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March 31, 2012

2076.「初つばめ」・深川散策

_640 「チャンネル銀河」の社長・副社長を退任した昔の仕事仲間と、日本橋の蕎麦屋で杯を交わした。
 その折頂いたのが左の文庫本。「チャンネル銀河」の人気番組、「松平定知の藤沢周平をよむ2」が選んだ、庶民の哀歓を描く名作短編集である。

110722_043_640  本には、物語の舞台を巡る散策マップが付いている。
 その舞台・深川は私の隣町、そこでマップに沿って歩いてみた。
 スタートは、両国駅前「江戸東京博物館」から。

062_640060_640  「おもんが重吉に送ってもらい橋のたもとで手を握られた」(「遅いしあわせ」)のは、「両国橋(大橋)」。

 隅田川では2番目に架けられたこの橋は、明暦の大火がきっかけ。
 「武蔵」と「下総」両国を結ぶので両国橋と呼ばれた。

110722_073_640 068_640  その「火除け地」の東広小路にあるのが、「回向院」。
 明暦の大火で亡くなった人々の霊を弔うために、創建された。

 天保の頃から勧進相撲の定場所がここで興業され、現在の「両国国技館」に引き継がれる。

054_640057_640_2    回向院のすぐ近く、相撲部屋が並ぶ一角にあるのが「本所松阪町公園」。
 赤穂四十七士討ち入りでお馴染みの、吉良上野介の屋敷跡。
 なまこ壁や「吉良首洗い井戸」が残る。

 直心影流の剣客、男谷精一郎の屋敷跡もすぐ近くにある。勝海舟が生まれたのも、この屋敷である。現在は両国公園。

052_640_2  清澄通りを南に下ると、竪川「二ツ目橋」に。首都高小松川線に覆われた先に見えるのが「三ツ目橋」。
 藤沢周平の「驟り雨(はしりあめ)」で、「嘉吉と母子が渡った橋」である。

 「竪川」は、利根川と江戸を結ぶ運河として17世紀に掘削された。本所を竪(たて)、東西に貫くことからその名がついた。
 橋の右「旧徳右衛門町」は、「おしなが作次郎と引っ越すことにした町」(「消息」)。

050_640_2  さらに南へ。都営新宿線と大江戸線が交差する駅「森下」につく。
 ここは「おすぎの恋人幸吉が住む町」(「夜の道」)。

 徳川譜代大名・庄内藩酒井家の下屋敷があり、深い森に囲まれていたことから、「森下」の名がついた。

110407_058_640  大川(隅田川)の河口だったこの一帯は、葦の生い茂る三角洲だった。
 江戸に入って、ここを干拓したのが摂津生まれの深川八郎右衛門、家康の命により以後「深川」と呼ばれようになる。

                            (続く)  

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March 29, 2012

2075.おとなのけんか

203_028_640  一見折り目正しい紳士淑女の、うわべに隠されたそれぞれの偽善を暴く、ヤスミナ・レサのコメディ戯曲「God of Crnage」(修羅場の神様?)。

 パリ・ロンドン・NYブロードウェイで大ヒット、オリヴィエ賞やトニー賞を受賞した舞台劇を、巨匠ロマン・ポランスキーが映画化した。

 舞台劇はノンストップ・リアルタイムの展開で90分。
 巨匠はさらにテンポアップして、映画は79分のマシンガン・トーク劇にした。

341534_100x100_001 それもこの作品、ニューヨーク・ブルックリンのアパート一室を舞台に、2組の夫婦のトーク・バトルだけで描くのだから、演技派でないと務まらない。

 アカデミー賞に4回ノミネイトされ、「戦場のピアニスト」('02)でやっと監督賞を受賞したポランスキーだけに、4人の役者もアカデミー賞で並べた。

341534_100x100_004  作家を自認する妻と台所用品卸業を営むインテリ夫婦は、ジョディ・フォスター(「告発の行方」'88「羊たちの沈黙」'91でオスカー)とジョン・C・ライリー(「シカゴ」'02ノミネイト)。

341534_100x100_007  投資ブローカーの妻と企業弁護士のセレブ夫婦を、ケイト・ウインスレット(「愛を読む人」'08)とクリストフ・ヴァルツ(「イングロリアス・バスターズ」'09)のオスカー俳優という組み合わせ。

 こどもの喧嘩に親が出て、冷静に話し合う筈がエスカレート。
 「チクリ、チクリ」の会話が「グサリ、グサリ」となって収拾不能となっていく。
 それも、「夫婦×夫婦」が「男×男」「男×女」「女×女」の四つ巴のバトルなのだから、まるで「こどもの喧嘩」なのだ。

341534_100x100_006  それにしても、美女たちのマシンガン・毒舌が凄い。
 劇場内では度々爆笑が広がるが、中年以上の観客には思い当たる節が多いのだろう。

 舞台劇を観たポランスキーが、原作者のヤスミナ・レザと一緒に脚本を書いただけにノンストップ劇は痛烈なセリフで埋まる。

 もともとパリが舞台だったが、それをニューヨークに移してセリフは英語。
 アメリカを追われたポランスキーが、「戦場のピアニスト」のヨーロッパ・スタッフと組んだフランス・ドイツ・ポーランド合作映画というのも面白い。

