November 21, 2009

1408.ゼロの焦点

015_640  今年の東京国際映画祭でワールド・プレミアとして特別招待された作品。
 「文豪・松本清張、至高のミステリーが映画化。結婚式の直後に疾走した夫、そして連続殺人事件に巻き込まれる妻の運命は?」と紹介される。

 松本清張生誕100年記念作品として、東宝が直接製作した作品4_75395_6 だが、リメイク版である。48年前に、松竹が製作して大ヒットした。

 主人公の新妻・広末涼子の役は久我美子、会社社長夫人・中谷美紀は高千穂ひづる、会社受付嬢・木村多江は有馬稲子、夫役の西島秀俊は南原宏治だったと記憶している。

 松竹版は監督・野村芳太郎、脚本は橋本忍と山田洋次という錚々たるメンバーだったが、今回は、初めてのサスペンス映画を犬童一心が監督・脚本を担当した。
彼は、前作が上映された頃に生まれた世代だけに、今回の作品をミステリーの解明よりも時代全体を描く事に重きを置いている。
 作品のキーワードでもある「パンパン」は、もう死語であるし、彼女等を直接知っているのは我々が最後の世代なのだ。

 時代設定を原作のまま、昭和30年代半ばに置いているのも犬童の拘りだろう。
 リメイク版は、往々にして舞台を現在に置き換えるが、制作費がかさむのを覚悟して当時の金沢を再現した。そのため国内だけでなく、韓国でもロケした。

 30年代半ばは、戦後日本が大きく変わろうとしていた転換期である。「パンパン」に象徴される戦後の「ヤミ」に翻弄されながらも、運命に坑う人たちが、殺人を犯しながらも「未来」を求めた時代でもあった。

 どんよりとした北陸の重い雲、暗い日本海の波しぶき、能登金剛ヤセの断崖は、そうした人々の心象風景となる。

 前作を見た人、原作を読んだ人、4回にわたるテレビ放送('71、'83、'90、'95)を見た人、それぞれによって今回の作品についての感慨は異なるだろう。
 清張生誕100年、時は確かに過ぎていく。

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November 20, 2009

1407.ジャック・メスリーヌ

013_640014_640 「沈まぬ太陽」が、10分の休憩を挟んでの202分の長・大作とすれば、「ジャック・メスリーヌ」は25分の場内整理時間を挟んでの247分。

 Part1ノワール編、Part2ルージュ編の2部に分れており、それぞれ1本分の入場料がかかる。だから別々の日に見ても良い。

 こちらは、25分と予告編の時間を利用してラーメン屋に駆け込み連続鑑賞。腰は痛かったが作品には満足した。

Tn01  タイトル名となった男は、フランスに実在したロマンチストなギャングスター。
 中流家庭に育った普通の男が、アルジェリア戦争除隊後に秘密軍事組織QASの手下になり、やがて欧米大陸を股にかけたギャングとして入獄・脱獄を繰り返し、「PUBLIC ENIMY NO1」と呼ばれる男になる。
 そして20年、図らずも生まれ育ったパリの下町で、警官隊から21発の銃弾を浴び「男の美学」を完結させるフイルム・ノワールである。

20090928015fl00015viewrsz150x  Part1は、アルジェリア解放戦線の若者を拷問にかけ、上司の命で射殺するところから始まる。
幼馴染のチンピラの誘いで、軍事組織出身のボスの下に。対立するギャングの縄張りを荒らしてカナダに逃亡、誘拐事件で逮捕され投獄・脱獄までが描かれる。

334851_01_03_03  Part2は、フランスに舞い戻ったメスリーヌが銀行強盗や金持ちの誘拐を繰り返し、パリ警視庁のBRIに捕まるが、またもや脱獄。
 死を予感して自伝を書き最後に・・・となる。

 メスリーヌの自伝を読んだプロデュサーも、そして脚本家・監督もジャック・メスリーヌ役はヴァンサン・カッセル(「イースタン・プロミス」''07)の他にはいないと確信していた。
 カッセルもまた、ヒーローではなく'60~'70年代のフランス社会を具現化した男を描く事を注文して引き受けた。

 その時代とは、ケベック解放戦線やドイツ赤軍・イタリア赤い旅団事件など、混乱する政治、腐敗する社会に対し、若者達が誘拐や殺人、爆弾テロで異議申し立てた時代なのだ。
 アルジェリアでのトラウマを背負った主人公も、そうした社会状況と決して無縁ではなかった。彼が、「伝説の犯罪王」としてマスコミに持て囃された背景も、そこにある。

 ロケは、フランス・カナダ・アメリカ・スペイン・イギリス・アルジェリアと、彼が実際に過ごした地を忠実に追って行われた。それは、銃殺されたジャック・メスリーヌ自身も脚本に参加!しているからなのだ。

 映画の冒頭、「映画である以上、一人の男を描くのにフィクションが入るのは仕方が無い」との断りもあるが。

Tn03334851_01_04_03   共演はギャングのボス、ジュラール・ドバルデュー(「愛の賛歌」'07)。ギャング仲間、ロイ・デュビュイ(「ロケット」'05)、マチュー・アマルリック(「潜水服は蝶の夢を見る」'07)、ジェラール・ランヴァン(「輝ける女たち」'06)他。

Tn02Tn04   彼を愛した女達、スペイン美女の本妻エレナ・アナヤ(「美しすぎる母」'07)、娼婦で生涯の恋人セシル・ド・フランス(「スパニッシュ・アパートメント」'02)、最後の女リュディヴィーヌ・サニエ(「スイミング・プール」'03)。

 作品は、今年のフランスのアカデミー賞(セザール賞)で主演男優賞・監督賞・音響賞受賞、昨年の東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞している。

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November 19, 2009

1406.晩秋・佃島

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091114_002_640091114_001_640091114_011_640 ご近所の佃島を散策、桜の葉は落ちすっかり晩秋の風情。
 造船所跡に建てられたリバー・サイドのマンション群も、ようやく周囲に溶け込み、歴史を感じさせる。

091114_018_640091114_021_640_3 隅田川河畔を歩いて初めて気がついた。永代橋の向こうにスカイ・ツリーが見える。
 東京の新名所、その伸びゆく様を時々カメラに収めておこう。

 散策およそ1時間、川面は暮色となった。

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November 18, 2009

1405.母なる証明

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 6年前「殺人の追憶」を撮って、韓国映画界に彗星の如く登場した鬼才ポン・ジュノ監督。
 今年40歳になる彼が、世界に向けて三度問いかけた作品が「mother」(原題)である。
 「殺人の記憶」「グエムルー漢江の怪物ー」に続いて、この作品もカンヌ国際映画祭に出品され、絶賛の嵐を受けた。

 殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追っていく母親の姿を極限まで描いたヒューマン・ミステリー。ブラック・ユーモアの中に人間の根源的な強さと弱さを描く。

 韓国の現代もテーマだ。「儒教」「ケイサツ」「ムラ」そして血の絆、それは変わるようで変わらない。それは今もなお、人々の暮らしを揺さぶっている。

 主役は母親のキム・ヘジャと息子のウオン・ビン。

334058_100x100_002  韓国の「お母さん」と呼ばれる大女優キム・ヘジャが、子を思う母親の過剰とも思える「無償の愛」の強さと、限りなく哀しい人間の「さが」をその存在感で見せる。

334058_100x100_005  ウオン・ビンは「韓国四天王」の一人と言われる大スター。兵役のために俳優を休業、この作品は5年ぶりの出演となった。
 近親相姦を思わせるほど母親に依存している彼が、時折見せる闇の世界。純粋さゆえに弱さを抱えた複雑な息子の心象を演じた。

334058_100x100_006  真犯人探しというミステリー・ドラマから、やがてジュノ監督が突きつける深い主題へと物語は進む。

 ラスト近く、鍼灸師でもある母親キム・ヘジャが自ら鍼を打つシーン。曝け出された白い太ももに、鍼が埋め込まれる。
 ここに「母なる証明」が具現する。 

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November 17, 2009

1404.沈まぬ太陽

Taiyo_wp01_wide 巨大組織に翻弄され、苦悩と葛藤の中でもがきながらも、「不屈の精神」を持って信念を貫いた一人の男の物語。

 巨大組織は「国民航空」(NAL)、男はその組織の労働組合委員長。経営に歯向かった故に左遷されて、カラチ・テヘラン・ナイロビと盥回しにされる。
 対称的に登場するのは、労組副委員長。御用組合を作りエリート・コースを駆け上る。そして重役に。

333831_01_01_03  主人公の組合委員長役に、 「ラストサムライ」の渡辺謙が自ら原作者に申し出て演ずる。
 副委員長役は三浦友和。3時間22分の超大作である。

 原作者は山崎豊子。「花のれん」で直木賞、「白い巨塔」で医学世界の腐敗を描き、「不毛地帯」「二つの祖国」「大地の子」の戦争三部作、そして1999年に「沈まぬ太陽」を出版した。

 きっかけは偶然だったという。別な仕事でケニアを訪れた山崎は、旅行をアテンドしてくれたJALナイロビ駐在員を知る。
 彼の過去を知った山崎は渋る彼を説き伏せて、「JAL」という大組織とそれに振り回された人生を語らせた。
 そして「その時代」の取材に入る。

 '60年代から'70年代、日本は高度経済成長を実現し世界経済の頂点に立っていた。しかし史上最悪の航空機事故「ジャンボ機墜落」は、そうした驕りを打ち砕く象徴的な出来事だった。
 
 1985年8月12日午後6時58分、JAL123便羽田発伊丹行き、ボーイング747SR-46の墜落。誰もが忘れられない事実である。
 映画は、その「御巣鷹山の惨状」から始まった。

 「映画『沈まぬ太陽』は、山崎豊子の小説をもとに映画化したフィクションです。登場人物、団体は全く架空のものであり、実在の人物、団体等とは間系がありません。」とクレジットが入るが、JALの拒否反応は予想以上だったようだ。
 撮影協力拒否はもちろん、製作側の角川映画や東宝に対し映画化の中止を申し入れたという。
 そのため羽田や成田でのロケは出来ず、タイの空港を使っている。

