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July 31, 2009

1313.写楽・幻の肉筆画

133_640 「江戸時代の浮世絵版画の巨匠、東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)の肉筆扇面画がギリシャ・コルフ島のアジア美術館に所蔵されていたことが分かった。・・・・・・・写楽の肉筆作品は極めて少なく、謎の多い絵師の実像に迫る一級の手がかりとなる。」
 昨年8月4日の読売新聞は、一面トップで「写楽の肉筆画発見」を伝えた。

132_640 この肉筆画を目玉に、120点を超える「日本絵画」「摺物・絵本」「版画」が江戸東京博物館で展示されている。
 「ギリシャに眠る日本美術~マノスコレクションより」と副題がついたこの展示は、日本・ギリシャ修好110周年を記念する特別展である。

 マノスコレクションとは、20世紀初頭ギリシャの外交官故グレゴリオス・マノスが、全財産を投げ打ってジャポニスムに沸くパリやウイーンで収集した1万点以上のアジアの美術品。
 老後収集した美術品の全てを、ギリシャ政府に寄贈、現在は元イギリス総督府だったコルフ島の建物(国立コルフ・アジア美術館)で公開されている。

 マノスの死後およそ1世紀、美術品の存在はほぼ忘れられていたが、近年日本やイギリスの研究者に知られるようになり、昨年8月絵画・陶磁器などの本格的な調査が行われ、「写楽の肉筆画発見」となった。

 肉筆画に描かれているのは、「忠臣蔵二段目」の加古川本蔵を演ずる四代目松本幸四郎と娘・小浪の松本米三郎。一辺およそ18㎝の「竹紙」の絵は色鮮やかでほとんど退色していない。
 二人の芝居の上演記録によって、この絵は1795(寛政7)年5月の舞台を描いたものと推定されている。
 謎の絵師と言われる写楽、版画の方はこれまで140点余りが知られているが、肉筆がが公開されたのは世界でも初めてになる。

134_640135_640  左は喜多川歌麿の「歌撰恋の部 深く忍恋」、右は一楽亭栄水の「美人合浄瑠璃鏡 おそめ久松」。
 今回の展示には、写楽のほか1600に上る版画のコレクションの一部を持ってきた。

 歌川広重、歌川国芳、歌川国貞、柳川重信、葛飾北斎、渓斎栄泉、菊川英山、歌川豊国、魚屋北渓、鳥居清長、歌川春章、一筆斎文調、磯田湖龍斎、司馬江漢、鈴木晴信、鳥居清満、石川豊信、奥村政信、鳥居清信・・・など、世界に知られる日本の浮世絵師の作品が並ぶ。

136_640  とくに、マノスコレクションはその保存状態がよく、右の「風流六玉川」(喜多川歌麿)などは最高の状態で見つかったという。

 東地中海、イタリアとアルバニアに挟まれた世界遺産「コルフ島」。ホロメスの「オデュッセイア」で知られるこの島に、厖大な日本の文化が埋まっていたこともまた、驚きである。

 「写楽・幻の肉筆画」展は、江戸東京博物館で9月6日まで。 

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July 30, 2009

1312.緑陰を求め、東逗子に名刹を訪ねる

090729_002_640090729_004_640_2 今月の「ひとまくウオーキング」は、JR東逗子駅が起点、近くの「長谷山海宝院」に集合した。
 東逗子駅で下車したのは初めて。湘南にしては鄙びた駅だった。

090729_009_640090729_008_640_2 海宝院をこの地に建てたのは、三浦代官長谷川長綱。徳川家康配下のベテラン「官僚」として、家康の江戸入府とともに幕府直轄領のこの地を支配した。
 三浦半島は交通・軍事上の要衝の地。室町時代にこの一帯を支配していた小田原の後北条家の影響を注ぐため、家康は長綱を代官にしたという。

090729_012_640090729_011_640 左は、長綱が駿河から呼び寄せた之源臨乎和尚の墓。海宝院の開基となった和尚に並んで、代々の住職の墓が続く。
 すぐその下にあるのは、東京都知事石原慎太郎が建立した両親の墓。戦後逗子に住んだ石原一家は、ここを菩提寺にしている。
 その墓も、ウオーキングの「名所!」となってしまった。

090729_014_640090729_013_640090729_015_640 ホタルが生息する田越川に沿って建つのは「間宮山光照寺」。
 真言宗の寺だが、本尊が鎌倉後期に造られた「阿弥陀如来立像」というのが珍しい。
 1159年の平治の乱で、平清盛に敗れて処刑された悪源太こと源義平の菩提寺と言われるが、古文書等が紛失しているので定かではない。
 義平は、後に隣の鎌倉に幕府を設けた頼朝の兄である。

090729_016_640090729_019_640090729_022_640 義平、頼朝そして義経の父、源義朝の館跡にある「沼間山法勝寺」。その裏山を抜けて、今回の名刹巡りのハイライト「医王山来迎院神武寺」に向かう。
 標高90m、檀家が戦後再建した鐘楼は、近江八景・三井の晩鐘に因んで逗子八景・神武寺の晩鐘と呼ばれる。
 その先にあるのが、1594(文禄3)年に建てられた国の重要無形文化財の「薬師堂」(本堂)。中には、33年に1回ご開帳される秘仏・薬師如来が納められている。 
 
090729_025_640090729_029_640090729_030_640 神武寺は古くからの山岳信仰の霊地。724(神亀元)年に聖武天皇が行基に命じて造営させたと伝えられている。
 鎌倉時代、頼朝がここで平家追討の祈願をしたと言うが、秀吉が後北条を攻めたときに焼き討ちに合い、のち家康が復興させたという。
 客殿に安置されている釈迦如来や阿弥陀如来は、鎌倉の後藤系統の仏師が彫ったものだそうだ。

090729_035_640090729_034_640090729_038_640 アメリカ軍の兵士の住宅建設で度々話題になる、池子の山道を30分かけて下り、最後の名刹「青竜山東昌寺」に着く。
 元の名は東勝寺。1333(元弘3)年、後醍醐天皇に応じて挙兵した新田義貞の鎌倉攻めによって、870人の北条一族は、鎌倉東勝寺にて自刃、鎌倉幕府は滅びた。
 この時住職の信海和尚が本尊の大日如来を持って池子に逃れ、北条一門の霊を弔うためにこの寺を建立した。

090729_044_640090729_041_640090729_039_640 阿弥陀堂には、鎌倉扇が谷の仏師・三橋宮内忠之が1756(宝暦6)年に再建した、2m50㎝を超える巨仏がある。
 北条政子が実朝の供養にと、運慶に造らせた「丈六阿弥陀」が戦火で焼失したので、その代わりとして安置された。
 三橋家は、神武寺の後藤家と並ぶ鎌倉仏師の一派である。

 また東昌寺には、鎌倉幕府政所執事・二階堂行然の墓がある。国の重要文化財に指定された五輪の塔だった。
 頼朝の庶子忠久が薩摩の守護職に任じられ、島津庄を与えられた折に直接運営に当たったのが二階堂一族。わが先祖は、その二階堂に打ち負かされたらしいが、それはそれで懐かしい名前である。

 源平合戦から鎌倉時代、建武の中興から室町・戦国時代へ。その歴史を垣間見た東逗子の緑陰ウオーキングだった。

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July 29, 2009

1311.セントアンナの奇跡

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 オバマ大統領が、ミッシェル夫人との初デートで見た映画は「ドゥ・ザ・ライト・シング」('98)。
 アカデミー賞脚本賞にもノミネイトされたこの映画の脚本・監督がスパイク・リー、そして「マルコムX」('92)「インサイド・マン]('06)など常にアメリカ社会における黒人の姿を描いてきた。

 そのスパイク・リーが、黒人差別問題を根底に据え置きながらも、敵や味方、人種や言葉の壁を乗り越えて、「人間の絆」に希望を託した作品が「セントアンナの奇跡」である。

 現代のニューヨークのある郵便局、定年間近かの実直な黒人局員が、イタリア系の老人客をドイツ製の拳銃ルガーで射殺する。
 その殺人犯の部屋にあったのが、戦前フィレンチェのサンタ・トリニータ橋に飾られていたプリマヴェーラ(春)の彫像の頭部。
240_240  そこから話は1944年イタリアのトスカーナに飛ぶ。そこでは連合軍・ドイツ軍・ファシスト軍・パルチザンが入り乱れて、血生臭い殺戮が行われていた。
 そして4人のアメリカ軍黒人兵士が、一人の少年を助ける・・・・・。

 原作、そして脚本を書いたのは作曲家としても知られるジェームズ・マクブライト。トスカーナで戦った第92歩兵師団の兵士だった叔父から聞いた話が、基になる。
 それは三つの「事実」だった。

 1944年8月12日、トスカーナのセントアンナの教会をドイツ軍300人が襲撃、子供116人を含む老人や女性560人が虐殺された。
 5年前にこの地で行われた60周年の慰霊式典には、ドイツの内相が出席して正式に謝罪、2年前にはドイツ側の責任者3人に終身刑が言い渡された。

