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September 30, 2009

1363.ココ・アヴァン・シャネル

0915pop 孤児として育ち、お針子をしながら田舎のキャバレーで唄っていたココと呼ばれた小娘。後にファッションを通じて女性の解放をうたう、「シャネル」が誕生するまでの半生を描いた伝記物語である。

 ブログ1324号(8.23)で紹介した映画「ココ・シャネル」は、全生涯を描いたアメリカ映画で、主役はシャリー・マクレーンだったが、今回はフランス映画。セリフはもちろんフランス語。

333578_100x100_005  「恍惚」('03)の女流監督、ルクセンヴルグ出身のアンヌ・フオンテーヌが主役ココに選んだのは、オドレイ・トトゥ。
 「アメリ」('01)「ダ・ヴィンチ・コード」('06)に出演し、国際的にも活躍するフランス女優。
 小柄で華奢な彼女、意思の強さを見せる黒い眸は、生前のシャネルを彷彿させるという。
 この作品は、国際ブランド「メゾン・シャネル」の全面協力で製作された。

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 ココがシャネルの名声をつかむきっかけになった背景には、2人の男の存在がある。
 一人は、ココが押しかけ愛人となったフランスの大富豪の元軍人。ブノワ・ポールヴィールド(「ナルコ」'04)が演ずる。
 もう一人はココが心から愛した恋人、イギリスの実業家。その役は、アレッサンドロ・ニヴォラ(「アイズ」'08)。
 友人同士でもあるこの2人とココの心の揺れが、フランスの田園風景の中で丁寧に描かれる。

333578_100x100_008333578_100x100_006 コルセットから女性を解放し、ジャージーを男から奪ったココ。
 「シャネルはデザイナーを目指したのではない。ただサバイバルするために、帽子を作り洋服を作った」と、ある女性は評する。

 来年早々には、香水「N゜5」と音楽「春の祭典」誕生秘話、「シャネル&ストラヴィンスキー」も公開される。
 来年は、ココが「シャネル」をパリに開店して100年目にあたる年だそうだ。 

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September 29, 2009

1362.神楽坂・路地裏散歩

090928_060_640  昔の職場の友人達と神楽坂で懇談した。
 神楽坂は久し振り、早めに着いたので路地裏を歩く。山の手の雰囲気と下町の親しみやすさを味わえる街だと、ここ数年人気が高い。

090928_003_640090928_004_640090928_006_640   スタートは、地下鉄有楽町線飯田橋駅。
 いつもの様に神楽坂通りの坂道を登らず、外堀通り東京理科大のキャンパスに沿って下り右折、緩やかな石畳の路地に入る。
 理科大の前身は、「東京物理学校」。1881年夜間学校としてスタート、私立では唯一の理系専門学校として知られる。夏目漱石の小説「坊ちゃん」の主人公の数学教師は、この物理学校出身とのこと。

090928_014_640_3090928_024_640   路地の先に見えたのは若宮八幡。
 「神楽坂」の名は、この神社の神楽の音が、坂道まで聞こえた事に由来する。

 その先、小栗通りを左折すると「芸者小道」。
090928_026_640_3090928_025_640_3  ここはフジテレビ「拝啓父上様」(脚本:倉本聡)の舞台として、有名になったところ。

 料亭の若い板前(二宮和也)は、この石段でリンゴの君(黒木メイサ)に出会う。母親(高島礼子)、料亭の一人娘(福田沙紀)、花板(梅宮辰夫)。
 2年前の正月から11回シリーズで放送されたドラマには大ヒット、森光子や小林桂樹も出演して神楽坂が全国区になった。

090928_055_640090928_054_640  神楽坂は、もともとこの上の屋敷の住人・三代将軍家光の大老酒井若狭守が、江戸城に登城するため作られた階段道。
 1792(寛政4)年、大火で焼け出された毘沙門天善国寺がここに移され、門前町が開かれてから賑やかになった。

090928_058_640_2  維新後は、軍人や文化人の大邸宅が並ぶ。夏目漱石、小泉八雲、尾崎紅葉、泉鏡花、北原白秋らもこの界隈に住み、神楽坂を題材に小説を書く。

 大正時代から昭和にかけては、花街として栄えた。本多の殿様屋敷の前は「本多横丁」、左右の路地に料亭が並んだ。

 大震災による焼失も免れたため、日本橋や銀座から商人も移転、ここは「山の手銀座」と呼ばれる。

090928_035_640090928_044_640090928_047_640_2  「かくれんぼ横丁」 「軽子坂」「神楽小路」・・・。
 石畳に黒塀、芸者の数は30人と少なくなったが、昭和の初めの最盛期は、150の店に600人の芸者で賑わったという。

 およそ1時間の散策、再び芸者小路に戻って友人達と合流。「別亭・鳥茶屋」で、名代「うどん鍋(すき)」を味わいながら秋の一夜を楽しんだ。

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September 27, 2009

1361.リミッツ・オブ・コントロール

001_640  「自分こそ偉大だと思う男を墓場に送れー。」
 コードネーム「孤独な男」に与えられた暗殺指令は、ただそれだけだった。男はスペイン・マドリッドからアルメリア、さらにサンホセ、セビリアと孤独な旅を続ける。

20090824009fl00009viewrsz150x  途中出逢ったエージェントたちは、暗号の入ったマッチ箱を渡すだけ。
 現実と非現実が交錯するオフ・ビートな世界を、「孤独な男」はさまよう・・・・ という、ハードボイルド・ムービー。

 インディペンデント映画の寵児といわれたジム・ジャームッシュ脚本・監督作品。
 「コーヒー&シガレッツ」('03)「ブロークン・フラワーズ」('05)など、彼の幻想的な作品はカンヌなど国際映画祭を沸かせてきた。
 その彼が主役の「孤独な男」に選んだのは、コートシボワール出身の俳優イザック・ド・バンコレ。彼とは4本目の共同作業になる。

333922_01_02_03  主役が旅の途中で出会うエージェントたち、コードネーム:ブロンドはティルダ・スウィントン。「フィクサー」('07)でアカデミー賞助演女優賞を受賞したスコットランド出身の女優である。

333922_01_03_03  「バベル」('06)のメキシコ人俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルは、コードネイム:メキシコ人。それに工藤夕貴が、コードネイム:モレキュール(分子)という訳の判らない役。
 アレックス・デスカスやジャン=フランソワ・スティブナン、ジョン・ハートなどクールなキャストが揃っている。

 そして最後に登場したのが、「ロスト・イン・トランスレーション」('03)のビル・マーレイ。コードネイム:アメリカ人だが、そこで想像力が限界を超えた。

 撮影は「花様年華」のクリストファー・ドイル。トリップするようなカメラワークである。その上、音楽が日本のロックバンド「Boris」。サイケデリック・ノイズ・メタルなのだから、ますます 幻想的になる。

 そう、サスペンス作品なのだが、そのサスペンスの出現を待っているうちに眠くなってしまう「哲学的な芸術映画」になっている。
 時々コードネイム:ヌードという全裸の美女が、「孤独な男」に添い寝してくれるので目がさめる。
 しかし男は、エスプレッソ2杯飲むだけで、セックスも携帯も銃も嫌いだ。だからガンやサブマシーンは登場するが、最後まで銃声は聞こえなかった。

 冒頭「無常な大河を下りながらーもはや船曳きの導きを感じなくなった」と、アルチュール・ランボーの詩が紹介される。
 最後まで、それが何を意味しているのか、凡人には理解出来なかったが、「しんぼる」よりは、面白かったが。