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March 27, 2012

2074.マーガレット・サッチャー

2_010_640  ロンドンのある街角にあるコンビニ?、老婆が牛乳ワンパックを求める。生気のない顔、弱弱しい足取り・・・・。
 ショッキングな映像から物語は始まる。

341452_100x100_005  アパートメントを抜け出してきた老婆は、元イギリス首相マーガレット・サッチャー。
 86歳の認知症の彼女を演じたのが、実年齢62歳のメリル・ストリーブ。
 圧倒的な演技力で、今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞した。
 同時にこの老いた姿を造ったマレーズ・ランガンも、メイキャップ賞を受賞している。

 現存するサッチャーが、8年前に亡くなった夫の幻影と語り合いながら、激しく生きた現役時代を振り返るストリー。
 ストリープが見せる「老いの孤独」が胸に迫る。

341452_100x100_003  イギリスの階級社会と男性社会を這い上がり首相となった彼女、不況のさなか緊縮財政を強行して国民の反感をかった彼女、強行にIRAと闘いフォークランドで勝利した彼女、福祉国家を棄て新自由主義へと突き進んだ彼女・・・。
 大義・野心・孤独・不信を抱える「鉄の女」を支えた、夫と家族の物語に観客は「涙」するのだ。

 政治家の伝記ではなく、「人間」として「妻」として「母親」としてのサッチャーを描こうとしたのは、フィリダ・ロイド。
 デビュー作「マンマ・ミーア!」('08)でメルリ・ストリープを主演に大ヒットさせた、BBCディレクター出身の女性監督である。
 今回もまたストリープの存在が、作品の全てを決めた。

2_009_640 1977年のデビュー以来、出演した映画は50本を超える。'
 '78年に「ディア・ハンター」でアカデミー賞にノミネイト、以後毎年のようにノミネイトされ「クレイマー・クレイマー」('79)で助演女優賞、「ソフィーの選択」('82)で主演女優賞、今回3回目のオスカー受賞となった。

 共演した夫役のジョム・ブロードベンドも、イギリスの有名な舞台俳優でアカデミー賞を受賞(「アイリス」'01)している。

341452_100x100_006  「鉄の女」サッチャーの政治姿勢、政策の是非には映画は触れない。
 当時のニュース映像を多用することで、表層的に事実を伝えるに留めた。

 社会から完全に姿を消した彼女が、この映画を見るとすればどんな感慨を持つだろうか。そこに思いをはせる。

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March 25, 2012

2073.フェリーチェ・ベアトの東洋

203_017_640 従軍カメラマンのパイオニア、フェリーチェ・ベアトの写真展が、東京都写真美術館で開催されている。

 1832年にイタリア・ヴェネチアに生まれた彼は、トルコで写真技術を学び、激動する19世紀後半のアジアを撮り続けた。

203_025_640 来日したのは1863(文久3)年。スイス外交使節団に加わり江戸に滞在、密かに市中の様子などを撮影している。

 また翌年の馬関戦争では、英・仏・蘭・米連合艦隊の公式カメラマンとして雇われ、下関砲台占拠の写真など幕末の戦乱の様子を記録している。

203_019_640  写真展は、クリミア戦争(1855~1856)、インド・セボイの乱(1858~1859)、第二次アヘン戦争(1860)、辛末洋擾(1871年の米朝戦争)など、彼が撮影した戦場写真や、日本滞在中に撮った風景・肖像作品など145点が出品されている。

203_027_640_2  展示されている写真の多くは、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館蔵のものだが、東京都写真美術館が所蔵するこのパノラマ写真(部分)が注目を集めている。

 愛宕山から見た江戸の風景で、中央の長い建物は長岡藩の下屋敷、左奥には築地本願寺や有馬屋敷の火の見櫓、右奥遠くにはお台場も写っている。
 イギリス軍と深い関わりがあったペアトは、徳川幕府の軍事拠点もきちんと押さえていたのである。

203_018_640  中東からインド・ビルマ・中国・朝鮮、さらにはアフリカまで転々としたペアトは、漂泊の写真師とも呼ばれている。
 その彼が最も長く滞在したのが、日本である。維新後は横浜にスタジオを設け、伝統的な日本人の暮らしや鎌倉や長崎などの風景をカメラに収めた。

 右の写真はスタジオで撮影した「冬着姿の女性」。
 素鶏卵紙に手彩色したこの写真は、広重の浮世絵「雪中美人」に想を得たものといわれる。

203_022_640  その彼が、不動産投機に失敗して日本を離れたのが1884(明治17)年。
 その後スーダン・ビルマと渡り歩き、1905年故郷のイタリア・フェレンツェで波乱万丈の生涯を閉じた。

