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October 31, 2007

ブログ

 メンテナンスのため、週末までブログを休みます。

 この間、紅葉を求めて旅に。次回はその報告です。

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October 30, 2007

773.サルバドールの朝

1006171_01 死刑囚と修道女との交流を通じて、「人が人を裁く死刑」というテーマに迫った「デッドマン・ウォーキング」。ナチスによる見せしめの処刑を描いた「白バラの祈り~ゾフィー・ショルの祈り」。権力争いの果てに銃殺された青年を追慕した「麦の穂をゆらす風」。この作品もまた、ごく普通の若者の「青春の反逆」が、権力によって抹殺された実話を映画化した。

 昨年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された「サルバドールの朝」は、フランコによる独裁政権の不当な裁判によって死刑に処せられた、25歳の若者サルバドールの短かった人生を綴ったもの。スペインでは知らない人はいないという彼、今もなお彼の姉妹たちは無実を訴え再審請求の戦いを続けている。

 監督はスペインの巨匠マヌエル・ウエルガ。バルセロナオリンピックの記録映画を撮ったドキュメンタリストでもある。
 彼は冒頭のタイトルバックとラストの映像に、ロシア革命に始まってスペイン内乱ナチス侵略、ベトナム戦争からカンボジア虐殺、パレシチナ・アフガン・イラク、そして9.11の記録映像をコラージュする。革命と反革命、その中で理不尽にも命を奪われた若者への惜別と権力への怒りを、こう表現したのだろう。

 ただ「白バラの祈り」に比べると見るものにとっての感動は、もうひとつ。映画前半、闘争資金を稼ぐため主人公たちが繰り返す「銀行強盗」が、コミカルに描かれているせいかも知れない。若者たちの軽率さが、権力の思う壺となり弾圧を招いたからだ。
 ただ後半の30分、立場は違いながらも処刑を阻止しようとする弁護士、彼を励ましながら最後まで戦った4人の姉妹の深い哀しみは、作品を普遍化した。
 「もっと生きたい」と最後まで生に拘っていく主人公の想いが、見るものの胸に迫り、命の尊さを訴えかける。

 サルドバールを演じたのは、「グッバイ、レーニン」で数々の賞を獲った若手俳優ダニエル・ブリュール。彼の元恋人に「トーク・トウ・ハー」のレオノール・ワトリング。随所にボブ・ディランやレナード・コーエン等、「青春の反逆」をイメージした鮮烈な音楽が流れる。

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October 29, 2007

772.日本橋パレード

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秋晴れの日曜日、中央区の秋祭りフィナーレを飾る「日本橋パレード」を見に行く。

071028_038_640071028_035_640071028_031_640   今年は、警視庁や消防署、中学校から大学の吹奏楽団の演奏パレードに加えて、地方からの名物踊りや在京ふるさと会の踊り参加、艶やかなパレードとなった。

071028_011_640071028_013_640  今年初参加の「渋谷・鹿児島おはら祭」は、私も手伝っているふるさと会と渋谷区民の踊り連。毎年5月に渋谷・道玄坂と文化通りで開催される祭り(ブログ635号)の主役たちだ。
 およそ200人が「渋谷音頭」と「鹿児島おはら節」を披露した。

071028_050_640071028_047_640071028_042_640  こども達も参加した「仙台すずめ踊り」は、「青葉祭り」で踊られる伊達藩 縁のもの。
 前橋からは上州名物「だんべえ踊り」。桐生からも「八木節」。さらに地元、中央区民100人の踊りが続く。

071028_051_640071028_055_640071028_056_640  都内各地からは今流行の「よさこい・ソーラン」踊り。
 そしてラストを飾ったのが、浅草「梅后流江戸芸かっぽれ」。
 これは見事だった。江戸時代から続くお座敷踊りの「かっぽれ」を、浴衣に角帯、にじり鉢巻のパレード舞に創り上げた。踊り手のおかみさんや芸者さんはもちろん、先頭を行く鳶の頭たちの鯔背な姿は、まさに日本橋にふさわしい風情だった。
 このチームは、伝承普及と文化振興に尽くしたと「文部大臣賞」や「東京都文化功労賞」も受賞、海外での公園パレードでも有名な「かっぽれ」だそうだ。

 日本橋一帯は、各県物産販売コーナー「諸国往来まつり」も開かれ、多くの人で賑わった。

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October 28, 2007

771.焼酎バー「黒瀬」(85)

Imgp08962  焼酎の話題を、最近の新聞・HPから要約で。

 「焼酎売り上げランキング」
 
帝国データバンクが発表した、前年度の売り上げベストテン上位は以下の通り。
 1位:三和酒造~焼酎「いいちこ」で知られる大分県のメーカー。ここ4年連続首位だが(574億円)、2年連続前年比減。
 2位:オエノングループ~北海道で紫蘇焼酎「鍛高譚」を作っている合同酒精、福岡で麦焼酎「博多の華」を作っている福徳長酒類など3社の売り上げ。
 3位:薩摩酒造~「白波」を首都圏に普及させた鹿児島県の枕崎のメーカー。芋焼酎「黒白波」「明治の正中」や麦樽熟成「神の河(かんのこ)」が有名。
 4位:霧島酒造~芋焼酎では日本一の出荷量を誇る宮崎県都城のメーカー。伸び率でも前年比13.5%と日本一。「赤霧島」「金霧島」もある。
 5位:雲海酒造~そば焼酎「雲海」で知られる宮崎県のメーカー。
 他、芋焼酎では濱田酒造(「海童」「隠し蔵」)、本坊酒造(「桜島」「石の蔵」)など鹿児島のメーカーがベストテンにはいっている。

20071023n0001 「『薩摩ヌーヴォー』来月22日解禁
 鹿児島県の焼酎メーカー11社でつくる本格芋焼酎協議会は、今年の新酒「薩摩ヌーヴォー」8種を来月22日に解禁し、全国一斉に販売する。
 薩摩ヌーボーは、「蒸留後60日は熟成させる」など厳しい自主基準を設け、ラベルや瓶の色を統一させた。
 解禁日は、ワインのボジョレ・ヌーヴォーを意識し翌週の第4木曜日とした。
 今年参加したのは、さつま無双、小正醸造、大口酒造、指宿酒造、若潮酒造、小鹿酒造、山元酒造、オガタマ酒造の8社。
 価格は720ml瓶で1100円。(373news.com)

 「黒糖焼酎からもろみ酢」
 奄美自然食本舗では、来月黒糖焼酎「れんと」の製造工程から生まれた「もろみ酢 奄美の恵み」を販売する。
 このもろみ酢は、沖縄の泡盛からつくられる酢と同じく、健康に良いクエン酸やアミノ酸を含むが、沖縄の酢と違い黒糖からくるカリウムやカルシュウム、鉄などのミネラルを多く含んでいる。
 またポリフェノールやメラノイジンなど坑酸化力を持つ酵素も含まれているので、コレステロールの降下、腸内乳酸菌の増に効果があるという。(健康ニュース)

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October 26, 2007

770.ひとまく会

Kabukiza200710b_handbill 歌舞伎座の四階席で、最後の一幕を楽しむ「ひとまく会」。芸術祭十月大歌舞伎の今月は、舞踊劇「奴道成寺(やっこどうじょうじ)」を楽しんだ。

 「道成寺」は、熊野詣の僧安珍を追った清姫が、蛇体となって道成寺の鐘に巻きつき焼き溶かしたという、寺に伝わる縁起の物語である。
 その後日譚として書かれた能「道成寺」を、女形の歌舞伎長編舞踊としたのが「娘道成寺」、さらにそのパロデーが「奴道成寺」、そして「二人道成寺」もある。

 昨夜の舞台は、その娘・白拍子花子実は狂言師左近を、歌舞伎界一の踊りの名手と言われる坂東三津五郎が演じて舞った。
 この舞踊劇の一番の見所は、「クドキ」の場面で「おかめ」「大尽」「ひょっとこ」の三つの面を使って踊り分けるところ。三津五郎は、襲名披露の狂言としても上演し好評を博したが、今回も見事な踊りっぷりだった。

 三津五郎家は、江戸三座のひとつ森(守)田座の帳元に連なる家系。守田勘弥と坂東三津五郎の二系統があり、前者には玉三郎や新派女優水谷八重子が連なる。
 また三津五郎は、日本舞踊の一大流派「坂東流」の家元でもある。

 今月は「芸術祭」として大きな演目が並んでいるが、夜の部も三遊亭円朝原作「通し狂言・怪談牡丹燈篭」(仁左衛門・玉三郎)が最初の幕として上演された。
 普段なら、これが終わると席を立つ人が多いのだが、今回は最後の幕が、人気役者三津五郎とあって四階席も埋まったまま。ひとまく会員は、文字通りの「立ち見」で40分を過ごした。

