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February 28, 2006

277.アメリカ,家族のいる風景

ss-4 タイトルが説明的すぎる。やはり原題「Don’t Come Knocking」の方がいい。ヴィム・ヴェンダースが「アメリカとの決別を胸に撮影した」映画だからである。

 ヴェンダースは、20年前カンヌで「パルムドール」をとった「パリ、テキサス」で一躍脚光を浴びたドイツ出身の監督。その後「ベルリン・天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」など名作を生み、日本でもフアンが多い。
 そのヴェンダースが20年ぶりに脚本家のサム・シェパードと組んで製作した。

 話はそんなにドラマチィックではない。同じくサム・シェパードが演ずる西部劇の落ちぶれた俳優が、スター時代の火遊びで作った子供を尋ねる旅である。人生に老いを感じた時、始めて「家族」という希望と恐れを見出すのである。

 ロードムービーだけに、オールロケによるアメリカの原風景は美しい。
 遊んだ女(オスカー女優のジェシカ・ラング)と息子(ガブリエル・マン)、さらにはもう一人思い出せない女性との間にできた娘(サラ・ポーリー)と会う街は、モンタナ州のビュート。ミズーリ川の上流ロッキー山脈の麓にある町である。
 1900年代初頭、西部開拓の前線だったビュートはロスやサンフランシスコより大きかったという。今はゴーストタウンとなった赤レンガの町並みを、カメラは凝視する。そこをシェパードやジェシカが往来する。
 彼が生まれた町に設定されたところは、ネヴァダ州のエルコ。かってはカーボーイの町として知られたところであるが、今はもうその面影はない。
 トップとラストに登場するのは、ユタとコロラド州境にあるモアブという小さな村。国立公園「The Arches」の中にあり、ここでジョン・フォード監督は数々の西部劇を製作した。この映画でもシェパードの演ずる老優が、美女と切ない別れをして荒野の彼方へ去っていく、という「二流西部劇」が撮影される設定となっている。

 ヴェンダース監督61歳、この作品を最後に長らく仕事場としたアメリカを去って、母国ドイツに帰っていく。美しいアメリカ、古き良き町と時代、同じく老いを感じたヴェンダースのアメリカへの感謝の気持ちが映像に込められている。
 映像を彩るロック・サウンドは、彼が最も敬愛するミュージシャンT-ボーン・バーネットのものだ。あの「OH!ブラザーズ」の彼である。

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276.ひとまく会

 歌舞伎座の最後の一幕を、4階の立見席で観る「ひとまく会」。2月の演目は「人情噺小判一両」(にんじょうばなしこばんいちりょう)である。
 いわゆる新歌舞伎のジャンルに入る作品である。江戸時代の随筆集から想を得た宇野信男が、「六代目菊五郎と初代吉右衛門の個性を生かして書いた佳品」なのだそうだ。今回は、その役をそれぞれの孫である当代「菊・吉」が始めて演じた。こんな配役を組むのが歌舞伎の面白いところである。

 新歌舞伎だけに初心者の我々にとっては判りやすい。浄瑠璃の語りや歌舞伎独特のセリフもなく、時代劇の映画を見ているようだった。しかしプロの観客にとっては、その点物足りないのだろう。前の幕の「京鹿子娘ニ人道成寺」(玉三郎・菊之助)の時は満員だった席が、結構空いていた。

 話は、善意の行いが相手を深く傷つけ、死に至らしめてしまうという悲劇。町人と武士の生き方の違いを宇野はリアルに描いた。「菊・吉」の他には、田之助がもう一人の主人公、家橘、右之助、権十郎等が脇を固める。

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February 27, 2006

275.美の伝統展

bi1 横山大観が画いた「或日の太平洋」、9年前初めてその存在が明らかになった作品である。
 昨日まで開催されていた「大いなる遺産 美の伝統展」で、こうした非公開の名品に出会うことが出来た。
 主催した東京美術倶楽部は、美術商500社からなる組織で今年100周年を迎えた。その記念としてこれまで美術商が扱った国宝や名品、これまで非公開だった個人蔵の名作を一堂に集めたのである。

 展示は、野々村仁清の「色絵藤花文茶壷」や雪舟の「秋冬山水図」、「源氏物語絵巻 夕霧」「紫式部日記絵詞」など「国宝を中心とする古美術の名品」。高村光太郎、平櫛田中、河井寛次郎、板谷波山等大正・昭和の金工・陶芸・漆芸を集めた「近代工芸の創生 新たな美を求めて」。明治以降の日本画・洋画の作品を並べた「日本近代絵画の巨匠たち 知られざる名作を集めて」の3部門で公開された。

bi3 展示のなかで最も見ごたえのあったのは、やはり近代絵画である。物故された70人の画家の作品が、それぞれ1点ずつ並べられている。実際に絵の売買に携わった美術商だからこそ知る、個人のコレクター秘蔵の作品も数多くあった。
 岡田三郎助の「あやめの衣」は、著名なキャバレー王が秘蔵していたものだが、現在はポーラ美術館に移っていた。冒頭の横山大観の作品は初公開、上村松園の「櫛」も門外不出だった作品である。他、下村観山、速水御舟、黒田清輝、青木繁、佐伯祐三、小磯良平の作品等は、今回初めて見ることが出来た。
 数多くのなかから、プロの目で選ばれた作家と作品だけに見るものを圧倒したが、わが郷里の先輩東郷青児と吉井淳二の作品がなかったのだけが残念だった。

 東京美術倶楽部、それまで個々が細々と営業していた「道具商」が明治末に集まって売買の場を設けたのが始まりだという。そのことで絵画の流通が盛んになり、取引される絵の水準も高くなった。「道具商」は「美術商」に昇格したのである。
 100年前、この組織の初代社長になったのは、友人の曽祖父である。それだけに感慨深い展覧会だった。

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February 26, 2006

274.ある子供

pc250 「国際映画祭」のデータを整理していたところ、昨年のカンヌで「パルムドール大賞」をとったこの作品をまだ観ていないことに気付いた。昨年の12月「恵比寿ガーデンシネマ」で封切されている。そして今アミューズCQN。最終日、渋谷に駆けつける。

