November 11, 2009
ひとまく会の同好の諸兄と、久し振りに「国立寄席」を鑑賞した。国立演芸場・11月上席の舞台である。
出し物は落語・漫才から紙切りまで、盛り場で古くから上演されてきた大衆芸能「寄席」の再現である。
出演者は初めて見聞きする名前だった。前座の一也の落語「転失気」に始まり、トリは桂南喬の落語「ふぐ鍋」まで、9人の出演者で3時間の公演。料金はシルバー1100円である。
これまでテレビなどでは、お見受けしない面々。ところが予想以上に面白かった。寄席のツボを心得た演者ぶりなのだ。
柳家ろべえの落語「牛ほめ」はもう一つだったが、次の漫才・すず風にゃん子・金魚のそれは腹を抱えて笑った。プログラムでは、結構若くて可愛いコンビの写真で紹介されていたが、実は??年後の現在の姿。しかし芸は磨かれていたようだ。
続いて初音家左橋の落語「宮戸川」。ダーク・広和の手品は、小品ながら手先の捌きは見事だった。客席からは感嘆の声も聞こえる。
ベテラン柳家喜多八の落語「あくび指南」で仲入り。
紙きりの桃川忠は、会場を沸かせた。お客さんからの注文による「七五三」や「ジャイアンツ原監督の胴上げ」は、見事な鋏捌きで黒白の美を見せた。
桃月庵白酒は落語「ざるや」を軽く流し、太田家元九郎の津軽三味線に引き継ぐ。
浅草に住んで30年の芸人だそうだが、津軽弁を駆使した朴訥なしゃべりと、「アリラン」「コンドルは飛んでいく」やベンチャーズの曲等を、太棹で聞かしながら最後は「十三の砂山」。故郷の代表的な民謡で締めくくったのはさすが。
トリは桂南喬の落語「ふぐ鍋」。大ベテランらしい味のある語りで締めくくった。
昨日の上席は千秋楽。世田谷の生涯大学の高齢者と、若い大学生の野外研修で場内は満席。学生達は、ボールペン片手に「お笑い」のメモに必死だった。多分、このあとレポート提出が控えているのだろう。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
November 10, 2009
November 09, 2009
November 08, 2009

鹿児島帰省中にちょっと時間があったので、城山の麓にある「かごしま近代文学館」を訪ねた。
ここでは、先月から今月末まで「向田邦子展」が開催されている。
向田さんの生誕80年を記念して、かごしま近代文学館がプロデュースした特別企画展で、「彼女のすべて26のキーワード」が副題となっている。
向田さんは東京・世田谷の生まれだが、サラリーマンだった父親の転勤で小学校時代(10歳の頃)のおよそ2年を鹿児島市内で過ごした。
居宅も通った尋常小学校も、この文学館近くだったという縁もある。
彼女にとっては、ここでの生活が印象深かったようで、テレビやラジオドラマの中に鹿児島はたびたび登場している。そしてエッセイの中で、「鹿児島は自分にとって故郷もどき」と書く。
特別展示室には、ドラマの脚本や小説の原稿をはじめ、向田本人の肉声テープや「阿修羅のごとく」の構想メモ、それに器、書画、骨董など、新資料もふくめ450点がAからZまでのキーワードで並べられていた。
なかでも彼女が海外旅行をはじめ、様々な場で着用した衣服が圧巻。文章だけでなく向田さんのライフスタイルの魅力を伝えてくれる。

かごしま近代文学館の1階には常設展示として、向田さん他、海音寺潮五郎、林芙美子、椋鳩十、梅崎春生、島尾敏雄さんの業績や作品世界を紹介した「鹿児島ゆかりの6人の作家」コーナーがある。
この6人の作家のうち、林さんを除いた5人の方々とは現役時代仕事でお目にかかっている。コーナーではお一人おひとりの写真を見ながら、懐旧の感にひたった。
また2階には、有島武郎や一色次郎、吉井勇、山口誓子など鹿児島出身の文学者22人の業績や資料も展示されている。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
November 06, 2009
愛娘を、未成年の少年達に犯され殺された父親の復讐劇。
「最愛の人を奪われた時、あなたはどうしますか」
復讐では何も解決しないむなしい行為だと判っていながら、犯人を追う父親を通して、「法と正義」「命の意味」という重いテーマを描く。
東野圭吾の衝撃の問題作。'04年発表、これまで150万部のベストセラーとなった。「容疑者Xの貢献」('08)に次ぐ映画化である。
この作品は、「光市母子殺害事件」での元少年死刑判決と並んで、昨年の少年法改正にも大きな影響を与えた。
丁寧に描いている。徹底的に削ぎ落とした父親のセリフ、押えに押えた演出が光る。監督はプロデューサー・脚本家としても知られる松竹出身の益子昌一。「むずかしい恋」以来の2作目である。
撮影に中国の「レッドクリフ」のカメラマン、王敏を迎えたのも成功しているし、音楽はベテランの川井憲次が、自らキーボードを担当している。
しかしこの作品を、重厚なものにしたのは父親役の寺尾聡の演技である。たぶん彼以外に、この役に耐えられる役者はいまい。「半落ち」('06)の演技を思い出す。
「警察は市民を守るんじゃなく、法律を守るのか」と、悲痛な叫びを上げる若い刑事に竹野豊、コンビを組むベテラン刑事に伊東四朗。
菅平の民宿の経営者親子、山谷初男と酒井美紀の存在感が大きい。
作者自身「なぜこの小説を書こうと思ったかについては、ここで語らないことにする。じつは、自分でもよくわからないからだ。」と述べる。
寺尾が電話で吐露する最後の言葉に、作者すら答えられない「少年法」問題の難しさがにじみ出る。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
November 05, 2009
副題が「美食オリンピックへの道」。
2年に1度開催されるフランス料理の世界一を決める'07年「ボキューズ・ドール」に、スペイン代表として参加した若手シェフを追ったドキュメンタリー映画である。
これが本当に面白かった。スリリングでエキサイティング、スポーツのオリンピックでアストリートを追ったこれまでのどのドキュメンタリーより出来がいい。
まさに国を背負って「食文化」に賭けた、若者のヒューマン・ドキュメントであった。
「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」は、フランスのポール・ボキューズ(右の写真)の提唱によって22年前に始まった。
ボキューズは、1926年生まれ世界一有名なシェフと言われる三ツ星レストランの経営者。京料理や懐石を取り入れたフランス料理で、日本でも知られている。
料理コンクールの開催は2年に1度、会場はフランス・リヨン。その前には、アジア、アメリカなど地域予選もあり、それを突破した24ヵ国によって競われる。
コンクールでは、与えられたテーマの食材をそれぞれエレガントかつオリジナリティ溢れる調理方法で、制限時間内で料理しなければならない。
審査員のみならず、各国からの応援団の目前で、それも共通化した不慣れな厨房で作る。
味はもちろん、盛り付けや容器、2人のアシスタントとのコンビネーション、後片付けなど衛生面も審査の対象になるのだ。
'07年のテーマとなった食材は、肉料理に「フランス・ブレス産の鶏肉」、魚料理に「ノルエー産のオヒョウとタラバガニ」。付け合せや組み合わせは、それぞれのオリジナリティーとなる。
大会までのおよそ1年、来る日も来る日もテーマ食材を使った料理に挑戦、週に一度は国内のベテランシェフに試食してもらいアドバイスを貰う、というのが面白い。まさに国のメンツをかけての挑戦なのだ。
先輩シェフィたちからの厳しい批評に落ち込んだり、アシスタントとのチームワークの乱れなどハラハラドキドキ、まるでドラマの世界だ。

