1288.牡丹亭
歌舞伎の舞台をハイビジョンカメラで撮影し、デジタル上映する「シネマ歌舞伎」。今回は歌舞伎ではなく、中国・昆劇の舞台が東劇で再現された。
演目は今年3月中国・蘇州で上演された「牡丹亭」。明代の劇作家・湯顕祖の代表作「牡丹亭還魂記」を、日本の歌舞伎役者坂東玉三郎が主役として客演したもの。共演は蘇州昆劇院のみなさん。
物語は、美女・杜麗娘が春のうたた寝の中で、柳夢梅という若者に恋をし歓喜の時を過ごしたが、それははかない夢の中での出来事・・・・・。その恋が忘れられぬ美女は、想いの余り病に罹り儚くも世を去る。そして若者は・・・・というあらすじ。
「昆劇」は現在の江蘇省崑山で、明の時代から清朝230年に興隆した中国伝統演劇。ユネスコの世界無形遺産にも指定されている、地方劇である。
中国では「百劇の祖」と呼ばれ、その後発展した「京劇」や「川劇」「湘劇」などに大きな影響を与えた。
また「昆劇」は、歌・舞踊・台詞・動作を一体とした総合舞台芸術で、演目も長編の「伝奇」ものから単独の一幕ものまでと豊富、脚本・構成の素晴らしさと文学性が高い評価を得ている。
しかしその一方で、蘇州語の四声を重んじるため、江蘇省外への展開は弱い。
玉三郎は、かねてから歌舞伎より伝統の長い「昆劇」に強い関心を持ち、その芸術性を追求してきた。
そして昨年、「牡丹亭」の一部を北京で公演、今回は「遊園」「驚夢」「堆花」「写真」「離魂」に「叫画」「幽媾」「回生」の三幕を加え、それも発祥の地蘇州で一挙上演したのである。
今回の公演で玉三郎は芸術監督も兼ねながら、蘇州語による台詞・歌そして立女形としての華麗な演技をみせ、観客の絶大な拍手を浴びた。
とくに現代の昆劇では男旦(女形)の伝統が消え、ヒロインとしての女形の登場は70年ぶりだったそうだ。
中国の新聞は「梅蘭芳(メイランファン)が昆劇の舞台の上に蘇った」と大賛辞を贈っている。
玉三郎は「昆劇を遺産として博物館入りさせるのではなく、演じ続ける事で伝統をさらに発展させなければならない」という。
彼の迫真の演技は、中国の若い役者たちににとっても大きな刺激になったに違いない。
歌舞伎シネマ特別編では、第1部をドキュメンタリー編とし、蘇州での16日間にわたる玉三郎と昆劇院の劇団員の舞台づくりを見せる。そして第2部が「牡丹亭」八幕となる。
休憩を挟んだ145分、玉三郎フアンはもとより映画フアンにとっても見応えのあるシネマだった。


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