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November 30, 2010

1708.ソフィアの夜明け

012_640  「元アルコール依存症の画家と彼の反抗期の弟の関係を軸に、不安定な社会下における個人の魂の置き場所を見つめる人間ドラマ。やりきれない閉塞感が自由で若々しい演出によって昇華され、美しい余韻を残す新人監督第1作」

 昨年の東京国際映画祭のパンフで、こう紹介されたコンペ参加作品「イースタン・プレイ」。
 ブルガリア映画の邦題を「ソフィアの夜明け」と変えて、1年ぶりに公開された。

337540_01_04_03_3  コンペの審査委員長アレハンドロは「参加作品15本の中では際立った作品」と激賞。「東京サクラグランプリ」と最優秀監督賞、最優秀男優賞の三冠を受賞した。

20100823008fl00008viewrsz150x  監督賞を受賞したカメン・カルフは、フランス国立映画学校出身のCM演出家。
 幼な友達のフリスト・フリストフの破天荒な生き方を、主人公のモデルにして脚本を書き監督した。
 そのフリストフもまた主役として映画初出演、男優賞を受賞したのだ。

337540_01_03_03  パンフに紹介されているように、人生を見失い孤独に生きる青年芸術家が、偶然に知り会ったトルコ人の美少女に想いをよせて、再生の道を模索するというストーリー。
 ブルガリアの首都ソフィアの夜明けのシーンが、象徴的に描かれているのでそれを邦題とした。

 主演したフリスト・フリストフが、撮影終了直前に薬物中毒で急死するという悲劇があり、その死を乗り越えて完成させ奇跡の青春映画と云われている。
 しかし作品の底流には、ブルガリアに代表される旧ソ連圏の東欧社会の閉塞感と、かってオスマントルコの支配下にあったブルガリア人のトルコ人にたいする鬱積した感情が合わせて描かれている。

 スキンヘッドでトルコ人を襲うネオ・右翼のチンピラの弟役は、アルメニア出身のオヴァネス・ドウロシャンが映画初出演。なかなかの存在感。
 美少女は、これまでも各地の映画祭で女優賞や新人賞を受賞しているトルコの女優、サーディッド・ウセル・アクソイ。

 共産主義という統制からは解放されたものの、グローバル化したブルガリアは新興資本主義の格差社会。
 絶望の淵にある若者達のやりきれない苛立ちは、決して今日の日本と無縁ではない。

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November 28, 2010

1707.七十を過ぎてわかったこと

034_640  友人が愛妻をガンで亡くした。弔意のお礼として送られてきたのが、この本である。
 商社マンとして海外を駆け回った彼は、剣道8段にして禅を嗜む。今も元気に後輩を指導している。

 本の著者は西村恵信老師。元花園大学の学長で、臨済宗妙心寺派の禅僧である。
 西村老師は、海外に留学してキリスト教学などを研究した宗教学者でもある。
 そして今、禅文化研究所の所長の任にある。

 著書は、季刊「禅文化」掲載された「三余居窓話」をまとめたもので、これで3冊目。タイトル通り、老境に入った師の想いが27編綴られている。

 全てを紹介するのは力不足なので、その一部だけ紹介しておこう。我が友の辛い心情を慰めた1篇かと思うので。

 「我が事(じ)としての老い」、師が古稀を迎えた7年前の随想である。

 「七十の大台に乗ると、なんやら自分でも老人にになったような気がしだしたのは事実である。『六十にして耳順(したが)い」、つまり六十代の自分はなるべく自己主張を控えるようにし、ただ黙って若い人のいうことを聴いていた孔子様も、七十になるともはやそんな嘘で固めたような生き方をやめて、『心の欲する所に従って、矩を超えず』というわけで、毎日を自分ののしたいようにして生きることだと教えている」

 「現代のように価値観の多様と自己主張の激しい時代でも、老人の発揮し得る力があるとすれば、それは饒舌の時代のブレーキとなる、深い沈黙ではなかろうか。」
 「沈黙して事態を見つめ、常に将来に可能性を残すことは、一種の反時代的精神であり、忍耐を必要とするが・・・・正しい方向を見定める舵手としての老人の仕事ではなかろうか」と、ローマ時代の大政治家キケロの「老年の豊かさ」を引用する。

 そしてキケロの「老年には死が近いということ」についての、喜びに充たされた心境を紹介する。

 「老人は何かを期待することさえできないというかも知れないが、老年は青年が望むものをすでに手にいれてしまった。青年は長生きしたいと望むが、老人はすでに長く生きたわけだ」

 友人は臨済宗妙心寺派が組織する禅集団「花園会」の会員、今日も座禅をくんでいるだろう。

 西村恵信著「七十を過ぎてわかったこと」('10.7刊)
           発行・禅文化研究所 定価2000円。

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November 27, 2010

1706.脇役物語

_640_2 映画「脇役物語」に、友人で落語家の林家彦いち師匠が出演しているというので見にいった。
 もちろん「主役」ではなく文字通りの「脇役」、計5カットだけの登場だったがセリフも多く、身贔屓かも知れないが脇役として光って!いた。

337494_100x100_002  「主役」は、ベテラン「脇役」の益岡徹。長編初の「主演」作品である。

 役者としても実生活でも脇役の中年男が、キラキラ輝く役者志望の女性と会った時、そこに「主役」の世界が広がったというストーリー。

337494_100x100_006337494_100x100_003_2  そのヒロインを演じているのは、永作博美。大ベテランの彼女がなかなか可愛い。

 准主役級に津川雅彦と松坂慶子が登場し、ほんとの「脇役」には彦いちほか、柄本明、前田愛、柄本祐、イーデス・ハンソン、佐藤蛾次郎、角替和枝、中村靖日の面々が並ぶ。
 柄本明など、2カットセリフなしの贅沢なキャスティングである。

337494_100x100_007 MITでビデオアートを学んだ緒方篤が、原案・脚本・製作・監督の4役。ヨーロッパで映像作家・喜劇役者として活躍している彼にとっては、初めての長編映画監督だった。

 50年以上も映画の脚本を書いてきた白鳥あかねが、緒方の才能に注目して引っ張り出した。
 彼女は共同脚本にキャスティング・ディレクターを引き受ける。
 錚々たる「脇役」が顔を並べたのも、白鳥だからであろう。

337494_100x100_005  5月の朝日新聞・GLOBEでも紹介されていたが、彼は緒方貞子さんのご子息。ハーバートを出た後、サラリーマン生活も経験したが映像の世界に将来を賭けた。

 日本というより海外での評判が高く、これまで発表してきた短編作品は数々の映画賞を受賞している。
 彼にとっては邦画・外国映画との区別はなく、この作品もタイトル・デザインはオランダのプロダクション、音楽もロサンゼルス在住のジェシカ・ローイ、ポスト・プロダクションもニューヨークの会社と国際的で、海外の映画祭に次々と出品している。

 ウッディ・アレン作品の幾つかのシーンを思い浮かべるが、緒方の狙いも万国共通の「知的コメディ」なのだ。

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November 26, 2010

1705.ストーン

011_640

 「悪を憎み続ける男、ロバート・デ・ニーロ。正義をあざわらう男、エドワード・ノートン。男たちを蝕む女、ミラ・ジョヴォヴィッチ。ハリウッドきっての演技陣による、ラストまで息を抜かせず観客を魅了するサスペンス。」
(映画祭パンフから)
  「クロッシング」と並んで、東京国際映画祭に特別招待された作品。