スペインチームの結果は別として、優勝は左の写真のフランス。日本も右の様な料理で6位と最優秀アイデンティティ賞を受賞した。
また今年の大会では日本は8位、次回は'11年1月25・26日に開催されるそうだ。
映画のラスト、母親の手料理が最も美味しいと手伝う息子のシェフが微笑ましい。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
November 04, 2009
November 03, 2009
(前号に続いて「DBJ産業ミニレポート」の概要)
レポートは、「消えた本格焼酎前線への対応策は、ブランド化と情報公開」(P7)と強調する。
「ブランドには米国型と欧州型の2種類がある。米国型は、商品のみに注目して効率を考えて広告を打つ。このやり方は、経済が成熟すると旗色は悪くなる」
「欧州型は、商品よりその背景にある伝統とか、企業理念、生産者の取り組みの姿勢、文化、地域との一貫性を大切にする」
「本格焼酎のブランド化は、欧州型である。それは黒豚など南九州の他の産品にも通ずる」
「ブランドのキーワードは一貫性である。たとえば地域の伝統文化との一貫性、商品企画や広告と売り場の一体感でもある」
「本格焼酎なら、生産者の思いを流通やユーザーが共有するという一貫性である」

「焼酎業界にとって必要なのは、情報の公開である。(これまで)酒販店で伝えていた情報を、ラベル等スーパーでも確認できる方法で、消費者に伝えなければならない」
「加工食品では、主原料の原産国表示義務が検討されている。甲類や混和焼酎では、原料アルコール輸入国(ブラジルやパキスタン)の表示が必要になるかもしれない」
「本格焼酎業界でも麦焼酎や黒糖焼酎では、外国産原料の表示義務が生じるが、それもバランスである」
「黒糖焼酎の場合、砂糖きび生産に対する所得保障の施策が出来れば、域内原料で十分賄える」
(私のふるさと南薩摩では、既に地元の芋を原料にしたものに限り「南薩摩本格いも焼酎」のラベルを貼って、他の焼酎と差別化している)
「総合的な政策によって、メーカーと消費者の情報量格差が縮まれば、焼酎前線は復活し本格焼酎業界は、再び活況に沸く」
「このような未来の展望が開けるまでは、相応の時間が必要だが、その間南九州の蔵元は、自らの製品や収益を分析し、企業戦略を構築して凌がなくてはならない」
(終り)
| Permalink
|
| TrackBack (0)
November 02, 2009
久し振りに鹿児島に帰省した。故郷の焼酎の蔵元を訪ねたり、友人知人たちと盃を酌み交わした。
話題の一つは、地場産業の「焼酎」の将来、それも本格焼酎市場の動きである。
DBJ(日本政策投資銀行)南九州支店で、先月公表された「産業ミニレポート」を手に入れた。
それには「失われた本格焼酎前線~甲乙混和へどう対応すべきか~とのタイトルが付けられている。
そして「南九州から全国に北上していた本格焼酎前線が突然消滅した」(P4)と ショッキングな分析がリポートされていた。
以下、その概要を報告しよう。
「酒類の消費減退が続くが、これまで堅調だった本格焼酎まで 様子がおかしい」
「その転機は2003年だった」
「常識的には、酒類の価格が下がれば消費が増えるのだが、本格焼酎だけはここ30年、実質価格が上昇しても消費量が増える例外的な商品だった」
「それは、南九州限定のの焼酎が評判となり、消費地域が域外(東京や大阪などの都市圏)に拡大していった、つまり焼酎前線の北上が続いたからである」
「焼酎前線の北上は、これまで安くて不味い酒との誤解があった焼酎を、飲んでみたら美味しかったと評価されたからだ。しかし(焼酎ブームが続き)市場が成熟すると、前線は消える」
「それはなぜか?2003年の小売の自由化の影響だと考えられる」
「酒類販売自由化によって、スーパーが焼酎を扱うようになる。その上、これまで酒販店が積極的に扱わなかった『甲乙混和焼酎』などが本格焼酎と並んで売られる」
「さらにスーパーでは、酒販店のような対面販売ではないので(商品に対する)情報量が低下する」
「そのため本格焼酎までもが、甲乙混和同様の『ただの安い酒』に見られ、消費者が離れていった」
(続 く)
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 31, 2009
現在興行成績はトップ、主人公と同世代の観客の支持を集めていると、配給会社の東宝関係者が話していた。
予告編を見てマンガチックな映画と少々敬遠していたが、まさにその通りコミックの映画化だった。
「賭博黙示録カイジ」「賭博破戒録カイジ」「賭博堕天録カイジ」と、'96年から「ヤングマガジン」に連載された福本伸行原作の人気コミックが原作である。
3シリーズ39巻の単行本は、累計1300万部売れているから知名度は高いのだろう。
話は、自堕落な日々を送るフリーターのカイジが、友人の借金の保証人になったため莫大な負債を抱えたところから始まる。
そこで奇想天外ななゲームに挑んで、「人生の負け組」からの脱却を図ろうというもの。
原作に書かれた「限定ジャンケン」と「鉄骨渡り」「Eカード」の勝負が、命を賭けた逆転ゲームとなる。
カイジ役は藤原竜也。孤独な天才を演じた「デスノート」('07)とは、全く違うキャラクターを演ずるし、共演した松山ケンイチも負け組の若者のひとりとして出演している。

