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June 29, 2012

2123.マウリッツハイス美術館展

206_020_640  世界的なフェルメール・ブームのシンボルとなった「真珠の耳飾りの少女」。
 別名「青いターバンの少女」とも呼ばれる様に、ターバンの青が印象的だ。地中海を越え、東方から届いたラピスラズリを砕いた顔料は、ウルトラマリンブルーを生み出した。

206_033_640   東京都美術館のリニューアルオープンを記念して、明日から開催される「マウリッツハイス美術館展」は、10数年ぶりの「真珠の耳飾りの少女」をはじめ、17世紀オランダ・フランドル絵画の巨匠たちの作品50点が並ぶ。

 今回は開会前の内覧会に招かれたので、一足先にゆっくりと名作を鑑賞した。

Photo_3  「マウリッツハイス美術館」は、オランダの第3の都市ハーグにある王立絵画館。
 当時のオランダ植民地、ブラジルの総督を務めたヨハン・マウリッツの邸宅を改装して1822年に開館した。

206_022_2   所蔵作品は約800点と小規模だが、「絵画の宝石箱」と呼ばれフェルメールやレンブラントなどオランダの画家、フランス・ハルスやルーベンスなどフランドル地方の画家たちの選りすぐりの作品を所有している。

206_042_640_2  美術館は、今年から2年かけて改修工事に入ったため、名品50点を日本に貸し出す事になり、東京と神戸で展覧会は開催される。

 今回展示されている名画のうち、数点を紹介しよう。

206_045_640_2  右の絵はヨハネス・フェルメールの「ディアナとニンフたち」。
 月と狩猟の女神が主題の「歴史画」は、彼が21歳頃に描いた作品である。
 後に人物画で有名になるフェルエールも、初めは聖書や神話を題材にした作品をを描いている。

 美術館が所有するフェルメールの3点の中から、「真珠の耳飾り」とこの作品が選ばれた。

206_044_640  左は、「光と闇の画家」レンブラント・ファン・レインの「自画像」。
 17世紀のヨーロッパを代表する画家の最晩年の作品である。
 フェルメールの30数点とは対照的に、生涯500点を超える作品を描いた。

206_043_640  今回は、右の「羽飾りのついた帽子をかぶる男のトローニー」など6作品が展示されている。
 美術商も営むなど裕福なフェルメールと違って、生活のため数多くの人物像を描いた。
 この作品も、美術市場で売るために描いたトローニー(頭部の習作)である。

206_046_640  「笑う少年」は、フランス・ハルスの作品。
 フェルメール・レンブラントと並ぶオランダ絵画の三大巨匠のひとりも、生涯肖像画を書き続けた。

206_041_640  ほか、表情豊かな雲の描写で知られるヤコブ・ファン・ライスダール(「漂泊場のあるハールレムの風景」)、「ビロードのブルューゲル」と呼ばれたヤンの作品(「万歴染付けの花瓶に生けた花」)などが展示されていた。

206_024_640   「マウリッツ美術館」展は明日から9月17日まで、上野・東京都美術館で。観覧料は1600円(65歳以上は900円)。

 なお、隣の国立西洋美術館でも「ベルリン国立美術館」展が開催中。
 ここでもフェルメールの「真珠の首飾りの少女」が展示されている。
 「耳飾り」は3回目だが、「首飾り」の方は日本初公開となる。

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June 27, 2012

2122.ミッドナイト・イン・パリ

26_008_640  アカデミー賞ノミネイト24回、「アニー・ホール」('77監督賞・脚本賞)「ハンナとその姉妹」('76脚本賞)でオスカーを手にしたウディ・アレンが、26年振りにアカデミー賞(脚本賞)を受賞した作品。

341568_100x100_002  ニューヨーク派と呼ばれるアレン監督は、このところイギリスやスペインなどを舞台に映画を撮ってきた。
 その彼が行き着いたところが、最も愛するパリだった。

 そしてそのパリを、ノスタルジックに、ロマンチックに、ファンタジックに描いたのが「ミッドナイト・イン・パリ」である。

Map7 スト-リーは、シンプル。
 パリにほれ込んだアメリカの脚本家が、毎夜0時になるとタイムスリップするというお話。
 その時空はゴールデンエイジと呼ばれた1920年代、主人公は当時パリに集う「失われた世代」の小説家・詩人・画家・映画監督とめぐり合うという奇想天外な展開となる。

341568_100x100_003 登場する「文化人」は、日本でもポピュラーな人たちばかり。それを、オスカー俳優たちが演じるのだから面白い。

 まず、当時パリに在住していたアメリカの女性作家ガートルード・スタイン。
 アーネスト・ヘミングウエイの師で、彼女のサロンにはまだ無名のピカソやマティス、セザンヌが入り浸っていた。
 扮するのは、「ミザリー」('90)でアカデミー賞主演女優賞のキャシー・ベイツ。

341568_100x100_007  シュールレアリズムを代表するスペインの画家サルバドール・ダリにも主人公は遭遇する。
 扮するのは、こちらもまたアカデミー賞主演男優賞(「戦場のピアニスト」('02)のエイドリアン・ブロディ。

341568_100x100_006  タイムスリップした先で、主人公が惚れてしまったのがピカソの愛人。「エディット・ピアフ~愛の賛歌」('07)で同じく主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤールである。