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October 25, 2007

769.ふみ子の海

007_640 文部科学省推奨・少年向き・青年向き・成人向き・家庭向きの映画だから、ぜひ親子一緒に見て欲しい。小さな子供たちは感動するが、高学年の子供の中には拒否反応を示す子が居るかも知れない。
 それはこの作品が、あまりにも「清く美しく正しい」からだ。今の社会に生きる子供たちにとって、想像を越える世界なのだ。
 だから鑑賞後は、親子の会話が必要となる。

 原作は、児童文学者市川信夫の同名小説。児童福祉文化賞ををとった作品である。新潟県にあった高田盲学校での同僚教師、粟津キヨさんをモデルにして書いた。
 彼女は、幼少の頃栄養失調からきた病で失明、しかしその障害のもめげず、按摩の資格を取った後東京女子大学で学んだ。 そして盲女性自立のため生涯を尽くした。
 映画はその少女時代、昭和初期の高田を中心に、他の盲目の少女たちのエピソードも交えて描いたものである。

 モデル映画だけに、登場人物はみな善人になってしまう。母親(藤谷美紀)をはじめ、和尚(高橋長英)、盲学校の教師(高松あい)、その父で大店の旦那(あおい輝彦)、芸者(遠野凪子)、本家の夫婦(中村敦夫・水野久美)、麩屋の親父(山田吾一)がやさしく主人公を支える。
 さらに主人公を厳しく鍛える按摩の師匠(高橋惠子)も、厳しい世間で生き抜くためには腕を磨くしかないと、鬼になって教えるのだ。
 気の毒な悪役はただ一人、高田に駐屯していた陸軍の将校(遠藤憲一)のみである。
 このあたりが、作品を「清く正しく美しく」そして単調にしたせいかも知れない。

20070912008fl00008viewrsz150x  主人公の盲目の少女ふみ子は、オーディションで選ばれた鈴木理子。映画初出演、全編出ずっぱりで良く頑張っている。彼女の笑顔が作品を支えたといってよいだろう。
 市川昆の助監を務めたこともあるベテラン監督(近藤明夫)の眼力だ。

 映画のモチーフのひとつに「瞽女」の存在がある。作者の市川さんはまた「高田瞽女」の研究家としても知られている。

 「瞽女」とは、各地を門付け・巡演して生活の糧を得ていた女芸人をいう。なかでも明治から昭和初期にかけては、北陸地方に多く存在していた。
 それは凶作が続き、その貧しさの故に栄養失調による失明者が多かったからだ。「按摩になるか、瞽女になるか」特に女の子供にとっては、この二つしか選択肢はなかった。

 瞽女の芸は、地域の民俗芸能のひとつとして後世に伝えられている。
 若い頃、最後の瞽女と言われた新潟県長岡市の重要無形文化財保持者、小林ハルさんを取材した事がある。彼女は105歳という長命をもって先年亡くなられたが、彼女が弾き語りで唄う「葛の葉子別れ」や「磯節」は、今も耳に残っている。
 映画で有名になった「はなれ瞽女おりん」、芝居でも現在文化座が「瞽女さんきてくんない」を上演しており、この作品にも出演している。  

 戦後作られたいくつかの映画、例えば「二十四の瞳」などに見られる映画手法で淡々と撮ったこの作品は、刺激の強いCG流行のなかでは単調ながらも心地よさを感じさせる。

 雄大な日本海、雪を抱く妙高、日本の原風景「棚田」、桜の高田城址公園と赤い欄干、日本一長い雁木通り、それぞれのシーンが「美しいニッポン」を思い起こす。

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October 24, 2007

768.ローグアサシン

1024_768_a  「当代最高のアクションスター、東の『HERO』ジェット・リーと西の『トランスポーター』ジェイスン・スティサム。ここに夢の対決が実現!」
 こう謳われては見ないわけにはいかない。先日の「キングダム」と同じFBIものだが、こちらはそれ程社会性はない。ともかく迫真のバトル・エクスプロージョン、それもドンパチに中国武術、日本刀によるチャンバラまで加わるのだ。

 話は、相棒の一家を惨殺されたFBI捜査官が伝説の暗殺者ローグを追うというもの。その戦場は、チャイナ・マフィアとジャパニーズ・ヤクザが血で血を洗う抗争を続けるサンフランシスコの一角。

 伝説の暗殺者はジエット・リー。中国武術家でもあり国際俳優として大活躍の彼である。
 一方の復讐に燃えるFBIの捜査官は、イギリス出身の元高飛び込み選手ジェイスン・スティサム。リュック・ベッソンの「トランスポーター」でブルドッグのような激しさと強い存在感を見せた。そういえば、リーもまた「ダニー・ザ・ドッグ」などベッソン作品にはよく登場する。

1024_768_d1024_768_e 彼等を取り巻く米・英・中・日のオールキャストも面白い。
 ヤクザの親分は左の写真、石橋凌。元ロックバンドのヴォーカリストは、北野武の「BROTHER」から「THE JUON/呪怨」と国際俳優の道を歩む。
 右のケイン・コスギは、石橋の子分役。滅法強い剣術家でリーと死闘を交える。ハリウッドのアクションスター、ショー・コスギの息子だけに彼も武術は本物だ。
 石橋に対するマフィアのボスは、「ラストエンペラー」で薄儀を演じたジョン・ローン。香港出身の彼もまた国際的なスターに成長した。

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 話題の女優がこの人、デヴォン青木。「シャネル」や「イヴ・サン・ローラ」などのミューズとして、世界をまたにかけ活躍しているニューヨーク生まれのトップ・モデル。映画「シン・シティ」に出演して脚光を浴びた。ヤクザの親分の娘としてナイフにガンで暴れるが、日本語のセリフがぎこちないのが惜しまれる。

 ヴァンクーバーで作られたこの映画、彼の地の日系人や中国人俳優が多数出演している。セリフだけはそれなりに真ともになったが、背景を含めてステレオタイプの「日本」が登場するのは、いささか辟易する。
 それは監督の責任でもあるが、この映画はCM製作会社のオーナーでもあるフイリップ・G・アトウエルの初めての長編作品。リュック・ベッソン組の撮影監督、「トランス・ポーター」や「ダニー・ザ・ドッグ」を撮ったピエール・モレルと組んだ。

 映画は迫力あるバトルアクションが売り物だが、さすがこれだけは敵う者はあるまい。「トランスポーター」や「クローサー」等のアクション監督を務めたコーリー・ユエンが、演出する。ジャッキー・チェン等と香港で武術の腕を磨いた、俳優出身のアクション監督である。カンフーはともかく、剣術の演出もうまい。

 ジエット・リーを想定して書かれた「伝説の暗殺者ローグ」だけに、華麗なアクション・シーンと、憂いを帯びたリー眼差しに魅せられる。 

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October 23, 2007

767.東京国際映画祭

006 先週末から「東京国際映画祭」が六本木と渋谷、今年からは秋葉原も会場に加わって開催されている。
 今年の参加作品は例年と同じくおよそ300本、オープニングは特別招待作品で日本映画の「ミッドナイトイーグル」だった。

 この作品は、米軍のステルス型戦略爆撃機、通称ミッドナイト・イーグルが北アルプス上空で姿を消した事から始まる山岳サスペンス・アクション映画。日本映画としては、久々にスケールの大きな作品となった。
 映画はお正月第1弾として12月に封切られるので紹介は省くが、スタッフにハリウッドのベテランを加えて、成島出がメガホンを執って楽しませてくれた。

 東京国際映画祭は、1985年東急グループのトップだった故五島昇氏が「渋谷に映像文化を」との呼びかけから始まった。私も関係者のひとりとしてこのイベントを手伝ってきたが、現役を降りた今は一映画ファンとして時間の許す限り劇場に足を運んでいる。

 映画祭は「コンペティション」「特別招待作品」「アジアの風」「日本映画・ある視点」の4っに分れているが、国際映画祭としてのメインはコンペとなる。
 この部門は、67の国と地域で制作された668本の中から、期間中に厳選された15本が上映される。

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 日本関係では中国との合作、中井貴一がプロデュース・主演した「鳳凰 わが愛」と沖縄を舞台にした「ハブと拳骨」が出品されているが、イギリスの「デンジャラス・パーキング」やイタリアの「ワルツ」など話題作が並んでいる。

 コンペでは、「東京サクラグランプリ」(賞金5万㌦)をはじめ審査員特別賞(2万㌦)、最優秀監督・女優・男優・芸術貢献賞が選ばれる。さらに作品を見た一般観客の投票により「観客賞」も与えられる。