異色なのは、超高金利を取る闇金の社長役・天海祐希。原作は男性だが、映画では紅一点として迫力ある演技を見せる。
そしてもう一人、香川照之。闇の集団の代貸として、カイジとの究極のゲームに挑む。
他に山本太郎、光石研、松尾スズキ、佐藤慶。
マンガチックと書いたが、映画は「派遣切り」や「ワーキングプア」、「蟹工船」問題など労働者の奴隷的処遇や格差社会の拡大など、現在の社会状況や若者たちの鬱積を描きながら、「人生は逆転できるのだ」と若者達を応援している。
日本テレビのディレクター、「ごくせん」シリーズの佐藤東弥監督と、「デトロイト・メタル・シティ」('09)の脚本家・大森美香の狙いも、若い観客にはストレートに届く。
39巻シリーズというスケールの大きい原作を130分に纏めたのだから、原作を読んでいる人は不満があるかも知れない。
しかし初めて「カイジ」を知ったものとしては、それなりに緊張して見る事ができた。
ご近所の晴海界隈がロケ現場の一つだったようで、見慣れた光景を楽しんだ。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 30, 2009
映画より3倍近いフレーム 数のHDカメラで撮った、臨場感たっぷりの舞台。数十本のマイクで収録した素材を、リアルに再現した音響。デジタル・プロジェクターによる大画面。
「シネマ歌舞伎」が今アンコール上映されている。
先日東劇で見たのが「ふるあめりかに袖はぬらさじ」。2年前の暮れに、歌舞伎座で初上演されたものを、映像化した作品である。
歌舞伎座では見損なったので、今回は早くから予約しておいた。
原作は有吉佐和子の同名戯曲。1972(昭和47)年に名古屋中日劇場で文学座が初演した。
主人公の芸者「お園」を、杉村春子が演じて当たり役となった有名な舞台だが、16年後坂東玉三郎がお園役を受け継いで8回公演、2年前に歌舞伎の演目として初登場した。
粗筋は、幕末横浜の遊郭「岩亀楼」を舞台にした、「攘夷女郎」誕生逸話。その女郎を妹のように面倒を見た芸者お園の目を通し、維新前夜の時代に翻弄された女の生き様を描いたもの。
「異人を嫌って、父祖伝来の懐剣で喉を突いたあっぱれ烈婦!辞世の句は『露をだに厭う大和の女郎花 ふるあめりかに袖はにらさじ』」
恋焦がれた通詞とは結ばれぬ事を悟った病弱の花魁が、カミソリで喉を切って死んだ。それを攘夷派が利用して、マスコミ(瓦版)でキャンペーンしたのが「攘夷女郎」の真実。
それを商売に利用した岩亀楼の主人。嘘と知りながらも、第一発見者として「あっぱれ烈婦」に虚像化していく芸者お園。
その嘘がバレた時の開き直りと花魁の気持ちを想う切なさを、玉三郎が見事に演ずるところが見どころだった。
休憩を挟んでの3時間という大芝居だったが、中村七之助の花魁と中村獅童の通詞の儚い恋。
異人の金持ち・坂東弥十郎と唐人口(異人専用の遊女)中村福助ほか遊女役の猿之助一門の若手役者とのユーモアある絡み。
楼の主人・中村勘三郎の商売気たっぷりの芝居・・・と飽きさせないストーリーは、さすが有吉佐和子である。
過激派浪士たちに市川海老蔵や河原崎権十郎らが出演したほか、5年後嘘がばれるきっかけとなった攘夷原理派!の水戸や長州の侍たちに、中村勘太郎や坂東三津五郎、中村橋之助、市川段治朗と芸達者たちが顔を並べている。
今年、菊池寛賞を受賞した坂東玉三郎の代表作の一つと言えよう。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 29, 2009
「私は姉のドナーとして生まれてきた」。映画は妹のショッキングなナレーションから始まる。
そして次のシーン、妹は「姉への臓器提供を拒んで、両親を訴える」ため、著名な弁護士事務所を訊ねる。
姉16歳、妹11歳、その間に男の兄弟もいる。
白血病の姉のドナーとなるべく、遺伝子操作によって生まれた妹が、大好きな姉の命を奪うかもしれない臓器提供拒否を決断したのはなぜか。
アメリカの女流作家ジョディ・ビゴーのベストセラー小説を原作に、「きみに読む物語」('05)のニック・カサヴェテス監督が映画化した。
家族のあり方や命の尊厳を問いかけるシリアスなテーマだが、描写は笑顔あふれる繊細で優しいタッチ。姉の「死」を目前にした家族の強い絆が、見る人の心を愛で満たしてくれる。
俳優でもあるカサヴェテスは、ストリー性の高い作品を作る監督として知られている。
初期の頃の作品「ジョンQ~最後の決断」('02)でも、「子供の命のためには、どんな事でもする親」の姿を描いた。
彼自身が、実生活で心臓病を抱えた娘を育てている事も、背景にはある。
主役の妹は、天才子役といわれるアビゲイル・ブレスリン。「リトル・ミス・サンシャイン」('08)でアカデミー賞にノミネイトされた彼女である。
そしてもう一人の主役が母親、キャメロン・ディアスが15年のキャリアの中で始めて演じた。
全てを投げ打っても、また親のエゴイズムと言われても、娘の命を必死に守ろうとする母親、抗がん剤で髪の毛の無くなった娘のため金髪を切り落とすなど、体当たりの演技を見せる。
髪も眉の剃って白血病の姉を演じたのは、テレビで活躍するソフィア・ヴァジリーヴァ。父親ジェイソン・パトリック(「告発のとき」'08)、弟エヴァン・エリングソン(「硫黄島からの手紙」'06)。
そして妹の弁護を買って出た弁護士は、アレック・ボールドウイン(「グッドシェパード」'07)という配役である。
「癌になって良かった」と妹に語る姉。この言葉の中に、本当の幸せとは何かという、この作品の主題が凝縮される。
涙を流した後、爽やかな気持ちにさせてくれるラストがいい。
エンドタイトルのバックに「Life is Beautiful」の歌が流れる。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 28, 2009
October 27, 2009
今朝6時の富士山、昨夜の雪で冠雪完了。
台風20号も未明に東海上を通過、雲ひとつ無い秋晴れとなった。
幸いにして今年は、関東に接近した台風は少ない。今月の8日に続いて三つ目である。太平洋高気圧の日本列島への張り出しが弱いせいだという。
ただ発生数は平年並みで、東南アジアや台湾での被害が大きかった。
コンパクト・デジカメで撮った写真を二葉。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 26, 2009
主役は某出版社の凄腕女編集長。「アラフオーバリキャリ」の彼女はカナダ人、部下からは「悪魔」と呼ばれている。
もう一人の主役は、悪魔にコキ使われる草食系男子のアシスタント。編集者昇格のためにはと、耐えに耐えている。
労働ビザの申請ミスで国外退去を命じられた「悪魔」、思いついたのが部下であるアメリカ人との「偽装結婚」。「NOと言ったらクビよ!」、まさに上司命令である。
そして「婿」予定者の故郷アラスカへと婚約報告旅行。大人のためのロマンチック・コメディーは、ここから始まる。
原題は「THE PROPOSAL」。それを邦題はストレートに変えた。「あなたは私の婿になる」と。判りやすいが微妙にニュアンスは違う。
配給会社のディズニー・ジャパンは、いまや史上空前の「婚活ブーム」に目をつけた。この作品こそ「婚活必勝マニュアル」と、宣伝に打って出たのだ。
だから映画館は、「バリキャリ」女子の行列となった。
結末は誰でも想像できる映画だが、楽しく見せてくれるのは主役のサンドラ・ブロックのキャリア。正面からのオールヌードまで見せる体当たり演技が、未婚のアラフォーの孤独を醸し出す。
確か今年で45歳の既婚の彼女、「悪魔」から「天使」へと変わっていく様は若々しい。
お相手はライアン・レイノルズ、カナダ出身の33歳。スカーレット・ヨハンソンの彼氏として有名だが、最近は「ウルヴァリンX-MEN」など役者としての実力も身につけてきた。
ほか婿の母親、メアリー・スティーンバージェン(「ブレイブワン」'07)。父親、クレイグ・ネルソン(「幸せのポートレート」'06)。祖母役87歳のベテラン、ベティ・ホワイト。初恋の女性、マリン・アッカーマン(「ウオッチメン」'09)。
監督は、「幸せになるための27のドレス」('08)のアン・フレッチャー。
ダンサーとしても振付師としても有名なバリキャリの彼女は、43歳。既婚か独身かは知らない。
サンドラ・ブロックも製作総指揮として、女流監督を支えている。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 24, 2009
歌舞伎座さよなら公演、今月は「芸術祭大歌舞伎」。
昼の部は、歌舞伎十八番「毛抜」から長唄舞踏劇「蜘蛛の拍子舞」、上方和事の「河庄」、音羽屋ゆかりの「音羽嶽だんまり」の4演目。
夜の部は、通し狂言で「義経千本桜」の4幕という豪華版である。
歌舞伎座四階席で、最後の一幕を楽しむ「ひとかむ会」が鑑賞したのは「義経千本桜」の最後の幕「川連法眼館」である。
もともとこの演目は、二世竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作の人形浄瑠璃。五段構成で、その各段が「口」「中」「切」の3場面から成り立っている。
その四段目の切が「川連法眼館」で、俗に「四(し)の切(きり)」と呼ばれてきた。
昔から大和地方に残る伝説を下敷きに、親狐を慕う源九郎狐の報恩を物語にしている。
親狐を初音鼓の皮にされた子狐が、奥州にいる佐藤忠信に化け静御前を守りながら、義経の隠れ住む吉野山の川連法眼の館にたどり着く。そこには既に傷も癒えた忠信がいる・・・・・・・。
子狐の親を思う心情に感動した義経は、その初音鼓を狐に与える。自分も父・義朝の非業の死や母・常盤との別れを思い出したのだ。
そして狐は恩返しとして、夜襲をかけた鎌倉方を翻弄する、というストーリー。
見どころは、一人の役者が本物の忠信と狐忠信を演じ分ける場面。
独特の「狐言葉」や手つきなど、今回は五代目菊五郎が「音羽屋型」の演出で見せた。
時蔵の源義経、菊之助の静御前も魅力たっぷり。川連法眼は彦三郎。
なお「ひとまく会」は、今回が最終回。20年も続いた会だが、歌舞伎座も半年後は壊される。200回という今回を一応の区切りとした。
混乱の中での散会やいつの間にか胡散霧消してしまう会が多い中で、惜しまれながら幕を閉じるのは、さすが「歌舞伎愛好者」たちの粋な会らしいと、自賛している。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 23, 2009