 監督はベルギーのダルデンヌ兄弟、7年前「ロゼッタ」で同じく「パルムドール大賞」をとったあの名匠たちである。これまでにカンヌで二度の「大賞」をとった監督は、コッポラ、今村昌平等5人だけしかいない。
 もともとドキュメンタリー映画作家である。原子力発電所の労働で資金を貯えカメラを買った。彼等は、生まれ育ったベルギー工業地帯リェージェで、労働者や貧しい人々の暮らしにカメラをむけた。レジスタンス、ゼネスト、ポーランド移民を題材に優れた作品をつくっている。そして「フィクション」の世界へむかう。

 「貧しい人たちにこそ、希望の光をわずかでも見せたい」と、兄弟が抱き続けてきた信念を映像化したのが「ある子供」である。
 ひったくりやコソ泥で勝手に暮してきた「ガキ」が「ガキ」をつくってしまった。女親は母性に目覚める。しかし男親は「ガキ」のまま、自分たちの「ガキ」を他人に売ってしまった・・・・・・・。
 若年層の20パーセントが失業者というベルギーの荒れた街を舞台に、話は展開する。「涙も、本当の愛も、命の重さも知らず、過ごしていた毎日。この未来は変わるのだろうか・・・・」という現代の若者達の悩みを、ダルデンヌ兄弟は厳しくまた暖かな視点でとらえる。
 そこには「ニート」や「引きこもり」がニュースになる日本の現実もオーバーラップする。

 ラストシーンが見事だ。「ガキ」が「子供」になった時、「ガキ」もまた「父親」に変貌する。そして暗転したラストクレジットにふたりの子供役をシーン事に演じた、21人の「赤ちゃん」の名前が流れる。それが希望を暗示する。
 原題も「L’Enfant」(The Child)。主役の「ガキ」は、ダルデンヌ兄弟が「イゴールの約束」で発掘したジェレミー・レニエ、その恋人をデボラ・フランソワ。どこにでもいそうな若者だけに、その真実が伝わる。

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February 24, 2006

273.国際映画祭

 先週開催された「第56回ベルリン映画祭」では、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争後の母と娘を描いた「グルバビツァ」(ヤスミラ・ジュバニッチ監督)が最高賞である金熊賞を獲得した。日本からはコンペに参加した作品は無かったが、注目を集めていた浅野忠信主演の「インビジブル・ウェーブズ」(タイ)は残念ながら選に漏れた。
 「ベルリン映画祭」は、1951年東西対立のドイツにあって西側の芸術文化をアピールしようという政治的意図をもって始まった。そのため当初はハリウッド映画の売りこみが中心だったが、次第に本来の「国際映画祭」としての役割を果たすようになった。
 日本関係では4年前に宮崎監督の「千と千尋の神隠し」が、金熊賞をとっている。

 ベルリンと並んで「三大国際映画祭」と括られるのが、5月のカンヌと8月のヴェネチアである。もっとも古いのがヴェネチアで1932年から始まった。これまで日本からは、1951年の「羅生門」(黒澤明)、1997年の「HANABI」(北野武)がグランプリにあたる金獅子賞を授賞している。昨年の第62回は、現在アカデミー賞にノミネートされている「ブロークバック・マウンテン」(アン・リー)が授賞した。
 有名なカンヌは、1940年代前半ヴェネチア国際映画祭が、イタリアのファシズムの支配下に置かれたことに対抗して企画されたが、結局スタートは戦後の1946年になった。
 日本関係では一昨年、最優秀男優賞に柳葉優弥(「誰も知らない」)が選ばれて話題となったが、これまでに四つの作品が最優秀作品賞の「パルムドール」に選ばれている。1954年の「地獄門」(衣笠貞之助)、1980年の「影武者」(黒澤明)、1983年「楢山節考」(今村昌平)、1997年「うなぎ」(今村昌平)である。

 「国際映画祭」は、国際映画製作者連盟が公認しているものだけでも10ヶ所以上を数える。以上の三つの他、ロカルノ(スイス)、サンセバスチャン(スペイン)、カルロヴィ・ヴァリ(チェコ)の欧州勢に加えて有名なモスクワ、マール・デル・プラタ(アルゼンチン)、カイロ。アジアでは上海、東京と続き釜山、インドでも始まった。

 米・英・日などの「アカデミー賞」は各国の映画関係者を会員とするアカデミー協会が主催して、既に上映された映画のなかから優れた作品や監督・俳優、映画技術者を表彰している。それに比べて「国際映画祭」は、原則未公開作品のコンペである。
 とくに近年は、「映画見本市」の色彩が強くなり国際マーケット市場となっている。ここでは、大手スタジオやプロダクションがブースを開き各国の配給業者への売りこみに精をを出す。カンヌ・東京・上海しか経験はないが、連日話題作が上映され、夜はパーティーが林立する。ある意味で、映画芸術の祭りというよりビジネスの戦場といってよい。

 今年のベルリン、日本からは三池崇史監督の「46億年の恋」がコンペ外で上映されたが、マーケットには「男たちの大和」他多数の作品が出品されたという。各国配給業者の感触は如何?。

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February 23, 2006

272.有頂天ホテル

001_s 先々週の夕刊によれば、「男たちの大和」が350万、「有頂天ホテル」が300万の観客を動員したという。ということは、現在「有頂天」も350万を達成していることは確実だ。
 先月14日に封切されたが、前評判が高いし何処も満員だろうとここまで延ばしてきた。それでも有楽町の「日劇」は人で溢れていた。

 流石、芝居・映画・テレビの脚本家として、今最も油の乗り切っている三谷幸喜である。そして監督作品としては、「ラジオの時間」「みんなの家」につぐ3作目。4年ぶりのメガホンとなった。
 彼は、何時かはこんな映画を作ってみたいと思っていたそうだ。1932年のアメリカ映画「グランド・ホテル」、グレタ・ガルボ、ジョン・バルモアなど5大スターが競演したこの作品は、限られた場所と時間に様々な人物が登場する群像劇だった。もうひとつ、彼の脳裏にあったのは、フレッド・アスチアとジンジャー・ロジャーズのコンビによるミュージカル映画「有頂天時代」(1936年)である。新作のタイトルは、決まっていた。