 ほか、アメリカのベストセラー作家(「楽園のこちら側」)F・スコット・フィッツジェラルトをトム・ヒドルストン(「戦火の馬」'11)、奔放な夫人をアリソン・ビル(「ミルク」'08)。
 そしてルイス・ブニエル(スペインの映画監督)、コール・ポーター(作曲家)、ジョセフイン・ベイカー(ジャズ歌手)、T・S・エリオット(詩人)、ジャン・コクトー(詩人・映画監督)と、当時パリのサロンに集った人たちが続く。

Map3 現代とゴールデンエイジを彷徨う主人公はオーウエン・ウイルソン(「ナイトミュージアム・シリーズ」)だが、彼の美術館ガイド役としてサルコジ元大統領夫人カーラ・ブルーニが出演しているのは、ウディ・アレン監督のサービスからだろう。
 イタリア出身の元モデルの彼女、映画は初出演である。

341568_100x100_004_2 映画の冒頭から最後まで、セーヌ河畔、オランジェリー美術館、ロダン美術館、モネの庭園、マキシム・ド・パリ、エッフェル塔、サンジェルマンなど、名所が次々と登場する。
 パリは、何処を映しても映画になるのだ。   

   

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June 25, 2012

2121.日本橋400年展

111112_072_640 206_009_640  日本の道は、日本橋から始まる。
 その橋、現在の石橋は架橋101年、しかし初めてここに橋ができたのは409年前の慶長8年の事だった。

 その間、数多くの日本橋の絵が描かれている。それは見事に、江戸・東京の歴史の縮図となっている。

111112_068_640  「日本橋・描かれたランドマークの400年」、江戸東京博物館開館20周年記念特別展が、今開催されている。

 並んでいる絵や資料は130点余り。時系列に並べられているのが面白い。

206_018_640206_017_640_3  例えば左の絵は、歌川国貞が文久年間に画いた木造の橋。右はノエル・ヌエットが1936(昭和11)年に画いた石橋。
 多くの書き手によって受け継がれた日本橋の絵は、奇しくも400年に及ぶ日本橋の定点観測の記録になっている。

206_010_640_2  そしてその記録からは、時代ごとの日本橋の形や素材の変化だけでなく、社会の変化やその時代の人々が関心を寄せた事象が浮かび上がる。

 広く名前の知られた浮世絵師、葛飾北斎と歌川広重のそれぞれの作品を見比べるのも楽しい。

206_015_640_2 左の「冨嶽三十六景 江戸日本橋」は、北斎の代表的な揃物錦絵の一枚。
 日本橋を画面手前に配して日本橋川上流に遠く江戸城と富士山を描く。
 そして画面下辺には、様々な物が人の頭の上に押し上げられるようにひしめく。
 様々な物資が集まる江戸の中心、日本橋ならではの風景である。

206_019_640_3  右は歌川広重の「四月日本橋初かつお」、「東都名所年中行事」シリーズ の一枚。
 日本橋の象徴である擬宝珠を中心に置き、左に富士山、右下に初かつおを売りにいく魚売りという構図。
 もちろん上流には一石橋が、その先は江戸城である。

 二人の浮世絵師は、富士山・江戸城・日本橋の3点セットをきちんと配した上で、江戸の風俗を巧に描いた。

206_012_640  今回初めて全画面を見たのが、「隅田川風物図巻」。
 左の絵は日本橋部分の一部だが、長さ10mに及ぶ図巻は浅草から品川まで隅田川とその河畔、さらには隅田川に注ぎ込む神田川や日本橋川の様子が細かに描かれている。

 江戸中期頃の作品だが、筆者不詳。「かげからくり絵」が特徴で、細工によって夜景が浮かび上がる仕掛けとなっている。

206_016_640  今回の展示作品は、全て江戸東京博物館の所蔵品。開館20周年記念にふさわしい、見ごたえのある展覧会だった。

 「日本橋~描かれたランドマークの400年~」展は、7月16日まで江戸東京博物館1階で。
 観覧料は1000円。

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June 23, 2012

2120.古都鎌倉・紫陽花を訪ねる

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 今月の「ひとまく・鎌倉ウオーキング」は、季節の花「紫陽花」がテーマ。

 江ノ電でまず訪ねたのが「長谷寺」。
 寺院の来歴については、これまでも度々紹介してきたので省くが、736(天平8)年創建の古寺である。

 寺の大黒堂の裏山の斜面を埋めるのが、40種2500株の花々。明月院と並ぶ紫陽花の名所である。

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 「クロヒメ」「ハナテマリ」「クレーサー」「ウズアジサイ」・・・、日本原産の「ガクアジサイ」がヨーロッパに渡って改良されたのが「セイヨウアジサイ」。
 里帰りしてさらに改良され、その種類は数知れない。

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 「羽衣の舞」(高知)「日向紺青」(宮崎)「静香」(静岡)「三山八重紫」(京都)。

  いま鎌倉では「ヤマアジサイ」がブームである。長谷寺の次に訪ねた「光則寺」では、日本各地のヤマアジサイを育てて市内13ヵ寺に分けている。
 セイヨウアジサイのように大振りでなく、可憐な花が日本人にはふさわしい。

120618_106_640120618_115_640 「吾妻鑑」にも登場する「御霊神社」。源義家の家来で剛勇の武士といわれた鎌倉権五郎を祀る神社である。

 神社の前の踏み切りは、このシーズンの写真スポット。
 紫陽花を掻き分けるように江ノ電が走る。

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 もう一つの写真スポットが「成就院」。
 鎌倉の守りとして三代執権泰時が創建した。

