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September 30, 2008

1048.9月のシネマ

006_640004_640005_640  今月鑑賞した映画は13本。テレビでは「学校シリーズ」4本と「男達の挽歌シリーズ」2本に黒澤監督シリーズ3本と、普段の月より多く見ている。

 これまで紹介しなかったのは、上の3本。いずれもハリウッド作品、ユニバーサル映画とソニー・ピクチャーズエンタテインメントが配給した。

 3作品に共通しているのは、とことんCGを駆使したVFX映画だという事。映像表現の技術がここまでくると、もう誰も驚かなくなってしまった。製作側としては、これまでは不可能だった領域を開拓しようと膨大な経費を使っているが、観客のほうが醒めてしまっている、という皮肉な結果が生まれてきている。
 以下、記録保存のため概要だけ記しておこう。

 「ハムナプトラ3~呪われた皇帝の秘宝」
 シリーズ3作目。これまでの2本はいずれもエジプトが舞台。考古学者と「ミイラとの闘い」がキーワードだからそうなった。しかし今回は中国に持ってきた。それも兵馬俑に万里の長城、そしてヒマラヤ、つまりこの作品は北京オリンピック記念映画なのだ。
 兵馬俑の泥人形を蘇らせ、始皇帝(ジエット・リー)をミイラにしてオコンネル・ファミリー(父・ブレンダン・フレイザー、母・マリア・ベリオ、息子・ルーク・フォード、伯父・ジョン・ハナ)と戦わせた。
 スケールの大きさだけは、前2作を上回っていた。

 「ハンコック」
 こちらは「アメリカン・ヒーロー」の物語。コミックやグラフィック・ストーリーの人気者の登場だ。ただ今年のヒーローは、どこか屈折している。すでに紹介した「ダークナイト」のバットマンもそうだったが、超人ハンコック(ウイル・スミス)も、市民からは嫌われるヒーローなのだ。
 正義の味方「アメリカ」が、いくら世のため頑張っても世界中から嫌われる「現実」を、ハリウッドも嘆いているのかも知れない。
 「スパーヒーロー」なんか、ウンザリだ!と。

 「アイアンマン」
 続くスーパーヒローは、国際的な武器商人(ロバート・ダウニーJr.)。彼が売った大量殺人兵器を使って殺戮し放題の、アルカイダらしき武装集団に拉致されて改心してしまう。そして、その兵器に対抗するため飛行可能な武装スーツを開発して戦うというもの。
 アフガニスタンとペンタゴンが舞台。これもまた、アメリカの現実が色濃く反映されている。
 「金融恐慌」に脅える暗い時代だからか、この3本はアメリカでは大ヒットしている。

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September 29, 2008

1047.蛇にピアス

002_640 金原ひとみが、20才の時に書いた小説の映画化。
 4年前にこの小説は芥川賞を受賞、最年少の受賞として世間の注目を浴びた。
 SM、刺青、ボディピアス、パンクとダークで刺激的な題材は、なぜか女性読者の圧倒的な支持を受けたという。それは本能ともいえる共感だそうだ。

 しかし当時、この作品のページを捲った「前期高齢者」は、最後まで理解することが出来なかった。
 貧しさとか飢餓を知らない時代に育ったお嬢さんの遊び、という先入観を拭えなかったからかもしれない。

 その小説を、「前期高齢者」でもある演劇界の鬼才・蜷川幸雄72歳が、映画化したのだ。強烈な蜷川ファンでもある金原ひとみの、強いオファーだったという。
 映画もまた、ニナガワ歌舞伎ほどの感動は受けなかった。これもまた、先入観のなせる因からだろう。

 生きる意味を見つけられない主人公は、ピアスと刺青による体の痛みがないと生存の実感が生まれない。時々狂気の独占欲を見せる若い男とのセックス、サディスティックな怖さを見せる大人とのセックス、それも痛みがあって初めて感じる。そのけだるさと狂気が全編を貫く。

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  蜷川監督だから全てを曝け出したという古高由里子は、「紀子の食卓」でデビューした20歳。透明感のある存在だ。
 パンクな若い男の高良健吾(「サッドヴァケイション」)も20歳。
 サディストの刺青師ARATA(「20世紀少年」)が34歳。
 それぞれ実年齢の役を演じた。

 娘(蜷川実花)に撮らせた方がよかったかも知れないが、この小説には共感する部分があった。世界に対するノイズの様な異議申し立て・・・。
 監督の弁である。

 蜷川の舞台で鍛えられた市川亀治郎や藤原竜也、小栗旬、唐沢寿明らが、ちょい役で顔を見せる。

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September 27, 2008

1046.次郎長三国志

001_640  「寝ずの番」に続くマキノ雅彦監督の第2作は、マキノ家伝家の時代劇。活動映画の巨匠、叔父でもあるマキノ雅広監督の十八番「次郎長三国志」のリメイクときた。戦前・戦後にかけて生涯で13本手がけたシリーズである。

 “清水みなとの名物は、お茶の香りと男伊達”とチャッキリ節にも唄われる、次郎八の養子・長五郎が主人公。
 幕末から明治維新にかけて、東海はもとより全国にその名を響かせた博徒の大親分。
 小悪党からスタートしたが任侠の世界で名を馳せ、後半生は社会事業家として地域の発展につくした実在の人物である。
 そして広沢虎造の浪曲を始め、小説や映画でその武勇伝は喧伝されている。

 今回の作品は、若き日の次郎長が中心。義理と人情で生きた渡世のヒーローと男気にすっかり惚れこんだお蝶との泣かせる恋。そんな二人に命懸けで惚れこんだ、大政以下の子分衆の純情。一世一代の「仇討ち」は、まさに古き良き時代のチャンバラの醍醐味だ。

20080407012fl00012viewrsz150x  さてキャストを紹介すると。
 男も惚れこむ次郎長は中井貴一、女房お蝶に鈴木京香と、今日本映画で最も色香のある女優との組み合わせ。
 以下、大政・岸部一徳、小政・北村一輝、森の石松・温水洋一、桶屋の鬼吉・近藤芳正、法印大五郎・笹野高史、大野の鶴吉・木下ほうか、沼図の佐太郎・大友康平の面々。
 色気の方は、投げ節お仲・高岡早紀、鶴吉の女房おきん・真由子、佐太郎の女房・木村佳乃の皆さん。
 そして敵役、黒駒の勝蔵・佐藤浩市、三馬政・竹内力、久吉・蛭子能収、その女房お駒・荻野目慶子と並ぶ。

 もともとの原作は村上元三だが、脚色したのが大森寿美男。大河ドラマから社会派映画まで、ベテランの大森は「寝ずの番」でもマキノ監督と組んだ。
 作品のテンポをあげるのが宇崎竜童の音楽。三味線をしっとりと聞かせた後は、ロックのリズム。最後は、主題歌まで唄った。

 マキノ雅彦は、ご存知の通り俳優津川雅彦。華麗な映画一家のひとりである。
 祖父は日本映画の父といわれる牧野省三、父親が時代劇俳優・沢村国太郎、この作品にも出演している兄・長門博之、妻・朝丘雪路。
 叔父・叔母はベテラン俳優だった加藤大介に沢村貞子、そして母方の叔父がマキノ雅広なのだ。

 作品の方、まだ序盤。今回はお蝶が三馬政の銃に撃たれて死に、その仇討ちがハイライト、まだまだ黒駒の勝蔵は健在。確か森の石松も、どこかで命を失う筈。次郎長の女房も三代目お蝶と続くのだから、続編を期待しよう。

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September 26, 2008

1045.ひとまく会

Kabukiza200809b_handbill_2  歌舞伎座の4階席で、最後の一幕を楽しむ「ひとまく会」。今月は「歌舞伎座120年・秀山祭九月大歌舞伎」、演目は「天衣粉上野初花・河内山(こうちやま)」。ひとまく会での鑑賞はこれで5回目となる。

 「秀山」とは、昭和の歌舞伎を支えた名優、初代中村吉右衛門の俳号。幼くして母方の祖父にあたる初代の養子となり、1966(昭41)年に二代目を襲名した吉右衛門が、3年前から始めたのが「秀山祭」である。
 「初代吉右衛門という素晴らしい役者がいた事を、皆さんに知っていただくのが養子としての務め」と語る。

