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November 30, 2009

1415.クリスマス・キャロル

Wallpaper_1_1024x768 世界を変えた名作「クリスマス・キャロル」。イギリス・ビクトリア朝を代表する文豪、チャールズ・ディケンズが書いた165年前の小説である。

 不況に喘ぐロンドン、金貸しの業突張りな爺さんが、クリスマス・イヴの夜「過去」「現在」「未来」の精霊に出会い、見失っていた愛の心を取り戻すというお話。
 子供時代に映画を見たが、ほとんど忘れかけていた。

180pxcharles_dickens2  ディケンズは、「オリバー・ツイスト」「二都物語」「大いなる遺産」などでも有名だが、もともと「モーニング・クロニクル」の記者。
 労働者階級の貧困を、「慈悲」をベースにした社会改革によって救おうと、この「クリスマス・キャロル」を書いた。

 作品の映画化は1938年が最初、以降アニメやテレビを含めると9回リメイクされている。
 そして10回目、ロバート・ゼメキス監督は斬新な映像感覚によって、名作を再現した。

 実写とアニメを超えた新しい映像世界である。
 スピルバーグ監督の弟子、「バック・ツゥ・ザ・フューチャー」('85)の大ヒットで世に出たゼメキスは、「フォレスト・ガンプ]('94)でアカデミー賞監督に。
 「過去の映像の中で現在の役者を活かす」という手法で観客を驚かせたが、今回は「Image Movers Digital」という技術を駆使した。

333976view001 今回の役者の活かし方は、一人多役である。
 主役のジム・キャリーは、主人公の老人の他、その少年時代、青年時代、熟年時代を演ずる。さらには、「過去」「現在」「未来」の精霊と7役をこなす。
 またゲイリー・オールドマンも3役と、パフォーマンス・キャプチャー技術ならではの演出が見ものだった。

 今回の作品は「ディズニーデジタル3D」で製作されている。あのメガネを掛けて見ると飛び出す立体映像だ。
 こちらは2Dで見たが、カメラアングルはズームイン・ズームアウトを多用し、3Dの立体感を活かしていた。

 「3D」での鑑賞は、60歳以上1000円が1500円になる。また座席の位置も重要なので、早めに予約したほうが良い。

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November 28, 2009

1414.多摩・小春日和

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091123_003_640091123_010_640091123_009_640_2  イチョウ、モミジ、サクラ、ハナミズキの実と、多磨霊園は紅葉の季節。

 秋のお彼岸の頃は、まだ薮蚊が多いので遠慮して、ふた月遅れのお墓参りに出かけた。
 小春日和、雲ひとつない秋の一時だった。

091123_011_640091123_005_640  都立多磨霊園、日本では初めての公園墓地として1923(大正12)年に開園した。
 ヨーロッパの森林墓地や芝生墓地の様式を取り入れ、当時の東京市が北多摩郡多摩村に築いたものである。

 東京には、青山や谷中・染井など5つの墓地があったが、人口増加によって墓地不足となり、郊外のこの地に土地を求めた。

091123_013_640091123_015_640  当初は都心から離れているために人気がなかったが、1934年に海軍元帥・東郷平八郎が埋葬されると知名度が高まり、墓を求める人が急増したという。

 もちろん現在は空き地は無く、改葬整理によって若干の墓地が年に一度公募されるのみである。
 知人の一人は、妻の墓所を求めてこれまで14回応募しているが、まだ充てはないようだ。

091123_014_640  多磨霊園に葬られている著名人は、有島武郎や江戸川乱歩、菊地寛に岡田嘉子など文人・俳優も多いが、やはり錚々たる軍人・政治家の名が連なる。東郷元帥の影響だろう。

 歴代の総理大臣を並べると、古くから西園寺公望、高橋是清、田中義一、斉藤実、岡田啓介、林銃一郎、平沼騎一、大平正芳氏の8人、野党では浅沼稲次郎さんのお墓もあった。

 霊園の紅葉を楽しみながら、昭和史の跡を辿った。

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November 27, 2009

1413.イングロリアス・バスターズ

Wall1024_main  「B級映画の巨匠リトルQ」ことクエンティン・タランティーノ監督が、この作品で「A級映画の巨匠」の地位を確実にした。

 複雑に入り組んだ群像劇は、カンヌ国際映画祭パルムドール賞の「パルプ・フィクション」を思い出すし、残虐な殺しの復讐ヴァイオレンス劇は、「キル・ビル」を思い起こす。
 15歳未満×は仕方があるまい。

333858_100x100_004  2時間32分の超大作は、五つの章に分れる。

 第1章「その昔・・・ナチ占領下のフランスで」は、クリストフ・ヴァルツ(「私が愛したギャングスター」'00)がユダヤ・ハンターと呼ばれるナチSS大佐として登場する。
 彼はこの章で、ユダヤ人一家を虐殺。逃れたのは一人の少女だけだった。
 そのうえ彼は、今年のカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞!まで獲った。
333858_100x100_007_2  
 第2章「名誉なき野郎ども」では、ブラッド・ピットの登場。連合軍殺し屋部隊「イングロリアス・バスターズ」を率いる中尉である。
 アバッチ戦士の血を引く彼は、殺した相手の頭皮をはぐのが習わし。アバッチの伝統でもあるから。
 部下には、バットで脳天を叩き潰す野球小僧もいる。
 これまでのピットには、想像できない役。

333858_100x100_001  第3章「パリにおけるドイツの宵」は、家族を惨殺されたユダヤの美少女メラニー・ロラン(「真夜中のピアニスト」'05)の7年後の紹介。
 ナチの狙撃兵ダニエル・ブリュー(「グッバイ、レーニン」'03)が、彼女に惚れこんだ。

333858_100x100_011  第4章は「映画館作戦」。二重スパイのドイツ人人気女優役、ダイアン・クルーガー(「ナショナル・トレジャー」'07)の登場。

 これで主役4人が揃って最終章「ジャイアント・フェイスの復讐」を迎える。
 そして登場したヒットラーもゲッペルスもヒムラーもヘスも、さらには狙撃兵もバスターズも2人の美女も爆風の中に消える。
 生き残ったのは、ヴァルツとピットだけ・・・・・でお終い。

 この映画を見て、怒り心頭に達したのがヒットラー。「あり得ない!あり得ない!あり得ない!」と予告編でも本番でも喚いていた。
 まさにタランティーノ流のファンタジー映画そのものだ。

 監督に声をかけられ、ゲスト出演している俳優も多彩だ。
 マイク・マイヤーズ(「オースティン・パワーズ」'02)、アウグスト・ディール(「ヒットラーの贋札」'07)、ジュリー・ドレフュス(「キル・ビル」'03、「NHKフランス語講座」)、シルヴェスター・グロート(「わが教え子、ヒトラー」'07に続いて再びゲッペルス役)、マルティン・ヴィトケ(ドイツの舞台俳優、ヒトラーそっくりさん)。