 参道の両側には、「ウズアジサイ」や「スミダノハナ」などが数多く咲き誇る。
 寺院の山門にたどり着いたとき、振り返ると紫陽花の彼方に鎌倉の海が見える。

120618_151_640120618_153_640  「鎌倉ウオーキング」、ゴールは「極楽寺」。
 鎌倉時代は七堂伽藍と四十九の塔頭を数える大寺院だった。
 しかし1333(元弘3)年、新田義貞の鎌倉攻めで伽藍は焼失、寺勢は衰えた。

 境内には、「花まつり」の日にその葉を煎じる、「甘茶」の木が残っている。この木もヤマアジサイの一種で、花はガクアジサイににている。

 長谷・坂ノ下・極楽寺界隈、直線で結ぶと4キロ足らずのコースだったが、紫陽花を求めての歩数は、1万を超えた。 

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June 21, 2012

2119.星の旅人たち

26_010_640  亡き息子のバックパックを背負って、聖地へのカミーノ(巡礼)の道を歩き始めた初老の男。サンディアゴ・デ・コンポステーラまでの800キロ、彼はここで何と出会い、何を知ったか。

342172_100x100_004  俳優でもあるエミリオ・エステベス監督が、父親をイメージして書いた「THA WAY」。その父親役を実の父マーティン・シーンが演じ、息子役を自らが演じた。

 数々の名所や遺跡、有名な大聖堂が映し出されるヒューマン・ロード・ムービーである。
 経済危機の崖っぷちにあるスペインを忘れさせるような、ガリシア地方の美しくのどかな風景が続く。

342172_100x100_003 息子の遺灰を巡礼地に撒きながら旅する主人公と、偶然に旅を共にするようになった巡礼者たちが、個性的である。

 カナダの女優デボラ・カーラ・アンガー(「88ミニッツ」'07)は、バツ一で子供と引き離された皮肉屋の中年女。
 オランダの俳優ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン(「ドラゴン・タトゥーの女」'11)は、太りすぎて女房が寝てくれないとダイエットが目的。
 北アイルランド出身のジェームズ・ネスビット(「英雄の証明」'11)は、スランプに陥った旅行作家。

342172_100x100_007  彼ら4人が、ユーモアと皮肉の会話を交わしながら「つかず離れず」の微妙な距離を持ちつつ聖地に向う。
 さて息子も含めて「同行5人」は、新しい自分を見つけることが出来るのだろうか。

342172_100x100_005  主役のマーティン・シーンは、「地獄の黙示録」('79)で知名度を上げたバイプレイヤーである。
 「ガンジー」('80)「ウオール街」('87)など古い名作から、アカデミー賞を受賞した「デイパーテッド」('06)など新しい話題作をふくめ、これまで65本以上の作品に出演している。
 若い頃苦労しただけに、子供たちを養うためリクエストのあった作品は一本も断らなかったという。
 そして5人の子供たちを、全員俳優に育て上げた。

342172_100x100_002  「星の旅人たち」を監督したエミリオ・エスティヴェスは、その長男。父親とのコラボは「ボビー」('06)など3本目だが、父親をはじめて主役にして原案・脚本・製作全てを担当した。
 まさに父への恩返しである。

Ph1  話しは変わるが、今この巡礼の道を友人夫妻が歩いている。
A026827420120429082221  5月10日、この映画と全く同じピレネー山脈を越えた。

 映画と同じように一人息子を亡くした友人夫妻は、5年前にもサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの800キロを踏破した。
 60代半ばの2回目の旅は厳しいようだが、彼からのメールによれば、サンディアゴ大聖堂まであと僅か。ここ数日で到着するようだ。

 彼のブログにアップした写真と全く同じ風景をスクリーンで見ながら、巡礼の旅に思いを馳せている。

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June 19, 2012

2118.深川散歩「橋ものがたり」(2)

120608_002_640  深川散歩は、地下鉄「清澄白河駅」の小名木川・高橋をスタート、ゴールは地下鉄「門前仲町」の富岡八幡とした。
 一緒に散策した友人のエッセイの抜粋、「後編」を。

080_640  「数え切れないほどの橋の町、深川。そこには人々が行き交い、集まり、様々な出会いと別れが繰り返された。
 藤沢周平の〈橋ものがたり〉や〈初つばめ〉に収められた20編の短編は、全て町人たちの出会いと別れの物語である。
 同時に、この地は「出立」、「旅立ち」の場所でもあったことを知る。」

075_640  「三重に生まれた松尾芭蕉は、江戸に登場する。食うために神田上水の工事にも関わったそうだ。
 1680年36歳の時、芭蕉は江戸市中を去り隅田川岸の深川に庵を結ぶ。
 それから9年後の3月27日、45歳の芭蕉は資金を捻出するために〈芭蕉庵〉を売り払い、旅に出る。
 〈おくのほそ道〉への旅立ちだった。

Camx0gxr  深川芭蕉庵跡近くにある清澄庭園に、庵で詠んだとされるあの名句の碑があった。
      〈 古池や 蛙飛び込む 水の音 〉  

201268_133_640  そして、深川の中心ともいえる富岡八幡宮参道の入り口に、江戸の商人で測量家だった伊能忠敬の像があった。
 日本地図をあしらった碑には、〈寛政12年、1800年4月19日、55歳の伊能忠敬は、この地から全国測量の旅に出発しました。〉と彫られてあった。