337879_100x100_001_2  ところが残念な事に、現在公開中の映画館は全国で4ヵ所。いわゆる単館上映である。

 その理由は、宗教への関わり方にある。キリスト教世界についての一定の知識や理解がないとサスペンスが迫ってこないのだ。

337879_100x100_008  お話は、仮保釈を迫る放火犯の囚人とムショのケースワーカーの「神学論争」に囚人の妻がお色気で絡むというもの。

337879_100x100_010  冒頭のパンフに沿って紹介すると、その真面目で信心深いケースワーカーがロバート・デ・ニーロなのだが、ミラ・ジョヴォヴィッチに誘惑されたあとは、神様そっちのけで野獣化してしまう。

337879_100x100_005  一方、罪の意識などひとかけらも持っていなかったチンピラのエドワード・ノートンは、ムショの図書館で手にした原理主義のパンフを読んで、神の啓示を受けてしまう。
 早くムショから出て寝たかった妻にも、欲望は沸かなくなってしまうのだ。

 元々は劇作家のアンガス・マクラクランが舞台用に書いた作品で、ケースワーカー対囚人、囚人対妻、妻対ケースワーカーの心理ゲームが核となる。
 そしてゲームにのめり込むには、「神」を知らなくてはならない。
 日本の大手配給会社が買い入れを躊躇したのは、その辺りにある。

337879_100x100_004  ニーロ、ノートンの丁々発止もだが、ミラ・ジョヴォヴィッチの魔性の女ぶりは見ものだ。昼間は幼稚園の先生、夜は次々と男を誘惑して孤閨を慰める。

 「バイオハザードⅣ」('10)でアクション女優の地位を確立した彼女が、イノセントにしてセクシー満開の役を見せた。
 元リュック・ベッソンの妻、ウクライナ出身で子持ちの女優である。

 監督ジョン・カラン。撮影監督はフランスの女流カメラマン、マリーズ・アルベルティ(「レスラー」'08)。

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November 25, 2010

1704.ひとまく映画会

 歌舞伎座で、最後の一幕を楽しんできた「ひとまく会」。現在休会中だが、趣味の集まり「分科会」は盛んだ。
 昨日は恒例の「古典名画を見る会」、築地のクラブで日・米の2本立て興行。所用があって最初の1本だけを鑑賞した。

514v1nj5m0l__sl160_sl90__2  上映されたのは1957(昭和32)年、川島雄三監督が撮った日活映画「幕末太陽傳」。その年のキネマ旬報ベストテン4位に上がった喜劇作品である。

 落語「居残り佐平次」から主人公を拝借、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」「芝浜の皮財布」などのお噺を散りばめ、その落語の世界に幕末の志士たちを駆け抜けさせるストーリーである。

 主人公の佐平次には、当時売れっ子のフランキー堺を持ってきて、脇ではあるが高杉晋作に石原裕次郎を配した。

Bakumatsu_3  石原はこの時22歳、髷をつけたのは初めてである。
 前の年「太陽の季節」でデビュー、大ヒットしてスターになった裕次郎を出演させたのには、川島監督の狙いがあった。

 無軌道な若者たちの代名詞として、大宅壮一にネーミングされた「太陽族」。
 世間が騒ぐので日活の経営陣はこの企画に躊躇した。しかし川島は、佐平次や若い志士たちを幕末の太陽族に見立てた。
 時代を変えていくのは、こうした若者達だというのだ。

Saheiji  出演者の顔ぶれを見ると、当時の「太陽族」が次々と登場する。
 遊郭のドラ息子・梅野泰靖、遊郭の若衆・岡田真澄、志士(井上聞多)・二谷英明、志士(久坂玄端)・小林旭などなど。

 女性陣は、売れっ子の女郎に南田洋子と左幸子、女中が芦川いずみ。
 そして川島組の芸達者の面々、金子信雄、山岡久乃、小沢昭一、西村晃、熊倉一夫、殿山泰司、菅井きん、河野秋武・・・・。

 舞台となったのは、品川宿の旅籠兼遊郭の相模屋。昭和になっても実在した宿で、当時の設計図をもとにセットを組んだ。
 先のブログで紹介した歌舞伎「大江戸リビングデッド」も同じ舞台、居残り佐平次が登場していた事も紹介した。

 この作品は、「日活製作再開3周年記念」とタイトルでもうたってあったが、川島監督と日活側とは製作費や処遇の問題で最後までもめ、彼はこれを最後に退社した。

Bakumatsu_2  エピソードをひとつ。
 ラストシーン、フランキー堺の伊平次が東海道を駆け抜けて去る場面。
 川島はこのあとセットの壁をぶち抜いて現在の東海道を走る伊平次を撮った。
 しかし当時としてはあまりにも斬新な手法のため、賛同は得られなかったという。

 「サヨナラだけが人生だ」と、障害を抱え若くして逝った川島雄三の人生哲学がそこにあったのだ。

 「ひとまく映画会」、2本立てのもう一本は「五つの銅貨」。ダニー・ケイとルイ・アームストロングが出演した、1959年のアメリカ映画である。

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November 24, 2010

1703.上野・藝術の秋

101123_015_640101123_012_640  勤労感謝の日、錦秋の上野の森を訪ねる。東京藝大美術館で開催されている、幾つかの展覧会が目的である。

101123_640 始めに鑑賞したのは、「明治の彫塑・ラグーザ」。

101123_027_640_2  ヴィンチェンツオ・ラグーザは、1876(明治9)年に開校した工部美術学校に招かれた、外国人彫刻教師。
 イタリア統一を目指したガリバルディ(左の彫刻)義勇軍兵士出身で、6年間の滞在の中で近代日本彫刻の基礎を築いた。

 会場には30点の石膏による彫塑や、それを基にしたブロンズの彫刻が並ぶ。

101123_028_640_2  特に日本婦人をモデルにした胸像は、明治をリアルに見せる。
 右上のポスターの石膏像は重要文化財に指定されているが、それを基に鋳造したブロンズ像と比較すると面白い。

 ラグーザの作品は、彼のモデルとなった日本女性でイタリア帰国に同行し妻となった清原玉が、東京美術学校に寄贈したもの。
 明治初期の西洋彫刻の教育の背景を知る、貴重なコレクションである。

101123_030_640 ラグーザの展示室の隣では、没後100年を記念した「荻原碌山展」が催されている。

 碌山は長野・安曇野の人。明治の後期、留学中のパリでロダンの「考える人」に出会い彫刻家を目指した。
 1907(明治40)年に帰国して、3年後の31歳で没するわずかな活動期間だったが、彼の作品は日本の近代彫刻に新しい風をもたらしたという。

101123_029_640  会場には、彼の絶作「女」7点が並ぶ。

 ポスターの石膏像は国の重要文化財、これを原型として同年鋳造されたブロンズ像、さらに44年後に鋳造されたブロンズ像、その折り複製制作された石膏像、さらに15年後鋳造されたブロンズ像、デジタル・アーカイブとして今年3次元で出力された樹脂像、それを基にしたブロンズ像である。

 それらの僅かな違いが、彫塑技法のさまざまな問題点を明らかにする。
 手作りの作品がCG技術によって、次の時代に伝えられていく。そんな想いで、荻原碌山の「女」を鑑賞した。

101123_024_640_3101123_025_640_2  藝大美術館の地下展示場では、「黙示録ーデューラー/ルドン」展が開かれていた。
 ヨハネがキリストから啓示を受け、その予言を著したのが新訳聖書最終章「ヨハネの黙示録」。

 ドイツの版画家アルブレヒト・ヂューラーは、500年前にその経典を視覚化した木版画集を出版した。
 以後、西洋美術において「黙示録」の視覚化がひとつの潮流となったそうだ。

 展覧会では、1899年のフランスの画家オディロン・ルドンの作品も含めおよそ100点が並ぶが、現世の終末を描くおどろおどろした版画やリトグラフには、頭痛を覚えた。
 聖書の世界に疎い者にとっては、少々刺激が強すぎたようだ。

