« January 2012 | Main | March 2012 »

February 28, 2012

2060.マシンガン・プリーチャー

22_013_640_2 ウガンダから南スーダンにかけて、村々を襲い残虐行為を繰り返す反政府ゲリラ「神の抵抗軍」(LRA)。
 「十戒」を掲げ、神の霊媒と自称するジョゼフ・コニーに率いられる狂信集団は、襲った村で大人は皆殺しにして子供たちを拉致する。
 少女は兵士たちの性的奴隷に、少年は洗脳して兵士に仕立て上げる。

Kt_pt_about   その彼らに、マシンガンを手にたった一人で立ち向かったアメリカ人がいた。
 サム・チルダー、前科者の元麻薬密売人(右の写真)。スーダンの人たちは、彼を「マシンガン・プリーチャー(銃を持った伝道師)」と呼ぶ。

 これは単なるアフリカの「ランボー映画」ではない。現在も進行中の実話の映画化である。
 サム・チルダーは、今も南スーダンで子供たちを救うため、マシンガンをぶっ放しているのだ。

341348_100x100_002_2  左手に聖書、右手にショットガンを持ってインタビュウーに応えるチルダー。そのテレビを見た二人の女性プロデューサーが、彼に自伝を書かせて映画化した。

 監督は、「ネバーランド」('04)でアカデミー賞にもノミネイトされたマーク・フォスター。
 フスターは、彼を英雄視するのではなく、矛盾を抱えながらもクレイジーに生きざるを得ない悩める男として描く。
 その主人公を、「オペラ座の怪人」('04)でブレイクしたイギリスの俳優ジェラルド・バトラーが演じる。

341348_100x100_004  家庭崩壊寸前になりながらも、その主人公をしっかりと支える元ストリッパーの妻はミシェル・モナハン(「ミッション・インポッシブル」'11)。
 麻薬密売の悪友でチルダーを最も理解していた男に、「レボリューショナリー・ロード」('08)でアカデミー賞にノミネイトされたマイケル・シャノンという組み合わせ。

341348_100x100_003  ウガンダや南スーダンで、これまで誘拐された子供は4万人を超えるという。
 原野を囲って孤児院を造り、拉致された子供たちを救出するチルダーたち。
 孤児院や村を攻撃する「神の抵抗軍」の兵士たちも、85%以上がかって拉致された少年たちなのだ。

 その少年兵を、マシンガンで撃ち殺さなければならないという矛盾。毀誉褒貶に塗れながらもチルダーは、全財産を投げ打って今も闘う。

341348_100x100_005  映画のラストに、チルダー自身が登場する。
  「私の行為をすべて正当化するつもりはないが、家族を救うために、ひとは手段を問うだろうか」

 「神のしもべが銃を手に戦うのは正しいのだろうか」
 そんな疑問を抱きながらも、マシンガン・プリチャーはアフリカの原野を駆け巡る。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 26, 2012

2059.東京マラソン2012

1202262012_007_6401202262012_014_640  6回目を迎えた「東京マラソン」、男子はロンドン五輪代表選考会を兼ねるというのでヒートアップ。
 
 期待の川内(埼玉県庁)は残念ながら14位だったが、藤原新(東京陸協)が自己最高を52秒更新して2位、日本選手ではトップでゴールした。

1202262012_045_640_21202262012_037_640_21202262012_036_640_21202262012_029_640_2

 さらにヒートアップしたのは「市民ランナー」。
 10倍近い抽選で選ばれた3万6407人が、都心を埋めた。

 その市民ランナーのひとりである娘も、今年は運良く当選。4年ぶり2回目の東京マラソンを完走した。

1202262012_069_6401202262012_083_6401202262012_076_6401202262012_064_640

 沿道で応援した人は130万人。
 こちらも娘の応援に出かけたが、ここはゴールまで5キロの地点。
 佃大橋をようやく上りきった市民ランナーたちの表情である。、         

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 24, 2012

2058.ペントハウス

22_006_640_2  ニューヨーク・セントラルパークを臨む超高級マンション「ザ・タワー」。
 その65階のペントハウスに住む金融サギ師の大富豪に、年金資金や蓄えたお金を騙し取られたマンション労働者の、痛快な復讐劇がストーリーである。
 つまり今流行の、1パーセント対99パーセントの戦いである。

341250_100x100_007  「オーシャンズ」を想わせるクライム・ムービーとうたうが、そのミッションに挑むのは全くの素人集団。
 無計画な「計画」が、はたして成功するのかどうか、そこがコメディーなのだ。