 伊能忠敬は、それから17年をかけ、全国を旅し、測量し、『大日本沿海興地全図』を完成させる。
 日本の国土の正確な姿を明らかにした、歴史上初めての日本地図だった。
 まさに〈足で稼いだ〉その第一歩を、ここから踏み出したのだ。

 深川の町は、歴史に残る〈出立〉の地でもあった。」

120608_012_640  「深川散歩の最後に、ガイド役の先輩が〈嬉しい仕掛け〉を用意してくれた。伊能忠敬像の隣にある料理屋〈深川宿〉、江戸の味〈あさりめし〉の店である。

 深川は、漁師の町としても栄えた。そして、江戸前の魚貝類や海苔などを採る漁師で賑わった。
 彼らも食したというあさり尽くしの料理には、冷酒がよくあった。〈あさり鍋〉がことさら美味だった。
 まだ30歳ほどの若旦那が、どじょう鍋をヒントに考えたという。
 生のあさりを浅い土鍋に入れて味噌で煮込む、その上にざっくりと刻んだ葱をどっとかけただけの素朴な料理だったが、これが実に美味しかった。

 〈江戸切絵図〉を見ながらの〈深川話し〉。締めは、冷たいご飯に味噌で煮込んだあさり汁をぶっ掛けただけの〈深川丼〉にした。
 漁師たちの日常食だったという。これまた最高の味だった。」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・

201268_049_640  「〈橋ものがたり〉の巻尾には、井上ひさしの〈解説〉があった。
  『雨の静かに降る日は、藤沢周平の職人人情もの、市井人情ものが一番ピッタリだということになりましょうか。最近まとまった"橋ものがたり"などは、梅雨どきの土曜の午後のひとときを過ごすのにはもってこいです。』 と締めくくっている」 

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June 18, 2012

2117.深川散歩「橋ものがたり」

120608_017__640_2  昔の仕事仲間と誘い合って深川を散策した。ガイド役は一応地元の私。
 歩いた仲間のひとり、若い頃は海外で活躍した元報道カメラマン、彼からお礼を兼ねたエッセイが届いたので、一部を紹介しよう。

 「藤沢周平の短編名作〈橋ものがたり 〉を片手に、深川界隈を散歩してみないかと、先輩から誘いがあった。」
 ・・・・・・・・・・・・・・・

120608_640  「半年ほど前、ひょんな切っ掛けで、人生初めての〈藤沢本〉を手にした。実業之日本社発行の〈初つばめ"松平定知の藤沢周平を読む"選〉だった。
 元NHKアナウンサーの松平さんが案内役の朗読テレビ番組で紹介された藤沢作品の名作短編10作品を収めた文庫本だった。
 巻尾には〈散策地図〉まで添付されている。この本に収められた作品の舞台となった本所深川周辺の、江戸時代と現代の町名や地名が入った地図だった。
 隅田川などに架かる橋や町名には、そこが登場する作品名まで書かれている。

Cap0w047  地図を見ながら読み始めた。
 この文庫本に収録された10編の短編は、全て橋が登場する町人たちの物語だった。藤沢周平が描く、下町の人情と、失望と希望の入り混じった独特の世界に引きずり込まれた。
 藤沢周平の、登場人物に対するある種の優しさのようなものが、ひしひしと伝わってきたのが新鮮だった。
 そして、不思議にも、どの作品にも登場する〈橋〉をめぐる情景が鮮明に浮かんできた。
 翌日、近くの本屋で、藤沢周平短編集〈橋ものがたり〉を買い足した。」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・

100904_043_640  「深川の町は、江戸の水郷であった。
 この一帯は〈0メートル地帯〉であり、湿地帯だった。江戸の頃から盛んに埋立てが進められた。そして、隅田川を中心に縦横に川があり、埋立てに使う土を掘った後は堀となった。
 〈深川〉の地名も、この一帯を開拓した深川八郎右衛門に由来するそうだ。

Cauiuy63  水路は、最も重要な交通路であり、船が主な輸送手段だった。そして次々と橋が架けられる。
 橋は人が集まる場所となった。袂には船着場があった。今の駅のように主な〈落ち合い場所〉でもあったのだろう。
 藤沢文学の、江戸町人ものや職人ものの重要な舞台が、橋であるのも頷ける。
 深川は、川と堀と、そして橋の町でもあった。」

201268_100_640  「大横川と永代通りに挟まれるように、長く延びる真っ直ぐの狭い通りがある。
 ここは料理屋や女郎屋が並ぶ、江戸深川一の賑わいの花街だった。今は、ビルが軒を連ね、料理屋やアマンション密集する。
 何となく猥雑な風情がいい。

 ここは、〈辰巳芸者〉の本拠地だった。この界隈が、江戸の辰巳、南東の方向にあったことからそう呼ばれた。
 近くにある木場の旦那衆は、〈川向こう〉い通った。銭の無い職人たちは、格安のこの一角にたむろした。
 そんな職人たちの気質を受け、〈意気〉と〈張リ〉が芸者たちの看板となったという。
 それが、江戸の町の〈粋〉の象徴だった。

 藤沢文学にも何度も登場する、当時の雑踏が聞こえてきそうな佇まいを楽しんだ。」

                     〈 続 く 〉               

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June 16, 2012

2116.外事警察

26_007_640  対国際テロや外国の国家機関によるスパイ活動などに対処するのが、警視庁公安部外事課。
 「日本のCIAと言われるその組織で、一匹狼として非情の捜査に奔走する一人の外事警察官を主人公に、知られざる諜報活動の実態を暴く」というのがストーリーである。