 国際コンクールの審査委員には、毎年海外からも著名な映画人が招かれており、今年はプロデューサーとしてアカデミー賞に輝く数々の名作を製作したアラン・ラッドJrが、委員長を務める。
 他にセルジュ・ロジック(モントリオール国際映画祭GM)、ニコラ・ヴィオヴァーニ(映画音楽作曲家)、ウー・ニエンジン(台湾の監督)、日本からは香川京子(女優)、降旗康男(監督)が審査委員になっている。

 この他アジア映画の発展を支援するための「アジアの風」では、最優秀アジア映画賞(1万㌦)を獲った作品が、コンペにも参加する。

また「日本映画・ある視点」は作品賞・特別賞(それぞれ100万円)、黒澤監督の業績を後世に伝え、日本文化を世界にアッピールするために「黒澤明賞」(10万㌦)も設けられている。

 現在国際機関が認める「国際映画祭」は、世界で12ヵ所。今年20回目を迎えた東京国際映画祭も、カンヌ・ベルリン・ヴェネチアに次ぐまでに成長した。
 今回から新たに加わった「ワールド・シネマ」、20回を記念した「映画が見た東京」、「コリアン・シネマウイーク」「中国映画週間」「香港映画祭」「東京国際女性映画祭」も加わって、映画ファンにとってはいそがしい一週間である。

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October 22, 2007

766.キングダム~見えざる敵~

Kingdom1_800  「キングダム」とは、サウド家が支配する絶対君主制の国のこと。王族5000人が、膨大な埋蔵量を誇る石油を独占し欧米と手を結ぶ。弾き出された民衆は、その格差社会の怒りをテロでもって示す。
 9.11のテロ実行者19人中15人が、このキングダムの若者だった。

 9.11と4年前のリアド外国人居留地で起こったテロ事件が、シナリオのベースになっている。
 対中東政策のからみで腰が引けるアメリカ政府。一方のFBIは、政府の許可無く腕利きの捜査官を現地に送る。話はここから「見えざる敵」との戦いとなる。その「敵」とは、テロリストだけではなく「文化」そのものなのだ。

 映画を企画したマイケル・マンは、昨夜放映された「コラテラル」の監督。それに出演していたピーター・バーグが、今度は監督の役。そして主役だったジェイミー・フォックスが、今度もFBI捜査官のリーダー役として主演している。彼は、マイケル・マンの「ARI/アリ」でオスカーを獲った役者でもある。

Kingdom4_800Kingdom5_800  もう一人注目すべき役者がアシュラフ・パルフム 、パレステナ出身の俳優である。テロを真正面から描いて賛否両論を巻き起こした「パラダイス・ナウ」で、自爆する若者を演じた。
 今回は、強引に事件の捜査に介入してきたFBIに嫌悪感を抱きながらも、やがてプロとしての連帯感をもつサウジの警官役である。

 作品の中の紅一点が、FBIの女性捜査官役ジェニファー・ガーナー。イスラムの国、なかでも戒律の最も厳しい ワッハーブ派の社会では、困惑と反発を引き起こす。この作品にとっては、象徴的な存在となる。
 さらにオスカー俳優クリス・クーパー(「アダプテーション」)が、白人捜査官としてフォックスの部下になる。この組み合わせにも、監督の意図するところが見える。

 映画は、壮絶な銃撃戦やカーチェイスを盛り込み、娯楽映画として十分楽しませる。ただそれだけではなく、冷静な問題意識を製作者と監督は持っていた。その問題意識とは、同じ中東を舞台にした「シリアナ」に通ずるものでもある。

 映画のラスト、FBIの銃弾を受けた過激派リーダーの老人が、息絶え絶えに孫にささやく言葉が衝撃的だ。その孫のつぶらな瞳のアップが、この問題の根深さを示す。
 それが、互いに「見えない敵との終わりの無い戦い」にさらされている現実なのだ。

 映画は、アリゾナ大学の敷地にオープンセットを組んで撮影された。サウジ・リアドでのロケは断られたため一部の撮影はアブダビで、さらにフェニックス郊外の砂漠が石油の埋まる中東の「それ」となった。このことも又象徴的である。

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October 21, 2007

765.べったら市

071019_016_640071019_023_640071019_021_640  10月20日は恵比寿講。地下鉄小伝馬町駅近くの宝田恵比寿神社では、前日から「べったら市」が開かれる。

 宝田恵比寿は、日本橋七福神のひとつ。商売繁昌、家族繁栄、火防守護の神様として崇められている。
 その恵比寿講に使う懸鯛や切り山椒、神棚を売る市が前日から開かれるが、いつの頃からかここで売られる「べったら漬」が有名になり、「べったら市」と呼ばれている。

071019_019_640071019_025_640 べったらは、生大根を塩で下漬けし麹と飴や砂糖で馴染ませた漬物。大根はサクサクして妙に甘ったるい。
 江戸の頃から武士町人 の区別無く、本格的な冬を前にして食したという。
 べったらの語源は露店の売り子が「べったりつくぞ~べったりつくぞ~」と、大根を振り回しながら特に可愛い女の子に寄りつく事から生まれたようだ。べっとりと袖をよごしたのだ。

  「浅漬をすなおに切って叱られる」
 この川柳、浅漬とはべったらのこと。この時期のべったらは、沢庵みたいな御飯のお供ではなく、冬を気合で乗り切るための儀式のもので、一切れ頬張れば口いっぱいになり、話も出来ず、ひたすら無心に噛みしだくのを理想としたそうだ。(杉浦日名子「大江戸美味草紙」)
 だから田舎から出てきた女中さんが、沢庵並にうす切りして叱られた、というわけである。

 10月20日の宝田恵比寿講、江戸時代は旧暦だから現在の11月下旬から12月にあたる。まさに冬を前にした「べったら漬け」なのだ。
 1本1000円で買って帰ったが、今年はまだ晩夏のような季節。これでは、ただ甘ったるい漬物で終わってしまう。

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October 19, 2007

764.有楽町イトシア

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 有楽町駅ガード下から見た「イトシア」。この一帯最後の再開発によって、先週オープンした。
 戦後の盛り場の一つ、小さな飲み屋やバーに焼き鳥屋、パチンコ店が軒を並べていたところだ。
 まず交通会館が建設されて多くの店が収容された。日劇・朝日新聞社が改築されて有楽町マリオンになった。そして有楽町イトシアである。

071019_010_640071019_007_640  地下一階は、フードアベニューになっており30軒ほどのカフェやレストラン・美食デリが並んでいるが、超人気なのがドーナツ店「Krispi Kreme」。何時いっても大行列、お昼前など2時間待ちである。

071019_009_640071019   今から70年前アメリカのノース・カロライナの片田舎に誕生したこのドーナツ屋は、彼の地のこども達の大好物となった。 そして、日本進出である。
 昨年新宿に第1号店が誕生した折、週刊誌やテレビに取り上げられて行列店に。有楽町の2号店もこの有様。

 それにしても日本人も気が長くなったもんだ。若い人だけでなく、大の大人も新聞を広げて悠然と並んでいる。携帯いす持参の客もいる。
 一個150円と170円、いったいどんな味なのだろうか。たかがドーナツ、されどドーナツである。

 こうして有楽町から、「焼跡」が完全に消えた。

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October 18, 2007

763.幸せのレシピ

01 昨日の映画に比べると、こちらは成熟した大人のラブ・ストーリー。ロビーを同じくする映画館だが、こちらは観客も大人ばかりである。キャリア・ウーマンとして仕事と恋に悩むストーリーも似ているが、キャリアの磨き方が違う。
 舞台はレストランの厨房だ。美味な料理の数々が登場する。料理好きの身にとって、これは見逃すわけにはいかない。

 「シカゴ」でアカデミー賞を獲ったキャサリン・ゼタ=ジョーンズが、ニューヨークにある評判のフレンチ・レストランの総料理長という役。完璧主義者で仕事の手は抜かない。文句をつける成上がり者の客は、追い返してしまう。しかし、一人で落ち込んでしまう事もある。だから恋人もいない。
 そこに副料理長としてやって来たのがアーロン・エッカート。「サンキュー・スモーキング」や「ブラック・ダリア」で渋い演技を見せたあの役者である。
 ところが二人、どうも気が合わない。ゼタ=ジョーンズにとっての神聖なる厨房、そこに闖入してきた陽気なエッカートの一挙手一投足が勘にさわる・・・・・・とお話は展開する。

