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January 26, 2012

2043.ヒミズ

2_005_640 ブログ2037号('12.01.14)でも紹介したが、園子温のこれまでの作品は監督自身のオリジナル脚本だった。
 しかし今回は、愛読しているコミックを原作とする初めての「実写化」作品である。

 カリスマ漫画家・古谷実の「ヒミズ」は、「週刊ヤングマガジン」に連載されてきた人気コミック、平穏な日常に潜む孤独感を描き多くの若者たちの共感を得た作品として知られる。

 人間の存在そのものが持つ狂気をテーマに、独特の園子温ワールドを展開してきた彼は、そこに「青春純愛物語」を見た。
 だから今作品はポルノを省いたファンタジーとなる。

340494_100x100_006340494_100x100_005 崩壊した家族の中でもがく中学3年の少年と少女の純愛である。
 その二人を染谷将太(「アントキノイノチ」'11)と二階堂ふみ(「ガマの油」'09)が演ずる。

 二人の爆発するような情熱と感情のパフォーマンスは高く評価され、昨年のヴェネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)を受賞した。

340494_100x100_013  映画の導入部は、瓦礫の山となった大震災の被災地のトラックショットである。
 その「廃墟」の中に立ちすくむ主人公の少年、彼の手には拳銃。そこにモーツアルトの「レクイエム」が流れる。

 「ヒズミ」の製作進行中に、東日本大震災が発生した。園子温ワールドは、それに大きな衝撃を受ける。
 作り物の映像では決して描けない世界、彼の脚本は大きく変わったという。
 ラストが原作と正反対になったのは、その所為なのだろう。

340494_100x100_001  「家族の崩壊」「家庭内暴力」「不条理な無差別殺人」「不条理な被災」そして「暴力の連鎖」・・・、現実そのものの中から園子温は必死に「希望」を掘り起こそうとする。

 「ヒズミ(日不見)」、地中を徘徊するモグラに明るい太陽を見せようとした。

340494_100x100_007  オーデションで選ばれた若い二人を支える出演陣は、常連とベテランが顔を並べる。

340494_100x100_009  震災と原発でホームレスとなった元社長・渡辺哲、同じくテント暮らしのカップル・吹越満と神楽坂恵、少年に対しても冷酷なヤクザの親分・でんでん、チンピラ・窪塚洋介、そして少年に暴力を振るい続けるアル中の父親・三石研。
 ほか、古高由里子、鈴木杏、黒澤あすかにアイドル歌手西島隆弘。

340494_100x100_004  詩人でもある園子温は、今回も「詩」をキーワードとした。

 「牛乳の中にいるハエ/その白と黒はよくわかる/
   どんな人かは着ているものでわかる/・・・・
 何だってわかる/じぶんのこと以外は」

 フランスの放浪詩人フランソワ・ヴィヨンの「詩集」である。

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