101123_008_640101123_010_640101123_013_640  帰途、落ち葉を踏みしめながら上野の森を歩く。

 祝日なのであちこちでヘヴン・アーチスたちのパーフォーマンスが見られた。
 不忍池のほとりでは、津軽三味線の音も聞こえる。
 上野・藝術の秋のヒトコマである。   

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November 23, 2010

1702.蔦屋重三郎展

028_640  プロデューサーは「黒子」である。晴れ晴れしい舞台で、脚光を浴びる事はない。
 しかし江戸の「メディア文化」を語るには、この人「蔦重」を置いて他にはいない。

030_640  「歌麿・写楽の仕掛け人 その人の名は蔦屋重三郎」という長いタイトルの展覧会が、六本木のサントリー美術館で開かれている。

 「蔦重」は、タイトル通り「喜多川歌麿」を売り出し、「東州斉写楽」を発掘し、狂歌師「太田南畝」や戯作者「山東京伝」ら18世紀後半の江戸屈指の文化人との人脈を築いた出版プロデューサーである。

032_640  遊郭吉原で生まれた彼は、20代で「吉原細見」というガイドブックを定期刊行し、吉原の「宣伝部門」を独占した。

 やがて彼は日本橋に進出して「耕書堂」を開店、黄表紙・洒落本(山東京伝)、狂歌選集(太田南畝)、狂歌絵本・美人大首絵(喜多川歌麿)、役者絵(東州斉写楽・葛飾北斎)を出版・販売して財を蓄えた。
 彼はその財力で、新進の浮世絵師や戯作家たちを育て世に送り出したのである。

031_640  展覧会は「第1章・蔦重とは何者?-江戸文化の名プロデューサー」、「第2章・蔦重を生んだ<吉原>-江戸文化の発信地」、「第3章・美人画の革命児・歌麿ー美人大首絵の誕生」(上右の絵)、「第4章・写楽"発見"ー江戸歌舞伎の世界」(上左の絵)の4部門の柱立てで、前後半250点の刷り物や絵が展示されている。

029_640  展示品の中で話題を呼んでいるのは、左の歌麿「幻」の肉筆画・女達磨。
 数少ない肉筆画のひとつで、昭和初期にその存在が確認されたが以後行方不明となり、3年前に栃木市で発見されたものである。

 この作品が、その後の歌麿「美人大首絵」のきっかけになったとされるが、蔦重は上半身クローズアップの美人画で、大ヒットを飛ばしたという。

 この時代の後半は、松平定信の「寛政の改革」となる。
 松平は緊縮財政だけでなく、出版統制によって「好色本」や幕政批判の書を禁じる。蔦重や歌麿、山東らは禁制の目を掻い潜って抵抗するが幕吏の手入れを受け、歌麿は入牢、山東は手鎖50日、蔦重は財産の半分を没収された。

 これ等の経緯については、「ブログ1623号・日本美術のヴィーナス('10.8.13)に書いたので省略する。

 「蔦屋重三郎」展は、12月19日(日)まで。六本木・ミッドタウン3階サントリー美術館。入場料1300円。

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November 21, 2010

1701.消えたローカル線

004_640003_640  今朝の朝日新聞・教育欄に、故郷の母校の記事が掲載されていた。
 一部を抜粋すると・・・。

 「照明を落とした体育館。舞台のそでにセーラー服の生徒が立った。
 『昔、万世には万世線という鉄道が敷かれていました。たった3㌔を結ぶ線路の上を、多くの人が多くの人生を抱えて行き来していました』
 幕が上がったー。」

_640  今月の初めに催された、南さつま市立万世中学校の文化祭を紹介したもので、「地域史・ 文化祭の劇で」と見出しは書かれている。
 1916(大正5)~1962(昭和37)まであった小さなローカル線を題材に、万世の過去をたどる筋立てだったそうだ。

009_640007_640   ストーリーは、現在自転車道になっている万世線跡地で落雷にあった中学生がタイムスリップするというもの。
 鉄道敷設に動いた若者たち、「万歳」と見送られる出征兵士、万世飛行場に赴任する特攻隊員、戦後の集団就職で都会に出て行く若者達・・・。

 指導した社会科の先生は「今の子は地域の歴史を知らない。文化祭の劇を通じて、歴史を身近なものと考えるきっかけにしたい」とのこと。

 「劇の最後に生徒達が声を合わせた。
 『かけがえのないふるさとへの思いを込めてこの劇を贈ります』
 卒業後この地を離れる生徒も少なくないだろう。客席の保護者や地域の人からわき起こった拍手が、激励のように聞こえた」
 取材した記者は、こう結ぶ。

091103_050_640 1946(昭和21)年8月21日、旧満州から引揚げてきた私は万世駅に降りた。
 それから16年、万世線の列車には数え切れないほど世話になった。雨の日は列車で高校に通い、時々鹿児島市まで足を延ばした。

002_640_2  1962(昭和37)年3月、私は就職のため万世駅を発ち東京に向かった。その年、この小さなローカル線は、廃止された。

 50を過ぎた頃から、旧万世駅前にある旅館で5年毎にクラス会を開いている。
 昨秋は「古稀の集い」、カナダから帰国した級友もふくめ、69名が集まった。
 還暦を記念して10年前、母校の庭に植えたトチノキもすくすく育っていた。

 小さなローカル線は、私たちの青春そのものである。

(明後日23日のNHK「おはよう日本」<7:30~7:55>で、イラストレーターの野崎耕二さんが紹介される。消えたローカル線、その線路を走行したSLのスケッチも紹介される。野崎さんにつては、ブログ1687号「一日一絵原画展」参照) 

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November 20, 2010

1700.100歳の少年と12通の手紙

_640  今年はガンや難病に罹った人が、物語のキーとなる作品によく出会った。外国映画では「小さな命が呼ぶ時」、日本映画では「君が踊る、夏」などに涙した。

 2年前にフランスで製作された「100歳の少年と12通の手紙」もそうしたジャンルの一つだが、涙よりも「生と死」を哲学的に考えさせる作品だった。

 原作がフランスを代表する劇作家で、哲学博士のエリック=エマニュエル・シュミットが書いたベストセラー。
 その本を自ら脚色して監督したのだから、ファンタジックで「考えさせる」作品になる。
 彼は、「地上5センチの恋心」('06)でも脚本・監督を務めたので、これが2作目。

337356view001  白血病で、余命あとわずかという少年オスカーが主人公。その少年と10日間付き合った、ショッキング・ピンクのビザ屋のおばさんのとの物語。

 少年をベルギー出身の新人アミールが、ピンクのおばさんをフランスの実力派女優ミシェル・ラロックが演ずる。
 天使の様な瞳を持つ少年と、ガサツなおばさんという組み合わせを考えたシュミット監督は偉い。

337356_100x100_005 決して涙を強制しない。少年の想像の世界がファンタジックでコミカルに描かれる。
 しかし物語は、哲学的・神学的な展開を見せる。

 ピンクのおばさんが少年に諭したのは、1日を10年と考えて生きていこうという事。そして毎日神様に手紙を書く事。

337356_100x100_004  少年は2日目に初恋、3日目には結婚、さらに4日目の40歳で戸惑いやがて最愛の妻との別離。

 10日目100歳となった少年は、神様にこう書く。
 「神様、人生を味わうにはセンスが要ります。洗練されないと。若い頃はバカでも楽しめる。年をとり体が動かなくなると頭を使わなくては」

 懸命に生きる少年を励ますのは、ミッシェル・ルグランの美しい音楽。「シェルブールの雨傘」(64)「ロシュフォールの恋人」('67)「愛と哀しみのボレロ」('81)で知られる映画音楽の大家である。

 邦題「100歳の少年と12通の手紙」はストレート。原題は「Oscar and the Lady in Pink」。 

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November 19, 2010

1699.大江戸探見

034_640  ブログ愛読者でもある友人から、先日届いた本が「大江戸探見~人と町の なるほど史」。
  「まち探見」の好きな私へプレゼント、と添え書きがあった。