341250_100x100_002  ミッションのリーダーは、マンションのマネージャーを首にされた冴えない男。「ナイトミュージアム」シリーズで人気のコメディアン、ベン・スティラーの役。

 彼に無理やり誘われたのがケイシー・アフレック(「ジェイシー・ジェームズの暗殺」'07)の元コンシェルジェや、掃除人のガボレイ・シディベ(「プレシャス」'09)たち。
 それぞれアカデミー賞にノミネイトされた芸達者たちである。

341250_100x100_003  さらにもう一人が、その道のプロでチンピラ泥棒役のエディ・マーフイ。
 「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズが大ヒットし、今や大物コメディ役者になった彼が、初めてスティーラーと競演した。

341250_01_05_03 そしてこの作品でただ一人の悪役、サギ師の大富豪が「アビエイター」('04)でアカデミー賞にノミネイトされたベテラン俳優、アラン・アルダという組み合わせである。   

 監督は、これまで撮った映画8本で15億ドル稼いだブレット・ラトナー(「ラッシュアワー」シリーズ)。

 「ザ・タワー」としてロケの舞台になったのは、世界有数の大不動産屋が所有する「トランプタワー」である。
 「サンククス・ギビングデー」のパレードが、セントラルパーク沿いを行進する中で撮影された。

341250_100x100_006  黄金で造られたフェラリーを、65階のペントハウスから盗み出したのはいいが、それをどう持ち出すか。
 「ミッション・インポッシブル」並みのハラハラ・ドキドキが、この映画の見所。

 そしてもうひとつ、羨ましい限りのリッチでゴージャスなマンションの管理サービス。はたして「管理費」はいか程なのだろうかと、並みのマンションに住むひとりとして想像してみたが。 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 22, 2012

2057.はやぶさ~遥かなる帰還

22_010_640 この1年、同じ題材で製作された3本の劇映画とドキュメンタリー、日本の映画界では珍しい例である。
 全世界が注目した小惑星探査機「はやぶさ」の物語。

340607_02_01_0322_011_640 まず角川映画のドキュメンタリーが、昨年5月に公開された。

 10月にはに竹内裕子・西田敏行主演の「はやぶさ」(20世紀FOX)、そして今月公開の「はやぶさ~遥かなる帰還」(東映)と続く。

 最後が来月、藤原竜也主演の「おかえり、はやぶさ」(松竹)。この作品は3D での上映である。

340557_100x100_002340557_100x100_005   堤幸彦監督の20世紀FOX版は、実在の宇宙科学研究所・研究生とその上司である広報担当教授が主役だったが、今回は「はやぶさプロジェクト」のマネージャーをモデルに渡辺謙が主役を演ずる。

 フィクションとして探査機の部品を製造した町工場の親父(山崎努)と、娘で新聞社の科学記者(夏川結衣)が関わる事で物語を重厚にする。

Img_01_2  「はやぶさ」が、打ち上げられたのは2003年5月9日。
 2年後には30億キロ彼方の小惑星「イトカワ」に到着、そして2010年6月13日に地球に帰還した。

340557_100x100_006  その間、探査機は「エンジンの不調」「燃料漏れによる姿勢制御不能」「太陽パドルお発電不測」「通信途絶」など、数々のトラブルに見舞われる。
 それでもプロジェクトチームの科学者たちは、「決してあきらめず」「決して見捨てず」はやぶさの生還に情熱を傾けた。

 映画は、その7年間を科学記者の目を通してヒューマンタッチで描いていく。

7a8ed7e05eaab52208a610ab1fa9a411  作品は、日本の宇宙開発の先駆け、ペンシル・ロケットの糸川博士へのオマージュとなっている。小惑星に「イトカワ」の名が付けられたのも、後継者たちの博士への想いだった。

 「はやぶさ」が打ち上げられたのは、半世紀前に糸川博士が奔走して設立した鹿児島県・内之浦の宇宙空間観測所。

 1962年に完成した日本最初のロケット発射基地からは、その年8月にペンシル・ロケットの後継機「カッパ8Lー1号機」が打ち上げられた。
 日本の宇宙開発のスタートだった。

22_012_640  同じ年の7月、鹿児島に赴任した私はこの取材が最初の仕事となった。
 それだけに、内之浦の宇宙空間観測所には思い出が深い。

Ef46c3f50aef0f8fb5108e3a933833f7   翌年には「ラムダ3ー1号機」、さらに「カッパ10ー1号機・科学観測ロケット」、1966年3月には「ラムダ3H-1号機」の打ち上げを実況中継した。