 原作の出版の時も、ひと揉めあったらしい。主人公だけが善人に祭り上げられ、周囲は「悪」の象徴とされる。
 実在のモデルを知る人たちにとっては、当然不快感を抱いただろう。

 山崎の作品の多くがモデル小説といわれ、資料にしたノンフィクション記録が、作品にそのまま反映されるケースが多々ある。そのため盗作問題をよく起す。
 「不毛地帯」ではシベリア抑留兵士の手記の引用、「大地の子」では旧満州での飢餓体験を書いた作者からの訴訟事件があった。

Taiyo_wp03_wide  「沈まぬ太陽」の場合は、事実の方があまりにもドラマチックなため、創作との境が見えなくなっている。文学作品としてより、読者はその事実を追ってしまうのだ。

 主人公のモデルは亡くなったが、悪役扱いのJALの当事者、登場する政治家のモデルの中には、まだ現存している人もいる。
 彼等が、この映画をみてどんな「感慨」を持つのだろうか。

 先日の新聞広告に、元首相の中曽根康弘の賛辞が掲載されていた。
 「稀に見る大作。時間を感じさせない映画でした」と。
 その中曽根をモデルにした首相を加藤剛が演ずる。

 当時の中曽根内閣、副総理は金丸、官房長官・後藤田、運輸大臣は三塚から橋本。現民主党の小沢が自治大臣、羽田が農林大臣というのも面白い。
 閣議のシーンでは、皆さんが顔を並べる。もちろん小林念侍、小野武彦等それぞれ役者だが。

 JAL再建のため首相が送り込んだ財界人・石坂浩二は、模範的な経営者、正義の味方として描かれるが、モデルが会長を務めていた大企業は倒産してもうない。

333831_100x100_003  監督は、共同テレビのエグゼクティブ・ヂレクターの若松節朗。「ホワイトアウト」('00)以来の久々の映画作品となった。
 主人公の妻役、鈴木京香はじめオルスターキャストである。

 あまりにもタイミングが合ったと言うのか、JALは政府支援を受けながらどう再建するかの土壇場と重なった。

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November 16, 2009

1403.風が強く吹いている

 「箱根駅伝い挑戦する゛寄せ集め10人"の成長と絆を描く人間ドラマ。すべての人々に、勇気と感動をくれる爽やかな感動作。」
 こう紹介されて、今年の東京国際映画祭のワールド・プレミアに特別招待された。

 紹介通りの感動作である。とくに後半1時間に及ぶ箱根駅伝全区の映像は、迫力と感動に満ちていた。
 スポーツ青春映画を人間ドラマにまで昇華させたのは、スタッフ・キャストの一丸となった情熱だったに違いない。

334147_100x100_007  原作は、直木賞作家・三浦しおんの同名小説。それをベテラン脚本家大森寿美男が、監督して撮った。
 大森は、NHK大河ドラマ「風林火山」や「クライマーズ・ハイ」、映画「次郎長三国志」の脚本家として知られているが、今回脚本担当の予定が監督まで引き受ける羽目となった。
 それは、スタッフの中で「箱根駅伝」に対する思い入れが最も強かったからだそうだ。

334147_100x100_004 大森は、箱根往復10区を走る10人全てを主人公にした。エリートランナーからダメ学生まで、そこに一人ひとりのドラマを描いた。
 「走るとは何か?」と選手に問いかける事は、観客に「生きるとは何か?」を問いかける事に重なる。
 それが感動を呼び起こしたのだ。

334147_100x100_001_3334147_100x100_011_3 10人の若い俳優達も頑張った。プロのコーチから特訓を受け、長距離ランナーの走りを見せた。

 陸上部主将・小出恵介(「ROOKIES」'09)、エリート・ランナー・林遺都(「余命」'09)、マンガオタクでスポーツ嫌い・中村優一(「湾岸ミッドナイト」'09)、ヘビースモーカー・川村陽介(「ROOKIES」'09)、双子の選手・斉藤慶太・祥太(「鴨川ホルモ」'09)、アフリカからの留学生・ダンテ・カーヴァー(「感染列島」'09)、司法試験をクリアーした秀才・森廉(「真夏のオリオン」'09)、田舎の神童・橋本淳(「熱帯彼氏」'09)、雑学王・内野謙太(「男たちの大和」'05)、以上の10人。

 脇を固めたのは、津川雅彦、鈴木京香、寺脇康文らベテランという組み合わせ。

334147_04_02_03_2 映画のもう一つの主役は、「箱根駅伝」そのもの。
 と云ってもフィクションである以上、実在の大学を競わせる訳にはいかない。また、10区それぞれ映画のために道路占有使用も無理。
 そこで1区から10区まで、のべ3万人のエキストラを動員して九州で再現した。それに、本物の空撮やロングショットを巧に組み合わせて、臨場感あふれるシーンを作り上げた。

 10人の役者と、エキストラだが本物の大学駅伝選手。彼等の競う映像が上手く溶け合って、作品を盛り上げた。  

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November 14, 2009

1402.さつま・すんくじらの恵み

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064_640055_640  旧東海道の品川宿で、「さつま・すんくじらの恵み~食と酒の祭典2009~」が開催されている。
 このイベントは、上記「南さつま地域資源活用促進協議会」が、地元・品川宿まちづくり協議会などの協力を得て開いているもの。
 
  鹿児島の西南端にある「すんくじら(隅っこ)の町」から、食と酒と風景と人情を発信しようという、初めての試みである。

057_640_2051_640_3   促進協議会については、ブログ1347号('09.9.13)でも紹介したが、日本商工会議所の「地域資源の発掘・活用」事業に採択されたもので、「商品を介して、人々との交流を図る」事を目的としている。

 会場となった旧東海道通りには、「かごしまのソウルフード」や「冬の南国『鍋』」の店など九つのショップ、それにライブや「焼酎学講座」も開かれる。

059_640060_640062_640_2  面白かったのが「暗闇ごはん~江戸×薩摩」のイベント。
 完全に視覚を奪われた中で、残された嗅覚・味覚・聴覚・触覚をフル回転させて食事をいただく中から、本物の味を知る事が出来る。
 食材は南さつまの産物を中心に、江戸野菜の「品川蕪」などを交えての四皿。地域の風土と歴史を味あう事が出来た。

 「さつま・すんくじらの恵み」は、明日15日の18時まで。会場は、京急新馬場駅から5分の旧東海道品川宿。 

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November 13, 2009

1401.東京道産酒の会

091112_007_640_2 北海道に生まれた人、北海道で青春を送った人、北海道での仕事に情熱を燃やした人、北海道にエールを送る人たちの集まりが「東京道産酒の会」。
 月に一回、地元で仕込まれた酒と北海道の食材で作った肴を味いながら、ミーティングを楽しんでいる。

091112_006_640  206回、昨夜のゲストスピーカーは俳人の西村和子さん。「知音(ちいん)」代表で、教育テレビ「NHK俳句」の選者でもある西村さんは、この秋恵庭や小樽、知床など句会の仲間と歩かれたそうだ。
 今回のお話は「俳句とお酒」、お酒の好きな西村さんから道産酒愛好の皆さんへの「酒の話題のプレゼント」である。

 「俳句には、新年から春・夏・秋・冬と季題(語)があるが、お酒に関しては全ての季節にあるのがおもしろい」

 「新年はまず『屠蘇(とそ)』、一年の邪気を祓う薬酒だが、年賀の客に屠蘇を祝った後に勧める酒が『年酒』」
 「春は『花見酒』をすぐ思いつくが、雛祭りの『白酒(しろざけ)』は春の季語」

 「夏は『冷し酒』(冷酒)から始まって『ビール』『梅酒』が季語。暑気払いに飲む『焼酎』もそうだが、『一夜酒(ひとよさけ)』つまり『甘酒』も夏。江戸の頃は夏になると、甘酒売りが町を歩いた。端午の節句に供える『菖蒲酒(あやめざけ)』もある」

 「秋は新酒の仕込みの季節だけに、酒の季語は多い。『新走(あらばしり)』『今年酒』『濁酒』(どぶろく)に始まって、『月見酒』に『菊酒』。これは重陽の節句に菊の花を盃に浮かべて飲んだ事からきた季語」
 「同じく重陽の節句に、酒を温めて飲むと病に罹らないとの故事から『温め酒』(ぬくめ酒)、そしてそれ以前の酒は『古酒』」
 「猿が木の実を冬に供えて隠しておいたところ、発酵して酒になったという『猿酒』(ましら酒)、という秋の季語もある」

 「冬は『熱燗』(燗酒)に『寒造』、『雪見酒』『霞酒』『あられ酒』『玉子酒』『鰭酒』と季語も多い。熱燗でいっぱいのあとは、ぜひ一句を」

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091112_009_640 昨夜は今年最後の集い。時間をたっぷりとってジャズのナマ演奏を楽しんだ。
 「タイガー・ジャズ」「メモリーズ・オブ・ユー」「知床旅情」「鈴かけの道」、ピアノ中山育美、クラリネット後藤雅広、ギター阿部寛のみなさん。

 酒の肴は、帆立のぬた和え、鱈子糸こんにゃく炒り煮、本ししゃも若狭焼き、鱈昆布締じめ、鮭雲丹焼き、鰊昆布巻き、牡蠣フライ、鮭親子御飯ほか。

(東京道産酒の会の世話人を、今年いっぱいで退任した。「集い」の紹介はこれが最終回となる)

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November 12, 2009

1400.第41回日展

091109_010_640_2  大学時代の後輩の作品が、昨年に続いて日展に入選した。招待状が届いたので、六本木に出かけた。

 「日本美術展覧会」、今年で41回を迎えた日本最大の美術展。先月末から国立新美術館で開催されている。

 日展は、1907(明治40)年に時の文部大臣・牧野伸顕が創設した。
 「文明国として世界に誇れる芸術文化の育成」をと、文部省美術展覧会(文展)を開催したのに始まる。

007_640_2  その後、帝展、文展、日展と改革を重ねたが、二科会や東光展とは異なり、いわゆる官主導の「官展」の系統を継ぐ。
 現在は、日本芸術院から分かれた社団法人「日展」が主催する公募展となった。

010_640_2   展覧会は、日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の5部門に分れ、国立新美術館の3フロワーのほとんどを占めていた。