 演目の「天衣粉上野初花(くもにまごう うえののはつはな)」は、河竹黙阿弥が1881(明14)年に松林伯円の講釈「天保六歌撰」を劇化したもの。
 七幕の長編世話狂言だが、前半の4幕を通称「河内山」と呼び、後半の「直侍」と分けて上演されるのが通例となっている。今回も今月が「河内山」、10月の夜の部に「直侍」が予定されている。

 お話は、平安期の歌人在原業平、小野小町ら六人の「六歌仙」をもじって、幕末頽廃の時代の悪党伝に仕立て直したもの。
 お数寄屋坊主河内山宗俊が、義侠心(実は金のネタ)でもって上野寛永寺のご使僧に化け「妾を強要された質屋の娘を返せ」と、大名を強請るというのがあらすじである。
 とくに大名屋敷の玄関で正体を見破られた河内山が、開き直って吐く啖呵が聞き所、いや見所である。

 「えゝ、仰々しい、静かにしろ。・・・・何もかも言ってきかせらぁ。悪に強きは善にもと、世の譬えにもいう通り、親の嘆きが不憫さに 、娘の命を助けようと、腹に企みの魂胆を練塀小路にかくれのねえ、お数寄屋坊主の宗俊が頭の丸いを幸いに・・・・」
 そして花道、「馬鹿メ!」と一喝して引き上げて幕。

 もちろん河内山宗俊は、吉右衛門。大名が染五郎、宗俊を見逃す家老を左團次、妾にされそうになった娘を芝雀という組み合わせである。
 初代吉右衛門が当り役にし、その芸を受け継いだ当代による名演技を、たっぷりと楽しんだ。

    「播磨屋!!!」

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September 25, 2008

1044.「私の旅の記憶」水彩画展

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 私の友人・知人には、リタイア後絵筆を執る方が多い。この透明水彩画の画家・石田岩夫さんもそのおひとり、仕事を共にした大先輩である。

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      石田さんは、テレビディレクター出身。10年前にリタイアした後、ヨーロッパを中心にスケッチの旅を続け、今回その集大成ともいえる個展を開いた。

 トップの絵はアルブレヒト城(マイセン)、次の段左からアニヴィエの谷(スイス)、朝のサルーテ聖堂(ヴェネチア)、パペーテの夕暮れ(タヒチ)、サンタ・クリスティーナの秋(北イタリア)。
 軽いタッチに淡い色彩、石田さんの人柄を彷彿させる水彩画である。

 国内の風景スケッチも素晴らしい。ここでは「柳生の里の秋」(奈良)だけ紹介しておこう。ぜひ会場に足を運び、絵を楽しんでいただきたい。

  「私の旅の記憶」石田岩夫水彩画展
  28日(日)まで  ギャラリー八重洲・東京
  (東京駅八重洲地下街・フリージアロード)

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September 24, 2008

1043.ウォンテッド

_640 マーク・ミラーが書いた、同名のグラフィック・ノベルが原作。結末を知ってしまうと興ざめするので、本は読まないほうが良い。

 うだつの揚らない若いサラリーマンが、実は「暗殺者組織」の王位継承者。組織の幹部にリクルートされ、暗殺の腕を磨かされる。そして組織内の裏切り者と、生死を賭けたバトルを繰り拡げるというお話。

 秘密結社「フリーメイソン」伝説や、イランの暗殺組織「アサシン」など今で言うテロ集団のお話を下敷きにしている。フリーメイソンが、その名の通り「石工のギルド」とすれば、こちらはギリシャ神話の時代から続く「織物職人のギルド」というわけ。

 監督がロシア、いやカザフスタン出身の奇才、ティムール・ベクマンベトフ。「ナイトウオッチ」で、ロシア映画興行歴代トップという御仁。屈折した話運びと映像は、いかにもそれらしい。
 新次元の映像というが、カーブして標的を射止める弾丸、相手の銃弾は銃弾で食い止める。アウロバットなモーションに壮絶なカーアクションなど、CGを多用した最先端のヴィジアル・ワールドが拡がる。

Wanted_12_800Wanted_17_800Wanted_19_800   出演者も話題のスターが並ぶ。
 冴えないサラリーマンから腕利きのヒットマンに成長する、暗殺組織の王位継承者はジェームズ・マカヴォイ。「つぐない」にも出演した今売れっ子のスコットランド出身の俳優。
 彼に殺しを指導するプロの暗殺「ヒロイン」が、アンジェリーナ・ジョリー。もうすぐ3児の母親になる彼女が、「トウムレイダー」以来のアクション映画で、華麗な裸体を晒す。
 そして暗殺組織の参謀は、モーガン・フリーマン。「ミリオンダラーベイビー」でオスカーを受賞した大ベテランである。

 ハリウッド映画にしては珍しく、監督だけではなく他の出演者が多国籍なのも面白い。
 テレンス・スタンプ(「スター・ウオーズ」)、イギリス出身。トーマス・クレチマン(「戦場のピアニスト」)、ドイツ。ダート・バクタデツ(「クラッシュ」)、グルジア。マーク・ウオーレン(「フリーガン」)、イギリス。コンスタンチン・ハベンスキー(「ナイトウオッチ」)、ロシア。それにアメリカのカリスマ・ラッパー、コモン(「アメリカン・ギャングスター」)と、主な脇役を並べてもこんな具合だ。

 負け犬人生から抜けるため、暗殺のプロに。殺しに疑問を抱く彼に「KILL1,SAVE1000」とジョリーが挑発する。
 今も連日何処かで起こっている、「テロ」の論理と同じなのが気にかかる。

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September 23, 2008

1042.焼酎バー「黒瀬」(102)

 事故米というより汚染米事件。焼酎にはじまって日本酒にお菓子、弁当から給食にまで広がり、まさに汚染列島の感ありである。

 焼酎の方は、西酒造の30万本の回収に始まって同じ原酒を使っていたアサヒビールが65万本、まだ瓶詰前だった喜界島酒造、鹿児島酒造はタンクごと全てを廃棄と大損害を蒙った。
 焼酎バー「黒瀬」に置いてあった「薩摩宝山」は、瓶詰めが夏以前のものだったので回収騒ぎにはならなかったが、お店での話題はどうしても「汚染米談義」になる。

  そんな折、昨日発表されたのが鹿児島では准大手のメーカー「田苑酒造」の自主回収である。
 問題の三笠フーズの関連会社「辰之巳」を通じて仕入れた麹用米に、事故米(水漏れによる一般カビ)が混入していた恐れありと言うのである。対象は計18品目で、1.8ℓ換算110万本にのぼると言う。
 事件が発覚した直後、「辰之巳」からは「事故米は混入していない」との説明を受けていたが、田苑酒造は自主的に調査を行い、混入の可能性も否定できないと独自に回収する事にした。

006_640_3  「田苑 芋」は、私の愛飲焼酎銘柄の一つである。創業明治23年のこの蔵元を、40年ほど前に取材して以来、酒屋の店頭で見つけると購入している。以前にはこの蔵元の製品を、都内のいくつかの飲食店に紹介した事もある。
 自宅の棚には半分ほど空けた「芋パック」があった。製造ロット番号をチェックしてみると「詰口302604」、この8月に瓶詰めした「疑いのある焼酎」と判った。
 麹用の米はよく磨き洗浄されているので、直接健康に害はないし既に封を切ってあるので返送する気はないが、やはり面白くない。
 低廉価の事故米を高い「麹用米」として売る、その悪徳商法に腹が立つのである。

013_640011_640  鹿児島の焼酎は、WTOの協定により国際的な「ブランド」表示が認められており、「薩摩焼酎」の認証マークをつけて産地証明を行っている。
 また鹿児島県産のさつまいも使用の「ふるさと認証」の普及にも努めている。
 こうした地元の努力を、今回の事件は水を差すと同時に、経済的にも多大な損害を与えたのである。
 鹿児島に「縁(えにし)」をもつひとりとして、怒りが収まらない。

 「薩摩焼酎」の店・「黒瀬」
 渋谷区渋谷2-14-4 ℡5485-1313     

 

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September 22, 2008

1041.当マイクロフォン

 10年前の11月1日午前10時、東京目黒の安楽院別院。空はどんよりと曇っていた事を思い出す。この日、3日前に病死した異才のアナウンサー、中西龍の葬儀が行われた。享年70歳。
 私は、同業の後輩としてではなく、数多の“龍(りょう)さんファン”のひとりとして参列した。