 仕事の合間に、東大宇宙航空研究所の若い科学者たちと、焼酎を酌み交わしながら日本の宇宙開発の将来について語り合った事を思い出す。

Img_02  映画のラスト近く、大気圏に突入した「はやぶさ」が燃え尽きるシーンに感動する。
 そこにこのミッションが私たちに届けた、「希望」「勇気」「誇り」「自信」が凝縮されているからである。

Img_03  アメリカNASAの予算の十分の一、人員の二十分の一、その中で世界に誇る日本の技術力・人間力が、「はやぶさ」で証明された。
 今、「はやぶさ2」のプロジェクトがJAXA(宇宙航空研究開発機構)で進行中ときく。

 この映画の原作は山根一真、監督・瀧本智行(「沈まぬ太陽」'09)、脚本は西岡琢也。
 出演は渡辺の他にプロジェクトメンバーとして江口洋介、小澤征悦、中村ゆり、吉岡秀隆。広報担当教授・藤達也、機構の幹部・石橋蓮司。 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 20, 2012

2056.ドラゴン・タトゥーの女

22_008_640_2  前号の「モールス」もそうだったが、この作品もスエーデン映画のハリウッド・リメイク版である。

 スエーデンの左翼系ジャーナリスト、スティーグ・ラーソンが初めて書いた推理小説が原作。
 当初は5シリーズを予定していたが、彼が3作目まで書いて出版しようとした直前に、心筋梗塞で急逝した。
 まだ50歳という働き盛りだった。

340019_100x100_014_5  原作は2005年に刊行され40ヵ国で翻訳、2600万部を超えるミリオン・セラーとなった。
 この数字は、当時評判だった「ダ・ヴィンチコード」をはるかに超えたものである。

340019_100x100_008_2  ストーリーは、雑誌「ミレニアム」の敏腕編集者が、背中にドラゴンのタトゥーを彫った鼻ピアスの天才ハーッカーのヒロインと組んで、40年前の大富豪一族の少女失踪事件の謎を追うもの。

 近親相姦・性的暴力・サディズム・猟奇犯罪・性倒錯にナチズムの残影、問題化している21世紀初頭のスエーデンの社会状況を背景に描かれた。

340019_100x100_001  2年前に公開されたスエーデン映画でも、ノオミ・ラバスが演じたヒロインが話題を呼んだが、今回もルーニー・マラーに注目が集まり、今年のアカデミー賞にもノミネイトされた。

 マラーは、今回の作品を監督したデヴィッド・フィンチャーが前作の「ソーシャル・ネットワーク」にも起用した若手女優。
 前作とはがらりと変わり、惜しげなく華奢な裸体も晒すダークヒロインを熱演している。

340019_100x100_013  一方主人公である雑誌記者は、イギリスの俳優で「007シリーズ」のポンドを演じたダニエル・クレイグ。
 スエーデン作品の方はミカエル・ニクヴィスト(「喜びを歌にのせて」'04)が、ちょっと草臥れた中年ジャーナリストの味をだしていたが、クレイグは恰好良すぎるか。

 他は、クリストファー・プラマー(「人生はビギナース」'11で今年のアカデミー賞ノミネイト)、スティーヴン・バーコフ(「ツーリスト」'10)、ロビン・ライト(「マネーボール」'11)、ステラン・スカルスガルト(「メランコリア」'12)。

 340019_100x100_011  次々と出てくるグロテスクな猟奇死体に、モザイクを掛けざるを得なかったエロチックシーンなど、ハリウッドらしい娯楽性旺盛な作品だが、主要なロケはスエーデンの冬に行う事で、北欧特有のダークブルーの世界は十分に味わえる。

340019_100x100_004  スエーデン映画3部作とも既に見ているので、ミステリーとしての緊迫さは感じなかったが、原作にない「切ない」ラストには泣かされる。
 このあとの2部・3部に、それがどう引き継がれていくかが楽しみだ。

 ツエッペリンの「Immigrannto Song」にのるタイトルバックのCG映像は、それだけでも「アート」になる。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

February 18, 2012

2055.モールス

22_001_640_2  作品は昨年8月に日本でも公開されたが、上映期間が短かかったため秋に再度終夜に限定して上映された問題作。
 そして今回、幾つかの劇場で再々公開されている。

020_640_2   スエーデンのシナリオライター出身のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストが、6年前に発表した処女作「モールス」が原作。