 1944年8月8日、16世紀に建築家アンマナーティが造ったフィレンチェのサンタ・トリニータ橋が、ドイツ軍によって破壊された。
 この橋には、メディチ家の結婚を祝って四季の彫像が飾られたが、春の彫像の頭部だけは行方不明になっている。

 1944年、イタリアの最前線に投入された「バファロー・ソルジャー」第92歩兵師団は、1万5000人の黒人兵士だけの実験部隊だった。そのうちの四分の一が戦死と、白人兵士の数倍の死傷率だった。
 同様に、日系二世による部隊もヨーロッパ戦線に送り込まれ、多くの犠牲者を出している。

333332_01_03_03  4人の兵士を演じたのは、ハリウッドで活躍する若手黒人俳優。デレク・ルーク(「大いなる陰謀」'07)、マイケル・イーリー(「7つの贈物」'08)、ラズ・アロンソ(「ワイルド・スピード」'09)、オマー・ベンソン・ミラー(「悲しみが乾くまで」'07)。333332_100x100_004
 天使のような少年は、地元トスカーナ出身の小学生マッティオ・スキアボルディ。他にフランチェスコ・フアーヴィーノ(「天使と悪魔」'09)などイタリアのベテラン俳優たちが、パルチザンや村の住民として出演している。

 2時間43分という長時間の作品だが、決して飽きさせない。ラスト、バハマの海岸でのシーンに、スパイク・リー監督は「オバマの時代」の希望を描く。
 ニュー・ヨーク大学院の教授でもあるリーは、おばま7の熱狂的な支持者としても知られている。 

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July 28, 2009

1310.湖のほとりで

20090511006fl00006viewrsz150x 銀座テアトルシネマは、連日満席だそうだ。先週末には、ゲストスピーカーによるイベントも行われた。

 新しい作品ではない。2年前に製作されたイタリア映画で、その年のヴェネチア国際映画祭の批評家週間で2部門受賞、翌年のイタリア・アカデミー賞(ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞)では史上最多とといわれる10部門を独占した。

 誤幣を恐れずに云うと、イタリア的な派手な映画ではない。静謐でストイックな作品なのだ。巨匠ナンニ・モレッティのもとで、長い間助監督を務めてきたアンドレア・モライヨーリの初監督作品、「ミステリーの女王」と言われるノルウエーの作家カリン・フォックスの「見知らぬ男の視線」を基に、舞台を北イタリアに移して描いた。

 オーストリアとスロベニアに国境を接する山間の静かな村、その村の湖のほとりで美しい少女の死体が発見された。
 この村に最近引っ越してきた中年の刑事が、この事件を追う。
 彼女と性的関係をもっていたという恋人。
 彼女がベビーシッターをしていた家、知的障害のあった子供は最近事故死し、それが原因か別居した夫婦。
 少女を、まるで父娘相姦のように溺愛する父親。敵のように憎しみ会う近所の親子一家。間違った両親の元に生まれてしまったと悩む思春期の子供。
 刑事もまた、若年性認知症に冒された妻を持つ・・・・・。

 映画は犯人探しのミステリーではない。静かな村に住むひとりひとりの、心の悩みと葛藤が事件を契機に浮かび上がっていく。
 人びとは「最も身近な人にも言えない悩み」を抱いて生きてきたのだ。
 そして絡み合った糸が解けた時、本当のやさしさが見えてくる。

333650_01_05_03  主演の刑事役はトニ・セルヴィッロ。昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した「ゴモラ」にも主演したイタリアのベテラン俳優である。
 他にヴァレリア・ゴリーノ(「レインマン」)、ファブリツイオ・ジフィーニ(「ハンニバル」)、アンナ・ボナイウート(「イル・ポスティーノ」)らが出演しているが、主演以外は覚えがない。
 

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July 27, 2009

1309.ウルトラミラクルラブストーリー

002_640 監督の感性との距離によって、眠くなる人、途中で退席する人、笑い転げる人、涙を流す人、感動する人とバラエティに富む反応が生まれる作品。
 だから衝撃的なラストシーンもまた、受け止め方は複雑になる。

 監督の名は横浜聡子、30歳。自主作品「ジャーマン+雨」で、日本映画監督協会新人賞を受賞した、新鋭の初長編デビュー作品なのだ。

 津軽出身の彼女は、津軽でオールロケ、セリフも全て津軽弁とトコトン故郷に拘った。

 「キャベツ」にもなり「熊」にもなる「いきもの」の精の様な主人公が、脳みそがなくても心臓が止まっても、トコトン恋をするミラクルな物語である。

332832_100x100_014  その主人公、農業を営む風変わりな青年を、これまた津軽出身の松山ケンイチが破天荒に演ずる。

332832_100x100_012  彼に振り回されるのは、東京からやってきた保母さん麻生久美子。交通事故で首が飛んでいってしまったモトカレの、クビを捜してもらおうとイタコの元を訪ねてきたのだ。

 イタコ(藤田弓子)にバッチャ(渡辺美佐子)、村医者(原田芳雄)に首なし男(ARATA)、みんながケンイチ青年に振り回されて、意外な結末を迎える。

332832_100x100_013  オーディションで選んだ地元の保育園児や小学生たちの、自然な演技に目を見張る。監督、主人公と津軽仲間に囲まれると、撮影も日常になる。

 「音」にも凝る。大友良英による知的障害者と即興演奏家によるプロジェクト、「音遊びの会」、彼らの「ノイズ」と「即興」がファンタジーを紡ぐ。

 エンディングは、ロック・バンド「100S」(ひゃくしき)の「そりゃそうだ」。
 映画もまた「そりゃそうだ」と納得して終わった。

 南国出身者にとっては、会話の半分は理解できなかったが、上空を飛ぶ農薬撒布のヘリは、たしかに言語不要で無気味だった。

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July 25, 2009

隅田川の花火(番外編)

090725_005_640090725_009_640090725_026_640   今夜は隅田川の花火大会。これまでも、このブログで度々紹介してきた。
 今回は、所用もあって両国には足を延ばさなかった。

090725_031_640090725_035_640090725_032_640   帰宅したのは終了間際。マンションのテラスから、デジカメで。
 ブログ番外編で紹介。画像をクリックすると、アップで見られます。

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1308.’09花クルー・ナイトツアー

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090724_002_640090724_010_640090724_006_640_2  朝潮運河沿いに「花・緑・水」をテーマ開かれたテラス、「晴海アイランド・トリトンスクエア」。

 ここでは、シーズン毎に「花クルー・ツアー」が行われる。専門家の案内と解説で、季節の花と緑を楽しむ催しである。
 夏のツアーは、昨年に続いて「ナイトツアー」。参加者14人が、懐中電灯片手に散策した。

  およそ20種類の花を鑑賞したが、コンパクト・デジカメで撮った数葉を紹介しよう。少々ボケてはいるが。

 トップの写真は「パキスタス ルテア」、別名「鬱金珊瑚」(ウコンサンゴ)。キツネノマゴ科という面白い植物名の仲間。

 次の写真は、夏の代表的な花「ハイビスカス」。「レモンイエロー」や「斑入り」「レインボー」など珍しい品種もあった。

090724_026_640_2090724_028_640_2  右の花は「コエビソウ」。花がコエビに似ているから命名されたのだが、黄色い「コエビ」も咲いていた。

 下の写真は左から「オミナエシ」。秋の七草のひとつとしてポピュラーな植物だが、久し振りに見た。

090724_024_640090724_023_640090724_015_640_2  続いて「ルドベキア」2種。キク科の多年草で、右が「プレリーサン」(大草原の太陽)と呼ばれる花、真ん中は「タカオ」。
 「マーガレットコスモス」などと同じ仲間で、鮮やかな黄色の花と濃緑色の葉のコントラスが夜でもはっきりと見える。

090724_008_640090724_019_640090724_021_640  あとは「ノーゼンカズラ」「ゲンペイカズラ」「ブットレア」「コンロンカ」「パキスパキス」「ハナタバコ」など。
 
 最後の写真は、夜空に赤い花を見せる「サルスベリ」。

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 次のクルーは、秋に「インフイオラータ」とともに開催。   

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July 24, 2009

1307.アマルフィ・女神の報酬

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Caserta_800_600Colosseo1_800_600Vaticano1_800_600  世界遺産「アマルフィ海岸」「カゼルタ宮殿」、そして「コロッセオ」「バチカン市国」など。
 イタリアの美しい光景が堪能出来るこの映画は、フジテレビ・グループが総力あげて製作した開局50周年記念作品である。

