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October 31, 2008

1075.秋・鳴子峡

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081031_076_640081031_077_640081031_092_640   友人たちと「みちのく錦秋の旅」に出かける。仙台駅でレンタカーを借り、最初に目指したのは紅葉の「鳴子峡」。
 山形県との県境、大谷川の清流沿いにあるこの峡谷は、「おくの細道」でもある。

081031_093_640_2081031_087_640081031_079_640  深さ100m、両岸は切り立った崖。奇岩・怪石を縫って瀧が落ちる。
 今、モミジ、ウリハダカエデ、イタヤカエデ、ブナなどが極彩色を彩る。
 見ごろはあと一週間。気温5度、早い冬は目の前に迫っている。

 峡谷をくり貫いたトンネル、陸羽東線の列車はこのシーズンだけ徐行運転するという。

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October 30, 2008

1074.10月のシネマ(2)

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 「わが教え子、ヒトラー」

 「善き人のためのソナタ」では東ドイツ保安局大尉、「ホロコースト」では強制収容所の死の医師を演じたウルリッヒ・ミューエが、今度はユダヤ人教授になった。それも、ヒトラーに「演説指導」をした先生である。
 「ヒトラーが、民衆を熱狂させたあのセンセーショナルな大演説の裏には、こんな事実があった」と、ユダヤ人監督ダニー・レヴィが描いた問題作。
 ユーモア、知性溢れた人物を、気迫を込めて演じたミューエにとっては、この作品が遺作となった。ドイツ映画。

 「最後の初恋」

 中高年の女性たちが恋人にしたい男、リチャード・ギア。この作品ではダイアン・レインの忘れられない人になる。
 「きみに読む物語」の原作者、ニコラス・スパークの至極の恋愛小説の映画化である。
 恋のため全てを捨てた若き日の初恋ではなく、恋のために全てを受け入れる「最後の初恋」は、ときめきを忘れかけた大人たちへの贈りものだ。
 監督ジョージ・C・ウルフ。ワーナーブラザーズ作品。

 「私がクマにキレた理由(わけ)」

 前々号の「ブーリン家の姉妹」に主演したスカーレット・ヨハンソンが、キュートに演ずるロマンチックコメディ。弁護士を夢見た彼女が、子守(ナニー)になって見つけた世界は?
 アメリカの女性たちから、圧倒的に支持されたベストセラーの映画化である。
 出演はほかにローラ・リニー(「ラブ・アクチェアリー」)、アリシア・キーズ(グラミー賞受賞歌姫)。
 監督は、「アメリカン・スプレンダー」でデビューしたシャリ・スプリンガーとロバート・プルチーニのコンビ。

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October 29, 2008

1073.10月のシネマ

040_640039_640_640  今月は、映画館で12本、国際映画祭で3本、テレビでは4本の作品を見た。

 映画館での初公開作品のうち、まだ紹介しなかったものをまとめて記す。
 既に上映が終わった作品もあるが、DVDなどでどうぞ。

 「落語娘」

 NHKの朝の連続テレビで、上方の女落語家が主人公になり話題を呼んだ。
 こちらは、東京のホールなどで前座を勤める女落語家(ミムラ)が主人公。異端の師匠(津川雅彦)に振り回されながらも、たくましく生きていく女性のお話。
 新鋭作家・永田俊也の原作を、柳家喬太郎の指導・監督の下、中原俊監督(「櫻の園」)がメガホンを執った。
 落語会の裏表、芸人たちのいやらしさもきちんと見せる。落語協会など3団体が特別協力しているのだから、それもオチ。日活・テレビ東京・ポニーキャニオンなどの作品。

 「おろち」

 棋図かずおの伝説の怪奇譚漫画の映画化。
 人の業による悲劇や惨劇を、「おろち」と呼ばれる美少女(谷村美月)が見据える。
 悲しい運命をたどる美人姉妹は木村佳乃と中越典子。
 「リング0」「予言」などジャパニーズ・ホラーの第一人者、鶴田法男が監督した。異形や赤い血など表面的な怖さより、人間の心の闇の怖さを上手く見せる。
 川井憲次(「DEATH NOTE」)の音楽がいい。東映作品。

 「しあわせのかおり」

 美味しい映画だった。
 北国の港町、小さな飯店の主(藤竜也)は中国生まれ。彼が心を込めて作る料理に、心の癒しを求めて弟子入りする子持ちの未亡人(中谷美紀)。二人を取り巻く心優しい人々(田中圭、八千草薫ほか)。
 登場する中華料理の数々が、もうひとつの映画の主人公。「ノドグロの蒸し物」「寒ブリと岩のりの汁ソバ」「甘エビのエビチリ」「鶏の塩窯焼き」「海鮮チャーハン」・・・・・・・、そして逸品は「トマトと卵の炒め物」「加賀芋の煮込み」「蟹シューマイ」。
 中国・紹興のロケもふくめ、監督は三原光尋。東映・読売テレビほかの作品。 

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October 28, 2008

1072.ブーリン家の姉妹

038_640_2  イギリス版「大奥物語」である。16世紀のイングランド宮廷を舞台に、新興貴族の美しい姉妹が織り成す生々流転のドラマである。

 妹メアリーは人妻でありながら、姉より先に国王の愛人に。姉アンは妹を排斥して王妃となったが、王の手で断頭台の露と消えた悲劇の女。しかし彼女が生んだ王女は、やがて女王の座に就く。イギリスを世界一の大国に築き上げたあのエリザベス1世なのだ。

 イギリス人で、アン・ブーリンを知らない者はいない。イングランド王ヘンリー8世の2番目の后。王との恋愛が、キャサリン王妃との離婚ひいてはイングランドの宗教改革の原因となった。
 ヘンリー8世は、離婚を認めないローマ・カトリックと袂を分かち、イングランド国教会を設立し自らがそのトップに座る。
 アンは、王の寵愛を失った後反逆罪で断頭されたが、国民は「娼婦アンの死」と喝采を挙げたという。

 妹のメアリー・ブーリンについては、ほとんど知られてはいない。映画の原作者フィリッパ・グレゴリーの創作した人物とも言われているが、アン王妃亡き後遺児のエリザベス王女を、密かに匿って育てた家族がいた事は事実らしい。
 その家族を妹にして、王との三角関係の物語にしたのはグレゴリーで、この原作は超ロングセラーとなる。

330947view012330947view013  今をときめく、ハリウッド女優の競演である。姉アンをナタリー・ポートマン、妹メアリーはスカーレット・ヨハンソン。
 対する王はイギリスのスター、エリック・バナ(「ミュンヘン」)。
 ほかイギリスの若手俳優たちが取り巻く米・英共同制作映画である。
 監督はテレビ出身のジャスティン・チャドウイック。

 先週終わった東京国際映画祭にも、特別招待された作品だけに前評判は高い。しかし少々荒削りな作品だった。イギリス中・近代史上重要な事件を背景にしながら、その扱いは表面的である。

 今年の2月、「エリザベス・ゴールデン・エイジ」を紹介する際(ブログ868~869号)、この時代に興味をもって歴史書を紐解いた。
 ヘンリー8世と6人の妻(王妃)、処刑された王妃がアン・ブーリンともうひとりいた。
 エリザベス1世の前の女王メアリ1世が、異母姉(最初のキャサリン王妃の王女)でスペイン王妃だったこと。
 キャサリン王妃もまたヘンリー8世の兄の未亡人、実はスペインの王妃の貰い下げだったという事実。
 当時の宮廷、それもスペイン・フランスもふくめ、権力・富・名声・野望・陰謀・宗教 そしてセックスに嫉妬が渦巻いていたのだ。
 この作品の面白さは、こうした背景を知ってはじめて解かる。

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October 26, 2008

1071.大江戸活粋パレード

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081026_030_640_2081026_033_640_2  曇り空は残念だったが、秋の日曜日は各地でイベント・ラッシュ。
 中央区でも浜離宮や銀座の歩行者天国では、大茶会が開かれていた。

 その中での大イベントは、恒例の「日本橋京橋祭り」。今回で36回になるが、今年は「大江戸活粋(かっき)パレード」と銘打って、粋な踊りが披露された。

081026_040_640081026_043_640  パレードの常連となったのは、わが「渋谷・鹿児島おはら祭り連」。毎年5月に渋谷で繰り広げられる「お祭り」で踊る各連が、合同で参加している。
 花のお江戸日本橋、「篤姫」も訪ねたこの街道で、後裔の美女達が花を添える。