 世界各国で翻訳されてベストセラーになったが、原作者自身が脚本を書いて映画化されたのが2年前の春で、スエーデン・アカデミー賞をはじめ各地の映画祭など60を超える賞を受賞した。

 日本では「ぼくのエリ~200歳の少女」の邦題で上映され、このブログ1611号('10.7.29)でも紹介した。

338758_01_02_03_2   「モールス」はその原作をハリウッド版として、マット・リーヴス(「クローバーフィールド」'08)がリメイクしたもの。
 舞台をニューメキシコの雪に閉ざされた田舎町に設定、スエーデン版とほぼ同じストーリーで展開する。

 物語は、いじめられっ子の孤独な少年と、12歳のまま年を取らないヴァンパイアの少女との純愛。「ロミオとジュリエット」のイノセント・スリラー版といえば判りやすい。
 残酷な連続猟奇殺人と、幼い二人のピュアな初恋が描かれ、「切なさ」と「恐怖」が同時並行していく。

Sum_w_kodi01Sum_w_chloe01 ハリウッド版は、いま売れっ子の子役を主人公にもってきた。

 ヴァンパイアの少女は「キック・アス」('10)でブレイクシタクロエ・グレース・モレッツ、少年は「ザ・ロード」('09)に出演したオーストラリア出身のコディ・スミット=マクフィー。
 ふたりとも芸能一家に生まれ、その演技力は大人並である。

338758_01_05_03  加えて少女を守る「父親」に「扉をたたく人」('08)でアカデミー賞にもノミネイトされた名優リチャード・ジェンキンス、刑事に「シャッターアイランド」'10)のイライアス・コティーズを配して、作品を重厚なものにした。

 原作名・原題・邦題で異論が多かった作品でもある。
 スエーデン版は「LET THE RIGHI ONE IN」、ハリウッド版は「Let Me In」が映画のタイトル。
 それを邦題では、前者が「ぼくのエリ~200歳の少女」、後者が原作通り「モールス」とした。

338758_01_01_03_2  「200歳の少女」は、はじめからミステリーの結末をバラしていると私はブログで評した。しかし「モールス」は、映画のラストで観客をなづかせる、作者ならではのタイトルである。
 このタイトルが「陳腐」だとの評もあるが、それは誤解からきているようだ。

 作品は既に先月末にDVDとして発売されている。だが「切なさ」と「恐怖」だけは大スクリーンで味わったほうがよい。   

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 16, 2012

2054.南房総・早春の旅

120212_019_640  高速湾岸線~東関東自動車道~京葉道路~館山自動車道路~房総スカイライン~鴨川道路を経て2時間半、今年の「町会日帰りバス旅行」の最初の目的地は、安房天津の「妙(鯛)の浦」。

120212_022_640120212_021_640  史跡名勝特別天然記念物「鯛の浦のたい」を遊覧船から撮る。
 その昔、日蓮上人が誕生した日この浦から鯛が群集浮上して波間に銀鱗を踊らせて、生誕を祝ったという。

 深海性の回遊魚である鯛が、浅瀬に安住しているのは他に例がなく、学会の謎とされている。

120212_053_640120212_039_640  鯛の浦にある「小湊山誕生寺」はまさにその名の通り、この浦の漁師の子として生まれた日蓮の生地に創建されたお寺である。

 安房の領主だった里見家はもちろん、水戸徳川家からも助力を得て、堂塔20有余境内2万坪の大伽藍を持つ。

120212_048_640120212_052_640_2  鯛が生息する「妙の浦」も、誕生寺の寺領。「南無妙法蓮華経」の一文字を採って「妙」とつけたが、やがて人々は日蓮の伝承から「鯛」の名で呼んでいる。

 すぐ近くにある鴨川のリゾートホテルで、昼食と温泉入浴休憩。
 参加者に高齢者が多いので、ゆったりとした行程である。

120212_073_640120212_076_640  JR内房線に沿って国道を1時間、「バスの旅」のお楽しみはJA館山センターでの「いちご狩り」。
 園内で30分、いちごは食べ放題である。

 20分も食べると満腹。農協の直販所で、新鮮で格安な地元産の野菜を購入してバスへ。

120212_089_640120212_090_640 隣の南房総市の道の駅までは30分、ここ「花倶楽部」での「花摘み」は、女性たちが夢中になる。

 「金魚草」「ストック」「ポピー」「カーネーション」「水仙」「菜の花」・・・・・・・・、園内の花の香り酔う。

120212_096_640120212_092_640120212_103_640120212_106_640   

 町会の「日帰りバス旅行」は、年に1回のイベントである。

120212_116_640_2  今回の参加者は80人でバス2台。飲んで食べて花やお菓子のお土産付きで、参加費は4000円。
 区からも「町内会活動活性化」のための補助金がもらえるので、充実した内容だった。