 3年前にNHK土曜ドラマで6話が放送され大ヒット、今回はさらにストーリをスケールアップして映画化した。

341526_100x100_001_4  出演者はテレビドラマと同じく、主人公の捜査官に渡部篤郎、部下が尾野真千子、上司に遠藤憲一、警視庁警備局長・石橋凌、政府官房長官・余貴美子と並ぶ。

 今回は、濃縮ウランが朝鮮半島から流出したとの情報を、内閣情報調査室が入手した事から話が始まり、重要な舞台が韓国となる。
 そこで在日の実業家や韓国情報機関のエージェント役などに、韓国版「男たちの挽歌]('10)に出演したキム・ガンウ、イム・ヒョンジュ、イ・ギョンヨンらが顔を見せる。

341526_100x100_003  さらに日本側からは在日実業家の妻に真木よう子、在日二世の核科学者に田中泯が、事件のキーマンとして登場する。

 監督はテレビドラマでディレクターを担当した堀切園健太郎。「ハゲタカ」や「篤姫」など話題となったドラマを手がけてきた彼は、映画初監督である。

 ハリウッドのスパイ映画に比べると派手なカーアクションや銃撃戦は少ないが、生身の人間たちの内面を丁寧に描く手法は、テレビドラマ出身の監督らしい。

341526_100x100_005  また麻生幾の小説を元に脚本を書いた古沢良太は、「ALWAYS 三丁目の夕日シリーズ」や「探偵はBARにいる」('11)、さらにはテレビ「相棒」も担当したベテラン。
 不穏な朝鮮半島情勢、複雑な日韓関係や東日本大震災など、現実の動きを上手く取り込んで物語を膨らませた。 

341526_100x100_006  ここ数年、NHKのテレビドラマの映画化は不評だったが、今回は「ハゲタカ」('09)につぐ大ヒットとなった。
 昔の職場の後輩たちが頑張ってる様子を、フェイスブックで知らされ嬉しく思っている。

 映画の副題は「その男に騙されるな」、観客も大いに騙されて楽しんでほしい。

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June 14, 2012

2115.ジェーン・エア

26_006_640 イギリス文学史上、最大のタブーを破った作品「ジェーン・エア」。
 女流作家シャーロット・ブロンテが31歳の時に書いた長編小説である。
 刊行は1847年、その後全世界で読み継がれ不朽の名作といわれる。

 映画化されたのは今回で18回目、TVでも9作品、ブロードウエイでの舞台はロングラン上演だった。
 日本でも3年前に日生劇場で公演、ジェーン・エアを松たか子が演じている。

51json9gvfl__sl160_   映画ではジョーン・フォンティンとオーソン・ウエルズの1944年アメリカ版、スザンナ・ヨークとジョージ・スコットの1970年イギリス版、シャルロット・ゲンスブールとイリアム・ハートの1996年イギリス版などが有名、原作は読んでいるが映画の方はなぜか一本も見ていなかった。

 過酷な運命に立ち向かう孤児ジェーンが、強い意志と聡明さをもってたくましく生き抜く物語である。
 当時の階級社会に反抗した女性、自由を求め自立した女性、妻ある男性との恋、作家がジェーンに託した想いは19世紀のイギリス社会を揺るがしたのだ。

341668_100x100_001  今回はその主人公を、「アリス・イン・ワンダーランド」('10)でアリス役だったオーストラリアの女優ミア・ワシコウスカが演じる。
 決して美人女優ではないが、意志の強さと愛のひたむきさを見事に見せた。

341668_100x100_007  相手役の荘園主は、「シェイム」('11)でセックス依存症の男を演じ、ヴェネチア国際映画祭で男優賞を受賞したアイルランドの俳優マイケル・ファスベンダーと、今注目されるキャストの登場である。

341668_100x100_002  また監督のたっての依頼でオスカー女優のジュディ・デンチが女中頭に、「リトル・ダンサー」('00)の主役を務めたジェイミー・ベルが、ジェーンにプロポ-ズする若い牧師役で顔を見せる。

 今回の再映画化で話題となったのは、イギリスを舞台にアメリカ以外の俳優陣が参加した作品を、アメリカのインディペンデント系の若い監督キャリー・ジョージ・フクナガが撮ったことである。
 彼は、「闇の列車、光の旅」('09)でサンダンス映画祭監督賞など数々の賞を受賞した日系の監督である。

341668_100x100_006_3  予てから「ジェーン・エア」の映画化を考え、自らシナリオも書いていた彼は企画の動きを知って手を上げた。
 彼女の生き方こそ、現代が求めるヒロイン像だと彼はいう。

341668_100x100_003   ロケは、原作の舞台でもあるイングランドのダービーシャー州で行われた。
 「エリザベス」に登場したハドン・ホールや、「プライドと偏見」の舞台となった古い屋敷や農場が、1830年代のイギリスを彷彿させる。

 衣裳もまた当時の写真をもとに、ひとつづつ手縫いでつくった。デザインを担当したマイケル・オコーナーは、アカデミー賞にもノミネイトされている。 

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June 12, 2012

2114.シャガール展

206_001  鮮やか色彩と幻想的な作風で知られるフランスの画家、マルク・シャガール。
 左のポスターの絵は、彼が93歳の時描いた「画家の夢」。
 画面左には「キリスト復活」を描くシャガール自身の姿、右上のカップルは36年前に亡くなった同郷の愛妻ベラのイメージ、そしてロバや村の人たちの歓喜・・・・。

