが初監督した。
 そして今回は「Mr.イングレディブル」('04)「レミーのおいしいレストラン」('08)と2回オスカーを受賞したアニメ監督のブラッド・バート、もちろん実写は初めてである。

340335_100x100_007  登場する舞台も毎回変わる。
 第一作が「プラハ、ラングレー、ロンドン」、続いて「シドニー、セビリア」、「ベルリン、ヴァチカン、上海」。
 今回は「モスクワ、ドバイ、ムンバイ」となる。

 副題の「ゴースト・プロトコル」とは、「わが政府は一切感知しない」ということ。
 クレムリンの爆破犯人と疑われ、アメリカのスパイ組織「I・M・F」から追放された主人公が、その容疑を晴らすため仲間と共に悪の黒幕を追う、というストーリーである。

340335_100x100_001  「ミッション:インポッシブル」は、毎回トム・クルーズの「ダイブ」が売り。
 今回は世界最高の超高層ビル、ドバイの「ブルジュ・ハリファ」(828m)からのノースタント・ダイブアクションとなる。

 お金をたっぷりかけた「ハラハラ・ドキドキ」のスリルを味わえる、大娯楽作品だけに肩を張らずに楽しく見られる。

340335_100x100_009  共演は「ミッション」の仲間に、前作から引き続きコンピューター天才のサイモン・ペッグ、CIA分析官のジェレミー・レナー(「ハート・ロッカー」'08)、紅一点の凄腕ポーラ・バットン(「プレシャス」'09)の面々。

340335_100x100_010  敵役が「ミレニアム・シリーズ」('09)の主役でスエーデンの俳優、ミカエル・ニクヴィスト。
 インドの富豪で武器商人に、「スラムドッグ&ミリオネア」('08)のアニル・カブールと国際色豊かである。

 テレビ時代から続くおなじみのテーマ音楽と、「当局は一切関知しない」の冷たい指令は今回もたっぷりと楽しめる。

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January 10, 2012

2035.荻須高徳展

20_640  1986年10月、パリのアトリエで制作中に倒れて逝去した洋画家・荻須高徳。この年文化勲章受賞が内定しており、遡って受賞した。

20_003_640  第二次世界大戦中を除いて51年間をパリで過ごした荻須は、ユトリロの影響をうけパリの街角や店先を荒々しいタッチ描き続けた。

 日本橋三越では、彼の生誕110年を記念して「憧れのパリ、煌きのヴェネチア」と題した回顧展が開かれている。

 歴史がしみこんだ石造りの建物と街角、薄曇の光に照らされた灰色のパリおは対照的に、彼がたびたび長期滞在したヴェネチアの作品は明るい。
 温かみのある赤い壁が、運河の水に揺れる。
 二つの街が描かれた作品は90点あまり、荻須の生涯のテーマに圧倒される。

20_001_640_3

 左から「果物屋」(パリ・1930年)、「フジタの窓から見たオルドネール通り」(パリ・1938年)、「リオ・デ・レ・ベカリエ」(ヴェネチア・1935年)、「青い着物の美代子」(1959年)。

20_002_640_220_004_640_2  左は「サン・マルコ広場」(ヴェネチア・1935年)、右は数少ない静物の作品「黄色い壷のリラ」(1976年)。

 シラク大統領が「最もフランス的な日本人」と評した荻須高徳は、美代子夫人とともにパリのモンマルトル墓地に眠っている。

 「荻須高徳展」は、来週月曜日16日まで日本橋三越で。入場料は800円。 

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January 09, 2012

2034.山本五十六

2_001_640  昭和初期から10数年、人々は不況にあえぎ、雇用不安、所得格差に不満を募らせた。総理大臣は次々と交代、その閉塞感のなかで大衆は「戦争」を求めた。
 70年前の日米開戦は、今と全く状況が同じだった。

340493_100x100_004  文藝春秋社の元編集長、作家の半藤一利が書いた「連合艦隊司令長官 山本五十六」を原作に、五十六の長男義正の著「父・山本五十六」のエピソードを交え、「人間・山本五十六」を描いた超大作である。

 登場人物の大半が実在の人物、そこに「大新聞社」の編集部というフィクションをもってきて「時代」を捉える。
 太平洋戦争に突っ走ったのは好戦派の軍部だけではなく、戦争を煽った「大新聞」と熱狂した「大衆」でもあったと、「半藤史観」は云う。

340493_100x100_001  日米開戦に最も抵抗してきた連合艦隊司令長官が、なぜ「ハワイ真珠湾攻撃」を決行したのか。
 作品のキーポイントは、そこにある。

 「軍縮」をめぐる海軍内の対立、「日伊独三国同盟」をめぐる海軍と陸軍の対立。作戦遂行上の航空派と艦隊派の対立。
 これまで度々語られてきた「歴史」が、具体的な映像で綴られる。

340493_100x100_005   連合艦隊司令長官・山本五十六(役所広司)、海軍大臣・米内光正(柄本明)、海軍軍務局長・井上茂美(柳葉敏郎)、五十六の友人で元海軍中将・堀悌吉(坂東三津五郎)。
 彼らと対立する軍令部総長・永野修身(伊武雅刀)、第一航空艦隊司令長官・南雲忠一(中原丈雄)らは実在の人物。

340493_100x100_011  原作者の分身らしい新聞記者(玉木宏)や戦争を煽る大新聞社・編集主幹(香川照之)は、フィクション上の登場人物である。

 太太平洋戦争の大きな転機となった「ミッドウエー海戦」の敗北は、南雲中将の部下である参謀長の戦術ミスが最大の原因だが、彼だけは別名である。

340493_100x100_012  真珠湾攻撃→ミッドウエー海戦→ガダルカナル撤退作戦→ブーゲンビル上空での山本の非業の死、映画はここまでを語る。

2_640  「山本という軍人は、越後人特有の孤高を楽しむ風があった。口が重く長々しい説明や説得を嫌った。」と半藤一利は書く。

 戊辰戦争で最後まで義を貫いた長岡藩家老・河井継之助を尊敬する山本、孤高のうちに己の業を完成させていくという長岡人の激しさを、役所広司が見事に演じて作品を重厚にしている。

 監督は、「八日目の蝉」('11)の成島出。エンドロール、大海原をバックに小椋桂が主題歌「眦(まなじり)」を歌う。

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January 07, 2012

2033.サラの鍵

2_008_640  今年最初の映画鑑賞は「サラの鍵」。
 
 「ユダヤ人迫害の動きが過激化する1942年のパリ。幼い弟を納戸に隠したサラは、その鍵を手にしたまま収容所へ送られてしまう・・・・。」
 一昨年の東京国際映画祭で、最優秀監督賞と観客賞をW受賞した作品。昨年末、ようやく公開された。

 ナチス占領下のパリであった「ヴェル・ディブ事件」、フランスの恥部といわれるこの事件は、フランス官憲によるユダヤ人の「LA RAFLE」(一斉検挙)だった。

338147_100x100_008  検挙されたの老若男女1万3000人、彼らはヴェル・ディブ(冬季用の屋根付き競輪場)に隔離された。

 ユダヤ人たちは、この後アウシュヴィッツに送られて虐殺される。辛うじて逃亡した子供たちを描いた映画「黄色い星の子供たち」は、昨年夏公開されたのでこのブログ1965号で紹介した。