 帰りは、富津館山道~館山自動車道~東京湾アクアライン(海ホタルPAで休憩)~首都高湾岸線を通って自宅前の町会事務所まで。
 海ホタルから月島まで、わづか30分強、便利になった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 14, 2012

2053.麒麟の翼

22_004_640_2  東京・日本橋の橋桁中央にあるブロンズ彫刻「翼をもった麒麟」は、建築家妻木頼黄のデザイン。ここから世界へと羽ばたいていけ、との願いが込められている。

 麒麟といっても、アフリカに生息する首の長いキリンとは違う。中国に伝わる伝説上のいきもの、あの鳳凰と並ぶ聖獣である。

340705_100x100_013  その麒麟の前で、ひとりのサラリーマン(中井貴一)が息絶えた。
 江戸橋で腹をナイフで刺され、ここまで必死になって辿りついたのだ。
 映画はここから始まる。

340705_100x100_011_2  同じ時刻、日本橋から歩いて10分ほど離れた浜町緑道で、不審な若い男(三浦貴大)が警官に追われる。彼は車道に飛び出して車に撥ねられ、意識不明となった。
 殺人犯と疑われた男を、恋人(新垣結衣)は庇う。
 日本橋警察署刑事・加賀恭一郎(阿部寛)が、ここに登場する。

340705_100x100_001  ミステリー作家・東野圭吾が、デビュー当時から書き続けている「加賀恭一郎シリーズ」の9冊目が原作。
 一昨年秋TBSで放送されたヒットした、TV連続ドラマ「新参者」の続編である。

 「泣けるミステリー」といわれるこのシリーズは、事件の謎が解き明かされるだけでなく、事件によって傷つけられた人々の「心」を名刑事・加賀が救う。
 東野フアンは、そこに涙する。

340705_100x100_008  「麒麟の翼」も、「瀕死の中井がなぜここまできて息絶えたのか」というブロンズ像に隠された「真実」を、若い本庁刑事(溝端淳平)とコンビを組んで解き明かしていく。
 その「真実」の中から見えるのは、親と子・家族・恋人など愛する者同士の強い「繋がり」なのだ。

340705_100x100_010  監督は、TBSドラマのヒットメーカー・土井裕康(「ハナミズキ」'10)。
 共演に松坂桃季(「アントキノイノチ」'11)、山崎努、劇団ひとり、田中麗奈、黒木メイサほか。

111122_003_640_2111122_023_640 映画の主要舞台となったのは日本橋のほかに、水天宮や甘酒横丁など、見慣れた場所である。
  ブログでも度々紹介した様に、昨年は「日本橋川沿い」「人形町」、一昨年は「日本橋七福神」を散策した。

111112_068_640  この同じ場所を、中井貴一が歩く。
 これが事件の謎を解く、キーポイントである。
 先週も、映画のシーンを思い浮かべながら、日本橋界隈を歩いた。  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 12, 2012

2052.ハンター

22_007_640 オーストラリアのインディペンデント系の作品には、佳作が多い。今月始めに紹介した「アニマル・キングダム」もそうだったが、同じプロダクションが製作した「ハンター」も至高の作品といえる。
 この映画の配給会社の役員をしている友人に薦められて見たが、間違いなかった。

 オーストラリア・タスマニア島を舞台に、幻の獣「タスマニア・タイガー」を追う、孤高のハンターの物語である。

250pxthylacinus タスマニア・タイガーとは「フクロオオカミ」のこと。背中に虎のような縞模様があるので、タイガーと呼ばれる。
 この島がまだ植民地時代だったころ、羊を襲う肉食動物として殺され1936年には絶滅したという。

158pxtasdevil_large  映画にも登場するが、同じ有袋動物である「タスマニア・デビル(フクロアナグマ)」は、6年前に政府が「絶滅危惧種」に指定したため、辛うじて少数が原生林で生き延びている。

 作品は、こうした「固有種」が生息している神秘の地での、「自然と開発」「人間と動物の関わり」が、サスペンスとして描かれるのだ。

341415_100x100_003  主人公のハンターは、ハリウッドで個性派俳優として知られるウィレム・デフォー。「プラトーン」('86)「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」('00)で2回アカデミー賞にノミネイトされた名優である。