 「フェリーチェ・ベアトの東洋」展は、5月6日まで、恵比寿の東京都写真美術館で。観覧料800円。

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March 23, 2012

2072.シャーロック・ホームズ

2_008_640  シャーロック・ホームズは、イギリスの作家アーサー・コナン・ドイルが創作した私立探偵。
 19世紀後半、「緋色の研究」を第1作として56の短編と4っの長編が書かれた。
 小説は、これまでも度々映画化・テレビ化され、世界中に多くのフアンを持つ。

340799_100x100_001_2  ロンドン・ベーカー街のアパートに、アフガン戦場帰りの医師ワトソンと住む彼は、天才的な観察眼と推理力で数々の難事件を解決してきた。
 今回は、史上最悪の天才知能犯、数学教授のモリアーティーとの闘い。

 ドイルが一旦筆を置いた断筆作品「最後の事件」を下敷きに、「シャドウゲーム」の副題で二人のコンビが大活躍する。
 ラストの「スイス・ラインバッハの大滝」での天才二人の闘いは、原作通りだが。

 3年前に、イギリス出身の監督ガイ・リッチーがハリウッド版第1作目を製作した時、ホームズ・ファンは仰天した。

 作品がミステリーというよりアクション・アドベンチャー映画になっていたからである。
 シャーロック・ホームズは、19世紀のジェームス・ポンドかランボーに変身していた。
 その路線は、今回の第2弾も変わらない。というより、さらにアクション化した。

340799_100x100_002  タフでファイトマンのホームズと、彼をサポートするワトソン医師は前作と変わらない。

 「チャーリー」('92)「トロピック・サンダー」('08)とこれまで2回アカデミー賞にノミネイトされたロバート・ダウニー Jrと、同じく「リプリー」('99)「コールドマウンテン」('03)のジュード・ロウのコンビ。

340799_100x100_006 二人に絡む女優陣も、レイチェル・アクアダムスとケリー・テイラーとお馴染みだが、今回はジプシーの占師というヒロイン役にスエーデン女優ノミオ・ラバスが登場する。
 スエーデン版「ミレニアムシリーズ」のヒロインだった、あの彼女である。

340799_100x100_007  そして敵役モリアーティー教授は、イギリスの舞台俳優出身のジャレッド・ハリスが務める。

 映像はなかなかお洒落でカッコいい。スローモション多用のアクションシーンは、ガイ・リッチ監督のサービス精神が生きる。

 知能派ではなく、肉体派のシャーロックに戸惑いの向きもある様だが、原作でも彼はボクシングはプロ級、フェンシングも得意とあるので仕方がない。

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March 21, 2012

2071.アリラン

2_007_640 監督・脚本・撮影・編集・音響・美術・出演・主題歌:キム・ギドク。
 いわゆるセルフドキュメンタリーといえる韓国映画だが、キムはファンタジーだという。

201203023603191n_2  これまで、このブログではネイチャー作品以外のドキュメンタリーは紹介してこなかった。元ドキュメンタリー製作者として躊躇するものがあったからだ。

 しかし「アリラン」は、まさに異色のエンタテインメントに昇華した映画となった。

 日本からオダギリ・ジョーを主演に迎えて撮った「悲夢」('08)が、キム・ギドクの人生の挫折となった。
 撮影中に、女優の一人を死の寸前まで追いやってしまった。それが引き金となって、「メランコリア」に陥った彼から、信頼するスタッフが去っていった。
 彼は消息を絶つ。

341098_100x100_002  とある村はずれの丘の上にある山小屋。重苦しい「アリラン」の唄声が流れる。
 氷を割って炊飯器に入れ、米を炊く。キムチをぶっ掛けた食事、赤々と燃える薪ストーブ・・・・。
 ハンディカメラで撮った映像が、カット割りされる。出演者キム・ギドクのアップ。

341098_100x100_004 彼がもがき苦しみながら、繰り返ししゃべる「自己弁護」と「自己批判」。ただそれは、独白ではない。
 次のカットでは、キムを厳しく問い詰めるインタビュアーのキム。
 さらにその映像を、クールな監督の目で捉えて編集するキム。

341098_100x100_003 人里離れた山小屋での隠遁生活だが、元機械工の腕を持つ彼は、旋盤を使ってエスプレッソマシンまで作り、文化的な自給自足生活に浸る。
 そして最後は、拳銃までも。それが映画のクライマックスに繋がる。

515hgasqspl__sl160_   特異な設定で、人の心の極限に迫ってきたキム・ギドクは、鬼才と呼ばれた監督である。

 自らも出演した「春夏秋冬そして春」('03)で世界の注目を浴びた彼は、続く「うつせみ」('04)でヴェネチア国際映画祭監督賞、「サマリア」('04)でベルリン国際映画祭監督賞を受賞する。

341098_100x100_006   そして3年ぶりに発表した今回の「アリラン」は、昨年のカンヌ国際映画祭 〈ある視点〉部門で最優秀作品賞を受賞する。
 まさに世界三大映画祭を制覇した「マランコリア」の鬼才なのだ。

 朝鮮民謡の名曲として知られる「アリラン」は、恨を解き放つ唄といわれる。
 アリランコーケーロ(峠)を上り下っていく姿は、人生そのものでもある。
 映画「アリラン」の製作は、彼を「メランコリア」から解き放つための治療だった。 