081026_027_640081026_053_640 081026_052_640  地元の交通少年団や警視庁、消防庁音楽隊の後に続く「諸国往来パレード」が面白い。
 今回も「かごしま・おはら連」他、前橋から「だんべえ踊り」、仙台から「すずめ踊り」、また「スーパーよさこい」や「朝鮮通信使行列」が参加した。

081026_045_640_2081026_048_640_3  もちろん地元の踊り連も登場する。お座敷芸の踊りを浴衣角帯ねじり鉢巻で見せる「江戸かっぽれ」、51年の伝統を持つ「中央区民謡連」も、粋な踊りを見せた。
 そして今回から登場したのが「活粋パレード」。現代音楽と和楽器をミックスさせたオリジナルテーマで、一般参加の若者達が舞った。

 次の連休も、中央区では各地で秋のイベントが繰り広げられる。トリトン花のイベント、「ギンザ・インターナショナル・ジャズフェステバル2008」と目白押しだ。
 中央区は「文化飛躍元年」。まるごとミュージアムになる。

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October 25, 2008

1070.ふるさとセミナー

 かごしまの在京県人会連合会が、年に1度セミナーを開く。友人達が実行委員を担っているので、応援方々雨の渋谷に出かけた。

 セミナーのメインは、終戦2ヶ月前の鹿児島大空襲を14歳の時に体験した神奈川在住の元学校長のお話。
 大学時代の演劇部の後輩たちを交え、朗読と琴の演奏というスタイルで、多感な少年が目にした悲劇を伝えた。

007_640_2  考えさせられたのは、第1部の「県政報告」。断片的に情報としては知っていたが、総括的に聴くのは始めてである。
 「中央と地方の格差」と頭では理解していたが、具体的数字の中に「地方の悲鳴」を聞いた。
 貧しさから逃れるため、中央を目指した私たちにも「責」はある。

 「人口」は相変わらず減少している。50年前に比べて15%減の173万人。10代後半から20代にかけ、就職や進学のために毎年7000人が流出する。そのうち22%が東京圏。九州の他県は、30%ほどが福岡県というから、鹿児島の東京志向は強い。明治以来の伝統か。

 当然「高齢化社会」である。高齢化率は全国平均の20%に比べて、25%。わが故郷などさらに地方の「すんくじら」は、その数字を超える。
 鹿児島県内では、今日から「ねんりんピック’08」が開催される。象徴的なイベントなのだ。

 もちろん「経済格差」は大きい。一人当りの県民所得は国民所得の80%、この数値はなかなか上がらない。それは、全国2位の生産額をあげる農業県という事が背景にある。だから国の農業政策に、もろに影響を受ける。

 県の「財政」も厳しい。自主財源である県税は歳入の20%、東京都の都税は80%というからその格差は歴然としている。
 今年は人件費を80億減らし、建設事業などを抑えても借金は130億ほどしか減らせない。県債残高は、1兆6000億もある。

 という現状の中で、鹿児島県はここ10年を見通す「将来ビジョン」をたてた。「安心・安全」「活力・快適」「共生・有徳」がキーワードだが、これについてはまた別の機会に報告する。

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October 24, 2008

1069.ひとまく会

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 歌舞伎座の4階席で、最後の演目をを楽しむ「ひとまく会」。今月だけは永年の「伝統」を破って、二幕目を鑑賞する事となった。

 演目は河竹黙阿弥作「雪暮夜入谷畦道」(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)通称「直侍」(「入谷そば屋の場」「大口寮の場」)。
 これは講釈「天保六花撰」を劇化した、「天衣粉上野初花」(くもにまごううえののはつはな)という七幕物の後編。
 先月鑑賞したのが前編の「河内山」だったので、今月は特例としてこの幕となったのだ。
 これで通し狂言一本を、鑑賞した事になる。

 「直侍」の見所は二つある。ひとつはお尋ね者の御家人・片岡直次郎が、忍んでやってきた入谷のそば屋での蕎麦をすするシーン。もう一つは、情人である花魁との情痴の世界。

 見せ場となる蕎麦の粋な食べ方は、劇聖・五代目菊五郎が初演の時に型を作った。
 「蕎麦の食べ方のコツは、ほんの2~3本をぐいと上へたぐり上げ、いったん下ろし、改めてたぐり上げると、手ごろに口に入り、うまく食べられる」との芸談を残している。
 さらに歌舞伎の舞台では珍しく、「本物の蕎麦」が出される。だから格好だけではなく、本当に旨そうに食べるのだ。主人公の直次郎の粋な食べ方を際立たせるため、他の客は野暮ったい食べ方をするなど、芸は細かい。
 行きつけの神楽坂近くのそば屋の大将が、「この演目がかかると、いつも歌舞伎座に手打ちを納入していた」と自慢していたが、昨夜はどうだっただろうか。

 もうひとつの見所、捕り方に追われた直次郎が高飛びしようと、花魁に別れを告げるラブシーン。ここでは折りにふれ三味線音楽が流れる。
 清元の「忍逢春雪解」(しのびあうはるのゆきどけ)を「よそ事浄瑠璃」に使って切ない口説きとなる。
 恋人同士、天地の見得が濡れ場を見せる。

 片岡直次郎を七代目菊五郎が、花魁三千歳を長男の五代目菊之助が演じているが、恋人同士のアツアツのシーンを親子で見せるのが、歌舞伎の世界ならではのもの。

 最終幕まで見る連れあいを待つ間、歌舞伎座の裏手「砂場」で熱燗とザル。菊五郎の「型」を思い出しながら、蕎麦を手繰った。

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October 23, 2008

1068.イーグル・アイ

037_640 ドリームワークスのスティーブン・スピルバーグが、10数年前から暖めてきたアイディアの映画化。当時この企画は、まだSFの域を出なかったが、今や現実的になった世界である。

 デジタル技術の急激な革新によって、私たちの生活は大変便利になってきた。ケイタイ・インターネット・ICチップ・GPS・・・・張り巡らされるインターナットと、想像以上にIT社会は進展している。
 しかしそのテクノロジーが、何者かの支配下に置かれ牙を剥いたらどうなるのか。
 私たちの生活は、生命は?それは、もうSFの世界ではなく、日常的に起こり得る現実なのだ。

 「イーグル」は「鷲」、アメリカの国章である。その「目」に図らずも操られた2人が主人公である。
 ひとりはコピーショップで働いている、やる気のない男。もう一人はシングルマザー、息子はワシントンでの演奏会に出かけた。
 「30秒でFBIが到着する。今すぐ逃げなさい」と女からの携帯電話。そこからノンストップ・サスペンスが始まる。

Wallpaper_02_800x600Wallpaper_03_800x600  男の役はシャイア・ラブーフ、スピルバーグの秘蔵ッ子といわれる若手トップスター。「トランスフォーマー」「ディスタービア」そして「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」と立て続けに活躍している。
 女の役はミシェル・モナハン、「M:i:Ⅲ」「ボーン・スプレマシー」でお馴染みの女優。
 そしてFBI捜査官ビリー・ボブ・ソートン(「庭から昇ったロケット雲」)とアメリカ空軍の女性捜査官にロザリオ・ドーソン(「RENT/レント」)が出演している。

 本来なら、スピルバーグ自身が監督する予定だった。しかし「インディ・ジョーンズ」プロジェクトが忙しく、D・J・カルーソに任した。
 彼はスピルバーグの意図を生かしながらも、CGツールをトコトン生かしながらテンポアップした演出の冴えを見せた。
 度肝を抜くカーチェイス、高所からの飛び降り、大爆発、空港の貨物システムと、これまでにない見せどころを作った。
 ただ後半結末を急いだせいか、筋の粗さを露出したのは悔やまれる。

330921view001  「イーグル・アイ」の警告を無視し、アルカイダの幹部を市民もろともミサイルで殺害したのが事件の発端である。
 そうした遠い国での出来事が、名もない市民の運命を左右すると、スピルバーグは警告する。

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October 22, 2008

1067.ボーダータウン

036_640 今年見た映画の中では、最も衝撃を受けた作品である。「ボ-ダータウン」つまり国境の町、アメリカとの国境沿いにあるメキシコのシウダ・ファレスが舞台となる。
 「報道されない殺人者」は、日本の配給会社が追加したタイトル。少々説明的だ。