奥松島の宮戸島右岸は「嵯峨渓」と呼ばれ、岩手の猊鼻渓、大分の耶馬溪t並ぶ日本三大渓の一つ・・・・と地元ではPRしている。
ただ、ここだけは渓谷ではなくリアス式の岩壁と海蝕された島々の断崖美なのだ。


日本三景の松島湾は女性的な景観だが、反対側の嵯峨渓は男性的なパノラマが楽しめる。
往復40分のクルージングは、島の直下まで近づいて自然の造形、岩肌の白黒文様を見る事が出来る。


帰途面白い形の島々が見えた。花魁島と言う名の島だそうだが、その由来については訊ねるのを忘れた。
今回の旅は、なぜかどこでも「海蝕」による穴空きの島や断崖に出会っている。


旅の終点は、松島・瑞巌寺山内にある円通院。
江戸城内で不審の死を遂げた、伊達政宗嫡孫の光宗の菩提寺である。
院内にある光宗の霊屋「三慧殿」(写真左)は、1646(正保3)年に建てられた国の重要文化財。
撮影は出来なかったが、中に安置されている厨子には、当時の日本には無かった水仙や洋バラ、アカンサスやトランプのダイヤ・クローバー・ハート・スペードの模様が描かれている。
また十字架の文様もあって、ローマから持ち帰った支倉常長の西洋文化の影響を受けている。
鎖国制度を執る幕府の目を逃れるため、3世紀以上に渉って三慧殿の扉は閉ざされていた。

境内には、禅林らしい小堀遠州作の石庭「天の庭」「地の庭」のほか、支倉が持ち帰ったバラやアカンサスをモチーフとしたバロック風の庭園もあり、円通院は「バラ寺」とも呼ばれている。
また本堂の「大悲亭」(写真下)は、寺院にしては珍しい寄棟造萱葺で、愛息の死を哀しんだ父・二代藩主忠宗が江戸藩邸の納涼のを解体移築したものである。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 22, 2009
October 21, 2009
October 20, 2009
October 19, 2009