 ホテルの副支配人(役所広司)とシングルマザーの客室係(松たか子)を軸に、歌手願望のベルボーイ(香取慎吾)、ホテルアシスタント・マネージャー(戸田恵子)、総支配人(伊東四郎)、宴会担当副支配人(生瀬勝久)、筆耕係(オダギリ・ジョー)等ホテル側の登場人物。汚職議員(佐藤浩市)、コールガール(篠原涼子)、売れないシンガー(YOU)、売れっ子の演歌歌手(西田敏行)、訳のわからない大先生(角野卓造)、その妻(原田三枝子)、大会社社長(津川雅彦)、プロダクション社長(唐沢寿明)等々、全ての人物が主人公となって様々なドラマを同時進行させていく。舞台は「迷路のようなホテル」であり、時は全ての人達にとって特別な日「大晦日」。

 人生への迷い、仕事の行き詰まり、夢の消失、閉塞感のなかにあった大晦日の2時間、そしてあらゆる偶発的な出来事が絡み合って新年を迎える。そこには、生きる希望が・・・・・・。
 笑い転げて人生をジワッと考えさせる2時間16分だった。

 3月、三谷はオリジナル歌舞伎を渋谷PARCO劇場で上演する。市川染五郎と構想8年、念願の歌舞伎の書き下ろし作品である。「決闘!高田の馬場」、切符は確保した。

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February 22, 2006

271.クラッシュ

crash 昨年アカデミー賞を授賞した「ミリオンダラー・ベイビー」の製作・脚本を担当したポール・ハギスが、初めて監督した作品である。もちろん製作・脚本も彼である。
 そして、今年も作品賞、監督賞、助演男優賞(マット・ディロン)、脚本賞、編集賞、主題歌賞の6部門にノミネートされている。

 「街に出れば、誰かと体がぶつかったりする。でも、心がぶつかることはない。みんな心を隠しているから」
 予告編で流されたこのフレーズが、映画の全てを語っている。
 天使の街「ロサンゼルス」の36時間が舞台、黒人とラテン系の刑事、自動車強盗犯の若い黒人、白人の地方検事とその妻、黒人のTVディレクターとその妻、錠前屋の黒人とその娘、ペルシャ系の雑貨屋店主に妻と娘、尿毒症の父親をかかえる差別主義の巡査と若い同僚、黒人の病院受け付け嬢・・・・・・、さまざまな階層、さまざまな人種がクラッシュする。
 「人はぶつかり憎しみ会う。怒り、悲しみ、孤独、それでも人は人を愛する」ハギスは映画をこう描いた。

 検事の妻サンドラ・ブロック(「デンジャラス・ビューティー」)、黒人刑事ドン・チールド(「オーシャンズ12」)、差別主義者の巡査マット・ディロン(アカデミー賞ノミネート)。他にブレンダン・フレイザー、テレンス・ハワード、サンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ。

 インディペンデント系の映画らしく、プロの映画批評家達の評価が高い。フロリダ、フェニックス、シカゴ等の映画祭で批評家協会賞を軒並みに受賞、もちろんゴールデン・グローブ賞も受けている。

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February 21, 2006

270.プルーフ・オブ・マイ・ライフ

 ブログで既に紹介した日本映画「博士の愛した数式」は、記憶を失う天才数学者の話。先週末NHK・BSで放送されたアカデミー作品・監督賞の「ビューティフル・マインド」は、天才ゆえに精神を病んでいく数学者と彼を支える妻の愛の物語だった。

proof そしてこの作品は、天才数学者の父親と同じ数学者の娘の、愛と信頼と再生の物語である。
 いずれの作品にも、素数や虚数や√やπが登場する。「数」という突き詰めれば突き詰めるほどに不思議な存在となる「観念」は、「愛」と深い「方程式」を結ぶのかも知れない。ここ一周間に三本の「天才数学者」の愛の物語を観た結論である。

 もともとこの作品は、ピュリッツアー賞をとった舞台劇だった。その話題の作品を「恋におちたシェイクスピア」でオスカーをとったジョン・マッデン監督と主演のグウィネス・パルトロウが7年ぶりに、映画化した。
 主人公の父親には名優アンソニー・ホプキンス(「ハンニバル」)、父の弟子で恋人の数学者をジェイク・ギレンホールが演ずる。
 作品はアカデミー賞有力と云われたが、残念ながらノミネートされていない。ただ上映中の「ジャーヘッド」で主役の海兵隊も演じているギレンホールが、「ブロークバック・マウンテン」で助演男優賞にノミネートされた。

 原題は「proof」(証明)、「私の人生」と日本人好みのタイトルを追加して{√proof}。より複雑な愛の物語にした。昨秋の東京国際映画祭の特別招待作品でもある。

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February 20, 2006

269.男のきもの

oosima 先日、日本銀行元鹿児島支店長の「地場産業の盛り上げ」と題する講演を聴いた。その中で鹿児島の特産品のひとつである大島紬が話題となった。
 「鹿児島勤務中、地元で大島紬を着た人をほとんど見かけなかった。そこで忘年パーティーとして『大島紬を着てみる会』を職員に呼びかけた。『見たことが無い、着たことが無い、触ったことが無い、持ってない』のでレンタルを。その結果『始めて着た、軽い、暖かい、着心地がよい、色柄も豊富』と大好評だった。以来関西勤務の折にはそこで大島紬のファッションショーを開くなど、すっかり虜になった」そうだ。

 そういえば、父や兄ゆずりの「大島紬のきもの」を持っているが時々しか身に着けない。元支店長の話に触発され、私も「きものについて」とくに「男のきもの」について学ぶことを思い立った。

 「男のきもの」については、素晴らしい講師が近くにいらっしゃる。「銀座もとじ」店主の泉ニ弘明さん、テレビや雑誌でお馴染みのあの方である。20数年前、故郷奄美の大島紬を広めたいと銀座に呉服店を開業した。そして4年前、「男のきもの」専門店も開いた。ここでは毎月2回日曜日の午前中に「男のきもの講座」も開いているのだ。

 昨日は「襦袢・着物の着方と角帯の結び方」。これまでは自我流で着ていたが、始めて基本から教えてもらった。ピシッと決まった着物は心地よい。流石である。次回は「角帯のバリエーション」。
ハウツウだけでなく、泉ニ(もとじ)さんのきものの産地を紹介する「着物紀行」もある。

 申し込みは「銀座もとじ男のきもの」 電話03-5524-7472
 http://www.motoji.co.jp

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February 19, 2006

268.焼酎バー「黒瀬」(34)