 エグゼクティブプロデューサーはもちろん亀山千広。あの「踊る大捜査線シリーズ」以降、フジテレビ「映画」製作陣を率いて次々とヒット作を出してきた。
 企画プロデューサーも、大多亮が引き受けた。フジのドラマを育ててきた彼は、映画「容疑者Xの献身」('08)もプロデュースした。
 そして監督は、フジのドラマディレクター西谷弘。「県庁の星」「容疑者Xの献身」に次ぐ3作目となる。
 作品のプロットと原作は、「ホワイトアウト」で吉川英治文学新人賞を受賞('95)した真保眞一が書いている。

Spagna_800_600_2  昨年暮れから3ヶ月、70名の日本人スタッフが滞在し、オール・イタリアロケで完成させたサスペンス・ミステリー「超」大作と謳う。
 日本人少女が誘拐され、少女の母とともにその救出に奔走する外交官が主人公。やがて事件は、大規模な連鎖テロの様相を見せ始める・・・・。

332676view007 その外交官は「踊る大捜査線」の常連、織田祐二。誘拐された少女の母親が、宝塚出身の天海裕希。
 他に、イタリア日本大使館研修生を戸田恵梨香(「デスノート・シリーズ」)、母親の友人で商社マンを佐藤浩市、フリーライター福山雅治、ローマ署警部ロッコ・ババレオ。

 映画の売りはもちろん、世界遺産の美しい風景とローマの観光地めぐりだが、もうひとつが「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」で1500万枚を売ったイタリアの歌姫、サラ・ブライトマンの歌と出演である。
 彼女は、北京オリンピックでも公式テーマソングを歌ったが、日本の映画に登場するのは始めてだ。

 タイトルとなった世界遺産の「アマルフィ」は、ナポリに近い風光明媚な保養地である。かってはヴェネチアと並ぶ海洋共和国として栄えた。
 ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが、愛する妖精の死を悲しみ、世界で最も美しい場所に亡骸を埋めて町を造ったと、言い伝えられている。

 ただ原作を読んでいない人は、映画のタイトルとストーリーがしっくりしないかも知れない。映画の舞台はほとんどローマであり、アマルフィの登場は少ないし「女神の報酬」の意味も判らない。
 また原作は、チェチェンにおけるロシア軍の住民虐殺がテロの背景として書かれているが、映画の方は架空の国となっている。
 さらにヴァチカンには、触れない。「天使と悪魔」を意識したのだろうか。

332676_100x100_005  と言う事は、あまり社会性を意識せず、娯楽作品として気楽に見てほしいというフジテレビからのメッセージが、そこにあるのかも知れない。

 先日の新聞に、日本からイタリアへの観光客が激減しているとあった。レストランは高くサービスは悪い。スリや引ったくりが多く、女性は危ない。
 この映画でも、そんなシーンをさらりと見せていたが。 

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July 23, 2009

1306.ふるさと納税

_640 県庁に勤めている高校の後輩が、昨年県の東京事務所に転勤してきた。「かごしま応援寄付金」を募るためである。
 彼は、高校の同窓会やふるさと会には必ず顔を出し、鹿児島への応援をお願いしている。

 彼の話によると、運動の成果も少しづつ上がってきており、「応援寄付金」つまり「ふるさと納税」の件数は2300件を超え、全国1位になったそうだ。
 金額の方は1億8000万と全国3位だが、これは一人で数億円をドカンと寄付した大阪や栃木の例があるからで、「貧者の浄財」という面では実質1位と言える。
 また他県では、寄付者に郷土の特産物など謝礼品を贈るところもあるが、鹿児島は礼状と寄付金の活用報告に留めているのがうれしい。無駄な出費をする必要はない。

 この制度は、ふるさとに寄付をすれば、所得税と住んでいる自治体での住民税が、一定額控除(軽減)される仕組みである。
 つまり財源に余裕がある都市と貧しい田舎との格差を、僅かでも埋めようという試みなのだ。

 私も昨年秋に、些少だが子供時代を過ごしたふるさとに寄付金を送った。そして最寄の税務署で所得税の確定申告を行った。

 ところが先日届いた東京都の「平成21年度特別区民税・都民税納税通知書」を開いて、首をかしげた。医療費控除や社会保険料控除等の所得控除の欄の何処を見ても、寄付金控除が記入されていない。
 ふるさとから届いた礼状と税申告の説明書では、所得税の確定申告をすれば自動的に住民税も控除されるとある。

 不審に思って区役所の税務課に電話したところ、納得できる説明がない。ようやく「納税通知者番号」でコンピューターのデータを開いてもらい、押し問答。結局改めて「寄付金受領証明書」のコピーを送る事で、再チェックをお願いした。

 結果は1週間後、「納税変更通知書」が送られてきて落着した。
 特別区民税は1万3500円の寄付金控除、都民税は9000円控除。税金総額は、2万2500円の減額となった。
 そして今日は、国民健康保険料の変更通知書が届いた。住民税とリンクする保険料も、2万1150円の減額となったのだ。

 「ふるさと納税制度によって、少額でも税収入が減るのは面白くない。クレームがなければ・・・」という事でもないだろうが、ふるさとに寄付金を送った人はもう一度、住民税をチェックしてみた方が良い。

 今年は2年目、「定額給付金」が2万円届いたので、それをそっくり送ることにした。

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July 22, 2009

1305.サンシャイン・クリーニング

332814_01_06_03  第79回アカデミー賞で2冠に輝いた「リトル・ミス・サンシャイン」のプロデューサー・チームが次に選んだのがこの作品。
 人生の負け組み姉妹を中心に、ダメ親父とその孫のほろ苦く心温まるヒューマンドラマである。         
                                                   

「家族・仕事・恋愛・・・・つらいこともあるけれど、一緒にいれば悲しみも洗い流せる」と、事件現場のクリーニングを始めた姉妹、さてその結末は。

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332814_100x100_001_2  二人姉妹役は、ハリウッド注目度№1の女優たち。
 姉、「ダウト~あるカトリック学校」('08)でアカデミー賞助演女優賞にノミネイトされたエイミー・アダムス。
 妹、「プラダを着た悪魔」('06)でゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネイトされたエミリー・ブラント。

 そしてダメ親父は、前作「リトル・ミス・サンシャイン」('06)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したアラン・アキン。孫がジェイソン・スペヴアック(「ミッシング」'08)である。

240_240b 監督は、ヒューマンな作品を得意とするニュージランド出身の女流監督クリスティン・ジェフス(「シルヴィア」'03)。
 カメラは彼女といつもコンビを組む、ジョン・トゥーンが担当した。

 ロケは、ニューメキシコ州のアルバカーキ。アメリカの何処にでもあるような、ファーストフード屋とレストランがある典型的な田舎町で行った。

 たった4館からスタートしたインディペンデント映画が、あっという間に全米各地に拡がったという。現今の世界で何となく負け組になってしまったアメリカ人の、心の襞にしみ込む作品だったのだ。 

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July 21, 2009

1304.盛夏・大阪

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090720_008_640090720_005_640090720_003_640   講演を頼まれて、夏本番の大阪に出かけた。
 終了後、久し振りに心斎橋筋を歩く。昔よく飲みに行った街だ。
 なぜかここで、田中元長野県知事に会う。来月の衆議院選挙では、隣の兵庫県から出馬するそうだ。

090720_011_640_2   戎橋向かいの大阪松竹座では、NINAGAWA歌舞伎「十二夜」が上演中だった。尾上菊之助、中村時蔵、市川亀治郎らが熱演している事だろう。

090720_013_640_2   道頓堀に歩くと、中座の「くいだおれ人形」とも対面した。
090720_041_640_3  新しくテナントを入れてこの日から再開、先ほど橋下知事もやってきてオープニング・セレモニーが開かれたのだそうだ。
 こんなところが、大阪らしい。

090720_019_640090720_015_640  火事で消失した法善寺横丁の店々も、新装成って開店中、水かけ地蔵も無事だった。
 昔馴染みの店に入って冷酒で時間を過ごし、ホテルに戻った。
 やはり大阪の夏は暑い。

090720_029_640090720_040_640090720_640  翌日は大手前にある大阪歴史博物館を訪る。

 7世紀の半ばの「難波宮」の跡地の一角に建てられた10階建ての博物館である。
 特集展示の「難波遷都」と特別展「大阪の祭り」を、2時間かけてみた。

 そう今週末は、「天神祭り」。大阪在勤中、舟に乗って大川で祭りを楽しんだ事を思い出す。

090720_031_640  昔の職場は跡形もない。難波宮の内裏跡にあったので、8年前に移転した。
 跡地は、遺跡調査の後「史跡難波宮跡公園」として整備される予定だったが、今は荒れ放題のままである。
 大阪市の財政が厳しく、手が回らないらしい。

 近くのホテルのレストランで大阪城を眺めながら、当時の同僚たちと旧交を暖めた。短い旅のひとコマである。

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July 20, 2009

1303.ノウイング

001_640_2 「デイザスター・ムービー」という映画のジャンルがあるそうだ。「Disaster」、つまり天災・災害を扱った一種のパニック映画である。

 「インディペンデンス・デイ」('96)「アルマゲドン」('98)「ディ・アフター・ツモロー」('04)「地球が静止する日」('08)、日本映画では「252生存者あり」('08)と思い出すだけでもかなりの数だ。
 災害の原因を、太陽系の異変、大隕石など天体側に求めるものと、異常気象に象徴される人類の驕とするものなど、様々だ。