 本の著者・森治郎さんには、まだお目にかかっていないが元朝日新聞記者、友人の大学時代の仲間だそうだ。

 森さんは、コミュニティ紙アサヒ・ファーストに連載したコラムを大幅に加筆し、図版類を加えて出版した。
 彼の「江戸知識」と「歩き回り、聞き回る」記者根性が生きて、現代に残る「大江戸」の風景が見事に描かれている。

100904_012_640002_640_3  表紙は「日本橋」。切絵図に地下鉄やJRの路線を被せてあるので、江戸時代と現代の位置関係がよく判る。

 本文では日本橋の由来から、ベルリンのアジア美術館に保管されている絵巻物「熙代勝覧(きだいしょうらん)」の紹介、川と橋を押しつぶす頭上の高速道路を日本の環境破壊の象徴的光景と喝破する。
 (このブログでも紹介したが、9月の「日本橋クルーズ」の際撮った写真を参考に)

 本文は中央区に始まって、千代田区・文京区と都心・下町10区の「大江戸」が紹介されている。

036_640  そのうち中央区は、左の「江戸一目屏風部(えどひとめずびょうぶ)」にあるように、「日本橋」「築地」「浜御殿」「おらんだ正月」「石川島人足寄場」の5つ。

037_640_3  もちろん右の切絵図には、私の住む月島は見えない。隣の佃島と石川島だけだ。
 この項では「鬼と仏の顔持つ長谷川平蔵」「元祖ハローワーク所長の顔も」と、老中松平定信の求めに応じて開いた無宿人対策、「人足寄場」のドキュメントが綴られる。

030_640033_640  本に誘われて窓から撮った写真が左の2枚だが、先月31日にも「中央区まるごとミュージアム」のイベントで、多くの観光客が集まっていた。
 「江戸の香残る佃島を歩く」のコース、この「大江戸探見」を読んだ人なら、さらに興味は増しただろう。

038_640

 本の裏表紙は、「両国橋界隈」の切絵図。
 1657(明暦3)年の「振袖火事」のあと、ようやく架けられた両国橋のエピソード綴られる。

002_640_4  先日のブログ「隅田川展」でも紹介したが、両国の花火に回向院の勧進相撲など、この地の話題は尽きない。
 振袖火事で犠牲になった数万人の無縁仏が、ここで回向された事、そしてこの寺の正式名が「諸宗山無縁寺」である事など、興味深い話が続く。

 「大江戸探見~人と町の なるほど史」(一藝社刊)
                        定価2.310円

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November 18, 2010

1698.大江戸りびんぐでっど

009_640 昨年暮れの「歌舞伎座さよなら公演」にかかった 演目、「大江戸りびんぐでっど」。
 これを見た常連の歌舞伎客が、「大江戸びっくりぎょうてん」して話題となった芝居のシネマ化である。

010_640  本を書いたのは「クドカン」こと宮藤官九郎。人気脚本家であると同時に、監督・俳優としても知られる彼が、勘三郎を中心とした「中村組」と組んだ。

 さらに音楽・向井秀徳、衣裳・伊賀大介、道具幕デザイン・しりあがり寿という異色の才能がこれに加わった。

337238_100x100_001_2  お話は「屍、貸します」。
 江戸は品川宿、人間の代わりに働く派遣「ゾンビ」と、彼等に仕事を奪われた人間達の右往左往を描くパニック・コメディである。

337238_100x100_002  主役は、新島のクサヤの兄さんの市川染五郎と、彼に「殺されて?」評判のクサヤ汁と女房(中村七之助)まで盗まれた親父殿の中村勘三郎。

337238_100x100_004  お色気の方は、中村福助・扇雀のお女郎衆。さらには中村勘太郎、坂東三津五郎、坂東弥十郎、中村橋之助、中村獅童、片岡市蔵などなど。
 舞台俳優の井之上隆志も、居残り佐平次の役で歌舞伎俳優に混じって駆け回る。

 ホロリとさせたり、パンチの効いたセリフでドッキリさせたり、最後はドンデン返しと、歌舞伎特有のケレン味もきっちり出した脚本・演出。
 さすがクドカンである。

337238_100x100_003 パルコ歌舞伎の老婆役がヒットして、三谷映画にも引っ張り出された市村萬次郎が、遣手婆さんとして登場しているのも面白い。
 その後、彼と酒を飲む機会があったが、演じてる本人が何がなんだか判らなかった超歌舞伎だったと、ボヤいてはいたが。

337238_100x100_005  江戸の初期から盛んになった歌舞伎も、「純歌舞伎」「義太夫狂言」「舞踊劇」「新歌舞伎」と洗練されてきたが、この「大江戸りびんぐでっど」はどう位置付けられるのだろうか。

 敷居の高い歌舞伎座を、「さよなら公演」と銘打ってぶち壊した異色作の進取性は、「温故知新」の体質を持つ歌舞伎そのものだとも云える。

 流行の一発芸から下ネタ、ヒップホップにゾンビダンス、歌舞伎俳優たちが面白がって生き生きと演じているから楽しい。

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November 17, 2010

1697.SP野望編

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 SPとはセキュリティー・ポリスの略、警視庁警備部警護課に属し要人警護のみを担当する。
 35年前に、アメリカ財務省のシークレット・サービスを手本に創設された。

 現役時代、政府高官と会う機会も多かったので、知り合ったSPも多い。同郷の後輩もいた。
 柔剣道・空手の有段者、一定以上の身長など採用基準は厳しい。筋肉質だがスマート、誰もがハンサムでかっこいい。

009_640_3  映画では主役のSPをV6の岡田准一が演じているが、彼よりスタイリッシュな本物はざらだった。
 もう一人の主役は上司役・堤真一、そしてNo2の警部補・神尾佑、女性SPの巡査部長・真木よう子。実在SPもこんなタイプだが、もう一人の松尾諭はちょっと・・・。

 この5人がチームを組んで要人警護に当たるのだが、大臣爆破のテロ事件や官房長官襲撃など次々と事件が起こる。

336791_100x100_006_4  もともとフジテレビのドラマ・シリーズ。3年前に第4話で終了し、今回は第5話という位置づけ。
 テレビを見ていなかった人には少々判りづらい部分もあるが、冒頭の20分間のノンストップアクション「フリーランニング」など、結構見せ場があって楽しめる。

336791_100x100_001_2  良く語られる警視庁内の組織的な軋轢、警備・公安・刑事の対立や、最近話題の機密漏洩、さらにはエリート官僚たちの独善的な国家観とそれを利用する政治家など、有得べき現実が描かれているのが面白い。
 原案・脚本の金城一紀と波多野貴文監督コンビは、テレビで謎めいたエンディングを見せて映画化に備えていたようだ。

336791_100x100_008  この3年の間に、岡田准一は腕を磨いたという。
 フィリッピンの武術でFBIも取り入れている「カリ」と、カンフーを基にした格闘技「ジークンドー」の師範免許もとり、全てを吹き替えなしで演じた。
 真木よう子も、子供の頃から空手を学び、学生時代は陸上選手だっただけに役柄はピッタリだった。

Wallpaper01_1024_768 「ターミネーター2」でアカデミー賞を受賞したロバート・スコタックが、VFXのスーパーバイザー。
 スカイウオーカー・サウンドのトム・メイヤー(「トイ・ストーリー3」)が音響担当。
 製作のフジテレビも、テレビを超える作品にしようと予算をつぎ込んだ。

 来年春には続編も公開されるようだが「湾岸シリーズ」のようにヒットするか、総指揮の亀山千広の腕の見せ所だ。

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November 15, 2010

1696.下町ふぉと散歩(2)