206_002_640 右も彼の晩年の作品「ロバの横顔の中のカップル」。
 愛妻の思い出、故郷ベラルーシへの郷愁が描かれている。

 「愛の画家」と呼ばれるマルク・シャガール、生誕125周年を記念して全国各地で彼の作品展が開催されているが、日本橋高島屋では日本での未公開作品を中心に「愛をめぐる追想」と題しての催しである。

1404  愛妻ベラを描くシャガール、1887年旧ロシア帝国(現ベラルーシ)ヴィテブスクに生まれ、サンクトペテルブルグ美術学校で学んだのちパリに5年間滞在、ここでキュビズムの影響を受けた。

 帰国後は革命政権のもとでロシア美術界の振興に努めるが、出自がユダヤ系という事で相容れず、再びパリに向う。

206_005 1941年ナチスのパリ侵攻によってアメリカに亡命するが、ここでベラを亡くす。
 終戦でフランスに帰国するが、1952年以降は南フランス・ニース近郊のセント・ポール・ヴァンスにアトリエを設け、ここで生涯を終える。享年98歳だった。

206_006_640 ピカソと並んで、シャガールは多作だった。日本の美術館もふくめ世界各国の美術館で、彼の作品に出会う事は多い。

 私も若い頃、鹿児島の長島美術館で「緑のバイオリン弾き」を見たのがきっかけで、シャガール作品を注目するようになった。
 白金台の松岡美術館にある「婚約者」(1977年の作品)は、美術館創立者が西洋絵画を蒐集するきっかけとなった作品である。

206_007_640  また高知県立美術館は、世界でも有数のシャガール・コレクションで知られ、「空を駆けるロバ」など1300点を有す。
 今回の高島屋での展覧会には、ジュネーブ在住の蒐集家の作品とともに、高知美術館所蔵のリトグラフ「サーカス」36点が展示されている。

 海外ではフランスのニースにある、国立「マルク・シャガール聖書のメッセージ美術館」が有名で、交遊のあった元文化相アンドレ・マルローの尽力で設立された。

016_640017_640  10数年前に私はニースの美術館を訪ねたあと、彼が晩年を過ごしたセント・ポール・ヴァンスまで足を伸ばしたことがある。

018_640  村の入り口にある教会のユダヤ人墓地に、彼は愛妻ベラと並んで葬られている。
 近くのレストランには、彼の作品や友人でもあったピカソの絵が、無造作に飾られていた。

 「シャガール・愛をめぐる追想」展は、日本橋高島屋で25日まで。入場料1000円。
 また現在、長崎県美術館では「シャガール生誕125周年記念・愛の物語」展が開催中。このあと新潟~京都と巡回する。 

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June 10, 2012

2113.私が、生きる肌

26_005_640 「妻と娘を亡くし、愛に狂った天才形成外科医、彼の豪邸に幽閉された全身タイツのナゾの美女は誰!」

 「オール・アバウト・マイ・マザー」('98)「トーク・ツゥ・ハー」('02)でアカデミー賞を受賞したスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル。
 倒錯的なエロスとバイオレンスを、先鋭的なファッション感覚とアートで描いてきた彼が、「アタメ」('89)以来22年ぶりにアントニオ・バンデランスとタッグを組んだ。

341775_100x100_002   ラブストーリー+ミステリー+バイオレンス+アート、人間のエゴイズムの本質に迫る「美しき残酷な変態映画」である。
 言い換えれば、反社会的な欲望の物語ともいえる。

341775_100x100_004_2 主演のバンデラスは、アルモドバル監督の「セクシリア」('82)で映画界にデビュー、「デスペラード」('95)でスペインの大スターとなった俳優だが、今回はポーカーフェイスの裏で鬼気迫る異色のキャラクターを見せる。

 そして謎の美女、「トーク・ツゥ・ハー」のエレナ・アナヤが全てを曝け出す熱演で演じる。

341775_100x100_005 また二人の関係をクールな傍観者として見つめるのが、召使で実の母親という役、「オール・アバウト・マイ・マザー」に出演したスペインの名優マリサ・バルデスと、アルモドバル「一家」が並ぶ。

 もちろん撮影・美術・音楽などスタッフも常連、衣裳はジャン=ポール・ゴルチェと豪華だ。

 フランスの作家ティエリ・ジョンケの「蜘蛛の微笑」を原作に、フェティシズム、狂った愛と執着、残酷な復讐そして情念を、ペドロ・アルモドバルは魅惑の映像美で紡いだ。

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June 08, 2012

2112.少年と自転車

26_003_640 オーデションで100人の中から選ばれた12歳の少年トマ・ドレ。ブルージーンズに赤いTシャツ、赤いジャージーの少年は、いつも自転車で街を疾走する。
 自転車は少年の心、少年の未来。

26_004_640 「イゴールの約束」('96)カンヌ国際映画祭批評家連盟賞、「ロゼッタ」('99)同じくパルムドール大賞・主演女優賞、「息子のまなざし」('02)パルムドール賞ノミネイト・主演男優賞、「ある子供」('05)パルムドール大賞、「ロルナの祈り」('08)脚本賞、「少年と自転車」('11)グランプリ。