 「ノウイング」は、そのディザスター・ムービーの極めつけと言われる。これまでの作品が、最後は地球も救われると安心して見ていられたが、今回はそうはいかない。地球は消滅してしまうのだ。
 映画は、それを追う。破滅の未来がすでに「通達」(Knowing)されていた事を。
 その「未来」を知った宇宙物理学者が、主人公である。

333520_100x100_001333520_100x100_005   オスカー俳優ニコラス・ケイジがその役だ。そして破滅する世界から必死に守ろうとする息子が、チャンドラー・カンタベリー。「ベンジャミン・バトン」でブラッド・ビットの子供時代を演じた話題の子役だ。

333520_100x100_002  そしてナディア・タウンゼント、ベン・メンデルソーン、ローズ・バーンとオーストラリアのスターたちが顔を並べる。もう一人の子役ララ・ロビンソンもオーストラリア出身だ。

 監督アレックス・プロヤスもオーストラリア出身。これまで「ダーク・シティ」('98)や「アイ、ロボット」('04)などを撮ってきたが、CGによる最先端映像技術を駆使したVFXは初めてだろう。
 そのVFXを担当したのが「ハリー・ポッター・シリーズ」のアニマル・ロジックである。航空機が墜落するシーン、地下鉄で電車が暴走するシーン、そしてラスト・・・・。最近のVFXでは、上出来と言える。

 SFパニック・サスペンスなのだが、トーンはナイト・シャマラン監督の「シックスセンス」('99)「ヴィレッジ」('04)に近い。
 もちろん先週紹介した「ウイッチマウンテン」のような、「都市伝説」も描かれる。
 「メン・イン・ブラック」も登場するし、最後は「円盤」に「宇宙人」である。

333520_100x100_010  その「ウイッチマウンテン」にも可愛い少年と少女が登場したが、今回も主人公の息子チャンドラーと、「未来を通達」した女性の孫娘ララが救いである。

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July 18, 2009

1302.海のエジプト展

129_640131_640 みなとみらい・パシフィコ横浜で開催されている「海のエジプト展」、入場料2300円と普段の展博に比べると高いが、見応えはある。

 展覧会では、BC700年頃の古代エジプト「末期王朝」からBC30年の「プトレマイオス朝」までの、海底に没したエジプトの歴史が紹介される。
 展示は、地中海に面した三つの街の海底遺跡から発掘された、およそ490点の至宝からなる。

Works01_04_3  まず巡礼の街「 カノープス」。ここにはセラピスの大神殿を訪ねて、地中海各地から人びとが集まってきた聖なる癒しの都だった。
 この遺構から見つかった「王妃の像」は、ギリシャ神話の愛の女神「アフロディテ」の化身、アルシノエ2世の像と云われている。アルシノエは、プトレマイオス2世の王妃である。

128_640  次の展示は神々とファラオ(王)が出会う都「ヘラクレイオン」。ギリシャ神話に登場する英雄ヘラクレスを祭った、巨大な神殿が建てられていた。
 この神殿の入り口に立っていた「豊穣の神ハピの巨像」(左の写真右)は、現存するエジプトの神像では最大のものだそうだ。
 肥沃な土をもたらすナイル川の氾濫をを象徴するハピは、頭上にパピルスの束をのせ供物台をかかえる。神にしては優しく穏やかな表情だった。

 観客がもっとも集まっていたのは「アレクサンドリア」、クレオパトラ(7世)女王が愛した都である。
 BC331年マケドニアのアレクサンドロス大王が建設したこの都市に、大王の武将プトレマイオスが王朝を開いた。以来18代まで、ローマの独裁官カエサルとクレオパトラの間に生まれたカエサリオンを最後に、王朝は終わる。

126_640  8世紀地震によって水没した古代都市からは、女王クレオパトラの横顔が刻まれた貨幣や、彼女の父ブレトマイオス12世のスフィンクス像、カエサリオンの頭部が発見された。
 鼻は潰され、首周辺も意図的に壊された息子カエサリオンの像は、クレオパトラの悲劇的な最後を思い出させる。

 ローマの将アントニウスと組んで、後のローマ皇帝オクタヴィアヌスと闘って破れた彼女は、毒蛇に乳房を咬ませて自殺したと伝えられる。アントニウスもまた、翌年自殺した。
 こうして334年続いたマケドニア王朝の血は、エジプトから消えた。
 アントニウスとクレオパトラの間に生まれたクレオパトラ・セレネの運命については、昔映画で見たことがある。

Egypt1_1024  今回の展示は、フランスの海洋考古学者フランク・ゴディオが、1992年から取り組んでいる発掘プロジェクトの成果の一部である。
 海底遺跡の発掘はまだ端緒という段階で、古代史マニアたちは、クレオパトラの墓の発見を待ち望んでいるという。
 発掘資金を出しているヒルティ財団にとっても、それが夢かも知れない。

 「海のエジプト展」は、9月23日まで。みなとみらい・パシフィコ横浜で。 

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July 17, 2009

1301.蟹工船

200806000055 原作は1929年に発表され翌年発禁処分を受けた、小林多喜二の同名小説。
 海上工場という劣悪な環境で働く労働者たちの闘いを描いたこの小説は、プロレタリア文学の最高峰と賞賛され歴史に名を刻んでいる。
 しかし作者の小林は、4年後築地警察署で拷問死した。30歳の若さである。

 昨年ある書店での1枚のPOPから火がついた。文庫本がなぜか飛ぶように売れ始め、マスコミが飛びついた。販売部数174万、社会現象化した「蟹工船」は、昨年の流行語のTOP10にも選ばれる。

Banner_8  「ちょっと待て、この現状、もしや『蟹工船』じゃないか?」とワーキングプアーは呟き、雨宮処凛は「知らないうちに、私たちは『蟹工船」に乗っていた」と解説する。
 そして急遽映画化された。

 「疾走」('05)や「さくらん」('07)を監督した元俳優のSABUが、脚本を書き自ら監督した。
 シュールでポップな手法で知られる彼は、この昭和初期の古典をスタイリュッシュな映像と独特のユーモアを交えて現代風にアレンジする。
 それが成功したかどうかは、世代や生きてきた環境によって評価は分かれるだろう。ただ意外と原作には忠実なのだ。

20090406003fl00003viewrsz150x_2  出演は、蟹工船の雑役夫、労働者側のリーダーに松田龍平(「剱岳」)。資本家の走狗、工場監督に西嶋秀俊(「休暇]'08)が扮する。
 松田はそれなりに味を出しているが、西嶋はミスキャストでかも知れない。もともと弱々しいインテリそのものの彼が、残虐な監督を演じているのだ。意外性を狙ったのかも知れないが。

 虐げられる雑役夫達は、高良健吾(「ハゲタカ」)、新井浩文(「ゆれる」'06)、柄本時生(「ガマの油」)、三浦誠己(「ニセ札」)、利重剛(「東南角部屋二階の女」'08)ら若手を並べた。
 彼等にとっては、いい経験だったかも知れないが、なにせ祖父の時代のお話、演技もセリフも硬い。。
 「資本論」とは云わないが、昔のプロパガンダの文章をそのまましゃべっている感じだ。

Mo6440  半世紀以上も前だったので記憶は薄いが、当時活躍していた俳優の山村聡が監督・脚本・出演した「蟹工船」は、迫力がありクライマックに向かっての怒りが強かった事を思い出す。
 森雅之、森川信、河野秋武ら今は鬼籍に入った役者達が、熱演していた。

 それと比べるのは酷だが、派遣や臨時工など若い労働者たちが置かれている現在の状況を思うと、今回の作品もそれなりのメッセージを社会に発しているのだろう。

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July 16, 2009

1300.ウイッチマウンテン

_640 1975年に公開された「星の国から来た仲間」をリメイクした、SFミステリ51709o9kfl__sl160__2 ー。
 情に厚いタクシー・ドライバーと宇宙から来たエイリアン兄妹との、決死の逃走劇である。
 原作は「未来少年コナン」で有名な、アレグサンダー・ケイの小説。

 作品の背景にはSFフアンやUFOオタクには見逃せない、いくつかの「都市伝説」がある。

333331_01_02_02  ひとつは1947年の「ロズウエル事件」。ニューメキシコ州ロズウエル郊外でそ空から落下した何らかの残骸を、軍の広報官が「空飛ぶ円盤」とプレス・リリース。
 その後慌てて取り消したが、UFO信者たちは「円盤はエイリアンの乗り物で遺体もあった。軍がこれを隠蔽している」と今も主張している。