101113_113_640_2101113_117_640  「写真大好きブロガーさん」24人が招待された、EPSON主催の「TOKYO下町ふぉと散歩クルーズ」。
 およそ4時間の撮影会の後は、写真プリント体験・作品創りの時間となった。

101113_351_640_3  使ったプリンターは、エプソンがこの秋に新発売した「マルチフォトカラリオ・EP-903A」。
 プリンター+スキャナー、コピー、ダイレクトの機能を搭載した多機能モデルである。

 撮った写真をプリントして、6枚組みの「イメージ作品」を創りあげようという作業。363枚の写真をマルチでチェックしながら、候補作品を選んでいく。

 作品は「エプソンプロセレクション・ブログ」で紹介されるので、被写体にも注意が必要だ。

 若い参加者たちの写真を見ると、なかなか上手い。セミプロらしい芸術的な作品もある。
 こちらは昔の職業柄か、説明的な「報道写真」が多くサマにならない。

101113_133_640101113_143_640101113_226_640101113_152_640  結局私のイメージは、エプソン・プリントの色彩の美しさを、「えど」でまとめようという事で落ち着いた。

 浅草・仲見世で見つけた小物と浅草寺の組み合わせてみたが、さて・・・・。

101113_355_640_2101113_363_640  出来上がった「作品」、左は今回私たちを指導してくれたプロの写真家・三井公一さんの「お手本」。
 右が私のトライ作品。1時間の作業時間は、あっという間に過ぎた。

101113_175_640101113_267_640_2   今回のイベント、参加者の「義務」は2回のブログUPと「EP-903A」のPR。
 当方既に自宅では「EP-802A」を使用しているので、その使い勝手の良さは十分体感している。

2010_11_13_0094_2_4  朝9時半過ぎから始まったこのイベント、終わったのは夕方6時。駆け回ったので歩数9001歩、少々疲れたが楽しい1日だった。

 「エプソンプロセレクション・ブログ」のアドレスは下記の通り。
 http://proselection.weblogs.jp/

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November 14, 2010

1695.下町ふぉと散歩

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   「名にしおはば いざ事問はむ都鳥 わが思ふ人は 在りやなしやと
                                     在原 業平 」

101113_131_640_4101113_128_640_3  浅草・雷門をスターとした「TOKYO下町ふぉと散歩クルーズ」、参加者の数は24人。

 EPSONが主催した「写真大好きブロガーさんフォトイベント」に招待されて、週末の浅草散歩と隅田川屋形船クルーズに参加した。

101113_007_640_4 出発前にプロの写真家・三井公一さんの「撮影ワンポイント講座」を受けた後、それぞれが愛用のカメラを構えて観光客で混雑する浅草寺境内に散らばった。

101113_020_640101113_012_640  浅草は、これまでも度々訪れているが、今日はちょっと特別。
 カメラアングルが気になって落ち着かない。

101113_188_640  三井プロの背中を見ながら撮った写真は計363枚。その一部を掲載しよう。

 まずは浅草寺に参詣する「善男善女」、それも国際色豊かな・・・。

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 吾妻橋からは今話題の「スカイツリー」、それもアサヒビールのモニュメントと並べると面白い。

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 屋形船のクルージングも、右や左をキョロキョロ。被写体を探して、ランチタイムどころではない。
 両国界隈のテラスに並んだ錦絵、揺れる船から望遠で撮ってみた。

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 そして今回のハイライトが、隅田川の「都鳥」。スカイツリーをバックに、モデルとなって私たち撮影グループの目を楽しませてくれた。

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             http://proselection.weblogs.jp/

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November 13, 2010

1694.あさば会 仏像・仏画展

019_640_2  10日から日本橋三越本店6階で開催されている「仏像・仏画展」。大阪の仏師向吉悠睦・中村佳睦夫妻が主宰する「あさば会」の、初めての一門展である。

018_640  悠睦さんは同郷の後輩、長い交遊が続いているが、先日こんな案内状を頂いた。

 「一人目の弟子を迎えてから18年が過ぎ、やっと作品と言える彫刻・仏画を発表させて頂けるところまで参りました。・・・・夢がかない、弟子たちと共に切磋琢磨出来る幸せでいっぱいでございます。」

026_640_2  左の「聖観音」像は、案内状に添えられた悠睦さんの作品。
 今年49才の彼は、京都の松久朋琳・宗琳のもとで仏教彫刻を学んだ後大阪に工房を開き、仏師として「聖観音」をはじめ「大日如来」や「釈迦如来」「不動明王」など数々の仏像を彫ってきた。
 彼の仏像は、高野山をはじめ大徳寺や根来寺など名刹の本尊・脇仏として奉られている。

027_640  右の仏画「静韻」は、中村佳睦さんの作品。
 彼女もまた宗琳に師事し仏画・截金を学び、高野山や延暦寺に曼荼羅を奉納、古刹の仏画の修復や壁画を描くほか後進の指導に当たっている。

 向吉夫妻はこれまでも京都・大阪の百貨店、東京の三越など日本各地で、またホノルルなど海外でも「二人展」を開催してきたが、一門展は今回がはじめてである。

017_640_2023_640  今回の展覧会には、悠睦・佳睦さんの作品の他、9人の弟子たちの仏像や仏画が並べられ、あさば会の彫刻・絵画の力量を見せてくれる。

 「仏像・仏画展」は、23日(火)まで、日本橋三越本店アートスクエアで開催中。

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November 12, 2010

1693.吉例顔見世大歌舞伎

011_640012_640  11月の歌舞伎は「顔見世興行」、歌舞伎座が改築中のため今年は新橋演舞場である。

 江戸の頃から、歌舞伎興行では11月が1年の始まりだった。座元と役者の雇用契約が11月~翌年10月とされており、新しい顔ぶれを11月に「顔見世」として披露した。

 松竹の友人から案内をもらって、久し振りに演舞場の2階席。「ひとまく会」の4階とは異なる、贅沢な観劇だった。

 午後4時30分からの夜の部は、御祝儀の舞踊を挟んでの「時代物」と「世話物」の三演目。9時過ぎまでたっぷりと芝居を楽しんだ。

Shinbashi201011b1  最初の演目は「ひらかな盛衰記(せいすいき) 逆櫓」。1739(元文4)年、京都辰之助座で初演された義太夫狂言である。
 義経の木曽攻めから一の谷の合戦までを描いた「源平盛衰記」の三段目、木曽義仲の四天王のひとり樋口次郎兼光が主人公となる。

 外題に「ひらかな」とあるのは、軍記物を「ひらかな」のようにわかり易く平易に砕いたという意味。

015_640  船頭に身を窶し「逆櫓」の技術を持った樋口、平家攻めの総大将・義経の船の船頭になって主君の仇を討とうとするが・・・・・、という展開。

 「権四郎、頭(ず)が高い。イヤサ、頭(かしら)が高い。天地に轟く鳴るいかずちの如く、御姿は見奉らずとも、さだめて音にも聞きつらん、これこそ朝日将軍、義仲公の御公達駒若君、かく申す某(それがし)は、樋口の次郎兼光なるわ。」
 樋口を演ずる松本幸四郎の名セリフが、聞きどころ。

Shinbashi201011b2  駒若役は松本金太郎、幸四郎の孫。彼も4歳の初舞台では金太郎を名乗った。
 捕らえられた樋口に、駒若が声をかけると場内からは「高麗屋!」の掛け声、場内が沸く。

 源氏方・畠山重忠に中村富十郎、貫禄十分。
 漁師権四郎に市川段四郎、義仲の奥方の腰元・お筆に中村魁春。

 最後の演目は「都鳥廓白波(みやこどりながれのしらなみ)」。
謡曲「隅田川」で知られる「梅若伝説」を素材に、河竹黙阿弥が書いた2時間を超える三幕の芝居だった。
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 1854(安政元)年に江戸河原崎座で初演された、「隅田川物」と呼ばれる世話狂言で、向島三囲社や長命寺の桜餅屋、吉原などが舞台となって、京の吉田家のお家騒動の顛末が語られる。
 演目の俗称も「桜餅」。