009_640008_640  友人の作品は、洋画部門に展示されている。
 題は昨年と同じ「ひまわり」。ドライフラワーの「ひまわり」は、彼女のモチーフ。長い闘病生活を経てようやく絵筆を執るようになった時、目にした光景だったという。

 東光会の会員でもある彼女の作品は、このブログでもたびたび紹介しているが、年々そのタッチが明るくなるのがうれしい。

091109_640  「日展」は、12月6日(日)まで六本木の国立新美術館で開催。
 入場料は1200円と少々高いが、午後4時30分から6時まで鑑賞できる「トワイライトチケット」300円もある。
 昨夕も、そのチケットを求めて大勢の人が時間待ちしていた。金曜日は、午後8時まで延長される。
 また本日は、天皇御在位20年を祝して、入場料は無料。 

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November 11, 2009

1399.国立寄席

151_640 ひとまく会の同好の諸兄と、久し振りに「国立寄席」を鑑賞した。国立演芸場・11月上席の舞台である。

153_640  出し物は落語・漫才から紙切りまで、盛り場で古くから上演されてきた大衆芸能「寄席」の再現である。

 出演者は初めて見聞きする名前だった。前座の一也の落語「転失気」に始まり、トリは桂南喬の落語「ふぐ鍋」まで、9人の出演者で3時間の公演。料金はシルバー1100円である。

 これまでテレビなどでは、お見受けしない面々。ところが予想以上に面白かった。寄席のツボを心得た演者ぶりなのだ。

 柳家ろべえの落語「牛ほめ」はもう一つだったが、次の漫才・すず風にゃん子・金魚のそれは腹を抱えて笑った。プログラムでは、結構若くて可愛いコンビの写真で紹介されていたが、実は??年後の現在の姿。しかし芸は磨かれていたようだ。

 続いて初音家左橋の落語「宮戸川」。ダーク・広和の手品は、小品ながら手先の捌きは見事だった。客席からは感嘆の声も聞こえる。
 ベテラン柳家喜多八の落語「あくび指南」で仲入り。

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  紙きりの桃川忠は、会場を沸かせた。お客さんからの注文による「七五三」や「ジャイアンツ原監督の胴上げ」は、見事な鋏捌きで黒白の美を見せた。

 桃月庵白酒は落語「ざるや」を軽く流し、太田家元九郎の津軽三味線に引き継ぐ。
 浅草に住んで30年の芸人だそうだが、津軽弁を駆使した朴訥なしゃべりと、「アリラン」「コンドルは飛んでいく」やベンチャーズの曲等を、太棹で聞かしながら最後は「十三の砂山」。故郷の代表的な民謡で締めくくったのはさすが。

 トリは桂南喬の落語「ふぐ鍋」。大ベテランらしい味のある語りで締めくくった。

 昨日の上席は千秋楽。世田谷の生涯大学の高齢者と、若い大学生の野外研修で場内は満席。学生達は、ボールペン片手に「お笑い」のメモに必死だった。多分、このあとレポート提出が控えているのだろう。

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November 10, 2009

1398.晩秋・栗野高原

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091103_174_640091103_187_640091103_177_640 高千穂峰(1574m)・新燃岳(1421m)・韓国岳(1700m)と続く霧島連山。
 その西端にある栗野岳(1102m)中腹の原生林から吹き上がる「八幡地獄」の噴煙は、肥薩線の車窓からも見える。

091103_172_640091103_192_640  八幡地獄の熱湯を引いた一軒宿の温泉が栗野岳温泉「南州館」、知る人ぞ知る「日本秘湯を守る会」の宿である。

 前夜は7年ぶりにここに泊まり、地元に住む旧友と焼酎を酌み交わした。

091103_162_640091103_163_640091103_168_640 明礬緑磐泉の「竹の湯」、通称ドロ湯は関節痛に効く。
 硫黄泉の「桜湯」は胃腸病、自然の蒸気を利用した「むし風呂」は神経痛と、三つの温泉の効能がそれぞれなのも面白い。

 明治の初め、征韓論に敗れて帰郷した西郷南州は、ここで1ヵ月疲れを癒した。宿の名前の由来である。


091103_221_640091103_210_640091103_220_640  温泉から東に1キロ行くと栗野原農場がある。
 1952(昭和27)年、北海道から入植した東大卒の開拓農民夫妻が、原野を切り開いて開墾した牧場なのだ。

 取材で知り合って以来半世紀、いつも文を交わし帰省の折りは必ず訪ねた。高原における「草地酪農」のシステムを完成させた彼は、懇請されて地元の町長も務めた。

 酪農を終えた今、90歳の彼は開墾した牧草地を再び森に戻そうと務めている。
 「誓願の森」、ここはそう呼ばれている。

091103_213_640091103_214_640_2091103_202_640 牧場の半分は、鹿児島県が譲り受け「霧島アートの森」を作った。

 「五感で楽しむ自然豊かな現代彫刻美術館」、草間彌生(右端の写真)、西川勝人(右)、チェ・ジョンファ、ジョナサン・ボロフスキーなど、内外の著名な彫刻家の作品が森の中に並んでいる。

091103_147_640091103_152_640091103_151_640_2  「アートの森」の前にある栗野岳レクリエーション村では、造形コンクールも開かれていた。
 学校や地域自治会単位で、自然物を利用した造形作品を並べて競うもの。
 地元・湧水町は、町ぐるみでアートに取り組んでいる。
      

 夜は高千穂峰の麓にあるホテルで、高校同級生の「古稀の会」。
 霧島連山の夕景も美しかった。

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November 09, 2009

1397.肥薩線100年の旅

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 肥薩線・嘉例川駅を出発する特急「はやとの風」、今人気の観光列車である。

091103_072_640091103_073_640091103_075_640_2   午後1時14分、鹿児島中央駅で特急「はやとの風」に乗車、肥薩線100年を体験する吉松までのショート・トリップに出かけた。

 鹿児島・宮崎・熊本の3県にまたがるJR肥薩線は、今月21日に全線開通100周年を迎える。

091103_120_640  1901(明治34)年に鹿児島を起点に国分(隼人)まで、2年後吉松、そして熊本側からは八代~人吉間が1908(明治36)年に開通した。
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 しかし最大の難所は県境、険しい峠を越えるためスイッチバックやループなど、当時の最先端技術を駆使して1909年に全線を結んだ。
 九州の大動脈「鹿児島本線」が誕生したのだ。

 鹿児島本線はやがて海岸を通る新線に移り、隼人~八代間が「肥(後)薩(摩)線」の名で現在に至っている。

091103_115_640091103_090_640091103_089_640_2 100周年が近づき沿線各駅でイベントが開催されると、鉄道フアンが集まる。
 なかでも、レールと同じ歴史を持つ「嘉例川駅」は、いつも観光客で賑わっている。

 開業当時の姿を残す木造平屋建ての駅舎は、隣の「大隈横川駅」とともに国の「登録有形文化財」に指定された。
 そしてその駅舎を、5年前に町(旧隼人町、現霧島市)がJR九州から18万867円で買取り、展示会場になどに利用しながら保存に努めている。

091103_094_640_2091103_240_640091103_116_640  名物駅弁「百年の旅物語・かれい川」は一日200個限定販売、午前中で全て売り切れるので予約が必要。
 地元の主婦が、野菜をたっぷり使って作った駅弁は、ここ2年「九州弁当ランキング」のトップを維持している。

091103_131_640  鹿児島から53分、嘉川駅で特急「はやとの風」を降り、村を散策。50分後、普通電車に乗って吉松駅に着いたのは午後3時35分、40年ぶりの肥薩線の旅が終わった。

091103_137_640091103_139_640_2091103_133_640_3  吉松は鉄道で栄えた町である。
 ここから宮崎・都城へ吉都線が分岐する。そして県境を越えて熊本・人吉へと肥薩線(山線)は伸びる。
 駅前には、20年前までこの地を走ったSLが保存されていた。

091103_146_640091103_141_640091103_145_640 駅の近くにある「みやした菓子店」。
 鉄道フアンであるご主人が、SLの燃料・石炭にちなんで売り出したのが、「汽笛饅頭」。
 店内はミニ鉄道博物館、ご主人の解説も堂に入っていた。

 夕方、吉松から次の目的地・霧島山系栗野高原に向かう。

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November 08, 2009

1396.向田邦子展

091103_238_640091103_640 鹿児島帰省中にちょっと時間があったので、城山の麓にある「かごしま近代文学館」を訪ねた。

 ここでは、先月から今月末まで「向田邦子展」が開催されている。

 向田さんの生誕80年を記念して、かごしま近代文学館がプロデュースした特別企画展で、「彼女のすべて26のキーワード」が副題となっている。

 向田さんは東京・世田谷の生まれだが、サラリーマンだった父親の転勤で小学校時代(10歳の頃)のおよそ2年を鹿児島市内で過ごした。
 居宅も通った尋常小学校も、この文学館近くだったという縁もある。

 彼女にとっては、ここでの生活が印象深かったようで、テレビやラジオドラマの中に鹿児島はたびたび登場している。そしてエッセイの中で、「鹿児島は自分にとって故郷もどき」と書く。

 特別展示室には、ドラマの脚本や小説の原稿をはじめ、向田本人の肉声テープや「阿修羅のごとく」の構想メモ、それに器、書画、骨董など、新資料もふくめ450点がAからZまでのキーワードで並べられていた。

 なかでも彼女が海外旅行をはじめ、様々な場で着用した衣服が圧巻。文章だけでなく向田さんのライフスタイルの魅力を伝えてくれる。

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091103_055_640091103_057_640  かごしま近代文学館の1階には常設展示として、向田さん他、海音寺潮五郎、林芙美子、椋鳩十、梅崎春生、島尾敏雄さんの業績や作品世界を紹介した「鹿児島ゆかりの6人の作家」コーナーがある。

 この6人の作家のうち、林さんを除いた5人の方々とは現役時代仕事でお目にかかっている。コーナーではお一人おひとりの写真を見ながら、懐旧の感にひたった。

 また2階には、有島武郎や一色次郎、吉井勇、山口誓子など鹿児島出身の文学者22人の業績や資料も展示されている。 

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November 06, 2009

1395.さまよう刃

002_640 愛娘を、未成年の少年達に犯され殺された父親の復讐劇。

 「最愛の人を奪われた時、あなたはどうしますか」
 復讐では何も解決しないむなしい行為だと判っていながら、犯人を追う父親を通して、「法と正義」「命の意味」という重いテーマを描く。

