1398.晩秋・栗野高原


高千穂峰(1574m)・新燃岳(1421m)・韓国岳(1700m)と続く霧島連山。
その西端にある栗野岳(1102m)中腹の原生林から吹き上がる「八幡地獄」の噴煙は、肥薩線の車窓からも見える。

八幡地獄の熱湯を引いた一軒宿の温泉が栗野岳温泉「南州館」、知る人ぞ知る「日本秘湯を守る会」の宿である。
前夜は7年ぶりにここに泊まり、地元に住む旧友と焼酎を酌み交わした。


明礬緑磐泉の「竹の湯」、通称ドロ湯は関節痛に効く。
硫黄泉の「桜湯」は胃腸病、自然の蒸気を利用した「むし風呂」は神経痛と、三つの温泉の効能がそれぞれなのも面白い。
明治の初め、征韓論に敗れて帰郷した西郷南州は、ここで1ヵ月疲れを癒した。宿の名前の由来である。

温泉から東に1キロ行くと栗野原農場がある。
1952(昭和27)年、北海道から入植した東大卒の開拓農民夫妻が、原野を切り開いて開墾した牧場なのだ。
取材で知り合って以来半世紀、いつも文を交わし帰省の折りは必ず訪ねた。高原における「草地酪農」のシステムを完成させた彼は、懇請されて地元の町長も務めた。
酪農を終えた今、90歳の彼は開墾した牧草地を再び森に戻そうと務めている。
「誓願の森」、ここはそう呼ばれている。


牧場の半分は、鹿児島県が譲り受け「霧島アートの森」を作った。
「五感で楽しむ自然豊かな現代彫刻美術館」、草間彌生(右端の写真)、西川勝人(右)、チェ・ジョンファ、ジョナサン・ボロフスキーなど、内外の著名な彫刻家の作品が森の中に並んでいる。


「アートの森」の前にある栗野岳レクリエーション村では、造形コンクールも開かれていた。
学校や地域自治会単位で、自然物を利用した造形作品を並べて競うもの。
地元・湧水町は、町ぐるみでアートに取り組んでいる。
夜は高千穂峰の麓にあるホテルで、高校同級生の「古稀の会」。
霧島連山の夕景も美しかった。




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