03  二人のキューピット役が、アビゲイル・プレスリン。相変わらず上手い。「リトル・ミス・サンシャイン」で子役ながらアカデミー賞にもノミネイトされ、東京国際映画祭で最優秀女優賞を獲った、御年10歳の彼女である。
 交通事故で母親を亡くし、叔母のゼタ=ジョーンズに引き取られた少女が、「料理」を媒介に明るさを取り戻していく。

 監督のスコット・ヒックスは、「シャイン」で数々の受賞歴を持つオーストラリアの演出家。TVドキュメンタリーのディレクターとして、天安門事件直前の中国人民解放軍を捉えた作品で「エミー賞」も獲っている。
 「ロマンスを育て、人と人を優しく結びつけるには、料理ほど優れた仲介者はいない」と映画の背景を語る。

 主役の二人、料理は全く素人。ゼタ=ジョーンズはマイケル・ダグラス夫人として二人の子供の親だが、玉子焼きすら作ったことがないらしい。その二人をNYの有名なシェフ、マイケル・ホワイトが2週間特訓したという。総料理長にはソースの下ごしらえや盛り付けを、サブのエッカートには野菜のカットや魚や肉のいため方を。
 それが見事に厨房で生きているのを見て、役者もまた完璧主義者なのだという当たり前の事を確認した次第。

 この映画は、6年前ヨーロッパで製作された「マーサの幸せレシピ」のリメイク版。 

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October 17, 2007

762.未来予想図

327917view001 水曜日の映画館は「レディスデイ」。若い女性達が行列してたので、何となくこちらも入ってしまった。
 結婚式に始まって結婚式で終わった映画。終了後、涙を流して出てくる女性も多かったので 評判は良いのだろう。

 ドリカムの名曲「ア・イ・シ・テ・ルのサイン~未来予想図~」をモチーフとしたラブ・ストーリー。5年以上も愛し合っているカップルなのに、二人のキスシーンは最後の結婚式の時だけ、というのも最近にしては珍しい映画だ。
 登場人物全てが善人、ハラハラドキドキする場面もないので、不完全燃焼に陥った観客も多かったようだ。「Yahoo!映画」の観客評は厳しい。それでも興行成績は、現在5位。

Sagrada_p01 ラブラブを燃え立たすのが海外ロケ。 今回はバルセロナのサグラダファミリアときた。テレビの旅番組で見慣れたせいか、日本の若い役者たちも結構異国の街角に馴染む。
 石畳の街、ガウディの設計した建物群、そして必ず登場するカラフルな市場、ストーリーはともかくとしてこれだけは魅せる。

 登場したカップルは、松下奈緒(「アジアンタムブルー」)とオーディションで選ばれた竹財輝之助。この作品のイメージに合うかどうかは、観客の好みだから何とも言えないが、今時の「大学生役」にしては綺麗過ぎた。
 原田泰造、西田尚美、加藤雅也、石黒賢、松坂慶子等が脇を固める。われ等の時代のスター松坂が貫禄ある母親役なのだから、こちらも年取った。
 監督は、平山秀幸監督のもとで長く助監を務めてきた蝶野博。デビュー作である。

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October 16, 2007

761.大徳川展

006 上野の国立博物館に「大徳川展」を見に行く。「大」の字に恥じぬ見応えのある展示だった。
 徳川将軍家、尾張・紀伊・水戸の御三家、久能山・日光・紀州の東照宮、さらに寛永寺や増上寺といった徳川家ゆかりの地に伝えられた宝物300点余が、一同に集められた。
 国宝だけでも23点、重要文化財、重要美術品など初めて公開されるものも多い。

 展示は三つのテーマに分れる。第1章の「将軍の威光」では、徳川家康を神格化した上の掛け軸「東照宮御影」をはじめ、武将の象徴である鎧兜に太刀・火縄銃などの武具が並ぶ。
 とくに太刀はほとんど国宝物で、平安時代から鎌倉時代にかけての真恒・正宗・助真・国宗等の名刀が集められた。助真・国宗は日光東照宮のご神体そのものだそうだ。
 さらに朝廷や諸外国との交流を伝える品々が、将軍の権威・権力の実像を伝えてくれる。

007  第2章は「格式の美」。尾張徳川家に伝わる平安時代の王朝絵画の至宝「源氏物語絵巻」は、「柏木」など国宝4点が出品される。ただし「柏木」は今月21日まで、あとは「橋姫「東屋一」と期間展示になる。
 さらに名物茶道具、絢爛豪華な能装束など武家の美意識を代表する宝物が並ぶ。
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009_2  第3章「姫君のみやび」では、将軍の姫君たちの婚礼調度や絢爛たる衣裳、所用の品々を見る事が出来る。
 とりわけ三代将軍家光の息女で尾張徳川家に嫁いだ千代姫の「初音蒔絵調度」の中には、国宝の「貝桶」もある。
 また左の写真「白綸子地菊葵内掛」は、家茂に嫁いだ皇女和宮が用いたと伝えられる衣裳で、柄の菊と葵が公武合体を象徴しているものだ。この衣裳も初公開という。

 こうして見て来ると、260年続いた徳川幕府の権力と権威が、平安時代から江戸時代までの貴重な文化財を散逸させずに現代に伝えてくれた、ともいえる。
 江戸時代の初め、各地の大名達は忠誠の印として家宝ともいえる品々を家康に献上した。家康はまたそれを遺品として、御三家を中心に譲り渡す。とくに名古屋の徳川美術館に保存されている尾張徳川家の至宝は、そうした遺品が多い。

 一連の展示物を見ての感想だが、家康の知謀を強く感じる。彼は、封建社会の支配構造を、主君と家来という個人の忠誠関係から「徳川家」と「大名家」という組織間の忠誠心に変えた。その事が徳川将軍家の相続を確たるものにした。
 太閤恩顧の大名達の忠誠心が秀吉一代で終わり、秀頼が相続出来なかった事を家康は見抜いていたのだ。将軍家、御三家をはじめとする「家」による支配組織の歴史が、300点の宝物となって我々の眼前に展開している。

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October 15, 2007

760.グラインドハウス

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 今週末まで、六本木で「グランドハウス」と称する2本立て映画が特別限定公開されている。「デス・プルーフ」と「プラネット・テラー」という作品に5本の予告編がついて、上映時間は3時間11分、入場料3000円。
 この2本立てはU.S.Aバージョンといわれるもので、これより併せて40分ほど長いディエクターズ・カット版は、既に1本ずつ封切られ上映も終わったところが多い。

 「グラインドハウス」とは、かってアメリカの大都市周辺に数多く存在したB級映画館をいう。ここでは、刺激的なインディーズ系映画ばかりが2~3本立てで上映されていた。
 題材は、セックス・暴力・黒人などで、若いディレクター達が限られた予算と制約の中で、「知恵」と「気合い」と「絶妙な謳い文句」を駆使し想像力の限界に挑戦していた。

 「パルプ・フイクション」や「キル・ビル」の監督、最近では日本の「スキヤキウエスタン」に出演したクエンティン・タランティーノは、少年時代こうした映画に夢中になり「グラインドハウス」に入りびたりだった。そしてここから彼の映画手法は生まれる。
 「シン・シティ」「デスペラード」を監督したロバート・ロドリゲスは、ゾンビ映画の愛好家。タランティーノの手ほどきを受け、彼もまた「グラインドハウス」にのめり込む。
 そしてタランティーノは、スラッシャー・ムービー「デス・プルーフ」を作り、ロドリゲスはホーラ・アクション「プラネット・テラー」を作って2本立て上映にトライした。

 2本立て上映の場合、上映時間に制約がある。そのため両監督は、かなり無理してシーンをカットしたり詰めたりした。しかし、海外版ではその欲求不満を解消するため単独作品として上映することにしたのだ。

 個々の作品内容には踏み込まないが、ともかくパワフルである。カーチェイスにしてもCGなしの本物、バイオレンスにセックスもクレイジーで過剰サービス。その上、映像は傷だらけ、飛び、ブレ、焼き切りと、昔田舎の芝居小屋で見た一年遅れの映画と同じだ。
 というのは、「グラインドハウス」で上映された映画がそうだったからだ。予算がないので20本ぐらいしかプリントされず、それをアメリカ中で使いまわしした。中にはリールごと紛失し、話がすっ飛んでしまうケースもしばしばだった。
 二人は、あえてこのダメージを映像に再現する事で、「あの時代」の懐かしさを「表現」した。

 日本でもポルノを中心に2本立て、3本立ての上映があったが、もう上野あたりに出かけないと経験出来ない。単館でのレイト上映などで、実験的な作品を見る事が出来るが、一般大衆には無縁である。 

