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July 30, 2012

2139.ヘルタースケルター

27_010_640 「映画というより、事件!」と、スキャンダルを逆手にとって宣伝するが、「悲しい作品」である。

341728_100x100_007  主役・沢尻エリカと彼女をスキャンダラスに扱う週刊誌の記事が、映画の中のストーリーとオーバーラップする。
 その意味で、エリカ様でなければ撮れなかった作品かもしれない。

 原作は、岡崎京子が'80~'90年代にかけて「フィール・ヤング」(祥伝社)に連載し、今や伝説となった熱狂コミック。
 のちこの作品は、手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した。

341728_100x100_001   田舎から出てきた「冴えない娘」が、全身整形によって誰もがうらやむトップモデルにのし上がる。
 「もとのままのほんものは目ん玉と爪と耳とアソコぐらい」となった主人公の、たどり着く世界とは。

  整形美容がブームだった時代、闇の世界の臓器移植が噂され、多くの犠牲者や術後被害者がマスコミの俎上にのった時代の作品である。

341728_100x100_004_2 あれから20年近くたった今、フォトグラファーの蜷川実花が極彩色の映像で映画化を試みた。
 「さくらん」('07)につぐ2本目の監督作品である。

 ヒロインを神と讃えた大衆が、やがてヒロインをあしざまに罵る。そのパラドックスを実花は描こうとした。

 この企画に、沢尻エリカが手を上げる。
 「パッチギ!」('04)で数々の賞をとって、スターへの階段を登りつつあった彼女だが、その後の行動がスキャンダルに塗られた。
 今あしざまに罵られている彼女にとって、この作品は起死回生の一発なのだ。

341728_100x100_005  エリカは熱演している。ヒロインが堕ち込む「狂気と恐怖」を体当たりで演ずる。
 マネージャ-役の寺島しのぶや、事務所社長の桃井かおり、美容クリニック院長の原田美枝子、検事の大森南朋ら、ベテラン俳優たちが彼女を支える。
 ヒロインのメイク担当を演じた新井浩文など、バイプレイヤーたちも上手い味を出す。

341728_100x100_003  無責任な大衆の姿を狙い打ったこの作品に、評価は真っ二つに割れる。なかには今年最高の「快作」との声もある。
 それは、エリカ様と実花様への観客(大衆)の距離からくるようだ。

 それだけに「エリカ様」と並ぶ「海猿」「ポケモン」、この夏を彩る三大話題作の結末が興味深い。

 先日、国際的な遺体臓器売買の調査報道があった。韓国芸能界では常識とされる美容整形も、それと深く関わっているらしい。
 「ヘルタースケルター」は、決して前世紀の物語ではない。

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July 28, 2012

2138.蓼科高原・バラクラ

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 日本では初めての大規模イングリッシュ・ガーデン「バラクラ」。

 昨日の新聞に案内広告が出ていたので、出かけてみた。
 オリンピック開会も記念して。

 場所はビーナスラインとエコーラインが交わるちょっと先。
 22年前に、「バラ色の暮らし」のブランドで知られるファッションデザイナー、そしてガーデンデザイナーとしても有名なケイ・山田さんがデザインした庭園である。

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 200種類を超える「バラ」がメインだが、見ごろはそろそろ終わり。
 バーゴラを包み込む様に咲くピンクのつるバラ「ドロシー・パーキンス」をくぐった先には、白い「アナベル」や青い「ベロニカ」の花が満開だった。

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 秋の主役の花「ダリア」も、今年は例年より早く咲いている。

 総面積1万㎡、「レース・ガーデン」「グラベル・ガーデン」「ロング・ボーダー・ガーデン」「ボトム・ボーダー・ガーデン」と、ケイ・山田さんの統一デザインをもとに設計から石工・ガーデナーまでイギリスから招いた専門家が創った。

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 始めて見た「スモーク・ツリー」の大木。
 別名「白熊(はぐま)の木」「霞の木」「煙の木」と呼ばれるヨーロッパ原産の植木は、園芸愛好家の間ではブームとなっているそうだ。

 右は、「バラクラ」のシンボルツリー「ゴールデン・アカシア」。陽光を遮って金色に光る葉の下は、恰好の休憩所になっている。

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 「服創りと庭創り」を融合させたケイ・山田さんの創作活動。
 それは各地の個人庭園から公共庭園まで広がり、ファッション・グッズやガーデニング・スクールとともに多くの人たちの共感を集めている。

 JR東日本ではこの夏も、「蓼科バラクラ・イングリッシュガーデン」を訪ねる「日帰りプラン」を、毎日募集している。    

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July 27, 2012

2137.夏・蓼科高原

250pxtateshina_kogen_2  八ヶ岳山麓に広がる蓼科高原。
 名湯で知られた静かな温泉地、また軽井沢と並ぶ避暑地として、古くから文人墨客に親しまれてきたリゾートエリアである。