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March 19, 2012

2070.春・浜離宮

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 左は昨年の「浜離宮・菜の花」、右が今年の写真。
 お彼岸前、偶然にも同じ日の写真である。

 およそ30万本の菜の花は、庭園にとって春の名物だが、今年は20日ほど遅れているという。

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 例年なら、もう見頃を終える「梅の花」が、まだ5分咲きというから、今年は異常気象なのだろう。

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 「カンヒサクラ」「サンシュウ」「ユキヤナギ」「レンギョウ」「ジンチョウゲ」「ヒュウガミズキ」「ハナモモ」と、この季節に咲き乱れる花木の蕾は、まだ硬い。

120315_039_640120315_033_640  「潮入の池」では、春の陽を浴びてスケッチを楽しむ姿も見られたが、池を取り巻く「桜の蕾」はご覧の通り。
 例年4月上旬が、浜離宮のお花見。
 さて今年はどうなるのだろうか。

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March 17, 2012

2069.ヒューゴの不思議な発明

Hugo_n_2 前号に続いて観た巨匠の作品は、マーティン・スコセッシ監督の「ヒューゴの不思議な発明」。
 今年のアカデミー賞で最も多い11部門にノミネイト、作品賞・監督賞は逃したものの撮影賞・美術賞など5部門でオスカーを獲った。

Hugo_n_3  1930年代のパリ、モンパルナス駅を舞台に孤児ヒューゴが、不思議な「機械人形」を通して、過去を棄てた老人ジョルジュの「夢」を取り戻すお話。

 ファンタジー映画の装いだが、スコセッシ監督が描いたのは映画創成期へのオマージュ。
 フランスの偉大な映画監督・プロデューサー・俳優・スタジオ経営者だった、ジョルジュ・メリエスの伝記である。

340877_100x100_007  「タクシー・ドライバー」('76)でカンヌ国際映画祭パルムドール受賞したスコセッシは、「レイジング・ブル」('80)「最後の誘惑」('88)「「グッドフェローズ」('90)「ギャング・オブ・ニューヨーク」('02)「アビエイター」('04)と次々と傑作を発表しアカデミー賞監督賞にノミネイトされたが、いずれも受賞を逃した。
 そして6回目、「ディパーテッド」('06)で初のオスカーを手にしている。

 スコセッシは「映画狂」とも呼ばれている。映画史を研究するだけでなく、自ら会長となって「フイルム・ファンデーション」を設立、過去の映画の復元と保護に資金を投じている。

340877_100x100_006 この作品でもメリエスのスタジオを再現し、史上初のSF映画「月世界旅行」の撮影風景を見せるほか、20世紀初期の名作をストーリーの中に生かしている。

340877_100x100_005  出演は、主役のヒューゴにエイサ・バタフィールド(「縞模様のパジャマの少年」'08)、仲良くなった少女にクロエ・グレース・モレッツ(「モールス」'10)と話題の子役を。

 少女の養父で、実は映画王だったジョルジュ・メリエスを名優ベン・キングスレー(「ガンジー」'82でオスカー受賞)、少年の父親をジュード・ロウ、鉄道公安官をサシャ・バロン・コエンが紛するなど、豪華なキャストが顔を並べる。

340877_100x100_001  ハリウッドでの原題は「ヒューゴ」なのだが、邦題に「不思議な発明」を付け加えたことに異論が多い。
 たしかに、作品の中に「不思議な発明」は、ひとつも登場しない。
 ただ映画の原作となった本の表題は「邦題」と同じ、これは宣伝を考えた配給会社の選択というしかない。

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March 15, 2012

2068.戦火の馬

2_005_640  ハリウッドの巨匠の作品を、2本続けて見た。いずれもアカデミー賞各部門にノミネイトされた映画。

 まず1本目は「戦火の馬」。
 ドリームワークスを率いて次々とヒット作品をプロデュースしてきた「映画青年」、スティーブン・スピルバーグが久しぶりにメガホンを執った。

 受賞は逃したが、作品賞・作曲賞など今年のアカデミー賞では6部門にノミネイトされた。

340426_100x100_002_3 第一次世界大戦を舞台に、戦火を生き抜いた一頭のサラブレッドと馬を育てた少年との、別れと出会いの物語である。

 原作はイギリスの作家、マイケル・モーパーゴが1982年い発表した同名小説。
 子供たちのために書いたファンタジックな児童文学は舞台でも上演され、昨年トニー賞5部門を受賞した。

 この舞台劇をロンドンで観て感動し、映画化したのがスピルバーグ。
 彼らしい壮大なスケールのスペクタルな作品に仕上げた。

340426_100x100_003_2  「プライベート・ライアン」('98)など迫力ある戦場シーンを得意とする監督だけに、フランスの原野で繰り広げられるイギリス軍とドイツ軍との戦いは、リアルで凄まじい。