 英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語が飛び交う映画である。 

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November 26, 2009

1412.なくもんか

016_640 「なくもんか」と、先週の興行成績は「ゼロの焦点」を抜いて邦画第1位。同じ東宝の配給だが、前者はテレビ朝日、こちらは日本テレビなのだ。

334591_100x100_001  監督・水谷伸生、脚本・宮藤官九郎、主演・阿部サダヲのトリオが放つ第二弾目の喜劇である。
 前作の「舞妓Haaaan!!!」('07) もオーバーアクション、下ネタギャグ満載だったが今回も同様、子供には見せたくない。

 しかし今回の作品は、宮藤が書いた初めてのホームドラマ。不幸な生い立ちの兄弟の再会劇を描いた「泣ける人情喜劇」、はたまた「爆笑悲劇」でもある。

 水谷監督が宮藤に注文したのは、菊地寛の「父帰る」と太宰治の「走れメロス」のクドカン版。さすがの宮藤、予測不可能な家族の物語となった。

334591_100x100_004334591_100x100_007_2 ドタバタの上手い阿部の相手に、弟役の瑛太と妻役の竹内結子を持ってきた配役が面白い。
 この異質のキャスティングが、喜劇を悲劇にもしてくれる。
 観客は、この組み合わせに泣かされるのである。

334591view008  スタジオにセットで組んだ下町商店街と、沖縄・読谷の空と海の対比も面白い。それほど必然性はないのだが、沖縄をもう一つの舞台にしたのは宮藤のサービス精神だろう。
 ただ上映時間の134分は長すぎた。もっと刈り込んでよいシーンもあったはずだ。

 他の出演者は伊原剛志、陣内孝則、三石研、塚本高史、小倉一郎・・・。認知症の母親役、いしだあゆみが笑わせる。

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November 25, 2009

1411.笑う警官

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 7年前北海道で発覚した警察官の覚せい剤事件と、翌年の道警による組織的な不正経理、いわゆる裏金発覚事件をヒントに、佐々木譲が書き下ろした「笑う警官」が原作。

 「沈まぬ太陽」と同様、現実の事件や関係者が想像される小説ではあるが、山崎作品に比べて完全なフィクションなので、ハードボイルド作品として楽しめる。

 映画化したのは、佐々木に執筆を勧めた角川春樹。脚本を書いた上に製作総指揮・監督と一人三役をこなした。角川にとっては「時をかける少女」以来、12年ぶりのメガホンである。
 麻薬事件でムショの「クサイメシ」を食った彼だけに、作品に賭ける熱意には並々ならぬものがある。

332960_100x100_002332960_100x100_004   主役は札幌のある所轄署の警部補(大森南朋「ハゲタカ」'08)。
 女性警官殺害の容疑で友人の巡査部長(宮迫博之「20世紀少年」'08)が指名手配される。さらには道警本部による異例の射殺命令も出される。
332960_100x100_003_3  表の捜査からは外されたが、信頼する仲間の刑事たち(松雪泰子「沈まぬ太陽」'09ほか)と秘密裏に事件を追ううちに、警察内部の闇に巻き込まれていく。

332960_100x100_007  「追うも警官、追われるのも警官」、警察の汚職を解明するための北海道議会「百条委員会」に召喚された友人を、主人公達は守りきれるのか。
 裏金造りの発覚を恐れた道警本部のキャリアたち(鹿賀丈史・矢島健一)との、スリリングな戦いである。

 作品のヒントとなったのは、「稲葉警部事件」('02)と「旭川中央署不正経理の発覚」('03)である。

 前者は、覚せい剤取締法で逮捕された稲葉警部の上司・道警釧路方面本部の警視が首吊り自殺し、同罪で逮捕された会社役員も札幌拘置所で自殺した不可解な事件。

 後者は、不正経理(裏金作り)が一地方署の問題だけでなく道内各警察署や道警本部まで拡がっていたという事件である。

 当時の道警本部長はその事実を否定、知事もまたそれを支持するコメントを出して紛糾した。
 また翌年には、元釧路方面本部長が「事実があった」と告発、弟子屈警察署次長も内部告発した。
 そして「裏金を受け取った」との遺書を残して、興部警察署長が自殺。結局3235人の警察関係者が処分され、10億近い金が道に返された。

 しかし映画とは異なり、5回も道議会に提案された「百条委員会」設置案は、自民・公明によって否決され、問題の解明は終わってはいない。
 (百条委員会とは、地方自治体の不正経理を調査するため議会に設けられる臨時組織で、関係者の出頭拒否や偽証は禁固刑など厳しい処分となる)

 さて映画の方、ラストに流れる主題歌「夢をとりもどすまで」は、ダイアン・ウォーレンが書き下ろし世界の歌姫ホイットニー・ヒューストンが唄っている。さすが、角川春樹の人脈の強さである。
 ただ、トップもラストもクレジット・タイトルが全て英語なのは、判りにくくて面白くない。

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November 24, 2009

1410.観世能

Image_12203423141 東大観世会のOBで今でも能楽を演じている友人から、渋谷の観世能楽堂に招かれた。

 鑑賞したのは、能楽のなかでも「重い」能といわれる「遊行柳(ゆぎょうやなぎ)、 副題というか貰った「観能のしおり」には、「青柳之舞(あおやぎのまい)・朽木留(くつきどめ)」とある。

 「諸国を行脚して念仏を広めている遊行上人が、奥州白河の関を越えると老翁が現れる。そして昔遊行上人が通った古道を教え、西行法師が歌を詠んだ朽木の柳に案内、十念(念仏など十種の思念)を授かり消えうせる。」
 「やがて朽木の柳の精が、烏帽子狩衣の姿で現れ報謝の舞を舞う。」

 こんな粗筋の能だが、2部構成で1時間40分という上演時間だった。
 シテ(主役)は岡久広、ワキ(脇役)森常好、大鼓・小鼓・太鼓・笛の囃子方に8人の地謡、後見は宗家二十六世の観世清和と武田尚浩という演者たちである。

 能は歌舞伎などと異なり、喜怒哀楽の表現を最小限に留め幽玄的な空間をつくる。
 そのせいか、鑑賞者の中には能の台本を片手に、コックリコックリと夢幻の世界に浸っている人も見かける。
 舞台上でも、1時間以上も無言で座りっぱなしの「ワキツレ」が、夢幻の境をさ迷っていたようだった。
 こちらは、正面最前列に座って眠ることなく最後まで見届ける。

Image_12435719936  鑑賞後は「黒瀬」に席を移して、友人を講師に能楽講座を開く。以下彼の解説の要約。

 「『遊行柳』は、人間だけでなく生きとし生けるもの皆成仏できるという、仏法の教えを能楽にしたもので、普通の能の2倍以上の時間をかけた大作。シテ・ワキとも熟練した能楽師でないと務まらない。」
 「後ろに控える後見は、舞台進行を見届ける役で総監督みたいなもの。演者の動きはもちろん、地謡、囃子にも通じ、シテ以上の実力を備えた上位者が務める。」
 「歌舞伎のように役者が見得を切って幕が下りる、というラストではなく、演者が一人ずつ退場していき舞台が全て空になって、初めて拍手が起こる。演者だけでなく観客も幽玄(夢幻)の世界に浸っているからだ。誰もいなくなって、現実の世界に戻り初めて感動の拍手になる。」

