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July 31, 2006

408.隅田川花火大会(2)

 江戸東京博物館に出かけたついでに、「両国の花火」の勉強。その「さわり」だけををちょっと。
Hanabi4 「隅田川の花火船」
 「一両が花火間もなき光かな」と基角が詠んだ句は、隅田川での納涼屋形船での花火遊び。
 江戸最大の火事といわれた明歴の大火(1657年)では、隅田川に橋がなかったため10万人以上が死んだといわれている。そこで幕府は日本橋の東と本所を結ぶ「大橋」を架けた。その橋が武蔵国と下総国に跨ったことから「両国橋」と呼ばれた。
 これによって隅田川での船遊びは一段と賑やかになり、納涼期には花火船が屋形船の客に応じて玩具花火を上げたという。
 度々の大火で街中での花火遊びは禁じられており、隅田川だけが許されていたらしい。
 これが「隅田川花火」の原型。

Hanabi5 「両国川の川開き」
 「5月28日、両国橋の夕涼み、今日より始まり、8月28日に終る。竝に茶店、看せ物、屋店の始にして、今夜より花火をともす。遂夜貴賎群集す」(東都歳時記)
 両国の川開きの初日、5月28日(旧暦)に花火が打ち上げられるようになったのは、1733(享保18)年からである。8代将軍吉宗の時代で、全国的な大飢饉、江戸市中での「コロリ」の流行で100万近い死者がでた。そこで幕府は、慰霊と疫病払いを祈って両国橋近くで川施餓鬼会(かわせがきえ)を開いた。この折、橋畔の茶屋や料理屋が許可を得て花火を打ち上げたのである。
 これ以降「川開きの花火」が恒例となり、船宿が8、茶屋と料理屋が2の割合で費用を負担、打ち上げは橋の上流を浅草横山町の鍵屋弥兵衛、下流を両国広小路の玉屋市兵衛が請け負った。
 「カギヤー」「タマヤー」の歓声はここに由来する。

Hanabi2 「両国の花火」
 「橋上の一道、人群り混雑し、梁橋たわみ動いて、みるみるまさに傾き陥んとする」(江戸繁盛記)
 江戸の夏を代表する風物詩となった「両国の花火」は、江戸の町衆ほとんどが見物に集まったという。旦那衆やお大尽は、船宿からあらゆる種類の船を借り出して両国橋の下に集まった。その船の間を、酒、肴、天麩羅、鮨などを売る「ウロウロ船」が漕ぎ回り、また新内や義太夫の芸人達が船に乗って音曲を流した。現代に伝わる「流し」の語源は、ここから始まったという。
 それから100年余りの1843(天保14)年、幕府は「失火」を理由に花火屋を「所払い」にする。「将軍御成り前夜の失火」が表の理由だったが、すでに前年「両国の花火」の規模縮小を命じており、「天保の改革」がここにも影響してきた。
 そして20年後の文久3年、「両国の花火」は中止される。江戸は騒然としてきたからである。(続く)

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July 30, 2006

407.隅田川花火大会

Yun_1274 「両国の川開き」から273年、会場を上流に移して再開してから今年で29回目、「隅田川の花火大会」は95万人という人出で賑わった。私もそのなかのひとりとして、見物客の中に紛れ込んだ。

Imgp0961Imgp0928 午後7時15分、地下鉄蔵前駅前。交通整理にあたる警視庁第5機動隊の指示に従い「厩橋」に向かう。「お待ち下さい」「お進みなさい」とプラカードで合図する機動隊員の後を群集はすすむ。我々の集団は第10グループ。
 駅前からおよそ100m、橋のたもとに着いたのは45分後の8時。30分前から始まった「第2会場」の花火の打ち上げは「音響」だけで我慢する。時々ビルのガラス窓に反射する光を見上げながら。

Imgp0944Imgp0952 立ち止まるとお巡りさんに叱られるので、絶えず歩きながらの花火見物だったが、厩橋からの眺めは素晴らしい。
 眼下の艀から打ち上げられた花火が、頭上で花開く。「桜吹雪は江戸の花」「撫子に霞草」「星空のメッセージ」「和火に吾妻菊」、第2会場を担当したホソヤエンタープライズの花火師たちが得意の腕を競う。「ホソヤ」は江戸時代二大花火師のひとつ「鍵屋」の暖簾を引き継ぐ。
Yun_1277 丁度この時間、隅田川上流桜橋の第1会場では、大手花火業者10社による「花火コンクール」が開かれていた。その花火が、駒形橋・吾妻橋・言問橋の向こうに見える。
 二つの花火大会を同時に楽しむ。それが「厩橋」だけの特権なのだ。一昨年は、駒形橋を歩いた。右を向いたり左を向いたりと慌しかったことを思い出す。

Yun_1291 橋ノ上の花火見物はおよそ20分、隅田川に浮かぶ屋形船が羨ましい。てんぷら食べて2万円、それでも3月前には満席だそうだ。
 群集に押されながら両国へ。清澄通りは、見物客の桟敷。道路の前方、ビルとビルの間に花火が見える特等席はここしかない。
 その間を縫って地下鉄両国駅に着いた時、花火大会が終了した。自宅を出て帰宅まで1時間45分、夏の宵は一瞬だった。

Imgp0935 歩きながら撮影したデジカメ、今年の傑作である。

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July 29, 2006

406.ドミニカ移民訴訟(3)

 「ドミニカ移民」第一次入植者28家族・185名を乗せた「ぶらじる丸」は7月2日横浜港を出航、28日ドミニカ共和国トルヒーヨ港に到着した。翌29日、入植者たちは首都サント・ドミンゴから350㌔離れたハイチ国境にあるダハボンの原野に到着した。50年前の今日のことである。
 苦難の歴史はこの日から始まった。

 29日午前10時(日本時間では今夜の深夜)、サント・ドミンゴ市ホテルハラグアでドミニカ共和国大統領、日本政府特使等の出席のもと「移住50周年記念式典・慰霊祭」が行われる。そして学生寮の譲渡、ハラバコ入植地公民館落成式、Expo Colonia Japonesaなど一連の記念行事が続く。

 今回は「移民訴訟」「総理謝罪」など「ドミニカ移民問題」が国内のマスコミで大きく取り上げられたため、NHKを始めテレビ局・新聞社が取材班を現地に送っており、また大手出版社などは著名なルポライターを派遣している。
 今後は、「ドミニカの50年」を巡る様々な映像や記事が紹介されると思うが、これまで長期にわたって「ドミニカ」を追求してきた鹿児島や山口など地方民放のドキュメンタリーを期待している。