341415_100x100_006  そのワキを、オーストラリアの女優フランシス・オコーナー(「AI」'01)やサム・ニール(「デイブレイカー」'09)が固める。

 原作はオーストラリアの女流作家のジュリア・リー、監督はTVドラマディレクター出身のダニエル・ネットハイムが務めた。

341415_100x100_004  ある批評家が「ハードボイルなストイシズムの映像」と評していたが、タスマニアの自然の美しさと厳しさを撮った映像に圧倒される。
 無駄なセリフや説明がなく、その映像だけで語らせる。

240pxcradlemountain  地図でしか知らなかったタスマニア島。植民地時代は流刑地だったが、現在は世界遺産にも指定されて観光客も多いという。

 メルボルンから南に240キロ、北海道よりやや小さなこの島は、17世紀のオランダの探検家タスマンが白人として初めて上陸した事からこう名づけられた。

 見てはいないが、20年ほど前に同じタスマニアタイガーを追う映画が公開されている。
 「タスマニア物語」、降籏康男監督、田中邦衛・薬師丸ひろ子主演の日本映画である。
 「ハンター」は、タスマニア島を舞台にした2番目の作品となった。 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 10, 2012

2051.続・情報の絆

202_011_640  親友・座間味朝雄の遺稿「情報の絆~米軍の情報分断政策と闘った沖縄」の最終回が、8日に発売された雑誌「世界」(3月号)に掲載されている。
 第1回が「占領下の島々」(1月号)、第2回が「日琉マイクロ回線」(2月号)、そして今回のタイトルは「テレビで日本復帰へ」である。

 掲載の経緯については、ブロク2018号('11.12.10)で紹介したので省略するが、この論述は彼が大阪芸術大学教授時代の7年前からプロジェクトを組んで研究してきた、「戦後沖縄放送史」の一部に過ぎない。

 しかし、彼が論述の中で私たちに最も訴えたかったこと、「祖国に何度も裏切られた沖縄の思い」が、「マイクロ回線」をめぐる日・米の動きに迫った稿に、シンボリック現れている。
 そしてここ数日の「米軍再編見直し」をめぐる動きと、深くオーバーラップしているのだ。

202_012_640202_013_640_2  思い遺すのは、沖縄に勤務していた彼の招きで「塾」の仲間たちと沖縄を訪ねた、14年前の取材旅行である。

 私たちは「嘉手納基地」で米軍関係者から基地の実態を取材し、「キャンプハンセン」「普天間基地」を辿り、辺野古で座り込みを続ける住民たちと懇談した。
202_017_640  そして最後に当時の知事、大田昌秀さんと意見を交換した。
 しかし、その頃に比べ事態は一層後退し、先は見えない。

 彼は、「世界」の最終稿でこう述べる。

 「・・・琉球王国を500年も繁栄させた体験。廃藩置県が8年も遅れた体験。過酷を極めた沖縄戦の体験。戦後は米国の直接占領下に27年も置かれた体験。そして、期待した「祖国日本」に二度も裏切られた。一度は沖縄を外して本土だけが独立し、二度目は施政権を返還されたといいながら基地の自由使用を許した。そして今、米軍の基地の74%が沖縄に集中している。」

 そして彼は最後に、

 「・・・・(この論述)は膨大な調査研究の一部であるが、まだ取り組むべき事柄が残っている。・・・・琉球政府の熱心な陳情にも拘わらず、なぜ『上りマイクロ回線』が開設されなかったのか。その曲折はまだ謎のままである。しかし筆者にはそれを解き明かすだけの余命が、もはや残されていない。無念である。」(171ページ)と結ぶ。

 掲載を手伝った仲間たちは、その後にこう注釈を記した。

 (2011年10月20日に病床で座間味朝雄は最後の筆を擱き、親しい友人の見舞も固辞し11月9日に他界した。彼の最後に会えなかったのが心残りの数人の友人たちが、掲載に際して遺稿のごく一部の調整や校正などに当たった。)

 岩波書店発行の雑誌「世界」3月号、8日から全国で発売中。定価840円。  

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 09, 2012

2050.棟方志功展

202_640 久しぶりに催された棟方志功の個展、それも「幻の肉筆画展」である。
 彼が同郷の友人で、京都在住の出版社長の邸宅の襖や衝立、納戸の扉、板戸などに自由奔放に筆を振るった作品50点が並ぶ。