 古く猿楽の結崎座の太夫だった観阿弥清次とその子・世阿弥元清が室町時代の初期に大成させた「能楽」。
 三代将軍・足利義満以来、江戸時代も幕府の「式楽」として手厚く保護されてきた。
 能の魅力を「花」に例えた世阿弥は、「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」と、「夢幻能」のスタイルを今に伝える。
 久々の「能楽鑑賞」だった。 

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November 23, 2009

1409.東根物産フェア

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091123_022_640_2091123_023_640_2091123_030_640  リンゴにラ・フランス、お麩に玉こんやくと、山形の東根名産が並ぶ。

 毎年2回、月島西仲通り、通称もんじゃ・ストリートで開催される「東根市観光物産フエア」。天候にも恵まれて多くの人出で賑わった。

 21年前、「さくらんぼ」の苗木が寄贈された事から、中央区と東根市は友好都市協定を結んだ。そして東京湾大華火大会やさくらんぼ祭りなど、市民がお互いに交流を続けている。

 物産フエアは、6年ほど前から両者の民間の組織が始めたもので、6月末は「さくらんぼ」を目玉に、11月はラ・フランス などを売り物として産地と消費地の交流が進んでいる。

091123_046_640091123_048_640 秋のフェアのもうひとつの目玉は、山形名物の「芋煮鍋」。さといもに牛肉・麩・青ネギ・牛蒡が入った鍋で、一杯300円、近くのマンションからは鍋持参で駆けつけてくる。
 最上川河原での芋煮会とは趣は異なるが、ビル陰での芋煮も結構いける。

091123_038_640091123_039_640091123_028_640 東根は昨年秋、山形出身の友人の案内で訪ねた町(ブログ・1077号「出羽・味覚の旅」)。
 村上盆地の中心地、山形空港や新幹線「さくらんぼ東根」駅、そして「さくらんぼ」温泉・・・・。
 久し振りに芋煮を食べて、ラ・フランスと赤カブを買い、紅ばな油のプレゼントを貰って帰った。

 物産フエアは、今日の午後5時まで。東根市に、昨年からは河北町も加わって開催されている。 

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November 21, 2009

1408.ゼロの焦点

015_640  今年の東京国際映画祭でワールド・プレミアとして特別招待された作品。
 「文豪・松本清張、至高のミステリーが映画化。結婚式の直後に疾走した夫、そして連続殺人事件に巻き込まれる妻の運命は?」と紹介される。

 松本清張生誕100年記念作品として、東宝が直接製作した作品4_75395_6 だが、リメイク版である。48年前に、松竹が製作して大ヒットした。

 主人公の新妻・広末涼子の役は久我美子、会社社長夫人・中谷美紀は高千穂ひづる、会社受付嬢・木村多江は有馬稲子、夫役の西島秀俊は南原宏治だったと記憶している。

 松竹版は監督・野村芳太郎、脚本は橋本忍と山田洋次という錚々たるメンバーだったが、今回は、初めてのサスペンス映画を犬童一心が監督・脚本を担当した。
彼は、前作が上映された頃に生まれた世代だけに、今回の作品をミステリーの解明よりも時代全体を描く事に重きを置いている。
 作品のキーワードでもある「パンパン」は、もう死語であるし、彼女等を直接知っているのは我々が最後の世代なのだ。

 時代設定を原作のまま、昭和30年代半ばに置いているのも犬童の拘りだろう。
 リメイク版は、往々にして舞台を現在に置き換えるが、制作費がかさむのを覚悟して当時の金沢を再現した。そのため国内だけでなく、韓国でもロケした。

 30年代半ばは、戦後日本が大きく変わろうとしていた転換期である。「パンパン」に象徴される戦後の「闇」に翻弄されながらも、運命に坑う人たちが、殺人を犯しながらも「未来」を求めた時代でもあった。

 どんよりとした北陸の重い雲、暗い日本海の波しぶき、能登金剛ヤセの断崖は、そうした人々の心象風景となる。

 前作を見た人、原作を読んだ人、4回にわたるテレビ放送('71、'83、'90、'95)を見た人、それぞれによって今回の作品についての感慨は異なるだろう。
 清張生誕100年、時は確かに過ぎていく。

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November 20, 2009

1407.ジャック・メスリーヌ

013_640014_640 「沈まぬ太陽」が、10分の休憩を挟んでの202分の長・大作とすれば、「ジャック・メスリーヌ」は25分の場内整理時間を挟んでの247分。

 Part1ノワール編、Part2ルージュ編の2部に分れており、それぞれ1本分の入場料がかかる。だから別々の日に見ても良い。

 こちらは、25分と予告編の時間を利用してラーメン屋に駆け込み連続鑑賞。腰は痛かったが作品には満足した。

Tn01  タイトル名となった男は、フランスに実在したロマンチストなギャングスター。
 中流家庭に育った普通の男が、アルジェリア戦争除隊後に秘密軍事組織QASの手下になり、やがて欧米大陸を股にかけたギャングとして入獄・脱獄を繰り返し、「PUBLIC ENIMY NO1」と呼ばれる男になる。
 そして20年、図らずも生まれ育ったパリの下町で、警官隊から21発の銃弾を浴び「男の美学」を完結させるフイルム・ノワールである。

20090928015fl00015viewrsz150x  Part1は、アルジェリア解放戦線の若者を拷問にかけ、上司の命で射殺するところから始まる。
幼馴染のチンピラの誘いで、軍事組織出身のボスの下に。対立するギャングの縄張りを荒らしてカナダに逃亡、誘拐事件で逮捕され投獄・脱獄までが描かれる。

334851_01_03_03  Part2は、フランスに舞い戻ったメスリーヌが銀行強盗や金持ちの誘拐を繰り返し、パリ警視庁のBRIに捕まるが、またもや脱獄。
 死を予感して自伝を書き最後に・・・となる。

 メスリーヌの自伝を読んだプロデュサーも、そして脚本家・監督もジャック・メスリーヌ役はヴァンサン・カッセル(「イースタン・プロミス」''07)の他にはいないと確信していた。
 カッセルもまた、ヒーローではなく'60~'70年代のフランス社会を具現化した男を描く事を注文して引き受けた。

 その時代とは、ケベック解放戦線やドイツ赤軍・イタリア赤い旅団事件など、混乱する政治、腐敗する社会に対し、若者達が誘拐や殺人、爆弾テロで異議申し立てた時代なのだ。
 アルジェリアでのトラウマを背負った主人公も、そうした社会状況と決して無縁ではなかった。彼が、「伝説の犯罪王」としてマスコミに持て囃された背景も、そこにある。

 ロケは、フランス・カナダ・アメリカ・スペイン・イギリス・アルジェリアと、彼が実際に過ごした地を忠実に追って行われた。それは、銃殺されたジャック・メスリーヌ自身も脚本に参加!しているからなのだ。

 映画の冒頭、「映画である以上、一人の男を描くのにフィクションが入るのは仕方が無い」との断りもあるが。

Tn03334851_01_04_03   共演はギャングのボス、ジュラール・ドバルデュー(「愛の賛歌」'07)。ギャング仲間、ロイ・デュビュイ(「ロケット」'05)、マチュー・アマルリック(「潜水服は蝶の夢を見る」'07)、ジェラール・ランヴァン(「輝ける女たち」'06)他。