 そのひとつは、2年前「そこに楽園は無かった~ドミニカ移民苦闘の半世紀」(フテレビ系列)を放送した鹿児島テレビ。FNNドキュメンタリー大賞となった作品だが、担当した四元良隆ディレクターは先日も東京地裁判決など追跡取材しており、必ずや集大成した作品が発表されるだろう。

 記念祭を前に総理もコメントを発表している。これが現段階での「政治」の「総括」である。「小泉メールマガジン」から一部抜粋する。

「昭和30年代前半、政府が進めた移住事業により、夢と希望を胸に、遠く離れたこの国へはるばる海を渡って入植した日本人は1300人あまり。
 しかし、入植先に関する事前調査や情報提供が適切に行われなかったなどの事情により、移住先は、石ころだらけの荒地などとても農業ができるような土地ではなく、くわえて移住先の社会の混乱と自然災害の頻発などの不幸なできごとが重なり、移住者の方々は長年にわたり、私たちの想像を超える大変な苦労をされました。
 この移住事業についての政府の当時の対応により、移住者の方々に多大のご苦労をかけたことについて、政府として率直に反省し、お詫び申し上げます。そして、政府は、移住者の方々に対し、そのご努力に報いるためにも、特別一時金の給付を行うことにしました。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 移住者の方々が困難を乗り越え、努力を重ね、日本とドミニカ共和国の友好関係の発展に寄与してこられたことに深い敬意を表わします。これからも、日本とドミニカ共和国の両国が友好裏に発展していこうという思いのうちに50周年の記念式典が開かれることになり、本当に良かったと思います。両国の人々による温かい祝賀となることを期待しています。」

 この「メッセージ」について、とくにコメントはしない。

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July 28, 2006

405.嫌われ松子の一生

Wp 製作に加わっている知人から「ぜひ観てくれ」と言われていたが、なかなか近所で上映されない。配給は東宝なのに新宿や吉祥寺の小さな劇場のみ。ようやく銀座の小劇場にやってきた。

 「傑作」である。「下妻物語」で鬼才ぶりを発揮した中島監督の二作目、CMディレクターとしての腕を如何なく発揮している。映画製作の常道をひっくり返しながらも、きちんと起承転結をつけた。
 徹底的に不幸な主人公の人生を、全く新しいシンデレラストーリーに仕立て、ファンタジックな映画にした。色彩感覚も凄い。あのフイルムに焼きつけた「色」が、物語の全てを語る。

 原作は山田宗樹のベストセラー、横溝正史賞も受賞した若い作家である。傷ついても傷ついても夢を見る女のコ、ある殺人犯の人生を思い出す。

Cast01 主人公は中谷美紀。「私は松子を演ずるために女優を続けてきたのかもしれない」という。
 歌の巧い可憐な音楽教師、売れない作家と同棲してDV、転落してソープ嬢、ヒモを殺してムショに、教え子のヤクザと同棲、ヤクザは出入りで人を殺して服役、最後は引きこもり、そして河原で粗暴少年に殴り殺される。享年53歳。熱い演技である。

Cast02 物語を綴るのは、甥の役瑛太(「空中庭園「)。叔母の生き様を知って自らの人生に目覚める。
 教え子のヤクザ伊勢谷友介、主人公の弟香川照之、妹市川実日子、ムショ仲間黒川あすか、父柄本明、他も錚々たるキャスト、贅沢な作品である。

 主人公の人生の区切り区切りに、「TVニュース」が登場する。「彼女のあの不幸な時、私はこんなに幸せだったのだ」と観客は優越感にひたるのか・・・・。
 そして最後の区切りのニュースは、日本中に流れる「だんご三兄弟」の歌。「君が『だんご』で浮かれていた頃、松子は死んだのだ」、ブームの仕掛けに関係した私に、それを知人は伝えたかったのかも知れない。

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July 27, 2006

404.奇跡の夏

Int 原題は「Little Brother」、邦題は凝り過ぎ、別のイメージを抱いてしまう。
 韓国映画である。といっても「韓流」とくくってしまう映画ではない。どこの国で製作できる普遍性をもつ。

 主人公のパク・チビンが大人顔負けの演技を見せる。10歳、昨年のニュー・モントリオール国際映画祭で主演男優賞を受賞した。天真爛漫、おちゃめで泣き虫で何処にでもいる愛らしい子供である。日本で探せば「花田少年史」の須賀健太か。

Int_01Int_03 テーマは重い。脳腫瘍の兄とワンパクな弟、子供の闘病を母親が綴った実話である。それを「イルマーレ」の脚本家キム・ウンジョンがシナリオ化した。彼女は原作者の実の妹でもある。

 小児ガンに苦しむ兄、同病の友達の死、9歳の少年にとってどうしようもない現実、まさに初めて直面した人生の試練のどう向かっていくのか。監督イム・テヒョンは、それをやさしく描いていく。

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July 26, 2006

403.ケーブルテレビ

 マンションでケーブルテレビを視聴出来るようになった。工事費は無料、加入金や月額利用料もかからない。
 というのは、昨年中央区が「難視聴対策基盤整備事業・要綱」を決め、月島地区で第一期の工事が始まったからだ。
 地上デジタル放送を見ていたので気がつかなかったが、マンションのTVは「ゴースト」が酷かったのだそうだ。とくに1~4chは、時間によってはほとんど視聴不能だったという。
 目の前に東京タワーがあるので「難視」とは、と配られた説明書をみて不思議に思っていたが、電波が強いだけにビルからの反射も強い。タワーからの直接届く電波と、ビルに反射して入ってくる複数の電波が干渉してゴーストが生ずる。また分配器などに電波が混入して縞模様を起こしていたそうだ。

 難視聴対策は、新宿の高層ビルや高速道路建設で古くから行われていたが、中央区も昨今の超高層ビル建設ラッシュでようやく腰をあげたようだ。それともうひとつ、この地域にはこれまでケーブルテレビ局が無かったからだ。
 ケーブルテレビは、「有線テレビジョン放送法」によって事業区域等に制約がある。そこで隣の「江東ケーブル」が「東京ベイネットワーク(㈱)」と名前を変え、中央区にサービスを広げた。そして中央区の指定放送事業者となり難視聴対策の受皿となったのである。

 事業にかかる経費は、区内に一定の高さの建物や広い敷地での開発を行う建築主が、協力金の名目で負担する。だから、マンションであれ一戸建てでも工事費は無料となる。そして東京タワーから送信されている電波を、アンテナでなくケーブルで受信することが出来るのである。

 ケーブルテレビ局は、こうした同時再送信の放送以外に多チャンネルの有料放送を行っている。これがビジネスの中心であり、これを機会に多くの住民の加入を期待しているのだ。
 加入金や手数料が36,750円、それに工事費、毎月の利用料が4,515円または2,415円(チャンネル数による)かかる。この金額が安いのか高いのか、それは受け手の「情報」に対する価値判断になる。