今年は「太宰治 生誕100年」。様々な催しが開かれているが、映画では彼の青春小説の代表作「パンドラの匣」と「ヴィヨンの妻」が同時公開されている。
ヴィヨンとは、高い学識を持ちながらも無頼放蕩を繰り返し逃亡・入獄・放浪の生活を送った、フランス中世後期の詩人の名前。
その様な破滅型の作家と妻の夫婦愛を、細やかな心理描写とユーモアで描いたのがこの原作で、「斜陽」「人間失格」と並ぶ太宰の代表作といわれている。
太宰はこの作品で、ボロボロになった男(己自身)を大きな愛で包み込む女性の崇高な姿に、憧れ求めていた女=妻を見出そうとしたのだ。
監督の根岸吉太郎(「サイドカーに犬」'07)と脚本・田中陽造(「居酒屋ゆうれい」'94)は、短編小説「ヴィヨンの妻」をベースに、同じ短編の「思い出」「灯篭」「きりぎりす」「桜桃」など、太宰作品のエッセンスを融合させてオリジナル映画を作り上げた。
だから副題に「桜桃とタンポポ」と付けた。桜桃はその男であり、タンポポは女である。
田中は初めからヴィヨンの妻に松たか子をイメージして書いた。女と金にだらしない夫をけなげに支えるようで、全てが計算ずくというしたたかな女の一面を、松の演技に託した。
相手役、放蕩作家は浅野忠信、これは適役である。太宰を髣髴させる青白きインテリ、「死にたい,死にたい」と言いながら女の慰めを求める男。
またこのどうしようもない夫婦の面倒を見る居酒屋の夫婦、伊武雅刀と室井滋。
妻の初恋の男・堤眞一、妻に惚れた男・妻夫木聡、作家と心中未遂の愛人・広末涼子とキャストは揃っている。
観客は、放蕩作家を太宰治自身にオーバーラップさせて観る。
1930年、カフェの女と鎌倉の腰越の海に飛び込んだ一回目の心中。女だけが死んだ。
1937年、内縁の妻とカルモチンを飲んだ2回目。これも未遂。
1948年、玉川上水に愛人と入水自殺。それが「桜桃忌」、6月19日である。
映画でも心中未遂事件が描かれている。しかし男はなぜ破滅を求めるのか、なぜ放蕩を繰り返すのか、観客の求める答えは稀薄だ。そこには、夫たる作家の自己弁明、自己弁護のシーンしかない。
館内のほとんどを占める中年女性観客は、それに冷笑で応えてた。そこに連れ合いの姿をみたのかも知れない。
娘・津島佑子と大田治子は作家。「ヴィヨンの妻」美知子は、太宰の死後およそ50年、1997年まで健在だった。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 18, 2009
October 16, 2009
「父はハワイのカメハメハ大王の末裔。母はエリザベス女王の妹の夫の従妹。結婚すれば米軍から5000万円の支度金・・・」と、甘い言葉でささやく米空軍特殊部隊ファントムのパイロット。
左のハンサムな男が、そのジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐である。
クヒオの本業は結婚詐欺師。荒唐無稽な口説き文句で、女性からお金と体と心を奪った男。
北海道出身中卒、既に子持ちの一家を抱えながら、結婚をエサにA子(51歳)からは4500万、B子(25歳)からは850万騙し取った上に妊娠させた。
余罪を含めると1億以上も被害のあった、80年代後半から90年代にかけて起こったホントの事件である。
事件を追った吉田和正のノンフィクションを原作に、CM業界の鬼才吉田大八が映画化したのがこの作品。
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ]('07)で長編デビューし、カンヌ国際映画祭批評家週間に招待された彼は、この事件を単なる詐欺師と被害者の物語とは捉えず、そこに孤独と愛の意味を問うた。
騙されたと判っているのに魅かれていく女、バレタと判っていながらも逃れられない男。
吉田は、滑稽だけどどこかチャーミングな結婚詐欺師と女の間に不可思議な人間世界を見たのだ。
主人公クヒオ大佐を演ずるのは堺雅人(「南極料理人」'09)、片言の日本語でハワイ系アメリカ人に化ける。
騙される女は、A子・松雪泰子(「余命」'09)とB子・満島ひかり(「愛のむきだし」'09)、騙されそうで逆に騙そうとしたクラブの女・中村優子。
他に新井浩文(「剱岳 点の記」'09)、安藤サクラ(「愛のむきだし」'09)。
吉田監督は、実在の結婚詐欺師物語の今日性を問おうとした。そこで、フィクションとして外務省高官(内野聖陽)を登場させる。
事件のあったのが湾岸戦争の頃。その時日本(女)は、アメリカ(男)に戦費の分担金として135億ドルを搾り取られた。
兵士の命を供給したものの、アメリカが負担した戦費は40億、日本と同じく兵士を送らなかったドイツでさえ70億。しかも戦後、日本はどの国からも感謝されなかった。

なぜクヒオは、アメリカ軍人に憧れたのだろうか。なぜ女性達はアメリカ軍人にメロメロになったのだろうか。
鳩山の「対等な関係」発言にアメリカが不快感を示す様に、今も続く日・米の構図を吉田はクヒオにオーバーラップさせて描いて見せた。
それが作品として成功したかどうかは、問わない。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 15, 2009
一流の役者が巨匠(監督)なりうるか?クリント・イーストウドは別格として、日本でも北野武(ビート・タケシ)やマキノ雅彦(津川雅彦)がそれに挑戦している。
最近は、「山形スクリーム」の竹中直人など中堅役者のそれも目立ってきた。この作品もそのひとつ。
岸谷五朗、演技派俳優として知られているが監督デビューである。ただ彼の場合、演劇ユニット「地球ゴージャス」を立ち上げて演出・脚本を担当しているので、新人監督扱いは失礼だろう。それでもやはり、肩に力が入ってしまった作品になった。