 東野圭吾の衝撃の問題作。'04年発表、これまで150万部のベストセラーとなった。「容疑者Xの貢献」('08)に次ぐ映画化である。
 この作品は、「光市母子殺害事件」での元少年死刑判決と並んで、昨年の少年法改正にも大きな影響を与えた。

 丁寧に描いている。徹底的に削ぎ落とした父親のセリフ、押えに押えた演出が光る。監督はプロデューサー・脚本家としても知られる松竹出身の益子昌一。「むずかしい恋」以来の2作目である。
 撮影に中国の「レッドクリフ」のカメラマン、王敏を迎えたのも成功しているし、音楽はベテランの川井憲次が、自らキーボードを担当している。

334421_100x100_002  しかしこの作品を、重厚なものにしたのは父親役の寺尾聡の演技である。たぶん彼以外に、この役に耐えられる役者はいまい。「半落ち」('06)の演技を思い出す。

S002  「警察は市民を守るんじゃなく、法律を守るのか」と、悲痛な叫びを上げる若い刑事に竹野豊、コンビを組むベテラン刑事に伊東四朗。
 菅平の民宿の経営者親子、山谷初男と酒井美紀の存在感が大きい。

 作者自身「なぜこの小説を書こうと思ったかについては、ここで語らないことにする。じつは、自分でもよくわからないからだ。」と述べる。
 寺尾が電話で吐露する最後の言葉に、作者すら答えられない「少年法」問題の難しさがにじみ出る。 

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November 05, 2009

1394.ファイティング・シェフ

001_640 副題が「美食オリンピックへの道」。
 2年に1度開催されるフランス料理の世界一を決める'07年「ボキューズ・ドール」に、スペイン代表として参加した若手シェフを追ったドキュメンタリー映画である。

 これが本当に面白かった。スリリングでエキサイティング、スポーツのオリンピックでアストリートを追ったこれまでのどのドキュメンタリーより出来がいい。
 まさに国を背負って「食文化」に賭けた、若者のヒューマン・ドキュメントであった。

Img_01 「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」は、フランスのポール・ボキューズ(右の写真)の提唱によって22年前に始まった。
 ボキューズは、1926年生まれ世界一有名なシェフと言われる三ツ星レストランの経営者。京料理や懐石を取り入れたフランス料理で、日本でも知られている。

 料理コンクールの開催は2年に1度、会場はフランス・リヨン。その前には、アジア、アメリカなど地域予選もあり、それを突破した24ヵ国によって競われる。

Img10_2  コンクールでは、与えられたテーマの食材をそれぞれエレガントかつオリジナリティ溢れる調理方法で、制限時間内で料理しなければならない。
 審査員のみならず、各国からの応援団の目前で、それも共通化した不慣れな厨房で作る。
 味はもちろん、盛り付けや容器、2人のアシスタントとのコンビネーション、後片付けなど衛生面も審査の対象になるのだ。

 '07年のテーマとなった食材は、肉料理に「フランス・ブレス産の鶏肉」、魚料理に「ノルエー産のオヒョウとタラバガニ」。付け合せや組み合わせは、それぞれのオリジナリティーとなる。

Img_thumb09  大会までのおよそ1年、来る日も来る日もテーマ食材を使った料理に挑戦、週に一度は国内のベテランシェフに試食してもらいアドバイスを貰う、というのが面白い。まさに国のメンツをかけての挑戦なのだ。

 先輩シェフィたちからの厳しい批評に落ち込んだり、アシスタントとのチームワークの乱れなどハラハラドキドキ、まるでドラマの世界だ。

Img_thumb02_2Img_thumb07_2   スペインチームの結果は別として、優勝は左の写真のフランス。日本も右の様な料理で6位と最優秀アイデンティティ賞を受賞した。
 また今年の大会では日本は8位、次回は'11年1月25・26日に開催されるそうだ。

 映画のラスト、母親の手料理が最も美味しいと手伝う息子のシェフが微笑ましい。  

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November 04, 2009

1393.焼酎バー「黒瀬」(108)

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091103_048_640_2 吹上砂丘の西端の町・南さつま萬世、私の故郷である。
 この地名を商品名にした本格焼酎「萬世」は、焼酎バー「黒瀬」の人気銘柄のひとつ。お客さんに勧めながら、町のPRも忘れない。

091103_043_640091103_032_640_2091103_038_640   帰省の折に必ず立ち寄るのは、「萬世」の焼酎蔵。
 砂丘の松林に囲まれた蔵はその名の通り「松鳴館」、中では今年の新酒が仕込中だった。

091103_019_640_4091103_012_640_4091103_011_640_2  松鳴館では、毎年新しい銘柄の本格焼酎を開発している。
 新しい蔵のオープンを記念して造られた「萬世松鳴館」は、3年前の全国酒類コンクールで本格焼酎部門総合1位を獲った。091103_010_640
 そして今年は町にある山の名を銘柄にした「蔵多山」が、国際食品コンテスト「モンドセレクション」で最高金賞を受賞した。

 このコンテストは、50年ほど前からベルギーにある国際機関が行っているもので、ビールやスピリット、菓子など部門毎に技術的水準を審査している。
041  最高金賞を筆頭に、金賞、銀賞、銅賞などの賞があり、杜氏たちの励みにもなっている。
 
 「蔵多山」は、昔ながらの木桶蒸留器で蒸留し、地下貯蔵庫のかめ壺で静かに熟成させたもの。
 やわらかなやさしい風味が売り物、酒販店で見つけたらぜひお試しください。1800ml瓶で2,940円(全国共通価格)です。

 今回の帰省の旅、館内限定販売の「萬世松鳴館・原酒」と「蔵多山」、「味蔵」「波濤」「黒壱」など7本を土産に買った。
 それぞれ飲み比べてみよう。 

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November 03, 2009

1392.焼酎バー「黒瀬」(107)

(前号に続いて「DBJ産業ミニレポート」の概要)

20070823n0001 レポートは、「消えた本格焼酎前線への対応策は、ブランド化と情報公開」(P7)と強調する。

 「ブランドには米国型と欧州型の2種類がある。米国型は、商品のみに注目して効率を考えて広告を打つ。このやり方は、経済が成熟すると旗色は悪くなる」
 「欧州型は、商品よりその背景にある伝統とか、企業理念、生産者の取り組みの姿勢、文化、地域との一貫性を大切にする」
 
Imgp0015_640  「本格焼酎のブランド化は、欧州型である。それは黒豚など南九州の他の産品にも通ずる」

 「ブランドのキーワードは一貫性である。たとえば地域の伝統文化との一貫性、商品企画や広告と売り場の一体感でもある」
 「本格焼酎なら、生産者の思いを流通やユーザーが共有するという一貫性である」

Imgp09112_640011_640  「焼酎業界にとって必要なのは、情報の公開である。(これまで)酒販店で伝えていた情報を、ラベル等スーパーでも確認できる方法で、消費者に伝えなければならない」

 「加工食品では、主原料の原産国表示義務が検討されている。甲類や混和焼酎では、原料アルコール輸入国(ブラジルやパキスタン)の表示が必要になるかもしれない」
 「本格焼酎業界でも麦焼酎や黒糖焼酎では、外国産原料の表示義務が生じるが、それもバランスである」
 「黒糖焼酎の場合、砂糖きび生産に対する所得保障の施策が出来れば、域内原料で十分賄える」

020_640_4  (私のふるさと南薩摩では、既に地元の芋を原料にしたものに限り「南薩摩本格いも焼酎」のラベルを貼って、他の焼酎と差別化している)

 「総合的な政策によって、メーカーと消費者の情報量格差が縮まれば、焼酎前線は復活し本格焼酎業界は、再び活況に沸く」
 「このような未来の展望が開けるまでは、相応の時間が必要だが、その間南九州の蔵元は、自らの製品や収益を分析し、企業戦略を構築して凌がなくてはならない」

                                      (終り)

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November 02, 2009

1391.焼酎バー「黒瀬」(106)

06_640 久し振りに鹿児島に帰省した。故郷の焼酎の蔵元を訪ねたり、友人知人たちと盃を酌み交わした。
 話題の一つは、地場産業の「焼酎」の将来、それも本格焼酎市場の動きである。

 DBJ(日本政策投資銀行)南九州支店で、先月公表された「産業ミニレポート」を手に入れた。
 それには「失われた本格焼酎前線~甲乙混和へどう対応すべきか~とのタイトルが付けられている。
 そして「南九州から全国に北上していた本格焼酎前線が突然消滅した」(P4)と ショッキングな分析がリポートされていた。

 以下、その概要を報告しよう。

Imgp0898_640_3  「酒類の消費減退が続くが、これまで堅調だった本格焼酎まで 様子がおかしい」
 「その転機は2003年だった」

 「常識的には、酒類の価格が下がれば消費が増えるのだが、本格焼酎だけはここ30年、実質価格が上昇しても消費量が増える例外的な商品だった」
 「それは、南九州限定のの焼酎が評判となり、消費地域が域外(東京や大阪などの都市圏)に拡大していった、つまり焼酎前線の北上が続いたからである」

Imgp0907_640 「焼酎前線の北上は、これまで安くて不味い酒との誤解があった焼酎を、飲んでみたら美味しかったと評価されたからだ。しかし(焼酎ブームが続き)市場が成熟すると、前線は消える」
 「それはなぜか?2003年の小売の自由化の影響だと考えられる」

 「酒類販売自由化によって、スーパーが焼酎を扱うようになる。その上、これまで酒販店が積極的に扱わなかった『甲乙混和焼酎』などが本格焼酎と並んで売られる」
 「さらにスーパーでは、酒販店のような対面販売ではないので(商品に対する)情報量が低下する」
 「そのため本格焼酎までもが、甲乙混和同様の『ただの安い酒』に見られ、消費者が離れていった」

                               (続 く) 