Imgp0920Imgp0922 「東京ベイ」が独自に制作する「コミュニティー・チャンネル」は無料なので、もっぱらこれを見ながら思案中である。

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July 25, 2006

402.日本沈没

Nc06_wp07l 1973年、650万人が見た東宝映画「日本沈没」。伝説の映画が33年ぶりに、現代版として復活した。
 原作は小松左京、本は400万部というベストセラー。翌年10月にはTBSがTVシリーズにした。

 ストーリーは基本的に変わってはいない。ただその後に、阪神大震災が起こり新潟大地震もあった。それらの実体験が今回の映画に巧に取り込まれている。例えば、政府の危機管理体制、自衛隊の救援活動そして新潟で活躍した東京消防庁のレスキュー隊などである。

 出演者を比べて見ると、また時代を思い出させる。小林桂樹の地震学者、今回はエキセントリックに豊川悦司が。体を張って国を救う潜水艇パイロットは、藤岡弘からやや気弱な草彅剛に。その恋人はいしだあゆみから柴咲コウ、そして彼女は阪神大震災で両親を亡くした消防庁レスキュー隊員という設定である。総理は丹波哲郎から石坂浩二である。また総理に代わって指揮をとる大臣は女性、大地真央がキリッと締める。たしか前作は男の指揮官だったと記憶しているが。
 勿論監督も森谷司郎から樋口真嗣、「ローレライ」で自衛隊をうまく使ったあの若手監督である。

 映画技術も進歩した。前作での「ゴジラ」で強い東宝特効に加えて、コンピューターを駆使したVFXである。街を飲みこむ大津波、大都市の崩壊、実在の火山をベースにした大噴火などよりリアルになった。あの「六本木ヒルズ」も現代版だからこそ崩れ落ちるのである。
 自衛隊の協力ぶりも大きな差がある。陸・海・空とも装甲車に自衛艦、救難艇に航空機・ヘリコプターと実物で全面協力する。
 さらに各地にフイルムコミッションの協力体制が整っている。大群衆シーンは彼等の協力なくしては成り立たない。日本もようやくアメリカ並になった。

 監修に協力した東大地震研が映画の封切にあたって、「Q&A」の「HP」を開いている。
 Q.日本が沈むことはないのですか。
 A.映画では「メガリス」の沈降によって沈没するが(「メガリス」の存在の可能性は指摘されているが、まだ最終的に確認されたわけではない)、もしそうなったとしても100万年の時間がかかります。
 Q.過去に沈んだ大陸はあるのですか。
 A.ムー大陸、アトランティス大陸など伝説上ではあります。
 Q.どうして映画は面白くないのですか。
 A.それは主観的・直感的なもので、当研究所では「客観性と再現性」によって検証できるもの以外はお答え出来ません。

 来月下旬には、小松左京原典・筒井康隆原作・実相寺昭雄監修で「日本いがいぜんぶ沈没」という映画が封切られるのだそうだ。

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July 24, 2006

401.佐賀のがばいばあちゃん

 映画館に佐賀の特産品が並ぶ。佐賀県知事特別推薦、佐賀県・市・県フィルムコミッション・県教育委員会・青年会議所が協力、それに加えて広島市フイルムコミッション・市教育委員会・市PTA協議会・商工会議所・青年会議所・広島こども協議会とある。
 ラストタイトルにも、何百という市民達の名前がロールテロップで流れる。製作費を寄付した大勢の支援者たちである。

 「お笑い」島田洋七の自伝小説(徳間文庫刊)を映画化した。原爆症で父親を亡くした洋七少年が広島を離れ、佐賀に住む祖母・がばいばあちゃんに引き取られ、逞しく育っていくお話である。「がばい」とは佐賀弁で「すごい」ということ。そのばあちゃんを、吉行和子が演ずる。

 吉行はさすがベテランである。少々上品過ぎるが掃除婦をしながら少年を養う。先祖が葉隠れ武士らしく、貧しくても誇りを忘れない。そんな役を見事に見せた。
 少年の母親が工藤夕貴、叔母が浅田美代子、先生が山本太郎、現在の洋七を三宅祐司。少年は成長に合わせて3人の子役が演じた。
 監督は制作プロダクション「アマゾン」の社長・倉内均、脚本を劇団「黒テント」の山元清太が書いた。いずれもテレビで活躍している面々である。

 昭和30年代の話であるが、今のスローライフにぴったりである。そこで「がばいばあちゃん」の語録を。
 「この世の中、拾うもんはあっても、捨てるもんはなかとばい」
 「まがったキュウリも、刻んで塩でもんだら同じこと」
 「今のうち貧乏しとけ。金持ちになったら大変よ。よかもん食べたり、旅行にいったり、忙しか。」
 「うちは明るい貧乏やけんよかと。しかも先祖代々貧乏だから、自信ばもて」
 「悲しい話は夜するな。どんなにつらい話も、昼したら大したことない」
 最後に「葬式ば悲しむな。丁度よかった潮時だった。」

 子供達と一緒に映画館に出かけ、笑って泣いてください。

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July 22, 2006

400.ドミニカ移民訴訟(2)

 「50年たってようやく『棄民』が『移民』と認められた」と、ドミニカ移民訴訟原告団の嶽釜さんは呟く。
 昨日小泉総理は、彼等移住者の代表と官邸で会って「50年代後半の移民政策が移住者に困窮を強いた」ことを謝罪した。そして原告団は上訴を取り下げた。
 詳細はテレビや新聞が報じているいるので省くが、ブログ372号(6月16日)にわずかな希望として書いたように「政治による決着」が計られたのだ。

 「荒地を耕した50年の苦労がたったの200万円か」。政府の見舞い金が、要求の10分の1にも満たない額に原告たちの落胆は大きいが、移民の高齢化と長期化する裁判闘争という苦渋が、今回の決断となったようだ。
 原告団をまとめてきた嶽釜さんですら、移民2世の68歳。だから原告ではなく事務局長として戦ってきた。
 子息はドミニカ共和国海軍の将校、彼等に長引く裁判を引き継がさせることは出来ないだろう。3世たちは、ドミニカ国民としてりっぱに生きているのだから。

 6年前国を提訴して以来、嶽釜さんの来日は60回を超えた。そして父祖の地を同じくする嶽釜・小泉・尾辻(前厚生大臣)の三人によって、ようやく戦いが終結した。巡り合わせである。
 嶽釜さんはドミニカにトンボ帰りしなければならない。来週土曜日にはサント・ドミンゴ市で「ドミニカ移住50周年記念祭」が開かれ、彼はその執行委員長を務めているのだ。大統領も出席する記念式典には尾辻さんが首相特使として日本を代表する。