338147_100x100_004  「サラの鍵」は、同じ事件を背景にフランスの女流作家タチアナ・ド・ロネが書いた「過去と現代が交差し、歴史が封印していた悲痛な記憶が掘り起こされる感動のベストセラー」の映画化である。

 「過去」のヒロインはサラ。納戸の鍵を手にした彼女は、弟を救い出すため収容所を脱出する。そして・・・・。

 「現代」は、改築中の新居が昔サラの家だったことを知り、その真実を追う40代の女性ジャーナリスト・ジュリアがヒロイン。

338147_100x100_026  「サラは弟を救えたか」「サラのその後の人生は」「ジュリアはサラを見つけることが出来たのか」「サラはジュリアの心の中に何を残したか」
 忌まわしい負の歴史に目を逸らさずに、真正面から向き合うジャーナリストの有り様も問う。

 映画祭で監督賞を受賞したジル・バケ=ブランネルは、「マルセイユ・ヴァイス」('03)で知られるフランスの若手監督。
 収容所で殺されたドイツ系ユダヤ人を祖父に持つ彼は、世界中で300万突破のベストセラーズとなった原作の映画化権を獲得し、綿密なリサーチを行い、ユダヤ人迫害の真実い迫った。

338147_100x100_006_2  「過去」のヒロイン・サラを演じたのは、フランスの子役メリュジーヌ・マヤンス(「リッキー」'09)。弟への想い、両親への愛情、自分の行いに対する苦悩を素直に見せる。

 「現代」のヒロイン・ジュリアは、「イングリッシュ・ペイシェント」('96)でアカデミー賞にもノミネイトされたイギリスの大女優クリスティン・スコット・トーマスが演じた。

 過去の悲しみと痛みが、未来への光に変わっていくラストシーンは、今を生きる人々への監督の暖かいメッセージでもある。

 今年は「ヴェル・ディブ事件」から、ちょうど60年になる。 

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January 05, 2012

2032.谷中七福神巡り

20120103_012_640  年の初めに詣でれば、福を授かる七福神めぐり。
 徳川家康が崇拝した七福神は、文化・文政時代(1804~30)には江戸の庶民の信仰となった。
 その中でも最も古いのが「谷中七福神」、日本橋・深川に続いて今年は上野・日暮里・田端を歩いた。

20120103_082_640  スタートは「不忍池弁天堂」(辯才天)。
 寛永寺を創建した天海僧正が、琵琶湖と見立てて造営した不忍池の中ノ島に、滋賀・竹生島から分祀した。
 知恵・弁舌・音楽・財福を司る天竺の神、七福神の紅一点である。
 朝9時半、午前中のせいかお参りする人は少なかった。

20120103_021_64020120103_018_640  弁天堂から10分、「護国院」には三代将軍家光が贈った「大黒天」がある。
20120103_085_640  古代インドで食事を司る神とされるが、日本では福徳の神となった。
 右手に小槌、左肩に袋、米俵の上に立つ姿はお馴染み。

20120103_033_64020120103_037_640  谷中は路地や寺院が多くちょっと迷ったが、交番で訪ねて「長安寺」(寿老人)に。
 鹿を従えた黒光りの寿老人は、長寿の神様である。
 小さなお寺さんだが、お参りする人も増えてきた。

20120103_047_64020120103_043_640  長安寺から10分、「のっそり十兵衛」で有名な五重塔跡を通り、谷中墓地を抜けると「天王寺」(毘沙門天)がある。
 鎌倉時代に創建されたこの寺は、今回の七福神巡りでは最も大きかった。
 仏法の守護神、四天王のひとり毘沙門天は、伝教大師の作と伝えられている。

20120103_058_64020120103_061_640  天王寺から日暮里駅の上を抜けて15分、「ゆうやけだんだん」を下りると「ひぐらしの里」。
 江戸の頃「修正院」の布袋尊を、人々は「ひぐらしのほてい」と呼んで親しんだ。
 中国・唐末五代の禅僧布袋和尚は、200キロもある福の神だった。

20120103_063_64020120103_067_640  5分歩いて「青雲寺」(恵比寿)に着くと、逆周りの団体で混雑。
 最近は「一日ツアー・七福神巡り」も多い。
 お参りすると、商業・漁業・海上守護神「恵比寿さん」が、大きな鯛を抱えて微笑んでいた。

20120103_075_64020120103_640  「谷中七福神巡り」、終点は田端の「東覚寺」(福禄寿)。
 その名の通り、福と緑と寿命を司る神は、長い頭に金襴の冠。緑の法衣を纏う。
 徳川歴代将軍の祈願所だったこの寺、道路拡張の工事で前を削り取られていた。

 ここからJR田端駅までは10分。ドアtoドアで13,495歩、2時間の「ひとりウオーキング」だった。 

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January 03, 2012

2031.初詣

20120101_010_64020120101_022_640_220120101_025_64020120101_019_640

 毎年恒例となった界隈の初詣。

 自転車に乗って2時間弱、古今東西「八百万」の神々に「今年こそは、安らかな年に」と祈った。

20120101_004_64020120101_005_640  スタートは、いつも深川の「富岡八幡宮」。江戸最大の八幡さまとして知られる。
 今年の夏は、昨年延期となった「本祭り」、50基近い神輿の渡御は見ものである。

 隣のお不動さん「成田山新勝寺別院」、参拝客が長い列をつくっていたので遠くから手を合わせる。

20120101_023_64020120101_012_640_2 永代橋を渡って明石町に。明治のはじめ、ここは外国人居留地だった。
 「カトリック築地教会」はこの頃つくられたもので、東京では最も古い教会である。

20120101_024_64020120101_027_640  居留地の中心にあった国際病院「聖ルカ」。
 「聖路加チャペル」が、今もその歴史を伝える。

 すぐ近くにあるのが「築地本願寺」。
 横山町の寺院が明暦の大火で消失、佃の漁師たちが埋め立てた「築地」に移ってきた。350年前のことである。

20120101_018_640  初詣、最後はその佃の氏神様「住吉神社」。徳川家康についてきた攝津の漁師たちが、故郷から勧進した。
 深川八幡と同じく昨年の本祭りは延期され、今年の8月に4年ぶりの大祭となる。
 新しく造られた「八角神輿」を担ぐのを、今から楽しみにしている。   

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January 01, 2012

2030.迎春・龍の年

120101_640   (竜王くすのき材)

120101_012_640_2  2012年元朝、同郷の友人で仏師の向吉悠睦さんから届いた彫刻の写真を眺めながら、新年を迎える。(左は瑞祥・桧材)

 今年は「辰年」、十二支の動物に準えれば「龍の年」である。
 そして私は6回目の「年男」になる。

120101_003_640  右は京都・天竜寺で拝観した加山又造の「雲龍図」(部分)。堂内どこから見ても睨まれる「八方睨みの龍」と呼ばれる。

111205_042_640  左は昨冬、鎌倉の建長寺で参拝した法堂(はっとう)の天井画「雲龍図」、小泉淳が画いた。
 法雨をそそぎ、仏法の恵をもたらすという。

Image  「龍」は、十二支の中で唯一伝説上の生き物である。
 麒麟・鳳凰・霊亀と並ぶ神獣で、中国では皇帝のシンボルだった。
 日本でも、貴人の古墳の中に四神の「青龍」を見る。