 もちろんフィクション、サスペンス映画の部類に入るが、背景そのものはノン・フィクションといってよい。
 この15年間に、5000人の少女が行方不明となっている、恐るべき未解決事件なのだ。そのうち500人ほどがレイプされたうえ殺され、砂漠に埋められているのが発見された。
 しかし、メキシコ政府も警察も、この事実を徹底的に隠している。そして今も、少女殺害事件は続いている。

 監督・脚本のグレゴリー・ナヴァ は、メキシコとの国境の街サンジェゴ出身。「フリーダ」や「エル・ノルテ」など、メキシコを舞台にした映画の脚本家として知られている。
 15年前この事件の発端を知ったナヴァは、被害者の遺族組織やメキシコ先住民の人権団体、妨害を受けながら報道を続けるローカル新聞を取材、脚本を書き上げた。そして調査の中で、現地の警察や政治家、さらにはアメリカの政治家までも、この事件を意図的に隠蔽している事を知るのである。

331103_01_02_03 主役は「シャル・ウィ・ダンス?」のジェニファー・ロペス。アメリカの大新聞エリート女性記者という役、連続殺人事件の取材を命じられていやいやながらボーダータウンに向かう。
 ネタバレになるので、これ以上の説明は省くが、ロペス自身プロデューサーも兼ね、事件の追及に役を超えて取り組んだ。
 国際的な人権擁護団体でもあるアムネスティ・インターナショナルは、昨年彼女に「アーティスト・フォー・アムネステュ・アワード」を授けた。この事件をひろく世間に知らせた功績として。

20080703017fl00017viewrsz150x  背景に国家レベルの政治・経済問題があるだけに、映画制作もたびたび妨害されている。
 ロケ現場ではバスに銃弾を撃ち込まれ、カメラも盗まれた。協力した遺族には、脅迫状が届き、映画の上映も妨害にあっているという。

 ところでその「背景」とはいったい何か。
 1994年発効した「北米自由貿易協定」、そして「サバティスタ民族解放軍」の二つのキーワードだけ挙げておこう。
 南米のいくつかの国に樹立した「反米政権」や、先住民出身大統領の登場とも無縁ではない。

 「多国間自由貿易協定/FTA」は、日本にとっても様々な問題を抱えるテーマである。

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October 21, 2008

1066.国立歌舞伎

072_640 「中村吉右衛門が出演する歌舞伎は、見逃さない」という連れあいにくっついて、国立劇場に出かけた。
 10月公演は、北条秀司十三回忌追善興行の「大老(たいろう)」。北条秀司が1953(昭28)年に書き、3年後に明治座歌舞伎で初演された「新歌舞伎」である。 

 井伊直弼はもちろん中村吉右衛門、愛妾お静の方は中村魁春、腹心・長野主膳に中村梅玉、生涯の師・仙英禅師を市川段四郎、老公・水戸斉昭を中村歌六、ほか3~40人を超える出演者に3時間30分という大長編史劇だった。

 もともと北条秀司はこの作品発表以前に、井伊直弼がその暗殺される前夜、心の妻お静の方と語り合う場面を中心にした「井伊大老」を書いている。
 その作品を、新たな視点から大幅に改定したのが「大老」で、彦根の「埋木舎」の不遇時代から一転して幕府大老職に就き、新時代の礎を築いて桜田門外に散った波乱の生涯を、ダイナミックに書き出した。
 とくに水戸藩内部の過激派と保守派の相克、暗殺側の若手武士たちの群像も丁寧に書き込まれており、それが時代の捨石と覚悟した直弼の、孤高の人間味を補強している。

 52年前の初演の時は、直弼役を吉右衛門の父・八代目松本幸四郎(白鸚)が演じた。それは今回よりも1時間長い4時間30分。出演者の数はざっと150人、500の役を代わる代わる演じ分けたという。

  吉右衛門が登場するのは38年前の国立劇場公演からで、直弼を狙う水戸脱藩浪士の役。兄である現在の幸四郎が演じた長野主膳に切り殺された。
 そして八代目最後の「大老」は、1981(昭56)年の歌舞伎座。病気のため途中降板したが、その代役を吉右衛門が引き受け、以降井伊直弼役は彼の当り役となっている。

 井伊直弼の波乱の生涯と動乱の幕末を描いたものに、舟橋聖一の「花の生涯」がある。この作品は舞台劇として書かれたが、1963(昭38)年にNHKの第1回大河ドラマとして放送されヒットした。
 直弼を2代目尾上松緑、お静の方を淡島千景、長野主膳は佐多啓二だった。もちろんテレビの方が人口に膾炙しているが、主役の松緑は八代目幸四郎の弟であり吉右衛門の叔父、不思議な縁である。
 今年の大河ドラマ「篤姫」では、中村梅雀が味のある直弼を演じている。

 話は逸れるが、「桜田門外の変」の直接の原因は、勅許なく「日米修好通商条約」を結び尊王攘夷派を弾圧した事だが、貿易の自由化と開国という日本近代化の第一歩だったことは、間違いない。
 ただ当時のアジア情勢から、それが不平等条約だったのは仕方がない。明治政府になって36年ぶりに条約改正されるが、それまで築地などの外国人居留地は治外法権だった。

 だから戦前までは、国粋主義者や右翼にとって井伊直弼は「国賊扱い」なのだ。彼の日本近代化に果たした役割、他のアジア諸国のような列強支配から免れた功績は、語られなかった。
 北条秀司や舟橋聖一が、新しい時代の礎を築いた人物として、その苦悩や誠実さを描けるようになったのは戦後。それが歌舞伎として上演されているのである。

073_640  そして彦根ではこの秋から来年3月まで、「井伊直弼と開国150年祭」が催されている。幕府の大老であった藩主直弼を再評価し、政治の表舞台だけでなく、文化人としての新たな直弼像を彦根から発信するのだそうだ。
 キャラクター「ひこにゃん」が、話題を呼んでいる。

 五幕九場。第五幕第一場、千駄ヶ谷井伊家下屋敷一室。直弼とお静の方の死を予感した語らいは胸に迫る。
 最終場「桜田門外」。駕籠にとどまった吉右衛門の最後の一言は「大義をあやまるな」。
 

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October 20, 2008

1065.東京国際女性映画祭

030_640 羽田澄子さんからの招待券を持って、青山の東京ウイメンズプラザに出かける。
 第21回東京国際女性映画祭のオープニングに、彼女の最新作・ドキュメンタリー映画「嗚呼 満蒙開拓団」が上映される。

 10月下旬は「映画祭」のシーズンである。経済産業省や文化庁が音頭をとって業界をまとめ、映像関連のイベントを集中させているのだ。小さな団体のイベントも、相乗効果でアピール出来るし、海外への宣伝効果も高い。
 「animecs TIFF 2008」「ニッポン・シネマ・クラシック」「みなと上映会」「東京ネットムービーフェスティバル2008」「2008 東京・中国映画週間」「第5回文化庁映画週間」「コリアン・シネマ・ウイーク2008」「秋葉原エンタ祭り2008」「ショートショートフイルムフェスティバル&アジア」「ドイツ映画祭2008」そして「東京国際女性映画祭」が、「東京国際映画祭」と共催されている。

035_2 「嗚呼 満蒙開拓団」は、旧満州からの引揚者である羽田さんが、「残留孤児・国家賠償請求訴訟」を追う中で知った「方正地区日本人公墓」をテーマに、棄民とされた「満州移民」に迫ったドキュメンタリーである。

 方正(ほうまさ)は、旧満州北部・ハルピンの近郊の村。戦時中関東軍の補給処があったこの村には、ソ連軍侵攻によって開拓地を追われた「満蒙開拓団」の婦女子や老人が避難してきた。そしてこの地で、飢えや病気、襲われての自決で数千人の犠牲者を出した。
 残留孤児としてこの地に残り、中国人農民の妻となったひとりの女性が、畑から掘り出される日本人犠牲者の骨を集め、人民政府に「公墓」を願い出た。
 その願いを受け止めたのが、当時の周恩来総理。そして方正県人民政府は、この地に「方正地区日本人公墓」を建設、文化大革命の荒波の中でも墓を維持・管理してきた。

 「お国のため」と満州移民を送り出し「棄民」とした日本、その犠牲者を葬る中国。その事実を、墓参する残留孤児たちに同行して淡々と記録したのが、この作品である。

 「国策」としての「満蒙開拓」、結果としての8万を超える犠牲者と「残留孤児」。これまでも多くのドラマやドキュメンタリーとして伝えられてきた。私もまた、関連したドキュメンタリーを制作したことがある。
 しかしこの作品から受ける感動は、全てを超えている。それはなぜか。
 ここでの無用な饒舌は控えよう。ただひとつ、羽田さんのやさしさと凍土に埋もれた死者たちへの尊厳が、映像に刻まれている事だけを記す。