060   有楽町での映画の帰り、三省堂書店で目に留ったのがこの本である。
 「伝説のアナウンサー中西龍の生涯 俳風評伝小説」と背表紙に書かれている。表題の「当マイクロフォン」とは、龍さんがみずから出演する番組で口グセのように用いる一人称代名詞、つまり「わたしこと、中西龍」である。
 著者は三田完、これまで「オール読み物」新人賞や直木賞候補にもなったNHKディレクター出身の作家である。私より一回り以上も若い。

 作品は「著者の取材に基づいて、実在の人物をモデルに書かれた書下ろしフィクション」とある。
 しかし私の知る限り、女を愛し酒を愛した破天荒とも言える龍さんの生き様の部分は、ほぼノンフィクションといっていい。そして龍さんと晩年を付き合った作者らしい登場人物、この小説の語り部の部分にフィクションを織り交ぜることで、龍さんの人物像に深みと詩情を漂わせている。

 私の龍さんとの初めての出会いは、半世紀以上も前の中学時代に遡る。NHK入局2年目、たった1年で熊本中央放送局を追われて鹿児島勤務となった彼の、夕方のラジオ番組はたしか「鹿児島の夕べ」。わずか15分のDJ番組だったが、そこから流れる龍さんの「語り」に痺れたのだ。
 そしてファンレターの葉書をたびたび書いた。この中学生の稚拙なレターに、龍さんは必ず返事をくれた。しかし2年後、龍さんの声はラジオから消えた。

 2回目の出会いは、偶然だった。同じ仕事に就いた私は鹿児島で働いていた。ある日放送部長に呼ばれ、東京からの取材班のコーディネイト役を命じられたのだ。たまたまディレクターが同期だったからだが、その時のインタビュアーがなんと龍さんだったのだ。
 取材相手は、離島での医療活動のためセスナ機の操縦免許を取った女医さんだった。当時たしか女性パイロットを主人公にした「朝ドラ」が放送さており、それに因んだ話題だったと記憶している。
 1泊2日という短い取材は無事に終わったが、その後のコーディネイトに振り回された。数日前から、龍さんの10年ぶりの来鹿の噂が夜の繁華街(天文館)に飛び交った。放送局には、小料理屋の女将やクラブのママさんからの電話が殺到した。
 夜行列車での帰京までの5時間、私は6人だけに絞って店をハシゴして案内した。そして引き止める女性たちを振り切って、西鹿児島駅に着いたのは発車10分前。それに彼等の懐はスッカラカンである。駅長に頼んで「着払い」にし、酔っ払った龍さんたちを寝台列車に押し込んだのである。翌日東京駅には、中西令夫人が引き取りに来たという。

 それから10年、龍さんと一緒に仕事をする機会が増えた。ディレクターとして制作した幾つかのドキュメンタリー番組のナレーションを龍さんをお願いした。
 番組収録のダビングルームで、龍さんは同席したミキサーや効果マンに必ず話すのだ。
「Kちゃんは、私のフアンだったのだよ、中学生の時。あの頃は可愛かったのにな。フフフ・・・」と。
 中学時代、私は龍さんに会ってはいない。葉書だけのファンレターだったのだが。
 収録後はいつも、湯豆腐を突っつきながら盃を交わす。龍さんは酔いつぶれるまで、「薩摩の女」たちへの愛惜を語った。そんな唄も流行っていた頃だった。

 「いつの世にも悪は絶えない。その頃幕府は、火付盗賊改メ方という特別警察を設けていた。凶悪な賊の群れを取り締まるためである。」
 「独自の機動性を与えられた火付盗賊改メ方の長官こそ、長谷川平蔵。人呼んで“鬼の平蔵”である。」
 時々龍さんの声を聞いている。吉右衛門のファンである連れ合いのために、フジテレビの「鬼平犯科帳」ビデオテープを全巻揃えているからだ。
 初めて龍さんの声を聞いてから54年、彼の艶のある語りは少しも変わってはいない。

 三田完著「当マイクロフォン」(角川書店刊) 1700円

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September 20, 2008

1040.パコと魔法の絵本

Wallpaper02_1024_768_2 前号はアメリカのファミリー映画だったが、今回は日本のファミリー向け作品。といっても前作に比べると、少々毒がある。
 「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が、ティム・バートン風の極彩色で作ったお伽噺である。 

 お話は、1日しか記憶を持てない少女のために、変わり者の大人たちが思い出を残してやろうと、絵本の世界に入って奮闘するというもの。
 昔小学校の学芸会で見た劇のような、ノスタルジックな映画だったが、元々は4年前に初演され話題を呼んだ舞台劇、後藤ひろき作「ガマ王子vsザリガニ魔人」。
 今回は、特殊メークやCGキャラクターを動員して「中島ワールド」を生み出した。

329294view003329294view001  主役は少女パコのアヤカ・ウイルソンと、偏屈で意地悪ジジイの役所広司。
 アヤカは、映画初出演というが可愛さと素直な演技は、前号の孤島のニモ・アビゲイルにも負けない。

329294view010  共演者が凄い。誰が誰だか判り難い奇想天外なコスチュームで登場する。
329294view011_2  自信はないがセリフの声をもとに配役を並べると、物語の狂言回しは阿部サダオ、子役時代の名声に引きずられる自殺願望の役者・妻夫木聡、恐怖の看護師・土屋アンナ、ジジイの甥っ子で気弱な男・加瀬亮、その妻でジジイの財産を狙う看護師長・小池栄子、消防車に轢かれた間抜けな消防士・劇団ひとり、オヤマのおじさん・国村隼、お芝居好きのお医者さん・上川隆也、ほかに貫地谷しほりやデヴィ・スカルノも登場しているのだが、どの役だったか判らない。

 クライマックスは、役者たちと3DのCGキャラクターと交互に変身させながら、演技を連動させる演出。CGキャラと実写の合成は、日本の劇映画では始めての試みだそうだ。

 笑いあり涙あり、そして感動させる映画である。
 <天使のような女の子のために、本当の天使いなろうとした大人たちのメリーゴーランドウトーリー>
 以上は製作会社の謳い文句。

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September 19, 2008

1039.幸せの1ページ

330487view001 「タクシー・ドライバー]('76)「羊たちの沈黙」('91)と2度のオスカー受賞に輝くジョディ・フォスター。
 「告発の行方]('88)「フライトプラン]('05)「ブレイブワン]('07)と、シリアスな役柄を演じてきた彼女が、久々にコメディータッチの作品に出演した。
 引きこもりで対人恐怖症、そして潔癖症の冒険小説作家の役である。
 その彼女が、南海の孤島に住む愛読者の少女からのSOSで、人生を変えてしまったお話である。

330487view002

 もうひとりの主役は、孤島に住む少女ニム。原題「NIM’S ISLAND」が示すとおり、アビゲイル・ブレスリン演ずる少女が大活躍するお話でもある。
 ブレスリンは、昨年「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー賞にもノミネイトされた名子役。ニューヨーク育ちの彼女が、今回は熱帯密林を駆け回り、ロッククライミング、スキューバダイブとすっかりアクション女優に変身した。

330487view006_2 海洋生物学者の父親と、冒険小説家が生んだヒーローの二役は、「オペラ座の怪人」のジェラルド・バトラー。
 少女をひとり留守番に残して海洋調査に出かけた父親、嵐で遭難して連絡が途絶えた事から話は展開する。

330487view004_2 面白いのは、そのきっかけである。南海の孤島といっても、そこは科学者親子、太陽光発電の設備を設け、衛星通信によってコミュニケーションが可能なのだ。
 父親のヨットは嵐で衛星アンテナを失い、連絡不可能となったが、少女のパソコンからは遥か彼方のサンフランシスコ、作家のヒーロー宛のEメールへ救助を求める連絡が取れるのだ。
 まさに大自然社会とIT社会が共存している事で、観客の子供たちの納得が得られるのだ。

 原作は、オーストラリアの人気作家ウエンディー・オールのベストセラー「秘密の島のニモ」。アメリカやヨーロッパ各国でも翻訳出版され、日本では、「あすなろ書房」から最近刊行された。
 監督・脚本はジェニファー・フラケットとマーク・レヴィンの夫婦コンビ。
 熱帯雨林や輝くビーチなど、美しいロケーションは、オーストラリア・ゴールドコーストの沖にある国立公園ヒンチンブルック島。