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September 26, 2009

1360.ウルヴァリン

007_640 突然変異によって、超人的な能力をもって生まれたミュータント集団。彼等が活躍する映画「X-メン・シリーズ」は、既に3本製作されている。
 今回の「ウルヴァリン」はそのスピンオフ作品で、回を追うごとに中心人物になってきたひとりのミュータントの誕生秘話である。
 だから副題は「X-MEN ZERO」となる。

333627_100x100_002  ウルヴァリンとはイタチ科の動物スグリのこと。身体は小さいが、鋭い爪を持ち獰猛だ。
 その名を与えられた映画の主人公も、動物的な鋭い感覚と反射能力を持ち、どんな怪我でも回復できるヒーリング・ファクター、そして出し入れ可能な超合金の鋭い爪を武器にする。

 もともとはアメリカのマーベル・コミックのスーパー・ヒーロー。1974年レン・ウエン原作のコミック「超人ハルク」登場して以来、「Xーメンシリーズ」「ウエポンXシリーズ」「オリジンシリーズ」など、コミック・テレビ・映画での主要なキャラクターとなった。
 これ等のストーリーの中で、「日本のヤクザの娘に恋する」エピソードもある。

333627_100x100_001  今回の誕生秘話で、彼は19世紀にカナダで生まれたミュータントとされた。
 同じミュータントだが粗野で残忍な兄と、南北戦争から第一次・第二次世界大戦、さらにはベトナム戦争を共に戦い、やがてアフリカでの秘密作戦に従事させられる。
333627_100x100_010  しかし一人の女性と出会い、人間らしく生きようとカナディアン・ロッキーの山奥に隠遁するが、その女性を兄に惨殺されて復讐の鬼となる・・・・・。

 今回の作品は、主役のヒュー・ジャックマンが原作者のスタン・リーと共同でプロデュース、自ら設立したプロダクションで製作した。
 「オーストラリア」('08)でニコール・キッドマンと共演したジャックマンは、オーストラリア出身の俳優。3回の「X-メンシリーズ」でウルヴァリンを演じ、ハリウッドでもスターとなった。
 それだけ思い入れが深いキャラクターなのだ

 そのジャックマンが監督に指名したのが、南アフリカ出身のギャヴィン・フッドというのも意外だ。
 「ツォツィ」でアカデミー賞外国語作品賞を受賞した監督だが、もともとは子供向け映画やテレビを撮ってきた。
333627_100x100_011  その彼が、スピーディーでダイナミックなチェイスやアクションを次々と見せてくれた。
 この映画が本年度上半期のアメリカで、終末オープニング最高記録を樹立したのもうなづける。

 余談だが、アメリカではミュータント(突然変異体)が登場する映画が多い。評論家によると、それが「迫害を受ける人種的・宗教的マイノリティを暗喩」しているからだそうだ。
 ユダヤ系、アフリカ系の映画人がハリウッドで活躍しているのもその背景にあると。

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September 25, 2009

1359.プール

_640  今週は日本映画をよく見た。異色時代劇から本格時代劇、そして難解問題作と・・・・。
 この「プール」は、それらとは全く異質の「癒し系作品」。シルバーウイークに相応しい作品だった。

333868_01_02_03  ちょっと訳ありの人たちが、のんびりと暮らすタイ・チェンマイのプールのあるゲストハウスが舞台。
 そこで働く母親を訪ねてきた娘との、確執と和解の物語である。

 「人はどこかで生まれ、どこかで暮らし、どこかで死んでいく。生きていくのにいい場所は何処?」
 青い光が漂う静かなプール、木々を吹き抜ける風、タイの古都にゆったりと流れる空気。それが観客を癒してくれる。

333868_01_01_03 そ れぞれ事情を抱えた5人の男女。
 4年前娘を祖母に預けて、勝手にチェンマイにやってきた母(小林聡美)。
 余命いくばくと宣告されたゲストハウスのオーナー(もたいまさこ)。
 家族のしがらみを逃れて、ふらりとやってきた気のいい青年(加瀬亮)。
 母親に捨てられ小林と暮す、やさしいタイの少年(シッティチャイ・コンピラ)。
 そして卒業旅行でチェンマイにきた、どこかぎこちない小林の娘(伽奈)。
 プールを囲む1週間が、サラリと描かれる。

 女性たちで製作した作品でもある。
 原作は、漫画家の桜沢エリカの書き下ろし。
 監督は、「デトロイト・メタル・シティ]('08)や「ヘブンズ・ドア」('09)の脚本家でもある大森美香。
 そして企画したのが、「かもめ食堂」('05)「めがね」('07)の霞澤花子。
 ほかスタッフの多くが女性である。

333868_01_04_03  劇中歌「君の好きな花」も心を癒してくれる。
 小林聡美が自ら作詞・作曲した歌、ギターを爪弾きながら唄う。

 パートナーである三谷幸喜も、また惚れ直しただろう。彼女の個性が生み出す独特の雰囲気が、映画の主題をきちんと伝えてくれるのだ。

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September 24, 2009

1358.しんぼる

333494_100x100_003333494_01_04_02  メキシコの原野、はるか彼方から走ってくる車。長望遠レンズで撮り続ける長い長いカット。見るものの期待は膨らむ。

 一転して四方を白い壁で囲まれた部屋。水玉模様のパジャマを着た男が横たわる。さて何が起こるのだろうか、と期待に胸が弾む。

333494_100x100_001 333494_100x100_004333494_01_11_03 車を運転しているのは、若い修道女。覆面プロレスラーとして活躍する、父と応援の家族を迎えに来たのだ。 

 部屋に閉じ込められた男は、松本人志。必死に部屋から抜け出そうと努力するが、そこから飛び出してきたものは・・・・。
 ここで思考停止。私は混乱の域に達する。

006_640_2  タイトルは「しんぼる」。松本人志が自ら企画・監督・主演、高須光聖と共同で脚本を書いた映画。「大日本人」('07)につぐ長編二作目である。

 独得な唯一無二の世界観で「笑い」を追及してきた天才松本だけに、凡人の我々とは住む世界が違うのかも知れない。
 同じ「お笑い」出身監督、北野武の作品とは異なり、評価も真っ二つに割れる。

 「伏線が何重にも張り巡らされて、後半はトリックの種明かしを見ているような爽快感があった。着眼点、ストーリーは一級品」と高く評価する一方、「大学生の自主映画に通ずるつまらなさ。上映中はあちこちで溜息」との書き込みが、インターネットにあった。

 「この映画は、すごい映画かどうかわからない。しかし、誰も見たことがない面白い映画である事は確かだ!」とコメントしたコミック雑誌の編集長あたりの感想が、妥当か。

 前作「大日本人」も、カンヌ国際映画祭監督週間の正式招待作品として国際的にも評価された。
 この作品も、トロント、釜山、ワルシャの国際映画祭に招待されているそうだ。
 彼の地の映画人や批評家たちが、この作品をどう受け止めるか興味深々だ。

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September 23, 2009

1357.秋・東京水辺ライン

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090922_002_640090922_001_640090922_008_640  シルバーウイークの一日、旅に出た。といってもご近所、葛西臨海公園駅から東京湾、隅田川へのショートトリップである。

 駅前に拡がる都立葛西臨海公園と海浜公園は、23区内では最大の都営公園。臨海部分が80万㎡弱、海浜部分は411万もある。
 「緑と水と人のふれあい」をテーマに、東京湾の自然環境を再生しようと海を埋め立てて誕生した。