結婚したい女と死にたい女がくり広げる、逃亡劇と奇妙な友情を描いたノンストップ・エンタテインメント。
子供時代からドジと呼ばれた25歳、「スイングガールズ」('04)女優になった上野樹里が演ずる。
男運のないアラサーは、「蝉しぐれ」('05)の木村佳乃と2人が主役になる。
彼女たちに絡む男性軍は、岸谷の盟友・寺脇康文とEXILEの眞木大輔。寺脇は「殺された」大家さん、眞木は樹里の結婚相手だが実はフェティシズム男。
ちょい役なのに北村一輝や高島礼子を持ってきたのは、役者監督だからこそ。
TBSにMBS、CBC、RKBのネットワーク、博報堂やWOWWOWも加わった製作体制だが、アミューズが中心。所属の若手俳優たちを総動員した他、福山雅治に主題歌を書かせる。
導入部が凝り過ぎて興ざめした観客も多かった様だが、途中からはそれなりに面白くなって、吹き出す声も聞こえた。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 14, 2009
週刊朝日MOOK版「いい歯医者」が、ベストセラーだそうだ。361のQ&Aを並べ、歯医者選択の参考資料とした。
歯の治療は結構お金が掛かるし、その額もピンからキリまであって良く判らない。また同じ症状でも、治療法に差異がある。
こんな事が、売れてる理由なのだろう。
こちらも7月に歯が割れてしまい、久々に歯医者に通った。直前にこの「本」を知り、本屋で立ち読みしてから 駆け込んだ。
神経を抜いた歯や詰め物の入った歯は割れやすいそうだが、小生は硬いものを噛んでカクッと縦に割れた。
左上顎奥から2番目、第一大臼歯である。年相応に脆くなってきたのだろう。
治療法は大きく分けると2種、抜いてしまうかそのままセメントでくっつけるかだ。
くっつける方法は「クラウンレングスニング」(歯冠延長術)、最初にそれを希望したがCTスキャンの結果完全に二つに割れているため、抜歯しかないとの説明。覚悟を決めた。
抜歯後の処置には三つの方法がある。入れ歯を作って留め金で押える方法、健全な両方の歯を削って土台を作りブリッジにしてしまう、そして今流行の「インプラント」である。
「インプラント」は、人工の歯根を直接骨に埋め込んで、その上に歯を乗せる方法だ。治療期間は半年以上、治療代も20~60万円かかり医療保険は利かない。また入れる人口歯セラミッククラウンは5~7万円だそうだ。
多くの歯科医はそれを勧める様だが、長くて残り10数年の身にとっては勿体無い。
結局、最も安いブリッジをお願いした。
まず麻酔をかけて割れた歯を抜き、神経を切り取る。その傷が治ったあと、隣の歯を削る。これも麻酔をかけて神経をカットする。両方2本だから日数も掛かる。傷が治まったあと土台の型採り、そして割れた歯の代わりの人工歯作り。
7月6日治療開始、昨日完了。のべ16回通い、治療費総計は3割負担の3万670円だった。
同じマンション内の診療所だったので、交通費が掛からなかったのが幸いだった。
20年ほど前から、厚生労働省と歯科医師会では「8020」運動を進めている。80歳になっても20本以上の永久歯を確保しようという運動で、来年には高齢者の20%が「8020」を維持との目標を立てている。
こちらは永久歯32本のうち「親知らず」を4本抜いているので28本、今回1本割ったので27本。なんとか80歳まで現行維持したいものだ。
| Permalink
|
| TrackBack (1)
October 13, 2009
舞台は1936年のフランス・パリ郊外の下町。不況で閉鎖となったミュージック・ホール(シャンソニア劇場)を、失業した裏方達が自主運営するお話
。
支配人となった主人公と別離させられた息子、売れない寄席芸人だが仲間と共に劇場再建にかける男、オーディションを受けた美人歌手と恋に落ちた照明係り、もはや失われた風景と風俗と人情が描かれる。
原題が「Faubourg 36」とあるように、1936年という時代がもう一つの主役である。
世界大恐慌から7年、不況の中でフランスでは初めての人民戦線内閣成立。隣国ドイツではヒットラー・ナチスが権力を完全に掌握、スペインでは内戦が起こる。
フランス国内においてもファッシズム勢力が台頭、翌年に日・独・伊防共協定成立。そんな時代だった。
不況、失業、労働者階級の意識の目覚め、右翼の台頭、やがて戦争が世界中を巻き込んでいく。なぜか現代とも共通する社会状況が、作品の背景にある。
製作したのは名プロデューサ、ジャック・ペランとその仲間達。「ニュー・シネマ・パラダイス」('89)「WATARIDORI」('01)「コーラス」('04)と劇映画からドキュメンタリ-まで幅広く製作するほか、若い頃にはベネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞するなど名優としても知られている。
仲間達は「コーラス」に続いて監督・脚本を担当した甥のクリストフ・バラティエに、クリント・イーストウッドの最近作のほとんどを撮っているカメラマンのトム・スターン。
劇中歌はフランスの大御所作詞家で、グレコやジルベール・ベコーのシャンソンを書いているフランク・トマと作曲家ラインハルト・ワグナーノ「コーラス」コンビ。
配役も「コーラス」に出演した名優ジェラール・ジュニョが支配人役、その息子役も「コーラス」で人気を集めた子役マクサンス・ペランという組み合わせ。そのマクサンスは、製作者ペランの息子、監督の従弟という間柄だ。
そして寄席芸人役のカド・メラッドも「コーラス」仲間である。
今回の作品で、新しいスターも誕生した。映画出演2作目のノラ・アルネゼデールが、ミュージック・ホールの再建を助けた歌手として登場、その歌唱力が高く評価されフランス国内の数々の新人賞を受賞している。
愛と涙の人間模様、時代をきっちりと押えたミュージカルである。
| Permalink
|
| TrackBack (1)
October 12, 2009
今年のベルリン国際映画祭で、国際批評家連盟賞と独創的な作品に贈られるカリガリ賞とW受賞した「愛のむきだし」。
4時間という強烈なパワーで魅せた園子温監督が、ガラリと作風を変えて撮った映画が「ちゃんと伝える」。
余命わずかと宣告された父と息子の絆を描くもので、誰にでも訪れる最後の時間を愛する者に、どう「ちゃんと伝えられるか」を描くヒューマン・ドラマである。
出演者たちの演技がいい。
ガンに侵された父を見舞ううちに、自らもガンと宣告された息子をEXILEのAKIRAが演ずる。「山形スクリーム」('09)にも顔無しで出演した、彼の初めての主演作品。素朴なキャラクターだけに、AKIRAの不器用さが反って生きている。
父親役の奥田瑛二と母親の高橋惠子は大ベテランだから言う事無いが、恋人役の伊藤歩は素晴らしかった。
AKIRAが彼女に「ちゃんと伝える」最後のシーンのクローズアップは、感動的でさえある。
園監督が昨年実父の死に会い、「これまでと違う日本的な作品を撮ろう」と考えた。しかし人間の死を描く事で、「お涙頂戴」化する事嫌って主人公も余命幾許とない存在にした。
この設定をご都合主義と評する向きもあるが、親子が同じ時期に同じガンに罹り「オヤジ、先に逝ってくれ」と1カ月に父親の後を追った身内を持つので、他人事とは思えない。
前作「愛のむきだし」では安藤サクラを使い、今回は父親の奥田瑛二。
監督にとっては、同郷の先輩に出演してもらい、故郷を舞台にロケ。「ちゃんと伝える」場面は、実家で撮影するなど、まさに亡き父に捧げた作品となった。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 10, 2009
前々号の「白日夢」とは対照的、下町を舞台に懸命に生きる人々の姿を描く「ハートフルムービー」。
今年50歳になる緒方明監督が、当時20代だった入江喜和のコミックを原作に、31歳の女性をヒロインとして撮った。
台風で「ひとまく会」仲間との「下町グルメ散策」が中止になったので、有楽町に下町の味を求めた。
ヒロイン(小西真奈美)は、バツイチのシングルマザー。仕事もお金もナシ、特技は娘の「のんちゃん」(佐々木りお)のために作る「のり弁」だけ。そこで小料理屋に弟子入りして、弁当屋を始めるというシンプルなお話。
緒方監督の長編3作目、初めて原作ものを手がけた。デビュー作「独立少年合唱団]('00)は、ベルリン国際映画祭で新人賞。2作目の「いつか読書する日」('05)もモントリオール世界映画祭で入賞するなど、その腕は確か。
「アラサー」の彼女達の幼稚さを、ちゃんと叱っておこうと、岸部一徳の小料理屋の大将に説教させる。
ストーカー紛いのダメ元亭主(岡田義徳)に初恋の写真屋(村上淳)、同じバツイチの昔の同級生(山口沙弥加)としっかり者の下町の母さん(倍賞美津子)がからんで、テンポのある作品となった。