 ハラハラドキドキさせて、最後は「幸せの1ページ」でハーピーエンド。肩のこらないハートフル・アドベンチャー映画だった。

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September 18, 2008

1038.おくりびと

330042view001 「おくられる日」が近い人たちで、館内は埋まる。今年入った映画館では、最も混雑していた。 それもウイークデイ、朝一番だったが。

 確かに前評判もいい。モントリオール世界映画祭ではグランプリ、中国のアカデミー賞(金鶏百花映画祭)でも作品・監督・男優賞の3冠を受賞、次のアメリカ・アカデミー賞の外国語作品賞へのエントリーも決まった。

 TBS・朝日・松竹・電通・小学館などの共同製作だけに、パブリシティは上手い。公開初日、NHK「おはよう日本」に主演の本木雅広が出演して、大々的にPRしていたが、読・毎などのライバル紙も好意的な批評を掲載していた。

 脚本がいい。TV「料理の鉄人」などの構成作家として有名な小山薫堂が、初めて映画の脚本を書いた。決して派手でドラマチックな話ではないが、もともとの企画者・本木雅広の気持ちを酌んで、「生きてきたこと」の尊厳と親子・家族の無償の愛を紡ぎ出した。

 それを監督したのが滝田洋二郎。「僕らはみんな生きている」でユーモアを、日本アカデミー賞を受賞した「壬生義士伝」で深い感動を与えてくれたベテラン監督である。
 今回もまた、ユーモアと感動が融和した作品を撮ってくれた。

 そして音楽は、久石譲。隣の映画館で上映中の「崖の上のポニヨ」の彼である。田園に流れるチェロのメロディーがいい。

 話は、オーケストラの解散で失職したチェロ奏者が庄内に帰郷して、「旅立ちのお手伝い」、つまり遺体を柩に納める納棺師の仕事に就くというもの。
 納棺師役の本木雅広が、10数年前ロケ先遭遇した「この世の旅立ちの儀式」に感銘を受け、これまで暖めてきた企画だったのである。
 本木は、絶妙な手の動きで、静謐な「旅立ちの儀式」を見せる。

330042view002330042view003330042view005  夫の仕事に悩む若い妻役広末涼子の素直な演技もいい。そして納棺師師匠役山崎努が、味のある演技を見せる。
 ほかに余貴美子、笹野高史、吉行和子とベテランが顔を揃える。

 「人は誰でもいつかは『おくりびと』『おくられびと』・・・・。あなたは大切な人を、どう『おくり』ますか?そしてどう『おくられたい』ですか。」

 時代劇にしても現代劇にしても、庄内の自然とたたづまいは、人々の心を揺さぶる。「おくりびと」は、そんなロケーションにも支えられた作品でもある。 

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September 17, 2008

1037.新秋大歌舞伎(2)

 「色彩間苅豆(いろもよう ちょっと かりまめ)~かさね」

 新橋演舞場二つ目の演目は、清元の名曲に乗って踊る「舞踊劇」。市川亀治郎が女形で、奥女中のかさねの役を、市川海老蔵が、悪事を働いた浪人与右衛門という「色悪」役。
 「色悪」とは、二枚目かと騙される恐れのある美男子の悪党のことで、この芝居もかさねがすっかり騙されて、与右衛門の子を妊娠しているという設定。
 着流しに白塗り顔の海老蔵を相手に、矢羽根の帯の美しい腰元・亀治郎が踊る。

 3年前に、香川の金毘羅さんでこの演目を二人で初演。評判がよく、翌年にはロンドン・アムステルダムと巡業、大きな話題となった作品である。

 お話は、逃げる与右衛門を鬼怒川の堤で必死に口説くかさね。其処に流れ着いたのは与右衛門が殺したかさねの父親の髑髏。その顔に刺さった鎌を抜くと美しいかさねの顔が・・・・。そして与右衛門はかさねを鎌で切りつける・・・。
 かさねの怨念と与右衛門の非道が美しく、そして凄まじく繰り広げられていく。

 「かさね」は鶴屋南北が書いた「法懸松成田利剣」の一節。祐天上人の霊験譚「死霊解脱物語」、いわゆる累(かさね)伝説を基に脚色した作品である。

200pxshunsenkasane  「累(かさね)伝説」については、以前にもこのブログで書いたが(683号・落語「真景累ヶ淵」、684号・映画「怪談」)、江戸の始め下総国羽生村(現常総市)で実際にあった事件と後日譚である。

 羽生の百姓与右衛門が、顔が醜く足の悪い連れ子を鎌で惨殺、鬼怒川に流す。やがて生まれた実子・累(るい)が大きくなるにつれ殺した子そっくり、「かさね」合わせたようになる。
 その子累もまた、夫の2代目与右衛門に殺される。以後累の血を引く一族は、親が子を、夫が妻を殺すなど非業の死を遂げていく。累(かさね)の怨念が亡霊となっての出来事だった。
 29 この事を聞いた祐天上人は累の霊を解脱させ、成仏させたという。今も
羽生の法蔵寺には累の墓が残っているし、上人が開基した目黒の祐天寺には、累一族の霊を弔う塚があり、怪談噺の落語家たちや「かさね」を踊る役者たちがお参りしているという。

 戯作では曲亭馬琴作・北斎画の「新累解脱物語」、落語は三遊亭円朝の「真景累ヶ淵」、歌舞伎がこの「かさね」と累は今もなお、人気者!なのだ。

 さて舞台の方は、亡霊となった亀治郎のかさねが、逃げようとする与右衛門を吸い寄せるようにひき付け、両者見得を切って「チョンパッ」の幕切れ。
 拍子木がチョンと鳴って、舞台はパッと明るくなるのだ。

 この演目の外題。「色彩」を「いろもよう」と読ませる。ふたりの恋の駆け引きの事だろう。「間」は「ちょっと」。そして「苅豆」(かりまめ)とは、実話・百姓与右衛門の連れ子殺しが、大豆の刈り取り畑での出来事だったからだそうだ。
 これは、解説を聞かなければさっぱり判らない。 

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September 16, 2008

1036.新秋大歌舞伎

Shinbashi200809b_handbill 松竹の知人から招待状を貰ったので、新橋演舞場に出かける。いつもは、歌舞伎座の4階「ひとまく席」でのオペラグラス持参。今回は2階正面席で、花道もバッチリと見えた。
 人気の若い役者たちの出演とあって、若い女性の観客が多い。

 「夜の部」、演目は「加賀見山旧錦絵」と「色彩間苅豆」の二つ。2時間55分と50分の大作だった。

 「加賀見山旧錦絵」(かがみやま こきょうのにしきえ)

 もともとは人形浄瑠璃で、1782(天明2)年に江戸薩摩外記座で上演。一年後には、森田座で歌舞伎化初演された義太夫狂言である。
 50年ほど前の将軍吉宗の頃、石見の国・松平周防守の江戸藩邸で起こった事件をモデルに、町医者の容楊黛(ようようたい)が書いた。人形浄瑠璃としては珍しく、江戸の作家による作品である。

 事件の中身は、藩邸付の局(つぼね)に度々意地悪され、自害した側女の召使による仇討ちというもの。忠臣蔵の仇討ちと並んで、江戸の庶民の喝采を浴びた事件だった。
 作者は、その一件に加賀百万石のお家騒動を織り込んで、超大作を書き上げた。演題の「加賀見山」は、加賀と石見をくっつけたのだろう。芝居としての通称は「鏡山」と呼ばれている。
 江戸時代には、御殿女中の宿下がりを狙って、3月の弥生狂言として毎年上演されたという。

 今回は、中老尾上(側女)を中村時蔵、仇討ちをする召使お初を市川亀治郎、加賀家局岩藤を市川海老蔵という組み合わせ。

 とくに尾上の役は、「仮名手本忠臣蔵」の大星由良之助に匹敵するほどの、女形の大役。局の意地悪に耐えるところや、自殺の覚悟を告白する「くどき」が見所だった。二幕目の花道での「引っ込み」で、ポロリと本物の悔し涙を流す時蔵は、なかなかの名演技だった。
 今年53歳、歌六、歌昇とともに名門萬屋を率いる時蔵としては、20歳離れた二人の若手人気役者には負けられない。