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October 31, 2009

1390.カイジ~人生逆転ゲーム

_640 現在興行成績はトップ、主人公と同世代の観客の支持を集めていると、配給会社の東宝関係者が話していた。

 予告編を見てマンガチックな映画と少々敬遠していたが、まさにその通りコミックの映画化だった。
 「賭博黙示録カイジ」「賭博破戒録カイジ」「賭博堕天録カイジ」と、'96年から「ヤングマガジン」に連載された福本伸行原作の人気コミックが原作である。
 3シリーズ39巻の単行本は、累計1300万部売れているから知名度は高いのだろう。

332617_100x100_003 話は、自堕落な日々を送るフリーターのカイジが、友人の借金の保証人になったため莫大な負債を抱えたところから始まる。
 そこで奇想天外ななゲームに挑んで、「人生の負け組」からの脱却を図ろうというもの。
 原作に書かれた「限定ジャンケン」と「鉄骨渡り」「Eカード」の勝負が、命を賭けた逆転ゲームとなる。

332617_100x100_001  カイジ役は藤原竜也。孤独な天才を演じた「デスノート」('07)とは、全く違うキャラクターを演ずるし、共演した松山ケンイチも負け組の若者のひとりとして出演している。

332617_100x100_002332617_100x100_005   異色なのは、超高金利を取る闇金の社長役・天海祐希。原作は男性だが、映画では紅一点として迫力ある演技を見せる。
 そしてもう一人、香川照之。闇の集団の代貸として、カイジとの究極のゲームに挑む。
 他に山本太郎、光石研、松尾スズキ、佐藤慶。

 マンガチックと書いたが、映画は「派遣切り」や「ワーキングプア」、「蟹工船」問題など労働者の奴隷的処遇や格差社会の拡大など、現在の社会状況や若者たちの鬱積を描きながら、「人生は逆転できるのだ」と若者達を応援している。
 日本テレビのディレクター、「ごくせん」シリーズの佐藤東弥監督と、「デトロイト・メタル・シティ」('09)の脚本家・大森美香の狙いも、若い観客にはストレートに届く。

 39巻シリーズというスケールの大きい原作を130分に纏めたのだから、原作を読んでいる人は不満があるかも知れない。
 しかし初めて「カイジ」を知ったものとしては、それなりに緊張して見る事ができた。

 ご近所の晴海界隈がロケ現場の一つだったようで、見慣れた光景を楽しんだ。

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October 30, 2009

1389.ふるあめりかに袖はぬらさじ

 映画より3倍近いフレーム 数のHDカメラで撮った、臨場感たっぷりの舞台。数十本のマイクで収録した素材を、リアルに再現した音響。デジタル・プロジェクターによる大画面。
 「シネマ歌舞伎」が今アンコール上映されている。

Flier_s_2 先日東劇で見たのが「ふるあめりかに袖はぬらさじ」。2年前の暮れに、歌舞伎座で初上演されたものを、映像化した作品である。
 歌舞伎座では見損なったので、今回は早くから予約しておいた。

 原作は有吉佐和子の同名戯曲。1972(昭和47)年に名古屋中日劇場で文学座が初演した。
 主人公の芸者「お園」を、杉村春子が演じて当たり役となった有名な舞台だが、16年後坂東玉三郎がお園役を受け継いで8回公演、2年前に歌舞伎の演目として初登場した。

 粗筋は、幕末横浜の遊郭「岩亀楼」を舞台にした、「攘夷女郎」誕生逸話。その女郎を妹のように面倒を見た芸者お園の目を通し、維新前夜の時代に翻弄された女の生き様を描いたもの。

 「異人を嫌って、父祖伝来の懐剣で喉を突いたあっぱれ烈婦!辞世の句は『露をだに厭う大和の女郎花 ふるあめりかに袖はにらさじ』」

 恋焦がれた通詞とは結ばれぬ事を悟った病弱の花魁が、カミソリで喉を切って死んだ。それを攘夷派が利用して、マスコミ(瓦版)でキャンペーンしたのが「攘夷女郎」の真実。
 それを商売に利用した岩亀楼の主人。嘘と知りながらも、第一発見者として「あっぱれ烈婦」に虚像化していく芸者お園。

 その嘘がバレた時の開き直りと花魁の気持ちを想う切なさを、玉三郎が見事に演ずるところが見どころだった。

 休憩を挟んでの3時間という大芝居だったが、中村七之助の花魁と中村獅童の通詞の儚い恋。
 異人の金持ち・坂東弥十郎と唐人口(異人専用の遊女)中村福助ほか遊女役の猿之助一門の若手役者とのユーモアある絡み。
 楼の主人・中村勘三郎の商売気たっぷりの芝居・・・と飽きさせないストーリーは、さすが有吉佐和子である。

 過激派浪士たちに市川海老蔵や河原崎権十郎らが出演したほか、5年後嘘がばれるきっかけとなった攘夷原理派!の水戸や長州の侍たちに、中村勘太郎や坂東三津五郎、中村橋之助、市川段治朗と芸達者たちが顔を並べている。

 今年、菊池寛賞を受賞した坂東玉三郎の代表作の一つと言えよう。

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October 29, 2009

1388.私の中のあなた

004_640 「私は姉のドナーとして生まれてきた」。映画は妹のショッキングなナレーションから始まる。
 そして次のシーン、妹は「姉への臓器提供を拒んで、両親を訴える」ため、著名な弁護士事務所を訊ねる。
 姉16歳、妹11歳、その間に男の兄弟もいる。

334300_100x100_005  白血病の姉のドナーとなるべく、遺伝子操作によって生まれた妹が、大好きな姉の命を奪うかもしれない臓器提供拒否を決断したのはなぜか。
 アメリカの女流作家ジョディ・ビゴーのベストセラー小説を原作に、「きみに読む物語」('05)のニック・カサヴェテス監督が映画化した。

 334300_100x100_003 家族のあり方や命の尊厳を問いかけるシリアスなテーマだが、描写は笑顔あふれる繊細で優しいタッチ。姉の「死」を目前にした家族の強い絆が、見る人の心を愛で満たしてくれる。

 俳優でもあるカサヴェテスは、ストリー性の高い作品を作る監督として知られている。
 初期の頃の作品「ジョンQ~最後の決断」('02)でも、「子供の命のためには、どんな事でもする親」の姿を描いた。
 彼自身が、実生活で心臓病を抱えた娘を育てている事も、背景にはある。

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334300view012 主役の妹は、天才子役といわれるアビゲイル・ブレスリン。「リトル・ミス・サンシャイン」('08)でアカデミー賞にノミネイトされた彼女である。

 そしてもう一人の主役が母親、キャメロン・ディアスが15年のキャリアの中で始めて演じた。
 全てを投げ打っても、また親のエゴイズムと言われても、娘の命を必死に守ろうとする母親、抗がん剤で髪の毛の無くなった娘のため金髪を切り落とすなど、体当たりの演技を見せる。

 髪も眉の剃って白血病の姉を演じたのは、テレビで活躍するソフィア・ヴァジリーヴァ。父親ジェイソン・パトリック(「告発のとき」'08)、弟エヴァン・エリングソン(「硫黄島からの手紙」'06)。
334300_100x100_004  そして妹の弁護を買って出た弁護士は、アレック・ボールドウイン(「グッドシェパード」'07)という配役である。

 「癌になって良かった」と妹に語る姉。この言葉の中に、本当の幸せとは何かという、この作品の主題が凝縮される。
 涙を流した後、爽やかな気持ちにさせてくれるラストがいい。
 エンドタイトルのバックに「Life is Beautiful」の歌が流れる。

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October 28, 2009

1387.いたち川沿い、鎌倉所縁の古刹

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085_640081_640059_640  横浜市本郷、鎌倉街道に沿って流れる「いたち川」。
 動物の鼬の像が橋の袂に在ったが、本来の名は「出で立ち川」。
 室町時代、関東管領が出陣の時ここで昼食を執って安全を祈願したという。

038_640035_640  この時代の歌人・吉田兼好も「かにして ちにし日より りのきて ぜだに閨を らわざるらん」と歌に織り込んでいる。
 そのいたち川で、翡翠色の「カワセミ」を見つけた。

025_640026_640028_640  古刹めぐりのスタートは、「梅沢山仙福院光明寺」。先月訪ねた鎌倉の光明寺は浄土宗のお寺さんだったが、こちらは浄土真宗本願寺派。

 縁起は古く、聖徳太子の重臣・秦河勝が開創したと伝えられているが、宗派は法相宗から天台宗に変わり、執権北条泰時の頃鎌倉に来た親鸞に帰依して浄土真宗の寺院となった。

 鎌倉末期、新田義貞の軍に焼き討ちに遭ったが、江戸時代三代将軍家光から鎌倉北条ゆかりの寺として、ご朱印地13石を安堵された。
 052_640053_640046_640                             
 次に訪ねたのが、源頼朝が建立した「五峰山一心院證菩提寺」。
 阿弥陀堂にあった平安末期の仏像彫刻、阿弥陀三尊像は国の重要文化財に指定されている。

 頼朝が石橋山の合戦で敗走した時、三浦一門の佐奈田与一義忠25歳が頼朝を庇って戦死した。その忠義に報いるために1189(文治5)年、頼朝は鎌倉の鬼門にあたる山内庄本郷にこの寺を建立、幕府鎮護を祈った。
 寺の名は義忠の父・義実の法名、宗派は古義真言宗。

078_640_3075_640_3 最後の古刹は「中村山長慶寺」、浄土真宗大谷派である。
 もともと天台・真言の密教道場だったが、ここも住職が鎌倉に来た親鸞に帰依して浄土真宗に改宗している。

 親鸞はこの地に籠もって、七体のの聖徳太子像を刻みその一対を住職に与えた。後に石山本願寺での織田信長の戦いの折、住持普古はこの太子像を背負って本願寺門主教如の側近として戦ったという。

 寺は小田原北条氏によって壊されたが、慶長年間に草庵として再建。ここを訪れた徳川家康に湧き水を差し出した縁で、境内山林と本堂再建の寄進を受けた。
 三代将軍家光も寺領13石を与え、家康ゆかりの寺として代々保護された。

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070_640064_640073_640  古刹巡りの途中、本郷の高台にある「旧小岩井家」に立ち寄った。
 鍛冶ヶ谷村の名主だった小岩井家から寄贈を受けた、江戸時代末期に建てられた主屋と長屋門である。

