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September 29, 2006

459.出口のない海

Deguti 久し振りに静謐な日本映画を観た。しかしテーマは、重く厳しいものである。
 61年前の若者の散華を、「美しい国『日本』を守る為だった」と声高に叫ぶ風潮が漲る今日、この「静謐」は大きな意味を持つ。

 原作は横山秀夫、「半落ち」などミステリー作家として知られる彼が、10年前実話を元にコミックの原案として書いていた。それを改めて小説として大成させた。
 この本を読んだ山田洋次監督は映画化を試みる。しかし「こうした映画こそ、若い監督に撮ってもらいたい」と横山とは「半落ち」コンビの佐々部清に譲った。そして冨川元文と脚本を書いた。
 たしかに彼等四人だったからこそ、この映画は単純な「散華賛美」悲話に終らなかったのだ。

 「戦艦大和」や「神風特攻隊」に比べてあまり語ることのない、人間魚雷「回天」に志願した若者の物語である。それは負け戦と知りながら、「自らが最後の『秘密兵器』になることによって戦いの無い世の中」を希求したスポーツマンの若者だった。

 回天は、もともと人が乗るものではなかった魚雷を改造したものである。だから操縦は複雑で故障も多く、未完成の兵器だった。
 彼は、敵艦に体当たりして戦果を上げて死んだのではなく、「出口のない海」に閉じ込められて死ぬ。決して「散華」では無かったのである。
 そうした学徒兵を主人公に選ぶことで、映画は戦争に対しそして若者を死に追いやった指導者たちに、無言の抗議をするのである。

 主人公の甲子園優勝投手を、映画初デビューの市川海老蔵が熱演する。
オリンピックを諦めたマラソンランナーの学徒兵を伊勢谷友介(「雪に願うこと」)、さらに塩谷瞬(「パッチギ」)、柏原収史(「血と骨」)、沖田寛之(「八月の狂詩曲」)、上野樹里(「スイングガールス」)等最近活躍の若手、香川照之、古手川裕子、三浦友和のベテランとバランスの良い配役である。

 人間魚雷「回天」。1944年8月海軍の正式兵器として誕生。「天を回らし、戦局を逆転する」意で名付けられた秘密兵器であった。
 回天による海上特攻の訓練を受けたもの1375人、うち戦没者106人。しかし自爆でなく故障によって死んだものがかなりの数と言われている。

 回天の生き残りのひとりである義兄は、決してこの「時代」を語らない。その理由が、映画を観て納得できた。

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