 その人気役者、亀治郎と海老蔵。太刀を交わす女武道は、舞いの形も取りながら、天地の「見得」。このあたりは、両人とも「荒事」も得意とするので決まっている。
 海老蔵が時々地声を出して、海老サマフアンを笑わせていた。なかなかの敵役である。そして亀治郎が初々しい。

 この物語、「加賀見屋もの」といって後編や類似作品が多いそうだ。
 通称「骨寄せの岩藤」はその代表作で、河竹黙阿弥が78年後に書いた後日譚で、今回も登場している岩藤の兄・弾正がお家乗っ取りを図るというもの。岩藤の亡霊や二代目尾上になったお初も登場する。

 因縁話となるが、「加賀見山旧錦絵」が上演された新橋演舞場は、旧松平周防守の江戸藩邸跡で、現在の切符売り場あたりが尾上が自害した場所だという。ここには「お初稲荷」の社もある。

 以上、薀蓄は会場での「イヤホンガイド」で得たお話。

                           ( 続 )
 

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September 15, 2008

1035.秋・浜離宮

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080915_029_640080915_004_640080915_002_640  秋の浜離宮は、コスモスが咲き誇る。特に、お花畑の10万本の「キバナコスモス」は見事だ。
 春の菜の花畑以来、久し振りに庭園を散策した。

080915_018_640080915_017_640080915_008_640  祝日なのに、庭園は閑散としている。コスモスの花を撮影する「高齢者カメラマン」と外国人観光客がチラホラ。

 ここは、もともと徳川将軍家の鷹狩り場。その後甲府浜屋敷が出来て、将軍家の別邸。
 明治維新後は皇室の離宮、戦後下賜されて都の公園・浜離宮恩賜庭園となった。

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080915_014_640  今日は、「敬老の日」。毎年、今日から一週間が敬老福祉週間ということで、「60歳以上は入園無料」である。
 清澄庭園など都立の公園は全て同様なのだが、あまりPRされていない。
 入園口の看板をみて、初めて知った人が多い。080915_032_640_3
  面白いのは、外国人も60歳以上は無料。観光バスで到着した中国からのお客さん、ガイドが手を上げさせて「老人」を確認していた。
 
 秋・浜離宮、この後はキンモクセイ、ヒガンバナ、イロハモミジと花が咲く。

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September 13, 2008

1034.イントゥ・ザ・ワイルド

_640 悲惨というか悲しい結末の映画なのだが、見終わった後なぜか清々とした気持ちを抱く。
 それは監督・脚本のショーン・ペンの腕なのか、それとも事実の重みなのか。

 実話である。
 1992年夏、アラスカの荒野でひとりの若者の餓死体が発見された。この事実は多くのマスコミが大々的に伝えた。それは、その死があまりにも謎めいていたからである。
 裕福な家庭に育ち、優秀な成績で大学を卒業、将来を嘱望されていた青年だった。その彼が、ある日家も名前も金も捨てて放浪の旅に出たのだ。そしてさすらいの果てに、アラスカの荒野で命を失う。

 ジャーナリストで登山家でもあるジョン・クラカワーが、彼の手記を手がかりに旅で出会った人たちを取材、ノンフィクション「荒野へ」を出版。大ベストセラーとなる。
 その本を書店で手にしたひとりが、ショーン・ペン。すぐに映画化を決意、交渉に入る。以来10年、遺族や関係者を説得して製作にこぎ着けた。

175pxsean_penn_filming_milk_in_2008  ショーン・ペン、クリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」でオスカーを受賞した俳優。マドンナと結婚したり暴行容疑で逮捕されたりと、スキャンダルの話題に事欠かない性格俳優だが、「インディアン・ランナー」('91)で脚本家・監督としてもデビュー、今回が5作目である。

 ペンは、「甘ったれた若者の悲惨な結末」という世間一般の受け止め方とは異なり、「若者の純粋さと勇気、その何物にも代えがたい特権」を暖かく真正面から受け止めた。
 青年が放浪中出合った様々な人々全てが、彼を暖かく迎い入れたのは、その純粋さ故だったと、ペンは見抜いたのだ。

 「自由」「幸福」「人間の絆」、真実を探す旅は悲劇としてではなく、多くの人たちの共感を呼ぶ旅物語として、スクリーンに登場した。

 主演のエミール・ハーシュ(「スピードレーサー」)は、注目の若手俳優。最後の飢餓状態のシーンは、体重を18㌔も減量して演じた。まさに鬼気迫る演技だったが、その死顔は美しかった。
 作品をモノローグで綴るのは、妹役のジェナ・マローン(「プライドと偏見」)。旅で出合った人々、母親と同年代のヒッピー・キャサリン・キーナー(「カポーティー」)、青年に淡い恋ごころを抱く少女・クリスティン・スチュワード(「ジャンパー」)、兄貴分として面倒をみた男・ヴィンス・ボーン(「ブラザー・サンタ」)、最後に会った孤独な老人・ハル・ホルブルック(「ザ・ファーム」)と、ペン好みの演技派が並ぶ。
 ホルブロックは、この作品でアカデミー賞助演男優賞にノミネイトされている。

 スタッフもペンの友人たち。
 撮影のエリック・ゴーティエは、ゲバラの青春時代を描いた「モーターサイクル・ダイアリーズ」のカメラマン。青年の放浪の軌跡を追体験するため、実際に旅した足跡を追って、アメリカ各地の大自然にカメラを向けた。
 音楽はパール・ジャム。エンドタイトルに流れた「ギャランティード」は、今年のゴールデン・グローブ賞の主題歌賞を受賞している。

 「ショーン・ペンが生んだ、まぎれもない傑作!」と、アメリカの映画批評雑誌「ヴァラエティ」が書く。

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September 12, 2008

1033.東京道酒の会

031  月に1回北海道を慈しむ仲間が集まり、地元の酒と料理と会話を楽しむ「東京道産酒の会」。かっての北海道勤務時代を懐かしむ人、北海道で青春を送った人、北海道にエールを送る人たちの集まりである。
 196回の昨夜も、ジャズのナマ演奏を聴きながら、楽しい時間を過ごした。

 冒頭は、入院先を抜け出して出席した代表世話人の挨拶と闘病報告。
 「近年、ガン治療技術は進歩している。肝臓ガンも、ラジオ波による焼去治療を受けたが、転移した肺ガンも、両胸に3箇所づつアナを開け、内視鏡による手術で切除した。この方法によって体力を消耗せずに治療できた。問題は、気力の方だ。まだまだ死ねないという強い意志が、免疫力を高めるのだ」
 86歳を超える代表世話人の強い生命力に、出席者全員が感動の拍手。

004  続いて「洞爺湖サミットと道産酒」の後日談。前回に続いて北海道酒造組合専務理事の西田孝雄さん。
 「サミット開催による道内の経済効果は?と色々と言われているが、本当のところ期待したほどには無い。ただ酒造業界にとっては、大ヒット。記念して販売したサミット統一ブランド「彩花洞爺」は、3万本を完売。まさにひとり勝ちだった。出席した各国の首脳への土産も、柿右衛門が絵付けした磁器にいれた道産酒だった。今夜は、同じお酒を持ってきたので、味わってほしい」
 8人テーブルに720ml1本、盃をまわして冷酒を一杯。

 今夜のゲストのスピーチは「北原白秋と北海道」。北原家の末裔、北原邦雄さん。
 「冒頭皆さんが唄った『この道』は、作詞・北原白秋、作曲・山田耕筰。このコンビは342曲の歌を作っている。『からたちの花』『待ちぼうけ』『砂山』『慌て床屋』など小学校唱歌として知られている歌の他にも、校歌や応援歌、企業の社歌も多い。」
 「『この道』には、北海道のイメージがいっぱいある。“アカシアの花が咲いている”のアカシア、“ほら白い時計台だよ”は札幌の時計台、“お母さまと馬車で行ったよ”は、故郷九州の母親の実家への道と、北海道の馬車のダブルイメージ。」
 「白秋の歌碑は、全国で5~60あるようだが、北海道には深川市にひとつ建っている。また『くもりのオホーツク海』という詩もある。」
 「お酒に関しては、北原家が元々柳川の造り酒屋でもあっただけに、白秋も酒好きだったようだ。『ウイスキー』『ビール樽』という詩も残っている。」
 九州出身の詩人と北海道との意外な関係を、道産酒を飲みながら拝聴。