 「国」に捨てられ、足掻きながら「故国」にたどり着いた引揚者のひとりとして、120分の映像を見据えた。

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October 18, 2008

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007_640014_640  東京国際映画祭が、六本木ヒルズと渋谷文化村をメインの会場として始まった。今年は21回目、年々規模も大きくなりアジア最大級の映画の祭典と言われる。
 今年新たにチェアマンとなった依田巽さんは、東京映画祭をカンヌ・ベルリン・ヴェネチアと並ぶ四大映画祭と呼ばれるようにしたいと、陣頭指揮をとっている。

 もともとこの映画祭は、渋谷の活性化を目標に、東急グループの故五島昇さんの呼びかけで始まった。初回から8回までは主催者側の一員として手伝っていたが、今はひとりの映画ファンとして見守っている。

 映画祭も、一時期は資金とスタッフ不足で低調になったが、その後角川グループの角川歴彦さんチェアマンとなり、コンテンツのビジネスマーケットを併催するなど活性化を図ってきた。
 そして今回は「地球は人間を作った。人間は映画を作った。」をメッセージワードとして、「地球環境保全」をテーマにした。

004_640  メイン会場の入り口六本木ヒルズのけやき坂に、ペットボトルのリサイクルで作られたグリーンカーペットを敷き詰めたのは、それをアピールしている。
 オープニングの当日、スターや著名な監督、ウタッフがこの道を歩いた。

 映画祭の目玉は「コンペティション」である。今回は、72カ国・地域690本から事前審査で選ばれた15本が、「東京サクラグランプリ」を競う。
 審査は「帰郷]('78)でアカデミー賞を受賞したアメリカの俳優のジョン・ボイドを委員長に、「故郷の香り」('03)を監督した中国のフォ・ジェンチーら6人。日本からは、女優の檀ふみ、脚本家の高田宏治が審査委員として参加している。
 注目の作品は、「アンナと過ごした4日間」(フランス=ポーランド)、「超強台風」(中国)、「パブリック・エナーミー・ナンバー1」(フランス)など。日本作品は、「コトバのない冬」(監督・渡部篤郎)「ブタがいた教室」(監督・前田哲)の2本。

001_640002_640   映画ファンの楽しみは特別招待作品の上映だろう。前売り券を購入すれば、誰でも鑑賞できる。
 今年はオープニングに、ジョン・ウー監督の「レッドクリフ Part1」が上映される。中国の「三国志」、赤壁の戦いの完全映画化である。アメリカ・日本・中国・台湾・韓国の共同制作で100億円の資金をかけた。
 そしてクロージングがディズニーのCGアニメ「ウォーリー」。「ファイティング・ニモ」のスタントン監督の作品である。
 日本作品は「旭山動物園物語」など4本。

 招待作品は、劇場公開時にゆずって、映画祭では「ワールドシネマ」の数本を選ぶことにした。
 この部門は昨年から始まったもので、海外の主要な映画祭で高い評価を受けた作品が並べられる。日本での公開は2~3年先、または上映の目途がたっていない作品である。
 カンヌ映画祭グランプリの「ゴモラ」(イタリア)、ロカルノ映画祭金豹賞「レイク・タホ」(メキシコ)、セザール賞の「クスクス粒の秘密」(フランス)が候補。

 なお既に「黒澤明賞」には、ロシアのニキータ・ミハルコフ監督(「12人の怒れる男」)と中国のチェン・カイコー監督(「プロミス」)が選ばれている。

 明日は併催の「第21回東京国際女性映画祭」に出かける予定。
 

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October 17, 2008

1063.柳原白蓮展

068_640  大正三美人のひとり柳原白蓮、その彼女が主人公となったスキャンダル「白蓮事件」は、我々の親の世代で知らぬ人はいないという。

 大正天皇の従妹、伯爵家の令嬢、夫は大富豪の炭鉱王、歌人にして作家。「筑紫の女王」ともてはやされた彼女が、左翼崩れの東京帝大生と駆け落ちした。
 そのうえ、大阪朝日新聞紙上に「絶縁状」を掲載する。これ以上のビッグニュースはない。

 今は時代の記憶の彼方にある、「美しき情熱の歌人」の波乱に満ちた生涯が、数々の遺品とともに再現される。
 「柳原白蓮展」、日本橋高島屋ホールで20日まで開かれている。

070 白蓮はペンネーム、本名宮崎燁子。1884(明17)年、伯爵・元老院議長柳原前光と柳橋芸者の間に生まれる。母方の祖父は勝海舟とともに咸臨丸でアメリカに渡った外国奉行、旧幕臣だった。

 養女として北小路子爵家に入るが、その子息に犯されてやむなく結婚。16歳の時である。しかし一人息子をもうけたものの、5年後には離婚して子爵家を出る。
 24歳で東洋英和学院に入学、佐々木信綱の門下生となる。歌人白蓮の誕生である。

「ことさらに黒の花などかざしみる
       わが十六のなみだの日記」

071_4  27歳の時、25歳年上の伊藤伝右衛門と再婚する。伊藤は筑豊の炭鉱王、裸一貫で財を成した成金で、新聞は「黄金結婚」と書く。貧乏華族・柳原伯爵家のスポンサー となる。
 この頃から白蓮は、詩集や戯曲を次々に発表、中央文壇でも評判となり、白蓮の住む別府の別邸には、歌人や作家たちが集まり文化サロン化する。朝日新聞には「筑紫の女王・燁子」が6回にわたって連載された。

 「われはここに 神はいずくにましますや
           星のまたたき寂しき夜なり」

 白蓮36歳の時、東京帝大新人会の宮崎竜介と会う。彼女の書いた戯曲を、竜介が東京から受け取りに来たのがきっかけだった。竜介28歳、二人は燃える恋に陥る。

 「わだつみの沖に火燃ゆる火の国に
         我あり誰ぞや思われ人は」

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 翌年白蓮は家出、長男を出産。朝日新聞に「夫への絶縁状」を掲載する。いわゆる「白蓮事件」である。

「私は金力を以って女性の人格的尊厳を無視する貴方に、永久の決別を告げます。私は私の個性の自由と尊貴を護り、且つ培う為に貴方の許を離れます。」
 
 白蓮39才、華族を除籍され正式に竜介と結婚。文筆活動で、病身の夫を支える。その一家を暖かく支援したのが、夫の父・淊天である。
 淊天は熊本の没落士族出身。大陸浪人として孫文の「辛亥革命」を支援していた。その縁から白蓮も、孫文や魯迅との交流が始まる。
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 終戦の1週間前、白蓮は愛息を失う。学徒出陣で鹿児島に駐留、本土防衛に当っていた彼は、米軍の爆撃で戦死したのだ。
 白蓮が戦後夫とともに、その生涯を閉じるまで平和運動に挺身したのは、これがきっかけだった。

 1967(昭42)年、白蓮83歳で逝去。

 「そこひなき闇に輝く星のごと
        われの命をわがうちに見つ」(辞世)

 会場には、700通を超えたという竜介宛のラブレターの一部や、書、掛け軸、愛用の品々など200点が展示されていた。
 その入り口には、麻生総理からの花輪が飾られている。

 麻生の祖父は伊藤伝右衛門と、同郷で同業の石炭王。と同時に麻生の母方の先祖は、薩摩藩閨閥を通じて、白蓮とは縁戚にある。

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October 16, 2008

1062.人形市

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081015_022_640081015_008_640081015_011_640   日本橋・人形町で、今日まで「にんぎょうちょうの『人形市』」が開かれている。
 江戸時代から続く老舗から趣味の「人形教室」グループまで、50店舗人形を並べる。
 一体100円から1万円と、値段の方も様々だ。

 江戸の初期に湿地を埋めて造られたこの界隈、中村座や市村座などの江戸歌舞伎から人形浄瑠璃の芝居小屋など、この一帯は町人がひしめく大歓楽街だった。
 先月終わった中央区教育委員会の遺跡発掘調査では、江戸三座の入場券「切落札」や「土間札」、茶屋の化粧道具などが発掘されており、今回の「人形市」でも展示されている。

 大伝馬町から通旅籠町にかけては、人形を製作する職人、修理職人、舞台で人形を操る人形師などが住み着き、元禄の頃には「人形丁」という里俗地名で呼ばれるようになった。
 春には雛人形、初夏には菖蒲人形の「市」、冬には「べったら市」、江戸庶民はいつもここに足を運んだという。