 仕事では数回訪ねた蓼科だが、全くのフリーで森林浴を楽しんだのは初めてだった。
 東京は猛暑日だと、テレビは伝える。標高1300~2000mの高原は、気温20数度、心地良い風が吹いていた。

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 滞在したのは「東急リゾート」、山麓のカラマツの森の中に隠れるように建てられた、ヨ-ロピアン調のクラッシック・ホテルである。

 茅野駅から車で30分、白樺湖へ向うビーナスライン(国道192号線)を蓼科湖手前で左折すると、東急リゾートタウンに着く。
 戦後の複合大規模リゾート開発としては1~2を争うこのリゾートタウンには、別荘が1200戸、リゾートマンション70棟1186戸、会員制を含めて3つのホテルが並ぶ。

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 総面積660hの敷地内には、テニスコート(12面)、プール、ゴルフ場(18ホール)、トレッキングコース(8ルート)、スキー場があり、タウン内循環道路は80キロにのぼる。

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 今回の旅は、あちらこちらと足を伸ばすのは止めて、リゾートタウン内の散策や、ウインドショッピングを楽しむ事だけにして、静かな時間を過ごしている。         

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July 25, 2012

2136.崖っぷちの男

27_007_640_2 30億円のダイヤを盗んだ容疑で、懲役25年の刑を受けた元NY市警刑事が主人公。
 上告したものの却下、まさに転落人生という「崖っぷち」に立たされた彼が、脱獄して高層ホテルの23階にむかう。

341804_100x100_001_2  窓枠を乗り越えて庇の「崖っぷち」に立った主人公は、見上げる野次馬と交渉人を前に、無実を訴えるが・・・。
 ニューヨークの摩天楼で、起死回生のショータイムが始まったのだ。

 原題は「Man on a Ledge」、それを直訳した邦題のタイトルが上手い。
 「交渉人」「手錠のままの脱走」「トプカピ」「ミッション・イン・ポッシブル」の美味しいところをもらった、ノンストップ・アクション・サスペンスは単純に楽しめる。

341804_100x100_004_2 出演者に大スターはいないが、演技力のある中堅俳優が顔を並べてるので、安心して見られる。

 まず主人公の元刑事が、「アバター」('09)「ターミネーター」('09)で売り出したオーストラリアの俳優サム・ワーシントン。
 対するNY市警交渉人に、「スパイダーマン・シリーズ」のエリザベス・バンクス。

341804_100x100_003  主人公の弟は、「リトル・ダンサー」('00)でデビューしイギリスのアカデミー賞を受賞したジェイミー・ベル。
 その恋人に歌手のジェネシス・ロドリゲス。

 敵役は、「めぐりあう時間たち」('02)など4回もアカデミー賞にノミネイトされたエド・ハリスという組み合わせ。

341804_100x100_005  監督は、ドキュメンタリー映画出身という事以外は経歴・年齢不詳のアスガー・レスだが、「トランスフォーマー」('07)「RED」('10)の製作陣がしっかりと製作を支えている。

 さりげなく登場するバイプレイヤーたちが、クライマックスへの伏線となっているのが面白い。

 悪徳刑事や汚職刑事など、いつものようにNY市警の恥部がベースにあるが、NY市警がロケに協力しているのもアメリカらしい。 

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July 23, 2012

2135.クーリエ~過去を運ぶ男~

27_008_640  先週はヨーロッパのサスペンス・シリーズだったが、今回はアメリカのサスペンス・アクション映画。
 といっても監督は、オランダを中心にヨーロッパで活躍している人なので、共通の匂いがある。

517jttnfasl__sl500_aa300__2  イスラエル・ナザレ出身のパレスチナ人、ハニ・アブ・アサド。
 自爆テロを試みるパレスチナ人青年の40時間を描いた「パラダイス・ナウ」('05)で、衝撃的なデビューをした監督である。
 この作品は、パレスチナ映画では初めてアカデミー賞にノミネイトされ、ベルリン国際映画祭では観客賞を受賞した。

  「クーリエ」は、そのアサド監督の3作目。
 若い頃、中東をテーマにドキュメンタリー映画を撮っていた彼は、80年代のアクション・スリラーに強い関心を持っていた。
 彼はこの脚本に出会ったとき、都会を舞台にした「ウエスタン活劇」を撮ろうと考えた。

20120531007fl00007viewrsz150x_4  ストーリーは「居場所も名前も判らない人物に、荷物を届けるように依頼されたクーリエ(運び屋)の、60時間を追う」というもの。
 クーリエ自身が、大火事で重傷を負い記憶を亡くした男。次々と事件に巻き込まれていく、サスペンス・アクションである。

Story_pic1_2  クーリエ役は、ジェフリー・ディーン・モーガン(「P.Sアイラブ・ユー」'07)。
 その彼を助けるのが自動車泥棒だった女の子、ジョーシー・ホー(「ドリーム・ホーム」'10)である。