 カンヌ国際映画祭史上初の快挙!といわれる、連続受賞を成し遂げたベルギーのダルデンヌ兄弟の作品。
 兄ジャン=ピエール61歳、弟リュック58歳、「ゼネスト」「移民」「レジスタンス」などをテーマにドキュメンタリー映画を撮り続けてきた社会派監督である。

339918_01_03_03  「どんな厳しい環境におかれても、人は誰かとつながることで、一筋の光を見出す」と、兄弟は少年に優しいまなざしを向ける。

 作品は、父親に捨てられ心を閉ざした少年と、偶然に関わりを持ってしまった美容師との心の交流が描かれる。
 以前、日本で聞いた「帰ってこない親を、施設の屋根にのぼって待ち続ける子供の話」に衝撃をうけ、二人は脚本を書いた。

Intro_pic2 少年の週末里親になってしまった美容師を演ずる、ベルギーの女優セシルオ・ドウ・フランス(「ヒアアフター」'10)が上手い。
 少年に対する「母性愛」に「父性」の強さが加わる。
 恋人を捨ててまで、少年に拘る彼女にその過去が暗示される。
 それが、ダルデンヌ兄弟の得意とするリアリズムである。

Intro_pic1  兄弟の過去の作品に主役で登場している俳優たちが、今回は脇役で少年と美容師を支えた。

 「息子のまなざし」でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞したオリヴィエ・グルメが、居酒屋の主人。
 「ある子供」「ロルナの祈り」のジュレミー・レニエが、少年の父親役。

 今回初めてダルデンヌ兄弟の作品に出演したセシルは、こう語る。
 「兄弟はベルギーそのもの。計り知れない繊細さをもって、私たちの国を描いてくれる」

 ロンドン・フィルが演奏する、ヴェートーベンのピアノ協奏曲「皇帝」が、エンディングを締める。 

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June 06, 2012

2111.特別展・月島百景

120531_640047_640  「中央区の月島地域は、佃・月島・勝どき・晴海・豊海町で構成されたウォーターフロントのまちです。晴海埠頭を有し、、中央区の海の玄関口である一方、昔ながらの路地が残り、もんじゃ焼き屋が軒を連ねるどこか懐かしい雰囲気をあわせ持つ地域です・・・・」

120531_040_640 私の住む「月島第一号地」が埋め立てられ、新しい街がスタートして今年で120年。
 工業地帯としてスタートしたこの街は、高層マンションが立ち並ぶ区内一の住宅街と大きく変貌した。

 中央区立郷土天文館では120年の節目を記念して、月島地域の歴史と文化を紹介する特別展「月島百景」を開催している。

120531_064_640120531_066_640  展示は、月島の前史といえる「佃島・石川島の歴史」から始まり、「月島の誕生と発展」「経済成長と月島のまち」「 月島地域の信仰と文化」の4コーナーにまとめられる。

 江戸末期の画家たちが描いた風景、歴史を記録した写真、変遷の跡を比較する今昔の写真など、日本の近代化の歴史とオーバーラップしているだけに、興味深い。

120531_046_640 左の写真は、空から見た「石川島重工と渡船で通勤する工場労働者」。昭和初期の記録である。

001_320  そして現在、工場は移転しその跡地は高層マンション群となった。
 日本最初のウオーターフロント開発・大川端リバーサイトである。

120531_043_640120531_020_640  石川島の歴史については、このブログでも度々紹介してきたので省略するが、火付盗賊改めの鬼平が創建した「人足寄場」のモニュメントを見るたびに、時代小説の世界へトリップする。

120531_036_640120531_052_640_2  工場および工場労働者の住宅地、そして生活のための商業施設用地として埋め立てられた月島。
 今は「もんじゃストリート」として、観光の街となった。
 初夏のこの頃、お昼時は修学旅行の子供たちで賑わう。

120531_048_640_3  月島に転居して10年になる。街の歴史については精通したつもりだったが、今回の特別展で初めて知った事実がある。
 それが「東京市庁舎移転計画」だった

 現座の「晴海」、「月島第四号埋立地」が完成したのは1931(昭和6)年である。
 その翌年、東京市旧15区と周辺郡部82町村が合併して35区の大東京市が誕生した。
 そこで完成間もない月島に庁舎を移転し、さらなる東京の発展に備えようとした。

071106_028_640_3  しかしこのプランは、設計コンペの段階でつぶれた。丸の内など都心部から離れている事や、山の手住民の反対などがあったからだ。
 上の写真は、公募一等賞の「白亜館庁舎」の設計だが、現在この一帯は「晴海アイランド・トリトンスクエア」としてマンションやオフィス、商業施設の街となっている。

120531_063_640_3120531_032_640_5  月島の前史である佃島が誕生して368年、月島第1号地が誕生して120年。そして晴海・豊海を含む現在の月島が完成して50年になる。

 この夏には、月島地域全体の氏神さまである「住吉神社」の本祭りが行われる。

0808011_055_6400808044_015_640  新しくなった「八角神輿」と町内8つの神輿が街を練り歩く。
 獅子頭の宮出しや船渡御など、氏子たちはもうお祭り気分である。

 「特別展・月島百景」は、7月1日(日)まで中央区立郷土天文館(タイムドーム明石)で。入場無料。

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June 04, 2012

2110.ダーク・シャドウ

Ds_1sht_web   欧米人はどうも「吸血鬼伝説」が好きなようだ。宗教との関係もあるかも知れないが、これまでも数え切れない「ドラキュラ映画」が作られている。