081015_014_640081015_004_640_2081015_024_640  「人形市」が復活したのは3年前、人形町大通り両側の歩道に小屋架けの店が並び、日本人形から西洋人形、エスニックの木偶や来年の干支の土偶まで売られている。
 また通りにある大観音寺では、人形供養も開かれ、人形に感謝と労いの声がかけられる。

081015_032_640_5081015_035_640_10081015_027_640_2  水天宮の境内を舞台に繰り広げられるのは、「辻村ジュサブロウの世界」。
 寿三郎さんは人形町の一角に「ジュサブロー館」を設け、人形の製作や衣裳のデザインを行う一方、舞台・映画の演出など総合的なアーティストとして活躍している。
 入場料は無料、多くのファンが遠くからもやってきた。

 今日夕方の舞台は、デフ・パペットシアター・ひとみによる日本神話の人形劇。テレビ「ひょっこりひょうたん島」で知られる人形劇団ひとみ座を中心に、ろうあ者も交えた専門劇団の公演である。
 
 地下鉄日比谷線・浅草線「人形町駅」、半蔵門線「水天宮前駅」、新宿線「浜町駅」下車。 開演16時~、入場無料。

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October 15, 2008

1061.Blog Action Day 08

Banner_badn2008  今日は「Blog Action Day」。世界中のブロガーやポッドキャスター、ビデオブロガーが、年に一度、同じ日に同じ話題について取り上げるネットイベント。
 第1回の昨年は、2万以上のブログが参加した。今夜はお台場でオフのイベントも開催される。スペシャルトークとアーティストによるライブだ。

 今年のテーマは「Poverty」、「貧困」。Being poor,Pauperdomである。
 「日本は世界有数の経済大国でありながら、自殺者は年々増加しています。その一方で、経済的に貧しい国でも心豊かに暮らす人たちもいます。」
 「いったい『貧困』とは何なのか?このイベントをキッカケに考え、ブログに書いてください。」
 以上が主催者からのメッセージ。

 「貧困」を生む政治的・経済的・宗教的システムや為政者の政策については、専門家のブログに期待するし、フリーターや名ばかりの管理職や個室ビデオに泊まらざるを得ない人たちの「貧困問題」は、当事者からの怒りや問題提起が発信されるだろう。

 元映像関係者のブログとしては、「貧困」を様々な側面からアプローチした「映画」を紹介する事にしよう。それも「こども」を主人公にした作品を。

 既にこのブログで掲載した「闇の子供たち」タイにおける人身売買・臓器移植・幼児売買春に迫った劇映画。まだ国内で上映中だ。

 「シティ・オブ・メン」はリアリティ溢れる映像で、極限の日常を生きるブラジルの子どもたちの実像を描く。ベルリン国際映画祭では、スタンディングオペレーションで絶賛された。

 近々公開される「未来を写した子どもたち」は、インド・カルカッタの売春窟で暮らす子どもたちを追ったドキュメンタリー映画。今年のアカデミー賞で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。

 「プラネット・カルロス」は、ニカラグアの13歳の少年と家族を描く。今週末から開催される東京国際映画祭で、インターナショナル・プレミアとして上映される。年明けには一般公開されるだろう。

 最後に「ホームレス中学生」。220万部を突破して、作者の元中学生は「貧困」から脱出したが、はたして心は豊かになったのだろうか。待望の映画化だそうだが、観客はどう受け止める?

 以上が本日のイベントに共鳴しての、ささやかな「発信」である。 

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October 14, 2008

1060.もんじゃ、もんじゃ、

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  私の住む「月島もんじゃストリート」、この連休は多くのお客さんで賑わった。
 先月で終わった朝の連続ドラマ「瞳」の影響もあるのだろう。「もんじゃ焼」を味わおうと、どの店も満員である。

081013_012_640081013_022_640081013_023_640  カップル、家族連れ、お年寄りの団体さん、多くが地図を片手に歩いている。
 都内はもとより関東各地、海外からの観光客も目に付いた。

 「もんじゃ焼き」、もともと駄菓子屋の奥で焼かれていた、子供たちのおやつである。
 特に月島で誕生した名物ではない。戦前戦後、いや江戸時代から、浅草から神楽坂にかけて下町の子供たちは「もんじゃ」を楽しんだ。
 江戸時代の「柳多留」や斉藤緑雨の小説「門三味線」(1895)に「文字焼」として登場していると、四方田犬彦の「月島物語」に記されている。

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 「もんじゃ」が、月島の「街興し」のキーワードとして登場したのは、1970年代になってからである。
 四方田さんが月島に住み始めた’88年には、もんじゃ屋の数は30軒を超えていたという。
 そして現在、「月島もんじゃ振興会協同組合」に属している店だけでも65軒、一時は80軒を以上もあった。
 先日放送されたNHKの夕方の情報番組では、八百屋も魚屋も肉屋も、中には宝石店まで「もんじゃ屋」に転業し、地元の住民の生活に支障も出ているとリポートされていた。

081013_015_640_2081013_026_640081013_028_640  さてこの「もんじゃ」の値段、キャベツに揚げ玉、桜エビというシンプルなもので600円。生イカ、生エビ、タコ、帆立などシーフードたっぷりのものになると、1400円と決して安くはない。

 店が増えるにつれ競争も激しくなり、他店との差別化が始まる。豚にキムチ、ニラ、揚げにんにくの「韓流もんじゃ」。鮭にイクラ、イカ、バターにパジルソースの「マカロニもんじゃ」。牛、豚、ココナッツミルクにナンプラーと「エスニックもんじゃ」。
 トッピングの組み合わせに秘伝のスープと、それぞれの店が工夫を凝らす。そのせいか店のメニューを撮っただけで、店員に叱られた。

  「もんじゃストリート」の一角に引っ越してきてから5年、もんじゃを食べたのはまだ4回だけ。それも来日した知人など、たっての希望で案内した時だけである。
 久し振りに、どこかお店を覗いて見ようか。

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October 13, 2008

1059.大江戸神輿まつり

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081012_072_640081012_074_640081012_066_640  秋の連休、深川・木場で開かれた「大江戸神輿祭り」。都内をはじめ関東各地の神輿同好会が集まった。
 担ぎ手の数はおよそ2000、12チームが神輿の振りや粋を競う「大江戸神輿コンテスト」がハイライトである。

081012_013_640081012_016_640_3081012_018_640  神輿担ぎ手の組織といっても、神社や町内会のそれとは異なる。会社の同僚、学生仲間、飲み仲間など全くの趣味の同好会である。
081012_045_640081012_046_640   例えば参加した「板橋連合グループ」は、黒睦・神風連・仁勇会・八起会など14の団体がチームを組んで参加した。だからひとつの神輿でも、半纏の背中模様は多彩だ。

081012_031_640081012_033_640081012_062_640   神輿が、列を連ねて正面審査席に向かう。後に付くそれぞれの応援団から歓声が上がる。
 1チーム5分、女優の磯村ミドリさんら審査員らが、神輿の勇壮さ、担ぎ手の息の合いかた、リズム、囃子などを採点する。

 「見て楽しく!聴いて楽しく!肌で感じて楽しく!」主催は日本神輿協会と東京都公園協会。江戸情緒を楽しむ、神輿の祭りは今年で6回目となった。
 初めての見物だったが、神輿はやはり担がなくては!