Tn02Tn04   彼を愛した女達、スペイン美女の本妻エレナ・アナヤ(「美しすぎる母」'07)、娼婦で生涯の恋人セシル・ド・フランス(「スパニッシュ・アパートメント」'02)、最後の女リュディヴィーヌ・サニエ(「スイミング・プール」'03)。

 作品は、今年のフランスのアカデミー賞(セザール賞)で主演男優賞・監督賞・音響賞受賞、昨年の東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞している。

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November 19, 2009

1406.晩秋・佃島

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091114_002_640091114_001_640091114_011_640 ご近所の佃島を散策、桜の葉は落ちすっかり晩秋の風情。
 造船所跡に建てられたリバー・サイドのマンション群も、ようやく周囲に溶け込み、歴史を感じさせる。

091114_018_640091114_021_640_3 隅田川河畔を歩いて初めて気がついた。永代橋の向こうにスカイ・ツリーが見える。
 東京の新名所、その伸びゆく様を時々カメラに収めておこう。

 散策およそ1時間、川面は暮色となった。

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November 18, 2009

1405.母なる証明

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 6年前「殺人の追憶」を撮って、韓国映画界に彗星の如く登場した鬼才ポン・ジュノ監督。
 今年40歳になる彼が、世界に向けて三度問いかけた作品が「mother」(原題)である。
 「殺人の記憶」「グエムルー漢江の怪物ー」に続いて、この作品もカンヌ国際映画祭に出品され、絶賛の嵐を受けた。

 殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追っていく母親の姿を極限まで描いたヒューマン・ミステリー。ブラック・ユーモアの中に人間の根源的な強さと弱さを描く。

 韓国の現代もテーマだ。「儒教」「ケイサツ」「ムラ」そして血の絆、それは変わるようで変わらない。それは今もなお、人々の暮らしを揺さぶっている。

 主役は母親のキム・ヘジャと息子のウオン・ビン。

334058_100x100_002  韓国の「お母さん」と呼ばれる大女優キム・ヘジャが、子を思う母親の過剰とも思える「無償の愛」の強さと、限りなく哀しい人間の「さが」をその存在感で見せる。

334058_100x100_005  ウオン・ビンは「韓国四天王」の一人と言われる大スター。兵役のために俳優を休業、この作品は5年ぶりの出演となった。
 近親相姦を思わせるほど母親に依存している彼が、時折見せる闇の世界。純粋さゆえに弱さを抱えた複雑な息子の心象を演じた。

334058_100x100_006  真犯人探しというミステリー・ドラマから、やがてジュノ監督が突きつける深い主題へと物語は進む。

 ラスト近く、鍼灸師でもある母親キム・ヘジャが自ら鍼を打つシーン。曝け出された白い太ももに、鍼が埋め込まれる。
 ここに「母なる証明」が具現する。 

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November 17, 2009

1404.沈まぬ太陽

Taiyo_wp01_wide 巨大組織に翻弄され、苦悩と葛藤の中でもがきながらも、「不屈の精神」を持って信念を貫いた一人の男の物語。

 巨大組織は「国民航空」(NAL)、男はその組織の労働組合委員長。経営に歯向かった故に左遷されて、カラチ・テヘラン・ナイロビと盥回しにされる。
 対称的に登場するのは、労組副委員長。御用組合を作りエリート・コースを駆け上る。そして重役に。

333831_01_01_03  主人公の組合委員長役に、 「ラストサムライ」の渡辺謙が自ら原作者に申し出て演ずる。
 副委員長役は三浦友和。3時間22分の超大作である。

 原作者は山崎豊子。「花のれん」で直木賞、「白い巨塔」で医学世界の腐敗を描き、「不毛地帯」「二つの祖国」「大地の子」の戦争三部作、そして1999年に「沈まぬ太陽」を出版した。

 きっかけは偶然だったという。別な仕事でケニアを訪れた山崎は、旅行をアテンドしてくれたJALナイロビ駐在員を知る。
 彼の過去を知った山崎は渋る彼を説き伏せて、「JAL」という大組織とそれに振り回された人生を語らせた。
 そして「その時代」の取材に入る。

 '60年代から'70年代、日本は高度経済成長を実現し世界経済の頂点に立っていた。しかし史上最悪の航空機事故「ジャンボ機墜落」は、そうした驕りを打ち砕く象徴的な出来事だった。
 
 1985年8月12日午後6時58分、JAL123便羽田発伊丹行き、ボーイング747SR-46の墜落。誰もが忘れられない事実である。
 映画は、その「御巣鷹山の惨状」から始まった。

 「映画『沈まぬ太陽』は、山崎豊子の小説をもとに映画化したフィクションです。登場人物、団体は全く架空のものであり、実在の人物、団体等とは間系がありません。」とクレジットが入るが、JALの拒否反応は予想以上だったようだ。
 撮影協力拒否はもちろん、製作側の角川映画や東宝に対し映画化の中止を申し入れたという。
 そのため羽田や成田でのロケは出来ず、タイの空港を使っている。

 原作の出版の時も、ひと揉めあったらしい。主人公だけが善人に祭り上げられ、周囲は「悪」の象徴とされる。
 実在のモデルを知る人たちにとっては、当然不快感を抱いただろう。

 山崎の作品の多くがモデル小説といわれ、資料にしたノンフィクション記録が、作品にそのまま反映されるケースが多々ある。そのため盗作問題をよく起す。
 「不毛地帯」ではシベリア抑留兵士の手記の引用、「大地の子」では旧満州での飢餓体験を書いた作者からの訴訟事件があった。

Taiyo_wp03_wide  「沈まぬ太陽」の場合は、事実の方があまりにもドラマチックなため、創作との境が見えなくなっている。文学作品としてより、読者はその事実を追ってしまうのだ。

 主人公のモデルは亡くなったが、悪役扱いのJALの当事者、登場する政治家のモデルの中には、まだ現存している人もいる。
 彼等が、この映画をみてどんな「感慨」を持つのだろうか。

 先日の新聞広告に、元首相の中曽根康弘の賛辞が掲載されていた。
 「稀に見る大作。時間を感じさせない映画でした」と。
 その中曽根をモデルにした首相を加藤剛が演ずる。

 当時の中曽根内閣、副総理は金丸、官房長官・後藤田、運輸大臣は三塚から橋本。現民主党の小沢が自治大臣、羽田が農林大臣というのも面白い。
 閣議のシーンでは、皆さんが顔を並べる。もちろん小林念侍、小野武彦等それぞれ役者だが。

 JAL再建のため首相が送り込んだ財界人・石坂浩二は、模範的な経営者、正義の味方として描かれるが、モデルが会長を務めていた大企業は倒産してもうない。

333831_100x100_003  監督は、共同テレビのエグゼクティブ・ヂレクターの若松節朗。「ホワイトアウト」('00)以来の久々の映画作品となった。
 主人公の妻役、鈴木京香はじめオルスターキャストである。