090922_021_640090922_020_640090922_014_640   園内には、臨海水族館、鳥類園ウオッチングセンター、日本最大の大観覧車、ホテルに二つの人工渚がある。
 今年で開園20年、昨日も多くの人がコスモス畑や干潟で遊んでいた。

090922_027_640090922_026_640090922_036_640   ここで2時間ほど、森林浴やお花畑を楽しみ、ホテルのラウンジで休憩。旅のもうひとつの目的、水上バスでのクルージングに出かけた。
 葛西臨海公園12時30分発シーサイド第1便。

090922_042_640090922_051_640090922_059_640  コースは、葛西を出発した後、若洲と東京ヘリポートのある新木場の間を抜けて東京ビッグサイトへ、有明運河から晴海客船ターミナルを左に、レインボウブリッジをくぐる45分である。
 終点お台場海浜公園到着は13時15分、45分のバス!の旅だった。

090922_072_640090922_065_640090922_061_640  お台場でランチの後、隅田川クルーズに乗り換える。
 14時05分発。再びレインボウブリッジを抜けて隅田川へ。
 晴海埠頭にバハマの豪華客船が寄航していたので、サービスで近くまで。
 水門をくぐって浜離宮発着場、そして聖路加ガーデン到着14時35分だった

090922_076_640090922_082_640  私達はここで下船したが、水上バスはこの後「越中島」「両国」を経由して、終点「桜橋」には15時5分に到着する。

 自宅から葛西臨海公園まで、往きは電車で15分。帰りがクルージングの1時間20分。掛かった費用は食事代を含めても4000円弱、のべ5時間の小さな小さな旅を楽しんだ。 

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September 22, 2009

1356.火天の城

004_640 「BALLAD」「TAJOMARU」と異色時代劇が次々と公開されてる中で、ただひとつ「マトモ」な時代劇映画がこれである。
 原作は、直木賞作家山本兼一が書いた同名小説。第11回松本清張賞を受賞した。

333579_100x100_006  1576(天正4)年の戦国の世、天下統一最後の野望として築かれた安土城。その織田信長の大構想に惚れ込み、5層7階の巨城建築の総棟梁となった熱田の宮大工(番匠)の生き様を描いた、「戦国時代のプロジェクトX」である。

333579_100x100_003333579_100x100_002  主役の番匠、岡部衆を率いるのは西田敏行。円熟味のある押えた演技がいい。 
 そして彼を支える病弱の妻が大竹しのぶ、30年ぶりの共演となった。娘は時代劇初出演の福田沙紀。
 親子3人の家族ドラマも展開される。

 一方、織田信長の役は椎名桔平。当時の信長と同じ年齢だそうだ。
 他に、寺島進、山本太郎の宮大工たち。普請奉行・丹羽長秀役の西岡徳馬と家来の渡辺いっけい。石工頭、夏八木勲。木曽の杣人頭、緒形直人。

 日本で始めて、天守を持った城として知られる安土城。近江国蒲生郡安土に築かれたこの城は、1579(天正7)年に天守が完成した。
 2万㎡の敷地に高さ199m 城郭、大工・石工に絵師、信長配下の武士2万人に人足を加えると100万人以上が動員された。
 わずか3年で築かれたが、総工費は換算すると1000億円になるという。

 その安土城も3年後の「本能寺の変」で明智光秀の手に落ち、結局信長の息子・信雄の軍勢によって焼かれてしまった。
 1年後秀吉によって築城された大阪城、12年後の伏見城など、以後の天守建築は熱田宮大工岡部衆の手法が引き継がれている。

 淡路島に作られた原寸大のオープンセット、本物の丸太で足場を組んで撮影した。
 監督は「精霊流し]('03)の田中光敏。

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September 21, 2009

1355.TAJOMARU

005_640_2   乱世・室町末期。
 管領畠山家の次男に生まれながら、奇しくも大盗賊「多襄丸」を名乗るようになった男(小栗旬)の切ない恋の物語。

 心の底から愛した女(柴本幸)を兄(池内博之)に犯され、弟のように可愛がってきた家臣(田中圭)に去られた男。
333829_100x100_008 333829_100x100_006  誰よりも信じていた者たちの裏切りによって傷ついた人生。しかしそれには裏があり、その裏にもどんでん返しがある。

 見えない真実に翻弄される主人公のたどり着く道を、読売テレビ出身の映像作家中野博之が、スタイリュッシュな映像とモダンなラップで綴った「異色時代劇」である。

2764591 原作は芥川龍之介の短編「藪の中」。それを市川森一と大島力也が大胆にアレンジして乱世の恋の物語にした。
 原作からもらったのは主人公多襄丸のネーミングと藪の中から見た出来事、信頼・裏切り・どんでん返し、そして真実の行方だけである。

150pxrashomon_poster_2_4  1950年製作された黒澤明監督の「羅生門」も、この「藪の中」が原作である。
 対立する複数の視点から、同じ出来事を全く異なる形で回想する構成。
見る人を混乱させるこの手法は、世界の映画人を驚かせた。
 翌年のベネチア国際映画祭でグランプリを受賞、この時世界のクロサワが誕生した。

275pxrashomon_1  「羅生門」では、小栗の役を森雅之、柴本が京マチ子。今回小栗に殺された初代多襄丸・松方弘樹の役は三船敏郎。小栗の子分になった「やべきょうすけ」は、志村喬?
 他に加藤大介、千秋実と懐かしい名前が並ぶ。

 また1964年のアメリカ映画「暴行」も、「羅生門」のリメイク版である。
 ここでは、ポール・ニューマンが大盗賊多襄丸を演じた。

 他、「藪の中」'96(松岡俊介・坂上香織出演)、「MISTY」'97(金城武・豊川悦司・天海裕希出演)と、芥川の原作を基にした作品は日本だけでも4作品にのぼる。 

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September 19, 2009

1354.ひとまく会

Kabukiza200909b  九月は初代中村吉右衛門の祥月。毎年その芸を顕彰する「秀山祭」が行われてきたが、今回は「歌舞伎座さよなら公演」と言う事で、昼の部一演目だけ「秀山を偲ぶ所縁の狂言」が上演された。

 夜の部は「七代目松本幸四郎没後六十年」に因んで、孫の幸四郎・吉右衛門と曾孫の染五郎が出演する「勧進帳」が組まれた。
 七代目幸四郎は、生涯にこの「勧進帳」の弁慶を1600回も演じた。

 歌舞伎座の4階席で最後の一幕を楽しむ「ひとまく会」の方は、「勧進帳」の次に上演された「松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)」を鑑賞した。

 この演目は通称「お土砂」とか「紅長(べんちょう)」と呼ばれているもので、福森久助作「其往昔恋江戸染(そのむかしこいのえどぞめ)」の「吉祥院の場」と、河竹黙阿弥作「松竹梅雪曙」の「火の見櫓の場」をあわせた作品。

 有名な「八百屋お七」と「寺小姓吉三郎」の悲恋物語がベースとなっているが、そこに「紅長」こと紅屋長兵衛がからんで、一幕目は歌舞伎では珍しい「喜劇仕立て」となっている。
 そのうえ、江戸時代のお話なのに木曽義仲や源範頼が絡むという、歌舞伎ならではの「勝手さ」が面白い。