202_002_640_2  これら肉筆画は、個人の邸宅の室内に描かれたものだけに、これまで関係者以外は目にする事がなかった。

 一昨年、遺族が三重県にある「パラミタミュージアム」に寄贈したため、今回公開されることになった。

202_001_640  作品は、棟方が60歳を過ぎた円熟期といわれる1965年ごろ描かれたもので、病に倒れた友人を励ますために邸内あらゆるところに水墨や彩色で描いた。

 ある意味でプライベイトな肉筆画だからか、これまで見た棟方の作品に比べ、よりいっそう自由奔放さがうかがえられる。

 ご存知のように、棟方は青森県出身の版画家。ゴッホにあこがれて洋画家を目指して上京したが、やがて版画への傾倒を深める。
 大きな板を直接刃で削る画法、彼はそれを「板画」と名づける。
 国内はもとより海外でも数々の大賞を受賞、1970年には文化勲章も受章し5年後72歳で逝去した。

 今回は、1934年に画かれた彼の代表作「釈迦十大弟子」も特別展示されている。

202_009_640202_008_640202_007_640202_006_640202_005_640   

 「棟方志功・幻の肉筆画展」は、今月19日まで日本橋三越本店で。
 入場料は800円。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 07, 2012

2049.月光の仮面

22_002_640 故立川談志が、これこそホラー落語と名づけた「粗忽長屋」。
 この古典落語をモチーフにして、芸人・板尾創路が監督した2作目の映画、もちろん脚本・主演も彼である。

339550_100x100_004339550_100x100_001   戦争で記憶をなくした男(板尾創路)と声を失った戦友(浅野忠信)。
 満月に輝く敗戦後の街で、二人の男と一人の女(石原さとみ)の三角関係が縺れていく。
 バックに流れるのは、ベートーベンの「月光のソナタ」。

 不条理、不気味さも吹っ飛んでしまったシュールな映画である。
 「面白かったけど、人に説明しにくい映画」を作ったつもりと板尾は語るが、観客の反応は両極端に別れる。

339550_100x100_008  理屈っぽく考えてしまうと難解だが、気楽に見たらダーク・ファンタジー落語映画。
 バカバカしい笑えないギャグやオチに「笑って」しまう。

 吉本興業と角川映画が、採算を度外視して製作したように見える。それだけに出演者はベテランが揃う。

339550_100x100_005_2  板尾も記憶喪失の傷病兵だがら、セリフらしいセリフがない。
 喉に砲弾の欠片をくって声が出なくなった浅野、元若手有望落語家なのだが当然セリフはなく、表情だけの演技。
 その二人に戸惑う石原は、落語の師匠(前田吟)の可憐な娘という役柄。

 ほかに国村隼(席亭)、六角精児(兄弟子)、宮迫博之(落語家)、柄本佑(弟弟子)、木村祐一(隊長)、津田寛治(戦友)、平田満(人力車夫)などなど。

339550_100x100_010 吉本と角川は宣伝に力を入れるが、「見るに耐えられない」という酷評もあってか、入った劇場の観客はたった二人だった。
 しかし「マニア」にとっては、板尾ワールドに酔いしれる。

339550_100x100_014  「粗忽長屋」、自分の死体を見た熊さんがつぶやく。
 「ここで死んでいるのは確かに俺だが、それを見ているこの俺はいってぇ誰なんだ」

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 05, 2012

2048.冬富士

021_640005_640008_640013_640

 昨日は立春、しかし日本海側は歴史的な大雪である。
 一方、太平洋に面した東京などは、カラカラ天気が続く。
 先月の東京は、晴れの日がほとんど、時雨れたのは19日からの3日間だけだった。
 日記代わりに朝と夕方 撮った富士山の写真も例年より多い。
 その表情を数葉紹介する。(上は朝日、下は夕日の写真)

 上の左の写真の様に、雪化粧した富士山が朝日で紅色に染まるのを「紅富士」という。
 夏の場合は、露出した溶岩台が赤褐色に染まるので「赤富士」と呼ぶ。葛飾北斎が描いた有名な浮世絵にある。

 都心からは無理だが、朝日・夕日で裾野に美しい影を描く「影富士」。
 昨秋、本栖湖を旅行して見たのは、湖面を鏡にして映える「逆さ富士」。
 沈む太陽が富士の頂上と重なる「ダイヤモンド富士」は、我が家からはお彼岸過ぎの光景である。
 
 今朝9時、3775.6mの山頂の気温はー14.4度、湿度9%、気圧634.5hPa。昨日より6度暖かい。
 テラスからおよそ100キロ、コンパクトデジカメを10倍~25倍の望遠にして富士を撮る。

103_640038_640048_640104_640 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 03, 2012