 最近の新聞から「焼酎の話題」を要約で。

 「鹿大に焼酎学講座~製造法や歴史研究~」
 鹿児島大学は2006年度から、産学官連携による「焼酎学講座」(仮称)を開設して、後継者育成や新技術開発による本格焼酎の研究拠点を目指す。
 講座の内容は、焼酎製造法、麹・酵母の開発、本格焼酎の歴史と文化の体系化など。
 また、講座の運営資金として、鹿児島県や焼酎メーカーなどが5年間に総額5億円規模を寄付する予定で、県は2006年度当初予算に1000万円を計上した。
 関係者は「焼酎は日本を代表する蒸留酒。学問として学ぶ場がなかっただけに素晴らしいこと」「かって日本の醸造学は、京大と鹿児島高等農林が双璧だった。ようやく長年の念願がかなった」「焼酎は鹿児島独特の風土が生み出すもの。地元の研究者が必要」と歓迎している。(南日本)

 「本格焼酎鑑評会、90蔵元が入賞」
 2005年7月以降に鹿児島県内の酒造メーカーが製造した本格焼酎の出来を競う、鑑評会の表彰式が先日行われた。今回は県内106の製造所が芋、黒糖、米、麦の各焼酎を出品、90銘柄が表彰された。
 審査長を務めた熊本国税局鑑定官室長は「高い品質のものばかりだった。特に香りと味の調和がよく、格調高いものを選んだ」と述べた。(南日本)

 入賞した銘柄のうち、焼酎バー「黒瀬」で味わえる主なものは以下の通り。
「桜島」「桜島黒」「相良兵六」「さつま無双」「七夕」「小松帯刀」「萬世」「薩摩宝山」「西海の薫」「知覧武家屋敷」「天文館」「貴匠蔵」「薩摩すんくじら」「利右衛門黒」「鉄幹」「さつま島美人」「黒伊佐錦」「伊佐美」「白金乃露」「さつま大海」「八千代伝白」「三岳」ほか。

 http://keida.cocolog-nifty.com/kurose/

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February 17, 2006

267.ジャーヘッド

jarhead 「この兵士、夢は祖国に尽すこと。この『丸刈り頭(ジャーヘッド)』が僕だ。」
 18歳で海兵隊に志願したアンソニー・スフォードは、湾岸戦争で戦うためアラビア半島の砂漠に送りこまれた。そして175日14時間5分、偵察狙撃兵だった彼は一発の弾も撃たず闘いを終えた。しかし今もなお、砂漠の闘いは彼のトラウマとなって、心の戦争が続いている。 「ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白」は、スフォードが自らの戦場での体験を記した回顧録なのである。
 「『ジャーヘッド』は、戦場の兵士たちの恐怖と退屈、孤独と猥雑と絶望を描ききった、戦争文学の最高峰である」(ニューヨーク・タイムズ)

 あれから15年目、メディアによって操作されたあの「湾岸戦争」は忘れ去られ風化しつつある。デビュー作「アメリカン・ビューティー」でアカデミー賞を獲ったサム・メンデス監督は、それを我々の眼前にもう一度突き付けた。
 コンピューターに操作されるトマホークとピンポイント爆撃、偽装された油まみれの水鳥。しかし砂漠の中にいる兵士達には何が起きていたのか、我々は何も知ってはいない。だから「海兵隊が語る」映画にショックを受ける。

 スフォード自身を演ずるのは、自ら手を挙げたジェイク・ギレンホール(「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」)。狙撃兵のパートナーにピーター・サースガイド(「フライトプラン」)、司令官と上官役をクリス・クーバー(「シー・ビスケット」)とジェイミー・フォックス(「RAY/レイ」)のオスカー俳優が務める。

 この映画は、主人公が一人も殺さない・・・・かっての戦争映画とは一線を画した人間ドラマである。燃える石油の炎に照らしだされる、砂漠の夜景が美しい。

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February 16, 2006

266.白バラの祈り

sirobara 副題に「ゾフィー・ショル、最後の日々」とある。50年間、東ドイツに隠されていたゲシュタポの克明な記録を元に脚本化された実話である。

 1943年ヒットラー独裁政権末期、ナチス打倒のビラを播き逮捕された一人の女子学生。5日後には人民法廷で反逆罪を宣告されて、即座にギロチンで処刑された。仲間を守り人々が忘れていた良心を守り通そうと、壮絶な死に立ち向かったその勇気を、映画は心理的な対話劇で描く。
 「法、秩序、選民、支配の論理」を説くゲシュタポの尋問官に対し、ゾフィーは「自由、良心、神の愛」で応える。「非国民には死を」と叫ぶ元共産党幹部だった裁判官に、「つぎにこの席(被告席)に座るのはあなただ」と毅然として応える。
 しかし独房の中では、死への恐怖を神への祈りでしか支える事の出来ない、普通の若い女子学生でもある。

 主人公ゾフィーを演ずるのは、現代ドイツ映画界実力No1のユリア・イエンチ(「ベルリン、僕等の革命」)。 同じ年頃の子供を持つ父親として複雑な思いを持つ尋問官に、アレクサンダー・ヘルト(「ヒトラー~最後の12日間~」)、監督はマルク・ローテムント。

 昨年のベルリン国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀女優賞を受賞。アカデミー外国作品部門にドイツを代表してノミネートされている作品である。

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February 15, 2006

265.博士の愛した数式

 数学者を主人公にしたら映画はヒットする? 「ビューティフル・マインド」はアカデミー賞を獲った。そして今、「プルーフ・オブ・マイライフ」とこの映画が上映中である。

 算数で挫折する小学生は多い。それは算術と数学を混同して教えているのではないか、と素人ながら思っている。「数学は哲学である。そしてファンタジーでもある。」この映画を観た時、真っ先に浮かんだ言葉だ。「素数」「完全数」「友愛数」「約数」そして「数式」は不思議なロマンを持つ。

 静謐な映画である。「雨あがる」「阿弥陀堂だより」で優しさと豊かな心の感動を届けてくれた小泉堯史監督が、寺尾聡と三度組んで「至高の愛」を描いた。数式の中に秘められた美しい言葉とともに。

 原作は芥川賞作家小川洋子。本屋さんが選ぶベスト作品「本屋大賞」、そして「読売文学賞」を授賞したベストセラーである。「80分しか記憶をもたない天才数学者」という、ファンタジーの世界にしか存在しないような人物を主人公にして、生きる事の素晴らしさと尊さを書いた。