120101_004  帝王の姿を「龍影」と呼び、帝王の顔は「竜顔」、黄色い着物を「龍砲(ロンパオ)」と称した。
 龍の「五爪」は天子、「四爪」は貴族、「三爪」は士族の画となる。

 ヨーロッパで龍=ドラゴンは、邪悪な生き物とされる。
 新約聖書「ヨハネの黙示録」に登場する「レッド・ドラゴン」は悪魔の象徴であり、ギリシャ神話の「テュポーン(ドラゴン)」はゼウスと死闘を繰り返した。

 しかしキリスト文化と異なるケルト文化では、「龍」は大地のエネルギーである。

Image_2  昨秋来日したブータン国王は、フクシマの子供たちを前にこう語った。

 「みなさんの中には、人格という龍がいます。年をとって経験を積むほど、龍は大きくなり強くなります」

 右のブータンの国旗に画かれているように、龍はヒマラヤの「幸せの国」のシンボルなのだ。

Image_3  6回目の「辰年」、「龍の年」を迎えた年男にとって、「年をとり経験を積んだ」のは事実だが、さて「大きく強く」なったのだろうか。
 今年1年、肉体は別としても、精神的にはその言葉を大切にして生きていこう。

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December 31, 2011

2029.2011・忘備録

103_640 31日午後4時30分、夕焼け。
 今年1年の反省と新しい年への希望を込めて、データをまとめる。

 067_640 健康維持のため始めた「スイミング」は、30年を超える。リタイヤしてからは、日曜日以外は「必ず」を目標にしている。
 今年泳いだ距離は279キロ(昨年比+23)、隣の区営プールで朝7時から40分、1キロ泳いで100mの水中ウオーキング。

Blue_hills  「ウオーキング」は、一昨年から「ひとまく鎌倉ウオーキング」に参加。寺社めぐりだけでなく、古道の山道も歩く。
 今年は7回参加したが、日本橋川など都心の「ひとり歩き」も加えると、歩数計の総計は11回で161,210歩。

 「宿泊旅行」は4回のべ9日。年の前半は2回ともキャンセルしたが、一応昨年並みだった。
 「塾」の軽井沢旅行以外は、連れ合いとの二人旅。

Water_lilies  「映画鑑賞」は、新作がちょうど100本。映像関係の仕事を名誉職もふくめ完全に辞めたので、昨年より66本減った。
 付き合いで見ることもなく、好きな作品だけを選んでいる。

 「歌舞伎」は「敬老の日」の招待もふくめ6回。「能・狂言」2回、「寄席」1回。
 歌舞伎座が完成すれば、「ひとまく席」に通うのだが。

Winter  「美術鑑賞」は、友人・知人の個展も含め、このブログで紹介しただけでも24回。
 六本木の国立新美術館や友人が理事をしている藝大美術館には、たびたび出かけた。
 また「瀬戸内美術館めぐり」を旅したので、今年はアートの年だった。

Sunset  「読書」は98冊、昨年より9冊増えたがその多くは「江戸」を舞台にした文庫本。佐伯泰英の200冊近い時代小説は、3冊を残すのみ。
 また藤沢周平の作品は、ほぼ完読した。
 友人・知人からの贈呈本は6冊、全てこのブログで紹介している。

2012_016_640_2  そして「夜の在宅率」、旅行や観劇の日を除くと88%と昨年より3%増えた。つまり「家飲み」である。
 もう「古希」も過ぎたのだから、当然だろう。

 みなさん「良いお年」を、来年こそは。

  

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December 30, 2011

2028.歳末・築地

111230_011_640111230_017_640  築地卸売市場(場内)は今日まで。
 今年最後の買出しは、例年より早く8時半には市場に。それでも場内・場外とも大混雑だった。

 今年は若いカップルや家族連れが多い。彼らは高級マグロや、うに、イクラなど結構高級品を買っていくと、仲卸の大将が話していた。

 例年に比べると、今年は「数の子」が安い。北欧だけでなく、アメリカ産がどっと入ってきたからだ。
 一方、「蛸」は2割高。水揚げが少ないそうだ。

111230_009_640111230_008_640  マグロ は平年並み。それでも最高級品「大間の生マグロ中トロ」は、キロ2万円を超える。
 これがデパートの棚に並ぶと、100g6,000~3,900円になるのだから驚き。

 鹿児島・奄美の養殖もの「本マグロ中トロ」7,000円~、マルタ・モロッコなどの解凍品が6,000円~。
111230_006_640 スーパーでも、100g1,280円だから場内は安い。
 ただし、キロ単位で売られているのでグループ買いか、冷凍品を細かく切って貰うとよい。
 最近は、一般客相手に少量販売の店もあるが。

 場外は、バスツアーの買い物客も増えてきた。
 「アメ横と勘違いして値切る客がいるんだよな。あちらは安売り、こちらは品質で勝負なんだから」と馴染みの店の親方が嘆く。

111230_007_640111230_024_640  何時ものように、「平目」「赤貝」「伊達巻」「蒲鉾」「漬物」それに予約してあった「玉子焼き」を買って帰る。

 一年間、舌と胃袋を楽しませてくれたお礼を、築地波除神社で。 

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December 28, 2011

2027.無言歌

2_007_640  前号の「灼熱の魂」に続いて、歴史に翻弄された人間の尊厳を問う「重い作品」である。
 映画は戦後中国史の「恥部」、タブーとされている「反右派闘争」と「大躍進政策による大飢餓」に真正面から取り組んだもので、いまだ中国本土では公開されていない。

 脚本・監督はワン・ビン(王兵)。山形国際ドキュメンタリー映画祭で、「鉄西区」('03)「鳳鳴~中国の記憶」('07)と2回のグランプリを受賞した中国・西安出身のドキュメンタリストである。

 ヤン・シェンホイの小説「告別夾辺溝」を読んで映画化を企画、「右派」と決め付けられゴビ砂漠の強制労働所に収容されたが、辛うじて生き延びた人たちを3年にわたって取材して製作した。

 作品は昨年のベネチア国際映画祭でサプライズ上映され、世界中の映画人にショックを与えた。
 北京のスタッフを中心にゴビ砂漠でロケした全編中国語の映画だが、香港・フランス・ベルギー合作のクレジットとなっている。

350pxantirightist_movement  「反右派闘争(1960年)とは、毛沢東が奨励した「百花斉放・百家争鳴](1956年)で国の政策に様々な提言をした科学者や知識人を、「右派分子」「反革命分子」と決め付け粛清した事件。

 中国共産党は、彼らを思想改造の名目で辺境の強制労働所に送り込んだが、「大躍進政策」の失敗による大飢餓でほとんどの人たちが病死している。

340745_100x100_002  作品はゴビ砂漠に掘られた「溝」(原題・THE DITCH)の中で、毎日の強制労働と、餓えに苦しみながら死んでいく知識人たちを凝視する。
 轟々と鳴る砂と風、荒涼とした砂漠の大ロング。ドキュメンタリー・タッチの映像は、光と影による美を映し出す。

 その映像を編集したのは、ベルギー出身のマリー=エレーヌ・ドブー。「ある子供」('05)「ロルナの祈り」('08)など、日本でも知られている世界的な名編集者である。

340745_100x100_003  出演しているのは、中国戯劇学院出身の若手俳優(ル・イエ、シュー・ツェンツー)と実在の生存者(リー・シャンニエン)たち。
 音楽など人工的なサウンドを一切廃した作品の最後に、「無言歌」が流れる。