 外題にも「傾城花子」とあるが、花子は吉原の花魁に化けた盗賊・天狗小僧霧太郎で、実は吉田家の御曹司松若丸というのが芝居の売り。
 尾上菊之助が一幕・二幕で女を演じ、三幕目で男に戻る。性の倒錯を徹底させたアイデアである。

 菊之助が捕り方相手に大立ち回りをする大詰は、飯を食べながら滑稽に演ずるところから「おまんまの立ち回り」と呼ばれる。
 最後はお茶一杯でストップモーション。

 この花子・霧太郎・松若丸は、父親の菊五郎が得意としてきたもので、菊之助は今回初役である。
 菊五郎の方は、誤って梅若丸を殺した忍ぶの惣太(吉田家旧臣)と、天狗小僧の子分・木の葉の峰蔵の二役。

 そうそう、わが市村萬次郎が松・梅若兄弟の母御前として出演、久し振りの対面だった。

013_640  間の舞踊「梅の栄」は婚礼御祝儀曲として作られた長唄をバックに、歌舞伎正月である「顔見世」を寿ぐ。

 前半は歌昇の息子種太郎など若手4人での舞い、後半は人間国宝・中村芝翫と孫の宣生(橋之助の三男)、82歳と9歳が微笑ましい舞踊を見せた。
 振り付けは長女の光江と、舞踊中村流が勢ぞろい。

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November 11, 2010

1692.都心に住む

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 隅田川河畔に引っ越して7年、今日は8年目の初日になる。
 マンション生活も快適で、いまのところ不満はない。

 リタイアの時期も近づいた10年ほど前、陋屋の寿命も尽きようとしていた。現住地で建て替えるか、それともマンションに移るか「老後の終の棲家」で悩んだ。

 新築するには、新たに借金をしなければならない。老後も続くローンの返済は辛い。結局土地を売ったお金で、マンションを購入する事にした。
 そして住み慣れた世田谷や目黒の新築や中古のマンションを、休日のたびに見て廻った。
  緑豊かな中層マンションが、狙いだった。

352_640  一年ほど歩いたが、予算や間取りなどなかなか納得できる物件に出会わない。思い余って、マンション管理会社を経営している友人を、聖路加タワーに訪ねた。
 社長室の窓から見た光景が、上の写真だった。

 都心・ベイエリア・下町・高層と、友人は当時進行中の5箇所のプランを見せてくれた。
 この事が引き金となって、予想もしなかった隅田川河畔の高層マンションへの転居となった。

 「一戸建てかマンションか」「静かな都市郊外か都心か」「賃貸か購入か」、それぞれメリット・デメリットがあるのは当然で、選択は本人の「生き方」によって決まる。

004_640006_640  7年間の暮らしの「総括」を、思いつくまま並べてみよう。

 都心の魅力は、なんといっても交通インフラが充実している事だ。車なしに生活のほとんどが済まされるのが、シニア世代にとって便利だ。

 近くに映画館や美術館・博物館・音楽ホールなど文化施設が整っているし、とくに下町には神社・仏閣、史跡や歴史的建造物があって興味が尽きない。

 百貨店や魅力的な商業施設もあり、最先端の情報が集まる。
 つまり刺激に富んだ都心は、いつまでも若々しく、アクティブに暮らす事が出来るのだ。

100929_038_640051_640_2  予想以上に緑も多い。河口の浜離宮をはじめ、隅田川河畔や運河には大小の緑地帯がある。
 ちょっと足を延ばせば、日比谷公園から皇居と続く。

 高層マンションは、眺望が売り物だ。1階上がる毎に同じ広さでも50万円は高くなる。
 程よい階層を選んで、レインボウブリッジや富士山、東京タワーを眺めていたが、やがて前方に次々と超高層マンションが建ち始めた。
 これだけは誤算だった。楽しみの「東京湾大華火」も入居当初に比べて、半分しか見えなくなった。

 下の写真、右端の建物を除いて左の5棟はこの7年に建てられた50数階建てのマンションである。
 写真にはないがその左にもう1棟、我が家の隣にも50数階が計画中である。
 さて5年後、10年後、目の前はどんな光景になるだろうか。

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November 10, 2010

1691.クロッシング

008_640  「アカデミー賞受賞作『トレーニングデイ』の監督が、再び突き付ける"善と悪"。豪華実力派俳優たちによる珠玉のクライム・サスペンスが今、ベールを脱ぐ。」とパンフレットで紹介された、今年の東京国際映画祭特別招待作品。

 その監督とは「キング・アーサー」も撮ったアントワン・フークア。ハリウッドでは数少ない黒人監督である。

 また脚本も、黒人でニューヨーク地下鉄の信号手だったマイケル・マーティン。交通事故で車を壊し、買い換える資金が欲しくてインターネットの脚本コンテストに応募、プロデューサーの目に留まって映画化された。

 舞台はマーティンの住んでいるニューヨーク・イースト・ブルックリン。麻薬・暴力・金・売春・誘拐と犯罪率では全米一といわれるところ。
 そこで働く3人の警察官の、三つの「正義」の物語である。

337487_100x100_002 まず最初の警官は、敬虔なカトリック信者でありながらギャングから金を強奪する悪徳麻薬捜査官。
 5人の子供と病弱な妻、やがて生まれる双子のために必死に金を掻き集める。
 舞台俳優・監督・脚本家・小説家でもあるイーサン・ホークの役。彼は「トレーニングデイ」に続くフークア監督作品である。

337487_100x100_005  リチャード・ギアが演ずるのは、退職を間近に控えたやる気のないお巡りさん。
 妻も子供もなく、警官専用の売春婦と遊ぶのが唯一つの楽しみ。新米警官の教育係を任されたが、それも・・・・。

337487_100x100_003  「ホテル・ルワンダ」('04)で一躍脚光を浴びたドン・チールドは、昇進のために潜入捜査官を続ける刑事。
 命を助けて貰ったギャングのボスに、恩義を感じて悩む役。

337487_100x100_007 そのギャングのボスが、ヴェネチア国際映画祭で主演男優賞も受賞した(「ワン・ナイト・スタンド」'97)こtもあるウエズリー・スナイプス。
 准主役ではあるが、なかなかの存在感。

 さらにエレン・バーキン(「オーシャンズ」'07)が、憎たらしいFBI女性捜査官となってチールドを苛める。

 人生は「より善くなるか、より悪くなるか」のどちらかだ、というのが映画の教訓。3人の警官の別々のお話が、最後は現場で一つになる。

 そこで邦題を「クロッシング」としたようだが、どうも内容には相応しくない。アカデミー賞にもノミネイトされた、韓国映画「クロッシング」('08)と混同してしまう。
 原題は「Brooklyn's Finest」、これは大変意味あるタイトルなのだ。

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November 09, 2010

1690.ブロンド少女は過激に美しく

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 来月で102歳の誕生日を迎えるポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督が、昨年撮った作品。
 ゾラと並ぶ19世紀の文豪エサ・デ・ケイロスが、まだ無名時代の頃書いた短編小説「ブロンド少女の特異さ」が原作である。

 オリヴェイラ監督作品を見るのは、「メフィストの誘い」('95)「夜顔」('06)そして今年の5月に見た「コロンブス永遠の海」と4作目だが、毎回その洒落た語り口に堪能させられる。

 監督自身の事は、ブログ1556号で紹介しているので省くが、カンヌやヴェネチェアでの審査委員特別賞ほか、東京国際映画祭でも最優秀芸術貢献賞('93)特別功労賞('97)を受賞している事を、初めて知った。