  八百屋お七は実在した人物。1682(天和2)年の江戸の大火で駒込の吉祥院に避難したお七が、寺小姓の吉三郎と恋におち恋慕のあまり再会を願って放火し、処刑された事件である。
 お七はこの時15歳。井原西鶴や鶴屋南北らがこの事件を脚色し、作品は浄瑠璃・歌舞伎で多く上演されている。

 昨夜は、紅長を吉右衛門、八百屋お七を福助、寺小姓吉三郎を錦之助が演じた。
 この紅長は初代中村吉右衛門の当たり役、ツケ打ちや客席と一体となった演出、最後に紅長が舞台の幕を引く可笑しさなど、孫の二代目が面白く演じて見せた。

 大詰の「櫓のお七」は人形浄瑠璃仕立て。義太夫に三味線、人形になった福助のお七が、火の見櫓に登って必死の思いで太鼓をたたく。黒子の人形使いに合わせての「人形振り」の演技、福助に大向こうから声が掛かって幕。

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September 18, 2009

1353.材木座界隈の古寺を歩く(2)

090915_024_640090915_022_640 「中座山大聖院教恩寺」

 寺名は仰々しいが、住宅街の中にある小さな寺院である。
 1184(後鳥羽3)年、源平合戦の一の谷の戦いで捕らえられた平清盛の五男・重衛が幽閉された屋敷跡と伝えられる。
 頼朝から、刑が決まるまで平家一門の冥福を祈るよう、重衛に与えられた阿弥陀如来が寺の本尊となった。
 重衛の死後は、工藤祐経が重衛の姫「千手の前」の小袖を埋め菩提を弔った。

090915_031_640 「弘延山実相寺」   

 その工藤祐経の屋敷跡に建てられたのが実相寺。開山の日昭上人の母親が、祐経の娘という縁である。
 富士野の巻狩の総奉行となった祐経が、祝宴を開いた場所がここで、曽我十郎・五郎兄弟が「親の敵」と参上するシ-ンは、歌舞伎では有名である。

090915_028_640_3090915_027_640_2090915_030_640_2  「随我山来迎寺」

 こちらも、同時代の武将に縁のある寺だ。
 1180(安徳4)年、源頼朝が伊豆で挙兵した時、息子の義澄、孫の義村ら三浦党を率いてはせ参じた三浦大介義明の菩提寺である。
 最初の衣笠の戦いで戦死した義明を弔って、頼朝が建立した。その時義明89歳、裏の墓地には、三浦党面々の墓も並んでる。
 その三浦党もひ孫の泰村の代に、執権北条時頼によって滅ぼされた。

090915_061_640090915_067_640 「天照山蓮華院光明寺」

 最後に訪ねたのは、鎌倉幕府四代執権・北条経時が建立した寺院。
 室町時代、後土御門天皇の勅願所になり浄土宗の関東総本山とした。
090915_064_640_2090915_066_640  江戸時代に入ると徳川家康が寺領を寄進、関東18檀林(学問所)の筆頭に定められ、多くの学僧たちがここで修行した。
 本堂横にある庭園は小堀遠州の作と言われ、夏には大賀博士の古代蓮が花開く。

090915_051_640090915_057_640090915_054_640  光明寺の墓地には、譜代大名内藤家の巨大な大宝篋印塔58基が並んでいる。
 上総佐貫4万石から日向延岡7万石の藩主となった内藤家の墓地は、もともと深川の霊厳寺にあった。しかし江戸時代の半ば、ここ移転する。
 その理由は不明だが、深川の方には「寛政の改革」を断行した陸奥白河藩主・松平定信の簡素な墓が残っている。

 材木座界隈の古寺ウオーキング、5時間2万歩だった。    

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September 17, 2009

1352.材木座界隈の古寺を歩く

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090915_049_640_2090915_050_640_2  鎌倉の材木座海岸。上の写真の前方は、逗子のマリーナ、左の写真は稲村ヶ崎から江ノ島を臨む。

 先月の「ひとまく・鎌倉ウオーキング」は台風で流れたので、久し振りの散歩である。
 今回は材木座界隈の由緒ある寺を訪ねることにした。

090915_048_640090915_046_640_2  材木座の名は、「座」が示す通り商業街をさす。
 鎌倉時代には「和賀江津」と呼ばれれ、多くの船が出入りしていた。
 しかし遠浅のため荷揚げが不便、また相模湾の強風がまともに当たるため、遭難も多かった。
 そこで時の執権北条泰時は、東北から石工を動員、防波堤を築き港とした。完成は1232(貞永元)年、日本最古の築港遺跡で国指定の史跡となっている。
 昨日は満潮のため一部しか見えなかったが、潮が引けば∟の港跡が現れる。

090915_005_640090915_008_640_2090915_012_640   お寺巡りはまず「長興山妙本寺」からスタートした。
 1274(文永11)年に日蓮聖人が開いた寺だが、この4月桜の頃のウオーキングで紹介したので、由緒は省く。

090915_006_640090915_013_640090915_015_640_3   ただ此処は1203(建仁3)年の「比企の乱」のあった場所で、この乱で滅亡した比企能員の一族の墓、源頼家の子で6歳で殺された一幡を祀る塚などがる。

 「比企の乱」は、鎌倉源氏から北条に権力が移る故となった争いである。
 1199(正治1)年、鎌倉幕府初代将軍頼朝は53歳で没した。だが政権は北条時政・政子親子の手にあり、頼家が形式的な二代将軍を継いだのは3年後である。そして遺産は政子が溺愛する実朝と分割された。
 そこで頼家は、側室若狭局の父親で幕府の重鎮だった比企能員と組み、北条追討の兵を挙げる。
 しかし彼等には利あらず完敗、比企一族はほとんど惨殺、頼家も伊豆修善寺に幽閉され翌年殺されたのだ。
 その後は実朝が将軍を継ぎ、時政が執権としてサポートするが、その実朝も頼家の子・公暁によって暗殺され鎌倉源氏は絶えたのだ。

090915_014_640_2 大河ドラマや映画にもなった歴史悲話だが、頼家の後を追って井戸に飛び込み自殺した若狭局を祀る「蛇苦止堂」、成仏できず蛇になって北条を呪った。
 そこで建立した堂、頼家の嫡子・一幡が最後に着た衣の袖を祀る塚、四代将軍頼経(公家出身)の室で頼家の娘竹御所の墓、それらを目の前にすると800年の歴史が、昨日のように思える。

 次号は、源平の戦いで義経・範頼の軍に敗れ、鎌倉に護送された平重衛(清盛の5男)に纏わるお寺から。
 

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September 16, 2009

1351.BALLAD

003_640 「BALLAD」(バラッド)とはヨーロッパの民謡など伝統歌謡のこと。"E"が最後につくと「バラード」、譚詩歌になる。
 そのバラッドには、武勇伝や恋物語もあるがだいたい悲劇的な結末を迎える。

 この作品に監督の山崎喬が、原作とは違うタイトルを付けたのも「名もなき恋のうた、悲恋物語」を描きたかったからだろう。

Ballad011_1024768Ballad012_1024768 今「戦国時代」ブームだそうだ。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など権力を握った著名武将だけでなく、石田三成や直江兼続など家老・奉行級も人気が高い。そうした追っかけの女性を「歴女」というのだそうだ。

 この映画に登場する戦国武将たちは、さらに無名の人たちだ。そこから「一介の侍と一国の姫との美しくも儚い恋の物語」が生まれた。

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333522_100x100_005 鑑賞直前に知ったのだが、原案はアニメーション映画「クレヨンしんちゃん」シリーズの第10作だったこと。
 その原案、'02年に製作された「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」は感動作だったらしく、その年の文化庁メディア芸術祭でアニメーション部門の大賞を受賞している。