 次が「エリア51」。ネバタ州にあるアメリカの空軍基地だが、厳しい立ち入り禁止区域で、空からの撮影も許されない。
 U-2やSR-71、ステルス機など機密性の強い飛行物体の試験飛行場とされているが、ここのスタッフだった物理学者が「この基地ではエイリアンとの交信が行われている」と暴露、今もその存在が興味の対象となっている。

 三番目が「メン・イン・ブラック」。
 未確認飛行物体=UFOやエイリアンを目撃した人たちは、黒服の男たちに脅迫される。「それを誰にもしゃべってはいけない」と。中には殺されたり、行方不明になった人もいる。どうも、政府関係者らしい。

 そして地図から消された山「ウイッチマウンテン」。最後だけは、映画が生んだ「都市伝説」だが。

 ディズニー映画らしく作りは丁寧である。こども達が楽しめる作品になっている。つまりお色気はない。

20090518004fl00004viewrsz150x  主演のタクシー・ドライバーは、ドウエイン・ジョンソン。「スコーピオン・キング]('02)で主役を演じた元大学アメフト選手、というより「ザ・ロック」の名で知られるプロレスラーである。その身体能力を生かした、キレのあるアクションで有名。

 エイリアンの兄妹が、カナダの子役出身アレクサンダー・ルドウイグ(「光の六つのしるし」'07)とアナソフィア・ログ。ログは「チャーリーとチョコレート工場」('05)で生意気な少女を演じたあの彼女だ。

 悪役、つまり「メン・イン・ブラック」がキアラン・ハインズ(「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」'07)。

 34年前の前作でエイリアン兄妹を演じたアイク・アイゼンマンとキム・リチャーズが、保安官と逃亡を助けるウエイトレスで出演、というサービスもある。

 監督は、問題のロズウエルで生まれたアンディ・フイックマンン(「ゲーム・プラン」'07)。どうしても撮りたかった作品だったのだ。
 助ける第2ユニット監督にスタント・コーディネーターのスコット・ロジャーズがついた。タクシー・ドライバーとの逃避行だから、当然カーチェイスが売り物。「ボーン・シリーズ」や「スパイダーマン・シリーズ」のカー・スタントで有名な監督である。

 アメリカでは、6月24日は「UFOの日」とされている。アメリカで初めてのUFOが、ワシントン州で発見された日なのだそうだ。
 映画の中では、ラスベガスで大掛かりな「UFOフェアー」が開かれていた。世界中から、UFOオタクと著名なUFO学者が集まる。 

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July 15, 2009

1299.サガン~悲しみよこんにちは~

D112017684 フランソワーズ・サガンの長編処女作「悲しみよ こんにちわ」、小説そのものは読んでいないが、1956年に映画化された作品は見た。

 父親の情事を知った少女の心の動きを描いたこの作品、少女セシルに扮したジーン・セバークのヘアスタイル「セシル・カット」が印象深い。
 父親デヴィッド・ニーヴン、ほかにデボラ・カー、ミレーヌ・ドモンジョ、ジュレット・グレコを想い出す。

 今回の作品、邦画では副題に「悲しみよ こんにちわ」とあるが、小説の映画化ではない。サガンその人を描いた伝記映画である。

 「孤独」「絶望」「裏切り」「別れ」・・・、裕福で幸せな家庭に恵まれながらも寂しがり屋。わずか18歳で名声と有り余る冨を手に入れた早熟な少女が、やがて華麗でスキャンダルナな人生を送っていく 姿を、フランスの女流監督ディアーヌ・キュリスが撮る。

20090302004fl00004viewrsz150x  そのサガンを演じたのが、「エディット・ピアフ」('07)で助演したシルヴィ・テスティユー。サガンの生まれ変わりのような彼女が、69歳の死までを熱演した。
332920_01_06_03  あとはそれぞれの実在した人物、サガンと15年間同居したスタイリストでファッション誌「エル」の編集長をジャンヌ・パリパール(「ランジェ公爵夫人」'07)。
 少女時代からの無二の親友だったアンドレ・マルローの娘をマルゴ・アパスカル(「幸せな日々」'99)。
 サガンに惚れた作家で新聞記者をリヨネル・アベランスキ(「つぐない」'07)。
 最初の夫をドウニ・ポダリデス(「ダ・ヴィンチコード」'06)らが演じている。

 サガンが、大作家として次々に小説や戯曲を発表していた頃の交遊関係は、あまり描かれていない。
 サルトル、ゲンズブール、カポーティ、カトリーヌ・ドヌーブ、ブリジット・バルドーらが有名だが、すでに知られすぎている著名人だけに敢えて避けたのだろう。

Photo  「悲しみよ こんにちわ」が22カ国で翻訳され印税364億円も稼いだが、ギャンブルなどの浪費で全て失う話や、コカインに溺れ警察に逮捕され有罪となったスキャンダル、最後は借金の山にまみれ自宅までも売り飛ばす破産者サガン。
 まさに愛も、名声も、冨も、全部手に入れて失う彼女を、キュリス監督はむしろ軽やかに描くのだ。

 サガンの小説は、「ある微笑」「夏に抱かれて」「愛をさがして」の3作読んだ。「ブラームスはお好き」は、映画作品として見た。邦題は確か「さよならをもう一度」('61)だったと思うが、イングリッド・バーグマン、イヴ・モンタン、アンソニー・パーキンスの絡みが面白かった。

 2004年心不全で逝去、69歳。今の私の年齢である。サガンと違って、平平凡凡に生きてきた人生の幸せをかみ締める。

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July 14, 2009

1298.月島草市

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090713_012_640090713_009_640090713_013_640  12日から今日まで、月島のもんじゃ通り(西仲通り)500メートルが、露店で埋まる。
 大正の頃から続いて来た「草市」である。

090713_015_640  「草」とは、お盆のための道具(麻幹、莚、溝はぎなど)や仏前のお花のこと。都内でも珍しいこの「季節市」は、近郊の農家がこうした品物を並べて市を開いた。
 しかし最近は「草」を売る店はほとんどなく、子供向けの縁日の露店が並ぶ。

090713_007_640090713_008_640090713_031_640   年毎に、草市で遊ぶ子供達が増えてきた。
 今年は、とくに浴衣姿の親子が目立つ。
 佃や勝鬨に、高層マンションが次々とオープン、若いサラリーマン家族が増えてきたからだ。

090713_020_640 090713_024_640090713_025_640 明治時代に埋め立てられ、石川島の造船所で働く人たちが住んでいた長屋も、すっかり様替りした。
 100年を超える下町の伝統も、こうして年毎に姿を新しくしていく。

 今年の都議選、マンションに住むお母さんたちの力なのか、7期も務めたベテランの議員が新人の女性の前に屈した。
  彼女は、子供達を教えてきた先生だった。私と同じマンションに住む、祭りの好きな女性である。 

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July 13, 2009

1297.ふるさとの集い

028_640  2年ぶりの「ふるさとの集い」である。東京・市谷のホテルに老若男女100人が集まった。

 これまでもこのブログで紹介した事があるが、私の故郷は九州の西南端の小さな村である。
 平成の大合併で周辺の市町村と合併し、名目上の人口は増えたが過疎化の率は反って高くなった。
 耕地は狭くまた砂地やシラス台地が多い。だから貧しい。明治の頃から多くの人たちが、国内はもとより海外へと働きに出た。
 「ふるさとの集い」は帰りそびれて、関東に残ってしまった人たちの会なのだ。

 中学や高校を卒業して上京、みんな必死に働いた。そして大メーカーの重役や私立大学の理事長などに出世した人もいる。
 しかし会合では「ワイガ」「オイガ」と、遠慮なく子供の頃の呼びかけが飛び交う。

031_640  独学で苦労して国会議員・大臣になった村の先輩もいた。亡くなった後は、その息子が参加する。元総理の彼は「話題の人」なので、今回はメッセージだけを遣した。

 私の役割は、毎回「村の今」を取材して報告する事だ。先日、村に残る同級生や親戚に電話して、様子を伺った。

 「高齢化はますます進み、秋の市議会選挙の候補者を選ぶのにも苦労している。合併したのだから何とか、地域の代表を送りたいのだが」

081214_023_640 024  「子供の頃遊んだ公民館が、国の登録有形文化財になった。明治の終りに、宝くじに当たった青年団のお金を基金に、村の有志たちが寄付を募って建てた3階建ての洋館である。
 同じく以前に指定された醤油醸造の石倉も、話題になっている」

025  「年に1回の砂浜の清掃が先日行われた。中学生以上お年寄りまで250人が1日掛かりで行う。ここは海がめの産卵地でもある」

 「その河口にあるハマボウの群生地域が、国の天然記念物に指定された。ここは絶滅危惧種であるクロツラヘラサギなど130種以上の鳥が生息する」

 「毎年12~15回炭焼き会を開催してる集落がある。製品の評判もいいが、目的は元気なお年寄り達のコミュニケーション。終わったあとの焼酎が美味い」

 「砂丘の松林の中にある蔵元の焼酎が、今年も国際食品コンクールで優秀賞に選ばれた。数年前は、愛飲者や専門家による国内のコンクールで最優秀にも選ばれている」

 「毎年4月に開かれている『幻の特攻基地』、万世特攻慰霊祭が平和記念館で。全国各地から遺族や旧隊員400人が参列した。地元の有志達がボランティアで世話している」

026  そして「恒例の吹上浜砂の祭典が、ゴールデンウイークの5日間開催され、県内外から15万8千人の観客が集まり大賑わいだった。今年は「星空夢物語」をテーマに、89基の砂像が登場した」