337376_100x100_001  今回の作品のストーリーは、純粋な若者が窓辺に立つブロンド娘に恋をしてしまったというもの。
 教会の鐘が夕べを告げる頃、中国風の扇を手にした少女が、勤め先の向かいの窓に姿を見せる。やがてそれは、皮肉な運命を見せていくのだが・・・・。

337376_100x100_002  語り口はスピード感たっぷり。
 ワンカットで2分近く撮った列車の車内、タイトル・クレジットが次々と現れた後は、主人公と隣席の女性。
 「妻にも親友にも話せないことは未知の人に話せ」との諺通り、恋の顛末を女性に語り始める。

 主人公は、監督の孫で「コロンブス」にも出演したリカルド・トレパ。隣の女性はオリヴェイラの常連・レオノール・シルヴェイラ。ブロンドの女性は初主演のカタリナ・ヴァレンシュタインである。

337376_100x100_003 スタッフはもちろんだが、ほかの出演者たちもオリベイラ「一家」である。
 主人公の叔父がポルトガルの名優ディオゴ・ドリア、ブロンド娘の母がジュリア・ブイゼル。
337376_100x100_007 なかでも演劇界の大御所ミゲル・シントラが、本人役でペアソの詩「羊の番人」を朗読する。彼は、今回でオリヴェイラ作品18本目である。

337376_100x100_006  ブロンド娘への恋の進展とともに、テージョ河に注ぐ美しいリスボン丘の朝や夕景が繰り返し登場。
 足早に過ぎ去る時の流れを、印象的に見せてくれる。

 マノエル・デ・オリヴェイラ監督102歳。次回作「アンジェリカ」も既に撮り終ったという。 

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November 07, 2010

1689.第42回日展

101104_001_640_2101104_002_640  美術の秋、六本木の国立新美術館。
 大学の友人から連続して3回、日展に入選したと招待状が届いた。
 これまでも、このブログで度々紹介している東光会会員の木原容子さんである。

101104_013_640101104_014_640101104_016_640_2 今年の作品は「夏のおわり」。
 毎回モチーフにしている「ひまわり」、「猛暑の中、体調を維持しながら描くのに苦労した」と手紙にあった。

 長い闘病生活を経て、少しづつ明るいタッチに戻ってきたのが嬉しい。
 来春の「東光展」も期待したい。

101104_008_640  今回の日展・洋画部門の応募数は2,122作品、うち入選は580点だった。

 そのひとつに、ジュディ・オングさんの「廊橋浅秋」があった。中国の風水画を思わせる「版画」、さすがである。

101104_007_640101104_005_640_2  左は「洋画」部門で内閣総理大臣賞を受賞した、湯山俊久さんの「ラリュール」。
 毎年美女を描き続け、今年は審査員にもなった画伯である。

101104_003_640_2  「日展」は、来月5日(日)まで六本木の国立美術館で。
 入場料は1,200円だが、夕方4時30分からは「トワイライトチケット」で300円。
 今月12日の「日展の日」は、入場無料。       

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November 06, 2010

1688.しぶや2010フェスティバル

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101106_020_640_2101106_019_640_2  欅も色付き始めた代々木公園。
 ここでは今日から「ふるさと渋谷フェスティバル」が開催されている。
 今年で33回を迎える、渋谷区民のお祭りである。

 会場はこのほか渋谷公会堂・サッカー場・NHKみんなの広場など4会場。
 音楽演奏・舞踊・ダンス・武術・演芸など、区民サークルによるイベントが繰り広げられる。

101106_005_640_3101106_007_640_3101106_013_640_2101106_010_640_2  年々評判を呼んでいるのが「交流物産ゾーン」。
 全国各地の物産即売会である。
 今年も23の町や村そして在京県人会がテントを並べた。

101106_002_640_3  昔の職場が渋谷だったので、今も区の鹿児島県人会世話役を仰せつかっているが、今日は物産コーナーでの焼酎売り子として汗をながした。
 渋谷区民だけでなく、フェスティバルに訪れた都会の人たちに「わがふるさと」を、である。

101106_021_640_2101106_017_640  「おやじの会」や「ボーイスカト」「マージャン同好会」などのアトラクションゾーンが47。
 NPOや福祉団体のバザーゾーンが31。
 公的団体や医師会・税理士会などのコミュニケーションゾーンが40。
 区内にある各国大使館などワールドゾーンが15。

 まさに渋谷区あげてのフェスティバル、明日も16時まで開催される。
 お出での方は、代々木公園会場テント番号K-06に。 

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November 05, 2010

1687.「一日一絵」原画展

_640_2  故郷の「ふれあいかせだ」で、今日から野崎耕二さんの「一日一絵」原画展が始まった。
 「南さつま市政5周年」を記念して、イラストレーター野崎さんが26年間毎日書き続けた原画が展示される。

001_640  野崎さんは南さつま市万世生まれ、私の3年先輩である。
 53年前に上京して地図編集・製図・イラスト・デザインの仕事を続けてきたが、27年前に「筋ジストロフィー」を発症、それからは難病と闘いながら毎日一枚の絵を書き続けている。

004_640005_640  野崎さんの絵は、身の回りにある日用品や知人・友人、郷里から送られてきた「なんでもないもの」が中心。
 優しい筆使いで、楽しく描かれる。

 左の写真、「豆のおにぎり」「ニガウリ」「トウモロコシ」「デジタル血圧計」「ストロベリーチョコレート」「テレビのリモコン」「アマリリス」「びわブッセ」と多彩。

 特に母校・万世小学校の子供たちが栽培して送ってきた「さつまいも」(左上・下)などは、愛情たっぷりの絵となる。

002_640008_640_2  1983年から書き始められた「一日一絵」は、730日2年分が一冊の本に纏められて「JTB」から刊行、「第十集」まで発行されている。

 野崎さんは、これまで書いた26年分のうち、20年分の原画を南さつま市に寄贈、このたびの原画展となった。
 そして不自由な体を押して久し振りに帰郷、故郷の皆さんと語り合う。 

010_640  野崎さんとは、母親同士が小学校の同級生だった事もあって、故郷での少年時代から交遊が続いている。
 今回も帰郷して、いろいろとお手伝いしたかったが都合がつかず失礼した。
 せめてブログで、今回の催しを紹介して野崎さんにエールを贈る。

 「一日一絵」原画展は、南さつま総合保険福祉センター「ふれあいかせだ」で、11日(木)まで。入場無料。野崎さんは、毎日会場にいます。

 絵画集「一日一絵」は、JTB出版販売センター(03-5796-5593)へ。      

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November 04, 2010

1686.半次郎

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  知事を先頭に、茨城県民が総出で協力した映画「桜田門外ノ変」。同じく鹿児島県民や同郷の人たちが製作に協力したのが、この「半次郎」である。

 ただひとつだけ違いがある。前者は新聞社やテレビ局、東映という大手製作・配給会社による作品だが、「半次郎」は小さなプロダクションとボランティアによって製作された。
 だから「ザ・サムライシネマ」のキャンペインにも加えて貰えず、上映館も単館の数箇所に留まっている。

 しかし作品の内容は、「十三人の刺客」や「桜田門ノ変」に決して劣らない。贔屓目かも知れないが、戦闘シーンなどは「半次郎」の方がむしろ上をいく。
 またキャストやスタッフの熱情が、スクリーンから迸る。そんな作品だった。
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 映画製作の背景については、ブログ1207号(09.04.01)と1450号(10.01.09)で紹介したので詳しく述べないが、主役・半次郎を演じた榎木孝明が10年前ほど前から温めてきた企画である。

 池波正太郎の小説「人切り半次郎」のイメージが一人歩きして「新撰組も恐れた示現流の達人だが、粗野で野暮ったい男」とされた中村半次郎。
 しかし榎木は「彼は私心なく情誼に厚く節義を重んじる男だった」と、映画を通じて再評価を試みた。同じ示現流を学んだ榎木の心意気である。