Pn_pic6_2 そしてラストになって、「レスラー」('08)でアカデミー賞にノミネイトされたミッキー・ロークがカメオ出演する。

 それぞれが、個性派揃いの出演者たちである。

 ジョーシー・ホーは、マカオのカジノ王の娘で元カナダ陸軍の中尉。香港で活躍するテレビプロデューサー としても知られるが、アメリカではアクション・スターとして有名だ。

Story_pic3 主人公を追っかける、殺し屋夫婦もユニークだ。
 夫役のミゲル・ファーラー(「クライシス・オブ・アメリカ」'04)は、TVディレクター。
 妻役のリリー・ティラー(「パブリック・エニミーズ」'09)は、劇場を所有する演劇界の重鎮でもある。

 さらにFBIの刑事もティル・シュヴァイガー(「ブラック&ホワイト」'12)と、演技派の俳優が顔を見せる。

Story_pic4 巧妙に張り巡らされた伏線、カット割り、色使いはクラシカルな演出だが、人物関係がちょっと判り難いのが難点である。

 「殺しのシーン」「拷問のシーン」などリアリティは十分、パレスチナ出身のドキュメンタリストとして数々見てきた、悲劇の体験がそこにある。 

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July 21, 2012

2134.東京都美術館ものがたり

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 「真珠の耳飾りの少女」に会いにやってきた老若男女。
 東京都美術館は、開館前から大行列だった。

207_051_640_2    群集の脇を通り抜けて、こちらが向ったのは同じ「リニューアルオープン記念企画展」だが、入場無料の「東京都美術館ものがたり」。
 美術館の歴史を辿りながら、「時代を駆け抜けた芸術家たち」の作品を鑑賞した。

207_043_640_2  国内初の公共美術館として、「東京府美術館」が上野公園にオープンしたのは1926(大正15)年。
 北九州の石炭王、佐藤慶太郎の寄付金を元に建築家・岡田真一郎が設計して完成させた。

 府美術館は、当初から絵画や書道の常設ミュージアムというより、芸術団体の公募展や海外の美術館が所蔵する作品を特別に展示してきた。

207_055_640  例えば佐伯祐三の「1930年協会展」、片岡球子の「院展」、朝倉文夫の「文展」、梅原龍三郎の「紀元2600年展」などがそうである。

207_066_640  東郷青児が率いた戦後の「二科会」も、岡本太郎もこの美術館が拠り所だった。

207_068_640 革新的な美術運動も、都美術館の存在に負うところが大きかった。

 「読売アンデバンダン展」は、物議を起こしながらもここでなんとか開催された。
 寺山修司の「天井桟敷」とのコラボによる「東京展」も話題を呼んだ。
 旧美術館の入り口が劇場となり、演劇と美術が一体となった。

207_054_640  今回も「マウリッツハイス美術館展」を記念して、平田オリザ作・演出による青年団第67回公演「東京ノート」が、美術館ロビーで開催されている。

207_044_640_2  「東京都美術館ものがたり~時代を駆けぬけた芸術家たち」は、芸術家の晴れの舞台=ニッポン・アート史ダイジェストとともに、府美術館時代の旧館の設計図や、館内装飾、ステンドグラスや備品など、100点近い絵画や資料で構成される。

 東京都美術館での展示は9月30日まで、入場無料。
 演劇「東京ノート」のロビー上演は、今月25日まで19時30分から。入場料は4000円。

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July 19, 2012

2133.ブラック・ブレッド

27_003_640 ヨーロッパ映画シリーズ3本目は、スペインのダーク・ミステリー「ブラック・ブレッド」。
 「バンズ・ラビリンス」('07)に相通ずる、「スペイン内戦」を背景に描いた作品である。

341764_100x100_005  映画は、スペインのアカデミー賞といわれる昨年のゴヤ賞で作品賞・監督賞など9部門を受賞し、アカデミー賞の外国語映画スペイン代表となった。
 前評判の高かった巨匠ペドロ・アルモドバルの「私が、生きる肌」を、押しのけての受賞である。

 こうした評価の高さは、スペイン内戦による民族分断のトラウマが、今もなお人々の中に色濃く影を落としているからだといわれる。

341764_100x100_006 もうひとつこの作品の特徴は、舞台がカタルーニアの山村で語られるセリフもカタルーニア語だということにある。
 首都マドリードから遠いこの地は、文化も慣習も言語も異なりアンチ中央の気風が残っており、よりスペイン内戦の傷を残している。

341764_100x100_001 物語は、山村での残虐な殺人事件に巻き込まれた少年が、真実に近づくことで「人間の闇」に翻弄されていくというもの。 
 陰鬱・残酷・恥辱・ホモ・セックス・・・内戦によって社会が失ってしまった人間性を、「黒いパン」で育った無垢な少年の眼を通して告発する。

 その少年、12歳のフランセ・クルメはカタルーニアのある小学校でのオーデションで選ばれた新人。繊細な演技は高く評価され、ゴヤ賞新人男優賞を受賞している。

341764_100x100_004  少年を誘惑する従姉妹役マリナ・コマスもカタルーニア出身、同じく新人女優賞。
 母親役のノラ・ナバスは、ゴヤ賞主演女優賞のほかサン・セバスチャン国際映画祭主演女優賞を受賞した。