 ドミニカに限らず、国の移民政策は多くの問題を残す。外国に送ってしまえば後は自己責任になってしまうからだ。
 カナダ移民2世の親友がバンクーバーに住む。戦争中は収容所に入れられ、終戦後鹿児島に引き揚げてきた。 彼はドミニカ移住と同じ頃、再び一人でカナダに渡り農場労働者となった。しかし仕事は厳しくまさに農奴の生活だったという。
 2年で農場から脱走、バンクーバーで日系の庭師に拾われた。そして50年、今ではガーデナーの親方として一家をなしている。彼はあまり語りたがらないが、その労苦は想像を絶する。
 この9月には、昔の同級生たちがツアーを組みバンクーバーの彼を訪ねることにしている。

 ともかく「ドミニカ移民訴訟」は終った。高齢者や困窮者支援、日本人社会の拠点づくりなど、今後の政府の支援施策を見守るしかない。
 今夜は「黒瀬」に同郷の仲間達が集まり、「苦渋の祝杯」をあげる予定だ。 

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July 21, 2006

399.サイレントヒル

Silent 世界中を震え上がらせた「最も怖い」人気ゲームの映画化である。ゲームを製作したのは日本のコナミ、「サイレントヒル・シリーズ」は4作まで世界中で発売され、売上総数は530万に上るという。

 映画の方はたびたび予告編を見たせいか、それほどは「震撼」しない。登場する異形の者たちもむしろ可愛げがある。しかし単なるホラー映画と異なり、ある哲学を持った作品に仕上がっていた。
 「古典的なロマネスク調メロドラマとシュールなSFの中間を狙った」と監督のクリスト・ガンズはいう。

 ガンズはフランスの映画監督。「ジェヴォーダンの野獣」で「白と黒」を基調にしたスタイリッシュな映像感覚を見せたが、今回も「闇の黒」と「霧の白」で恐怖を描く。

 映画では四つの次元の「サイレントヒル」が登場する。30年前の「サイレントヒル」、燃え続ける現代の「サイレントヒル」、そして霧に包まれた街と暗黒の街である。実在のカナダ・オンタリオ州にある街の大通りを、うまくモンタージュして霧の街を作った。屋内はまたカナダに大掛かりなセットを造った。
 
 そう、話しの舞台はアメリカだが、映画はフランスとカナダの共同制作なのだ。そして製作総指揮をとったのが、コナミでゲーム音楽の作曲を担当している山岡晃、日・仏・加のクリエイター達の作品と言ってよい。
 またキャストの方も国際的である。主人公のラダ・ミッチェル(「ネバーランド」)はオーストラリア出身、その夫はショーン・ビーン(「フライトプラン」)イギリス出身、娘のジョデル・フェルランド(「ローズ・イン・タイランド」)はカナダの名子役、女性警官はローリー・ホールデン(「マジェスチック」)はアメリカ、カルト教団の教祖アリス・クリーク(「サラマンダー」)は南アフリカである。

 映画の前半は「恐怖ホラー」の世界だが、後半は「ダ・ヴィンチ・コード」の世界になる。次々と登場する闇の異形者より、キリスト教原理主義派らしきカルトに洗脳された人間達の方が、もっと怖いというお話である。

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July 20, 2006

398.ブレイブストーリー

About_img04 夏休みに入ったのでアニメ映画がいくつか封切られた。昨日はハリウッドの「カーズ」だったので、今日は日本の「ブレイブストーリー」にした。「ポケモン」もあるが、これは勘弁してもらう。

 「カーズ」のピクサーと並ぶアニメ・プロダクションと自負しているGONZOの作品である。フジテレビがプロジェクトを統括して、ワーナー・ブラザーズと組んだ。世界規模で配給していくのが狙いだ。あとは電通やスカパーを加えた。だから製作総指揮は「湾岸シリーズ」の亀山千広である。

 「世の中というのは変えられるものです。・・・・・・・・・変えていかなければならないのですが、じゃ世の中だけかえればいいのか?という疑問も、同時に突きつけられると思うのです。」(宮部みゆき)
 原作は直木賞作家の宮部みゆきのベストセラー小説。すでに90万部を超えている。1000ページに渉るこの小説を2時間のアニメにするため、シナリオ作りに1年半を費やした。宮部もとことん付き合い、妥協を許さなかったと言う。

 ストーリーは、宮部のメーセージにもあるように、ファンタジーを借りながらもかなりコアなものである。「現実の世界から『幻界』へと冒険の旅に出た少年の心の成長」を描くが、このあたりは「ロード・オブ・ザ・リング」を彷彿させる。

 声の出演が豪華である。主人公の少年を松たか子、彼を支える怪獣?は大泉洋、彼を守るファンタジーの国のリーダーを常盤貴子、他にウエンツ瑛士、樹木希林、伊東四郎、田中好子、高橋克実、柴田理恵・・・。そして監督は千明考一。

 全てをCGで製作した「カーズ」と異なり、この作品は10万枚のセル画と3D・2Dの組み合わせである。日本的な手書きの味を生かしながらうまくCGと融合させている。それだけに制作期間は4年もかかったという。ラストタイトルに名を連ねるアニメ製作のスタッフは、700人を超える。
 また音響製作は、数々のアカデミー賞(音響部門)を獲っているルーカスフィルムのスカイウオーカー・サウンドが担当した。

 小学生以下では理解するのが難しいプロットもあるが、親子で鑑賞して議論を交わすといい。期待の「ゲド戦記」も控えている。

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July 19, 2006

397.カーズ

Tale_pic コンピューターアニメーションの世界でトップ・スタジオといわれるPIXARの長編アニメ7作目は、自動車が主人公になった。つまり自動車が擬人化されてストーリーは展開する。

 「トイ・ストリー」(1995)を仕事先のハリウッドのスタジオで見て以来、「バグズ・ライフ」(1998)、「トイ・ストーリー2」(1999)、「モンスターズ・インク」(2001)、「ファインディング・ニモ」(2003)、「Mr.インクレディブル」(2004)と、ピクサーの作品は必ず見てきた。モンスター等を擬人化して話を展開する手法には少々飽きたが、今回の作品はそれらを集大成した。出来は確かに巧い。

 ピクサーはアップルコンピューターの創始者スティーブ・ジョブスを中心に、ルーカスフイルムでCGの第一人者だったエド・キャトムル、カルフォルニア芸大キャラクターアニメ・プログラムの一期生ジョン・ラセター等が1986年に設立したプロダクションである。
 キャットムルはコンピューター・サイエンスの博士号を持ち、「レンダーマン」と呼ばれる映像処理用のCGソフトウエアを開発した。このソフトは「ロード・オヴ・ザ・リング」や「マトリックス・リローデッド」など他社の作品にも使われている。彼は、ピクサーのテクニカル部門のトップとして多くの技術者を育てている。
 一方、ラセターはクリエイティヴ部門を率い、「トイストーリー」や「バグズ・ライフ」の監督、「モンスターズ・インク」他では製作総指揮として多くのアカデミー賞に輝いている。とくに「ファイティング・ニモ」では、865億円と世界最高の売上を獲得した。