 ジャズの演奏は「ベイズン・ストリート・ブルース」「白い渚のブルース」「アバロン」。演奏は、いつものようにピアノ中山育美、クラリネット後藤雅広、ギター阿部寛、ベース小林眞人の皆さん。

 酒の肴は、「秋刀魚生姜煮」「秋茄子胡麻掛け」「帆立貝にイクラ」「するめ烏賊細造りに生雲丹」「鮭千草焼き」「もろこし御飯」など、北海道の食材。 

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September 11, 2008

1032.昭和男、腕を組む

059_640 「昭和男のユーモアとペーソス、エッセイの名手が贈る味わいまろやかな24編」「これぞ、エッセイのオン・ザ・ロック!」
 本の「腰巻」に書かれている通り、久し振りにニヤリと笑って読んだ。読後感は爽快だ。

 筆者の「うえたけ・そのお」氏は、姉夫婦の友人。大阪時代は仕事でお付き合いし、東京では「道産酒の会」でご一緒した。
 元大手デパートの幹部、8年前にリタイアして悠々自適の日々を送っていらっしゃる(本文による)ようだ。

 昨年来、作家の友人と月2編のエッセイを交換し、それを纏めたのがこの本。時には抱腹絶倒させ、時にはしんみりとさせるエッセイ24編は、後輩の私にとっても黄昏へ向けてのアドバイスになる。

 冒頭の一文。 
 「男の世界は二つの種族に分けられる。ノム族とノマン族である。・・・・・ノム族の中にはノンベという一派があり、『類は友を呼ぶ』を合言葉に、かなり排他的な一団を構成している。スイゲンスイゴという独特な言語さえ持っているのである。・・・・・・・以下はそのスイゲンスイゴで書かれた文章を翻訳したものである。」

 翻訳された文章からは、「うえたけ」さんの生い立ちから家族、学生時代から会社勤めの悲哀、盃を酌み交わした人たちとの友情、そして「この国のかたち」への心配りが浮かび上がる。

 エッセイ各章のラストコメント、いくつかを紹介すると。
 「上野の山には沢山の動物たちがいて、珍しい人間どもを見ようと好奇心満々の目をして待っている。キミもぜひ、顔を見せてやってもらいたい。」(上野動物園でボランティア・ガイドの友人の案内を受けて)
 「 特に年寄りにお勧めする。なにしろ『銀座』を英語に直すと、『シルバー・シート』なのである。」(バブルが弾け高級クラブが激減した銀座は、ぶらぶら歩きに好適な街になったと)
 「玉の如く白い磁肌に触れ、じっと目を凝らすと、その魅力に憑かれたさまざまな人々の人生模様が、時空を超えて浮かび上がってくる。ひょっとしたら私も、その端くれの一人かも知れない。」(かってデパートでは陶磁器のバイヤーを担当。景徳鎮から有田へ、有田からマイセンへ)

 そして「うえたけ」さんの総括は、次の一文。
 「私にとって昭和は『時代』ではない。『昭和という場所』なのである。私の『ふるさと』なのだ。何故なら、独りぼっちになった時、ほかに行くところが無いからである。」

 何回か酒席をともにした先輩、謹厳実直なゼントルマン・・・と私は誤解!していたようだ。
 酸(粋・酔)も甘いも噛み分け、江戸っ子の一面も持ち合わせた「うえたけ・そのお」さんの「エッセイ オン・ザ・ロック24」を、お奨めする。

 「昭和男、腕を組む」(文芸社刊) 定価(1,400円+税) 

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September 10, 2008

1031.20世紀少年

   Wp_1024x768_b コミック誌の休・廃刊が続いている。とくに少年コミックが多い。「少年」といっても読者層は20~30代、携帯など他の情報関連への出費が増えているのが理由と、関係者は分析している。

 一方映画界では、邦画・洋画ともにコミックを原作としたものがヒットしている。「ダークナイト」しかり「ハルク」も、そして邦画ではこの「20世紀少年」が大ヒット、現在興行成績第2位を維持している。

 コミック世代より一昔の私だけに、寡聞にして知らなかった「20世紀少年」、発行部数2000万部を超え、世界12カ国で翻訳出版されているベストセラーコミックだそうだ。
 浦沢直樹が、小学館のビッグスピリッツコミックに1999年から8年も描き続けた大長編作品。
 フランスでの国際漫画祭で最優秀長編漫画賞を受賞するなど、国際的にも評価は高い。
                                                                   Wp_1024x768_e      映画の方は、50年にわたる壮大なストーリーを、シリーズ3部作として展開する。総制作費は60億円、最近の日本映画としては超大作の部類に入る。
 第1章が現在公開中だが、第2章は来年の新春、第3章は秋だそうだ。

 物語は、1970年頃小学生だった腕白たちが、2020年代までの遭遇する様々な事件がプロットになる。
 第1章では、サリン事件、オウム真理教などカルト教団が起した事件をモデルにしながら、20世紀末に起こる破壊的出来事を軸に展開する。
 その結末はファッシズムの予兆を見せ、第2章に引き継ぐ。
 監督は、原作に忠実、裏テーマは「ロック映画」と語っているが、まだその真意は分からない。

 その監督、堤幸彦。「トリック」や「明日の記憶」「自虐の詩」と、多彩なジャンルの作品を作り続ける異能の才である。
 数多くの登場人物を巧みに性格づけながら、伏線を張り巡らせる。幾つかの謎を残しながら2時間20分を描ききった。

327991view002_2327991view001_2   3部作の主要なキャストは、300人を超えるらしい。
 第1部に登場するのは、唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子を中心に、わんぱくグループだった香川照之、石塚英彦、宇梶剛士、宮迫博之、生瀬勝久、佐々木蔵之助、小日向文世の面々。
 それに石橋蓮司、中村嘉葎雄、黒木瞳、吉行和子、竜雷太、研ナオコ、ベンガル、佐野史郎、光石研、遠藤憲一・・・・・・。
 ともかくどこかで見た役者たちが、勢揃いする。それも、浦沢直樹が描くコミックの人物そっくりに。

 読んでから見るか、見てから読むか。ただ先のストーリーを楽しみにしたい人は、コミックの方を閉じておこう。
 すでに第3章もクランクインしている。制作プロダクションでは、今エキストラを大募集中。申し込みは下記に。
 yogennosyo@yahoo.co.jp

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September 09, 2008

1030.焼酎バー「黒瀬」(101)

020_640010_640_2   工業用に限定された「輸入事故米」を食用に転用していた三笠フーズの偽装事件。焼酎バー「黒瀬」にとっても他人事ではない。

 麹米として使われた可能性があると公表した西酒造の「薩摩宝山」。社長の西陽一郎君は、我々の高校後輩。彼の造ったこの焼酎は評判がよく、「黒瀬」でも人気銘柄の一つだった。
 今年の6月13日~8月22日に瓶詰めされた焼酎を自主回収すると、彼は悲壮な顔でテレビに登場した。

002_640008_640013_640   「黒瀬」も、テレビ朝日の取材を受けた。
 昨夜の「報道ステーション」で放送されたが、黒瀬関連部分を紹介しておこう。

 〔アナ〕「薩摩宝山」を造っている西酒造では、30万本の自主回収を決めた。都内にあるこの焼酎バーでも、回収が決まった芋焼酎「薩摩宝山」を扱っていた。

016_640_2 〔宿里店主〕「ショックですね!やっと焼酎ブームが定着してきたのに・・・・。」

〔テレ朝記者〕「お客さんに出せます?」

〔宿里〕「もう(事故米使用が)判った時点ですから、(薩摩宝山は)出せませんよ!」

018_640_3 〔常連客〕「(安全な焼酎と)信じて、楽しむため飲むわけですから。まさか有害物質が入っているとは思いませんからね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ニュースステーションでは、三笠フーズによる不正は、誰の指示だったのか、社長と現場の主張の食い違い、さらには被害者でもある酒造メーカーの困惑、農水省の対応の遅れを伝えた。

 事故米は、焼酎の製造過程での「1次もろみ造り」の米麹に使われた。専門家は、米は、磨かれてしっかり洗われているので、健康被害の可能性は殆どないとしている。
 しかし酒造メーカーとしては、「混乱や風評被害を防ぐため、あえて社名公表や回収に踏み切った」と説明する。