 出演は、寺尾の他、深津絵里、吉岡秀隆、浅岡ルリ子。吉岡の少年時代、√と呼ばれた子供を演ずる斎藤隆成が上手い。

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February 14, 2006

264.美しき野獣

 築地市場での買い物のついでに「東劇」を覗いて見る。ほとんど中高年の女性たちで、席が埋まっている。「韓流」は今だ健在である。

wp_b_1024x768  しかしこの映画は、これまでの「韓流」とは様相を異にする。「四月の雪」や「私の中の消しゴム」のような甘く切ない涙はない。「オールド・ボーイ」や「親切なクムジャさん」をさらに乗り越えたハード・ボイルド作品である。

 「韓国初の本格刑事アクション・ドラマ」がウリである。昨年夏のプサン国際映画祭では、記者を集めてそう予告した。しかし、ハリウッドや香港、日本映画の刑事ものをはるかに凌駕している。韓国映画人の若々しいエネルギーが画面にあふれている。
 「二人の異なるキャラクターを通して大人の世界を描きたかった。善悪を超えるところで彼等を『野獣』に変えるものを描いた作品だ」、とキム・ソンスは監督デビュー作について語る。「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督のもとで、助監督として腕を磨いた結果を見せる。

 異なるキャラクターとは、タフで過激だが不器用な若き刑事・クオン・サンウと冷酷なエリート検事・ユ・ジテの二人。
 クオン・サンウは、「火山高」で映画デビュー、「恋する神父」のヒットで大ブレイク中の人気スター。彼が日本の中高年の女性たちのお目当てなのである。
 ユ・ジテはあの「オールド・ボーイ」で大評判となった。
 もう一人、巨大マフィア組織のボス・ソン・ビョンホもいる。「大統領の理髪師」で警護室長役を演じた彼は、ひとクセもふたクセもある名バイプレイヤーである。舞台演出家でもある彼の存在が、「野獣」に変わる二人の美しさを納得させる。

 15歳以下入場禁止、それだけハードな作品である。原題は「RUNNING WILD」。

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February 13, 2006

263.ミュンヘン

 アカデミー賞にノミネートされた五つの作品の中で、私が最初に観たのがこの映画である。作品賞をはじめ5部門にノミネートされている。
 ウイークデーの午前中開演40分前の切符売り場は、4~50人の行列、指定席券を確保してから朝・昼兼用の食事に出かける。2時間45分の大作だから、腹こしらえはしっかりしておく。

 1993年「シンドラーのリスト」でアカデミー賞を獲った、スティーブン・スピルバーグの監督作品である。
 スピールバーグの作品には「インディ・ジョーンズシリーズ」や「レジェンド・オブ・ゾロ」のようなアクションもの、「ジュラシック・パーク」「ロスト・ワールド」などCGを多用した恐竜もの、「E.T」「宇宙戦争」というバーチャルな世界をテーマにした作品と大別される。
 しかし「ミュンヘン」はこうした娯楽大作とは一線を画した、「シンドラーのリスト」や「プライベート・ライアン」につながる作品である。

 映画のトップに「これは史実に基づいた物語である」とのメッセージが流れる。
 1972年のミュンヘン・オリンピックで、イスラエルのアスリート11人が、パレスチナゲリラ「ブラック・セプテンバー」によって殺された。これに対してイスラエルの情報機関”モサド”は暗殺チームを編成、「報復」を企てる・・・・というストーリー展開である。

 ところがアメリカでの興行収入はよくない。彼の最近の作品の中ではもっとも低いようだ。というのも、この作品は政治色が強いし、中東のテロ問題といまだに解決されない問題を正面から直視しているからだ。
 イスラエルはこの「報復劇」に反撥しているし、サッカーのW杯を前にしたドイツにとっては「ミュンヘンの悪夢」である。そのためスピルバーグは、誤解や論争の火種になることを避けて取材にも応じず、映画そのものの宣伝も押さえている。

 アカデミー賞の前哨戦といわれるゴールデン・グローブでは、作品賞にもノミネートされなかった。しかしこの作品は、人間に対する深い洞察によって人類のあり様を問う。まさに映像作家としてのスピルバーグの真骨頂を見せた映画となった。
 2時間45分は決して長くはない。 

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February 12, 2006

262.焼酎バー「黒瀬」(33)

Imgp1640 芋焼酎1000を越える銘柄のうち「黒瀬」で味わえる逸品シリーズ12回目は、北薩の中心宮之城地区。平成の大合併で隣の鶴田町と薩摩町と合併して「さつま町」となった。この地区は霊峰紫尾山系の水が豊富、古くからの蔵元が3ヶ所ある。

 「紫尾の露」
 ラベルに紫尾山を描いた軸屋酒造の代表銘柄。紫尾の地下146mから涌き出る伏流水を仕込み水と割り水に使用している、その名の通りの焼酎である。旧式の単式蒸留器を使いコガネセンガンと白麹である。濾過も控えめにしているせいか、しっかりとしたイモの芳醇な風味が口に残る。お湯割り、水割りがお奨めである。
 他に、甕貯蔵した原酒を無濾過で油分のみ和紙で掬い取った「原酒 無濾過 甕仕込み」(38度)、割り水した「軸屋 甕仕込み」がある。前者は昔ながらのイモの濃厚な香りが強く初心者はちょっと敬遠しがちだが、通にとってはたまらない味。
 「権助」「ぼっけもん」は、丁寧に濾過した初心者向けのライトタイプ。

 「園之露」
 植園酒造の焼酎は、地元愛飲酒。コガネセンガン、白麹。麹造りから一次・二次仕込みと昔ながらの手法をとっている。蔵元自らが杜氏を兼ね、焼酎ブームの圏外でしっかりと地元に根付いている。
 川内川と地元名産の竹をラベルに描いた「北薩摩」は地元限定。お湯割りでイモならではの旨みを味わいたい。