 現代中国の政治的過去を鮮やかに解き明かしたこの作品は、中国インディペンデント映画の金字塔といえよう。

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December 26, 2011

2026.灼熱の魂

2_006_640  衝撃的なラストで、満席の場内は席を立つ人もいない。そして怒りと悲しみが、全身を貫く。

 レバノン内戦がベースとなった、劇作家ワジ・ムワワッドの4時間を超える舞台劇の映画化である。
 カナダ・ケベック在住の彼は、8歳の時両親と共にレバノンを脱出、フランスを経てカナダに亡命している。

 モザイク国家といわれるレバノン。
 キリスト教マロン派、イスラム教ドルーズ派・スンナ派・シーア派が混在し、そこにパレスチナの難民が溢れる。
 それぞれが民兵組織を持ち、イスラエル・シリア・イランが介入する。
 虐殺の連鎖・レバノン内戦は1975年に始まり、今もなお完全には終結していない。

340637_01_03_03  映画は、中東からカナダに移り住んだ一人の女性の壮絶な人生が描かれる。
 それは、母親の遺言によってその軌跡をたどる双子の子によって探り出されていく。
 遺言は、父と兄を捜す旅。ミステリアスな母の過去にたどり着いた時、私たちは言葉を失うのである。

340637_01_02_03  監督は、「渦」('00)でベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞したカナダ・ケベック出身のドウニ・ヴィルヌーブ。
 レバノン内戦に現在のイスラエル・ヒズボラ抗争もオーバーラップさせ、架空の国として描く。

 彼は、「現在」と「過去」のエピソードを緻密に絡ませながら、宗教と民族間の残酷で衝撃的な暴力の連鎖に、鋭い批判を浴びせていく。

340637_01_01_03_2 壮絶な人生を歩いた母親役はベルギー出身のルブナ・アザバル(「パラダイス・ナウ」'05)、双子の娘と息子はカナダのテレビや舞台で活するメリッサ・デゾルモー=ブーランとマキシム・ゴーデットが演じた。

 撮影はヨルダンで行われた。エキストラで出演した多くが、イラクからの難民だったという。
 彼らは映画の主人公たちと同じく、宗教・民族の対立の憎悪のなかから逃げてきた庶民たちだった。
 リアルな映像は、その共通体験から生まれている。

 「アカデミー賞は本作が受賞すべきだった。
  物語はアガサ・クリスティ級のドラマティックな展開で始まり、ソフォクレスのギリシャ悲劇のように終わる。」(ウオール・ストリート・ジャーナル)

 カナダのアカデミー賞デアルジニー賞8部門をはじめ、ヴェネチア国際映画祭最優秀作品賞など、60を超える映画賞を受賞したヒューマン・ミステリー映画でる。    

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December 24, 2011

2025.観世流・能

Image_12205227148  東大観世会のOBで今も能楽を演じている友人から、渋谷の観世能楽堂に招かれた。

 鑑賞したのは、「朝長」「実盛」とともに「三修羅」と呼ばれる「頼政」。もちろん世阿弥の作である。

Yorimasa03  主役(シテ)は、浅見重好が演ずる源三位入道頼政の亡霊。宇治平等院を訪れた諸国遊行の僧(ワキ)に、宇治川での平家との戦いに破れ自害したいきさつを語る、というお話である。

 源頼政は、攝津源氏の流れをくむ平安末期の武将。
 保元・平治の乱では平清盛と共に朝廷側に立って活躍したが、平家に比べ恩賞に恵まれなかった。

 奢る平家の中にあって、1180(治承4)年に後白河法皇の第二皇子・以仁王を奉じて、宇治で兵を挙げた。頼政76歳の時である。
 しかし平家方の若干17歳の武将、田原忠綱の見事な指揮によって戦いに敗れ、平等院の庭先に扇を敷いて自刃した。

Yorimasa02  しかし以仁王の平家討伐の「令旨」は、多くの源氏方を奮い立たせる。
 頼政の死から3ヵ月後には頼朝が伊豆で挙兵、翌月には木曾義仲も挙兵する。
 それから5年、壇ノ浦の合戦によって平家は完全に滅亡する。

 頼政は歌人としても有名である。「従三位」の位を贈られたのも歌人としての功績だったという。

 彼の辞世の句
 「埋もれ木の 花咲くこともなかりしに
  身のなるはてはあわれなりけり」

 歌人としての風流な面と、老いてなお平家に反旗をひるがえした武士としての荒々しさ、敗れ去る者の悲哀が、幽玄な能の世界で語られていく。

Image  今回の能舞台は、若い女性観客で賑わった。
 それは、能と能の間で演じられた「狂言」に、野村萬斎がシテとして登場したからである。

 演目は「文荷(ふみない)」。主人から届けるように頼まれた手紙を、次郎冠者と勝手に開いた太郎冠者(萬斎)、それが「恋文」だったので「重い(想い)」と、二人で能「恋重荷」を謡いながら担いで運んだが・・・・という狂言。
 能の「幽玄」とは対照的な「笑い」を楽しんだ。

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December 22, 2011

2024.源氏物語

Genjinazo_4nr  1000年前に書かれた世界最古の長編小説「源氏物語」。
 その構成の秀逸さ、登場人物の心理描写の巧みさ、その中に描かれる美意識は典型的な王朝物語、古典の中の古典として知らぬ人はいない。

300pxch5_wakamurasaki  全54帖(巻)、多くの謎に包まれてきた作品は、著名な文人たちによって現代訳されてきた。

 田辺聖子(250万部)、瀬戸内寂聴(220万部)、与謝野晶子(172万部)、円地文子(103万部)、谷崎潤一郎(83万部)と、売れ行きベスト5だけ並べても錚々たるものである。

Genjinazo_5nr  映画化は、長谷川一夫の1951年の作品から市川雷蔵主演('61)など、今作で8作目。
 それぞれの切り口と新解釈で、世界文学史上最高峰の「恋愛小説」を映像化してきた。

180pxtosa_mitsuoki_001  今回、角川映画がトライしたのは「なぜ紫式部が、この物語を書かねばならなかったのか」である。

 製作総指揮の角川歴彦はこう述べる。
 「紫式部は、時の権力者藤原道長への満たされぬ愛ゆえに、(道長を擬した)光源氏に激しく嫉妬したのではないか」

 映画は、豪邸「土御門邸」裏山での道長(東山紀之)と式部(中谷美紀)の情愛シーンから始まる。
 そして「光源氏の奔放で華麗な愛」と交錯しながら、物語が綴られていく。

2_005_640 339723_100x100_006_2  光源氏(生田斗真)を取り巻く「想い人」「正室」「愛人」は、いま輝く女優たち4人。

 源氏の義理の母で禁断の恋に悩む藤壺(真木よう子)、正室・葵の上(多部未華子)、愛人・夕顔(芦名星)、前の東宮后で若い光源氏への愛にのめりこむ六条御息所(田中麗奈)である。

339723_100x100_005 原作ではこの他にも、紫の上、明石の方、女三宮、軒端荻、末摘花など、光源氏と情を交わした女人が登場するが、今回の作品では藤壺への断ち切れぬ愛と、六条御息所の強烈な嫉妬心に絞られた。