Imgp0895_640  「黒瀬」で飲める芋焼酎の、主原料であるサツマイモは鹿児島県産。顔の見える杜氏たちが、しっかりと仕込んだ焼酎なので、安心して味わってほしい。
  (写真は最後を除いて「報道ステーション」から再撮)

   焼酎バー「黒瀬」 渋谷区渋谷2-14-4
                ℡5485-1313    

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September 08, 2008

1029.カウパレード

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 有楽町での映画の帰りに、丸の内を散策した。来月半ばまで丸の内界隈には、73頭の牛が放牧されていると聞いたので。

09080908_011_64009080908_013_64009080908_015_640   「カウパレード」、パブリックアートの祭典。
 10年前、スイスで開催されたウシのオブジェの街頭展は評判を呼び、ニューヨークやパリでも開かれ驚異的な動員数を記録したそうだ。

09080908_014_64009080908_018_64009080908_019_640   東京での「カウパレード」は、2年ぶり3回目である。若手アーチストを中心に、タレントの中川翔子さんや建築家の隈研吾さん、写真家の荒木経惟さんらも参加。丸の内仲通りや大名小路の歩道やビルの入り口に、ウシのオブジェが立っている。

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09080908_007_64009080908_030_640  「猛牛」「ゆめみるお肉」「色情牛」「田ぼでつかまえて」「罪と罠とある日の雌牛」「魅惑の牝牛座」など、それぞれの作家が名付けたタイトルと、牛を見比べながら歩くのも楽しい。
 来月19日、イベント終了後は、街に飾られたウシのチャリティーオークションも開催されるそうだ。

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September 06, 2008

1028.絹谷幸二展

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 現代洋画檀の第一人者、東京芸術大学教授の絹谷幸二さんの「回顧展ー情熱の色・歓喜のまなざし」が、日本橋・高島屋8階ホールで開催されている。(6階では新作展も)

057_640056_640  絹谷さんは、40数年前にヴェネチア・アカデミーに留学、イタリア・ルネサンス時代のフレスコ壁画を学んだ。
 以来原色調の鮮やかな色彩と奔放自在な表現で、エネルギッシュに画を描き続けてきた。
 今回の個展は、その集大成として50点の大作がテーマ別に展示されている。

 絹谷さんとは、10数年前世田谷の居酒屋で盃を交わして以来のお付き合いである。個展開催時には必ず招待状をいただき、会場での懇談を楽しみにしている。

053_640054_640 展示は六つのテーマに分かれる。左の絵の「賛歌」、長野オリンピックのポスターを中心とした右の絵のスポーツ、さらに「愛(エロス)」「祭り」「人間」「祈り」。

 なかでも今回の見所は、新作シリーズ「祭り」である。「阿波踊り」や「相馬野馬追い」「博多祇園山笠」「唐津おくんち」「東大寺修二会」「岸和田だんじり」「三社祭」など、日本各地の祭りに自ら参加して描き上げた。
 躍動感あふれる祭りの絵には、若衆たちの叫び声までシンボリックに埋め込まれる。ブログ冒頭、案内のポスターの絵は京都「絹の祇園祭」の大作。

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 私の最も好きな作品「天空の華」、5年前描かれた作品である。これまで何回も見たが決してあきない。この絵の前にしばし佇み、祈りの世界にひたる。

 「絹谷幸二展~情熱の色・歓喜のまなざし」は、9月15日まで、日本橋・高島屋8階ホール。

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September 05, 2008

1027.ラストゲーム

015_640  1943(昭和18)年10月16日、早大戸塚球場。最後の早慶戦が終わった。その時、突然早稲田応援席から慶応応援歌「若き血」の大合唱が沸き起こる。今度は慶応側から早稲田校歌「都の西北」が。
330307view002330307view007   応援歌や校歌が、これほど人々の胸を突くものとは知らなかった。
 映画館内に、万感の想いが流れる。

 「ラストゲーム」最後の早慶戦は、実話である。これまでも映画やテレビドラマとなった。その実話を、神山征二郎監督が誠実にそして真摯に描いた。
 声高ではないが、65年たった現代への反戦のメッセージとなった。

330307view004330307view003   戦地に赴く学生たちに思い出を作ってやりたいと、当時の慶応義塾塾長小泉信三(石坂浩二)と早大野球部顧問飛田穂洲(柄本明)が奔走し、早稲田大学総長(藤田まこと)の反対を押し切って、早慶戦を実現させた。
 その実話を、学生たちの友情やはかない恋、野球への情熱、そして軍国主義に翻弄される大人たちの思惑とともに展開していく。

 学生たちを、期待の若手たちが演ずる。
 渡辺謙の息子・渡辺大、柄本明の息子・柄本佑を中心に、和田光司、脇崎智史、片山亮、中村俊太他。
 大人たちを、演技派のベテランたちが演ずる。
 前述の石坂、柄本、藤田に加えて、主人公役渡辺大の両親が山本圭と富司純子。早稲田合宿所の寮母に佐々木すみ江と。

 神山監督は、私より1歳若い。最後の戦争世代といえるだろう。戦争の実体験はないが、実感はあると話す。
 前作の「北辰斜めにさすところ」も、戦争と野球がテーマだったが、これまで監督した26本の映画のうち、半分は戦争を題材にしている。

 映画のラスト、ひとつだけ事実を描かなかった。ラスト・ゲーム終了後、応援歌・校歌のエールの後、自然発生的に「海ゆかば」の大合唱が流れた、と当時の関係者は証言している。
 しかし、神山監督はあえてこの事実をカットした。それがこの作品で描こうとした彼の想いなのである。
 その代わり、5日後に行われた神宮外苑での「学徒出壮行式典」と、撃破される特攻機の記録フイルムが流れる。
 それに、鬼束ちひろの主題歌「蛍」が被さる。

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September 04, 2008

1026.第93回二科展

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  第93回二科展 「浜の休息」(F130) 会員 西 健吉

 旧友の西君が上京し、「黒瀬」に顔を出してくれた。「二科会」の評議員でもある彼は、毎年の公募展の審査のため夏の終りにやってくる。
 彼からもらった招待券を持って、今年も初日に国立新術館へ出かけた。

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080904_014_640_3080904_013_640_2  以前は上野の二つの美術館で開催されていた「二科展」が、昨年から六本木の国立新美術館に移った。
 会場が広いためにゆったりと展示さている。
 美術部門は3,261点の応募があり、うち706点が入賞した。鹿児島関係は17人が入選しており、九州では福岡に次いで多い。地元美術界のリーダーである、西君たちの努力の成果だろう。

080904_004_640080904_007_640  会場入り口1番目に、西君の作品が展示されている。「浜の休息」、彼が奄美大島での美術教師時代の、強烈な体験がモチーフとなっている。
 昨年は、娘が背中を見せている浜辺、「海岸通り」だった。その初日のギャラリートークで、彼は「娘の眼差しの向こうに想いを馳せた」と語った。
 今年は、娘の横顔とその先に見える漁船に、浜の現実を語らせる。

080904_015_640_2080904_016_640   同じフロアーに、二科会理事でもある松任谷国子さんの「翔」や、東郷青児の娘・たまみさんの「SUMMERTIME」が展示されていた。
 毎年楽しみにしていた前二科会理事長・吉井淳二画伯、郷里の大先輩の絵を見ることが出来なくなったのが残念である。
                                                      080904_022_640080904_024_640  二科展写真部門は、16,614点の応募で1,006点が入選。六本木に移ってから同じフロアーで見る事が出来る。
 またテーマ毎に分類して展示されているので、見やすくなった。
 さらにデザイン部門、彫刻部門とあるが今回は紹介を省く。

 第93回二科展は、9月15日まで六本木・国立新美術館で(9日は休館)

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September 03, 2008

1025.12人の怒れる男

12angrymen  半世紀も前に、アメリカで製作された作品のリメイク版。今回はロシアで製作された。
 
 最初の作品は、ヘンリー・フォンダの演技が光っていた。
 スラム街で起きた少年の父親殺しの裁判。大方が有罪に傾いていた議論が、陪審員ヘンリー・フォンダの疑問提起で、ひっくり変わる。
 まさに、「人が人を裁く事の難しさ」を、12人の陪審員による壮絶な議論だけで描く、密室劇だった。