 余業として薬屋・油屋など営み、幕末のペリー来航に先立って沿岸警備の任にも当たっていた。
 上級武士を迎えるための式台、壁を朱色に塗った書院造の客室も残されている。
 往時の旧家の財の豊かさに、驚かされる。

 今回の「いたち川」古刹めぐりは、休憩をふくめて5時間。1万4000歩のウオーキングだった。      

 

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October 27, 2009

1386.台風一過

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 今朝6時の富士山、昨夜の雪で冠雪完了。
 台風20号も未明に東海上を通過、雲ひとつ無い秋晴れとなった。

 幸いにして今年は、関東に接近した台風は少ない。今月の8日に続いて三つ目である。太平洋高気圧の日本列島への張り出しが弱いせいだという。
 ただ発生数は平年並みで、東南アジアや台湾での被害が大きかった。

 コンパクト・デジカメで撮った写真を二葉。

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October 26, 2009

1385.あなたは私の婿になる

021_640 主役は某出版社の凄腕女編集長。「アラフオーバリキャリ」の彼女はカナダ人、部下からは「悪魔」と呼ばれている。
 もう一人の主役は、悪魔にコキ使われる草食系男子のアシスタント。編集者昇格のためにはと、耐えに耐えている。

 労働ビザの申請ミスで国外退去を命じられた「悪魔」、思いついたのが部下であるアメリカ人との「偽装結婚」。「NOと言ったらクビよ!」、まさに上司命令である。

 そして「婿」予定者の故郷アラスカへと婚約報告旅行。大人のためのロマンチック・コメディーは、ここから始まる。

 原題は「THE PROPOSAL」。それを邦題はストレートに変えた。「あなたは私の婿になる」と。判りやすいが微妙にニュアンスは違う。

 配給会社のディズニー・ジャパンは、いまや史上空前の「婚活ブーム」に目をつけた。この作品こそ「婚活必勝マニュアル」と、宣伝に打って出たのだ。
 だから映画館は、「バリキャリ」女子の行列となった。

20090806011fl00011viewrsz150x_2 結末は誰でも想像できる映画だが、楽しく見せてくれるのは主役のサンドラ・ブロックのキャリア。正面からのオールヌードまで見せる体当たり演技が、未婚のアラフォーの孤独を醸し出す。
 確か今年で45歳の既婚の彼女、「悪魔」から「天使」へと変わっていく様は若々しい。

 お相手はライアン・レイノルズ、カナダ出身の33歳。スカーレット・ヨハンソンの彼氏として有名だが、最近は「ウルヴァリンX-MEN」など役者としての実力も身につけてきた。

 ほか婿の母親、メアリー・スティーンバージェン(「ブレイブワン」'07)。父親、クレイグ・ネルソン(「幸せのポートレート」'06)。祖母役87歳のベテラン、ベティ・ホワイト。初恋の女性、マリン・アッカーマン(「ウオッチメン」'09)。

Wallpaper800_600_b  監督は、「幸せになるための27のドレス」('08)のアン・フレッチャー。
 ダンサーとしても振付師としても有名なバリキャリの彼女は、43歳。既婚か独身かは知らない。
 サンドラ・ブロックも製作総指揮として、女流監督を支えている。

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October 24, 2009

1384.ひとまく会

Kabukiza200910m  歌舞伎座さよなら公演、今月は「芸術祭大歌舞伎」。
 昼の部は、歌舞伎十八番「毛抜」から長唄舞踏劇「蜘蛛の拍子舞」、上方和事の「河庄」、音羽屋ゆかりの「音羽嶽だんまり」の4演目。
 夜の部は、通し狂言で「義経千本桜」の4幕という豪華版である。

 歌舞伎座四階席で、最後の一幕を楽しむ「ひとかむ会」が鑑賞したのは「義経千本桜」の最後の幕「川連法眼館」である。

 もともとこの演目は、二世竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作の人形浄瑠璃。五段構成で、その各段が「口」「中」「切」の3場面から成り立っている。
 その四段目の切が「川連法眼館」で、俗に「四(し)の切(きり)」と呼ばれてきた。
 昔から大和地方に残る伝説を下敷きに、親狐を慕う源九郎狐の報恩を物語にしている。

 親狐を初音鼓の皮にされた子狐が、奥州にいる佐藤忠信に化け静御前を守りながら、義経の隠れ住む吉野山の川連法眼の館にたどり着く。そこには既に傷も癒えた忠信がいる・・・・・・・。
 子狐の親を思う心情に感動した義経は、その初音鼓を狐に与える。自分も父・義朝の非業の死や母・常盤との別れを思い出したのだ。
 そして狐は恩返しとして、夜襲をかけた鎌倉方を翻弄する、というストーリー。

 見どころは、一人の役者が本物の忠信と狐忠信を演じ分ける場面。
 独特の「狐言葉」や手つきなど、今回は五代目菊五郎が「音羽屋型」の演出で見せた。
 時蔵の源義経、菊之助の静御前も魅力たっぷり。川連法眼は彦三郎。

 なお「ひとまく会」は、今回が最終回。20年も続いた会だが、歌舞伎座も半年後は壊される。200回という今回を一応の区切りとした。
 混乱の中での散会やいつの間にか胡散霧消してしまう会が多い中で、惜しまれながら幕を閉じるのは、さすが「歌舞伎愛好者」たちの粋な会らしいと、自賛している。

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October 23, 2009

1383.秋・三陸海岸縦断(4)

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091016_224_640091016_226_640091016_229_640  奥松島の宮戸島右岸は「嵯峨渓」と呼ばれ、岩手の猊鼻渓、大分の耶馬溪t並ぶ日本三大渓の一つ・・・・と地元ではPRしている。
 ただ、ここだけは渓谷ではなくリアス式の岩壁と海蝕された島々の断崖美なのだ。

091016_225_640091016_217_640091016_208_640    日本三景の松島湾は女性的な景観だが、反対側の嵯峨渓は男性的なパノラマが楽しめる。

 往復40分のクルージングは、島の直下まで近づいて自然の造形、岩肌の白黒文様を見る事が出来る。

091016_238_640_2091016_239_640_2091016_241_640 帰途面白い形の島々が見えた。花魁島と言う名の島だそうだが、その由来については訊ねるのを忘れた。

 今回の旅は、なぜかどこでも「海蝕」による穴空きの島や断崖に出会っている。

091016_272_640_2091016_256_640091016_259_640_2   旅の終点は、松島・瑞巌寺山内にある円通院。
 江戸城内で不審の死を遂げた、伊達政宗嫡孫の光宗の菩提寺である。

 院内にある光宗の霊屋「三慧殿」(写真左)は、1646(正保3)年に建てられた国の重要文化財。
 撮影は出来なかったが、中に安置されている厨子には、当時の日本には無かった水仙や洋バラ、アカンサスやトランプのダイヤ・クローバー・ハート・スペードの模様が描かれている。
 また十字架の文様もあって、ローマから持ち帰った支倉常長の西洋文化の影響を受けている。
 鎖国制度を執る幕府の目を逃れるため、3世紀以上に渉って三慧殿の扉は閉ざされていた。

091016_267_640091016_268_640_2  境内には、禅林らしい小堀遠州作の石庭「天の庭」「地の庭」のほか、支倉が持ち帰ったバラやアカンサスをモチーフとしたバロック風の庭園もあり、円通院は「バラ寺」とも呼ばれている。

 また本堂の「大悲亭」(写真下)は、寺院にしては珍しい寄棟造萱葺で、愛息の死を哀しんだ父・二代藩主忠宗が江戸藩邸の納涼のを解体移築したものである。

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October 22, 2009

1382.秋・三陸海岸縦断(3)

091016_163  南三陸温泉の朝は、ウミネコの鳴き声で目が覚める。部屋の中を覗き込み、餌をねだる。

 最終日は、「登米散歩」と「嵯峨渓クルージング」を予定、露天風呂で朝湯を楽しんだ後、ゆっくりと出発した。

091016_167091016_206_3091016_189_640_2  北上川の水運で栄えた宮城県北の町、登米(とめ)市登米(とよま)町。伊達一門2万1千石の城下町でもある。
 お城を中心に、武家屋敷や蔵の街が残っている。

 もともと「とよま」と呼ばれていた地域を、明治政府の頭の固いお役人が「とめ」と読んで郡名にした。
 平成の大合併で、「とめ」郡と「とよま」町が一緒になったので、こんなややこしい名になったのだ。

091016_205091016_204091016_202 登米は県庁所在地でもあった。1871(明治4)年の廃藩置県によって、水沢県庁が置かれたのである。
 今も冠木門と入母造りの建物は保存され、裁判室など見学出来る。

091016_176_640091016_178_640091016_185_640   1889(明治22)年に建てられた旧登米警察署。木造二階建て、吹き抜けのバルコニーを持つこの庁舎は50年前まで使われ、今はそのまま「警察資料館」として保存されている。

091016_193_640_2091016_194_640091016_201_640_2  こちらはその前年に建てられた、旧登米高等尋常小学校。純木造洋風建築である。
 廊下は1・2階とも吹き抜けの片廊下、二階校長室前のバルコニーからは、校舎全体が見渡せられる。
 明治中期の地方文化の結晶として、国の重要文化財に指定され、教育資料館として保存されている。                                                       

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 「明治のロマン漂うまち、登米」で、最も新しい建物が伝統芸能伝承館「森舞台」である。
 篤志家の寄付によって2年前に建てられた能舞台は、隅健吾が設計、国際建築家賞を受賞した。
 背景の松の絵は、日本画家千住博の作。床下には、能役者の足踏み反響用に甕が配置され、竹林の風の音や虫の声が舞台を盛り上げる。
 藩政時代から伝わる「登米能」 や「岡谷地神楽」が、ここで披露される。

 「みやぎの明治村・登米」は、知る人ぞ知るビュースポットである。

(「嵯峨渓クルージング」と終点松島の旅は、次号に)  

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October 21, 2009

1381.秋・三陸海岸縦断(2)

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091016_074_640 朝5時43分、太平洋の彼方から朝日が昇る。沈む夕日と違って雲ひとつない朝日の光景は珍しい。
 若い頃、帆船で太平洋を横断した時、毎朝シャッターチャンスを狙ったが、いつも雲が湧き出てきて失敗した。