 「カーズ」は6年ぶりのラセター監督作品であるが、この冬ウオルト・ディズニー・ピクチャーに買収されたピクサーの初めての作品でもある。
 ディズニーは、これまでもアニメ自社製作部門を持ち最近作では「チキン・リトル」などを発表している。また、ピクサーとも1900年代から契約を結び共同で開発・製作を進めてきた。しかし、直轄部門のアニメの売上に陰りが見え始め世界トップのピクサーを一部門のプロダクションにしたのである。
 しかし実権はピクサー側が持ち、CEOのジョブスがディズニーのアニメ部門の総責任者となった。そのため、ディズニー・アニメ育ちの監督やプロデューサー等が退社している。

 世界のアニメ映画業界の盛衰は激しいが、日本のスタジオ・ジブリが今このピクサーと同じ土俵で競っているのがうれしい。

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July 18, 2006

396.焼酎バー「黒瀬」(51)

 最近の焼酎の話題を新聞・HPから要約で。

 「焼酎ブームに陰り?芋は好調」
 帝国データバンクは先週「2005年焼酎売上高ランキング」を発表した。
 トップは3年連続で、麦焼酎「いいちこ」の三和酒類だったが前年に比べ減、「雲海」「二階堂」「高橋」「神楽」など蕎麦や麦、米焼酎を主とするメーカーは、いずれも売上を落とした。
 一方、芋焼酎の「薩摩」「霧島」「浜田」「小正」の各酒造は10%から20%の伸び率で、ベスト10を占めた。また「富乃宝山」の西酒造(鹿児島県)が44%で伸び率トップ、2位は錦灘酒造(鹿児島県)の39%となっている。
 上位50社を県別に見ると、鹿児島県が前年より3社多い19社と2位を大きく引き離しての全国1位、続いて沖縄の8社、宮崎6社、大分4社、福岡3社となっている。
 焼酎全体ではブームが下火になるなか、芋焼酎には人気が集中している。(朝日、西日本、読売、日経)


 「『焼酎カス』ゼロの製造技術を開発」
 焼酎の製造工程ででる「カス」の海洋投棄が問題となっているが、西酒造(日置市)と鹿児島大学ではカスの出ない「ゼロエミッション焼酎」の製造技術を開発、2~3年内の実用化を目指している。
 これは蒸留前の醗酵したもろみを、遠心分離機で液体と固体に分ける方法で、液体を蒸留すると淡麗なすっきりした焼酎とクエン酸やアミノ酸を含んだ酸味調味料が出来る。また固体の方からは、濃厚で芳醇な焼酎と食物繊維が出来る。食物繊維は薩摩揚げやめんに添加すると、保水・防腐効果があるという。
 研究はNEDO(新エネルギー・産業総合開発機構)の事業としておこなわれているが、実用化すると環境にも優しく原料の芋全てが最資源化されることになる。(373news.com)

 「焼酎蔵元、梅酒で攻勢」
 首都圏の女性を中心に「梅酒ブーム」が起こっているが、鹿児島県内の焼酎蔵元では「本格焼酎」(乙類)を使って芋や麦の風味を生かした梅酒の増産にのりだしている。
 薩摩川内市の山元酒造では麦焼酎ベースと芋焼酎ベースの2種類を製造、昨年比5倍の180klを出荷した。また鹿児島市の小正醸造では米・麦・芋のブレンドで270kl、小鹿酒造、本坊酒造、指宿酒造なども地元産の梅を原料に、本格焼酎をベースにした梅酒づくりに乗り出している。(NIKKEI NET)

 焼酎バー「黒瀬」 03-5485-1313

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July 17, 2006

395.大銀座落語祭2006

Imgp0913Imgp0910 林家正蔵、笑福亭鶴瓶、春風亭小朝、立川志の輔、春風亭昇太、柳家花緑の「六人の会」。彼等中堅噺家たちがプロデュースする「大銀座落語会」が、今年も銀座の6会場で今日まで開かれている。
 今年のテーマは「落語ブームはこれからだ!!」

 企画の中心になっているのは小朝師匠、彼等の人脈でベテランから新人まで100人近い噺家を総動員した。また落語好きの風間杜夫や清水ミチコ、ケーシー高峰、稲川淳二、そして小沢昭一まで登場とバラエティーにも富んでいる。

 五つの会場で、午前・午後・夜と同時並行で42の「寄席」が開かれ、今夜は新橋演舞場でのグランドフィナーレとくるから選ぶのも大変だ。
 毎年、高校の後輩・林家彦いちの出演する寄席は、応援方々同窓の仲間達と押しかけている。そこで初日は「JUJIYAホール」に出かけた。

 「待ってました若手十八番」と題しているが孫もいる春風亭正朝も登場するので、これはオチ。彦いち師匠のお題はオハコの「反対陣」、体育会系らしく高座の上を飛び跳ねて噺す。昨年は「英語落語会」に登場して同じ「反対陣」を英語で披露していたが。
 寄席には彼を含めて5人の若手!が登場したが、やはり「井戸の茶碗」を噺した春風亭正朝が面白かった。さすがベテランである。
 
 二日目はヤマハホールの「小沢昭一の吉原へご案内」。随談と銘打ったこの舞台は、彼特有の味のある語りで爆笑と拍手の連続だった。吉原が消えて半世紀近くになるが、体験!にもとづく廓のしきたりと歴史は、若い観客に何かを残したようだ。彼の得意とするハーモニカ演奏も久し振りに聞いたし、「陛下のアドリブ」には涙して笑いころげた。
 その後は「廓噺」の名作「明烏」「お直し」を、扇遊と圓菊が語ったが、長老の圓菊は少々痛々しかった。

 今夜の演舞場は第1部が鹿芝居「人情噺分七元結」、噺家たちが役者として登場。第2部は主催した「六人の会」に上方のリーダー桂三枝が加わる「トリビュート」で締める。

 最後にPRを。
 林家彦いち師匠の数冊目の著書が近々ポプラ社から出版される。「いただき人生訓」(予価1000円)

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July 15, 2006

394.ふしぎ大陸・南極展

Nannkyoku1Naqnnkyoku2 50年前の11月、第1次南極観測隊は「宗谷」に乗船して晴海埠頭を出航した。その50周年を記念して、今日から上野の国立科学博物館で「南極展2006」が開催されている。
 主催者でもある朝日新聞のプレビューに特別招待されたので、昨日一足先に見学してきた。