 戦国時代にタイムスリップしたクレヨンしんちゃん(武井証)が、ひょんな事で小国の侍(草彅剛)の命を助け、侍に恋する姫君(新垣結衣)と出会って深い絆を結ぶというもの。
 アニメーションではしんちゃんが主人公だが、今回は「はかない恋のバラッド」の2人に焦点が当たる。

 監督・脚本・VFXの山崎貴は、「ALWAYS三丁目」シリーズで映画賞を総なめしたVFX分野のベテラン。今回も製作「ROBOT」とVFXプロダクション「白組」を率いて、リアリティ溢れる戦国時代の生活や合戦シーンを再現した。
 阿蘇の原野や千葉の里山を、最新のCG技術で再構成するなど、スケールも大きい。

 また主題歌歌手に、「レッドクリフ」のalonを起用するなど、海外へのプロモーションも考えている。彼女は中国・四川の出身、人民解放軍芸術学院で学んだ二胡と「バラード」の名手である。

 しんちゃんやその両親(筒井道隆・夏川結衣)が、合戦の場にランドクル-ザーで乗り込むなど、時代劇と思って劇場にやってきた人は違和感を覚えるが、名作アニメ「クレヨンしんちゃん」フアンにとっては、たまらないシーンなのだろう。

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September 15, 2009

1350.96時間

333828_100x100_011  娘に甘いごく普通の父親が、もうひとつの顔をのぞかせ、「非情の追跡者」に変貌するお話。

 ロックグループ「U2」を追っかけて、友人とヨーロッパに渡った18歳の娘。パリでアルバニア・マフィアの人身売買組織に誘拐される。麻薬漬けにして売春窟に売り飛ばす。
 それを知った父親は、マフィアを追っかけてパリの街を暴走する。
333828_100x100_010_2  「娘を返すなら、見逃してやる。だが返さないならお前を探し、お前を追い詰めそしてお前を殺す」
 父は、「闇のキャリアで特殊な能力を身につけた」政府の元秘密工作員だったのだ。

 今年1月アメリカで公開されるや、9週トップのロングランを続けた作品。「ニキータ」「レオン」の監督、「トランスポーター」「TAXI」シリーズのプロデューサー、リュック・ベッソンが脚本を書いて製作総指揮を執った。
 監督はそのベッソンの愛弟子、カメラマン出身のプエール・モレル。「アルティメット」('04)に次ぐ監督作品である。

333828_100x100_002_3333828_100x100_005_2  主役は、「シンドラーのリスト」('93)でアカデミー賞にノミネイトされた北アイルランド出身のリーアム・ニーソン。心優しき父親と非情の元エージェントの両面を上手く見せる。
 中東系の脂ぎった富豪に売られ、処女を蹂躙されそうになった娘はマギー・グレイス(「オースティンの読書会」'07)。

 怒涛のカーチェイスに銃撃戦、息つく暇も無いノンストップ・アクション。「レオン」と「トランスポーター」をミックスしたようなベッソンらしい映画である。

 ともかく、アルバニア・マフィアや人身売買に絡んだ人は全員ニーソンに殺されてしまうのだから、「とんだ男の娘」を誘拐してしまったというのがオチ。
 原題「TAKEN」は、どう訳したらよいのか。娘を傷つけられる事なく救える限界は「96時間」。邦題は単純だ。

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September 14, 2009

1349.初秋・浜離宮

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090910_012_640090910_004_640090910_022_640 秋晴れの浜離宮恩賜公園は、「コスモスス」が花盛り。
 「オオハルシャギク」「キバナコスモス」など30万本がお花畑を埋め尽くす。
090910_006_640 今年はキバナコスモスのなかでも、八重咲きで有名な「サニー・イエロー」が花をつけていた。

 コスモスは和名で「秋桜」。もともとメキシコ高原が原産地、明治の半ば日本に渡来した。浜離宮で有名なキバナは、さらに遅れて大正時代にやってきた。

090910_045_640090910_046_640090910_038_640 「浜離宮・秋の花コスモス・」写真コンテスト」も開催されており、鉢植え持参で「芸術写真!」を狙うカメラマンもいた。
 大賞を獲ると、3万円の「カレッタ汐留ギフトカード」をもらえる。
 入賞写真100点は、11月にカレッタ汐留46階エレベーターホールで展示される。

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September 13, 2009

1348.焼酎バー「黒瀬」(104)

Photo 焼酎バー「黒瀬」からの、久し振りの報告。

 NPOの理事長、JAの専務、私立高校の理事長、商工会の専務、漁協の組合長。郷里の商工会議所の中堅リーダー5人と、黒瀬で焼酎を酌み交わしながら懇談した。
 「地域資源∞全国展開プロジェクト」 の市場調査で、南さつまから上京してきたメンバーである。

 プロジェクトは、郷里の商工会議所と鹿児島大学が連携して進めてきた「地域資源の発掘・活用」の研究会が発展したもので、このほど日本商工会議所の事業に採択された。

039_640  事業は「ストーリーのある商品(ブランド)と、南さつまを想う人々とを融合させた新プロモーション」がキーワード。
 「焼酎を中心に地域資源を活かした特産品を最大限に活用し、南さつま市が活性化する仕組みや、商品・サービスを産み出す一貫した流れをつくる」こと。
 「商品を消費してもらうだけでなく、商品を介した人々との交流、それをきっかけに何回も南さつまを訪ねてもらうための街づくり、人づくり」を目的にしている。

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010  南さつまは、これまでもこのブログで紹介したように、黒瀬杜氏で知られる日本一の焼酎王国。
 「すんくじら」の愛称でよばれる様に、九州の西南端にある風光明媚な里である。
 こうした地域資源を媒介にして、人々の交流を図り地域を活性化しようというわけである。

052_640  プロジェクトの調査チームは二手に分かれ、「黒瀬」など郷里出身者の店や商店を訪ねて消費動向を調べる他、昨日開催された「東京加世田会」にも参加して郷里出身者からアンケートを取った。

 プロジェクトでは具体的な事業の一つとして、11月14~15日に品川で「さつま・すんくじらの恵み~食と酒の祭典2009~」を開催する予定。
 会場は「旧東海道品川宿」(京浜急行・新馬場駅)。ここは江戸時代のさつま屋敷のゆかりの場所でもある。入場無料。

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September 11, 2009

1347.東京道産酒の会

030_640 北海道に生まれた人、北海道で青春を送った人、北海道での仕事に情熱を燃やした人、北海道にエールを送る人たちの集いが「東京道産酒の会」。
 毎月第2木曜日、北海道の酒と食材で作った肴を味わいながら、懇談している。

 204回、昨夜は先月88歳で逝去された会の創始者、代表世話人の安田道夫さんを偲んだ。

 安田さんは金沢出身、東大卒業後学徒出陣で兵役に。戦後はサラリーマン生活を経たのち検事の道を歩む。
 沖縄復帰後の初代那覇地検検事正、最高裁検事から北海道高検検事長で勇退され、のち弁護士として冤罪に取り組むなど活動された。
 安田さんは、検事のイメージからはほど遠い温厚な人柄。25年の間労を厭わず会の世話役を務められた。好奇心旺盛、亡くなる直前までパソコンを駆使して情報を収集するなど、多くの人たちと交流を続けた。
 このブログの愛読者1号でもある。
 