 二日目の旅は、岩手県田野畑村から宮城県南三陸町(旧志津川)までの、およそ260km。リアス式の海岸に沿って車を走らせた。

091016_124091016_122091016_123  朝8時出発、岩泉、田老と国道45号線を走り、10時すぎに宮古市の「浄土ヶ浜」に着く。

 ここは、陸中海岸の景勝地のひとつ。300年前にこの地を発見した霊鏡和尚が「さながら浄土のごとし」と感嘆して名付けた。
 鋸の歯の様に並んだ岩は、白色石英祖面岩。海の底も、石英の白い岩が光を反射する。

091016_079_640091016_081_640091016_085_640  ここからは、船での遊覧がお薦めと、ウミネコをお供にして海上に出た。
 海蝕された岩山や白亜紀の礫岩の小島は、ウミネコにとっては天国。

091016_111_640091016_104_640_2091016_115_640_2  浄土ヶ浜から北は、館ヶ崎・姉ヶ崎、田老の三王岩・明神崎と、日本一のウミネコ繁殖地 が並ぶ。
 観光客が投げる餌を求めて、遊覧船を追うウミネコも大事な観光資源となる。

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 宮古湾、山田湾、船越湾、大槌湾、釜石湾、唐丹湾、吉浜湾、越喜來湾、綾里湾、そして大船渡湾とリアス式海岸を南下すると、碁石岬に到達する。
 浜辺に敷き詰められた黒い天然石が碁石に見えると、名付けられた。
 「日本の渚百選」に選ばれた碁石海岸は、「穴通磯」が有名である。1億3千年昔の砂岩と泥岩の層が海蝕された。

091016_147_4 091016_146091016_142 2日目最後のビューポイントは、宮城県に入った気仙沼市の唐桑半島。
 ここからは、「南三陸金華山国定公園」となる。    
 
 ここの名所は「巨釜」(おおがま)と「折石」。
 太平洋の波しぶきが岩から吹き出し、まるで大釜の煮立った湯の様だと名付けられた。上左の写真が釜、次が蓋なのだそうだ。

 右上の写真は、海面16mを越える大理石の石柱と小柱(写真左上)。
 1896年の「明治三陸沖地震」の時、最大38mの大津波が押し寄せ、岩の上部2mをもぎ取った。小柱の方は、その先端部分である。
 マグニチュード7.6、2万2000人が犠牲者となった。そして現在も、三陸沖は地震と津波の危険地帯である事に変わりはない。                                                                             

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October 20, 2009

1380.秋・三陸海岸縦断

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 全国の観光資源評価「海岸の部」で、1位となった「北山崎」。陸中海岸国立公園を代表する名勝である。
 今回は、岩手から宮城にかけての海岸線、三陸(陸奥・陸中・陸前)を旅した。

091016_022_640091016_023_640091016_024_640  旅のスタートは、岩手県北の街・久慈。

 ここを始発に、1984年に開通した三陸鉄道北リアス線は、宮古までの71kmを90分で結ぶ。

 そのレトロ列車に乗って40分、途中の駅「普代(ふだい)」までを楽しんだ。

091016_035_640091016_049_640091016_030_640   陸中野田、野田玉川、堀内(ほりない)と車窓からは太平洋の雄大な景観が広がる。
 レトロ列車は、十府ヶ浦海岸や大沢橋梁など絶好のビューポイントでは徐行運転となり、車内アナウンスが流れる。
_640  3セク経営の鉄道ならではのサービスだ。

 そして普代村、ここからはバスで北山崎に向かった。

091016_054_640091016_055_640_2  高さは200m、太平洋の荒波が洗う奇岩怪石、大小さまざまな海蝕洞窟とダイナミックな海岸線が8kmも続く。
 断崖直下の浪打ち際までは718段の階段もあるが、夕暮れも迫っていたのであきらめた。

091016_063_640  初日の宿泊は、田野畑村の羅賀。
 1853(嘉永6)年の国内最大規模の農民一揆、「三閉伊一揆」の村として知られている。
 野田、宮古など近辺90村の農民が蜂起、専売制・物産輸出入税反対、藩政改革を南部藩に要求、伊達藩への鞍替えを試みた。

091016_064_640  村には宮沢賢治の作品から駅名を借りた、三陸鉄道「カンパネルラたのはた」駅があり、隣も「カルボナードしまのこし」駅と名付けられている。
 ここで、三陸の「海の幸」ウニ、ホタテ、アワビ、ホヤ、シャケ、イクラを肴に地酒を堪能した。 

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October 19, 2009

1379.ヴィヨンの妻

020_640200pxdazai_osamu  今年は「太宰治 生誕100年」。様々な催しが開かれているが、映画では彼の青春小説の代表作「パンドラの匣」と「ヴィヨンの妻」が同時公開されている。

 ヴィヨンとは、高い学識を持ちながらも無頼放蕩を繰り返し逃亡・入獄・放浪の生活を送った、フランス中世後期の詩人の名前。
 その様な破滅型の作家と妻の夫婦愛を、細やかな心理描写とユーモアで描いたのがこの原作で、「斜陽」「人間失格」と並ぶ太宰の代表作といわれている。

 太宰はこの作品で、ボロボロになった男(己自身)を大きな愛で包み込む女性の崇高な姿に、憧れ求めていた女=妻を見出そうとしたのだ。

20090612012fl00012viewrsz150x  監督の根岸吉太郎(「サイドカーに犬」'07)と脚本・田中陽造(「居酒屋ゆうれい」'94)は、短編小説「ヴィヨンの妻」をベースに、同じ短編の「思い出」「灯篭」「きりぎりす」「桜桃」など、太宰作品のエッセンスを融合させてオリジナル映画を作り上げた。
 だから副題に「桜桃とタンポポ」と付けた。桜桃はその男であり、タンポポは女である。

334057_100x100_005  田中は初めからヴィヨンの妻に松たか子をイメージして書いた。女と金にだらしない夫をけなげに支えるようで、全てが計算ずくというしたたかな女の一面を、松の演技に託した。

334057_150x150_004  相手役、放蕩作家は浅野忠信、これは適役である。太宰を髣髴させる青白きインテリ、「死にたい,死にたい」と言いながら女の慰めを求める男。

 またこのどうしようもない夫婦の面倒を見る居酒屋の夫婦、伊武雅刀と室井滋。
 妻の初恋の男・堤眞一、妻に惚れた男・妻夫木聡、作家と心中未遂の愛人・広末涼子とキャストは揃っている。

 観客は、放蕩作家を太宰治自身にオーバーラップさせて観る。
 1930年、カフェの女と鎌倉の腰越の海に飛び込んだ一回目の心中。女だけが死んだ。
 1937年、内縁の妻とカルモチンを飲んだ2回目。これも未遂。
 1948年、玉川上水に愛人と入水自殺。それが「桜桃忌」、6月19日である。

334057_100x100_002  映画でも心中未遂事件が描かれている。しかし男はなぜ破滅を求めるのか、なぜ放蕩を繰り返すのか、観客の求める答えは稀薄だ。そこには、夫たる作家の自己弁明、自己弁護のシーンしかない。
 館内のほとんどを占める中年女性観客は、それに冷笑で応えてた。そこに連れ合いの姿をみたのかも知れない。

 娘・津島佑子と大田治子は作家。「ヴィヨンの妻」美知子は、太宰の死後およそ50年、1997年まで健在だった。 

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October 18, 2009

1378.TIFE2009

009_640 東京国際映画祭が、六本木ヒルズをメインの会場として昨日から始まった。
 今年は22回目、年々規模も大きくなりアジアでは最大級の映画祭となった。主催者側では、カンヌ・ベルリン・ヴェネチアに並ぶ四大映画祭の一つにしようと努力している。

 もともとこの映画祭は、渋谷の活性化を目指して東急グループの故五島昇さんの呼びかけで始まった。
 私も初回から8回までは主催者側のひとりとして手伝ったが、リタイアした現在は、一映画ファンとして見守っている。

091016_282_640_2091016_285_640   東京国際映画祭の特徴は、「地球環境保全」をテーマにしている事だ。
 「映画には、人を変える力がある。人には、地球を変える力がある。」をメーッセージに、ペットポトルのリサイクルによって作られたグリーンカーペットを、会場のけやき坂に敷き詰めた。

091017_tiff_main_2  オープニングの昨夜は、鳩山総理夫妻をはじめ多くの国際スターや著名監督、スタッフがこのグリーンの道を歩いた。

 映画祭の目玉は「コンペティション」。81の国と地域から出品された743本の作品の中から、15本が選ばれて期間中に上映され「東京サクラグランプリ」(賞金1万ドル)競う。

 審査は、「バベル」('06)の監督で知られるメキシコのアレハンドロ・ゴンザレス・イニヤリトウを委員長に、女優の原田美枝子、ポーランドの監督・俳優イエージ・スコリモフスキ、フランスの撮影監督キャロリーヌ・シャンブティエ、韓国の俳優・監督ユ・ジテさんらが当たる。
 グランプリのほか審査員特別賞や最優秀監督賞、女優賞、男優賞が選ばれる。
 また一般の観客の投票によって、観客賞(1万ドル)もある。

 今年は、ブルガリアやボリビアからの作品の他、スペイン=コロンビア、イタリア=ロシア、チリ=ポルトガル=フランス、中国=日本=香港=台湾など国際共同制作の作品が目立つ。
 日本単独参加は、辻仁成監督の「ACACIA」。アントニオ猪木主演の詩情あふれる愛と絆の物語だそうだ。

011_640_3012_640_2 
013_640_3  映画ファンにとっての楽しみは、公開前の話題の最新作21本の上映、特別招待作品だろう。

 左のポスター以外でも、日本映画では「天使の恋」(寒竹ゆり監督、佐々木希初出演)、「大洗にも星はふるなり」(福田雄一監督、山田孝之主演)、「曲がれ!スプーン」(本広克行監督、長澤ますみ主演)、「わたし出すわ」(森田芳光監督、小雪主演)など11本が並ぶ。