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October 14, 2007

759.区民ジャズコンサート

P251is04101  毎年一回開催される「中央区民ジャズコンサート」、昨年は駄目だったが今年は抽選に当った。入場料1000円だから希望者は多い。区の文化・国際交流振興協会が主催し、日本橋劇場で催された。

 今回は作・編曲家として著名な前田憲男をメインに、今大活躍の中堅ジャズ奏者によるジャムセッション。2時間あまり12曲を楽しんだ。
 その中から、私の好きな曲を演奏者のプロフィールと併せて紹介する。

 前田憲男のピアノソロで聞かせたのは「Misty」。ジャズピアニストのエロール・ガーナーの代表作といわれるこの曲は、我が家のBGM。オスカー・ピーターソンのCDで聞いている。
 前田憲男といえば、ここ半世紀たえず第一線で活躍しているピアニスト。羽田健太郎・佐藤充彦とのトリオピアノが印象に残っているが、ビッグバンドやオーケストラによるポップスコンサートの指揮など演奏活動は多彩。

004  ジャズロックの名曲「I Remember Clifford」。名トランペット奏者クリフォード・ブラウンの死を追悼して、テナーサックス奏者ベニー・ゴルソンの書いた美しいバラードである。
 モダンジャズの魅力であるアドリブの面白さ、個性と個性がぶつかり合うソロの応酬が楽しかった。

 トランペットを奏でたのは、原朋直。NHK-BS「ワールドニュース」のオープニング音楽の演奏者として知っていたが、ナマで聞くのは初めて。海外のトップ・アーティストとの共演などアメリカ・ヨーロッパでも活躍している。

01  ベース・サックス奏者は後で紹介するが、ドラムスの大坂昌彦の演奏を始めて聞いて感動した。若いジャズファンには圧倒的な人気のドラマーで、会場では「追っかけ」らしい女性達が声を掛けていた。
 10歳でドラムスを始め、1986年には奨学金でバークリー音楽院に留学、全米各地のジャズフェスティバルで活躍した。自己アルバムも数々リリースしていおり、「スイングジャーナル」誌読者投票ドラム部門では、この17年間1位を保っている。来月の「銀座ジャズフェステバル」にも出演するという。

 映画の有名なテーマ音楽「黒いオルフェ」を、ベースの斉藤誠が完全なソロで弾いた。他の出演者が皆退場した舞台の上で、5本の指と弓を自在に使って聞かせる。
 学生時代からジャズ喫茶などで活動を開始、松本英彦や八木正生などと共演、現在は前田憲男らとステージ・ライブハウスで活躍。アコースティックベース、エレキベースの他、作詞作曲アレンジと多彩な活動を続けている。
 「黒いオルフェ」についてはもうご存知、ブラジルの伝統的なリズム・サンバとジャズを結びつけたボサノバの代表的な曲である。

 最後は「Take Five」。アルトサックス奏者ポール・デスモンドが作曲したモダンジャズの名曲。マンハッタン・ジャズ・オーケストラの演奏が我が家のBGM。
 今回は、テナーサックスの川嶋哲郎を中心としたセッション。彼は現在日野皓正、山下洋輔とのトリオ等で活躍中。今回カルテットを組んだ原朋直、大坂昌彦との出会いでプロに転向したが、彼も又この17年間「スイングジャーナル」テナーサックス部門1位に選出され続けている。
 彼がアフリカでのジャズ・フェスティバルで始めてアレンジした「上を向いて歩こう」「見上げてよあの星を」をソロで聞かせたのが面白かった。 

 次にジャズ・コンサートが楽しめるのは、来月2日~3日の「銀座ジャズ・フェスティバル」。各会場の入場予約券に応募しているが、果たしてどうなるか。

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October 12, 2007

758.東京道産酒の会(18)

 月に一度、北海道を慈しむ仲間が集まり、地元の酒と料理を楽しむ「東京道産酒の会」。189回の昨夜もジャズのナマ演奏を聴きながら、楽しい会話の時間を過ごした。

P251is04099  演奏はいつものようにピアノ中山育美、クラリネット後藤雅文、ギターをバンジョーに持ち替えた安倍寛、今回初登場のベースチューバ加藤人の皆さん。後藤さんと加藤さんは北海道出身とあって一際大きな拍手で迎えられた。
 曲はデキシーランド風に編曲された賛美歌「星の世界」「ワシントン広場の夜はふけて」「聖者が街にやってきた」。珍しいバンジョーとチューバの演奏を楽しんだ。

 今回のゲストスピーカーは「YOSAKOIソーラン祭り組織委員会」の荒井優さん、元実行委員長で現在は東京センター長を務めている。

Site0301  今年で16回となったこの祭りは、高知県のよさこい祭りと北海道のソーラン節がミックスされて生まれた新しい祭り。街を舞台に、踊り手たちが自ら選んだ音楽をもとに、熱い演舞を繰り広げる参加型の祭りである。

 今年6月、5日間にわたって催された「YOSAKOIソーラン」には、341チーム・4万3000人が参加、観客も過去最高の216万5600人を数えた。
 そしてこの祭りは、地元に249億2800万円の経済効果を生み出した。
 以下は、荒井さんのスピーチの要旨。

 「今やこの祭りは、『雪祭り』と並ぶ大イベントとなった。そしてソーラン祭りは、地域のオリジナル要素を加えながら、全国各地200以上に広がった。多くの高校や中学の運動会、体育の時間にも取り上げられている。思い思いの曲に会わせて躍動感溢れる踊りを舞うことは、若者たちの心にフィットしたのだ。
 祭りが成功したのは、『よそ者』『若者』『ばかもの』の三者がうまく連携したからだ。自治体や伝統の押し付けではなく、三者が主体的に取り組んだ。例えば予算、2億円の規模だが三分の一は参加者が負担している。ひとり3000円払う。残りは企業の協賛金とテレビ・ラジオの放送権料で賄い、自治体からの補助金は無い。
 YOSAKOIソーランを北海道の文化としてどう定着させるか、これからが正念場。小学生や中学生の参加を増やして次の世代につなげていきたい。シニア世代に向けての『健康ソーラン』も誕生、層を広げていく。
 来年の第17回は、6月4日(水)から8日(日)まで。みなさんの支援を。」

 次のスピーチは会員の齋藤富男さん。元国税局鑑定官室長、日本酒の専門家である。
 最近の日本酒の原料量を統計的に分析して、焼酎に比べてなぜ清酒の需要が減っているかの問題を提起した。
 「結論から言えば、高級清酒とされる吟醸酒の酵母改良が進んだ結果、香りが華やかになり過ぎ、料理と主役争いを演じている。香りは控えめにして料理の脇役に徹するのが、清酒の生きる道ではないか。」

 最後に先月4回目のガンの手術を受けられた代表世話人の帰還報告。
 「病気になったのも自分、だから治すのも自分。医師はそれをサポートする役。食事・運動・心の持ち方によって回復力・免疫力を高めたい」と、パソコンを駆使しインターネットで情報を集め、医師と手術方法を自ら探し出した86歳の気迫あふれるお話、会員総拍手。これで少なくとも10年は長生き出来ると。

 料理は、丸ごとジャガバターや烏賊の塩辛、帆立貝の酒盗焼きなど北海道の産物が中心。 

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October 11, 2007

757.ファンタスティック4

800_600_02 それ程注目してなかったが、たまたま図書館で「アメリカ・コミック」の解説本を読んで興味を持った 映画である。

 そう言えば、数年前に第1作を見ている。超能力を持った4人のスーパーマンとウーマンが、ニューヨークで悪を退治するお話だった。
 その時気に掛かっていたのが、彼等4人が市民の中で素顔をさらし、皆のアイドルとして交流していた事である。映画「バッドマン」や「スパイダーマン」とそこが違う。

 解説本からの受け売りだが、アメリカでは古くから「マーベル・コミック」として雑誌やテレビアニメで人気のあるキャラクターなのだそうだ。日本でも1969年にアニメが放送されたが、人気はもう一つと聞いている。

 そのマーベルを率いてきたのが、今回も製作総指揮にあたったスタン・リー。御年85歳の大長老だが、「スパイダーマン」や「X-MAN」そしてこの「ファンタスティック・フォー」等人気作品を生み出した天才的コミック・クリエーターなのだ。趣味はただひとつ、自分の作品にはワンカット、必ず出演すること。今回もなかなかの老セブレ役で登場していた。

Silversurfer_03  二作目の今回は、4人のスーパーマンに加えて「シルバーサーファー」が登場した。銀色のメカニックな男が、サーファーに乗って地球を駆け巡る。
 このキャラクターは、ある惑星に住む冒険心を持った若者で、宇宙の魔人の水先案内人という位置づけだ。1966年、「マーベル・コミック」48号に登場して以来、この40年間に146冊のコミックの主人公となった。