2047.J・エドガー

22_640 アメリカ連邦捜査局を創設して、半世紀ものあいだ長官を務めたJ・エドガー・フーバーの伝記映画。
 「8人の大統領が恐れた男」といわれるフーバーの真実の姿は、アメリカ近・現代史の裏面を語る。

150pxusfbiseal_svg  FBIは右の紋章ににも記されているように、司法省所属の機関。
 といっても半ば独立した組織で、国家の安全に関わる公安事件や政府当局者の汚職、誘拐など複数の洲にまたがる広域事件、銀行強盗など巨大犯罪を捜査する。

 1924年、フーバーが29才で司法省捜査局長に任じられてのがその始まりとされるが、彼の指導によって組織化・綱紀粛正・科学捜査導入など捜査手法の近代化によって、現在は3万人を超える巨大な権力機構となった。

340895_100x100_003 フーバーはFBIの組織力をもって、大統領をはじめ国内外の有力者・著名人のスキャンダルを調査し、その秘密ファイルをもって政治的恐喝を行ったとされる。
 「大統領が最も恐れた男」といわれた由縁である。

340895_100x100_001  映画を製作したのは名匠クリント・イーストウッド。
  20代から77歳で亡くなるまでのフーバーを、レオナルド・ディカプリオに演じさせ、愛国者・正義の守護神といわれた男の、もうひとつの素顔を緻密な構成と映像で描ききった。

 アメリカの安全と正義を守った強い男の素顔、それはマザコンで脅迫観念とコンプレックスに悩む同性愛者でもあったのだ。

340895_100x100_002  映画は人生の終盤にさしかかったフーバー長官が、ゴーストライターに「回顧録」を書き取らせるシーンからはじまる。
 彼の語るFBIの歴史、30年代のギャング団壊滅、40年代のスパイ網摘発、50年代の「赤狩り」、そして「リンドバーク幼児誘拐事件」の解決・・・。
 そこに、正義感を持った「臆病者の嘘」が散りばめられていく過程を、イーストウッドはクールに描いていく。

340895_100x100_005  ディカプリオはもとより、母親役のオスカー女優ジュディ・デンチ、彼を生涯サポートした副長官役のアーミー・ハマー、個人秘書役ナオミ・ワッツの演技力が、作品を重厚なものにした。

 FBIが活躍する多くの映画のような娯楽性はないが、フーバーという一人の人間の強さと弱さがきっちりと描かれているだけに、感動を覚える。 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

February 01, 2012

2046.アニマル・キングダム

2_012_640 日本で公開されるオーストラリア映画は少ないが、問題作はよく目にする。
 この「アニマル・キングダム」もそのひとつで、2年前のサンダンス映画祭でグランプリを獲った作品。

 出演しているオーストラリアの大女優ジャッキー・ウィーヴァーが、昨年のアカデミー賞にノミネイトされたので日本での公開を待っていた。

338974_100x100_007  メルボルンで実際に起こった警察官殺害事件と、その容疑者となった犯罪者ファミリー(アニマル・キングダム)をモデルに、デヴィッド・ミショッドが脚本を書き監督した作品である。

 ミショッドは、ナタリー・ポートマンが出演した「メタルヘッド」('10)の脚本家として知られるが、今回初めて長編映画のメガホンを執った。

 母親が薬物中毒死したため、祖母のもとに引き取られた高校生が主人公。引き取られた家が、祖母をゴッドマザーとする犯罪者ファミリーだったことから、話は展開する。

338974_100x100_006  「鮮烈なバイオレンスと狂気。異形の家族愛と絆」とうたうが、居場所を捜す青年の成長の物語といったほうが判りやすい。

 ハリウッドのギャング映画のような、派手な撃ち合いはないが、ファミリーひとりひとりが抱く破滅への慄きの中で、無表情の青年がやがて自分の意思を主張していく過程が見せ場となる。

338974_100x100_001338974_100x100_004  主人公を演じるのは新人のジェームズ・フレッシュヴィル。
 その彼を、祖母役のジャッキー・ウィーヴァーや部長刑事役のガイ・ピアース(「英国王のスピーチ」'10)など、オーストラリアのベテラン俳優たちが支える。
 そう、主人公の伯父で狡猾なギャング役も名優のベン・メルデルソーン(「ノウイング」'09)だった。

 2年前のオーストラリア・アカデミー賞(AFI賞)で、作品賞など10部門で受賞。クエンティン・タランティーノが最高傑作というのも、アンチ・ハリウッドから見ると頷ける。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

« January 2012 | Main | March 2012 »