 5年前頃から病に侵され度々手術を受けたが、今年に入ってからは「患者」である事を辞め、自分の「いのち」を自ら大切にする日々を送りながら、医学における「緩和ケア」の普及に努められた。

03810371020_640   集いで上映されたのは、亡くなる10日前の安田さんと奥さんの映像。NHKが放送した「癒しの写真」に出演した時のもの。
 最高の笑顔に、皆で合掌してお送りした。

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 道産酒の会恒例のスピーチは、このほど「札幌学」を執筆・刊行された出版プロデユーサーの岩中祥史さん。
 朝日新聞に「街魅(み)シュラン」を連載、街の魅力を足で辿りながら「名古屋学」「博多学」など出版してきた。

 札幌の魅力について岩中さんは「200万近い人の住む大都市でありながら、街全体が公園として存在している。その佇まい、空気、人情がたまらない。道産酒の会が25年以上も続くのも、それが忘れられないからではないか」と話す。
 のべ40日かけて札幌を歩き、1000枚以上の原稿を書いてしまい縮めるのに苦労したそうだ。

 本日の道産酒:千歳鶴、国稀、北の誉
 酒の肴:蛸のキムチ和え、芋サラダ、冷し豆腐、秋刀魚の昆布締め、ホッケの一干し、鰊旨煮、帆立貝の天麩羅、鮭のあら汁

 音楽は安田さんの第二の故郷、北海道の「知床旅情」と沖縄の「さとうきびの唄」。
 最後に中山育美さんが、映画「戦場のピアニスト」で知られるショパンの「ノクターン」を弾いて、安田さんの冥福を祈った。

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September 10, 2009

1346.グッド・バッド・ウイアード

002_64051j43rxipl 久し振りに西部劇らしい楽しい映画を見た。といってもハリウッド作品ではない。マカロニ・ウエスタンをパクッた「韓流映画」ならぬ「キムチ・ウエスタン」。泥臭いがうまい。 

 右のポスターがパクられたそれ。セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の「TheBad,TheGood and TheUgly」、日本では「続・夕日のガンマン~地獄の決闘」と題して'66年に公開されている。
 先月末の30日には、NHKハイビジョンでも放送された。

 昨年のカンヌ国際映画祭に特別招待され喝采を浴びた「グッド・バッド・ウイアード」、監督はコメディ・ホラー・ノワールと作品毎に新しいジャンルにトライしてきた、「甘い人生」のキム・ジウ。
 1930年代の旧満州を舞台に、賞金稼ぎや残忍なギャング、列車強盗に馬賊、日本軍が入り乱れて「宝の地図」を奪い合う大娯楽作品なのだ。

Gbw 三人の主役には、韓国のスーパー・スターを並べた。
 「グッド」は、賞金稼ぎのチョン・ウソン(「私の頭の中の消しゴム」'04)」。疾走する馬に跨りウインチェスター銃を撃ちまくる。マカロニでは、クリント・イーストウッドの役。
 「バッド」は、冷酷なギャングのボスのイ・ビョンホン(「甘い人生」'05)。狂気に満ちたカリスマ悪党だ。マカロニでもリー・V・クリープがクールだった。
 「ウィアード」は、間抜けなコソ泥だが滅法運の強い男ソン・ガンホー(「グエムル~漢江の怪物」'06)。オートバイに跨り「ワルサーP38」を振り回す。こちらは、イーライ・イオラックの役かな。
 色気など全くない映画だから、ハリウッド西部劇のようなヒロインはいない。

334142_01_02_03334142_01_03_03334142_01_04_03 娯楽映画ではあるが、旧満州を舞台に選んだキム監督の狙いははっきりしている。
 30年代の満州は、漢・日・朝・蒙・露の多民族・多文化社会。あらゆる勢力が満州に求めた「宝」とは何だったのか。カオス状況の中から、その虚しさがラストシーンに映し出される。
 その三つ巴の撃ち合いは、「続・夕日のガンマン」と同じ。

 中国甘粛省のゴビ砂漠でロケしたようだ。だから日本軍のエキストラは、中国人民解放軍兵士たち。将校役は韓国人俳優だろうが、日本語が上手い。アメリカ映画に見られるような、変なアクセントはない。

 場内、韓流スターのファンらしきおばさんたちが、変なところで笑い声を上げるのが気になった。

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September 09, 2009

1345.天文館物語

148_640 同郷の先輩から、大人のための絵本「天文館物語」が送られてきた。鹿児島在住の作家とスケッチ画家が、地元紙にこの春まで連載してきた「絵本」である。

 天文館といえば鹿児島市最大の繁華街である。薩摩藩時代に天文台のあったこの場所には、デパートに映画館、レストランに食堂、キャバレー、バー、居酒屋と何でも揃っていた。

 40年ほど前の5年間、この地に住んでいた私はほぼ毎晩天文館に出没していた。焼酎を飲み、上手い肴を食い、友人たちと語らう。5本立てのオールナイト映画を見て、夜明けの寂しい盛り場を歩いて朝帰りした。

 しかし風の便りによると、5~6館あった映画館全てが消えたという。この5月には、デパートも閉店した。昔、企画など手伝ったキャバレーもとっくに無くなっている。
 そんな天文館の路地裏を、作家は慈しむように歩き、絵描きはスケッチする。

149_640 路地とタイトルだけをいくつか紹介しておこう。昔飲み歩いた場所だけを。

 「新宿街」(はじめてなのに、なぜか懐かしい)。「おはら通り」(一人客もてなす長いカウンター)。「美人小路」(遠ざかる「昭和」を懐かしむ)。「名山堀」(昭和の風情残る解放区)。「文化通り」(美しく、怪しく。ネオン花)。「猫糞(薬)小路」(「糞」では猫も迷惑。ほんとはどっち?)。
 そして天文館を離れて「二中通り」「西銀座通り」「都通り」「高見馬場」へ。

 「夜な夜な酒場を一人で飲み歩くのは、居場所を探す巡礼のようなものかもしれない。・・・・・・酒を飲むとは、そういった、居心地のいい雰囲気に身を置くことなのだと知るために、年を重ね、杯を重ね続けてきたのだ。」
 こうプロローグに書く著者の清水哲男さんが、鹿児島出身者ではないのが面白い。同志社大学卒業後は各地を放浪、12年前に鹿児島に辿りついた「中年」の作家なのだ。
 そのせいか、エッセイにはベタベタしたところがない。単なる酒場探訪を超え、南の国の「文化」と「土着性」が評される。
 そしてスケッチも、京都芸大出身のデザイナー浜地克典さん。彼もまた10年前、鹿児島に移住した。

 41篇のエッセイには、60余りの「飲み屋」が紹介されている。昔通った店は2軒しか無かったが、これから鹿児島を旅する人は、この絵本をカバンに忍ばせておくと便利だ。
 私も来月鹿児島に旅し、久し振りに「天文館」を訪ねる予定だ。

 大人のための絵本「天文館物語」(シーナ・ワークス刊) 定価1500円(税別) 

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September 08, 2009

1344.キャデラック・レコード

9_640 副題は「音楽でアメリカを変えた人々の物語」。ビートルズやローリング・ストーンらに多大な影響を与えた、
 シカゴの伝統的なブルース・レーベル「チェス・レコード」の誕生から終焉の物語である。