「のり弁」だけでなく、次々と登場するお惣菜が美味しそう。
「サバの味噌煮」に「鳥の唐揚」、「肉じゃが」「がんも」「ふろふき大根」「厚焼きたまご」「ねこめしおむすび」「みそおむすび」・・・・。
映画「かもめ食堂」「めがね」を担当したフードスタイリスト飯島奈美の手作りである。
舞台となったのは墨田区京島の曳舟駅界隈。こちらの「下町グルメ散策」の予定は、向島から荒川を渡って寅さんのふるさとまでだった。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 09, 2009
October 08, 2009
谷崎潤一郎原作の映画「白日夢(はくじつむ)」が、三原橋・名画座の「銀座シネパトス」で上映されている。
夢とも現実ともつかない妄想に悩まされる男と、男を翻弄する美女。歯科医がからんで官能の世界が展開する。
監督は「たまもの」('04)でピンク大賞監督賞・作品賞を受賞したいまおかしんじ と愛染恭子。ドラマ部分をいまおかが、濡れ場パートを愛染が演出する。
出演は西条美咲、大坂俊介、小島加奈子、鳥肌実。


谷崎の「白日夢」は、これが4本目のリメイクである。
1964年武智鉄二が脚本・監督、路加奈子、石浜朗、花川蝶十郎で製作した作品は、エロチシズム溢れる作品だった。
警視庁対谷崎・武智のワイセツ論争を思い出す。
1981年のリメイク版は、武智監督が愛染恭子と佐藤慶を使った、映画史上初めての「本番映画」として話題を呼んだ。
歯科病院の診療台の上で繰り広げられるドクトル(佐藤)と患者(愛染)の濃厚なセックス。麻酔で朦朧としている隣の青年の目に映ったのは、妄想か現実か?
そこには、歌舞伎の様式も取り入れた「武智美学」があった。
1987年の「パート2」は、ほとんど話題にならなかった。巷には「本番ビデオ」があふれ、「ワイセツの基準」も大きく変わってしまったからだ。
その翌年、武智は失意のなかで世を去る。享年76歳だった。
そして今回は、「本番映画」から「妄想映画」へと視点を移し、観客に「罪の意識」を植え付けようとした。
作品は原作から完全に離れ、「夢」の世界から「妄想」によって起した「殺人」という現実で終わっているが、そこにはもう「エロチシズム」も「ワイセツ」も存在していなかった。
ギリギリのせめぎ合いの中で「性表現」のタブーを乗り越えようとした、'60年代の「ロマンポルノ」などに比べると、そのエネルギーの脆弱さが目に付く。
銀座シネパトスの隣のスクリーンでは、「狂走情死考」「秘花」「女学生ゲリラ」など若松プロの「成人映画」が上映中である。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 07, 2009
自由と素晴らしい人生が待つ国「アメリカ」、その夢の国をめざしてやってきた1100万の不法滞在者。
彼等を追うのはI・C・E=移民税関捜査局。
ロサンゼルスを舞台に、特別捜査官(ハリソン・フォード)が迫ったアメリカの「正義」とは何だったのか。
移民の国アメリカの「正義のゆくえ」を描いた、群像ドラマである。
息子を連れて、国境を密かに潜ったメキシコの若い女、アリシー・ブラガ(「アイ・アム・レジェント」'07)。
ニセ・ユダヤ教ラビに扮し、グリーン・カードを狙う南アフリカからのミュージシャン、ジム・スタージェス(「ブーリン家の姉妹」'08)。
観光ビザで入国し、体を張ってグリーン・カードを求めるオーストラリアの女優の卵、アリス・イヴ。
イスラム教徒の移民で、過激派として強制送還される女子高校生、サマー・ビジル。
仲間に誘われてコンビニ強盗となった韓国移民の高校生、ジャスティン・チョン。
母国の「掟」によって家族に殺されたイラン系アメリカ人の女、メロディ・カザエ。
そして移民たちの人権を守ろうとする弁護士、アシュレイ・ジャッド(「五線譜のラブレター」'04)と、夫で不法滞在者を食い物にする移民判定官、レイ・リオッタ(「ダウト」'05)が絡む。
ハリソン・フォードの部下でイラン移民出身ICE捜査官は、クリフ・カーティス(「ダイ・ハード」'07)。
監督は、自らグリーン・カード取得に奔走した南アフリカ出身のウェイン・クラマー(「ワイルド・バレット」)'06)。
映画は、9.11後のアメリカの現実を曝け出す。
差別、偏見、不寛容、利己的な愛国主義、排他性、妄執・・・・、自由の国、夢の国の現実である。
星条旗のもと、市民権譲与の「帰化式」に流れる「国歌」がむなしい。
原題は「Crossinng Over」。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 06, 2009
昼下がりのニューヨークで、地下鉄123号車がハイジャックされる。切り離された1両に閉じ込められた人質は19人。要求はNY市長に1000万㌦、それも59分以内に。1分遅れると、一人ずつ殺すと。

たまたま主犯の男(ジョン・トラボルタ)から無線を受けたのが、運航係の中年男(デンゼル・ワシントン)。
ここから緊張感漲る2人の男の交渉が始まる。
原作は、犯罪小説の人気作家ジョン・ゴーディが1973年に書いたベストセラー。翌年ジョセフ・サージェント監督が映画化して大当たりした。
ワシントンの役をウオルター・マッソー、トラボルタをロバート・ショウが演じた。
今回のリメイク版は、アクション映画の名匠と言われるイギリスのトニー・スコットが監督した。
前作と違い、ハイジャック犯と交渉する役を警官から冴えない男に変えたが、これはワシントンの提案だった。
スコット監督はこれまでも、「クリムゾン・タイド」('95)「マイ・ボディガード」('04)「デジャブ]('06)と3本の作品でワシントンと組んでいるが、ワシントンを単純なスーパーヒローにはせず、存在感のある男くさい人物として描いている。
クライム・サスペンスを盛り上げるのが、トビアス・シュリッスラーの鋭い映像感覚である。ドイツ人のカメラマンが、ストップモーションを多用し、ニューヨークの街を独自の空気で捉える。
そして2大スターの対決である。
現実離れしたSFやファンタジー映画全盛のハリウッドが、久し振りに本物のエンターテインメント映画を作った。
3年前に93歳で亡くなった原作者のゴーディも、墓の下で喜んでいるに違いない。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 05, 2009