 最近は、ハンガリーのドラキュラ伯爵の故事にもとづく伝統的な作品から離れて、若い吸血鬼、なかには「モールス」('11)のような少女の吸血鬼が主人公となる映画も生まれている。

Barnabas_thumb_2 こうした作品にも少々見飽きたので敬遠してきたが、今回はティム・バートンとジョニー・デップのコンビだというので、見逃すわえにはいかない。

 二人が組んだのだから、ホラーというよりダーク・ファンタジー、ブラック・ジョークにシュールなギャグ、さて「オチ」は、というところだ。

 イギリスから植民地アメリカに渡り、水産業で財をなした荘園の御曹司がジョニー・デップ。召使のエヴァ・グリーンに手を付けたが、若い美女ベラ・ヒースコートに恋してエヴァを捨てる。

341643_100x100_008  怒ったエヴァは恋人の女を呪い殺し、デップもヴァンパイアにして生き埋めにしてしまう。
 実は彼女は魔女だった。

 それから200年後の1970年が舞台。偶然にも墓から蘇ったヴァンパイア・デップ、没落した末裔一族を救おうとするが、立ち向かったのがあの魔女エヴァだった・・・、とお話は展開していく。

341643_100x100_002 バートン監督とデップが組んだのだから、「フツーのヴァンパイアなワケがない!」というのが宣伝文句。
 確かに、ヴァンパイア映画に必ず登場する十字架やニンニクはない。陽光には弱いはずのデップ、サングラスがあればヘッチャラ。

341643view013  そのうえ仇敵の魔女エヴァに誘惑されると、凄まじいファイティング・セックスを堪能する。
 こうして、ヴァンパイアと魔女の200年の時空を超えた愛憎物語となる。

341643_100x100_010_2  「007/カジノ・ロワイヤル」('06)でその美貌をスクリーンで見せたフランス女優エヴァ・グリーンの、愛を失った魔女の悲しみが憎めない。
 デップ・ヴァンパイアの方が、エゴむき出しのダラしない男に見えるのが面白い。

341643_100x100_003  没落した末裔の当主に「危険な関係」('88)などアカデミー賞に3回ノミネイトされたミシェル・ファイファー、一族の屋敷に住む医師にバートン監督夫人のヘレナ・ボナム・カーター(「英国王のスピーチ」'10)。
 当主の娘に、「モールス」('10)で少女ヴァンパイアを演じたクロエ・グレース・モレッツが出演している。

 バートンとデップ、「チャーリーとチョコレート工場('05)など、今回で8度目のタッグである。

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June 02, 2012

2109.ファミリー・ツリー

26_640_2 心の機微をリアルに、そしてユーモラスに描くことで知られるアレクサンダー・ペインが、アカデミー賞脚色賞を受賞した「サイドウエイ」('06)以来、久しぶりに撮った作品。
 今回も作品賞など5部門にノミネイトされ、同じく脚色賞を受賞した。

341350_01_05_03 カウイ・ハート・ヘミングスの処女作「The Descendants」をペイン監督が脚色して同じタイトルで映画化されたが、なぜか邦題は「ファミリー・ツリー」となった。

 原題は「末裔」とか「子孫」の意味で、作品の重要なキーワード、「ファミリー・ツリー」とはニュアンスが違う。

341350_100x100_006  ハワイを舞台に、家族崩壊の危機に直面した一家の再生のドラマだが、ユーモアとペーソスに溢れ、人との繋がり、家族の絆の愛おしさが胸を打つ。

 「ハワイに暮らしていても、人生は楽じゃない」とボヤく主人公のジョージ・クルーニー。

341350_100x100_003  まず「妻がボート事故で植物人間に」「次女は荒れて父親には反抗、同級生を苛める」「母親とケンカして隣の島の寄宿学校にいる長女は、どうもクスリや男関係が」「ご先祖のカメハメハ大王から引き継いだ膨大なな土地の処分を巡って、親族たちは虎視眈々」。

 そして「妻の浮気」を長女から知らされた時クルーニーは・・・・、というストーリー展開になる。

341350_100x100_001_2  ドジだがちょっとカッコいい父親役は、クルーニーにとっては未経験のキャラクター。
 アカデミー賞を受賞した「シリアナ」('05)や、彼の監督作品にはこれまで登場したことはない普通の親父なのが面白い。

 長女役のシャイリーン・ウッドリーのが、この作品でブレイクしている。
 テレビ若手女優の彼女にとっては初の長編映画だが、先週のカンヌ国際映画祭で、今注目される若手俳優としてショパール賞受賞。
 先のインディペンデント・スピリットでもその繊細な演技が評価されて、助演女優賞を受賞している。

341350_100x100_007 ほか、出演者の多くは無名のTV俳優たちだが、ひとりだけ義父役ロバート・フォスターが顔を見せる。
 その昔「ジャッキー・ブラウン」('97)でアカデミー賞にノミネイトされたベテランである。

341350_100x100_002  「わが妻、わが親友、わが喜び、わが苦痛」と、死に行く妻に語りかけるクルーニーの最後のセリフが、決まる。
 ラスト・シーンの、3人の足元を包む「ハワイアン・キルト」に注目を。

 二人の娘の父親として、昔はいろいろと苦労しただけに、現役のクルーニーに同情する。    

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