 「小牧」
 有機栽培のコガネセンガン、清冽な名水、昔ながらの甕仕込み、そして黒麹。あらゆることに拘って造った焼酎。まろやかで独特の深みのある味わいは、新酒と古酒をブレンドして生み出される。38度の限定品は、ロックでもストレートでも水でも何でもよいが、25度の「小牧」はお湯割りに限る。
 「古酒 小牧」は6年もの。滑らかさと旨みが増している。地元用は「伊勢吉どん」、初心者にもよい。

 http://keida.cocolog-nifty.com/kurose/

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February 10, 2006

261.東京道産酒の会(5)

 北海道を慈しむ紳士淑女たちが、月に一度集まる道産酒の会。第175回のメインスピーチは坂本春生会員、札幌の元通産局長で2000年には、愛知万博の事務総長に就任。会期中は副会長として世界中のVIP対応等、博覧会を大成功に導いた功労者のひとり。ようやく残務整理も終り、今回は「愛・地球博・そのすべて」。

Imgp0393Imgp0396 「まず数字から。万博参加国は予定の100カ国が120国に。入場者数は予想の1500万人が2502万人に、これはリピーターが多かったことが背景。その率は40パーセントで、185日毎日来場した人や朝に夕にと270回も来場して万博を楽しんだ方もいらした。これは1万7500円のフリー・パスポートのアイデアによるもの。その結果、数十億円の黒字となった。」

 「VIPの来場も多く、万博は国際的な友好外交の場となった。大統領・首相・皇族はおよそ50人、閣僚級は200人を越えた。また学界・経済界などの要人は数百人と数え切れない。」
 「しかし、人身事故はゼロ。暑さで気分を悪くされた方はいたが、対応は早く大事には至らなかった。これは、ボランテアを含む地元のスタッフ達のお陰。そして、地震も台風も会場を避けてくれた」

Imgp0405Imgp0413 「万博は1851年ロンドンで始まりその後はパリへ。もともと産業開発を中心に『人類の叡智』がテーマだった。150年経った今、始めて『自然の叡智』がテーマとなった。もちろんロボットやIC、バイオなど先端技術も紹介されたが、中心は自然と人間の共生だった。」「会場の建設も開発型ではなく、森や池を生かし地形は変えなかった。パビリオンは空き地に造りそれを空中回廊でつないだ。」「環境への配慮は徹底した。ゴミの処置に代表されるように、新環境技術システムによる万全の対応をとった。」
 「参加者が多様だった。市民の参加が3万人、NPOも国内30・海外50団体、新聞社や放送局も主催者に加わりパビリオンや放送で万博を盛り上げた。」

 「つぎは2010年の上海。最高5時間待ちだった『日立館』に中国関係者は、日本人の文化を見たそうだ。」

 ”待つことが愛だと知った地球博”(サラリーマン川柳) 坂本さんお疲れさまでした。

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February 09, 2006

260.アカデミー賞

 日本アカデミー賞の最優秀作品賞は、「ALWAYS三丁目の夕日」「北の零年」「蝉しぐれ」「パッチギ!」「亡国のイージス」に絞られ今最終選考が進められている。
 一方、本家のアメリカでは先月末、6000人の会員による投票で選ばれたそれぞれの部門の候補が発表された。

 作品賞と監督賞候補は「ブロークバック・マウンテン」(アン・リー)、「カボーティ」(ベネット・ミラー)、「クラッシュ」(ポール・ハギス)、「グッドナイト&グッドラック」(ジョージ・クルーニー)、「ミュンヘン」(スティーヴン・スピルバーク)の5本(5人)。国内で上映中は「ミュンヘン」のみで今週末に「クラッシュ」が封切、本命の「ブローグバック・マウンテン」は3月4日に特別公開される。
 この「ブロークバック・マウンテン」はゲイが主人公の恋愛映画で、先月「ゴールデングローブ賞」の最優秀作品賞を獲った。
 投票結果も「ミュンヘン」を抜いてトップだが、このインディペンデント系の作品がメジャーの作品を抜いてアカデミー賞に輝くかどうか、楽しみだ。

 主演男優賞候補は、投票順にホアキン・フェニックス(「ウオーク・ザ・ライン」)、フィリップ・シーモア・ホフマン(「カボーティ」)、ヒース・レジャー(「ブローグバック・マウンテン」)、テレンス・ハワード(「Hustle&Flow」)、デビッド・ストラザーン(「グッドナイト&グッドラック」)。
 主演女優賞は、キーラ・ナイトレイ(「プライドと偏見」)、リース・ウイザースプーン(「ウオーク・ザ・ライン」)、シャリーズ・セロン(「スタンドアップ」)、フェリシティ・ハフマン(「トランスアメリカ」)、ジュディ・デンチ(「Mrs.Henderson Presents」)の順。ただナイトレイとウイザースプーン、セロンはほぼ並んでいる。
 男優の方は、未公開作品(「ウオーク・ザ・ライン」は18日に封切)の出演者ばかりなので感想を述べることが出来ないが、女優のほうは「プライドと偏見」「スタンドアップ」と、このブログでも紹介した。どちらかに獲ってもらいたいものだ。

 外国作品賞に日本映画はノミネイトされてはいない。長編アニメ映画賞に「ハウルの動く城」が挙がっているだけである。今上映中のドイツ映画「白バラの祈り」は候補作品である。

 来月5日(日本時間6日朝)、第78回アカデミー賞の授賞式は行われる。

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February 08, 2006

259.あおげば尊し

 淡々と綴られたシーンがラストに近づく。老教師の葬儀、ひとり、ふたり、さらに大合唱になって「あおげば尊し」が流れる。耐え切れずに落涙。監督市川準は上手い。泣かせどころを心得ている。

 主人公はその老教師の息子で、これまた小学校の教師。その役をあのテレビで毒舌をはくテリー伊藤が演ずる。映画初出演、これがまた上手い。アクはすっかり抜け、人の良い何処にでも居そうな平凡な教師を見事に演じきった。
 妻の役は薬師丸ひろ子、今年は幾つかの助演女優賞を獲った。離婚経験のあと、急に演技が上手くなった子役出身の女優である。そして、一言も発しないが重い存在感を見せる末期ガンの父親が加藤武、老妻は麻生美代子、そんな家族の物語である。

 原作は直木賞作家の重松清の同名小説。様々な世代の人たちの迷いや心の葛藤を、リアルに書いて多くの読者の支持を集めている。そして市川監督も前作「病院で死ぬということ」以来、だれでもいつかは直面する家族の死や終末医療のあり方に拘る。