 お話は、広大な宇宙から巨大なエネルギーが彗星のような先行となって地球へやってくる、ところから始まる。その到達点の最初が、富士山の見える駿河湾だから笑わせる。一瞬にして海は凍りつき、漁船は鎖される。つぎがエジプトのカイロ、ピラミッドには雪が舞い観光客を震え上がらせる。そして次々と・・・・。ファンタスティックフォーVSシルバーサーファーの超能力バトルが始まる。

 ファンタスティックフォーの面々は、前作と同じ役。テレビ界で活躍していた俳優達が、このシリーズで世界的にブレイク。ハリウッドのスター仲間に加わった。
 リーダー役の天才科学者はイギリス出身のヨアン・グリフイズ、伸縮自在の肉体を持つ。
 その恋人が透明になる力とバリヤーを操るジェシカ・アルバ。「ビバリーヒルズ青春白書」をスタートにこの世界に入った。
 彼女の弟で、全身を発火させて空を飛ぶのがクリス・エヴァンス。「サンシャイン2057」で真田広之と共演した俳優。
 最後の一人は、岩の肉体を持つ強力男マイケル・チクリス。TVドランマ「ザ・シールド」の悪徳警官役で多くの賞を取った役者だ。
 シルバーサファーは、デジタル映像なので声だけが役者の出演。
 そして監督がティム・ストーリー。映画「TAXI NY」でヒットを飛ばし、このシリーズの監督に抜擢される。子供の頃から原作のファンでもあった。

 VFXやデジタルCGIの技術は、多くの作品で見ているのでそう驚かないが、空中での飛行物体の撮影技術は上手い。というのも、今回からラリー・ブランフォードが撮影監督として参加したからだ。
 彼は長い間、米空軍の戦闘カメラマンとして国防総省の記録映画を撮ってきた。その後映画界に入り「トップガン」の空中撮影カメラマン、「アルマゲドン」や「マイノリティー・リポート」「トリプルX」などのセカンドカメラマンとして活躍してきた。そして今回初のチーフとして腕を振るった。

 私の友人のひとりに、スチールではあるが航空機などの空中撮影を得意とするカメラマンがいる。静止した物体や地上の対象を撮るのと異なり、超スピードで動いている飛行物体を、同じく超スピードで飛ぶ乗り物から撮影するのはなかなか難しいという。思うような映像を撮るには、長い経験や飛行物体のメカの知識、そしてパイロットと意気が会って初めて成功すると話していた。
 この作品が、「シルバーサファー」を売り物にしているだけに、ラリー・ブランフォードの腕がどうしても必要だったのだ。

 映画のラスト・シーンはまた日本が舞台。といっても、雰囲気からどうもロケ地は日本ではないようだ。バンクーヴァーで仕上げをしているから、かの地?

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October 10, 2007

756.大統領暗殺

20070816007fl00007viewrsz150x 来週! 19日の金曜日、アメリカ中部時間20時13分(日本時間20日11時13分)、ブッシュ大統領がシカゴで暗殺された。
 犯人として逮捕されたのはシリア系アメリカ人モスレムの若い男、アルカイダの指令を受けて暗殺を実行したとFBIは発表した。
  しかし、愛国者で退役軍人の男も犯行を仄めかして自殺した。イラクに派遣された米軍兵士の息子を殺された復讐だという。

 「タイムマシーン」で過去(06年)に戻って、この大事件をドキュメンタリーとして制作したのがイギリスのガブリエル・レンジ監督。テレビのドキュメンタリー・ドラマの演出家として知られている。そしてこの作品は、映画史上空前の「モキュメンタリー」といわれている。

Index_photo_1  出演者はもちろんジョージ・W・ブッシュであり、次の大統領となったディック・チェイニー、ライス国務長官等の政府高官たち。大統領顧問や報道官それにCAIやFBIの係官たちも事件の証言者として登場するが、どうも彼等は役者臭い。つまりこれが「モキュメンタリー」といわれる所以である。

 作品は、昨年のトロント国際映画祭において国際批評家賞を受賞した。しかし「民主主義国家」アメリカでは、予定していた500館のうち91館でしか上映されなかった。「道徳に反している」(シカゴ・トリビューン)に代表されるネオコンの声を、恐れたのだ。

 「ブッシュを個人的に批難したり、攻撃した映画ではない。起きてきたいくつかの事、そしてアメリカ政府がとっているいくつかの方向性を反映したものだ。そうした問題が現実のものである事を証明するために、本物の大統領を扱う必要があったのだ」
 ガブリエル・レンジはこう応えている。

 9.11以降、何でも「テロとの戦い」として正当化し利用する人が多い。日本の海上ガソリン・スタンドもそのひとつだ。
 この作品では、「暗殺」を「テロとの戦い」に結び付けて利用するアメリカのネオコンの病巣をドキュメンタリー手法によって抉りだしたといえる。

 「なぜブッシュ大統領は暗殺されたのか。それはアメリカの悪夢なのか、それとも潜在的にアメリカが持っている欲望の実現だったのか」

 「モキュメンタリー」とは、mock(偽る、あざける)とdocumentaryをあわせた造語で、ドキュメンタリードラマより真実に迫る制作手法の事をいう。(筆者注)

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October 09, 2007

755.HERO

Hero_wp03_s キムタクに群がる「おばちゃん」たちに遠慮して、見るのを躊躇していたが、観客動員500万を突破したというので、封切一ヶ月後に足を運んだ。

 館内は相変わらず満員だった。左右ををやっぱりおばちゃんに挟まれての鑑賞だったが、映画そのものは面白かった。フジテレビ亀山軍団が率いるだけに、ストーリーのツボは押さえている。

 ご存知の通り6年前にフジテレビでシリーズとして放送され、平均視聴率30%を超えたドラマの映画化である。昨年夏もテレビスペシャルとして放送され30.9%を稼いだが、今回のストーリーはその続編として描かれている。

 「湾岸シリーズ」では警察内部のキャリアとノンキャリアの舞台裏を見せたが、今回は検事の世界。たびたび映画やドラマに登場する検察の花形「特捜」に対し、ヒラの地方検事たちを主役に持ってきた。
 「巨悪」を挙げるのも大事だが、「小悪」の犯した罪の真実を明らかにする事も大切だという。 この映画に、法務省がお墨付きを与えたのも頷ける。

 キムタク・松たか子のテレビコンビを中心に、角野卓造、阿部寛、大塚寧々、勝村政信、八嶋智人、小日向文世の「支部」検事と事務官たち。そして地検次席検事の児玉清に特捜香川照之が加わる。
 対する巨悪が森田一義(タモリ)そして辣腕弁護士は松本幸四郎。テレビスペシャルの重要な役だった中井貴一も登場させる事で、お話の連続性を持たせる。
 釜山ロケを行ってイ・ビョンホン(「JSA」)を登場させたのは、「韓流」ファンも呼び込むためか。

 製作・企画は亀山・大多のフジ・ベテランプロデューサーたち。監督の鈴木雅之もテレビドラマに引き続きメガホンを執った。

 検察庁「支部」の正面玄関、何処かで見た建物と思ったら日本橋の「重要文化財・三井本館」だった。

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October 08, 2007

754.中央区スタンプラリー

071007_040_640 秋晴れの連休の1日、都心をウオーキングした。
 中央区が区政施行60周年を記念して選んだ「おはこ十八景」を歩くスタンプラリーである。
 コースはAとBのふたつ、Bの方は「月島」「勝鬨」「築地」「銀座」「京橋」などご近所なので、日本橋方向のAコースを選ぶ。

071007_016_640_2071007_019_640_2  出発点地は、伝馬町牢屋敷跡の近く「宝田恵比寿神社」。ここで地図とスタンプ用紙をもらって出発。
 この神社は「日本橋恵比寿講べったら市」で有名、来週の週末には恒例の市が開かれる。

071007_021_640_3  小伝馬町から大伝馬町、馬喰町、横山町を経てやげん堀へ。江戸時代から続いて来た地名が、ここで消える。「東日本橋」、両国橋にも近いこの一帯がこんな「無意味」な町名になってしまった。関西の繊維問屋などが集まっているが、全国区の地名「日本橋」に拘ったらしい。

071007_022_640_4 ここにある「薬研堀不動院」で、スタンプを貰う。
 目黒・目白と並んで江戸三大不動として知られるこの寺の本尊は、戦国時代の戦火を逃れて紀伊の根来寺から運ばれてきた不動明王。
 ここはまた「講談」の縁の地で、縁日には講談会が開かれる。
 そしてこの場所に、1838(天保9)年順天堂大学の祖となる和蘭 医学塾が開講した。