334978_01_01_03 昨夜のオープニング/ワールドプレミアム見たのは、フランスのジャク・ベランとジャック・クルーゾ共同監督の「オーシャンズ」。映画祭の最初をドキュメンタリー映画で飾るのは珍しいが、海の神秘と生き物達を見事に撮ったこの作品は、「地球環境」がテーマの映画祭に最も相応しかった。

019_640_2  ベランとクルーゾは「WATARIDORI」('01)でもコンビを組んでおり、それを上回る感動作だった。
 日本語の吹き替えは宮沢りえ。来年1月22日から全国で公開される。  

 最終日25日には、アメリカのウオルト・ディズニーとピクサーが製作した「カールじいさんの空飛ぶ家」(ピート・ドクター監督)が3Dで上映される。
 クロージングに特別招待のアニメーションが上映されるのも珍しい。
 こちらは、12月に「正月作品」として公開される予定だ。

 

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October 16, 2009

1377.クヒオ大佐

008_640  「父はハワイのカメハメハ大王の末裔。母はエリザベス女王の妹の夫の従妹。結婚すれば米軍から5000万円の支度金・・・」と、甘い言葉でささやく米空軍特殊部隊ファントムのパイロット。
 左のハンサムな男が、そのジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐である。

 クヒオの本業は結婚詐欺師。荒唐無稽な口説き文句で、女性からお金と体と心を奪った男。
 北海道出身中卒、既に子持ちの一家を抱えながら、結婚をエサにA子(51歳)からは4500万、B子(25歳)からは850万騙し取った上に妊娠させた。333641_100x100_006
 余罪を含めると1億以上も被害のあった、80年代後半から90年代にかけて起こったホントの事件である。

 事件を追った吉田和正のノンフィクションを原作に、CM業界の鬼才吉田大八が映画化したのがこの作品。
 「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ]('07)で長編デビューし、カンヌ国際映画祭批評家週間に招待された彼は、この事件を単なる詐欺師と被害者の物語とは捉えず、そこに孤独と愛の意味を問うた。

 騙されたと判っているのに魅かれていく女、バレタと判っていながらも逃れられない男。
 吉田は、滑稽だけどどこかチャーミングな結婚詐欺師と女の間に不可思議な人間世界を見たのだ。

007_640 主人公クヒオ大佐を演ずるのは堺雅人(「南極料理人」'09)、片言の日本語でハワイ系アメリカ人に化ける。
 騙される女は、A子・松雪泰子(「余命」'09)とB子・満島ひかり(「愛のむきだし」'09)、騙されそうで逆に騙そうとしたクラブの女・中村優子。
 他に新井浩文(「剱岳 点の記」'09)、安藤サクラ(「愛のむきだし」'09)。

 吉田監督は、実在の結婚詐欺師物語の今日性を問おうとした。そこで、フィクションとして外務省高官(内野聖陽)を登場させる。

 事件のあったのが湾岸戦争の頃。その時日本(女)は、アメリカ(男)に戦費の分担金として135億ドルを搾り取られた。
 兵士の命を供給したものの、アメリカが負担した戦費は40億、日本と同じく兵士を送らなかったドイツでさえ70億。しかも戦後、日本はどの国からも感謝されなかった。

333641_100x100_001333641_100x100_005   なぜクヒオは、アメリカ軍人に憧れたのだろうか。なぜ女性達はアメリカ軍人にメロメロになったのだろうか。

 鳩山の「対等な関係」発言にアメリカが不快感を示す様に、今も続く日・米の構図を吉田はクヒオにオーバーラップさせて描いて見せた。
 それが作品として成功したかどうかは、問わない。

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October 15, 2009

1376.キラー+ヴァージンロード

334094_100x100_001_2 一流の役者が巨匠(監督)なりうるか?クリント・イーストウドは別格として、日本でも北野武(ビート・タケシ)やマキノ雅彦(津川雅彦)がそれに挑戦している。
 最近は、「山形スクリーム」の竹中直人など中堅役者のそれも目立ってきた。この作品もそのひとつ。

 岸谷五朗、演技派俳優として知られているが監督デビューである。ただ彼の場合、演劇ユニット「地球ゴージャス」を立ち上げて演出・脚本を担当しているので、新人監督扱いは失礼だろう。それでもやはり、肩に力が入ってしまった作品になった。

334094_100x100_008334094_100x100_009  結婚したい女と死にたい女がくり広げる、逃亡劇と奇妙な友情を描いたノンストップ・エンタテインメント。

 子供時代からドジと呼ばれた25歳、「スイングガールズ」('04)女優になった上野樹里が演ずる。
 男運のないアラサーは、「蝉しぐれ」('05)の木村佳乃と2人が主役になる。

334094_100x100_007  彼女たちに絡む男性軍は、岸谷の盟友・寺脇康文とEXILEの眞木大輔。寺脇は「殺された」大家さん、眞木は樹里の結婚相手だが実はフェティシズム男。
 ちょい役なのに北村一輝や高島礼子を持ってきたのは、役者監督だからこそ。

334094_100x100_006  TBSにMBS、CBC、RKBのネットワーク、博報堂やWOWWOWも加わった製作体制だが、アミューズが中心。所属の若手俳優たちを総動員した他、福山雅治に主題歌を書かせる。

 導入部が凝り過ぎて興ざめした観客も多かった様だが、途中からはそれなりに面白くなって、吹き出す声も聞こえた。

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October 14, 2009

1175.いい歯医者

150_640 週刊朝日MOOK版「いい歯医者」が、ベストセラーだそうだ。361のQ&Aを並べ、歯医者選択の参考資料とした。

 歯の治療は結構お金が掛かるし、その額もピンからキリまであって良く判らない。また同じ症状でも、治療法に差異がある。
 こんな事が、売れてる理由なのだろう。

 こちらも7月に歯が割れてしまい、久々に歯医者に通った。直前にこの「本」を知り、本屋で立ち読みしてから 駆け込んだ。

 神経を抜いた歯や詰め物の入った歯は割れやすいそうだが、小生は硬いものを噛んでカクッと縦に割れた。
 左上顎奥から2番目、第一大臼歯である。年相応に脆くなってきたのだろう。

Dentalorgpicture  治療法は大きく分けると2種、抜いてしまうかそのままセメントでくっつけるかだ。
 くっつける方法は「クラウンレングスニング」(歯冠延長術)、最初にそれを希望したがCTスキャンの結果完全に二つに割れているため、抜歯しかないとの説明。覚悟を決めた。

 抜歯後の処置には三つの方法がある。入れ歯を作って留め金で押える方法、健全な両方の歯を削って土台を作りブリッジにしてしまう、そして今流行の「インプラント」である。

 「インプラント」は、人工の歯根を直接骨に埋め込んで、その上に歯を乗せる方法だ。治療期間は半年以上、治療代も20~60万円かかり医療保険は利かない。また入れる人口歯セラミッククラウンは5~7万円だそうだ。
 多くの歯科医はそれを勧める様だが、長くて残り10数年の身にとっては勿体無い。
 結局、最も安いブリッジをお願いした。

 まず麻酔をかけて割れた歯を抜き、神経を切り取る。その傷が治ったあと、隣の歯を削る。これも麻酔をかけて神経をカットする。両方2本だから日数も掛かる。傷が治まったあと土台の型採り、そして割れた歯の代わりの人工歯作り。
 7月6日治療開始、昨日完了。のべ16回通い、治療費総計は3割負担の3万670円だった。 
 同じマンション内の診療所だったので、交通費が掛からなかったのが幸いだった。

 20年ほど前から、厚生労働省と歯科医師会では「8020」運動を進めている。80歳になっても20本以上の永久歯を確保しようという運動で、来年には高齢者の20%が「8020」を維持との目標を立てている。
 こちらは永久歯32本のうち「親知らず」を4本抜いているので28本、今回1本割ったので27本。なんとか80歳まで現行維持したいものだ。

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October 13, 2009

1374.幸せはシャンソニア劇場から

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 舞台は1936年のフランス・パリ郊外の下町。不況で閉鎖となったミュージック・ホール(シャンソニア劇場)を、失業した裏方達が自主運営するお話

 支配人となった主人公と別離させられた息子、売れない寄席芸人だが仲間と共に劇場再建にかける男、オーディションを受けた美人歌手と恋に落ちた照明係り、もはや失われた風景と風俗と人情が描かれる。

 原題が「Faubourg 36」とあるように、1936年という時代がもう一つの主役である。
 世界大恐慌から7年、不況の中でフランスでは初めての人民戦線内閣成立。隣国ドイツではヒットラー・ナチスが権力を完全に掌握、スペインでは内戦が起こる。
 フランス国内においてもファッシズム勢力が台頭、翌年に日・独・伊防共協定成立。そんな時代だった。

 不況、失業、労働者階級の意識の目覚め、右翼の台頭、やがて戦争が世界中を巻き込んでいく。なぜか現代とも共通する社会状況が、作品の背景にある。

 製作したのは名プロデューサ、ジャック・ペランとその仲間達。「ニュー・シネマ・パラダイス」('89)「WATARIDORI」('01)「コーラス」('04)と劇映画からドキュメンタリ-まで幅広く製作するほか、若い頃にはベネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞するなど名優としても知られている。

 仲間達は「コーラス」に続いて監督・脚本を担当した甥のクリストフ・バラティエに、クリント・イーストウッドの最近作のほとんどを撮っているカメラマンのトム・スターン。
 劇中歌はフランスの大御所作詞家で、グレコやジルベール・ベコーのシャンソンを書いているフランク・トマと作曲家ラインハルト・ワグナーノ「コーラス」コンビ。

 配役も「コーラス」に出演した名優ジェラール・ジュニョが支配人役、その息子役も「コーラス」で人気を集めた子役マクサンス・ペランという組み合わせ。そのマクサンスは、製作者ペランの息子、監督の従弟という間柄だ。
 そして寄席芸人役のカド・メラッドも「コーラス」仲間である。

20090519003fl00003viewrsz150x 今回の作品で、新しいスターも誕生した。映画出演2作目のノラ・アルネゼデールが、ミュージック・ホールの再建を助けた歌手として登場、その歌唱力が高く評価されフランス国内の数々の新人賞を受賞している。

 愛と涙の人間模様、時代をきっちりと押えたミュージカルである。

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