 映画のあと銀座を歩きながら、「あおげば尊し」の歌詞をつぶやく。この歌を最後に歌ってからもう何十年の歳月がたったのだろうか。

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February 07, 2006

258.単騎、千里を走る

 「千里走単騎」これが原題である。紀元200年頃の中国三国時代、魏王曹操の捕虜となった蜀帝劉備の妻子を関羽が単騎で救い出したという、「三国志」のなかでも最も感動的なエピソードが語源。関羽はのち華々しい闘いのなかで戦死するが、その後中国では軍神として関帝廟に祭られる。因みにその頃の日本は、卑弥呼の時代である。

photo_p1_01 このタイトルで、高倉健を主役に映画をとったのはチャン・イーモウ、エンターテインメント超大作「HERO」「LOVERS」で世界的な大ヒットを飛ばした監督である。
 といってもこの映画は、「三国志」や中国ヤクザを主人公にした映画ではない。ましてや「日本侠客伝」や「昭和残侠伝」の類でもない。子供の頃からあこがれのスターだった「健さん」をようやく引っ張り出した、「男の中の男」を描く映画なのである。むしろ張芸謀監督の初期の作品「初恋のきた道」に連なる映画と言えよう。

 チェン・カイコーの「PROMISE」で中国語を自由に駆使する真田広之と違って、映画の中の高倉健は中国語はもちろんのこと、日本語さえあんまり喋べらない。一匹狼のストイックで寡黙な健さんそのものである。
 張(チャン)監督は、その健さんをたったひとり、俳優ではなく素人のなかに投げ込む。「人と人が分かり合えない時代のなか、人生に対する想い、情感、思いやり、反省、愛・・・・・」そんなものを描いたという。

 日本でのシーンの監督は、チャンの強い要望で降旗康男が引き受けた。「鉄道員」「ホタル」と数々の名作を高倉健と創ってきた彼である。冬の日本海を前に、「背中」だけで演技する健さんの映像は美しい。「八甲田山」をはじめ、健さんの主演映画を撮り続けてきた木村大作ならではのショットである。
 

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February 06, 2006

257.同想会

 同窓ではなく同想。20数年昔、同じテーマで各国を取材したジャーナリストたちの年に一度の集まりがあった。経済のグローバル化で、資源もマネーも外交も複雑に絡み合っていくなかでの「日本のあり様」が取材の主題だった。
 その後、年に一度は集まって情報を交換したり意見をたたかわしてきた。ほとんどが第一線を引退したが、会は今も休むことなく続いている。
 メンバーの平均年齢は70歳を越えた。しかしいずれも百戦練磨のジャーナリストだっただけに、今も社会を捉える目は鋭い。

 夕方、さるクラブに三々五々集まってきてはワインを飲みながらの談論が始まる。大方が揃った頃、ひとりひとりの「年次報告」と称するスピーチが始まる。
 これが凄い。スピーチを聞くために新幹線でわざわざ関西から駆けつけてくる会員もいるのだ。
 元国際政治記者は、昨今の小泉政治を語る。今もさまざまな情報源をもち、その分析は鋭い。日米・アジアとの関係の中で日本の政治の脆弱さを指摘する。
 元科学記者で金融に詳しい彼は、アメリカのオピニオン新聞の衰退を具体例をあげて解く。
 現在もコツコツと町工場を歩いている元経済記者は、日本の技術力の逞しさを語った。とくに一度衰退した自転車産業(自動車ではない)が、復活しつつある様を数字で示した。
 国際政治記者から外交官に転進したひとりは、昨日始まった日・北朝鮮との交渉の舞台裏を紹介する。
 大学教授に転進したディレクターも多い。「ジャーナリズム論」を教えながらも若い学生達の相談相手になっているらしい。就職関係か、教え子からの携帯電話で席をはずす。
 数少ない現役として、ドキュメンタリー作品を創り続けているテレビ・ディレクターもいる。国際ボランティアとして海外をかけまわっている男もいる。

 今回の出席者は総勢17名、スピーチは4時間近くも続いた。クラブの閉店時間を気にしながらも、もっと聞きたいことがあると出席者は誰も席を立たないのだ。
 日本のあり様について、これからの生き方について、同じ想いをもつ仲間達は皆若い。
 幹事役として、うれしいような怖いような複雑な気持ちで閉会を宣言した。また来年。

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February 05, 2006

256.レジェンド・オブ・ゾロ

zorro 「男はマスクを被ると(顔を隠すと)強くなる」。この現象は古今東西共通の様だ。
 日本ではあの「鞍馬天狗」から「月光仮面」「ウルトラマン」、そしてアメリカは「バットマン」に「スパイダーマン」。そして「ゾロ」、アメリカが生んだ最初のマスク・ヒローなのだ。大衆文学作家のジョンストン・マッカレーが小説に登場させたのが1919年というから、もう87年になる。

 「ゾロ」の登場する映画は数多くある。しかし前作「マスク・オブ・ゾロ」が上映されてから既に7年たった。ゾロがエレナに恋をして子供が誕生、「家族のため剣を捨てた」ことになっている。そのゾロをハリウッド・エンタテインメントの巨匠スピルバーグが復活させたのだ。
 徹底した娯楽アクションである。「生身の肉体の限界に挑んだ戦闘アクションが、スタイリッシュかつアクロバティックに進化!さらにハリウッド最先端SFXがプラスされ、全く新しい”ゾロ”が誕生した」と宣伝は謳う。

 エレナ役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズがいい。前作に続いての登場である。30代なかば、その豊満な肉体美だけでなく、剣さばきがすごい。「シカゴ」でアカデミー賞を獲った後も、「ターミナル」「オーシャンズ12」に出演、今や演技派女優としては自他ともにみとめられている。
 ゾロはアントニオ・バンデラス(「デスペラード」)。その名が示すようにラテン系のアクション・スターである。
 またゾロの息子役はハリウッド初デビューしたメキシコの名子役アドリアン・アロソン。宣伝のため来日したキャサリンが「可愛くて私は彼の大ファンになったのよ」と語る。
 監督は「007ゴールデンアイ」「パーティカル・リミット」のマーチン・キャンベル。スピルバーグはハリウッド一のアクション・キャストとスタッフを総動員したのである。