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October 11, 2008

1058.築地秋の試食育まつり

081011_640_2  築地場外市場、毎年春と秋には様々なイベントが催される。市場の豊洲移転に反対する商店街としては、「築地食のまちづくり」をアッピールする狙いが込められている。

081011_005_640_2   今年は今日と明日、およそ200店舗が参加して小田原橋イベント会場を中心に場外市場各店も含め展開されている。
081011_006_640_2081011_007_640_2  今日は「ご試食まつり」と題して都内有名店や全国名産が参加する「築地と日本の“旨い”が勢ぞろい!」。
 明日は、こどもたち中心の「食育まつり」、「釣って、料理して、食べて・・・おいしい食育メニューどっさり!」である。

 混雑を避け例年のイベントは遠慮していたが、今年は雨の中を出かけた。
 1000円で1200円分の「試食育チケット」がお得と勧められ、2000円分購入して買い物に回ったが、これが不便。ひとつの店で2枚200円しか使えない。中には1枚だけという店もある。残額は現金支払いなのだ。
 その上、場外商店街の全てで使えるわけではない。赤ちょうちんの下がっている200店だけなのだ。商店街もいろいろなグループに分かれているようで、組織が一本になっていない事が分かった。
 中国や韓国からの観光客も多かったが、この辺りの仕組みや事情が分からず、店頭で揉めていた。
 結局、馴染みの店でこっそり現金化して買い物を済ませたが、今後の課題。

 今年は築地生誕350年、このイベントに共催して明日から13日まで「築地本願寺350法要・行事」も開催される。お笑いステージや隣人まつり、記念講演が行われる。
 来年の春、築地場外市場は恒例の「半値市」だそうだ。

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October 10, 2008

1057.東京道産酒の会

025_640  北海道で生まれた人、北海道で青春を送った人、北海道での勤務に情熱を燃やした人、北海道にエールを送る人たちの集まりが「東京道産酒の会」。月に1回、地元の酒と料理と会話を楽しんでいる。
 197回の昨夜は、ヴァイオリン演奏を聴きながら、楽しい時間を過ごした。

 健康のために!?毎回冒頭に「季節の歌」を全員で斉唱する。前回は、北海道に縁の深い「この道」だった。今回は、三木露風作詞・山田耕筰作曲の「赤とんぼ」。
 実はこの歌も北海道に縁がある。露風が、生まれ故郷でもある兵庫県龍野市の情景を詞にした、と言われている。ところが書いたのは、函館のトラピスト修道院時代。目の前に飛んできた「赤とんぼ」を見て、故郷を思い出したのだろう。

024_640  昨夜のゲストスピーカーは、ヴァイオリニストの小笠原伸子さん。横浜バロック室内合奏団を創設し、現在コンサートマスター。「バッハの無伴奏」の演奏家として知られている。
 ここ8年は、毎年イタリアに出かけて各地の音楽祭に出演している。
 北海道赤平市生まれ、東京芸術大学院出身。

 お話は演奏を交えて「音楽+ワイン+イタリア」。

 「クラッシック音楽といえば、ドイツやオーストリアが本場と言われるが、私はなぜかイタリアが大好きだったので、イタリアに留学してS・アッカルドに師事した。そんな縁もあって、毎年夏にトスカーナ地方を中心に、イタリア演奏旅行に出かけている。
 この旅は自らの充電と勉強の時間だが、日本人の作曲した音楽をイタリアに紹介する事も目的。
 今年は、ムルロ音楽週間、ラディコンドリ音楽祭、ブルネロ・モンタルチーノ美術館での演奏会、コッレ・ディ・ヴァル・デルザ劇場、ピエンツア美術館と5回の演奏会を開いた。
 ブルネロは、トスカーナワインの名産地。おみやげに貰ったワインは美味。」
 「バロック音楽は17世紀から18席中頃までイタリア・ドイツを中心にヨーロッパに拡がった音楽様式。イタリアのモンテベルディ・コレルリ・ビバルディ、ドイツのシュッツ・バッハ・ヘンデルなどが有名。
 バロックとはスペイン語で『歪な真珠』を意味する『バローコ』からきた言葉。音楽だけでなく建築や美術、文学などの同時代の芸術様式の名前でもある。その名の由来とおり、合理的な調和や安定を突き破った、感覚的な激しい表現が特徴。ジャズに似た刺激的な音楽である」
 話を交えて演奏されたのは、ポピュラーなバロック音楽の2曲。クライスラー「美しきローズマリー」とヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」から「第3番ヘ長調・秋」。この曲は、収穫の秋ワインを飲みすぎて酔っ払った様子を描写した曲である。

 このほかアトラクションとして、中山育美のピアノと小笠原伸子のヴァイオリンでモンティの「チャルダッシュ」、ピアソラ「イベルタンゴ」、アンコールはクライスラーの「愛の喜び」。

 「献立」は、玉葱スライス、烏賊の塩辛、焼鱈子、鰊甘露煮、ほっけ一夜干し、松茸御飯に馬鈴薯汁。

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October 09, 2008

1056.三本木農業高校、馬術部

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 新藤監督の「石山尋常高等小学校」に続いて、実在する学校を舞台にまた「タイトル」にした作品、それも現代版である。
 片目の視力を失った往年の名馬「タカラコスモ」。その馬を引き取った青森県三本木農業高校馬術部で、手を焼きながらも献身的な世話を続ける女子高校生とコスモの絆。

 9年前に入学して、馬術部でコスモ担当となった湊華苗が書いた手記「私、コスモの目になる」をベースに、佐々部清監督は生命の美しさを浮き彫りに感動的なドラマに仕立て上げた。
 今も三本木農業高校で余生を送るコスモだけは実名、登場する人物はフィクションとして綴られるが、語られる物語の多くは実話である。
 市川崑監督の助監督だった佐々部だけに、師匠ゆずりの丁寧なつくりは深い余韻を残す。

Img_story01Img_story02   主人公の高校生を演じたのは、新人・長渕文音。歌手の長渕剛の娘である。
 猛練習を重ね乗馬のシーンはもとより、危険を伴う障害競技も全て本人が演じた。

 また同じ馬術部員を演じた奥村知史、森田彩華、西原亜季、小林祐吉ら若手俳優たちも同様。馬術競技大会のシーンでは、スタートからゴールまでスタントマンなしに、ノンストップで撮影されている。
 このこだわりも、佐々部監督らしい。

 他に馬術部顧問に柳葉敏郎、獣医師に黒谷友香、校長に松方弘樹が出演している。本物の馬の出産場面の撮影の中で、彼等は母馬から子馬を引き出す作業を実際に行っている。3人とも乗馬は得意で、馬が好きな役者だったから玄人並の手さばきだったという。

Keyword1  今も健在のコスモだが、20年ほど前から全日本馬術競技大会や、学生競技会で度々優勝した競技馬である。世田谷の馬事公苑で活躍していたというから、私も見たことがある名馬だったと思う。
 左目の炎症で引退、普通なら薬殺される運命にあったが、往年の活躍を知る三本木農業高校の馬術部顧問の尽力で引き取られた。10年前の事だった。
 原作者の湊さんが入学したのはその翌年、映画のストーリー通り片目を失ってからも、彼女が目となって青森県民馬術大会に出場している。
 そして映画では、実在のコスモをはじめ、それぞれの時代を3頭で演ずる。人間の役者以上に味のある演技!を見せてくれた。

 撮影は、四季を通じて三本木で行われた。八甲田山を背景に、桜並木から吹雪まで美しく見せる。そこに押尾コータローの主題歌が流れる。

 話は逸れるが、一昨年の春八甲田への旅の途中、この三本木に立ち寄った事がある。
 ここは江戸末期、南部藩勘定奉行新渡戸伝によって開拓された、青森県内有数の米どころである。
 新渡戸は多くの農民たちと奥入瀬川の上流から水路を掘り、三本木原台地に水を引いた。そして水田を開き米を作った。
 国際連盟の事務次長として有名な「武士道」の新渡戸稲造は、伝の孫に当る。この地で初めて米が稔った時に生まれた彼は、「稲」の字を貰ったのだ。
 映画にも出演した三本木農業高校生達は、きっと彼等開拓農民たちの末裔に違いない。

 たわわに稔った水田の畦を、女子高校生に曳かれたコスモが散策するシーンを見ながら、こんな事を思い出した。

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October 08, 2008

1055.容疑者Xの献身

009_640_2  テレビの人気ドラマの映画化と言うと、ちょっと軽めの作品が多い。しかしこの映画は、見応えのある重厚な人間ドラマだった。
 それは原作の骨格が、確りとしていたからだろう。2年前に直木賞を受賞した、東野圭吾の同名小説が基となっている。

 テレビでは、昨年オンエアされたフジテレビの月9ドラマ「ガリレオ」。天才物理学者が刑事コンビと組んで、難事件を科学的視点から解明するというストーリーで大ヒットした。
 映画は、この「ガリレオ」シリーズの3作目「容疑者Xの献身」を、テレビと同じキャスト・スタッフで製作した。

330418view001  ガリレオは福山雅冶が演ずる天才物理学者のあだ名。大学同期の刑事(北村一輝)に頼まれて、新人女性刑事(柴咲コウ)の相談を受け、気は進まないが事件に取り組む。
 今回は、顔を潰され指紋の焼かれた変死体の捜査である。
 「事件」の犯人はこの男の別れた妻(松雪泰子)と、最初から観客には明らかにされているが、彼女のアパートの隣室に住む高校教師(堤真一)の登場で物語りはサスペンスとなる。
 この教師、実はガリレオとは大学時代の友人、50年にひとりと言われる天才数学者なのだ。
 二人の天才が、一つの事件を通じて「論理の闘い」を繰り広げる。そこの「非論理的」な「愛と友情」が絡む。