 '50年代から'60年代にかけてのアメリカ音楽史が、伝説的なミュージシャンたちの実話をもとに綴られていく。

 レーベルを作ったのは、ポーランドからシゴに移民してきた白人のレナード・チェス。
 南部ミシシッピーからシカゴに流れてきた黒人路上ミュージシャン、エレキギターのマディ・ウオターズとハーモニカのリトル・ウオルターを知る。
 クラブを経営していたチェスは、彼等に天才的な才能を見出し専属アーチストにしてスタジオを作り、音楽ビジネスに乗り出す。
 それが「黒人の黒人による黒人の音楽」から「黒人」の文字が消え、ポピュラーミュージックとしての「シカゴ・ブルース」の誕生だった。

333966_100x100_002 スタジオには、カントリー・ミュージックの名手からのちにロックンロールの創始者となったチャック・ベリーや、ブルース・ジャズ・ソウルの女王になったエタ・ジェイムスも加わり、ヒットチャートの上位はほとんど「チェス・レコード」占めるようになったのだ。

333966_100x100_006 タイトルの「キャデラック」は、ヒットを飛ばしたミュジシャンには、チェスが褒美としてGMのキャデラックを贈った実話からきている。
 当時この車は、白人社会におけるステータスのシンボルであり、黒人が乗り回す事は社会に大きな衝撃を与えたという。

 実在の人物達を、売れっ子のスターたちが演ずる。
 チェスは、「戦場のピアニスト」('02)で最も若いオスカー俳優となったエイドリアン・プロディ。レーベルの右腕となった天才ギタリスト、マディ・ウオターズを「007/慰めの報酬」('08)のジェフリー・ライト。チャック・ベリーは、ヒップホップ界の異能モス・デフと並ぶ。
 なかでもエタ・ジェイムスを演じたビヨンセ・ノウルズが凄い。彼女は製作総指揮も兼ねながら、エタの名曲を歌う。

333966_100x100_007 昨年秋のシカゴ。オバマ大統領の就任祝賀会でビヨンセが歌ったのが、この映画でもラストに登場したエタの代表作「アット・ラスト」だった。バラクとミッシェルは、この歌をバックに踊った。
 シカゴで生きた黒人大統領オバマを、シカゴ・ブルースが祝したのだ。

 映画に登場したミュージシャンのうち、今も健在なのはエタただひとり。麻薬に溺れたり、暴行で刑務所に入ったりと、それぞれの人生には成功と転落・破滅があった。
 しかし、チェスもふくめ彼ら全員が「ロックの殿堂」に入っている。

 監督は、'64年生まれのアフリカ系女性監督ダーネル・マーティン。
 ミュージシャンたちの「光と影」を、力まずに軽く描いていく。

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September 07, 2009

1143.宇宙(そら)へ。

334164_100x100_001334164_100x100_005 NASAが撮り続けてきた厖大なネガフイルムをもとに、アメリカの宇宙開発50年の歴史を綴ったドキュメンタリー映画。

 監督・製作総指揮を執ったのは、イギリスのBBCでドキュメンタリー・ドラマを制作してきたリチャード・デイル。 「ダイアナ~プリンセス最後の日々~」('07)など、「再現ドラマ」を駆使したドキュメンタリーを得意とするディレクターである。
 今回の「ROCKET MEN」(原題)は、既存の映像だけで構成した初めての作品。ドラマチックな感動は薄い。

334164_100x100_003 1969年の「月面着陸」で世界中を沸かしたアメリカの宇宙開発は、1958年のマーキュリー計画から始まる。前の年、ソ連のスプートニク1号の打ち上げに刺激されNASAは設立された。
 以来ジェミニ計画、アポロ計画と続き、現在ではアメリカ・ロシア・日本などの協力で、宇宙ステーションが作られている。
 しかしその歴史の中で、アポロの訓練中の事故で3人、'86年のチャレンジャー1号機の爆発で7名、'03年のコロンビア号爆発で7名の犠牲者を出している。
 映画では、こうした宇宙開発の「光と影」もきちんと映し出す。

334164_100x100_004 16㍉のネガフイルムから、最近のハイビジョンまで、デジタル処理された映像は美しい。
 これまで、テレビなどでほとんど目にしたシーンだが、映画館での大画面で見るとまた感慨深い。

 若い頃、鹿児島の内之浦や種子島で日本の宇宙開発を取材、「カッパ」から「ラムダ」「ミュー」まで何回かのロケット打ち上げの中継も担当した。
 あの時ナマで見た迫力を、フロリダ・ケネディ基地での「打ち上げ」シーンで思い出す。
 「こちらヒューストン」と、同時通訳の懐かしい声も聞こえそうだ。

 「ディープ・ブルー」や「アース」など、イギリスBBCが得意とする壮大な自然や驚異の映像には劣るが、宇宙を扱ったSF映画に比べるとドキュメンタリー映像は強い。

 日本での配給権を得たソニー映画は、ナレーターに宮迫博之を起用、主題歌を作るなど見せる工夫をしている。
 邦題「宇宙(そら)へ。」は、上手いネーミングだ。

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September 04, 2009

1142.レトロスペクティブー3-

001_640 三原橋の銀座シネパトスで、「名画座」がスタートした。前回は勘違いして新作を見たが、昨日は半世紀前の名画「青春残酷物語」「日本の夜と霧」の2本を鑑賞した。

 今月は「愛と性、体制と権力 大島渚 闘いの歴史」がテーマ。大島監督の初めての作品「愛と希望の街」から話題作「愛のコリーダ」、海外との共同制作「戦場のメリークリスマス」まで15本が上映される。
 鑑賞した2本は、当時の私達「60年安保世代」が主人公である。

Ca333050Ca333051 「青春残酷物語」は、デビュー作「愛と希望の街」に続き大島が2年間暖めてきた企画だった。

 世の中にありったけのエネルギーをぶっつけて自壊する残酷な青春、革命と恋に挫折した前世代の青春。その二つの青春の対比させながら、時代に問うた。
 当時としては激しいラブシーンや乾いたタッチの即物的な表現を、当時の読売記者・長谷日出雄が、「松竹ヌーベル・バーグ」と名付けた。

Ca333053 出演は、デモより暴力と性に拘る大学生に川津裕介、愛に拘る高校生に桑野みゆき、その姉・久我美子と元恋人・渡辺文雄の前世代組。
愚連隊のボスに佐藤慶が出演するなど、後に大島の同志となるキャストやスタッフ(石堂淑朗、川又昂ら)が参加している。

 49年前の大学時代に見た映画だったが、堕胎手術をした桑野の枕元で「青いリンゴ」を齧る川津のアップが延々と続くシーンだけが、記憶に残っていた。

D112560713 「日本の夜と霧」は1960年10月、公開4日目で上映中止となった問題作。これに抗議して、大島渚は小山明子や石堂淑朗らと共に松竹を去った。
 
 当時大学新聞で映画批評を担当していたので、運良く試写会で見る事が出来たが、再上映されるまで3年かかっている。
 3ヶ月前の6月15日に起こった、全学連国会突入・女子学生の死を軸に、「60年安保」の総括を大島が試みた作品だった。

 山村工作隊・火炎瓶闘争・破防法闘争と続いた前世代の元活動家の渡辺文雄と、安保を闘った60年世代の活動家の桑野みゆきの結婚式が舞台
 饒舌な演説口調、つまったセリフもそのままに活かしたディスカッション「舞台劇」。その斬新な演出手法は、賛否両論を巻き起こした。

 かって京大全学連のリーダーだった大島が、東大全学連の渡辺や戸浦六宏らを出演者に選んだのも、コミンテルンによる上からの指導で、「歌って踊って路線」に変えられてしまった学生運動の挫折経験を、我々の世代に味あわせたくなかったからだ。
 のちに「東条英機」を演じた津川雅彦が、ブントのリーダー役で出演しているのも面白い。