Nannkyoku3 20数年前仕事で北極に滞在したことはあるが、南極は未知の世界である。
 オーロラも北極に比べ壮大だという。とくに昭和基地は「オーロラ帯」の真下という絶好の場所だそうだ。以前NHKの南極中継でも見たが、会場では150インチの大型スクリーンであらためてその美しい映像を楽しんだ。

Imgp0907 「ブログ308号」でも紹介したが、映画「南極物語」の主人公タロ・ジロの剥製も展示されている。カラフト犬タロは北海道大学の植物園に保存されているので、今回は2頭にとって久し振りの対面である。
 
 私達があまり知らない南極が紹介される。氷の大陸にも、2億年前には大型恐竜「クリオロフォサウルス」が棲息しており、その化石は南極だけでしか見つかっていない。
 またたくさんの隕石が見つかっている。とくに日本の観測隊の活動範囲に多く、すでに1万6200個、世界最大のコレクションとなった。

 南極観測によって、地球の未来が見えてくるのだそうだ。数十万年前の氷のコアから当時の空気の含有物質を分析してその変化を読む。オゾンホールも南極の上空に空く。

Imgp0906 南極探検から南極観測まで、様々な実物と映像で大人から子供まで楽しみ勉強できる「南極展」である。

   開館は9月3日まで。大人1300円、小~高校生600円

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July 14, 2006

393.ロータリークラブ

 山の手の名門ロータリークラブから、ゲストとして招かれた。そこで「自由に働き、自在に遊ぶ」と題した「卓話」を行った。

 ロータリークラブは、ライオンズクラブと並ぶ国際的な「社会奉仕団体」。地域社会での人道的な奉仕活動を目的に、1905年シカゴで生まれた専門職業人のクラブである。160ヶ国に3万のクラブ組織があり、会員の数は120万人に達している。
 ユネスコの生みの親であり、国連の創設にも深く関わり、現在でも国連NGOで諮問的役割をはたしている。
 日本では、1921年「銀行クラブ」として丸の内で誕生、その後は大阪、京都、神戸、横浜と大都市中心に組織化されていった。

 ロータリークラブの組織としての特徴は、会員がそれぞれの業界や専門職種から1名に制限されていることである。そのことで、クラブが特定の業界の影響を受けず、また職能集団化しないように工夫されている。
 毎週1回「例会」を開き、会員は出席が義務化されている。当日都合の悪い人は、他のクラブの例会に出席することで義務を果す。また留学生を受け入れたり、様々なボランティア活動を行う。

 今回出席したクラブは都心から離れた住宅地にあるが、30年を越える伝統的な組織である。土地柄、開業医や不動産会社経営、住職、大地主、レストラン経営者などが中心メンバーで職住一致している方々だった。
 多くのクラブがターミナル駅のホテルで例会を開くが、ここでは会員の経営するフレンチレストランが会場だった。
 
 例会では必ず「卓話」が行われる。メンバーによるものだけだなく、外部から招くことも必要となる。そのため企画を担当する役員は、人材確保に苦労する。このクラブの企画担当がたまたま友人だったので、断われずに引き受けた。実は私自身も10数年昔、大阪でロータリークラブのメンバーだったことがあり、且つ企画担当で苦労した経験を持っている。

 話しの具体的な内容は省略するが、仲間達と経営している「黒瀬」を砦に「ブログ」を生かしてネットワークを築いている・・・そんな「第三の人生」の楽しさを紹介した。

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July 11, 2006

ブログ休刊

 11日~13日は、ココログメンテナンスのため「新規投稿」ができません。そのため「かせだプロジェクト」は休刊します。

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July 10, 2006

392.カサノバ

Casanova1 「『ショコラ』『サイダー・ハウス・ルール』で世界中を感動で包んだラッセ・ハルストレム監督最新作」にしては、駄作。映画前半はそれなりに期待を持たせたが、後半は「怪傑ゾロ」の世界になってしまった。

 カサノバ、聖職者にして詩人、法律家、劇作家、ヴェネチア共和国の軍人、医師、錬金術師、フリーメイソン、ヴァイオリン奏者、冒険家、トバク師、繊維工場経営者、剣の名手にして脱獄犯、そして世界一のプレイボーイ。1725年ヴェネチアの役者の子として生まれた実在の人物である。
 スタンダール、バルザック、ゾラたちは、自由奔放な彼の生き方・そのダンディズムに引きつけられた。ルイ15世、フリードリッヒ大王、カタリーナ女帝もまたカサノバを寵愛した。

 「官能を極めること、それが何よりも重要だった。私は女性のために生まれ、常に女性を愛し、愛されるよう努めた。~ジャコバ・カサノバ『回想録』」

 「回想録」に登場するのは130人の恋人達、ひとりひとりと交わした情事の世界がリアルに綴られている。そのエロスの極致から精神の自由が生まれることを、カサノバは実体験で語る。それは、ヴァチカンに対する痛烈な批判でもある。だから法王庁によって投獄され、死刑の判決が下されるのである。

 ヴェネチアでオールロケした映画は、18世紀という時代をとらえ美しく描く。しかし131番目の女と、初めて「恋」に陥った主人公の「愛の葛藤」が描ききれていない。だから、それまでの情事が薄っぺらになる。
 それに濃厚なエロチックシーンがひとつも無い。これでは、カサノバ自身も怒るであろう。

 カサノバを演ずるのは、ヒース・レジャー。「チョコレート」「サハラに舞う羽根」に出演した彼は、「ブロークバック・マウンテン」で友を愛する役を見事に演じ、数々の賞を獲った。
 プレイボーイが最後に「恋こがれた」女性は、シエナ・ミラー(「アルフイー」)、ジュード・ロウの元恋人である。
 カサノバを追うヴァチカンの審問官はジェレミー・アイアンス(「ベニスの商人」「キング・オブ・ヘブン」)。エミー賞・トニー賞・アカデミー賞をとった名優である。
 「ショコラ」にも登場したハルストレム監督の夫人レナ・オリンが、ミラーの母親役としてコミカルな演技を見せる。

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July 08, 2006

391.入谷の朝顔

Imgp0879Imgp0886Imgp0883 「恐れ入谷の鬼子母神」の境内を中心に、毎年7月第一週の週末に朝顔市が開かれる。始まったのは昭和の23年、地元の有志や観光連盟が近郊の園芸農家に呼びかけ多くの店が並ぶようになった。

 もともと入谷は朝顔で有名、土地が栽培に適していたらしく明治の中頃には十数軒の植木屋が朝顔を造っていた。そして腕を競うように大輪の朝顔や変種・珍花を咲かせては軒に陳列した。そのことが評判となって往来止めに成る程見物人が押しかけ、「東京年中行事」のひとつに数えられるようになった。
 しかし大正に入って都市化が進み植木屋は廃業、入谷の朝顔もその姿を隠した。そして戦後、新しい形で生れ変わり半世紀以上の歴史を綴っている。
 