 久し振りのテレビ出演、映画での主役は初めてというシンガーソングライター・福山雅冶が清清しい学者姿を見せる。昨日ノーベル物理学賞を受賞した、本物の物理学者たちに比べて貫禄がないのは当然だが、ギャルがいっぱいの教室での講義はサマになってる。

330418view005_4  対するのが天才数学者・堤真一。原作では「ずんぐりした体型」で「目は糸のように細い」冴えない男と描写されているが、オトコマエの堤はそれなりに暗い魅力を見せていた。

 他に益岡徹、渡辺いっけい、品川佑、真矢みきなどテレビでのオリジナルメンバー。殺されたストーカー夫役を、今朝日新聞紙上で白石加代子との往復書簡を掲載している舞台俳優長塚圭史が、憎憎しく演じていたのが印象に残る。

 スタッフの方も、監督はテレビと同じく西谷弘。フジテレビディレクターの彼は、「県庁の星」('06)に続く映画2作目である。企画・大多亮、製作・亀山千広など、湾岸シリーズのヒットを飛ばし続けている面々だ。

 ご近所、隅田川浜町界隈のロケには我が家も写るが、厳寒の八方尾根での冬山登頂シーンが、作品を骨太にする。
 天才という孤独を背負った二人の「極限の世界」を、猛吹雪のなかの山岳行で表現する。

 オリジナル主題歌を、福山・柴咲のスペシャルユニット「KOH+」バラードで届ける。

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October 07, 2008

1054.宮廷画家ゴヤは見た

Goya_a_1024  昨日に続き、こちらもアメリカ・インディペンデント系映画の傑作である。監督はチェコ出身のミロス・フォマン、「カッコーの巣の上で」('75)「アマデウス]('84)でアカデミー賞監督賞を受賞した巨匠である。
 ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した「マン・オン・ザ・ムーン」('99)以来久々の作品だった。

331285view001331285view002  18世紀末のスペイン。天才画家ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)の肖像画のモデルとなった二人、一人は裕福な商人の娘、天使のような無垢な少女(ナタリー・ポートマン)、もう一人は権力を弄ぶ神父(ハビエル・パルデム)が、動乱の時代に翻弄される物語である。

331285view027  治世はカルロス4世の頃、ゴヤはスペインを代表する最高の芸術家として、「宮廷画家」に任命されていた。彼は教会の壁画や、王族や貴族、聖職者たちの肖像画を描く一方で、貧しい人々の生業や社会を批判する風刺画を描いてきた。
 その彼の前にあった運命の二人、ミロス・フォマンはゴヤの目を通して、人間とは、愛とは何かを映像に刻んだ。
 といってこの作品は、単なる歴史劇ではない。価値観が移ろいやすく先行きが不安な現代を描いているのである。

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 インディペンデント系だけに、スタッフもキャストも多国籍である。
 脚本は、フランスを代表するジャン=クロード・カリエール。「存在の耐えられない軽さ]('88)で知られる長老。
 撮影は、スペインのアカデミー賞といわれる「ゴヤ賞」を6回も受賞しているハビエル・アギーレサロベ。
 美術も「アマデウス」でアカデミー賞を受賞した、パトリッツア・フォン・ブランデンスタンというベテランである。

 出演者ではナタリー・ポートマンがイスラエル出身。フランスのベッソン監督による「レオン」でデビュー、「クローサー]('04)ではアカデミー賞にノミネイトされた。
 ハビエル・バルデムは、今や最も注目を集めている俳優。スペイン出身の彼は、「ノーカントリー]('07)でオスカーを受賞している。
 またゴヤ役のスカルスガルドは、スエーデン出身。「ドッグウイル]('03)「マンダレイ」('05)の他、「パイレーツ・オブ・カビリアンシリーズ」で顔を売った。

 作品を理解するためには、当時のヨーロッパを席巻した「異端審問」についての知識が必要だ。カソリック教会がユダヤ教やイスラム、プロテスタントを異端として追求して拷問にかけ、火炙りの刑に処したという歴史的事実である。
 異端審問は教会のエージェントだけに留まらず、国家の恐怖機関として権力操作の道具となっていく。そこには、宗教とくに一神教を国教とする国の排他性と独善、残酷さが露呈する。

 今回も邦題に異議がある。原題は「GOYA’S GHOSTS」、そのまま「ゴヤの幻影」とした方が、フォマン監督のこの作品に込めた意味が理解しやすい。 

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October 06, 2008

1053.落下の王国

The_fall_7_640 このところ日本映画が続いたが、久し振りのアメリカ作品である。といってもハリウッド的な映画ではない。大人も楽しめる「お伽噺」である。

 「落下の王国」とは、日本の配給会社が付けたタイトル。ちょっと捻りすぎた感もある。
 原題は素直に「The Fall」、しかし意味深い。落下・墜落・衰亡・没落・低落・屈服・堕落・落とし罠、Fallには様々な意味がある。今の季節「秋」も Fallで表現されるし、レスリングはフォール勝ちである。
 そんな「Fall」の全てが、この作品には込められている。

 映画撮影中に橋から落ちて大怪我をしたスタントマン。恋人もスターに奪われて自暴自棄になった男が、同じ病院に入院している少女に語った夢の冒険物語。少女もまたオレンジの木から「Fall」して腕を折った。

The_fall_3_640The_fall_8_640The_fall_14_640   目くるめく美しい物語の世界が、映像となって現れる。架空と現実の世界の交錯の中から感動が生まれる。

 監督したのがインド・ヒマラヤの山麓で育ったCM世界の鬼才、映像の魔術師といわれるターセム。
 その映像の美を作り上げたのが、コスチューム担当の石岡瑛子。北京オリンピック開会式でもコスチュームを担当した。「ドラキュラ」('92)ではアカデミー賞も受賞、映画・演劇・オペラなど幅広い領域で活躍しているデザイナーである。ターセムとは、前作に引き続いてチームを組んだ。

 4年前「ザ・セル」で映画監督としてデビューしたターセムは、20数年前から「Fall」のイメージを暖めてきた。そして6年前、手作りの映画を撮り始める。
 世界24カ国、世界遺産13ヵ所を含む「美の極地」でコツコツと映像を蓄えていく。

The_fall_11_640The_fall_13_640The_fall_10_640   タージ・マハール廟、アーグラ城、プラハ城、コロッセオ、万里の長城、アンコールワット、ピラミッド・・・・。
 ラダックでは月の砂漠を、ニコバル諸島では象が海を泳ぎ、フィージーの白い珊瑚の孤島やナミビアの荒涼たる赤い砂漠では、石岡瑛子の華麗な衣装が舞う。
 世界遺産の壮大なロケーションとの奇跡的なコラボレーションである。

 ターセム監督は、人生の「落下」の行き着くところに、美しく希望に満ちた世界がある事を映像で語る。
 「絶望の淵に落下しても、生きてさえいればこの世界は美しい」

 主人公のスタントマンには、長期ロケを考慮して無名の役者を選んだ。そのリー・ペイスも、エミー賞にノミネイトされるほどの注目株に成長した。
 相手の少女も、純粋無垢でなければならない。ルーマニアの5歳の子供カティンカ・アンタールも、映画完成時にはお茶目な10歳の少女に成長した。

 ワンシーン、ワンシーンが計算しつくされた極彩色の映像詩になっている。100本のコマーシャル作品を、一度に見たような不思議な作品だった。
 映像の魔術師、2本目の映画である。

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October 04, 2008

1052.shibuya1000

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 テレビや映画でよく見かける風景、渋谷駅の夕刻。その地下で、昨日から「シブヤ アート プロジェクト」が展開されている。かって働いていた映像会社も協力しているというので、ちょっと覗いて見た。

081003_023_640_2081003_003_640081003_016_640  タイトルは「shibuya1000」。
 コンセプトは以下の通り。
 「渋谷のまちは、どんどん変わる。渋谷のひとも、どんどん変わる。変わらないものがあるとするなら、それはきっと渋谷の宝物・・・・・」

081003_017_640081003_018_640081003_019_640   若手写真家、新進作家、渋谷で活躍するデザイナーたち。安藤忠雄が設計した地下鉄新副都心線のコンコースで、彼等は文化を発信する。