 陪審員たちの議論の時間経緯が、映画の上映時間と同じという徹底したリアリティも話題となった。
 脚本が面白ければ、場所など関係ない。34万㌦の低予算、2週間で製作したこの「B級映画」は、ベルリン国際映画祭でグランプリの金熊賞を受賞する。
 そして10年前には、アメリカのテレビでもリメイク。この時は、ヘンリー・フォンダの役をジャック・レモンが演じた。

Staff01  ロシア版を作ったのはニキータ・ミハルコフ。劇作家の父、児童文学者の母、映画監督の兄という芸術一家の出身。
 映画俳優としてスタートした彼は、「ウルガ」('91)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞、「太陽に灼かれて」('94)でカンヌ国際映画祭グランプリ、アアカデミー賞外国映画賞受賞するなど、ロシアを代表する監督として知られている。。
 日本映画「オーロラの下で」('90)では俳優として出演、男優賞も獲った。
 今回は、監督・脚本・製作を担当、勿論12人の怒れる男の一人としても登場する。

20080610009fl00009viewrsz150x  ミハルコフのリメイク版、作品の骨組みはオリジナルと同じだが、内容的には全く新しいオリジナル作品と言っていい。単に舞台をロシアに設定しただけではない。
 ソ連崩壊後の現代ロシア社会の抱える価値観の混乱、モラルの喪失、拝金主義、多民族国家ならではの民族蔑視と偏見を鋭く抉る。
 さらに「チェチェン人の少年が、ロシア人の義父を刺殺した事件」の陪審委員会が舞台とされる事で、いま「グルジア」で注目を集めている「カフスカ問題」をあぶりだす。

Photo2 有罪を無罪に変えていくキーマン、ヘンリー・フォンダの役はセルゲイ・マコヴェツキイが演ずる。フォンダと比べて少々ひ弱い男だが、彼の過去が明らかになる事が、大きな意味を持つ。
 オリジナル版は、有罪か無罪の論理的な鬩ぎ合いが見所だった。しかし今回は、12人の陪審員ひとりひとりが、現在の立場、境遇、生きてきた過去、想いを饒舌に語ることで 、表向きは自由主義体制になったロシアの矛盾が露呈される。
 プーチン前大統領の親友でもあるミハルコフだからこそ製作出来た、「体制批判映画」なのだ。

 前作同様密室が舞台だが、チェチェンの少年の悲惨な記憶「チェチェン戦争」がフラッシュバック的にちりばめられる。
 160分という長さを感じさせないのは、監督と12人の役者の演技力によるものだ。

 来年5月には、日本でも裁判員(陪審員)制度がスタートする。我々は、「犯罪」に対して「人生」との距離をどうとる事が出来るのだろうか。

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September 02, 2008

1024.SEX and the CITY

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 巧みなストーリーを最先端のファッションで見せながら、赤裸々に語られる4人のキャリア女性の本音とセックス。
 同名のテレビドラマは世界中でヒットし、ゴールデン・グローブ賞8回、エミー賞7回受賞したが、4年前に第6シリーズで終了した。
 この作品は、その4人の彼女の4年後の物語りである。

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 人生観も個性もそれぞれ違う彼女たち、それぞれが男性と出会い恋をし、セックスして傷つきあう。それを4人の友情で支えながら立ち直っていく、これがテレビシリーズでのお話。そして、ハッピーに終了した。
 しかし、映画の方はそうは行かない。そこは、見てのお楽しみとしておこう。

 女性観客には登場する「ファッション」がたまらないだろう。キャロライナ・ヘレラ、クリスチャン・ラクロワ、ランバン、クリスチャン・ディオール、シャネル、プラダ・・・・、ウエディング・ドレスから靴にハンドバック、千点を超える衣裳とそれに会わせたアクセサリーが、彼女たちのために揃えられた。

 舞台のニューヨークももう一人の主役。5番街のティファニー、セントラル・パーク、ブルクリン・ブリッジ、「VOGUE」のオフィス、NY図書館、そして話題のカフェ。さまざまな名所のロケが、ニューヨークの息吹そのものをスクリーンに登場させた。

 
1024x768_satc_4_51024x768_satc_5_8  主役は「SEX and the CITY」と題したコラムを連載しているライター、これまでのお相手は14人(サラ・ジェシカ・パ-カー 「恋するレシピ」)。

 友人のひとりは、50代のやり手のパブリシスト。無限の男性とのセックスを楽しんだ伝説の女性(キム・キャトラル「15ミニッツ」)。

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 次の友人が2度目の結婚で幸せっぱいの主婦。恋愛至上主義の彼女はこれまで17人(クリスティン・デイヴィス「ジャッキー・ドッグ」)。

そしてシングルマザーだった女流弁護士の友人。彼女の経験は、ダメ男ばかりの18人。現在の夫もダメ男。(シンシア・ニクソン「アマデウス」)。

 さらに主役の秘書役に「ドリームガールズ」でオスカーを受賞したジェファニー・ハドソンと恋人の富豪がクリス・ノース(「キャスト・アウエイ」)という組み合わせ。

 主役のサラ、それにシンシア、クリスティンも41歳。キム・キャメルは52歳と実年齢通りの役というのが面白い。
 しかしさすがはハリウッド女優、濡れ場のヌードは決して年齢を感じさせない。
 そう、キム・キャメルは、作家としても有名な女優だが、最近「続・究極の愛の芸術」という本を出した。イラストがきれいな、キャリア女性向けの「セックス」指南書だ。

 テレビシリーズの監督・脚本だったマイケル・パトリック・キングが、映画では製作も引き受け先頭に立っている。テレビでは遠慮していた「あぶないシーン」を、たっぷりと見せてくれるのも面白い。

 映画館内は、ほとんど3~40代の女性たち。午前中の上映、隣席の女性二人は、ビールを飲みながらクスクス笑って見ていた。 

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September 01, 2008

1023.世界無宿の女たち

051 ふるさと会の知人から、「高校時代の友人が書いた本です」と送られてきたのがこの著作。
 一気に読み通した。傑作である。

 酷寒のシベリアから灼熱の東南アジアまで、遠い海を渡った力強く行動力豊かな女達、「世界無宿」の人生の記録である。

 明治維新、開国の暁に、まず海を渡ったのは女たちだった。まだ15~6歳前後の娘達は、異国の娼館で身体を張って働き、故郷の家族を助けた。
 その後を追って渡ったのが小商いの男達である。そして日本人街が形作られる。
 次に進出するのが貿易商や企業、最後に国(領事館)、地域によっては軍隊。これが、日本の海外進出のパターンだった。
 
 娘達が散らばって行ったのは、北は旧満州からシベリア、南は中国を経てシンガポール、インドネシア、オーストラリア、西はインドをへてアフリカ・ヨーロッパ、東はハワイからカナダ・アメリカと続く。

 彼女たちの末路も様々である。娼館で飼い殺しにされたもの、現地妻になった者、金を貯めて事業を興したもの、小金をもって里帰りした者・・・・・。

 「世界無宿=からゆきさん」については、これまでも十数冊の記録が出版されている。山崎朋子の「サンダカン八番娼館」、森崎和江の「からゆきさん」等。そしてテレビのドキュメンタリーや映画としても紹介されている。
 ただ多くの作品が、困窮、身売り、被差別、誘拐そして性的労働者の悲惨さが強調されてきた。
 しかしこの著書では、それを突き抜けた日本の女の「たくましさ」「行動力」を、種々の資料から裏付ける。
 だから悲惨さの中にも、ひとつの光明を見るのだ。

 紹介されているのは、以下の8人。著者同様九州出身者が多い。
 「女傑・シベリアお菊」「三大陸を渡り歩いた国際派」「半世紀ぶりの帰国を果たして」「ロシア艦隊の母」「シアトルの娼婦から評論家へ」「オランダ人妻の『から帰り』」「長崎異人館の女主人」「シンガポール在留邦人の救世主」

 若い頃、「日本残酷物語」(平凡社)の編集を手伝ったことがある。このシリーズの中で、上記の複数の人物も登場している。久し振りに、彼女等と会った気持ちだ。

 大場 昇著「世界無宿の女たち」(文藝春秋刊) 1800円

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