339723_100x100_001  その愛憎こそが、式部の執筆の動機であり彼女の心の中の葛藤だ、という解釈になる。

 物語の背景となる、豪華絢爛な王朝絵巻を描くため、衣裳と美術には特に力を入れている。

Genjinazo_3nr  直衣・束帯・狩衣・十二単など京都の伝統の技によって新たに織られ、道長の屋敷「土御門邸」は琵琶湖畔に2億円かけて造られた。

 千年の時を越え、「源氏物語」の誕生秘話をスクリーンに登場させたのは、ドラマディレクター出身の鶴橋康夫。「愛の流刑地」('07)に次ぐ映画監督2作目である。 

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December 20, 2011

2023.国立歌舞伎

_640  国立劇場開場四十五周年を記念して、今年は「歌舞伎を彩る作者たち」シリーズが上演されている。
 今月はその第3弾として、新歌舞伎を代表する作家のひとり、真山青果の作品「元禄忠臣蔵」(5幕12場)の登場である。

 青果史劇の最高峰といわれる「元禄忠臣蔵」は、全10編。
 1935(昭和10)年の正月、東京劇場の「江戸城の刃傷」から上演が始まり、全編上演するのに6年かけた雄渾な大作だった。

 国立劇場でも、開場40周年を記念して全10編を連続上演したが、今回は5年ぶりに発端から大詰めまでの代表場面、3編の上演となった。

 元禄15年12月15日の「赤穂浪士の討ち入り」は、さまざまな芝居や映画・テレビ、小説として親しまれているが、真山作品は深みある心理描写、劇的な構成、味わい深いセリフ、綿密な史実考証など、他に類を見ない作品として高く評価されている。

110426_101_640110426_152_640   「江戸城の刃傷」

 吉良上野介への刃傷の場となった「江戸城内松の御廊下」(第一幕)から、浅野内匠頭が切腹をする「田村右京太夫屋敷大書院・小書院」(第二幕・二場)が舞台。
 切腹を命じられた内匠頭の無念と、それを見守る幕臣の厚情や浅野家家臣の悲嘆が描かれる。

 内匠頭を中村梅玉、田村右京太夫を市川段四郎、多門伝八郎・中村歌六、片岡源五衛門・中村歌昇ほか。
  

090419_038_640090419_025_640  「御浜御殿綱豊卿」

 御浜御殿とは、現在の浜離宮恩賜庭園のこと。後に六代将軍家宣となる、甲府宰相松平綱豊の別邸である。
 汐入の池をながめる「松の茶屋」で、学問の師・新井白石に胸中の悩みを打ち明ける綱豊(第一幕)から、愛妾の兄で赤穂浪士・冨森助右衛門との虚々実々の論戦が繰り広げられる「御浜御殿御座の間」(第二幕四場)。
 天下の公道を説く綱豊の名セリフ、全10編のなかでも傑出した名作である。

 綱豊卿を中村吉右衛門、新井白石を中村梅玉、冨森助右衛門を中村又五郎、その妹・お喜世を中村芝雀が演じる。

Danchiraomote1  「大石最後の一日」

 高輪の細川家にお預けとなった大石内蔵之助と浪士16人。最後の沙汰を待つ大石は、磯貝十郎左衛門と許婚おみのとの面会も許し、晴れやかに最後の場に向う一幕。
 「これで初一念が届いた」と、静かに花道を去るクライマックスが見所である。

 中村吉右衛門が当たり役の内蔵助を、磯貝十郎左衛門は中村錦之助、許婚おみのを中村芝雀という顔ぶれ。
 細川家の若殿を故・中村富十郎の愛息、まだ12歳の中村鷹之資が父親譲りの口跡で場内を沸かす。

 「忠臣蔵は耐えに耐え、志を貫く人間の美学」だと、人間国宝・中村吉右衛門はいう。
 彼のいぶし銀のような魅力と定評のある演技力に、花道から消えた後も拍手は続く。
 前から4列目の一等A席、「播磨屋」ファンの連れ合いへのクリスマスプレゼントだった。

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December 18, 2011

2022.RAILWAYS

2_003_640  「RAILWAYS」、昨年は「49歳で電車の運転士になった男の物語」。中井貴一と高島礼子の共演で、舞台は島根の一畑電鉄だった。

 今回は「愛を伝えられない大人たちへ」。三浦友和と余喜美子のコンビ、雄大な北アルプスを望む富山の田園地帯を舞台に、一ヵ月後に定年を迎える実直な運転手と、夫を支えながらも新しい人生に踏み出した妻の相克が描かれる。

Pnote2_i3  もう一人の主役はタイトル通り電車。富山地方鉄道が、各地の電鉄から払い下げを受けた電車が走る。
 例えば西武鉄道の特急「レッドアロー号」、主人公の第2の人生を象徴するように、まだまだ現役で頑張る。

340259_100x100_002  三浦友和の性格が良く生かされた設定である。主人公と同じ年、役者であるから定年はないが、「たそがれ」に向う男の哀愁がにじみ出る。

 余喜美子も同じ世代の主婦を演ずる。もう一度、自分の人生にトライしたい女の気持ち、「家族・仕事」と夫婦間の普遍的テーマだけに等身大の演技が求められる。

340259_100x100_005  60前後の世代が「愛を伝えられない大人」とすると、彼らより一回り高齢の私たちはそれ以上とも言える。
 「お前、この先の人生は短いと思っとるんやろ?ながいぞー・・・」と、先輩運転手だった米倉斉加年が三浦に諭す。

340259_02_02_03_2  もう一度「愛」を告げて、新しい夫婦の関係を築かなければ「長い旅」は続けられない。交わることのない2本のレールだが、終着駅は同じなのだ。

 監督は前作で助監督を務めた蔵方正俊、長編デビューである。
 主題歌「夜明けの雲」を歌った松任谷由美は、前作に続く。

 3年前、富山地方鉄道「ちてつ」で立山や黒部を旅した事を思い出しながら、大人の愛の物語にひたる。

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December 16, 2011

2021.ラビット・ホール

2_002_640  アリスが不思議の国に落っこちたウサギの穴「ラビット・ホール」。
 4歳の息子を交通事故で亡くした夫婦も、「ラビット・ホール」に落ち込む。
 作品は、絶望の穴から這い上がる夫婦の愛の物語を丁寧に描いていく。

338528_100x100_002 原作は、劇作家デヴィッド・リンゼイ=アベアーが書いた戯曲。
 ブロードウエイで上演され、ピューリッツアー賞とトニー賞を受賞した舞台を元に、原作者が脚色した。

 そのシナリオに感銘を受けたオスカー女優ニコール・キッドマンは、自ら映画をプロデュース、主役を演じた。

338528_100x100_004  息子の思い出を全て忘れたい妻キッドマン。
 いつまでもその思い出を繋ぎ止めたい夫は、アーロン・エッカート(「ダークナイト」'08)。
 やがて夫婦の絆は綻びはじめる・・・・・。

 監督は、センセーショナルな自伝的映画「ヘドウイング・アンド・アングリーインチ」('01)のジョン・キャメロン・ミッチェル。
 この作品で彼は、脚本・監督だけでなく主役も演じサンダンス映画祭で受賞しているが、今回は夫婦の間に流れる「時間」を淡々と描き、新境地を開いた。

338528_100x100_007_2 「めぐりあう時間たち」('02)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したキッドマンの、繊細な演技が光る。
 今回も受賞は逃したが、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞にWノミネイトされた。