341764_100x100_007  また前号の「プレイ」に出演したセルジ・ロベスが、今回は敵役のフランコ派村長として少年一家をいたぶる。

 原作者のエミリ・テシドールももちろん、カタルーニア語文学者。
 舞台俳優出身のアグスティ・ビジャロ監督は、音と光を上手く生かしたマジック・リアリズムの演出で、ゴヤ賞監督賞・脚本賞を受賞している。

 イギリス作品「少年は残酷な弓を射る」、フランス作品「プレイ・獲物」、スペイン作品「ブラック・ブレッド」。それぞれ佳作ではあるが、単館上映のため劇場に足を運びにくいのが残念である。

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July 17, 2012

2132.プレイ・獲物

27_002_640  2本目は、フレンチ・サスペンス「プレイ」。
 アンチCG、アンチ・ハリウッドと、旧い映画製作手法を存分に生かした作品だが、それが反って新鮮に感じる。

342619_100x100_006  愛する妻と娘を連続猟奇殺人犯から守るために、脱獄した元銀行強盗犯が主人公。
 罠に嵌って必死に逃げながらも真犯人を追う主人公と、彼を追う凄腕の女刑事。
 「狩るか、狩られるか」、三つ巴の追跡・逃亡劇がスリリングに展開する104分である。

 「中年」のスタッフ・キャストが、体を張って製作している。

342619_100x100_001_2  監督のエリック・ヴァレットは、45歳。
 三池監督の「着信アリ」('04)を、ハリウッドがリメイクした「ワン・ミス・コール」('08)を撮った事で知られる、フランスのベテラン監督である。

 主人公の逃亡者は、監督としても活躍しているアルベール・デュポンテル(「インストーラー」'09)48歳。
 ビルから飛び降り、列車にしがみ付き、ハイウエイを逃げまくる。

342619_100x100_008  追う女刑事、アリス・タグリオーニ(「ナイト・オブ・ザ・スカイ」'05)も36歳と決して若くはないが体力勝負である。

342619_100x100_003  一方の猟奇殺人犯ステファン・ラバス(「幸せはシャンソニア劇場から」'08)だけは、知能犯らしく悠然と構える。こちらは39歳。

 そしてただひとり、全国指名手配となった主人公を助ける元憲兵大尉はセルジ・ロベス(「ブラック・ブレッド」'11)47歳。
 彼だけは、スペインの実力派といわれる俳優なのだ。

 脚本が緻密である。アクションとサスペンスがうまく融合して、最後まで飽きさせない。生身の「中年」たちがここまで体を張ると、それだけで感動する。

 2年前に製作された映画、前号に続いてこちらも佳作の一品。

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July 15, 2012

2131.少年は残酷な弓を射る

27_001_640 先週はイギリス・フランス・スペインと、ヨーロッパ映画を集中して観た。それもスリラー・サスペンス作品ばかり。
 一本目がイギリスのこの作品、「少年は残酷な弓を射る」である。

341378_100x100_003  生まれ落ちた時から、母親に異常なまでの悪意と執着心を持つ息子、その彼に戸惑う母親がヒロインとなる。

 原作者は、アメリカ生まれのライオネル・シュライバー。この本で、イギリスの女流文学賞を受賞した作家、そしてニューヨークでも活躍するジャーナリストである。

341378_100x100_002  ヒロインを演ずるのは、「フィクサー」('07)でオスカーを受賞したイギリスの名優ティルダ・スウィストン。
 自由奔放に生きてきた女流小説家が陥る逃げ場のない「母親」を、迫真の演技で見せ 数々の賞にノミネイトされた。

341378_100x100_001  息子の方は、冷酷なまでの美しさを見せるエズラ・ミラー。アメリカの若手俳優の演技は、狂気を超えたサタンの残酷さに行き着く。
 それは、幼児時代を演じた子役にも通ずる。

 そして父親は、「シカゴ」('02)でアカデミー賞にノミネイトされたジョン・C・ライリー。

341378_100x100_006  監督のリン・ラムジーは、「モーヴァン」('02)でカンヌ国際映画祭ユース賞を受賞したが久しぶりのメガホン。
 ストイックな映像表現、「赤」をコンセプトにした色彩の多用が、作品の緊張感を増幅する。

 さらに、ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)の音楽が、映像にシンクロしていく。
 「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」('08)でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した彼の得意とする音楽表現だ。

341378_100x100_005  「母親の罪悪感に観客がシンクロしてしまう」と、ある精神科医は評している。
 「もし自分が子供を愛することが出来なかったら」と観客を追い詰めていくところに、エモーショナル・サスペンスの醍醐味を見る。