 会場での話題は、村の小学校出身の希望の星、鹿島アントラーズの大迫選手。昨日2回目のゴールを決めた。
 村のサッカー・グランドで鍛えた脚だ。

 故郷を離れて半世紀を超えた。せいぜい「ふるさと応援寄付金」(ふるさと納税)ぐらいしか役には立てないが、「昔操った杵柄」情報の交流が私の役割と思っている。
 秋には久し振りに帰省する予定、同級生70歳の集まりが開かれる。

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July 11, 2009

1296.MWームウー

332667_02_01_03  手塚治虫の作品は、結構読んでいるのだが「MW」は知らなかった。今年が生誕80周年、'70年代に「ビッグコミック」に連載していたというから、40代のの作品になる。最も油が乗り切っていた頃だろう。

 だからと言う訳ではないが、彼の作品の中では異彩を放つもののようだ。その過激な表現は議論を巻き起こし、作品はタブー扱いされてきた。
 その原作が、ついに映画化されたのだ。

 人間の原罪や政治悪を描くピカレスク作品と言える。つまり「悪人」を主人公として描き、その残虐な殺しをいわば「肯定」するのだ。
 手塚はその事で、逆説的に正義や生きることの尊さを問いただす。

 最近、こうした傾向の映画が増えてきた。「ダークナイト」や「ボーン・シリーズ」もそうだが、この作品は日本映画としてそれに挑戦したといえる。

 物語は、秘密を闇に葬るため、離島の住民全てが、在日米軍と政府に虐殺された事から始まる。その惨劇のなかで、たった二人の少年が生き延びた。
 そして16年後、である。一人は復讐に燃えたモンスター、一人は人間の原罪を背負う神父。「MW」と言う名の闇が産み落とした光と影が、サスペンス・エンタテインエントを生む。

 「MW」の意味については、手塚作品研究者の間でも諸説がある。
 「Man&Woman」の頭文字、または「Mad Weapon」の頭文字であると言う説。
 上下を逆さにしても同じ文字となることから、「価値観は常に反転する可能性がある」と皮肉を込めて、手塚はタイトルにしたと。
 ともかくその「MW」という記号から、復讐劇が始まるのである。

332667_100x100_007  復讐の鬼となったモンスター役、玉木宏がいい。「真夏のオリオン」では、潜水艦イー77の端正な艦長に扮したが、今回は全く逆の悪役である。表の顔はエリート外資銀行員、その天才的な頭脳と類い稀なる美貌を武器に、若い女性すら残虐に殺していく。

332667_100x100_002  一方の神父役は山田孝之。「鴨川ホルモー」に次ぐ出演だが、前作同様野暮ったい。同郷の若い俳優なので応援しているが、ちょっと役不足か。玉木を目立たせるためかも知れないが。

332667_100x100_008  脇だが準主役級なのが敏腕刑事役の石橋凌。「ローグアサシン]('07)など外国映画でも活躍している役者である。
 そして新聞記者に石田ゆり子。とくに「からみ」はない。

 冒頭のシーンは、タイ陸軍とバンコック警察の全面協力による現地ロケ。幹線道路を閉鎖してのカーチェイスは、なかなか迫力あったがどうも長すぎる。大掛かりだっただけに、長く使いたいのは気持ちとして判るが。
 またラストシーンもそうだ。戦車や重火器のそろった米軍基地、そして輸送機。これもちょっとつまむべきだった。

 ラスト、この物語は続きそうだ。早速近所の本屋に出かけ、小学館文庫コミック版「MW」を捜したが、売切れてしまったようだ。

 監督はテレビドラマ出身の岩本仁志、脚本は「デスノート」の大石哲也。

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July 10, 2009

1295.ディア・ドクター

003_640 河瀬直美と並んで国際的にも評価の高い女性監督、西川美和の最新作である。

 7年前に「蛇イチゴ」で長編監督デビュー、3年前に監督した「ゆれる」は毎日映画コンクール大賞はじめ、数々の賞を受賞した。
 深い心理描写と緻密な構成力は定評で、これからの日本映画界を背負う本格派監督と言われている。

 今回も原作・脚本・監督の全てを手がけた作品で、僻地とニセ医者と村人の物語である。

 無医村の村長たちが、ニセ医者に騙された事件は聞いた事がある。西川は、それを遠い何処かのお話で終わらせず、伊豆や熊野の僻村の診療所などを徹底的に取材、たった一人のお医者さんを「生命線」として生きるお年寄りたちの話を聞いた。

 そして僻地医療という切実な問題をモチーフにしながらも、「一体ニセモノとはなんなのか、ホンモノとそんなに違うのか」と人間の本質に迫る。

20090120003fl00003viewrsz150x332887_01_02_03  配役がいい。ニセ医者に笑福亭釣瓶をもってきた。
 テレビ「家族で乾杯」出演など、日本で一番顔を知られた男が、映画初主演。そのユーモアあふれたキャラクターが、ふと中年男の淋しさを見せる。

332887_01_04_02  そのニセ医者を、赤ヒゲ先生並に尊敬してしまう研修医が瑛太。こちらも「篤姫」恋人役小松帯刀で全国区。

 ベテランの看護師役もいい。「おくりびと」('08)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞の余喜美子。
 釣瓶に命を託す村の未亡人、八千草薫。その娘で都会の大病院の医師、井川遥。
 ちょっと胡散臭い薬問屋のセールスマン、香川照之。
 1シーンだけだが、町の救急医に中村勘三郎も顔を出す。

 茨城県常陸大田市でロケした、棚田の風景が印象に残る。この「エメラルド色の棚田を求めて、全国をロケしたという。

 小さな村で起きた大事件の顛末は?さすが笑福亭釣瓶である。 

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July 09, 2009

1294.それでも恋するバルセロナ

331826_100x100_002_4  俳優、コメディアン、監督、脚本家、戯曲家、作家、クラリネット奏者・・・ウディ・アレン74歳。まだまだ、少しも枯れてはいない。

 生き方違う2人のヤンキー娘とバルセロナのセクシーな男性、そしてエキセントリックな元妻、その四角関係を情熱的かつコミカルに描いたのが、この映画である。

 またガウディの建築から路地裏まで、余す所なくバルセロナを見せる「観光映画」でもある。

331826_100x100_002_2331826view009 その4人、人生に迷っているヤンキー娘スカーレット・ヨハンソンは、「マッチ・ポント」「タロット・カード殺人事件」に告ぐ3本目のアレン作品。すっかり彼のミューズになった。

 慎ましく現実的なもう一人は、レベッカ・ホール。「フロスト×ニクソン」('09)にも顔を出したが、もともとイギリスの舞台女優である。
 スペインのあまりにも情熱的な女は、ペネロペ・クルス。アカデミー賞にもノミネイトされたスペイン映画「ボルベール」('06)を見たアレンが、スカウトした。この作品で今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞した。

331826_100x100_003 そしてこの3人にモテモテの色男が、ハビエル・バルディム。彼もまた「ノーカントリー」('07)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したスペインの俳優である。あお怖いオカッパ頭の殺人鬼から、色気ムンムンのセクシーな男に変身した。

 「愛は満たされるとロマンスを失う」と、ウディ・アレンは皮肉タップリに恋を描く。
 「取り憑かれたような熱狂的愛」(レベッカ+ハビエル)、「夢中で芸術的な愛」(ベネロペ+スカーレット+ハビエル)、「無限で不可能な愛」(ベネロペ+ハビエル)の四角関係を、アレンは全て真っ当な「愛」だというのだ。
 だから映画の中の全ての恋は、ハッピーエンドにはならない。

 四角関係の鍵を握るレベッカの伯母夫婦、パトリシア・クラークソンとケヴィン・ダンもアンハッピーだし、結婚したレベッカとクリス・メッシーナもなんとなくアンハッピーなのだ。

 バルセロナ、友人が仕事で滞在中に一度は訪ねようと思っていたが、なぜか実現しなかった。幸いに今回、ウディ・アレンのガイドでちょっぴり楽しめた。

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July 08, 2009

1293.入谷・朝顔市

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090708_010_640090708_019_640090708_026_640 毎年七夕を挟んで開かれる入谷の朝顔市。
 昨年は、サミットのため無理に延ばされたが(交通整理のお巡りさんがいなくて)、今年は予定通りだった。