071007_026_640  御幸通りから清洲橋通りに出て大通りを歩いて10分、浜町の「明治座」前に着く。ここが3番目のポイント。
 1603(慶長8)年、江戸の市街地を広げるために墨田川沿いの低地を埋め立てて出来た土地である。昔の海浜の面影を残していたので、浜町と呼ばれた。
071007_028_640 またこのあたりは、江戸時代に中村座や市村座などがあった場所でもある。歌舞伎や人形芝居が盛んだったことから、浜町の隣は人形町の地名が残る。幸い戦災を受けなかったので、昔ながらの下町の面影が残っている。

 人形町では、大観音寺でスタンプを貰い次の目的地「茅場町」に向かう。071007_034_640 
 茅場町もまた埋立地。1606年の江戸城拡張、工事に必要な「茅」を扱う商人がここに集まったのが地名の由来だ。
 現在は、隣の兜町も含め株取引のメッカとなった。東京証券取引所をはじめ、証券会社のビルが軒を並べる。
 近くの公園で5番目のスタンプを貰った後は、休日で静かなビル街をテクテク歩く。

071007_032_640 寛永年間、船を通すため江戸湊から長さ八丁(約872m)の堀を掘った所がここ八丁堀。江戸時代には与力・同心の組屋敷があった事から、当時の「デカ」は「八丁堀の旦那」と呼ばれる。
 江戸初期は与力10人同心50人と小規模だったが、人口が増え犯罪も多発したことから、南北両町奉行の頃には与力50人同心280人に増えた。
 与力に与えられた屋敷地は300坪~500坪、同心が100坪というから、この一帯のかなり広い部分が組屋敷だったようだ。ただし、彼等は不足がちな生活費を得るため、町人に屋敷地の一部を貸して長屋にしたらしい。目明しや岡引きを、自費で養わなければならなかったので仕方あるまい。
 堀にかかっていた桜橋の近くでスタンプをもらい、鍛冶橋通り、中央大通りを歩いてゴールの日本橋に向かう。

071007_040_640_3071007_042_640_2   デパートや老舗が並ぶ中央大通りは、休日だからこそ大賑わい。テンポを落としてゆっくり歩く。
 銀座はともかく、この日本橋一帯は六本木や表参道に押されて、一時期人出が減った。老舗の旦那衆は危機感を抱き、様々なイベントを工夫して客を呼び寄せている。
 このスタンプラリーもそのひとつなのだが、今月末の日曜日には「第35回日本橋・京橋まつり『東京日本橋パレード』」や「にほんばし諸国往来祭り『日本橋意気だね』」が開かれる予定だ。「渋谷・鹿児島おはら祭り」のチームも、パレードに参加するのでまた見物にでかけよう。

071007_640_2 日本橋のたもと、元魚河岸の記念碑がある「乙姫広場」で「完歩」の証明書や記念品を貰って、スタンプラリーは終わった。
 11時に日本橋本町の宝田恵比寿神社を出発して、中央区の北半分ををぐるりと回ってウオーキング。日本橋室町に到着したのは15時、途中甘酒横丁で昼食をとった以外は歩き詰め。いろいろと路地にも入ったので、歩いた距離は凡そ8キロ、心地良い疲れが残った。     

    

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October 07, 2007

753.医療システム(4)

 マイケル・ムアーの映画「シッコ」に触発されて、自らの医療体験を3回綴ってきたが、今回はその最終回。

 先月初めから、大病院の専門医による検査と治療をうけてきた。そして先週、3回目の再診で完了。これからは、月に一回ほど「かかりつけ医」に通えばよい。これまでの種々の検査データや専門医の所見は、かかりつけ医のもとに届けられるという。
 掛かった費用は56,300円。その30%が自己負担だから、支払ったのは16,890円。軽症だったので、これぐらいの費用で済んだ。

 今回の体験から、「かかりつけ医」と「専門医」、クリニックと大病院とのネットワークがいかに大切かを知った。また予約システムにより、ほとんど待たずに検査や診療を受けられたのも幸いだった。

 来年4月から「後期高齢者向け医療保険」がスタートするが、この診療報酬体系について今議論が行われている。
 社会保障審議会は先週その骨子をまとめたが、そこでも「かかりつけ医(主治医)」制の導入が目玉となっている。
 主治医は「患者の病歴や他の医療機関での受診状況を把握し」「患者の状態を年に一回程度総合的に評価し」「専門治療が必要な時には医療機関を紹介」する。そのため主治医に対する診療報酬を手厚くする、となっている。
 この考え方は「かかりつけ医の紹介がなければ、コストがかさむ病院治療は受けられない」というイギリスの医療制度に近い。
 しかし一方「自由に医療機関を選べるフリーアクセスを阻害する」との反対意見もある。後者は、アメリカの医療制度を思い起こす考えのようだが、どちらが患者にとってプラスになるのか、我々「高齢者」も映画「シッコ」でも見て考えなければなるまい。

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October 05, 2007

752.トロッキーの挽歌

005  日本の論壇やメディアから、「サヨク」が消えて久しい。そんな折に友人から一冊の本が贈られてきた。著書名は「トロッキーの挽歌」。久し振りの亡霊の登場かとページを捲るうちに、それが決して過去の話ではないことを知った。ヨーロッパにおいて、ラテン・アメリカ諸国でも「トロッキー」はよみがえっていた。

 著者は、14年前にテレビの取材に託けてメキシコを訪ね、敬愛するトロッキーの墓参りを実現させた。取材の表向きのテーマは、メキシコの壁画界の巨匠の足取りを、美術評論家が辿るものだったが、この巨匠がディエゴ・リヴェラだった。

 リヴェラは、当時のメキシコ大統領カルデナスを説得して、亡命先ノルウエーを追われたトロッキーを引き受けた左翼知識人である。彼はメキシコ共産党の創立者の一人だが、ソヴィエト美術の社会主義リアリズムに馴染めず、アヴァンギャルドの道を歩んだ画家で、反スターリン主義者の中心人物でもあった。
 彼は、メキシコ・シティーの郊外にある自宅「青い家」の三室をトロッキー夫妻に提供し、公私ともに面倒をみた。

 彼の若い妻フリーダ・カーロも著名な画家である。情熱的な彼女とトロッキーが恋愛関係に陥った話は、4~5年前に封切られた映画「フリーダ」にも描かれているが、それも一つの原因となってリヴェラとトロッキーの間に亀裂が生じ、二年後トロッキー夫妻は新しい家に移る。
 そして一年半後、この新しい家でスターリンの放った刺客によって暗殺される。

 トロッキーが暗殺された1940年は、奇しくも著者片島紀男が生まれた年でもある。彼は「60年安保」の世代だが、学生運動のなかで共産党を追われ、以後「トロッキスト」を自認しているジャーナリストである。
 現代史をテーマにTVドキュメンタリーを作り続けてきた彼は、その際に集めた資料やインタビューを基に、精力的に本を書いている。
 「三鷹事件」「埴谷雄高・独白」(NHK出版)、「三好十郎傳」(五月書房)、「ゾルゲ事件ーヴィケリッチの妻・淑子」(同時代社)、「国家に殺された画家ー帝銀事件・平沢貞通の運命」(新風舎)など、いずれもドキュメンタリー取材の中から生まれた著書である。
 そしてこの「トロッキーの挽歌」も、14年昔から暖めてきた作品である。

 今の若い人たちはほとんど知らない共産主義思想家レオン・トロッキー。60代から70代の「安保闘争」に関わった人たちにとって、トロッキーはその後の生き方に大きな影響を与えた男である。
 すでに多くの政治的評伝や自伝もあるなかで、半世紀にわたって彼を敬愛し続けたトロッキストの描く「オマージュ」は、スターリン体制に対する厳しい告発の書であると同時に、現代社会にたいする「挽歌」ともなっている。

「トロッキーの挽歌」(同時代社刊) 2000円 10月5日発刊

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October 04, 2007

751.平山郁夫・祈りの旅路展

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 「仏教伝来からシルクロードへ」、平山郁夫さんの画業60年をたどる大回顧展が、東京国立近代美術館で開催されている。
 平山さんは広島出身。旧制中学時代学徒動員先で被爆したが、その後東京美術学校を卒業。以来仏教に関わる伝説や風景を独特の画風で描き、画壇での確かな位置を築いた。
 また世界の歴史的な文化遺産の保存、被爆者としての原体験から平和への祈りを込めた作品など、多くの人たちに感銘を与えている。
 今回は、平山さんの代表的な作品80点が四つのテーマで展示されていた。