 あまりにもタイミングが合ったと言うのか、JALは政府支援を受けながらどう再建するかの土壇場と重なった。

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November 16, 2009

1403.風が強く吹いている

 「箱根駅伝」に挑戦する゛寄せ集め10人"の成長と絆を描く人間ドラマ。すべての人々に、勇気と感動をくれる爽やかな感動作。」
 こう紹介されて、今年の東京国際映画祭のワールド・プレミアに特別招待された。

 紹介通りの感動作である。とくに後半1時間に及ぶ箱根駅伝全区の映像は、迫力と感動に満ちていた。
 スポーツ青春映画を人間ドラマにまで昇華させたのは、スタッフ・キャストの一丸となった情熱だったに違いない。

334147_100x100_007  原作は、直木賞作家・三浦しおんの同名小説。それをベテラン脚本家大森寿美男が、監督して撮った。
 大森は、NHK大河ドラマ「風林火山」や「クライマーズ・ハイ」、映画「次郎長三国志」の脚本家として知られているが、今回脚本担当の予定が監督まで引き受ける羽目となった。
 それは、スタッフの中で「箱根駅伝」に対する思い入れが最も強かったからだそうだ。

334147_100x100_004 大森は、箱根往復10区を走る10人全てを主人公にした。エリートランナーからダメ学生まで、そこに一人ひとりのドラマを描いた。
 「走るとは何か?」と選手に問いかける事は、観客に「生きるとは何か?」を問いかける事に重なる。
 それが感動を呼び起こしたのだ。

334147_100x100_001_3334147_100x100_011_3 10人の若い俳優達も頑張った。プロのコーチから特訓を受け、長距離ランナーの走りを見せた。

 陸上部主将・小出恵介(「ROOKIES」'09)、エリート・ランナー・林遺都(「余命」'09)、マンガオタクでスポーツ嫌い・中村優一(「湾岸ミッドナイト」'09)、ヘビースモーカー・川村陽介(「ROOKIES」'09)、双子の選手・斉藤慶太・祥太(「鴨川ホルモ」'09)、アフリカからの留学生・ダンテ・カーヴァー(「感染列島」'09)、司法試験をクリアーした秀才・森廉(「真夏のオリオン」'09)、田舎の神童・橋本淳(「熱帯彼氏」'09)、雑学王・内野謙太(「男たちの大和」'05)、以上の10人。

 脇を固めたのは、津川雅彦、鈴木京香、寺脇康文らベテランという組み合わせ。

334147_04_02_03_2 映画のもう一つの主役は、「箱根駅伝」そのもの。
 と云ってもフィクションである以上、実在の大学を競わせる訳にはいかない。また、10区それぞれ映画のために道路占有使用も無理。
 そこで1区から10区まで、のべ3万人のエキストラを動員して九州で再現した。それに、本物の空撮やロングショットを巧に組み合わせて、臨場感あふれるシーンを作り上げた。

 10人の役者と、エキストラだが本物の大学駅伝選手。彼等の競う映像が上手く溶け合って、作品を盛り上げた。  

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November 14, 2009

1402.さつま・すんくじらの恵み

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064_640055_640  旧東海道の品川宿で、「さつま・すんくじらの恵み~食と酒の祭典2009~」が開催されている。
 このイベントは、上記「南さつま地域資源活用促進協議会」が、地元・品川宿まちづくり協議会などの協力を得て開いているもの。
 
  鹿児島の西南端にある「すんくじら(隅っこ)の町」から、食と酒と風景と人情を発信しようという、初めての試みである。

057_640_2051_640_3   促進協議会については、ブログ1347号('09.9.13)でも紹介したが、日本商工会議所の「地域資源の発掘・活用」事業に採択されたもので、「商品を介して、人々との交流を図る」事を目的としている。

 会場となった旧東海道通りには、「かごしまのソウルフード」や「冬の南国『鍋』」の店など九つのショップ、それにライブや「焼酎学講座」も開かれる。

059_640060_640062_640_2  面白かったのが「暗闇ごはん~江戸×薩摩」のイベント。
 完全に視覚を奪われた中で、残された嗅覚・味覚・聴覚・触覚をフル回転させて食事をいただく中から、本物の味を知る事が出来る。
 食材は南さつまの産物を中心に、江戸野菜の「品川蕪」などを交えての四皿。地域の風土と歴史を味あう事が出来た。

 「さつま・すんくじらの恵み」は、明日15日の18時まで。会場は、京急新馬場駅から5分の旧東海道品川宿。 

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November 13, 2009

1401.東京道産酒の会

091112_007_640_2 北海道に生まれた人、北海道で青春を送った人、北海道での仕事に情熱を燃やした人、北海道にエールを送る人たちの集まりが「東京道産酒の会」。
 月に一回、地元で仕込まれた酒と北海道の食材で作った肴を味いながら、ミーティングを楽しんでいる。

091112_006_640  206回、昨夜のゲストスピーカーは俳人の西村和子さん。「知音(ちいん)」代表で、教育テレビ「NHK俳句」の選者でもある西村さんは、この秋恵庭や小樽、知床など句会の仲間と歩かれたそうだ。
 今回のお話は「俳句とお酒」、お酒の好きな西村さんから道産酒愛好の皆さんへの「酒の話題のプレゼント」である。

 「俳句には、新年から春・夏・秋・冬と季題(語)があるが、お酒に関しては全ての季節にあるのがおもしろい」

 「新年はまず『屠蘇(とそ)』、一年の邪気を祓う薬酒だが、年賀の客に屠蘇を祝った後に勧める酒が『年酒』」
 「春は『花見酒』をすぐ思いつくが、雛祭りの『白酒(しろざけ)』は春の季語」

 「夏は『冷し酒』(冷酒)から始まって『ビール』『梅酒』が季語。暑気払いに飲む『焼酎』もそうだが、『一夜酒(ひとよさけ)』つまり『甘酒』も夏。江戸の頃は夏になると、甘酒売りが町を歩いた。端午の節句に供える『菖蒲酒(あやめざけ)』もある」

 「秋は新酒の仕込みの季節だけに、酒の季語は多い。『新走(あらばしり)』『今年酒』『濁酒』(どぶろく)に始まって、『月見酒』に『菊酒』。これは重陽の節句に菊の花を盃に浮かべて飲んだ事からきた季語」
 「同じく重陽の節句に、酒を温めて飲むと病に罹らないとの故事から『温め酒』(ぬくめ酒)、そしてそれ以前の酒は『古酒』」
 「猿が木の実を冬に供えて隠しておいたところ、発酵して酒になったという『猿酒』(ましら酒)、という秋の季語もある」

 「冬は『熱燗』(燗酒)に『寒造』、『雪見酒』『霞酒』『あられ酒』『玉子酒』『鰭酒』と季語も多い。熱燗でいっぱいのあとは、ぜひ一句を」

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091112_009_640 昨夜は今年最後の集い。時間をたっぷりとってジャズのナマ演奏を楽しんだ。
 「タイガー・ジャズ」「メモリーズ・オブ・ユー」「知床旅情」「鈴かけの道」、ピアノ中山育美、クラリネット後藤雅広、ギター阿部寛のみなさん。

 酒の肴は、帆立のぬた和え、鱈子糸こんにゃく炒り煮、本ししゃも若狭焼き、鱈昆布締じめ、鮭雲丹焼き、鰊昆布巻き、牡蠣フライ、鮭親子御飯ほか。

(東京道産酒の会の世話人を、今年いっぱいで退任した。「集い」の紹介はこれが最終回となる)