Imgp0900 朝顔は現在1200の系統があるという。文化・文政・天保、嘉永・安政、明治・大正、ブームの度に新しい品種が生まれた。大輪咲・丸咲・牡丹咲・桔梗咲・・・と花や葉の形も様々ならば、色も変化に富んでいる。
 私が毎年手に入れるのは、「大輪団十郎」をメインに4種類の花を楽しむ行燈造りである。大輪の花の色は柿茶色、成田屋のシンボルカラーである。あの「口上」の時、市川一門は柿茶色の裃をつける。

Imgp0897Imgp0896 朝顔市の帰りに必ず食べるのが「キッチンよしむら」の「オムライス」。半世紀以上も続くこの店は、味も作り方も変わらない。おすすめはデミグラスソースだが、今回だけははじめてトマトソースにしてみた。うん、これもイケる。

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July 07, 2006

390.親密すぎるうちあけ話

 二年前「ベルリン国際映画祭」で正式上映された作品を、日本の配給会社ワイズポリシーが持ってきた。この会社は、「ブロークバック・マウンテン」の国内配給権を取るなど、地味だが濃い映画フアンの喜びそうな作品をよく見つけてくる。

Wp_1 しゃれたフランス映画である。「ヒッチコックの最高作の精神を継承している」とニューヨーク・タイムスが評していたが、パトリス・ルコント監督もそれを狙ったのだろう。

 ルコント監督は60歳、漫画家・イラストレーターから映画に転進、「コメディー映画」でヒット作を次々打ち出して有名になった。しかし80年代後半作風が一転、中年男たちの「哀愁」や「ペーソス」をテーマにした作品を作るようになった。「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」「列車に乗った男」等々で数々の賞を獲る。
 この作品も主役は女性だが、対する冴えない中年男が面白い。そしていつも悲劇的なラストで幕を閉じるルコント監督が、今度だけはハッピーエンドにした。

 セックスの悩みを抱えた主人公に扮するのはサンドリーヌ・ボネール。「仕立て屋の恋」以来15年振りのルコント作品である。ヴェネツイア国際映画祭で最優秀女優賞(「沈黙の女」)も獲った彼女はフランスを代表する演技派女優、大人の色気と気品をたっぷり見せる。
 精神分析医と間違われ、彼女の赤裸々な私生活を聞くはめになった税理士を、ファブリス・ルキーニが演ずる。変化自在な演技でセザール助演男優賞を獲った役者だが、控えめでかつ繊細な独身男にぴったりである。
 ふたりは今回初めての共演。それでも、ちぐはぐな会話にはじまってやがて大人の恋にかわっていく二人を、息の合った演技で見せる。

 「現代社会では、人間同士のコミニュケーションや会話が少なくなってきた。出会いとその人との会話を、もっと楽しんでほしい」と、来日したルコント監督はインタビューにこう応えている。

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July 06, 2006

389.初恋

 地方都市に次々と「フイルムコミッション」が設立されて、映画やテレビのロケがやり易くなった。しかし東京はまだまだ難しいようだ。最近も新宿歌舞伎町のTVロケで、暴力団に協力費という名の「みかじめ料」をとられたプロダクションがあった。
 この映画は、新宿が舞台だが北九州でロケしている。地元のフイルムコミッションがしっかりしているし、住民の協力が熱い。ちょっと工夫をすると「60年代後半、時代が熱くうねっていた頃の新宿」の空気を、再現することができる。
 そう、「70年安保」直前の「三億円強奪事件」が映画のベースである。

P06P05 1968年12月10日。
 雷雨の朝。
 白いバイク。
 ・・・・・・雨天決行。

 原作は小説「初恋」。4年前作者の中原みすずは「私は『府中三億円強奪事件』の実行犯だとおもう」と衝撃的な告白をする。それはまた、どこまでも純粋で、どこまでも切ない初恋の思い出でもある。

P03 主役は宮崎あおい。原作を読んで「みすず」役を切望した。今、テレビドラマ「純情きらり」で大活躍だが「NANA」でも見せた演技力は素晴らしい。あどけなさが残る表情の中に、社会から弾き出された「喪失感」を漂わせる。
 初恋の相手は小出恵介(「パッチギ!」)、ある大物政治家の息子で事件のプランナー。子供のころ別れた兄を宮崎将、過激派のリンチで殺されるという時代を象徴する役。監督を塙幸成。
 元ちとせが、初の映画主題歌を歌う。

 ところで「三億円事件」は1975年12月に刑事時効となった。捜査対象となった人は1万1725人、多くの誤認逮捕者が出た。もちろんこの中に「中原みすず」や恋人の「岸」はいない。
 そして捜査員は述べ16万人、9億9000万円の費用がかかった。
 あの有名な「モンタージュ写真」は、他の事件で逮捕された実在の人物にただヘルメットを被せただけと、後に暴露された。
 やはり犯人は「若い女性」だったのか?

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July 05, 2006

388.歌舞伎鑑賞教室

 「ひとまく会」の仲間達と、国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」に出かけた。鑑賞教室は、主に中・高生を対象に「古典芸能」に親しんでもらおうと始めたもので、今回は69回になる。最近は、週末の夜サラリーマンを対象にした特別教室も開かれている。
 料金は大人1等席で3800円、学生は1300円。東京や千葉・埼玉・神奈川の教育委員会が後援しているので学校によっては補助も出るようだ。
 ということで客席はほとんど学生で埋まっていた。また、演劇や放送などの技術者を養成する専門学校の学生たちも実習ということで観覧していた。

 いつもの歌舞伎座と違って、「教室」なので第1部は「歌舞伎の見方」。市川男女蔵の軽妙な解説で、国立劇場の研修生達が歌舞伎の技を見せる。「ツケ」にあわせて「トンボ」に「見得」と、「タテ」の面白さを見せる。最後は学生数人を舞台に上げて、「タテ」の体験。女の子が長い刀を振り回し悦に入っていた。これで歌舞伎ファンがまた増える。

866_1 出し物の方は「彦山権現誓助剣~毛谷村」(ひこさんごんげんちかいのすけだち)、歌舞伎のなかでも代表的な仇討ちものである。少々奇想天外なお芝居だが、豊前(大分)彦山に伝わる伝説をもとに、宮本武蔵のエピソードなどを題材にした人気演目である。
 主人公の剣豪を梅玉、怪力の美女ヒロインを芝雀、敵役を松江という組み合わせ。解り易いあらすじで、結構ユーモアもあので歌舞伎初体験にはぴったりの芝居かもしれない。
 また浄瑠璃語りの部分は、舞台両脇に字幕がでるので我々素人も助かる。