 しかし大島の願望とは異なり、「60年安保」はブントの自壊、革共同の分裂、革マル・中核の血で血を洗う内ゲバへと流れ、やがて連合赤軍、浅間山荘事件と繋がっていく。
 我々もまた、8年前の大島と同じような挫折を受けたのだ。

 来月の名画座は、その道程を描く「若松孝二監督」特集である。

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September 03, 2009

1141.20世紀少年ー最終章ー

Wp1_1024x600Wp3_1024x600 2019年、世界大統領・独裁者"ともだち"に支配された日本を舞台に、殺人ウイルスを防ぎ人類の存続を賭けて戦う"20世紀少年"たちの物語。
 昨年夏に公開された第1章「終りの始まり」、正月に公開された第2章「最後の希望」に続く最終章「ぼくらの旗」である。

 原作は、浦沢直樹が「ビッグコミックスピリッツ」に'99年から’07年にかけて連載した同名コミック。講談社漫画賞、小学館漫画賞、文化庁芸術祭最優秀賞、国際漫画祭(フランス)最優秀賞、漫画協会大賞受賞、世界13カ国で翻訳され、国内だけでも累計2800万部を超えるベストセラーである。

 日本映画史上では始めて、シリーズ3部作を1年かけて同時ロケする方法で製作。300人を超える役者と1000人を超えるエキストラを動員して、スケールの大きさを見せた。
 映画化は無理とも言われていたが、原作者浦沢直樹とコミックのプロットを制作してきた長崎尚志が共同で脚本を書き、原作を超える結末を見せた。

Wp2_1024x600 監督自らも言うような荒唐無稽の物語を、大人の映画に仕上げたのは堤幸彦監督。ハリウッドでの映画造りの経験をもつ彼は、TVドラマ・CM・音楽ビデオ・CDリリース・出版など、マルチに活躍しているメディアクリエイターである。

 第1章・2章では、少々判り辛かった部分も、それが伏線となって最終章で生きる。堤監督は、その辺りを丁寧に撮っているのがいい。
 また冒頭には、1~2章の概略紹介もあり、始めて見る観客にサービスしてくれる。

333521_100x100_005333521_100x100_004333521_100x100_002 出演者があまりにも多彩なので主な役者だけ紹介するが、20世紀少年たちの今を、唐沢寿明・豊川悦司・常盤貴子・香川照之・宮迫博之・佐々木蔵之助ら。唐沢の姉が黒木瞳、「ともだち」の軍師が石橋蓮司、部下は小池栄子ほか。
 大勢の子役たちもなかなか上手い。
333521_100x100_003 「ともだち」と黒木の間に生まれたこども、平愛梨が2部に引き続いて物語を引っ張る。
 果たして「ともだち」は誰か、最後にその役者の素顔は晒される。

 エンドロールも終わったあとの10分間で、「"ともだち"がなぜ"ともだち"になってしまったのか。そして20世紀とはなんだったのか」、3部作を貫くテーマが明らかにされる。

 大阪万博、高度経済成長そしてオウムのサリン事件。その時代状況を下敷きにしながら、世界同時不況・新型インフルエンザの大流行・衆議院選での幸福実現党の大量出馬・・・・が頭に浮ぶ。
 映画もまた多くの事を、予言する。

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September 02, 2009

1140.第94回二科展

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   第94回二科展  浜  F130 会員 西 健吉

090902_006_640090902_007_640 旧友の西君から招待状が届いたので、今年も初日に六本木の国立新美術館に出かけた。
 彼は二科会の評議員であると同時に、鹿児島支部長の要職にあって若い画家達を育てている。

 会場入り口近くに展示されている西君の作品「浜」。奄美大島で美術教師をしていた若い頃の体験が、絵のモチーフとなっている。
 昨年は、娘が横をむいている「浜の休息」だったが、今年の娘は下を向いて靴ヒモを結んでいる。網をかがる藁帽子の漁師は変わらないが、舟はぐっと近づいた。彼の作品にこめる想いに、変化があったのか。

090902_019_640090902_018_640090902_028_640 開会式の後、会場ではギャラリートークが開催された。今年の解説と司会は、その西健吉画伯である。

 最初に紹介されたのは、二科会現理事長・織田廣吉画伯の作品「ふるさと」。織田画伯は車椅子で会場に見えていたが、94歳とも思えぬ若々しい作品だった。

090902_027_640090902_025_640 次に紹介されたのは、総理大臣賞受賞の中井史郎画伯の作品。400名を超える会員・会友のなかから選ばれた最高賞である。

 因みに二科展は、一般公募による展覧会。絵画部門だけでも4157点の応募があり704名が入選、会員・会友の作品とともに展示されている。

090902_014_640090902_015_640090902_016_640 また写真部門は、1万7263点の応募、1064人が入選している。
 デジタルカメラの普及のせいか、毎年応募者は増え、芸術的センスに溢れた作品が多くなっているという。

 他、彫刻部門64人、デザイン部門305人の入選作も展示されている。

 「第94回二科展」は、六本木・国立新美術館で14日(月)まで。入場料は1000円。

 (投稿のシステムに、不具合があり前半罫線付きで申し訳ない。)

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September 01, 2009

1139.ポー川のひかり

_640 「温もりのある、真に豊かな生活を得るために、もう一度始まりにに帰ろう」と、イタリアの名匠エルマンノ・オルミ監督が新約聖書の世界を通じて描いた「現代の寓話」である。

B017890620090507182704 キリストさんと呼ばれる世捨て人の哲学教授と、ポー川流域で暮らす素朴な心の交流がストーリー。
 野をわたる風や岸辺を包む光、夜の川面のさざ波など、水や光、炎や風が美しい。

 ポー川とはイタリア最大の大河。スイス国境付近を源に、エミリア・ローマーニア地方の平原を流れてアドリア海に注ぐ。
 映画にも度々登場するが、古代ローマ時代からのワインの名産地。牧歌的な風景も、作品の主人公である。

Intro_main_img 原題は「百本の釘」。書物が現代社会の混乱の源と、主人公である哲学教授の手で古文書100冊が釘で打ち抜かれる。冒頭のショッキングなシーンが主題だからだ。
 しかし私を含め、異教徒にはその深い意味は理解しがたい。邦題「ポー川のひかり」は、それを上手く逃れるタイトルとも言える。

 エルマンノ・オルミは、ドキュメンタリー出身の映像作家。30年前に撮った長編劇映画「木靴の樹」が、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。以来ベネチア国際映画祭の金・銀など多くの国際映画賞を受賞してきた名匠である。

 今年78歳になる彼は、最後の劇映画として「ポー川のひかり」を3年前に世に送る。息子のファビオ・オルミが撮影監督、娘のエリザバッタ・オルミが製作総指揮と、家族みんなが参加した。

333631_01_03_03 主役のキリストさんは、イスラエル出身のラズ・デガン。「アレキサンダー」('03)などイタリア映画で活躍する俳優だが、その髭面の風貌がキリストに似ていると、コマーシャルに引っ張りダコだそうだ。
 他の俳優は、ほとんど馴染みは無い。

 3年前のイタリア映画を、誰が見つけて日本に持ってきたのだろうか。あまり宣伝もしないが、上映されてる岩波ホールは観客で賑わっている。
 文部科学省選定の秀作である。

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