341378_100x100_008  邦題「少年は残酷な弓を射る」は、結末を暗示してしまい興を削ぐ。

 原題は「WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN」。
 ケヴィンは息子の名前。「夫婦はもっと息子について話し合うべきだ」と単純に解釈するより、「観客はこの『残酷な少年』について語り合わねばならない」と、原作者・監督からのメッセージを受け止めるべきだろう。

 アメリカのある田舎で起こった「高校生銃乱射事件」('99)や、フィンランドの「校内乱射事件」('08)を思い出す。  

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July 13, 2012

2130.世界報道写真展

207_032_640_2  先月から、恵比寿の東京都写真美術館で開催されている「世界報道写真展」、今年で55回目を迎える。
 今回は特に、「去年の春」を追い続けた報道カメラマンの鋭い眼が注目される。

207_026_640  その一つ、ポスター〈右上〉の写真、世界報道写真大賞に選ばれたスペインのサムエル・アランダの作品は、「ニューヨークタイムズ」に掲載されたもの。

 去年の春から中東で広がった「アラブの春」。
 カメラマンは密かにイエメンに入り、サハレ大統領に抗議するデモ隊と政府軍の弾圧の実態を、3ヶ月にわたって取材した。
 そして秋、彼は銃撃から逃れてモスクに入り、混乱の中で負傷した息子を介抱する母親に出会った。
 それは「イエスの亡骸を抱く聖母マリア」だった。

 冷蔵室に横たわるリビアのカダフィ大佐遺体も、写される。その写真を撮ったフランスのレミ・オシュリクは、4ヵ月後次の取材先シリアで政府軍の砲撃に散った。28歳だった。

 もう一つの「春」は、「東日本大震災」である。
 世界報道写真コンテストに入賞した約170点の作品のうち、19点(11パネル)がそれである。
 日本人3人を含め、イタリア・アメリカ・スエーデン・フランスのカメラマンの写真が並ぶ。

207_034_640  左下の写真、震災発生後の13日、名取市の被災地の道路に座り込んでいた女性は涙を流していた。

 「一般ニュースの部」で3位となったこの写真は、朝日新聞の恒成利幸が撮ったもの。
 被災地の悲しみを伝える象徴的な写真として、これまでも紙面や展示会で目にした。

 またAFP通信の千葉康由が東松島市で撮った「がれきの中から娘の卒業写真を見つけた母親」は、「ニュースの中の人々」の部で1位となった。

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 中央の写真は、「スポットニュース」の部1位のロシアのユーリー・コズレイフの写真。
 「リビア海岸部の製油都市ラスラヌフで戦う反政府派」の写真は、「ノール・イメージズ」から「タイム誌」に転載された。

 その右は、スエーデンのニクラス・ハマストレームの撮った「無差別大量殺人の舞台となったノルウエー・ウトヤ島」。遺体の写真も含めた組写真で、「スポットニュース」の部2位。

 あれから1年、数多くの写真が伝える「アラブの春」「東日本大震災」「福島原発事故」は、まだまだ終わってはいない。
 世界中の報道カメラマンたちは、今も体を張って現場を這いずり回っている。

 124の国と地域、5247人の報道カメラマンたちが撮った10万1254点の写真。2011年の歴史を刻んだ。

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 「世界報道写真展」は、来月5日まで恵比寿・東京都写真美術館で。観覧料は一般700円。
 展覧会はこの後、大阪・京都・草津・別府と巡回する。 

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July 11, 2012

2129.ハングリー・ラビット

27_640 邦題の「ハングリー・ラビット」がいい。ミステリアスなタイトルだ。
 原題は「SEEKING JUSTICE」、これはストレートすぎる。

 「空腹のウサギは跳ぶ」、この暗号がキーワードとなってサスペンスを持続させる。映画の最後の最後のセリフもまた、そうなのだ。

342071_100x100_003 ニコラス・ケイジ演ずる高校教師が主人公。
 愛する妻(ジャニュアリー・ジョーンズ)をレイプした男への復讐、その「代理殺人」の罠に嵌ってしまった時、彼はどんなアクションをとったのか・・・・。
 殺人を請け負った闇の組織は、「空腹のウサギは跳ぶ」と呟く。

342071_100x100_002 日本の時代劇にも、藤枝梅安など「殺し」を引き受ける仕掛人や仕置人が主人公の作品がある。
 しかしニューオリンズを舞台にしたこのアメリカ映画は、「悪をたたっ切る」 という単純なものではない。
 「街の浄化」「正義」の名のもとに行われる、残酷な「殺人」を告発しようとするものだ。

342071_100x100_004 闇の組織を仕切るボスに扮するガイ・ピアース(「ハートロッカー」'08)が、クールな演技を見せる。
 追い詰められていくニコラス・ケイジと対照的である。

 そのニコラス・ケイジ、これがハリウッドデビュー30年を記念する作品だそうだ。
 といっても大作ではない。むしろB級作品のジャンルに入るだろう。
 ただ元妻や前妻への慰謝料など、大借金を抱える彼はどんなオファーにも応じざるを得ない。
 この映画が製作された昨年だけでも、「ブレイクアウト」「デビルクエスト」と立て続け出演している。