338528_100x100_006  キッドマンの母親役ダイアン・ウイーストも上手い。「ハンナとその姉妹」('86)「ブロードウエイと銃弾」('94)と2度もアカデミー賞を受賞した名優である。

 後味は爽やかである。
 「重い気持ちで見始めたあなたは、予期に反して心を軽くしてこの映画を見終わるだろ」と、「ニューヨーカー誌」は評する。

 映画でも愛する人を失った者同士が、その「喪失体験」をシェアする集いが紹介される。
 仙台の大学で精神看護学を教える高校の後輩が、今そうした「グリーフケア」をサポートする組織つくりに全国を駆け回っている。
 欧米では当たり前のサポート・システムが、東日本大震災をきっかけに日本でもようやく生まれようとしている。
 映画を見ながら、彼女たちの精力的な活動を思い浮かべた。   

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December 14, 2011

2020.東京オアシス

2_001_640  「かもめ食堂」('05・フィンランド)、「めがね」('07・与論島)、「プール]('09・タイ)、「マザーウオーター」('10・京都)、今回は「東京」である。

 小林聡美主演のこのシリーズは、人と場所との関わりを女性監督らしい感性で、静かに描く。
 数々の賞を受賞した荻上直子監督から、さらに若い女性たちにバトンタッチされたため、作品には出来不出来もあるがシンプルで「ほんわか」したタッチは変わらない。

 今回は、CM出身でこれまでも一連のシリーズに参加してきた、松本佳奈と中村佳代がそれぞれ分担して監督を。
 脚本も白木朋子が加わって、1篇づつ担当した。

340239_100x100_002  女優小林が関わるのは、3人。オムニバスで綴られていく。

340239_100x100_006340239_100x100_003  第1話は、深夜の高速を車で走るレタス運搬人の加瀬亮。
 ぎこちない会話が、やがてやさしい光に包まれる。

 第2話は、深夜の名画劇場で働く原田知世。
 女優でもある主人公がもと脚本家だった彼女と再開した時、時間はゆるやかに流れる。

340239view007  夕方の動物園で会ったのは、美大を5浪している黒木華。
 囲われた動物たちと、都会に住む人々が求めるオアシスとは・・・。
 日々の風景は変わらないが、小さな出会いは新しい時間を生み出す。

340239_100x100_009  淡々としたセリフ、単調なカメラワーク、メリハリはないストリー、それがなぜか心にしみる。
 誰もが、東京オアシスを探し求めているからかも知れない。

 「一人で逃げたら、帰りもひとり」。
 小林聡美が呟くこのセリフは、彼女自身の生身の生活を思い起こす。

 「ステキな金縛り」とは対照的な「東京オアシス」である。

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December 12, 2011

2019.師走・餅つき

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 マンション恒例の「師走の餅つき」。
 お向かいさんが古くからのお米屋さんなので、臼や杵を借り、もち米も昔ながらの蒸篭で蒸す。

 始めたのは6年前から。
 住吉神社の神輿を担ごうと集まった老若男女30人、年代も仕事も違うが共通するのが祭り好き。
 自腹を切って師走の餅つきを始めた。

 4年前からは、マンション管理組合の公認行事となって予算も付いたが、餅つきも調理も「祭りの会」がボランティアで担当している。

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 住民同士の交流が薄いといわれる都心のマンションだが、何となく下町気分が残っているのが嬉しい。

 準備から後片付けまでおよそ5時間、ついた餅50キロはマンションの住民だけでなく、ご近所の皆さんにもお裾分けした。   

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December 10, 2011

2018.情報の絆

004_640 先月、親友が亡くなった。32年前にNHKスペシャル番組でプロジェクトを組み、世界中を取材で走り回った仲間のひとりである。
 現役を終えた後も、仲間たちは「塾」を開いて国際経済や政治について議論を重ねてきた。

 ブログ1970号(9.8)でも紹介したが、その彼が幹事となってこの夏の終わりに、軽井沢でセミナーを開いた。
 仲間は誰も気付かなかったが、死期を悟った彼が私たちとの別れのために開いた会だった。

 現役を終えた後、彼は大学教授を務め若い人たちに「ジャーナリズムの真髄」を教えてきた。
 その傍ら、多くの関係者を取材し膨大な資料を集めて「戦後沖縄放送史」の研究を続けた。
 病室にまでパソコンを持ち込み、論文を整理する。ほぼ完成したのは、亡くなる2週間前だった。

005_640  仲間たちは、彼の論文を公表しようと奔走した。
 一昨日発売された「世界・1月号」(岩波書店発行)に掲載された「短期連載・情報の絆~米軍の情報分断政策と戦った沖縄」が、彼の最後の論述である。

 彼の名は、座間味朝雄(72歳)。琉球王朝の血を引くジャーナリストである。

 「情報の絆」第1回は、「占領下の島々」。
 太平洋戦争で全ての「通信・放送」施設を失った沖縄に、ようやく民放ラジオが生まれ(1954年)、それがベースとなって「テレビ免許申請」(1956年)、さらには日本政府に対する「マイクロウエーブ回線設置の陳情」(1960年)までが綴られる。

031  第1章は「戦後沖縄を支配した米占領政策とメディアの復活」。
 沖縄県民の機関である琉球政府に、「米軍の意向に沿った政治」をおこなわせるため設けられた「高等弁務官」制度を俎上に上げ、その中で「島ぐるみ土地闘争」が盛り上がっていく様子が語られる。
 沖縄テレビが、免許申請を出したのがその時期だったのは、象徴的である。

 第2章は「『琉球電電公社』設立を渋る米国」。
 琉球政府が事前の承認を求めた「琉球電電設置法案」に、高等弁務官が「具体的理由を明らかにしない」ままに承認を引き伸ばす経緯が分析される。

009  第3章は「『正力マウンテントップ構想』騒動」。
 「正力松太郎氏と米国務省の危険きわまる陰謀、日本テレビの外資導入に関する報告。電波管理委員会有志」なる「怪文書」の背景が、述べられる。

032  最後の第4章が「動き出した『日流マイクロ回線』」。
 いよいよ本論に入るが、日本からのテレビニュースや番組がマイクロ回線を通して沖縄に流れる事を、「米国占領政策に対する日本政府の干渉」とする高等弁務官。それに対する当時の池田内閣、その内閣に陳情する琉球政府、その三つ巴が序論として描かれる。

 「情報の絆」続編はこのあと2月号・3月号と掲載される予定だが、元沖縄県知事・太田昌秀さんは「座間味論考」について、「世界」1月号にメッセージを寄せた。

 「・・・・座間味さんが本土と沖縄間のマイクロ回線の敷設問題の歴史的背景とその真相を解明されたことは、画期的成果である。」
 「・・・・座間味さんが沖縄放送史に異常なほどの熱意と関心を以って取り組まれたのも・・・・彼の内面に誇り高き沖縄人としての確固たるアイデンティティが保持されているからにちがいない。」

 「世界・1月号」は、12月8日から全国の書店で発売。定価840円。

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December 08, 2011

2017.紅葉・鎌倉の尾根を巡る

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 標高90メートル、獅子舞ヶ峰。
 鎌倉では最も美しいと言われる紅葉の名所である。

 今月の「ひとまく会ウオーキング」は、鎌倉の古刹と尾根を訪ねる「紅葉狩り」、晩秋の一日を仲間たちと楽しんだ。

111205_008_640111205_005_640  集合場所は、鎌倉五山の第二位の古刹・円覚寺。臨済宗の大本山である。
 朝9時過ぎ、北鎌倉駅下車。ちょっと冷え込む。