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February 03, 2006

255.オリバー・ツイスト

 この映画の原作者チャールズ・ディケンズ(1812~70)の名前は、子供のころ読んだ本や教科書で馴染みが深い。シェイクスピアと並ぶ英国最大の文豪、「クリスマス・カロル」「オリバー・ツイスト」が爆発的人気を呼び次々とベストセラーを生んだ。「荒涼館」「デビッド・コパーフィールド」「ニ都物語」「大いなる遺産」など彼の作品は、夏目漱石など日本の作家にも大きな影響を与えた。
 彼の育った時代は、産業革命による格差社会の拡大期。貧しい家庭のため、子供の頃から工場労働者として働き小学校卒業後は、新聞記者見習としてペンを執った。そうした体験から彼の作品は、貧しい者を抑圧する社会システムへの痛烈な批判、ブルジョアジー特有の金権万能の人生観に対する鋭い批判の目を持つ。

img6b 「全ての貧民は救貧院に入って徐々に餓死するか、救貧院に入らないですみやかに餓死するか」とディケンズは書いているが、この作品は天外孤独だが純粋無垢な少年オリバーの「もういっぱいおかゆをください」から始まる。
 そのオリバーを新星バニー・クラークが演ずる。オーディションによって監督の心をつかんだというバニー、彼の存在なくしては、この映画の成功はなかっただろう。そしてもうひとりの主役、悪の中に善の顔を覗かせる少年スリ団のボスが、「ガンジー」でアカデミー賞主演男優賞を手にした名優サー・ベン・キングスレーなのである。

 監督は巨匠ロマン・ポランスキー。カンヌ・パルムドール、アカデミー賞で数多くの賞を獲得した「戦場のピアニスト」に続く作品である。そしてスタッフもまた「戦場のピアニスト」の面々である。
 ポランスキーは、ポーランド出身の俳優・映画作家である。両親はアウシュヴィッツ強制収容所に連行され、母親はここで殺された。自身はクラクスのゲットーを脱出、放浪しながら生き延びる。戦後父親とは再開するが、彼の少年時代の残酷な体験と記憶が、作品には色濃く見られる。「戦場・・・」では両親や家族を、「オリバー・ツイスト」では自らの放浪の旅と貧しい日々が。

 しかし彼はディケンズの小説を選んだ理由をこう述べる。
 「この物語には、素敵なユーモアやエキセントリックなところが強調された等身大以上の人物が描かれている。これは、生き生きとした時代を超えた真の意味でのディケンズ的物語である。」
 そしてこの映画は「自分の子供達のために撮った。いつも寝物語で聞かせていたお話である。」

 ポランスキーの娘と息子が、「オリバー・ツイスト」のスクーリーンに、ちょっぴりと顔を出している。これも彼のプレゼントなのだろう。

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February 02, 2006

254.フライトプラン

1c 30年前「タクシー・ドライバー」で13歳の娼婦役を演じ、批評家達からの絶賛を浴びたジョディ・フォスターも40代なかば、この映画で最高に円熟した演技を見せる。
 88年に「告発の行方」、90年に「羊たちの沈黙」で二度のアカデミー主演女優賞を獲得したが、この時はベテランの共演者の助けもあった。しかし「フライトプラン」は彼女がただ一人の主演俳優といえる。

 高度一万mのジャンボ飛行機の機内という、密室で起こった子供の誘拐事件。その母親で航空機設計技師というのがジョディ・フォスターの役。娘を取り戻すためにはどんな事にも挑む、母性の強さと行動力がテーマである。
 当然あるはずの事実が、周囲の言葉や態度によって消されてしまう恐怖、誰もが信用してくれない孤立の恐怖。映画の中盤まではスリラーサスペンスで観客の心を惹きつける。
 しかし後半になると早くも犯人が想像され、トリックが簡単に解けてしまうのが残念だ。心理的な恐怖感は薄れ、あとはいつ主人公が娘を助けるかだけになってしまった。

 航空保安官で敵役はピーター・サースガード(「ニュースの天才」)、「乗客・乗員の安全が最高優先事項」とジョディとの駆け引きをリアルに演ずるのはショーン・ビーン(「ナショナル・トレジャー」)、彼の存在感が光っていた。
 監督はドイツの新鋭ロベルト・シュヴェンケ(「タトー」)、製作は「ビューティフル・マインド」のブライアン・グレイザーである。

 巨大な機内セットが組まれ、映画のほぼ全編がひとつの機内シーンで描かれているのもみもの。

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February 01, 2006

253,神谷バー

Imgp0321Imgp0325 一人にて酒をのみ居れる憐れなる
      隣の男なにを思ふらん
         (神谷のバァにて)
               萩原朔太郎
 
 伝法院通りを歩いたあと、久し振りに「神谷バー」を覗いた。馬道通りと雷門通りの角にある4階建てのビルである。日本では最も古い洋風バーで、開店以来94年になる。
 しかし洋酒の一杯売りを始めたのはさらに32年遡る明治13年のこと。ハイカラ好きが集まってきたので輸入酒だけでなく、まず自家製の「ハチブドー酒」を造り翌年には「電気ブランデー」を登場させた。いわゆる「電気ブラン」である。
Imgp0322 「電気ブラン」とはブランデーをベースに、ワイン、ジン、、キュラソーをカクテルしたものでアルコール度数は高い。「飲むと舌が痺れる」ので「電気」と言うわけではない。明治15年この酒が誕生した頃は文明開花の時代、西洋の洒落たものには何でも「電気○○」とつけた。
 永井荷風、石川啄木、川端康成、谷崎潤一郎、坂口安吾等浅草を愛した文豪たちも、この酒を楽しんだようで「神谷バー」が登場する作品もいくつかある。

 西洋バーといっても、「チーズ」や「ソーセージ」などのハイカラな洋風つまみだけではなく、「もつの煮こみ」「おでん」「やっこ」「焼き鳥」など下町の肴も揃っている。これが結構「電気ブラン」と合うのだ。
 その上お値段がリーズナブルだ。電気ブランが260円と360円(オールド)、ワイン、カクテル、ブドー酒が250円~500円程度で飲める。酒の肴はだいたい500円とみてよいだろう。
 1階席は150席、一人でゆっくり飲めるし、2階~3階では大人数で宴会も楽しめる。

 ウイークデーの昼下がり、サラリーマンらしき人も含め大勢の老若男女が、琥珀色の「電気ブラン」を味わっていた。

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