337509_100x100_002  映画製作に関わる資金は、榎木を中心に鹿児島はもちろん在京の有志たちが駆け回って集めた。
 キャストも、AKIRA(半次郎の友人永山役)、白石美保(半次郎を想う人)、北村有起哉(大久保利通)など、手弁当で集まった。
337509_100x100_003  西郷役は公募で選ばれた名古屋の大ファンで、素人離れした演技を見せる。

 監督は「アダン」('05)で榎木とコンビを組んだ五十嵐匠、音楽は鹿児島出身で大河ドラマ「篤姫」を手がけた吉俣良、撮影は「男たちの大和」の阪本善尚が担当している。

 映画「半次郎」のガイダンスとして、ブログ1207号「さつま今昔(示現流の精神)」の一部を再録する。

 「示現流の達人として有名なのは、幕末の志士中村半次郎である。彼には、軒を離れた雨だれが地上におちるまで、三回もの抜き打ちが出来たという伝説もある。」
 「彼は西郷隆盛の片腕として維新後は桐野利秋を名乗ったが、『征韓論』に敗れた西郷の下野に従い、陸軍少将の職を投げ打った鹿児島に帰り、城山の露と消えた。」

001_640003_640  「無骨な薩摩人の典型と言われる中村半次郎こと桐野利秋。西南の役の戦死者を葬る南州墓地では、西郷の墓の隣に座す。」
 「別府晋介、永山弥一郎、村田新八、篠原国幹、辺見十郎太と何百という戦死者のなかで、彼の墓石だけは薩摩では見かけない花崗岩で築かれている。この墓石は、京で彼を愛した女性が届けたものだそうだ。」

 「情にも熱かった半次郎の一面を語るエピソードである。」

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November 03, 2010

1685.花クルー・ツアー・秋

101103_002_640101103_023_640 (「ツタ・ヤマボウシ」と「シセントキワガキ」)  

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 秋、紅葉の季節。晴海アイランド・トリトンスクェアに秋の花木を訪ねた。(左は「アメリカザイフリボク」と紅葉した「ホワイトラブ」)

 600種10万本の植物が育つトリトン・スクェアでは、季節ごとに花クルー・ツアーが開催される。
 今回も「文化の日」の午前中、専門家による解説を聞きながら秋の草木や花を楽しんだ。

101103_047_640_2101103_053_640101103_021_640_2101103_017_640_2   秋の花を代表するのは「キク」。世界では2万種、日本でも300種を超える自生のキクがあるそうだ。

  左から「ポットマイチュラ・宿根アスター」「ウインターコスモス」「マーガレットコスモス」。コスモスの名はもちろんキク科の植物。

 右の「シュウメイギク」は、「菊」ではなく「キンポウゲ」の仲間。「秋明菊」「貴船菊」「秋牡丹」ともよばれて、初夏のボタンに匹敵する気品のある秋の花とされている。

101103_013_640101103_025_640101103_032_640101103_040_640  左の「サルビアレウカンサ」は、宝石「紫水晶」に似た花の色から「アメジストセージ」とも呼ばれる。

  次の「ヒメイチゴ」は満開。その陰でイチゴのような実も付けていた。
 そしてシュウカイドウ科の「ベゴニア」2種。「ラブミー」はおなじみの園芸種、来年春まで花はもつ。その隣は「球根ベゴニア」の各種。

101103_037_640101103_036_640   漢字で書くと「紫紺野牡丹」。
 文字通り「ノボタン科」の植物で、花の色は「シコン」。
 英語では「コートダジール」蒼い海のイメージ、別名の「ブラジリアン・スパイダーフラワー」はおしべが長くクモの足のような節があるから。

101103_029_640101103_059_640_2101103_050_640_2101103_056_640_2  お馴染みの「リンドウ」に「フジバカマ」。
 「珍しい「クロデンドロム」、最後が秋を代表する「コスモス」。

 写真に撮った花々はもっとあるが、今回はここまで。

101103_063_640101103_065_640   帰りに、今年で10回を迎えた「晴海インフィオラータ」を見学。
 バラの花びらで描かれた作品は、「ラ・チョチャーラ~ソフィア・ローレン」と「野生のマーガレット」。
 全部で19の「花の絨毯」、今年のテーマは「大空の感謝祭」だった。

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November 02, 2010

1684.雷桜

_640  秋から年末にかけて公開される、5本の「ザ・サムライシネマ」。3本目は、唯一女性作家の原作をもとにした「雷桜」である。

 私が愛読している時代小説の作家のひとり、函館在住の宇江佐真理がその原作者。
 「髪結い伊三次捕物余話・幻の声」で15年前に「オール読み物新人賞」を受賞して文壇にデビューした彼女は、その後吉川英治文学新人賞、中山義秀文学賞受賞するなど、江戸市井の人々を人情豊かに描く作品を送り出してきた。

Raiou_4   「雷桜」は短編時代読物を得意とする彼女には珍しい長編作品、それも徳川将軍家に生まれた人物が登場する。
 しかし親子・兄弟・主従、そして男と女の優しい情愛を、丁寧に書き込んでいるところはこれまでの短編に通ずる。

001  幼児の時に誘拐され、山奥で育てられた自由奔放な少女と、将軍家に生まれながらも心に闇を抱えた若殿との、悲恋物語である。

 その二人を蒼井優と岡田将生という、今旬の役者が演ずる。
 作品としての出来・不出来には色々な意見があるようだが、蒼井の野性味溢れる演技には拍手を贈る。

 002 岡田とともに3ヶ月間の特訓を受けた乗馬シーンは、なかなかのものである。疾走する人馬一体の場面も吹き替え無しだったという。役者根性である。

 「告白」「悪人」と、このところ話題作に登場している岡田も、「身分違いの恋」に悶える癇癪持ちの若者の苦しみを、上手く演じていた。

 フィクションだが、歴史上実在した人物の11代将軍・家斉が登場する。
 坂東三津五郎が演じているが、ここから辿っていくと物語のモデルとなった若殿も見えてくる。

003_640  家斉は、幕藩体制で最も長く将軍の座に着いた男である。1787(天明7)年に、14歳で御三卿の一橋家から入って将軍となった。
 以後50年間、当初は松平定信(父親の従兄)を老中に迎え「寛政の改革」などを進めたが、晩年は大奥の華美驕奢によって財政を窮乏化させ、大飢饉や大塩平八郎の乱もあって存命中に家督を譲っている。

 その大奥、281人の奥女中を抱え側室の数は40人、成した子供は55人との記録がある。
 作品に登場する若殿もその一人というわけで、史実から推定すると御三卿・清水家に養子に入りさらに紀州藩主となった斉順か、同じ道を辿った弟の斉彊あたりがモデルのようだ。

 家斉の成した「大量の子女」たちは、全国各藩の家系に大きな影響を与えており、「十三人の刺客」の暗殺相手、暴君・斉韶も明石藩主に無理やり押し込んだ若殿がモデルだった。
 彼もまた、心の闇を抱え込んでいた。

336592_100x100_001  「雷桜」に話を戻そう。
 この作品は、時代劇は初めての廣木隆一が監督した。チャンバラ映画ではなく、ファンタジックな時代劇にしようと、プロデユーサーが「余命1カ月の花嫁」('09)の彼を選んだ。

004_640_3   それはそれで良いのだが、度々映される江戸城の天守閣には戸惑う。
 「明暦の大火」(1657年)で全焼した天守閣は、二度と再建されてはいない。家斉の時代、北の丸にあった清水家の目の前に天守閣が登場するたびに、ここは江戸?と思う。

 時代考証などすっ飛ばしたと言えばそれまでだが、原作者の宇江佐真理がそれを大事にしている作家なので残念だ。

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