 境内には、居士林や仏日庵など楓が彩る紅葉の名所が多いが、今回は総門から眺めるだけにした。

111205_017_640111205_010_640   鎌倉街道を歩いて15分、五山の第一位・建長寺に。

 この古刹も臨済宗の寺で山号は地名に因んで巨福山、寺号は創建された年(1253・建長5年)を採って建長興国禅寺とした。
 鎌倉では最も古い禅寺である。

111205_045_640111205_049_640  大河ドラマで話題の「お江の方」の霊屋の唐門。芝・増上寺改築の折、ここに移された。

 唐門は朝廷の使だけが通る勅使門なので、庶民の私たちは横の玄関から方丈(龍王殿)に。
 大覚禅師が作庭した庭園と、借景でもある半僧坊の峰の紅葉を眺めた。

111205_074_640111205_065_640  境内奥の峰、半僧坊から眺めた建長寺の大伽藍、遠くに相模湾が霞む。

 西に目を移すと雪化粧の富士山が、くっきりと見える。
 鎌倉・富士見名所のひとつである。

111205_099_640111205_101_640  半僧坊から鎌倉宮に近い瑞泉寺までの4キロが「天園ハイキングコース」になる。

 「鎌倉アルプス」とも呼ばれる横浜市境界の尾根は、写真右の大平山頂上でも159m。
 安房・上総・下総・相模・武蔵・伊豆の六ヶ国が見えるので、六国峠とも呼ばれた。

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 今回のウオーキングのハイライト、「獅子舞」。

 「天上の楽園」に近いから、この尾根を「天園」と名づけたのは東郷平八郎。横須賀を母港とした連合艦隊指令長官は、ここに別荘を作り休息の場とした。
 彼が自らの手で植えた楓が、100年の歴史を経て森となる。
 今、幹周りが3mもある大銀杏が17本、楓は2000本を超えるという。

 今年は天候不順で「紅葉狩り」はイマイチだったが、見応えはある。

111205_139_640_2111205_133_640  「ひとまく会ウオーキング」、終点は荏柄天神社。大宰府・北野天満宮と並ぶ日本三大天神の一つである。

 現在の社殿は、江戸の初期に鶴岡八幡宮の若宮を移築したもの。
 冬のウメが有名だが、社を囲む森の銀杏や楓も彩る。

 午後3時、何時もの様に駅前の居酒屋で疲れを癒す。今回のウオーキングはドアtoドアで19.647歩、東京駅構内での買い物歩きも含めて。 

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December 06, 2011

2016.アントキノイノチ

2_640_2   「精霊流し」「解夏」「眉山」などの作品で知られるシンガーソング・ライターさだまさしの同名小説が原作。
 2年前に刊行された時は、若者だけでなく幅広い世代にも読まれた。

 この小説を映画化したのは、「ヘブンズストーリー」('10)で、ベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞・最優秀アジア映画賞を受賞した瀬々敬久。
 今回もモントリオール世界映画祭でイノベーションアワードを受賞した。

 しかし瀬々監督の強い思い入れによって結末を変えたことに、さだまさしフアンからは異論も出た。

339355_100x100_004_2  高校時代にいじめに会い「友を殺した」岡田将生、レイプされて「こどもを殺した」榮倉奈々。
 そのトラウマで心を閉ざした二人が、「遺品整理」の仕事を通して「イノチ」の繋がりを体験し、再生していく青春映画である。

 「元気デスカ~」と、コンサート舞台で必ず叫ぶさだまさしの「人を見るまなざしの優しさ」は、映画でもきちんと描かれている。
 「いじめ」「無関心」「虐待」「自殺」「意味のない殺し」・・・・、そんな時代状況の中「アントキノイノチ」はいったい何だったのだろうか、作者も監督も観客に問う。

339355_100x100_003  様々な理由で身内の遺品整理が出来ない遺族のため、10年ほど前にこうした代行サービスが生まれた。
 この映画では、そのひとつの会社と実在する人物をモデルにその実態を見せた。

339355_100x100_001_3  そのモデルを演じた原田泰造が上手い。繋がりが薄くなっていく中でも、死者と遺族との切れない命の繋がりを、丁寧に若者たちに見せていく。

 遺族を演じた檀れいや柄本明、宮崎美子が脇を固め、高校生役の松坂桃李や染谷将太を支える。
 少々無理なシチュエーションもあったが、海外での観客も理解できる普遍性をもった作品だった。

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December 04, 2011

2015.マネーボール

1_008_640 アメリカ・メジャーリーグ、1勝するのにオリオールズやレンジャーズは300万ドル掛かったが、アスレチックは50万ドル。これで地区優勝しリーグ優勝をヤンキースと競った。

 この金額は、選手の年俸総額を勝数で割った2002年のデータ。当時のリーグ・コミッショナーは、「これは異質な例外だ」と言い放った。

 「メジャーリーグのなかでも、極めて資金力の乏しいオークランド・アスレチックスが、なぜこんなに強いのか?」
 そんな疑問を抱いたスポーツ・ジャーナリスト、マイケル・ルイスが取材して書き上げた本が「マネーボール」である。

340151_100x100_011  ルイスが名づけた「マネーボール理論」とは、「データを重視して年俸の安い無名選手やロートル選手を買い、勝てるチームに作り変えた」アスレチックスのGM、ビリー・ビーンの球団経営学をいう。

340151_100x100_001   その実在人物を主人公にした映画を作ったのが、「ソーシャル・ネットワーク」'10)の製作陣。
 経営分析中心の原作を、「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞脚色賞を受賞したアーロン・ソーキンと、「シンドラーのリスト」('93)で同じくアカデミー賞を受賞シタスティーヴン・ザイリアンが、人間味溢れる物語に構成した。

 そして監督を任されたのが「カポーティ」('05)のベネット・ミラー。いずれも実在人物の伝記ものに強い映画人たちだった。

Moneyball_wp_02_standard  GMビーンは、自らプロデューサーも兼ねるブラッド・ピット。
 俳優としては最後の作品になるだろうと、信念を貫く男の強さを全力で演じた。
 そしてGMの右腕となる「データ・オタク」、イェール大学経済学部卒のピーターを、コメディアンのジョナ・ヒルが真面目な顔を見せた。

340151_100x100_006  もうひとりオスカー俳優が、アスレチックスの監督として登場する。
 ミラー監督の盟友、「カポーティー」で主演男優賞を受賞したフイリップ・シーモア・ホフマンである。
 GMと対立しながらも、「マネーボール理論」を実践していく実在の人物である。

340151_100x100_011_2  日本の金持ち球団、最近の「ウチゲバ」のニュースに比べると、アメリカのメジャーとの違いがよく判る。
 オーナーとGM、GMと監督、さらにはGMと選手の関係。日本の様なドロドロした陰湿さは少ない。
 シーズン中でも一方的にトレードしたり首にしたりする冷酷さはあるが、それは選手も関係者も当たり前と考えているクールさがある。

 「夢を売るスポーツ業界」の、ビジネスとしての現実をきちんと見せながら、輝くことの出来なかった元スター選手の「馬鹿なパパ」ぶりが、見る人にじわりと感動を与えてくれる。