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November 12, 2009

1400.第41回日展

091109_010_640_2  大学時代の後輩の作品が、昨年に続いて日展に入選した。招待状が届いたので、六本木に出かけた。

 「日本美術展覧会」、今年で41回を迎えた日本最大の美術展。先月末から国立新美術館で開催されている。

 日展は、1907(明治40)年に時の文部大臣・牧野伸顕が創設した。
 「文明国として世界に誇れる芸術文化の育成」をと、文部省美術展覧会(文展)を開催したのに始まる。

007_640_2  その後、帝展、文展、日展と改革を重ねたが、二科会や東光展とは異なり、いわゆる官主導の「官展」の系統を継ぐ。
 現在は、日本芸術院から分かれた社団法人「日展」が主催する公募展となった。

010_640_2   展覧会は、日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の5部門に分れ、国立新美術館の3フロワーのほとんどを占めていた。

009_640008_640  友人の作品は、洋画部門に展示されている。
 題は昨年と同じ「ひまわり」。ドライフラワーの「ひまわり」は、彼女のモチーフ。長い闘病生活を経てようやく絵筆を執るようになった時、目にした光景だったという。

 東光会の会員でもある彼女の作品は、このブログでもたびたび紹介しているが、年々そのタッチが明るくなるのがうれしい。

091109_640  「日展」は、12月6日(日)まで六本木の国立新美術館で開催。
 入場料は1200円と少々高いが、午後4時30分から6時まで鑑賞できる「トワイライトチケット」300円もある。
 昨夕も、そのチケットを求めて大勢の人が時間待ちしていた。金曜日は、午後8時まで延長される。
 また本日は、天皇御在位20年を祝して、入場料は無料。 

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November 11, 2009

1399.国立寄席

151_640 ひとまく会の同好の諸兄と、久し振りに「国立寄席」を鑑賞した。国立演芸場・11月上席の舞台である。

153_640  出し物は落語・漫才から紙切りまで、盛り場で古くから上演されてきた大衆芸能「寄席」の再現である。

 出演者は初めて見聞きする名前だった。前座の一也の落語「転失気」に始まり、トリは桂南喬の落語「ふぐ鍋」まで、9人の出演者で3時間の公演。料金はシルバー1100円である。

 これまでテレビなどでは、お見受けしない面々。ところが予想以上に面白かった。寄席のツボを心得た演者ぶりなのだ。

 柳家ろべえの落語「牛ほめ」はもう一つだったが、次の漫才・すず風にゃん子・金魚のそれは腹を抱えて笑った。プログラムでは、結構若くて可愛いコンビの写真で紹介されていたが、実は??年後の現在の姿。しかし芸は磨かれていたようだ。

 続いて初音家左橋の落語「宮戸川」。ダーク・広和の手品は、小品ながら手先の捌きは見事だった。客席からは感嘆の声も聞こえる。
 ベテラン柳家喜多八の落語「あくび指南」で仲入り。

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  紙きりの桃川忠は、会場を沸かせた。お客さんからの注文による「七五三」や「ジャイアンツ原監督の胴上げ」は、見事な鋏捌きで黒白の美を見せた。

 桃月庵白酒は落語「ざるや」を軽く流し、太田家元九郎の津軽三味線に引き継ぐ。
 浅草に住んで30年の芸人だそうだが、津軽弁を駆使した朴訥なしゃべりと、「アリラン」「コンドルは飛んでいく」やベンチャーズの曲等を、太棹で聞かしながら最後は「十三の砂山」。故郷の代表的な民謡で締めくくったのはさすが。

 トリは桂南喬の落語「ふぐ鍋」。大ベテランらしい味のある語りで締めくくった。

 昨日の上席は千秋楽。世田谷の生涯大学の高齢者と、若い大学生の野外研修で場内は満席。学生達は、ボールペン片手に「お笑い」のメモに必死だった。多分、このあとレポート提出が控えているのだろう。

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November 10, 2009

1398.晩秋・栗野高原

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091103_174_640091103_187_640091103_177_640 高千穂峰(1574m)・新燃岳(1421m)・韓国岳(1700m)と続く霧島連山。
 その西端にある栗野岳(1102m)中腹の原生林から吹き上がる「八幡地獄」の噴煙は、肥薩線の車窓からも見える。

091103_172_640091103_192_640  八幡地獄の熱湯を引いた一軒宿の温泉が栗野岳温泉「南州館」、知る人ぞ知る「日本秘湯を守る会」の宿である。

 前夜は7年ぶりにここに泊まり、地元に住む旧友と焼酎を酌み交わした。

091103_162_640091103_163_640091103_168_640 明礬緑磐泉の「竹の湯」、通称ドロ湯は関節痛に効く。
 硫黄泉の「桜湯」は胃腸病、自然の蒸気を利用した「むし風呂」は神経痛と、三つの温泉の効能がそれぞれなのも面白い。

 明治の初め、征韓論に敗れて帰郷した西郷南州は、ここで1ヵ月疲れを癒した。宿の名前の由来である。


091103_221_640091103_210_640091103_220_640  温泉から東に1キロ行くと栗野原農場がある。
 1952(昭和27)年、北海道から入植した東大卒の開拓農民夫妻が、原野を切り開いて開墾した牧場なのだ。

 取材で知り合って以来半世紀、いつも文を交わし帰省の折りは必ず訪ねた。高原における「草地酪農」のシステムを完成させた彼は、懇請されて地元の町長も務めた。

 酪農を終えた今、90歳の彼は開墾した牧草地を再び森に戻そうと務めている。
 「誓願の森」、ここはそう呼ばれている。

091103_213_640091103_214_640_2091103_202_640 牧場の半分は、鹿児島県が譲り受け「霧島アートの森」を作った。

 「五感で楽しむ自然豊かな現代彫刻美術館」、草間彌生(右端の写真)、西川勝人(右)、チェ・ジョンファ、ジョナサン・ボロフスキーなど、内外の著名な彫刻家の作品が森の中に並んでいる。

091103_147_640091103_152_640091103_151_640_2  「アートの森」の前にある栗野岳レクリエーション村では、造形コンクールも開かれていた。
 学校や地域自治会単位で、自然物を利用した造形作品を並べて競うもの。
 地元・湧水町は、町ぐるみでアートに取り組んでいる。
      

 夜は高千穂峰の麓にあるホテルで、高校同級生の「古稀の会」。
 霧島連山の夕景も美しかった。

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November 09, 2009

1397.肥薩線100年の旅

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 肥薩線・嘉例川駅を出発する特急「はやとの風」、今人気の観光列車である。

091103_072_640091103_073_640091103_075_640_2   午後1時14分、鹿児島中央駅で特急「はやとの風」に乗車、肥薩線100年を体験する吉松までのショート・トリップに出かけた。