先週末、久し振りに大学時代の旧友たちと黒瀬で「芋焼酎」を酌み交わした。
この時話題になったのが、「焼酎ブーム」の推移。
そろそろブームも終焉したか、との話も出たがデータから見ると、まだまだ伸びているようだ。
帝国データバンクがまとめた全国の焼酎・泡盛の’08年度の売上高ランキングによると、上位50社の売上高合計は前年比3.8%増の3471億円と2年連続プラス。
この数字は’04年の焼酎ブーム時を上回り、過去最高となった。特に前年3位だった宮崎の「霧島」(芋)が23.2%増で2位、ほか4社が20%を超えている。
1位は麦焼酎「いいちこ」(大分)。6年連続トップだが売上げは毎年減少、麦やソバから芋への移行は相変わらず続いている。3位は芋焼酎の「さつま白波」だった。
今回のデータの特徴は、19位に入った沖縄の「久米仙」など沖縄の泡盛がベスト50のなかで5社を占め、若い女性の間での「泡盛ブーム」を裏付けている。
県別では芋焼酎主力の鹿児島が、50社中24社を占め連続首位。2位は麦焼酎の大分、3位は芋・ソバ・麦の宮崎と順位は変わらない。

薩摩本格焼酎でベスト50にランクされた銘柄は、「さつま白波」(3位)「海童」(6)「富乃宝山」(8)「桜島」(10)「伊佐錦」(11)「さつま小鶴」(12)「わか松」(13)「田苑」(16)「島美人」(17)「さつま五代」(21)他。
偽造米問題で、製品回収や風評被害を受けた「宝山」が頑張っているのがうれしい。蔵元は、高校の後輩である。
焼酎バー「黒瀬」には、ランク入りした銘柄全てが揃っているが、先週末には「さつま揚げ」を肴に、「島美人」と「桜島」を味わった。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 04, 2009
日本で始めて、近代オフィスビル街として建設された丸の内。
馬場先通りの左右に並ぶ赤レンガのオフィスビル街は、「一丁倫敦」と呼ばれた。

その一丁倫敦の最初のビルが「三菱一号館」。
日本近代建築の父と言われるイギリス人ジョサイア・コンドルによる設計で、1894(明治27)年に竣工。
レンガ造地上3階地下1階の縦割長屋は、イギリス・ヴィクトリア時代のクイーンアンスタイルを装う。
当初の建物は40年ほど前に取り壊されたが、先月復元工事が完成し、創建当時の姿を見せた。

復元は10年前から進められている、三菱地所による「丸の内再構築事業」プロジェクトの一環。
丸ビルや新丸ビルの最開発などに続いて、八重洲ビル・古河ビル・三菱商事ビルを取り壊し、三菱一号館と丸の内パークビルを建築した。

二つの建物の間には、緑豊かな広場も完成。オープンカフェなど、まさに都会のオアシス、夜にはガス灯も燈される。
三菱一号館は、来年4月から美術館としてスタートし、三菱グループが所蔵するフランスの画家アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレックのポスターやリトグラフを常設展示する他、企画展も開催する事にしている。
出光美術館についで、丸の内に常設の美術館が誕生するのだ。
現在1号館ではオープンを記念して、「一丁倫敦と丸の内スタイル」展が開かれている。
明治維新後、江戸城周囲の武家屋敷は壊され新政府の所有に。23年後荒れ果てた跡地は、岩崎弥太郎率いる三菱社が取得、わが国初めてのビジネス街の創設が始まる。
建築家コンドルを中心に、日本人の弟子たちの手によって、三菱館だけでも26棟、仲通り15棟の赤レンガビルが建てられたのだ。

展覧会では、丸の内の歴史と文化、一号館復元の経緯、「中央玄関」や「旧銀行営業室」「大理石の暖炉」「バルコニーの手すり」「鉄骨階段」など往時の建築の姿を見る事が出来る。
「一丁倫敦と丸の内スタイル」展は、来年1月11日まで。入場料500円。
| Permalink
|
| TrackBack (0)
October 02, 2009
[21グラム」('03)「メルキアデス・エストラダの3度の埋葬」('05)「バベル」('06)を書いたメキシコの脚本家ギジェルモ・アリアガが、2人のオスカー女優と組んだ初監督作品。
ヒロインは、「モンスター」('03)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したシャリーズ・セロン。もう一人のヒロインはその母親役、「LAコンフィデンシャル」('97)で助演女優賞のキム・ベイシンガー。
セロンは、15年前から準備されてきた脚本に惚れ込み、製作総指揮も執り、ベイインガーをキャスティングした。
セロンの若き時代を演じたジェニファー・ローレンスは17歳、映画初出演である。この作品で、ヴェネチア国際映画祭の新人賞に輝いた。
原題は「The Burninng Plain」。燃える大地であり、激烈な愛の平原である。それを「あの日、欲望の大地で」とネイミングした日本の配給会社は上手い。このタイトルに誘われて、映画館に出かけた人も多かったに違いない。
それぞれの傷を背負った女たちの、激烈な生き様を描いた「欲望」の物語である。
心の傷を不倫の愛で癒す母親。不倫の相手とともに母親を大地の火の中で失った娘。その不倫の相手の息子に恋をしてしまった娘。その愛から生まれた子供を捨ててしまったヒロイン。そして再会。
親・子・孫と三代にわたる、異なる時代・異なる場所での四つの物語が、錯綜しながら展開し、やがて一つに結ばれる。
脚本家アリアガの天才的な語り口である。
その彼を支えるスタッフも豪華である。
舞台となるニューメキシコのチワワ砂漠でのロケーションは、「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」でアカデミー賞を受賞した撮影監督ロバート・エルスウイットが、もう一つの舞台である暗く冷たい北の街ポートランドは、「ブレイブ・ハート」でアカデミー賞を受賞したジョン・トールが撮った。
この対照的な映像に、「ライオン・キング」でオスカーを受賞したハンス・ジマーとロック・バンドの「マーズ・ヴォルタ」が旋律を付けた。
撮影時、キム・ベイシンガー54歳、シャリーズ・セロン33歳、ジェニファー・ローレンス17歳。
3人のヒロインが肉体を曝け出した迫真の演技で、欲望の大地を語る。ベイシンガーの衰えぬ肉体美が印象に残る。
| Permalink
|
| TrackBack (1)
Recent Comments