 しかし彼は「この作品は戦争映画ではない。馬と人との奇跡の物語」だという。

340426_100x100_001_2  その人、主人公である少年をジェレミー・アーヴァインが演じる。イギリスの新人俳優らしく瑞々しい演技で、涙を誘う。

 少年の母親が、「奇跡の海」('96)でアカデミー賞にノミネイトされたエミリー・ワトソン。
 飲んだくれの小作人の父親が、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞(「マイ・ネーム・イズ・ジョー」'98)した俳優、ピーター・ミュランである。

340426_100x100_004_3  イギリスのベテラン俳優に加えて、フランス出身のニエル・アレストリュブも顔を見せる。
 戦場となったフランスの農夫で、戦火を逃れた奇跡の馬を孫娘と匿う。
 このエピソードが、クライマックスの伏線となる。

 第一次世界大戦は、今に続く大量殺戮の緒となった戦争である。
 それまでの騎兵や歩兵による戦いから、戦車や大砲・機関銃、さらには毒ガスを用いた戦争に変わった。
 「戦火を駆け抜ける馬」は、その歴史を象徴的に見せる。

 絵に描いたような美しいイギリスの田園から、寒々しいフランスの戦場、ラストは「風と共に去りぬ」を彷彿させる美しい夕景のシーン。
 「童心」に返ったスピルバーグの、詩情豊かな映像美も楽しめる。

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March 13, 2012

2067.東洋陶磁の美

203_007_640 「悠久の光彩」と形容される大阪市立東洋陶磁美術館のコレクション展が、六本木のサントリー美術館で開催されている。

 東洋陶磁美術館開館30周年を記念して開かれたもので、収蔵する4000点のなかから、国宝2点・重要文化財13点のすべてを含む名品140点が展示された。

800pxthe_museum_of_oriental_ceramic  美術館は、当時の安宅産業や創業2代目にあたる安宅英一会長が蒐集した陶磁器、「安宅コレクション」をもとに大阪市が設立した。

 石油ショックで倒産した安宅産業のコレクションを買い取った住友グループが、貴重な陶磁器の散逸を防ぐために大阪市に寄贈したのである。

203_009_640_2  展示品で目を引くのは、やはり2点の国宝である。

 左の「油滴天目茶碗」は、高野山で自刃した悲運の関白・豊臣秀次が所有していた中国・南宋時代(12~13世紀)の建窯の作品。

 ポスターの写真「飛青磁花生」は、鴻池家に伝わった中国・元時代(13~14世紀)の龍泉窯のもの。

203_010_640  国宝ではないが、右の「木葉天目茶碗」(重要文化財)も話題を集めている。
 油滴天目と同じ時代に、中国江西省吉洲窯で焼かれたもので、漆黒の釉面に黄土色の木の葉が一葉と、なかなか洒落ている。
 加賀藩前田家が所有していた茶碗である。

203_011_640203_013_640  元時代の「青花蓮池魚藻文壷」(左)、明時代の「瑠璃地白花 牡丹文 盤」(右)、いずれも有名な中国の官窯・景徳鎮で焼かれた需要文化財指定の作品である。

203_015_640_2203_014_640  中国だけでなく韓国陶磁の逸品も70点近くが展示されている。

 写真は、12世紀の高麗時代の作品「青磁彫刻童女形水滴」の2点、左は重要美術品に指定されている。

203_008_640_3   作品は、中国陶磁が後漢時代(2世紀)から明の時代までを、「緑」「青」「白」「紅」「三彩」「五彩」と色で分類、釉薬の使い方や窯の温度による変化を比較してみせる。

 韓国陶磁は、高麗時代の「緑」と朝鮮時代の「白」でまとめられている。

203_016_640  大阪勤務時代、幾度となく足を運んだ「大阪市立東洋陶磁美術館」。20年ぶりに多くの逸品と再会できた。

 「悠久の光彩・東洋陶磁の美」展は、4月1日まで六本木ミッドタウン・サントリー美術館で。入館料1300円。   

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March 11, 2012

2066.メランコリア

2_003_640 メランコリア(憂うつ症患者)のラース・フォン・トリアー監督が、その魂の救済を究極の映像で訴えた野心作。
 荘厳な叙事詩である。

 冒頭8分間の詩的映像美に酔う。
 ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」の甘美で濃厚な大音響の中で、観客はメランコリックな感情の世界にに浮遊しながら、地球の終焉を見る。

 ここに登場する「メランコリア」とは、巨大惑星の名。その惑星がやがて地球を飲み込む事を、冒頭の映像が見せる。
 そして物語は、二人のヒロイン「浮遊」によって綴られていく。

340955_100x100_002  第1部は妹が主人公。
 この作品でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞したアメリカの女優、キルスティン・ダンスト(「マリー・アントワネット]'06)が演じる。
 彼女自身の豪華絢爛な結婚披露パーティー、惑星「メランコリア」が近づくにつれて、彼女はメランコリックになっていく。

340955_100x100_001  第2部は姉とその一家の物語。
 トリアー監督の「アンチクライスト」('09)で、同じく主演女優賞を受賞したイギリスの女優シャルロット・ゲンスブールがヒロインである。
 憂うつ症の妹を家に引き取ったが、自らは世界の終末への恐怖に苛まれていく。