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December 02, 2011

2014.人形町・歴史散策

111122_006_640  「舟めぐり・まち歩き」、「日本橋川」に続いては「人形町・歴史散策」。
 中央区文化財サポーターが案内してくれた日は、あいにくの荒天だったので駆け足で回り、先日晴天を見計らって一人で「まち歩き」した。

111122_008_640111122_004_640_2  スタートは地下鉄の駅名にもなっている「水天宮」、安産の神様として若夫婦や孫の誕生を祈る老夫婦で賑わう。

 もともと三田の赤羽橋にあった久留米藩・有馬家お上屋敷にあったお社。
111122_007_640  「情(なさけ)ありまの水天宮」と、江戸の頃から庶民の信仰を集めていた。
 人々は、屋敷の外から塀越しにお賽銭を投げ入れたそうで、藩でも5日の戌の日には、藩邸を開放したという逸話が残っている。

 ご祭神が安徳天皇・建礼門院(平清盛の娘で天皇の母)・二位の尼(清盛の妻)と平家縁りなのが興味を引く。その謂れは長くなるので省くが、人形町に鎮座したのは明治維新後の1872年である。

111122_010_640_2 この一帯(葺屋町・堺町)が人形町と呼ばれたのは、江戸時代の始まりの頃から古浄瑠璃(薩摩座)や結城座(人形芝居)など、多くの芝居小屋が集まっていたからである。

111122_011_640111122_047_640   当然、周囲には人形師や人形細工師の住まい、人形店などが並んでいた。

 今では現代の人形師、結城ジュサブロウの館だけがその伝統を引き継いでいるが、毎年10月には全国の人形店が集まる「人形市」が開かれる。

111122_640111122_029_640_2  人形町はまた芝居町とも呼ばれた。
 1634(寛永11)年には村山(市村)又三郎が座元となって歌舞伎の「村山座」が開業、1651(慶安4)年には猿若(中村)勘三郎が京橋から「中村座」をこの地に移した。
 10年前に亡くなった歌舞伎の名優17代目羽左衛門は又三郎(市村宇左衛門)の後裔、同じく18代目勘三郎はその名の通り猿若の後裔である。 

004_640_2   しかし幕府公認の江戸三座のふたつ、村山(市村)座と中村(猿若)座は、水野忠邦の「天保の改革」(1841年)によって、強制的に浅草へ移されてしまう。
 人形町界隈に芝居小屋(現在の明治座)が戻るのは、40年後の1873(明治6)年である。

111122_042_640111122_043_640  歌舞伎といえば人形町通りの一角に、「玄冶店跡」の碑がある。
 家光の痘瘡を治した幕府御典医・岡本玄冶の屋敷跡で、「与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし」の「源氏店」のモデル。
 与三郎が蝙蝠安とお富を強請った妾宅、「お富さん」の唄でも有名だ。

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 現在はミシュランにも選ばれた高級料亭と、小粋な小料理店しか残っていないが、芝居町界隈の葦原(旧吉原)には公許の遊郭があった。
 1657(明暦3)年の振袖火事(明暦の大火)によって、浅草田圃(新吉原)に移転させられるまでの40年、芝居見物帰りの男たちを楽しませた場所だったのである。

111122_023_640111122_015_640_2   地下鉄「水天宮駅」と「人形町駅」のほぼ真ん中の通りが、江戸の下町風情を残す「甘酒横丁」。

111122_020_640_3111122_019_640_2   i今でも甘酒を売る和菓子屋に豆腐屋、玉子焼き・鯛焼き・人形焼・煎餅屋など、沿道には何代も続く老舗が軒を並べている。

111122_017_640111122_021_640  役者たちの衣装箱の「つづら」店に「三味線」屋さんなど、人形町・芝居町の名残を留める店もある。

 朝10時にスタートした「人形町・歴史散策」、このほかにも神社やお寺、「西郷隆盛屋敷跡」「谷崎潤一郎生誕の地」そして「蛎殻銀座跡」などを訪ねてお昼時。

111122_073_640111122_065_640111122_075_640_2  辿りついたのが親子丼発祥の店。

 1760(宝暦10)年、鷹匠・山田鉄右衛門が開いた「しゃも料理屋」は相変わらずの行列だった。
 30分並んで店に入り、15分待って食した親子丼は、心地よい疲れを癒してくれた。

 今回の「まち歩き」は、10,442歩。

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November 30, 2011

2013.三銃士

1_006_640  「決戦は空へ!・・・狙われた王妃の首飾り。守るのは若きダルタニアンとフランス最強の三銃士」
 今年の東京国際映画祭で公式オープニングとして上映された作品。

 アレクサンドル・デュマ(1802~1970)が書いた古典を、、「バイオハザード・シリーズ」のポール・W・アンダーソンが、アドベンチャー超大作に仕上げた。
 ダ・ヴィンチ設計の飛行船が登場するファンタジー映画には、原作者デュマもびっくりするだろう。

51tegrjmrl__sl160_  最近では三谷幸喜のテレビ人形劇、映画でも1921年・1948年・1973年・1993年と4回も製作された名作だけに、ストーリーは誰でも知ってる。

338942_100x100_002  ところがアンダーソン監督は、愛妻ミラ・ジョヴォヴィッチの演じる悪女ミレディを、事実上主役に仕立て上げた。
 さらにイギリスのイケメン俳優オーランド・ブルームを、敵役のバッキンガム公爵として登場させ話題を呼んだ。

338942_100x100_007_2338942_100x100_001  物語の主人公であるダルタニアンには、「バーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」('10)で初めて主役を演じたアメリカの若手ローガン・ラーマンを持ってきたが、三銃士の方は少々影が薄い。

 マシュー・マクファディン(「ロビンフッド」'10)、ルーク・エヴァンス(「タイタンの戦い]'10)、レイ・スティーヴィンソン(「ザ・ウオーカー」'10)と、イギリスの中堅俳優三人がその役。

338942_100x100_016338942view008   残る敵役、ワルの権化リシュリュー枢機卿役は、オーストリア出身のオスカー俳優のクリストフ・ヴァルツ(「イングロリアス・バスターズ」'09)。
 その手先ロシュフオール隊長は、「シャネル&ストラヴィンスキー」('09)でストラヴィンスキーを演じたデンマークのマッツ・ミケルセンと国際色豊かだ。

338942_100x100_003  そうそう、忘れてならないのはダルタニアンの恋人コンスタンス。イギリスの新人ガブリエラ・ワイルドが可憐な笑顔を見せる。
 ルイ13世がイギリスの見祐エドワード・フォックスの息子フレディ、王妃がジュリアン・テンプル監督の娘ジュノー。
 これで役者が揃った。

117pxleonardo_helicopter  映画の見所は英・仏戦艦による会戦に代わる、飛行船同士のバトル。
 ダ・ヴィンチの設計によるものとされるが、単なる絵空事ではない。
 「最後の晩餐」や「モナ・リザ」の画家として知られる彼は、イタリア・ルネサンス時代の科学者でもあった。

 左の設計図らしき物は、「ダ・ヴィンチ手稿」に書かれている飛行物体の図案。
 以前、ANAの旅客機の尾翼にデザインされていたあの図柄である。
 人力ヘリコプターやハング・グライダーの研究をしていた事実を、アンダーソン監督はフィクションとして上手く利用したのだ。

 映画「ダ・ヴィンチ・コード」などに見る彼の天才的な「創造力」は、「想像力」をたくましくする映画にぴったりと合うのかも知れない。

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