342071_100x100_005  監督のロジャー・ドナルドンは、この手の作品を得意とする大ベテランである。
 ニュージランド出身の彼は、アカデミー賞にノミネイトされた「13デイズ」('00)で知られているが、「世界最速のインディアン」('05)や「バンクジョブ」('08)など硬派のサスペンスを撮ってきた。

 小型ビデヲカメラを多数多用しての臨場感ある映像、映画カメラマン出身ならではのタッチが楽しめた。

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July 09, 2012

2128.スノーホワイト

26_012_640  「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは誰?」
 誰でも知ってる「白雪姫」(スノーホワイト)は、ドイツ・ヘッセン地方に伝わる民話。
 グリム三兄弟が「グリム童話」の1編としてに編纂して、世界中で読まれるようになった。

341293_100x100_004  作品の映画化は、1937年の「スノーホワイトと7人の小人」が初めて。ディズニーが、初の長編カラーアニメーションとして製作した。
 10数年前にもダーク・ファンタジーのテレビ映画も作られたが、本格的な実写作品は今回が初めての様だ。

 ただ大胆なアレンジが加えられている。
 「邪悪な継母」「魔法の鏡」「7人の森の小人」「毒リンゴ」と童話のエッセンスは取り込んでいるが、今回はサバイバル術を身につけた「闘うヒロイン」として白雪姫は登場する。
 つまりファンタジーというより、アクション・アドベンチャー映画になったのだ。

341293_100x100_001  「雪のように白い肌」「血のような赤い唇」「黒檀のような黒髪」、白雪姫のセールスポイントは変わらない。
 そのヒロイン役は、「トワイライト・サーガ」シリーズのクリステン・スチュワートが抜擢された。

341293_100x100_007  そして「永遠の悪女」である継母の女王に、オスカー女優(「モンスター」'03)のシャーリーズ・セロンを配した。

 女王と白雪姫の闘いがクライマックスとなるのだが、美貌から老残まで変化するシャーリーズが見ものである。
 美を姫と争う悪女というより、幾つになっても美しくありたいという「女心」と「孤独さ」が、彼女から滲み出る。

341293_100x100_005341293_100x100_006 白雪姫を支える狩人は、オーストラリア出身のクリス・ヘムズワース(「マイティー・ソー」'11)。
 弓の名手の王子にサム・クラフリン(「パイレーツ・オブ・カビリアン」'11)。
 二人の登場は「グリム童話」通りだが、それぞれの姫への想いにはオリジナリティーがある。

341293_100x100_009  斬新な映像と予想外の新展開をを注ぎ込んだと、初の長編映画を監督したルパート・サンダースは胸を張る。
 「トヨタ」や「ナイキ」のコマーシャル作品など、CM業界のトップクラスのディレクターとして知られる彼だけに、その自信は頷ける。

341293_100x100_002  しかし「白雪姫」「ロビンフッド」「ロード・オブ・ザ・ロング」「もののけ姫」をごった煮した作品、と評する人も多い。

 「グリム童話誕生200周年」と「ユニバーサル映画100周年」を記念した作品、さて興行成績の方はどうなるか。

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July 07, 2012

2127.大英博物館・古代エジプト展

207_640 「人は死後に冥界を旅し、神の審判を経て楽園で再生する」
 古代エジプト人はこう信じ、「死者の書」をガイドブックに、ミイラとなって未来へ旅立つ。

207_008_640  「死者の書」は、美しい文字や挿絵で彩られたパピルスの巻物で、困難な冥界の旅を克服するための呪文が記されている。

 現存する数多くの「死者の書」の中で、全長37m世界最長の書が「グリーンフィールド・パピルス」。
 今回初めて、大英博物館から日本にやってきた。

 今日から六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されている「大英博物館・古代エジプト展」は、世界最長の「死者の書」を中心にミイラや棺、護符・装身具など180点で構成されている。

207_018_640  今回は、開館を前にしたガイドツアーに招かれたので、およそ1時間を古代エジプト壁画研究家の村治笙子さんの解説で、ゆっくり鑑賞した。

 「グリーンフィールド・パピルス」は、BC10世紀頃にテーベを中心に上エジプトを支配したアメン大司祭パネジェム二世の娘、ネシタネベトイシェルウのために作られた「死者の書」である。
 1910年に大英博物館に寄付した人物の名から、こう呼ばれている。

207_022_640  このパピルスは、これまで発掘された巻物の中では他に類を見ない長編として知られるが、もうひとつ「天と地のはじまり」を表した挿絵が描かれている事で話題となった。

 「大気の神シュウ」と「湿気の女神テフヌウト」の間に生まれたのが、「大地の神ゲブ」と「天の女神ヌウト」。
 右上のパピルス、シュウが横たわるゲブの前に立ち、ヌウトを両手で持ち上げて「天と地」を引き離している。
 「天地創造神話」の原典である。