340955_100x100_005  この作品は「絶望」ではなく、「ハーッピーエンド」の物語だというトリファー監督は、デンマーク出身の鬼才。

 「奇跡の海]('96)でカンヌ国際映画祭グランプリ、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」('00)でパルムドール受賞、「ドッグウイル」('03)「マンダレイ」('05)「アンチクライスト」と毎回パルムドールにノミネイトされてきた。
 今回の「メランコリア」のカンヌでの審査では、「異常な親ナチス」の発言をして会場から追われた。
 メランコリックな彼の精神状態が、その発言に繋がったと彼は弁解している。

340955_100x100_006  人類すべての死が必然となった時、あなたはどんな「終末」を迎えようとするのか。

 「地球は邪悪よ。構えても嘆く必要はないのよ。」
 監督は、ヒロインにこう語らせる。
 「メランコリア」から開放されたとき、私はロマンチックになる、と。

 「ハンター」に続くブロードメディア・スタジオの配給映画。

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March 09, 2012

2065.顔のないスパイ

2_002_640 スパイ映画は、国際政治の現実が投影されるので面白い。どの国のエージェントや組織を敵役にするか、時代によって変わって行く。

 「007シリーズ」など、イギリスのMI5(内務省保安局)やMI6(情報局)のエージェントが活躍する作品は、当時のソ連・KGBや東欧諸国の情報機関が悪役だった。それも美人のスパイである。

 アメリカのCIAやFBIのエージェントが主人公の場合も、ソ連崩壊までは同様だったが、最近はイランなど中東諸国が敵役となる。

341074_100x100_005 ところがこの映画は、もう一度冷戦時代のスパイを蘇らせて「オチ」をつくる。

341074_100x100_006_2  引退した凄腕の元CIAのエージェント(リチャード・ギア)が主人公である。

 上院議員殺害事件の容疑者が、20年前に姿を消した「伝説のソ連スパイ」らしい。
 そう考えたCIA長官は、かって彼を追った元エージェントに捜査復帰を依頼する。

 その「伝説のソ連スパイ」をハーバード大学で研究してきたFBIの分析官(トファー・グレイス)が、助手として彼を手伝う。

341074_100x100_004 一般のスパイ映画だったら、「伝説のソ連スパイ」を追う二人のスリリングな捜査を見せる。
 ところがこの作品は開始から30分程で、リチャード・ギアのCIA元エージェントが、実は「伝説のソ連スパイ」だったとバラしてしまう。

 観客は予想外の展開に戸惑う。
 それが脚本を書き監督した、マイケル・ブラントが仕掛けた「罠」だった。

341074_100x100_001  ブラントは、「3時10分、決断の時」('07)や「ウオンテッド」('08)など多くのヒット作を書いてきた脚本家。
 今回はじめて自らメガホンを執った。
 それだけに、クライマックスまで一切の予断を許さないサスペンス映画を考えた。

 「ネタバレ」になるので詳しくは述べないが、そのクライマックスにこの映画の原題「THE DOUBLE」が大きな意味を持ってくる。

 甘いマスクで知られるリチャード・ギアが、一度も笑顔を見せずに冷酷な二重スパイを演じる。
 「スパイダーマン3」('07)の敵役トファー・グレイスが、愛妻家の若きエージェントの生真面目さを。
 マーチン・シーン(「ディパーテッド」'06)がギアの友人でもあるCIA長官を、ティマー・ハッサン(「イースタン・プロミス」'07)がロシアのスパイとして脇を固める。

 主人公のように、旧き良き時代(冷戦時代)に活躍したスパイたちが、コンピューター上の情報戦と国家と無縁のテロの時代には無用の長物になってしまう。
 監督は、そんな事を考えているのかも知れない。

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March 07, 2012

2064.車いす きばいやんせ日記

203_640 同郷の先輩から一冊の本が届いた。左の表紙にある「きばいやんせ」とは鹿児島弁で「頑張りなさい」の意、著者が自らを励ます時にもよく使うという。
 
 先輩とは、母親同士が尋常高等小学校の同級生でもあったので、子供のころから遊んだ兄貴分。60数年の交遊が続いている。

203_003_640  著者・野崎耕二75歳、画家、イラストレーター。 
  46歳の時に進行性筋ジストロフィーと診断され、病状の進んだ5年後からは「車いす」の生活となった。

 彼が自分に残された時間を意識し、心の支えとして描き始めたのが絵日記。
 「一日一絵」と名付けられた絵日記には、身近な花や野菜、器物、車いすで散策した近所の風景が、繊細なタッチで描かれている。

203_002_640 「一日一絵」は、これまでにJTBパブリッシングから10巻の本として出版されているが、彼が住んでいる千葉や郷里の鹿児島では、たびたび「一日一絵原画展」も開かれ、多くの人たちに感動を与えている。

 今回出版された「車いす きばいやんせ日記」は、あの<1995年>の日常と非日常が綴られている。
 作家の武田泰淳氏夫人・百合子さんの「富士日記」に触発され、日々の出会いや語らいを丁寧に記録したもの。