004  第1章は「仏陀への憧憬」。左の「建立金剛心図」など9点が、展示されている。 
 それらは仏画ではなく、釈迦という一人の人間を描く。苦行する釈迦の姿の中に、平山さんは被爆の後遺症を背負った自らを重ねあわせた。

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 平山さんたちの保存運動の願いもむなしく、タリバンによって爆破された「バーミアンの大石仏」。
 第2章は「玄奘三蔵の道と仏教東漸」。「仏教伝来」を描いた後、平山さんは三蔵法師の足跡を自ら辿り、その絵画化に挑戦した。長安を出発して嘉峪関、トルファンから天山南路を通ってアフガニスタンのバーミアン、パキスタンンのガンダーラ、インドのデカン高原と続く。002

 左の画は「ナーランダ(インド)の月」。
 奈良・薬師寺が、始祖である三蔵法師を称える伽藍を建立、平山さんに壁画を依頼した。この画はその「大唐西域壁画」の一部を縮小して描いた新しい作品である。

 第3章は「シルクロード」。冒頭の「絲綢之路天空」をはじめ、「ペルセポリスの遺跡」など17点が展示されていた。
 そして最終章は「平和への祈り」。
07_640 このコーナーには、ブログ608号(07.04.06)でも紹介した「広島生変図」など11点が展示されている。
 この画は、平山さんが被爆後24年目に描いた作品で、彼は「あの日、私たちがはいつくばり、はいずり回った広島の街、それは幻のように描かれるべきだろう。しかし空には、はるか天空には必ず『救い』の手がさしののべられていなければならない」と語る。
 この春広島を訪ねた折、原爆資料館で初めて見た作品に、再び出逢った。

 「平山郁夫・祈りの旅路」展は、今月21日(日)まで
 東京・竹橋の国立近代美術館で。

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October 03, 2007

750.焼酎バー「黒瀬」(84)

Imgp08962Imgp09112_640 先月末、九州のローカル各紙は、帝国データバンクが発表した昨年の「焼酎メーカー売り上げランキング」について報じた。
 以下はその要約である。

 「焼酎売り上げは2年連続して減、しかし芋は好調」 
 売上高ランキングによると、上位50社の合計は前年比1.4%減で2年連続減となったが、鹿児島県を中心とする芋焼酎メーカーは前年に引き続き売り上げを伸ばし、好調だった。

 上位50社のうち九州・沖縄のメーカーは、43社。そのうち売り上げを伸ばした会社は26社と、前年より9社減っている。
 一方減益となったメーカーは、16社増え29社となっており、原油高や焼酎かすの処理コスト増の影響が見えてきた。

 ランキングでは、麦焼酎「いいちこ」を主銘柄とする三和酒類(大分県宇佐市)が、調査がはじまった4年前から連続首位。しかし、芋焼酎に押されて売上高は前年比1.2パーセントの減となった。
 売上高の前年比伸び率では、芋焼酎「冨乃宝山」の西酒造(鹿児島県日置市)が35.4%と4年連続のトップ、続いて芋焼酎「黒霧島」で評判の霧島酒造(宮崎県都城市)が10%延ばした。

 県別では、芋焼酎を主力とする鹿児島県が前年比7.8%増の975億円を売り上げているが、他の県は横ばいまたは減となっている。

 大分の麦焼酎に始まった急激な「焼酎ブーム」は去ったが、売り上げ減の幅は小さく、芋焼酎を中心とする焼酎愛好者は定着してきている。

 「黒瀬」 渋谷区渋谷2-14-4
          ℡5485-1313

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October 02, 2007

749.題名のない子守唄

328134view006 イタリアが誇る二人の巨匠、映画監督ジュセベッテ・トルナトーレと映画音楽のエンニオ・モリコーネのコンビがおくる名作である。
 イタリアのアカデミー賞「ダヴィッド・ディ・どなテッロ」で監督賞・主演女優賞・音楽賞など主要5部門を受賞した。

 映画の冒頭、トルナトーレ監督から「ネタバレ禁止」のメッセージがあったのでストーリーは紹介しない。以下三つのフレーズ だけを記しておこう。
 「母性を宿したすべての女性に捧げる慈愛のミステリー」
 「フラッシュバックを多用したスタイリシュな演出、人間の心の闇を映し出す感動のミステリー」
 「棘のある美しさ トリエステに響くマエストロ モリコーネの旋律」

 ジュゼッペ・トルナトーレは今年61歳。イタリアの公共放送RAIのドキュメンタリー出身だが、33歳の時撮った長編劇映画「ニュー・シネマ・パラダイス」でカンヌ国際映画祭審査員特別賞、アカデミー賞外国語映画賞を受賞して国際的に名を広めた。
 この作品は、50年代のシチリアを舞台に古きよき時代に生きた人々の物語で、彼にとっては2作目の長編である。
 その後「海の上のピアニスト」(98)、「マレーナ」(00)など日本でもヒットした佳作を発表している。
 「題名のない子守唄」は、初めて女性を主役にした6年ぶりの監督作品である。

 「ニュー・シネマ・パラダイス」以来、トルナトーレ作品の全ての音楽を担当しているのがエンニオ・モリコーネである。もう80歳に近い大長老だが、これまで担当した映画音楽は400本を超える。
 セルジオ・レオーナ監督の「荒野の用心棒」(64)は有名だが、私が思い出すだけでも「シシリアン」(69)、「死刑台のメロディー」(71)、「ミッション」(86)、「アンタッチャブル」(87)と並ぶ。
 4年前、NHKの大河ドラマ「武蔵MUSASHI」の音楽を担当して話題を呼んだ。
 そして今年のアカデミー賞では、長らく映画製作に貢献したと、名誉賞も受賞している。

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 出演者については、馴染みの俳優が少なく手元に資料もないので、ひとりだけ紹介しておく。
 この作品で主演女優賞を獲ったのが、左の写真クセニア・ラパポルト。チェーホフの「かもめ」や「ワーニヤ伯父さん」など、サンクトペテルブルグ劇場の舞台で活躍しているロシアの役者である。
 現在では、フランスの映画やノルエーのTVなどに出演、ヨーロッパでは広く知られるようになった。
 今回は、気性の激しい情熱的な若い時代の女と、感情を抑え硬質的な美しさを見せる30代の女性を演じ分ける。フラッシュバックとして映し出される彼女の裸体と、北イタリア・トリエステの暗い街並みのモンタージュが、ミステリーのキーとなる。

 久々に場内が明るくなるまで、席を立てなかった映画である。

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October 01, 2007

748.夜の上海

 上海を舞台にした映画は多い。チャン・イーモウ監督の「上海ルージュ」や真田広之が出演した「上海の伯爵夫人」など、退廃的ムードが漂う1930年代の上海は絵になる。

Mematsuo_thumb_2  こちらは、現代中国の先端都市上海を舞台にしたもの。高層ビルが次々に建てられ、アジア一の経済都市に向かって驀進する上海である。
 この街で日本人の「髪結い」(本木雅弘)と中国人のタクシードライバー(ヴィッキー・チャオ)が、一夜だけの恋をするお話である。それも、コトバが通じない中で。

 先週土曜日から、羽田~上海(虹橋)線の直行便が始まった。チャーター便ではあるが、毎日4便が運航する。つまり映画のような「旅恋」が生まれる機会が増えたということだ。本木だって上海に着いて一仕事終わった夜、偶然にチャオに会いロマンチックな時間を過ごすのだから。

 日中共同制作である。これまでも数本の経験があるムービーアイ・エンタティンメントが、北京激動星有限公司と組んで製作した。
 原作は日本のコミックであるが、日中両国から二人づつ集まって脚本を書いた。そして監督はチャン・イーパイ(張一白)、撮影をヤン・タオと中国組が担当した。

 予告編を見たとき「これはいける!」と思って劇場に出かけたが、正直なところがっかりした。せっかくのラブストーリーが、中途半端なコメディーになってしまったのだ。ノリノリのエージェント役竹中直人など、本人が可哀相になる。これは本のせいなのか、監督の演出に問題があるのか、共同制作のマイナス面を見たような気がする。
 ただヴィッキー・チャオは上手い。6年前の作品「少林サッカー」が大ヒットして、今や中国4大女優の一人としてブレイクしている。化粧ッ気のないスッピンでも可愛いが、最後に「髪結い」の本木雅弘の手によって素晴らしい美女になる。

 上海の夜景も美しい。4回ほど訪ねた事のある街だが、ここ10年ほどご無沙汰している。街の変容にただただ驚いている。

 「旅恋」の映画は、「ローマの休日」やロンドンを舞台にした「ノッティングヒルの恋人」など結構多い。二人の恋の成り行きと風景だけに意識を集中して見れば、この作品も一応楽しめる。 

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