 鹿児島・宮崎・熊本の3県にまたがるJR肥薩線は、今月21日に全線開通100周年を迎える。

091103_120_640  1901(明治34)年に鹿児島を起点に国分(隼人)まで、2年後吉松、そして熊本側からは八代~人吉間が1908(明治36)年に開通した。
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 しかし最大の難所は県境、険しい峠を越えるためスイッチバックやループなど、当時の最先端技術を駆使して1909年に全線を結んだ。
 九州の大動脈「鹿児島本線」が誕生したのだ。

 鹿児島本線はやがて海岸を通る新線に移り、隼人~八代間が「肥(後)薩(摩)線」の名で現在に至っている。

091103_115_640091103_090_640091103_089_640_2 100周年が近づき沿線各駅でイベントが開催されると、鉄道フアンが集まる。
 なかでも、レールと同じ歴史を持つ「嘉例川駅」は、いつも観光客で賑わっている。

 開業当時の姿を残す木造平屋建ての駅舎は、隣の「大隈横川駅」とともに国の「登録有形文化財」に指定された。
 そしてその駅舎を、5年前に町(旧隼人町、現霧島市)がJR九州から18万867円で買取り、展示会場になどに利用しながら保存に努めている。

091103_094_640_2091103_240_640091103_116_640  名物駅弁「百年の旅物語・かれい川」は一日200個限定販売、午前中で全て売り切れるので予約が必要。
 地元の主婦が、野菜をたっぷり使って作った駅弁は、ここ2年「九州弁当ランキング」のトップを維持している。

091103_131_640  鹿児島から53分、嘉川駅で特急「はやとの風」を降り、村を散策。50分後、普通電車に乗って吉松駅に着いたのは午後3時35分、40年ぶりの肥薩線の旅が終わった。

091103_137_640091103_139_640_2091103_133_640_3  吉松は鉄道で栄えた町である。
 ここから宮崎・都城へ吉都線が分岐する。そして県境を越えて熊本・人吉へと肥薩線(山線)は伸びる。
 駅前には、20年前までこの地を走ったSLが保存されていた。

091103_146_640091103_141_640091103_145_640 駅の近くにある「みやした菓子店」。
 鉄道フアンであるご主人が、SLの燃料・石炭にちなんで売り出したのが、「汽笛饅頭」。
 店内はミニ鉄道博物館、ご主人の解説も堂に入っていた。

 夕方、吉松から次の目的地・霧島山系栗野高原に向かう。

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November 08, 2009

1396.向田邦子展

091103_238_640091103_640 鹿児島帰省中にちょっと時間があったので、城山の麓にある「かごしま近代文学館」を訪ねた。

 ここでは、先月から今月末まで「向田邦子展」が開催されている。

 向田さんの生誕80年を記念して、かごしま近代文学館がプロデュースした特別企画展で、「彼女のすべて26のキーワード」が副題となっている。

 向田さんは東京・世田谷の生まれだが、サラリーマンだった父親の転勤で小学校時代(10歳の頃)のおよそ2年を鹿児島市内で過ごした。
 居宅も通った尋常小学校も、この文学館近くだったという縁もある。

 彼女にとっては、ここでの生活が印象深かったようで、テレビやラジオドラマの中に鹿児島はたびたび登場している。そしてエッセイの中で、「鹿児島は自分にとって故郷もどき」と書く。

 特別展示室には、ドラマの脚本や小説の原稿をはじめ、向田本人の肉声テープや「阿修羅のごとく」の構想メモ、それに器、書画、骨董など、新資料もふくめ450点がAからZまでのキーワードで並べられていた。

 なかでも彼女が海外旅行をはじめ、様々な場で着用した衣服が圧巻。文章だけでなく向田さんのライフスタイルの魅力を伝えてくれる。

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091103_055_640091103_057_640  かごしま近代文学館の1階には常設展示として、向田さん他、海音寺潮五郎、林芙美子、椋鳩十、梅崎春生、島尾敏雄さんの業績や作品世界を紹介した「鹿児島ゆかりの6人の作家」コーナーがある。

 この6人の作家のうち、林さんを除いた5人の方々とは現役時代仕事でお目にかかっている。コーナーではお一人おひとりの写真を見ながら、懐旧の感にひたった。

 また2階には、有島武郎や一色次郎、吉井勇、山口誓子など鹿児島出身の文学者22人の業績や資料も展示されている。 

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November 06, 2009

1395.さまよう刃

002_640 愛娘を、未成年の少年達に犯され殺された父親の復讐劇。

 「最愛の人を奪われた時、あなたはどうしますか」
 復讐では何も解決しないむなしい行為だと判っていながら、犯人を追う父親を通して、「法と正義」「命の意味」という重いテーマを描く。

 東野圭吾の衝撃の問題作。'04年発表、これまで150万部のベストセラーとなった。「容疑者Xの貢献」('08)に次ぐ映画化である。
 この作品は、「光市母子殺害事件」での元少年死刑判決と並んで、昨年の少年法改正にも大きな影響を与えた。

 丁寧に描いている。徹底的に削ぎ落とした父親のセリフ、押えに押えた演出が光る。監督はプロデューサー・脚本家としても知られる松竹出身の益子昌一。「むずかしい恋」以来の2作目である。
 撮影に中国の「レッドクリフ」のカメラマン、王敏を迎えたのも成功しているし、音楽はベテランの川井憲次が、自らキーボードを担当している。

334421_100x100_002  しかしこの作品を、重厚なものにしたのは父親役の寺尾聡の演技である。たぶん彼以外に、この役に耐えられる役者はいまい。「半落ち」('06)の演技を思い出す。

S002  「警察は市民を守るんじゃなく、法律を守るのか」と、悲痛な叫びを上げる若い刑事に竹野豊、コンビを組むベテラン刑事に伊東四朗。
 菅平の民宿の経営者親子、山谷初男と酒井美紀の存在感が大きい。

 作者自身「なぜこの小説を書こうと思ったかについては、ここで語らないことにする。じつは、自分でもよくわからないからだ。」と述べる。
 寺尾が電話で吐露する最後の言葉に、作者すら答えられない「少年法」問題の難しさがにじみ出る。 

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November 05, 2009

1394.ファイティング・シェフ

001_640 副題が「美食オリンピックへの道」。
 2年に1度開催されるフランス料理の世界一を決める'07年「ボキューズ・ドール」に、スペイン代表として参加した若手シェフを追ったドキュメンタリー映画である。

 これが本当に面白かった。スリリングでエキサイティング、スポーツのオリンピックでアストリートを追ったこれまでのどのドキュメンタリーより出来がいい。
 まさに国を背負って「食文化」に賭けた、若者のヒューマン・ドキュメントであった。

Img_01 「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」は、フランスのポール・ボキューズ(右の写真)の提唱によって22年前に始まった。
 ボキューズは、1926年生まれ世界一有名なシェフと言われる三ツ星レストランの経営者。京料理や懐石を取り入れたフランス料理で、日本でも知られている。

 料理コンクールの開催は2年に1度、会場はフランス・リヨン。その前には、アジア、アメリカなど地域予選もあり、それを突破した24ヵ国によって競われる。

Img10_2  コンクールでは、与えられたテーマの食材をそれぞれエレガントかつオリジナリティ溢れる調理方法で、制限時間内で料理しなければならない。
 審査員のみならず、各国からの応援団の目前で、それも共通化した不慣れな厨房で作る。
 味はもちろん、盛り付けや容器、2人のアシスタントとのコンビネーション、後片付けなど衛生面も審査の対象になるのだ。