 終演後、バックステージを見せてもらう。ゆったりとつくられた楽屋、観客席より広い舞台(裏)、下座音楽のための黒簾、奈落のスッポンやセリ、回り舞台のため大掛かりな機械仕掛け、最後は回り舞台の上で「回り」を体験して花道を引き揚げた。
 歌舞伎座と違って、広い敷地に建てられた国立劇場。最新の舞台装置が取り入れられているだけに勉強になった。

 歌舞伎鑑賞教室は24日まで。11時からと14時30分の2回。14日・21日の金曜日は「サラリーマンのため~」が18時30分から、月後半の土・日は「親子で楽しむ~」となっている。
 詳しくは
 http://www.ntj.jac.go.jp/

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July 04, 2006

387.焼酎バー「黒瀬」(50)

 最近の「焼酎の話題」を新聞やHPから要約で。

 「新コガネセンガン誕生」
 芋焼酎の原料として評判のコガネセンガンは、もともとでんぷん原料用として開発された。最近はその甘味や食感から菓子などの加工用としての人気も高い。
 現在鹿児島県内では、サツマイモ作付け面積1万3500ヘクタールのうち、40%弱にコガネセンガンが栽培されている。
 しかしコガネセンガンにも弱点がある。それは表面に条溝と呼ばれる筋状のくぼみがいくつもあり、そこに土が詰まりやすい。また傷んだ部分を取り除く際にも、余分に切りとってしまうのでロスが多い。
 このため県バイオテクノロジー研究所では、県農業開発総合センターと共同で3年前から「条溝のないコガネセンガン」の育成に着手、試験栽培を繰り返しながら3系統を開発した。
 新しい品種は、肌がすべすべしているだけでなく肉質はホクホクタイプ。甘味も強くなかには収量10%アップするものもあるという。
 焼酎としての適正試験はこれからだが、将来に関係者は期待をこめている。(南日本)

 「全国唯一の焼酎木樽工房」
 曽於市の津留さんは、全国でただ一人の焼酎木樽職人。このほど工房をリニュアル、天井を高くするなど作業バを拡張して大型樽の作製が可能となった。
 焼酎用蒸留器は、今ではステンレス製が主流だが、昔ながらの木樽蒸留器は「低圧でゆっくり蒸留させるため、木の香りが原酒に移りまろやかさも増す」(津留さん)という。
 そのため焼酎メーカーは、他社に負けない拘りの焼酎を造ろうと、木樽蒸留器を設置するところが増えてきた。
 一方、ステンレス製の急速な普及で、鹿児島県内の木樽職人の数は激減、今では津留さんひとりになってしまった。
 ひとつの木樽を仕上げるには、手作業のため20日間かかる。そのうえ樽の帯に使う唐竹や、胴体になる樹齢80年以上の杉の確保も難しく、年間5つが限度だという。
 津留さんは「良いものを造れば必ず売れるという職人冥利につきる時代だが、なんとかこの技を後世に残したい」と話している。(373NEWS.COM)

 「黒瀬」のホームページ
 http://keida.cocolog-nifty.com/kurose/

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July 03, 2006

386.遊就館

Back_03 小泉さんの参拝で騒がしくなる前に、と思って靖国神社に出かけた。今回は参拝もだが、「遊就館」の展示を改めて見てみようと思ったからだ。

 館の名前は、中国の「荀子・勧学篇」の「君子居必擇郷、遊必就士」から二字を選んだもので、高潔な人物に就いて交わり学ぶの意である。
 明治15年、日本で最古の「軍事博物館」として開館、現在は「日本の武の歴史」に始まり、維新・西南戦争・日清・日露・第1次世界大戦・満州事変・支那事変・大東亜戦争と展示室が続く。また大展示室には、戦跡収集品や爆撃機、戦車、人間魚雷「回天」などが置かれている。

 きっかけはフランスの知人の言葉だった。中東政治史の研究家の彼は「日清・日露までの展示には客観性があり科学だ、しかしそれ以降は宗教だ」と。
 確かに展示され解説されていることは、全て事実であろう。しかし展示されていない事実、敢えて展示・解説しなかった事実にこそ真実があるのではないか、彼はこう言いたかったのだろう。

 戦前と異なり、靖国神社はただの一宗教法人に過ぎない。神社が「我が国の自存自衛のため・・・・・自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった多くの戦いがあった。それらの戦いに尊い命を捧げられたのが英霊」として、御霊を祭ることは否定しない。しかし、その英霊は、維新前後は朝廷側の志士であり、その後は政府側の軍人だけであることを忘れてはいけない。

 「戦没者遺族等援護法」で「公務死」とされた父は、可否の問い合わせもなく合祀されているそうだ。そして薩摩の先祖たち、戊辰戦争を官軍側で戦ったものは祭られているが、西南戦争で西郷に従い薩軍として闘ったものは排除されている。もちろん会津白虎隊の若武者たちも、新鮮組の隊士たちも「英霊」にはなれない。
 小泉さんの父方「鮫島家」は、薩摩士族である。先祖の一族のなかには、きっと西南戦争で賊軍として戦死した若者もいるに違いない。

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July 01, 2006

385.トリック~劇場版2~

 このところ観た日本映画では最もつまらない作品だった。「DEATH」が日本テレビ+松竹なら、こちらはテレビ朝日+東宝。テレビドラマの映画版である。

 「明日の記憶」で並々ならぬ演出力を見せた堤幸彦監督が、軽く流した?のか。もちろん堤は「ケイゾク」「サイレン」等、この手の映画は得意とする。「トリック」一作目も彼の作品だ。
 「リミット・オブ・ギャグなんです。朝飯前にいや夕食後に、家族皆で笑って下さい。本作をもちまして最後といたします」と、監督は舞台挨拶で述べたようだが、有終の美は飾れなかった。
 原因は「ホン」のせいか。とことん遊ぶのであれば、もっと脱線すればよかった。今はやりの「占い」や「インチキ宗教」を笑い飛ばせばよかった。時々真面目になってしまうのでチグハグだ。

 「トリック」を暴くコンビの仲間由紀恵と阿部寛も、もうひとつのってない。「功名が辻」で売れてる仲間、「バルトの楽園」で渋い役を演じている阿部、全く正反対の役で演技の幅を見せようというのか。しかしそれだけに浮いてしまった。
 生瀬勝久、野際陽子ももったいない使い方。インチキ宗教の教祖役片平なぎさだけが楽しんでいた。

 「今度の奇蹟はイリュージョン?”濃ゆる~い”独自の世界観はそのままに過去最強の『トリック』がいよいよ幕を飽ける!」がうたい文句。

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