 この年は「阪神・淡路大震災」や「地下鉄サリン事件」もあり、野崎さんにとって忘れられない1年。
 昨年の「東日本大震災」に衝撃を受け、フロッピーディスクに眠っていた日記を読み返したという。

203_001_640  野崎さんの日記を読みながら、私も17年の昔を思い起こしている。
 日記に登場する私の母も、鹿児島で「一日一絵原画展」を手伝った姉夫婦ももういない。
 しかし日記に描かれている日々の移ろいは、まるで昨日の様に思い出す。

 「・・・・・・夕方、玄関に門松を飾り、しめ縄を吊るし、新年を迎える準備が出来た。飾り終えて、踊り場から1995年名残の街を眺めた。なぜか涙があふれてきた。
 夜、握り寿司で、母と年の瀬をささやかに祝った。焼酎にはきびなごがよく似合う。
 ・・・・・・・
203_006_640  わが家は、母ともども無事越年できる。この幸せをかみしめ、母に心から感謝したい。
 1年納めの一日一絵には『きびなご』を描いた。きょうで、4439枚目」(大晦日の日記から)

 母の親友だった野崎さんのご母堂は、翌年の大晦日に91歳で亡くなった。その2年後、私の母も他界する。

 野崎耕二著「車いす きばいやんせ日記」(中央公論新社刊)
 定価 本体1500円 

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March 05, 2012

2063.ものすごくうるさくて・・・

2_001_640  「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」、邦題の長いタイトルは原題(左のポスター)の直訳。
 ちょっと意味あり気で面白い。
 アメリカの理想的な家族像だと、解釈する人もいるが。

2_640_2 9.11で犠牲となった父親の死を、受け止められずに苦しむ少年。
 ニューヨークの風景と人々との触れ合いによって、その「グリーフ」が癒されていく物語。

341035_100x100_001 アスベルガー症候群の少年を、新人のトーマス・ホーンが繊細かつ力強く演ずる。
 人気クイズ番組に出演していた彼を、プロデューサーがスカウトした。

341035_100x100_004  脇役ともいえる両親を、オスカー俳優がそろって見せる。
 トム・ハンクス(「フィラデルフィア」'93、「フォレスト・ガンプ」'94)とサンドラ・ブロック(「しあわせの隠れ場所」'10)の二人。

341035_100x100_008  さらに祖父がマックス・フォン・シドー。
 この作品で今年のアカデミー賞助演男優賞にノミネイトされた、スエーデン出身の名優である。

 少年と父親、少年と母親、少年と祖父、名優たちが演ずる少年との距離が物語を紡ぐ。

 原作はジョナサン・サフラン・フォアの同名小説。9.11を題材にした小説では、最も売れた作品だという。

 監督のスティブン・ダルトリーはイギリス出身、ヒューマン・ドラマの旗手といわれる。
 「リトル・ダンサー」('00)「めぐりあう時間」('02)「愛を読む人」('08)と、これまで全ての作品がアカデミー賞監督賞にノミネイトされた。
 今回も作品賞にノミネイトされたが、残念ながら受賞は逃している。

341035_100x100_007 「3.11」1周年を前にして、日本の観客がこの作品をどう受け止めるか。
 それぞれの体感、「グリーフ」の重みの差によって大きく異なるだろう。
 その不条理に対するアメリカ的な「グリーフ・ケア」が、この作品のメッセージとなる。

 いま東北で「グリーフ・ケア」で駆け回る高校の後輩が、この映画を見て号泣したとフェイスブックに記していた。

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March 03, 2012

2062.ポエトリー~アグネスの詩

22_014_640 韓国・ソウル郊外の静かな田園風景。村を流れる川に少女の水死体が見つかった。アグネス、彼女の洗礼名でる。

 名匠イ・チャンドン監督の作品は静謐である。
 「オアシス」('02)で、ヴェネチア国際映画祭監督賞受賞。「シークレット・サンシャイン」('07)はカンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞にノミネイト、今作品は脚本賞を受賞した。
 作家出身で、韓国文化庁長官も務めたイ・チャンドンの作品は、芸術性が濃い。

338053_100x100_003 アルツハイマーで言葉を失いつつある初老の女性が主人公である。
 娘の代わりに中学生の孫を育てている彼女が、詩の世界に誘引されていく。

338053_100x100_005 孫たちが犯した性的行為が、少女アグネスの死に繋がっている事を知った彼女は、絶望の中で必死に少女の心に寄り添う。
 「光と影」「美しさと醜さ」「善良と邪悪」「賢さと愚かさ」、そして社会の片隅に生きる人たちの「清」と「汚濁」。
 複雑に交差する心象風景の中で、「アグネスの詩(うた)」が、紡ぎ出される。

338053_100x100_002  主人公を演じたのは、往年の名優ユン・ジョンヒ。パリ在住の彼女にとっては、16年ぶりの銀幕である。
 貧しいパートの女性役だが、ヨーロッパ育ちの気品が溢れる。