090708_014_640090708_013_640090708_015_640   ところが今年は、お客さんが少ない。下町に移ってから毎年出かけているのだが、こんな事は初めてだ。
 いつもなら押し合いへし合いの参道も、ご覧の通り。売り子のお姉さんも、手持ち無沙汰の様子である。
 例年なら2万鉢は売れる朝顔市、今年はその半分だと植木屋さんは嘆いていた。
 街の不景気が、こんなところにも見られるのだ。

090708_021_640090708_022_640  朝顔市が開かれているのは、入谷の仏立山真源寺の境内と参道。
 「恐れ入谷の鬼子母神」と、大田蜀山人が狂歌でうたったあの境内である。

 もともと入谷の田圃の土が朝顔作りに適していたので、近くの御徒町に住んでいた下級武士たちが、内職として「奇品つくり」をしていたのが由来らしい。
 江戸時代は大変栄えた様だが、明治から大正にかけての都市化え廃れた。

 復活したのは戦後の1948(昭和23)年から。台東区も力を入れ、夏の風物詩として定着した。

090708_012_640  今年も例年通り、「大輪咲・団十郎」をメインに4種類の花が楽しめる行燈造り2000円を買った。
 歌舞伎の成田屋のシンボルカラー、柿茶色の朝顔が咲くのを楽しみにしている。

 朝顔市は、今夜8時頃まで。 地下鉄日比谷線・入谷駅下車1分。   

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July 07, 2009

1292.愛を読むひと

1024b 日本でも海外文学としては異例のミリオン・セラーとなった、「朗読者」の映画化。
 ドイツの法学教授ベルンハルト・シュリンクが、自伝的な要素を含めて書いた愛の物語である。
 青春と時代の記憶が、人間の心にどんな痕跡を残したか。それを男の側から描いた。

332362_04_06_03332362_01_02_02   だから主役は、朗読者を演じたレイフ・ファインズ(「イングリッシュ・ペイシェント」'96)であり、その少年時代役のデヴィッド・クロス(ドイツの若手俳優)である。

 しかし本当の主役は、ケイト・ウインスレットといえる。36歳から66歳までを演じた彼女の演技力によって、この作品はベストテンに数えられる名作となった。
 彼女はこの作品で、今年のゴールデン・グローブ賞で助演女優賞を受賞したが、アカデミー賞の審査では会員の要請で主演女優賞にノミネイトされ、その結果オスカーを受賞したのだ。

 監督はイギリスの舞台監督出身スティーヴン・ダルドリー。「リトル・ダンサー」('00)「めぐりあう時間たち」('02)についでこれが3作目、いずれもアカデミー賞監督賞にノミネイトされた。
 そのダルドリーをプロデューサーとして支えたのが、オスカー監督であるアンソニー・ミンゲラとシドニー・ポラック。10年前にこの原作の映画化権を得たミンゲラは、自分で監督する予定だったらしい。
 惜しくとも二人は映画の完成を待たずに、昨年相次いで亡くなった。

20090116003fl00003viewrsz150x  お話は、偶然出逢った15歳の少年と36歳の女性の、切なく官能的な愛の物語から始まり、禁断の愛と悲壮な運命へと進む。
 お話を繋ぐのは、情事の後に少年が読んで聞かせた古典「オデュッセイア」から「チャタレーの恋人」「ドクトル・ニバゴ」「犬を連れた奥さん」・・・。
 その朗読は、少年が弁護士となった30年後まで続く。

 映画はアメリカ・ドイツの合作で、主なロケはベルリン、ゲルリッツ、ケルンで行われた
 イギリス出身の監督にイギリス出身の二人の俳優(ケイト・ウインスレット、レイ・ファンズ)、ドイツのスタッフにドイツの俳優たち(デヴィッド・クロス、ブルーノ・ガンツ)。
 年齢や国境を越えて読まれた、映画の原作にふさわしい組み合わせとなった。

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July 05, 2009

1291.古典芸能三昧

_640  この週末は、古典芸能を楽しんだ。昨日は国立劇場で「歌舞伎鑑賞教室」、今日は渋谷・東急セルリアンタワー能楽堂での「猿楽会 全国大会」である。

 歌舞伎鑑賞教室は、国立劇場を運営する日本芸術文化振興会が年数回行うもので、昨日は76回目。
 
013_640_2  もともと大衆のエンターテインメントして発展してきた歌舞伎が、どうも敷居が高くなってしまったという事で、若い人たちやサラリーマンに歌舞伎の魅力を知ってもらおうというのが、主催者側の狙いである。

 毎回、若手役者による歌舞伎の舞台や所作の基本の紹介があった後、ポピュラーな演目が上演される。
 我々素人にとっては基本の勉強になるので、毎回「ひとまく」の有志で参加している。
 7月はいつも修学旅行の高校生や、若い外国人が鑑賞に来ているが、昨日も会場は満席だった。

 演目の方は、歌舞伎十八番のうち「矢の根」。大薩摩の語りと三味線が加わる。
 正月恒例の「曽我狂言」のひとつで、1729(享保14)年に江戸・中村座で二代目市川団十郎が初演した。その後団十郎家のお家芸として十八番に加えられたが、いつも大当たり。座元は蔵を建てて矢の根蔵とよんだ。矢じり(根)の小道具が、題名となった。

 敵の工藤祐経に兄十郎が捕らえられた夢を見た弟五郎が、裸馬にまたがり大根をムチにして工藤の館に駆け出していく、という単純なお話だが、全体に洒落っ気がありおおらかだ。
 大薩摩の語りや台詞も難解だが、ウイットに富んでいる。その上、今回は左右の電光掲示版に語りも映し出されるので解かり易い。

 「虎と見て、石に田作り掻膾、矢立の酢牛蒡こごり大根、一寸の鮒に昆布の魂、たとえば祐経せち汁の・・・・」と、正月料理の語呂合わせの台詞。
 二本隈に油で固めた「車鬢」と、代表的な荒事のこしらえ出てくる曽我五郎と、歌舞伎ならではの演出に満ちた一幕だった。
 出演は、曽我五郎・市川男女蔵、十郎・中村亀鶴ほか。

 歌舞伎らしいといえばもう一本も「藤娘」、舞踏劇の代表作である。藤の精が大津絵そのままの姿で登場したあと、萌黄色と朱の片身替り、そして藤色の振袖、赤の振袖と五変化の所作。
 女形の魅力が凝縮されたこの舞踊を、今年21歳になる中村梅枝が始めて舞った。

019_640 今日は「狂言」。茂山忠三郎の率いる「猿楽会」のメンバーによる競演である。朝11時から夜まで、14の狂言と、三つの小舞、手話による狂言や、外国人のお弟子さんも登場するなど盛りだくさんだった。

017_640  ひとまく会員の島田さんが、トップで「末広がり」を演じた。狂言歴30年、サラリーマンを続けながら精進してきた彼、贔屓目でなくプロの域に達していた。
 我々応援団13人、精いっぱいの拍手を贈る。

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July 04, 2009

1290.剱岳 点の記

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1024_768_41024_768_31024_768_2  ニッポンの映画人たちが、本物の「日本映画」を撮った。この言葉に間違いはなかった。

 「こんな時代だからこそ、挑むべき『真実の物語』『本物の映画』がある。」
 そして木村監督は言う。「これは撮影ではない。"行"である」と。

 日本映画界を背負ってきた名カメラマン木村大作、この13日で70歳になる。「八甲田山」('77)「駅STATION」('81)「鉄道屋(ぽっぽや)」('99)など名作の数々を撮ってきた。その数は50本になるという。
 「剣岳 点の記」は、その彼が50年の映画人生全てをかけて撮った、初めての監督作品なのだ。

 原作は「八甲田 死の彷徨」「富士山頂」などを書いた新田次郎。「日本地図完成」という使命をはたすため、立山連峰27の頂に三角点を設置した、明治人の高潔な生き様を記した新田文学の白眉である。

332002_100x100_013332002_100x100_008   日本海を私的旅行中の木村が、ふと思い立って「剱岳」を見に行った事から、企画はスタートした。その年すぐにシナリオハンティング、ロケハン、そして翌'06年4月にはわずか5人のスタッフで実景の撮影が始まった。
 同年の夏に2日目の撮影、この時木村は始めて自力で剱岳の頂上に立ったという。

332002_100x100_005332002_100x100_010   今回の作品を撮るため、翌年秋まで200日のロケを行っている。100年前に測量隊が実際に登り三角点を設置した立山連峰の峰々を、一つずつ忠実にに登って撮影した。CGなどは使わず、ストーリーを追って順に撮って行くという、徹底したリアリズムを追求してる。
 ある人は、俳優を使ってはいるが、ドキュメンタリー映画そのものだという。

 機材や荷物の運搬も、ヘリなどは一切使っていない。キャストもふくめスタッフたちは大きな荷物背負い、歩いて山を目指す。泊まる場所も天幕か山小屋、全員が明治の測量隊を追体験しながら製作したのだ。