 「死者の書」は、死から再生までの物語でもある。

207_012_640_3207_025_640   まずミイラとなった死者は、幸せな来世を願い冥界の王「オシリス神」(左の像)に礼拝したのち、墓へと運ばれる(右は葬送行列のパピルス)。

 墓の入り口で「口開けの儀式」を受けて旅発つ。
 口を開けることで、難所を通り抜けるための呪文も唱えられるし、供物も食べられる。
 副葬品には、このための道具「手斧」や葬送のための船が納められている。

207_009_640 冥界の旅を邪魔するのは、ヘビやワニなどの険な動物。呪文を唱えると逃げていく(左のパピルス)。

207_021_640  ようやくオシリス神の審判を受け、楽園「イアルの野」へのパスポートを受ける。

 死者の心臓が、「真実の神マアト」羽根と天秤にかけられ、生前の行いが正しかった事を証明する挿絵が、右 のパピルスである。

P3_640  古代エジプトには、こうした「葬送文書」が各種あった。
 左は動物の風刺パピルスだが、「洞窟の書」とか「冥界の書」とよばれるものもある。

 これらの呪文は、パピルスだけでなくミイラを収める人形(ひとがた)棺やミイラの覆い布にまで、細かく描かれている。

207_020_640_3  仮の世界たる「現世」よりも幸せな来世を夢見る古代エジプト人の情熱の結晶、それが長大な「死者の書」となって今に伝わる。

 「大英博物館古代エジプト展」は、9月17日まで六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーで。入館料は1500円。
 この後、10月には福岡市美術館で開催。

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July 05, 2012

2126.ファウスト

26_011_640  ドイツの 文豪ヨハン・フォン・ゲーテが生涯をかけて書いた「ファウスト」。
 その原作を「自由に翻訳」して創ったと、映像の魔術師アレクサンドル・ソクーロフのメッセージが、冒頭に映し出される。

341909_100x100_004_2 若い頃読んだ森鴎外の翻訳本も難解で、途中で投げ出したが、映画の方も前半は難解だった。
 観念的なセリフと暗い映像に、途中で席を立つ観客、あちこちから鼾が聞こえ失笑でざわめく。

 ところが主人公であるファウスト博士が、純粋無垢な少女に一目惚れしたあたりから、俄然面白くなり眠気も吹き飛んだ。
 フェルメールの描く「真珠の耳飾りの少女」が、淡い光の中に登場したのである。

341909_100x100_006 ここからが本題である。
 この少女を抱きたいため、高利貸し(悪魔)と契約を結ぶというあの有名なお話しになる。
 「わが魂は、死後メフィスト(高利貸し)に渡す」と。

 あらゆる学問に通じた天才学者が、悪魔と契約して現世の欲望を満たすという、ただの中年の「オッサン」になってしまうのだ。

341909_100x100_007 アレクサンドル・ソクーロフ監督61歳。
 90分ノーカットで撮った「エルミタージュ幻想」('02)や、昭和天皇を描いた「太陽」('05)など、斬新な演出と映像美で知られるロシア出身の監督である。

 これまでも彼の作品は、カンヌ国際映画祭パルムドールなどに度々ノミネイトされてきたが、「ファスト」はヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)を受賞した。
 「ブラック・スワン」の監督ダーレン・アレノフスキーが委員長となった審査会は、全員一致でトップに推した。

341909_100x100_003341909_100x100_001_2  キャストは、初めての顔ぶれだった。
 ファウスト博士は、ベルリンやウイーンの舞台で活躍するドイツ人のヨハネス・ツァイラー。
 悪魔(高利貸し)は、ロシアの演出家でダンサーのアントン・アダシンスキー。
 無垢な少女がロシア生まれだが、ドイツのテレビで評判のイゾルダ・ディシャワクという新進女優である。

341909_100x100_002_2   ファウスト博士は、15世紀のドイツに実在した人物である。占星術・黒魔術・錬金術に通じ、王を助け政治的にも動いたという。
 悪魔と契約したために、最後は魂を奪われ体も四散したと、伝説的に語り継がれている。

 「ファウスト」は、グノーの「オペラ」やマーラやワグナーの「交響曲」、シューマンの「オラトリオ」など、音楽や演劇、人形劇などでも取り上げられているが、映画では1926年の作品が初めてで、今回久しぶりの登場となった。

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July 03, 2012

2125.観世流・能

Image_12205227148  ユネスコ世界無形文化遺産「能楽」、半年振りの鑑賞会である。
 東大観世会出身で今でも「能」を演じている友人から、渋谷の観世能楽堂に招かれた。
 「能」の次の世代を育てるために、毎月開催されている「研究会能組」である。

 最初は、「初番目物(脇能物)」といわれる「氷室」。天下泰平・国家安泰を主題とした神の能である。
 江戸の頃から、「翁」の次に上演されるのは決まって脇能物だった。だから初番目物といわれる。
 因みに今回最後の番組は「俊寛」。こちらは四番目物である。