 「シークレット・サンシャイン」にも出演したパク・ミョンシンが娘役。「宿命」('08)のアン・ネサンも脇を固める。

 イギリスの「ザ・ガーディアン」紙が、昨年の「世界映画ベストテン」に選んだ佳作。

 小鳥のさえずり、木々を渡る風の音、川の流れ・・・・音は詩を生む。   

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March 01, 2012

2061.梅香の鎌倉、源平の故地を巡る

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 寒さで梅の開花が遅れまだ蕾が多かったが、雪の前日「ひとまく会」の鎌倉ウオーキングに出かけた。

 今回のコースは大河ドラマ「平清盛」に因んで、「源平ゆかりの社寺」およそ6キロの散策である。

120228_002_640120228_004_640  鎌倉駅からバスで10分、材木座海岸近くの九品寺で下車して最初に訪ねた寺が「補陀洛寺」。
 源頼朝挙兵の翌年、1181(養和元)年に創建されたこの寺は、平家討伐祈願のため文覚上人が開山したと伝えられる。

120228_007_640  別名「龍巻寺」とも呼ばれ七堂伽藍を持った大寺院だったが、度重なる災害によって堂を失い、現在は本堂を残すのみである。

 本堂にある不動明王は平安時代の名僧智証大師の作といわれ、この前で頼朝は平家打倒の祈りをささげた。
 また寺には平家滅亡の折、総大将平宗盛が最後まで持っていた「赤旗」も安置されている。

120228_015_640 120228_012_640  寺から10分、北へ向うと「由比若宮(元八幡)」。
 頼朝の祖、東国源氏の勢いを強化した平安中期の武将・源頼義が、前九年の役(1051~1062)で陸奥・安部氏に打ち勝ち、京へ凱旋する途中に築いた社である。

120228_018_640_2  源氏の守護神「京・石清水八幡宮」の祭神が祀られている八幡宮は、頼朝の時代に現在の鶴岡に移され、「元八幡」と呼ばれる。

 境内には、頼義が源氏の旗を立て掛けた松の古株が残っている。

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 鎌倉駅に向って歩くと平家ゆかりの「教恩寺」に出会う。

 1184(寿永3)年、「一の谷の合戦」で捕らえられた平清盛の五男・重衛が深く信仰した阿弥陀如来三像が、寺の本尊である。
 運慶の作といわれるこの仏像は、頼朝が重衛に贈った物。平家方が保持する三種の神器との交換を考えて、敵将を厚く遇したと伝えられる。

 しかし平家方大将である兄の宗盛に断られ、重衛は京に戻され斬首となる。

120228_033_640120228_047_640  教恩寺から15分、鶴岡八幡宮に向う右手に祇園山を背にした「宝戒寺」がある。
 「萩の寺」として親しまれるここは、元の北条執権邸。

 1333(元弘3)年、新田義貞に攻められた北条高時は、この裏山で一族郎党800人と共に自刃した。
 頼朝に始まった「鎌倉幕府」の滅亡である。
 その2年後、後醍醐天皇は足利尊氏に命じて、北条一族を弔うためこの寺を建立する。

120228_056_640120228_061_640 本尊は国の重要文化財の「子育経読地蔵大菩薩」。
 例年なら、鎌倉一といわれる大木の「枝垂れ梅」が見られるのだが、今年はまだ蕾が固い。

120228_078_640120228_084_640  梅の香りを求めて、途中「荏柄天神社」に寄る。
 日本三大天神の謂れについては、12月の「ひとまくウオーキング」でも紹介したので省く。

 菅原道真が愛した梅、鎌倉一の早咲きの「寒紅梅」は咲いていたが、対になる「白梅」や「古代青軸」は咲くのにまだ一週間はかかるだろう。

120228_095_640_2120228_092_640_2   今月のウオーキング「源平ゆかりの社寺」、最後のコースは「頼朝の墓」へ。

 大倉と呼ばれるこの一帯は、最初に鎌倉幕府が開かれたところ。
 1199(正治元)年、その裏山にあった「法華堂」に頼朝は葬られた。

 現在の墓は、薩摩・島津家25代の藩主・重豪が江戸時代に造ったもの。
 島津家の祖・忠久が頼朝の長庶子とされているからだ。

 その墓が、昨年何者かによって壊され宝頭がない。

120228_105_640_2120228_106_640_2    無くなったものといえば、「鶴岡八幡宮」のシンボルでもあった神木「大銀杏」。

 樹齢1000年を超える銀杏は、高さ30m周囲7mの大木。先年の大嵐で根元近くで折れてしまった。
 本体の再生は無理だったが、横の芽から取った若木が現在すくすくと育っている。

 今回のゴールは、頼朝が勧請した鶴岡八幡宮」。
 頼朝に始まって頼朝で終わった6キロのコース、平坦な道だったが、いろいろ寄り道したので結構疲れる。

 ドアtoドアで14,879歩。最後は、何時ものように駅前の居酒屋で反省会。
 寒さは厳しかったが、雪の前日で幸いだった。

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