332002_100x100_001332002_100x100_009   ともかく立山連峰の自然が美しい。そして厳しい。
 決して名誉のためでもなく、利のためでもない。仕事に誇りをもって挑む男たち。
 物語に登場した人物たち同様、キャストもスタッフも本物の日本映画に挑んだ。

 ラストタイトルに紹介される「仲間たち」。浅野忠信、香川照之、松田龍平、宮崎あおい、仲村トオル、小沢征悦、井川比佐志、国村隼、夏八木勲、役所広司・・・・・・・。音楽・池辺晋一郎。

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July 03, 2009

1289.世界報道写真展

116_640  毎年開催される「世界報道写真展」。今年は東京都写真美術館で8月9日まで展示されている。
 この展覧会は、オランダに本部がある世界報道写真財団が行うプロのカメラマンを対象にした「世界報道写真コンテスト」の入賞作品展。
 52回目を迎える今年のコンテストには、124ヵ国から5508人、9万6268点もの応募があった。この数は過去最高だそうだ。
 東京展には、パネル60組およそ200点の入賞作品が並んでいた。

 左ポスターの写真は大賞を受賞したアメリカのアンソニー・スアウの作品。タイム誌に掲載されたものだが、アメリカの経済危機を象徴した写真で、立ち退きを命じられた住人が退去したかどうかチェックする警官の姿が写る。恐る恐る銃を構えている姿、アメリカの現実だ。

120119121  左の写真は「ニュースの中の人びと」の部・組写真1位カリー・シェル(アメリカ)のアメリカ大統領選の一コマ。タイム誌に掲載されたもので、疲れたオバマ夫人がバクラに寄りかかっている微笑ましいスナップ。

 真ん中は同じ部で単写真1位、日本の千葉康由(AFP通信)のショット。弓矢で闘うケニアの部族間抗争、接近戦はないが死者も多数出たと、コメントにあった。

 上左は、「スポットニュース」の部3位、ヴォイチェフ・グルゼンスキー(ポーランド)のグルジア紛争の写真。今回「戦場写真」の入賞作品は、このグルジア関係とパレスチナ関連で、イラクやアフガニスタンはなかった。
 ほかは、四川大地震、北京オリンピックが 多かった。

 プロの報道カメラマンの写真の中から、さらに選りすぐったものだけに、視点がはっきり定まった写真が並んで見応えがある。

122_640123 なお同じ写真美術館の2階展示室では、朝日新聞社に在籍していた景山光洋、吉岡専造ら戦前・戦後のスタッフカメラマンの撮った写真展、「プレスカメラマンストーリー」が開かれている。

 こちらの方はこの日曜日・5日までだが、新聞やグラフ誌、週刊誌で過去に見た写真が並んでいた。
 なかでも、ベトナム従軍カメラマン秋元啓一が撮った「銃殺ーある高校生の死」、ベトコンと疑われたベトナムの高校生の公開処刑の組写真は、当時もそうだったが何回見てもショックを覚える。

 地下1階展示室・「世界報道写真展」 観覧料 700円。
 2階展示室「プレスカメラマンストーリー」 500円。

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July 02, 2009

1288.牡丹亭

002_640 歌舞伎の舞台をハイビジョンカメラで撮影し、デジタル上映する「シネマ歌舞伎」。今回は歌舞伎ではなく、中国・昆劇の舞台が東劇で再現された。

 演目は今年3月中国・蘇州で上演された「牡丹亭」。明代の劇作家・湯顕祖の代表作「牡丹亭還魂記」を、日本の歌舞伎役者坂東玉三郎が主役として客演したもの。共演は蘇州昆劇院のみなさん。

 物語は、美女・杜麗娘が春のうたた寝の中で、柳夢梅という若者に恋をし歓喜の時を過ごしたが、それははかない夢の中での出来事・・・・・。その恋が忘れられぬ美女は、想いの余り病に罹り儚くも世を去る。そして若者は・・・・というあらすじ。

 「昆劇」は現在の江蘇省崑山で、明の時代から清朝230年に興隆した中国伝統演劇。ユネスコの世界無形遺産にも指定されている、地方劇である。
 中国では「百劇の祖」と呼ばれ、その後発展した「京劇」や「川劇」「湘劇」などに大きな影響を与えた。
 また「昆劇」は、歌・舞踊・台詞・動作を一体とした総合舞台芸術で、演目も長編の「伝奇」ものから単独の一幕ものまでと豊富、脚本・構成の素晴らしさと文学性が高い評価を得ている。
 しかしその一方で、蘇州語の四声を重んじるため、江蘇省外への展開は弱い。

20090511015fl00015viewrsz150x  玉三郎は、かねてから歌舞伎より伝統の長い「昆劇」に強い関心を持ち、その芸術性を追求してきた。
 そして昨年、「牡丹亭」の一部を北京で公演、今回は「遊園」「驚夢」「堆花」「写真」「離魂」に「叫画」「幽媾」「回生」の三幕を加え、それも発祥の地蘇州で一挙上演したのである。

 今回の公演で玉三郎は芸術監督も兼ねながら、蘇州語による台詞・歌そして立女形としての華麗な演技をみせ、観客の絶大な拍手を浴びた。
333703_01_02_02  とくに現代の昆劇では男旦(女形)の伝統が消え、ヒロインとしての女形の登場は70年ぶりだったそうだ。
 中国の新聞は「梅蘭芳(メイランファン)が昆劇の舞台の上に蘇った」と大賛辞を贈っている。

 玉三郎は「昆劇を遺産として博物館入りさせるのではなく、演じ続ける事で伝統をさらに発展させなければならない」という。
 彼の迫真の演技は、中国の若い役者たちににとっても大きな刺激になったに違いない。

 歌舞伎シネマ特別編では、第1部をドキュメンタリー編とし、蘇州での16日間にわたる玉三郎と昆劇院の劇団員の舞台づくりを見せる。そして第2部が「牡丹亭」八幕となる。
 休憩を挟んだ145分、玉三郎フアンはもとより映画フアンにとっても見応えのあるシネマだった。 

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July 01, 2009

1287.真夏のオリオン

Orion_wp01_s 潜水艦を舞台にした映画に、「眼下の敵」という名作がある。1957年のアメリカ映画、ドイツUボートの艦長クルト・ユルゲンス、アメリカ駆逐艦艦長ロバート・ミッチャム。二人の艦長が繰り広げる、息詰るような戦いとシーマンシップは、今も忘れない。

 「真夏のオリオン」の企画の出発点には、この作品があった。と同時に「インディアナポリス」を轟沈させた日本海軍潜水艦イー58と、最後まで人間魚雷「回天」を出撃させなかった橋本艦長という実在人物の存在があった。
 さらに橋本艦長をモデルにした、池上司の「電撃深度一九・五」という著作があった。そして福井晴敏が「60年を経て届いた一枚の楽譜・真夏のオリオン」で物語りを結ぶ。

Orion_wp02_s  物語の舞台は、第2次世界大戦の末期、沖縄南東海域。
 日本本土上陸を目指すアメリカの補給船団を阻止するため、最後の砦となったのは潜水艦イー77。その潜水艦に挑むのは巨大戦力を誇るアメリカ駆逐艦。
 日本海軍潜水艦イー77の若き艦長と、アメリカ海軍きってのサブマリン・ハンター、パーシバル艦長との戦いは始まる。

 真夏の夜明けに輝くオリオンは船乗り達にとっては吉兆のしるし。その「真夏のオリオン」にこめた願いが、敵味方を超えた誇り高き男たちの絆を繋いだのだ。

332860_100x100_001332860_100x100_010   出演はイー77艦長に玉木宏、軍医長・平岡裕太、航海長・吹越満、機関長・吉田栄作水雷長・益岡徹、回天乗組員・黄川田将也ほか。
 楽譜「真夏のオリオン」を書いた艦長の恋人に北川景子、その兄で潜水艦イ-81艦長が堂珍嘉邦、元水雷員の現在を鈴木瑞穂が演ずる。そして米軍駆逐艦パーシバル艦長は、デイビッド・ウイニングという配役である。

 監修および脚本を書いたのは、作家の福井晴敏。映画化された「亡国ノイージス」('99)で大藪晴彦賞、「終戦のローレライ」('03)で吉川英治文学賞を得ている。
 監督は篠原哲雄(「地下鉄に乗って」'07)、音楽岩代太郎(「レッドクリフ」'09)。

 シーンの大部分を占める潜水艦内部の撮影は、東宝スタジオに「イー77潜水艦」の巨大セットを組んで行った。
 また駆逐艦パーシバルは、第2次世界大戦に参戦し現在ニューヨーク州に保存されている「DE766」で撮影。また海上のシーンは、メキシコ海軍の協力を得てアメリカから譲りうけた「D-111」をメキシコ湾に航行させて撮っている。
 この「D-111」もまた、サブマリン・ハンターとして戦時中活躍した駆逐艦だそうだ。

 クライマックス、イー77艦長が生み出した「フェイク」というべき作戦、それが「深度一九・五」である。

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