081003_013_640081003_006_640081003_021_640_2  こちらは渋谷のまちを作り出す1000人の顔を、20チームの写真家が撮り下ろした。
 「映像の渋谷」「ファッションの渋谷」「ひとのまち渋谷」、それを1000という切り口で表現する。

081003_010_640081003_026_640  コンコースを歩いて気がついた。常設のアートである。左は大津英敏の「海からのかおり」、七里ヶ浜にたつ娘が渋谷を訪れる人を招く。
 右は絹谷幸二の壁画「きらきら渋谷」。渋谷の街を俯瞰でとらえる。
 そう、来月には岡本太郎の大壁画も渋谷の街に飾られるようだ。

 「shibuya 1000」、13日まで半蔵門線・新副都心線の地下コンコースで。

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October 03, 2008

1051.花は散れども

007_640_2 正式な映画のタイトルは、「石内尋常高等小学校 花は散れども」。新藤兼人監督は、この石内尋常高等小学校に拘る。それは、ここが彼の人生の原点ともなった学び舎だったらだ。

 石内は広島の中心街から車で西北へ1時間、旧佐伯郡石内村。平成の大合併で広島市に併合されたが、今もなお静かな佇まいを見せる農村である。
 ここで生まれた新藤は、尋常高等小学校で、彼の人生に大きな影響を与えた破天荒なキャラクターを持つ恩師と、運命的な出会いを持つ。

 彼は石内を舞台に、これまで書いた238本のシナリオの集大成ともいうべき映画を創る。そして「貧困」「教師と生徒」「愛とエロス」「戦争と平和」「ピカドン」そして「老い」など、彼が追い求めてきたテーマを全て描ききった。

 ストーリーは小学校の担任先生を中心に、級友たちと幼馴染、貧しさの中で死んだ母親など新藤の少年時代から、新進気鋭のシナリオライターとして自立する迄が描かれる。
 多くのエピソードが事実だったというが、なかでも彼の波乱万丈の恋愛体験をモチーフとした、幼馴染との狂おしい恋は切ない。しかし、その映像には老境に入った今でも冷めない熱い情熱が描かれている。

 新藤兼人、96歳。日本最高齢の現役映画監督である。
 1912年広島県石内村に生まれ、地元の尋常高等小学校に学ぶ。卒業後は京都に出て映画会社で働く。20代の頃から溝口健二監督に師事して、脚本を書く。
 戦後の1910年松竹を離れ、吉村公三郎監督や俳優の殿山泰司等と近代映画協会を設立。今もなお、このプロダクションで映画を撮り続けている。

 監督初作品は、乙羽信子を主演にした「愛妻物語」('51)。この映画も、彼の青春時代の自伝とも言うべき作品だが、その後乙羽は死ぬまで新藤のパートナーとなる。
 1952年には海外で高く評価された「原爆の子」、そして1960年「裸の島」がモスクワ国際映画祭でグランプリを受賞、映画監督としての地位を不動のものとした。その後モスクワの映画祭では5本の作品が各賞を受賞、5年前には長年の映画祭への貢献で特別賞が与えられた。

 私の記憶のなかで、最も強い印象を残している新藤の作品は「午後の遺言状」('95)。日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、この年のあらゆる映画賞を独占した。そしてこの作品は、「老い」をテーマに社会現象を巻き起こしたのだ。
 主演した乙羽信子の最後の作品でもある。

20080714005fl00005viewrsz150x  さて本作品に戻ろう。新藤がオマージュを捧げた恩師の役は、柄本明が見事に演じた。そして新藤の役、主人公はハンサムな男との注文で豊川悦司、新藤作品は初出演である。
 狂おしく恋し一夜結ばれた幼馴染は、大竹しのぶ。可愛い女だったと新藤が指名した。
 そして新藤の少年時代の役は、母校でもある現石内小学校の児童から選ばれた。また級友達も素人の子供たちである。彼等の顔立ちや表情には、都会の子供たちと違う純朴さがある、と新藤は言う。

 地元石内をはじめ、尾道、鳥取、静岡など全国10カ所でのオールロケだった。エンディングロールにも表示されていたが、キャストのひとりに新藤の娘・映画監督でもある新藤風が、「監督健康管理」として参加した。
 しかし新藤は、疲れも知らず天衣無縫にカメラを回した。
 「先生、私は今も元気です!!」 

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October 02, 2008

1050.住宅・土地調査

016_640  国勢調査ほど知られてはいないが、5年に1回10月1日を基準に住宅・土地統計調査」が行われる。
 この調査は、わが国の住宅や土地の現状を明らかにして、住生活に関する国の施策を実施するための、基礎資料を得る目的で行われる。

 国勢調査が、住民全員を対象に調査が行われるが、こちらは10世帯に対してひとつが調査対象になる。
 その調査対象に今回当ってしまった。宝くじなど当った試しはないが、こちらはズバリである。といって、別に隠し立てるほどの資産を持っているわけではないので素直に応えることにした。

 電子立国を目指すとかで、国の調査もオンライン化が進んでいる。調査対象者IDや確認コードが届いたのでパソコンを前にして、調査票への回答に取り掛かった。
 ところがこれがなかなか上手くいかない。以前このブログでも報告したが、確定申告のe-TAXの時にも七転八倒した。今回もまた同様のなのだ。つまり添付されたガイド通りに、パソコンは動かない。OSのせいかPDF閲覧ソフトが理由なのか。
 総務省統計局がコールセンターを設置しているので、問い合わせてみた。電話に出た担当者も要領を得ない。
 「なにせ初めての試みなので・・・・」と。オンラインによる回答は少ないようで、問い合わせもほとんどないとの事だった。
 結局途中で投げ出して、直接調査票に鉛筆で記入し、郵送することにした。

 調査の内容は、住居や敷地の所有形態や広さ、設備、新築・建て替えなどだが、最近の調査はバリアフリーの状態、省エネの設備、耐震や火災対応の状況なども項目に加わっている。
 この調査の結果がどう生かされていくのかは、今後の問題だが。

 過去の調査記録をいくつか見てみたが、ひとつだけ挙げておこう。(総務省統計局資料)
 我が家の住居の広さは、全国平均より10㎡狭くまさに「うさぎ小屋」状態だった。ただ、東京都の平均よりは若干広い。単身者の多い都会の平均が低いのは当然、という結果である。
 因みに全国一広いのは富山県、東京の2.5倍である。もちろん一人当りの畳の数も全国1位である。最下位は沖縄、大家族での生活が伺われる。
 直接関係はないが、東京の家賃が宮崎の2.1倍、7万円強とのデータもあった。  

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October 01, 2008

1049.アキレスと亀

003_640  「HANA-B」('98)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞、「座頭市」('03)でもヴェネチア・監督賞、昨年はこの映画祭に新たに設けられた「監督・ばんざい賞」を受賞した北野武監督。
 今年も2本のアニメとともに「アキレスと亀」はノミネイトされたが、残念ながら受賞を逃した。

 北野監督にとっては、この作品が14作目である。今回は監督・脚本・編集のほかに、得意とする絵を挿入画として描いた。
 彼のこれまでの作品と違って、夫婦愛の物語りである。

331100view001331100view003   主人公は、最後までうだつの揚がらなかった絵描きである。
 田舎町で、金持ちのお坊ちゃんとして大らかに絵を描いていた少年時代(吉岡澪皇)。
 都会の片隅で、バイトと芸術に明け暮れ、恋をした青年時代(柳憂怜)。
 妻の応援も得て、創作活動に励むがどこかピントが外れている中年時代(ビートたけし)。
 恋人から妻役を、麻生久美子と樋口可南子がリレーする。
 他に中尾彬、伊武雅刀、大杉漣、大森南朋。今売り出しの若手女優筒井真理子が、二人の子供役で出演している。

 作品を彩るのは北野ワールド、時には生真面目に、時にはユーモアたっぷりに、泣いたり笑ったりそして残酷で愛しい。

 「成功をつかめなかった男が手にした、かけがえのない幸福感」
 「人生にとって本当に大切なものを見つけた夫婦愛の物語」
 ヴェネチアの審査員は、Mr.KITANOの新しい世界に戸惑ったのかも知れない。

 タイトルの「アキレスと亀」、足の速いアキレスであっても永遠に亀には追いつかないというギリシャの寓話?
 夢は儚く手の届かないもの、しかし続ける事で得られる悦びはきっとある・・・・。

 NHKスペシャル「世界里山紀行」も担当した、梶原由記の音楽がいい。
  

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