  氷室とは、冬の氷を夏まえ蓄えておく室である。「日本書紀」にも記録があるように古い時代から存在し、毎年天皇に献上していた貴重かつ神聖なものだった。
 平城京の春日山には氷室神社があるし、能の舞台となった京・丹波の八木町氷所の氷室山では、御所に氷を献上した7月1日を「氷一日」と呼び、祭礼が行われている。

Himuro_2 番組の流れは、御所亀山院に仕える臣下(ワキ)に氷室を守る老人(前シテ)が、氷室のいわれを語り君の徳を讃える。そこで天女が舞を舞うと、氷室明神(後シテ)が現れ氷守護と献上を豪快に舞う、というもの。

 シテ・岡久廣、天女・上田公威、ワキ・森常好。

 90分という長番組のせいか眠ってる観客も多かったが、最前列に座った私は始めての番組だけに、興味深く鑑賞した。

 今月は「氷一日」の月だけに、明日は国立能楽堂、21日には宝生能楽堂でもこの「氷室」が上演される。

 狂言「長光」、仕舞三曲をはさんで「俊寛」。

Knd_shnkn  平家討伐の陰謀が発覚して、薩摩・鬼界ヶ島に配流された三人。
 赦免の知らせが届いたが、俊寛僧都だけは帰れなかったという「平家物語」の一節。
 この有名なお話を「能」にした65分の番組である。

 歌舞伎でも同じタイトルの演目があり、勘三郎や吉右衛門などの当たり芸となっているが、俊寛の描き方が全く異なる。

 歌舞伎の方は俊寛の名も赦免状にあるのだが、三人のひとり丹波少将成常の愛人・海女千鳥を赦免船に乗せるため、俊寛が身を引くというもの。
 俊寛最後の諦観の心境に、観客は涙する。

206_047_640  一方能の舞台は、初めから俊寛の名は赦免状にない。
 清盛によって僧都の地位を得たのに、俊寛には信仰心がなく世俗的な欲望の世界に生きてきた。だから同じ罪でも恩赦はないのだ。
 俊寛は、赦免船が着いたときも子供の様に足を踏み、「是れ乗せて行け、具していけ」と喚き叫ぶ。

 シテ(俊寛)・山階弥右衛門、ツレ(成経)・藤波重彦、ツレ(康頼)・武田尚浩、ワキ(赦免使)・宝生欣哉。

 孤独・絶望とテーマは同じだが、「能」は公家や武士、「歌舞伎」は庶民の愛好した芸能、そこに違いがあるのが面白い。

 次は又、半年後に。   

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July 01, 2012

2124.11.25自決の日

26_009_640 「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」('07)「キャタピラー」('10)につぐ若松孝二監督の「昭和三部作」の終幕は、「11.25自決の日~三島由紀夫と若者たち」 。
 ミシマの「狂気の眼差し」を通して、「時代」を「実録」として描いた。

 作品は、先月末のカンヌ国際映画祭「ある視点」の部に正式招待されて上映されたが、最後まで席を立つものはいなかった。
 ノーベル文学賞候補にもなった三島由紀夫の最後を描いているだけに、三島文学のフアンも多いヨーロッパの人たちには衝撃をもってみられた。

341168_100x100_001  「浅沼事件・山口二矢自死」「国際反戦デー・新宿騒乱」「連合赤軍・ああま山荘事件」「よど号ハイジャック」・・・・と同時代を生きてきたものにとって、あの市ヶ谷総監部のバルコニーは忘れられない。

 42年前の11月末、私は小雪のちらつく北海道・根釧原野で、その事件を知った。取材先の牛舎にあった古い白黒テレビが、三島のアジ演説を映していた。
 なぜかその映像は、原色をもって私の脳に刻まれている。

 そのミシマを、そして事件を、思想的には対極にあったワカマツが敬意をもって映像化した事を、どう捉えていいのか映画が終わるまで戸惑った。

341168_100x100_005_2   企画に協力したというか、若松監督のアドバイザーとして作品に深く関わった鈴木邦男の存在も大きい。

 三島と共に総監室で割腹した森田必勝は、鈴木の早稲田時代の友人である。
 鈴木は三島事件に衝撃を受け、新右翼「一水会」を組織して防衛庁乱入(1973年)事件などを起こしている。

341168_100x100_003 作品が、三島と森田に徹底的に寄り添って描かれているのは、若松+鈴木のコラボによるものだろう。

341168_100x100_006  出演は「若松組」の面々である。
 三島役は「あさま山荘」で坂口弘を演じた井浦新(ARATA)、その妻を「キャタピラー」の寺島しのぶが扮する。

 そして森田必勝を、満島真之助が熱演する。彼は、今旬の女優満島ひかりの弟で、映画初出演である。

341168_100x100_004_3  楯の会の血盟書や若者たちの辞世の句、決起趣意書の文字があまりにも稚拙だった事が、強く印象として残る。
 事実そうだったのか、意図的にそうしたのか、いつか監督が語ってくれるであろう。 

 

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