 '07年のテーマとなった食材は、肉料理に「フランス・ブレス産の鶏肉」、魚料理に「ノルエー産のオヒョウとタラバガニ」。付け合せや組み合わせは、それぞれのオリジナリティーとなる。

Img_thumb09  大会までのおよそ1年、来る日も来る日もテーマ食材を使った料理に挑戦、週に一度は国内のベテランシェフに試食してもらいアドバイスを貰う、というのが面白い。まさに国のメンツをかけての挑戦なのだ。

 先輩シェフィたちからの厳しい批評に落ち込んだり、アシスタントとのチームワークの乱れなどハラハラドキドキ、まるでドラマの世界だ。

Img_thumb02_2Img_thumb07_2   スペインチームの結果は別として、優勝は左の写真のフランス。日本も右の様な料理で6位と最優秀アイデンティティ賞を受賞した。
 また今年の大会では日本は8位、次回は'11年1月25・26日に開催されるそうだ。

 映画のラスト、母親の手料理が最も美味しいと手伝う息子のシェフが微笑ましい。  

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November 04, 2009

1393.焼酎バー「黒瀬」(108)

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091103_048_640_2 吹上砂丘の西端の町・南さつま萬世、私の故郷である。
 この地名を商品名にした本格焼酎「萬世」は、焼酎バー「黒瀬」の人気銘柄のひとつ。お客さんに勧めながら、町のPRも忘れない。

091103_043_640091103_032_640_2091103_038_640   帰省の折に必ず立ち寄るのは、「萬世」の焼酎蔵。
 砂丘の松林に囲まれた蔵はその名の通り「松鳴館」、中では今年の新酒が仕込中だった。

091103_019_640_4091103_012_640_4091103_011_640_2  松鳴館では、毎年新しい銘柄の本格焼酎を開発している。
 新しい蔵のオープンを記念して造られた「萬世松鳴館」は、3年前の全国酒類コンクールで本格焼酎部門総合1位を獲った。091103_010_640
 そして今年は町にある山の名を銘柄にした「蔵多山」が、国際食品コンテスト「モンドセレクション」で最高金賞を受賞した。

 このコンテストは、50年ほど前からベルギーにある国際機関が行っているもので、ビールやスピリット、菓子など部門毎に技術的水準を審査している。
041  最高金賞を筆頭に、金賞、銀賞、銅賞などの賞があり、杜氏たちの励みにもなっている。
 
 「蔵多山」は、昔ながらの木桶蒸留器で蒸留し、地下貯蔵庫のかめ壺で静かに熟成させたもの。
 やわらかなやさしい風味が売り物、酒販店で見つけたらぜひお試しください。1800ml瓶で2,940円(全国共通価格)です。

 今回の帰省の旅、館内限定販売の「萬世松鳴館・原酒」と「蔵多山」、「味蔵」「波濤」「黒壱」など7本を土産に買った。
 それぞれ飲み比べてみよう。 

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November 03, 2009

1392.焼酎バー「黒瀬」(107)

(前号に続いて「DBJ産業ミニレポート」の概要)

20070823n0001 レポートは、「消えた本格焼酎前線への対応策は、ブランド化と情報公開」(P7)と強調する。

 「ブランドには米国型と欧州型の2種類がある。米国型は、商品のみに注目して効率を考えて広告を打つ。このやり方は、経済が成熟すると旗色は悪くなる」
 「欧州型は、商品よりその背景にある伝統とか、企業理念、生産者の取り組みの姿勢、文化、地域との一貫性を大切にする」
 
Imgp0015_640  「本格焼酎のブランド化は、欧州型である。それは黒豚など南九州の他の産品にも通ずる」

 「ブランドのキーワードは一貫性である。たとえば地域の伝統文化との一貫性、商品企画や広告と売り場の一体感でもある」
 「本格焼酎なら、生産者の思いを流通やユーザーが共有するという一貫性である」

Imgp09112_640011_640  「焼酎業界にとって必要なのは、情報の公開である。(これまで)酒販店で伝えていた情報を、ラベル等スーパーでも確認できる方法で、消費者に伝えなければならない」

 「加工食品では、主原料の原産国表示義務が検討されている。甲類や混和焼酎では、原料アルコール輸入国(ブラジルやパキスタン)の表示が必要になるかもしれない」
 「本格焼酎業界でも麦焼酎や黒糖焼酎では、外国産原料の表示義務が生じるが、それもバランスである」
 「黒糖焼酎の場合、砂糖きび生産に対する所得保障の施策が出来れば、域内原料で十分賄える」

020_640_4  (私のふるさと南薩摩では、既に地元の芋を原料にしたものに限り「南薩摩本格いも焼酎」のラベルを貼って、他の焼酎と差別化している)

 「総合的な政策によって、メーカーと消費者の情報量格差が縮まれば、焼酎前線は復活し本格焼酎業界は、再び活況に沸く」
 「このような未来の展望が開けるまでは、相応の時間が必要だが、その間南九州の蔵元は、自らの製品や収益を分析し、企業戦略を構築して凌がなくてはならない」

                                      (終り)

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November 02, 2009

1391.焼酎バー「黒瀬」(106)

06_640 久し振りに鹿児島に帰省した。故郷の焼酎の蔵元を訪ねたり、友人知人たちと盃を酌み交わした。
 話題の一つは、地場産業の「焼酎」の将来、それも本格焼酎市場の動きである。

 DBJ(日本政策投資銀行)南九州支店で、先月公表された「産業ミニレポート」を手に入れた。
 それには「失われた本格焼酎前線~甲乙混和へどう対応すべきか~とのタイトルが付けられている。
 そして「南九州から全国に北上していた本格焼酎前線が突然消滅した」(P4)と ショッキングな分析がリポートされていた。

 以下、その概要を報告しよう。

Imgp0898_640_3  「酒類の消費減退が続くが、これまで堅調だった本格焼酎まで 様子がおかしい」
 「その転機は2003年だった」

 「常識的には、酒類の価格が下がれば消費が増えるのだが、本格焼酎だけはここ30年、実質価格が上昇しても消費量が増える例外的な商品だった」
 「それは、南九州限定のの焼酎が評判となり、消費地域が域外(東京や大阪などの都市圏)に拡大していった、つまり焼酎前線の北上が続いたからである」

Imgp0907_640 「焼酎前線の北上は、これまで安くて不味い酒との誤解があった焼酎を、飲んでみたら美味しかったと評価されたからだ。しかし(焼酎ブームが続き)市場が成熟すると、前線は消える」
 「それはなぜか?2003年の小売の自由化の影響だと考えられる」

 「酒類販売自由化によって、スーパーが焼酎を扱うようになる。その上、これまで酒販店が積極的に扱わなかった『甲乙混和焼酎』などが本格焼酎と並んで売られる」
 「さらにスーパーでは、酒販店のような対面販売ではないので(商品に対する)情報量が低下する」
 「そのため本格焼酎までもが、甲乙混和同様の『ただの安い酒』に見られ、消費者が離れていった」

                               (続 く) 

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