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March 30, 2013

2267.テレビの履歴書

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 共同通信の編集委員・原真さんから、近著「テレビの履歴書」が送られてきた。

 テレビをはじめとするメディア問題を、文化部記者時代から取材してきた彼が、ニューヨーク特派員時代に書いた「巨大メディアの逆説ー娯楽も報道もつまらなくなっている理由ー」('04・リベルタ出版)に続くメディア論である。

 前作は米マスメディア企業の統合とコンテンツへの影響を検証したものだが、今回の「テレビの履歴書」は「地デジ化とは何だったのか」の副題通り、「テレビはどのようにして生まれ、なぜデジタル化されたのか?そして、これからどうなるのか?」と、それぞれの時代に関わった人々(私を含め)の証言をもとにして、日本のテレビの歴史を素描している。

130326_042_800x600 原さんとは、私が放送事業者側でデジタル化問題を担当していたころからの付き合いで、いわば取材される側と取材する側の関係から始まった仲である。
 
 私は現役を退いてからもう10年になるが、現役の記者である彼とは時々旧交を温めている。

 今回も彼が全国の地方紙に配信した連載記事「テレビの現代史」について、当時の郵政省や国会、放送事業者の動きについてのアドバイス、また資料を提供するなど取材に協力した。

 著書の内容については直接本を読んでいただくとして、全体の構成についてだけ紹介しておこう

 「第1章 夢の開局」は、テレビの誕生から1953年2月1日の放送開始まで。
 「第2章 デジタルへの道」は、アナグロからデジタルへの転換の背景を。
 「第3章 多チャンネルの台頭」は、デジタルBS・CS・CATVの動き。
 「第4章 ネットと競う未来」は、ユーチューブやニコ動などネットトテレビの共存。
 「第5章 歴史の中の地デジ化」で、全体を総括してテレビの役割を論じる。

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  今年は、テレビ放送が開始されてから60年になる。
 一昨年の7月には、東北をのぞいた全県でアナログ放送は終わった。そして昨年3月、国内すべてが地デジ化された。

 東京ではこの5月、電波の発信は東京タワーからスカイツリーに移る。
 20年前、デジタル化をめぐる様々な動きの中で、放送事業者側の担当者として郵政省や国会と対応した日々を思い出しながら、「テレビの履歴書」を紐解いた。

 「テレビの履歴書~地デジ化とは何だったのか」(リベルタ出版) 定価1500円+税

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March 28, 2013

2266.ダイ・ハード ラスト・デイ

303_001_640_3  アカデミー賞とは全く縁のない映画がこれ。
 主演のブルース・ウイルスもアカデミー賞ではなく、ゴールデンラズベリー賞には3回ノミネイトされ「最低主演男優賞」を受賞しているのだ。

  いつも大事件に巻き込まれるツイてない男は、ニューヨーク市警のタフな刑事ジョン・マクレーン。
 ブルース・ウイルス主演のこのシリーズも5作目となり、6年ぶりにスクリーンに戻ってきた。 今回は、マクレーン二世(ジェイ・コートニー)も登場して、連携バトルやド派手なアクションを見せる。

344016_100x100_001  冒頭2分とラスト1分を引いた95分間、全てが装甲車も登場するカーチェイスや銃撃戦、爆破に殴り合いのノンストップ・アクションシーンで埋まる。

 24年前の第1作では一人ひとりの命を最優先にした主人公だったが、いまや猪突猛進する不死身の男だけになってしまった。

344016_100x100_002_2  今回は初めて海外が舞台、CIAの工作員の息子がモスクワで捕まって裁判に。
 身柄引取りにやってきたものの、ロシア・マフィアや政財界・軍が絡む陰謀に巻き込まれ、決死の覚悟でツイてない戦いに挑むというストーリー。
 
 最後の戦いが、チェルノブイリの廃墟ということで、原発の悲劇を茶化したような舞台設定には困惑する。

344016_100x100_005  そんな事もあってか、「ダイハード・マニア」には不評だ。
 シリーズ初期の作品に登場する敵は複雑な背景を持っていたし、彼らの巧妙に張り巡らされたワナに対し、このアナログ刑事が練りに練った計画でそれを打ち破っていく面白さ。
 そんな敵との駆け引きが、今回の作品には見当たらない。

344016_100x100_004  アイルランド出身のジョン・ムーア監督(「オーメン」'06)もそれを承知か、刑事も敵方も「親子の問題」に話を移し変えている。

 この手のアクションには理屈は不要だし、ご都合主義でもストレス解消のための映画と思えばいいのかも知れない。

 たた「グッド・デイ」だった原題を、「ラスト・デイ」にしたのは何だったのだろうか。
 ロスでインタビューした日本の記者に、ブルース・ウイルスは「やめることは考えた事ないよ」と答えているが。

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March 26, 2013

2265.草原の椅子

303_011_640  「誰の心のなかにも〈草原〉はあり、そこに座れる〈椅子〉がある」
 芥川賞作家・宮本輝はいう。

  デビュー作「泥の河」('77)で太宰治賞、「蛍川」で芥川賞、「優駿」で吉川英治文学賞を受賞した彼は、阪神・淡路大震災で被災しシルクロード670キロの旅に出た。
 その旅で彼が見つけたのが「草原の椅子」であり、人と人との「優しいつながり」だった。

 中高年の女性向けに「八日目の蝉」('11)を撮った成島出監督が、今度は中高年の男性向けとして宮本輝の小説(映画と同名)にトライした。
 時を東日本大震災後の日本に置き、人間らしく生きる道標を「大人の童話」として描いたのだ。

20121110008fl00008viewrsz150x 主な登場人物は4人。

 カメラメーカーに勤めるエリート・サラリーマン(佐藤浩市)は50才、バツ一で大学生の娘と暮らす。中間管理職としての悩みを抱えながら、これまでの生き方に疑問を持ち始める。

 佐藤の取引相手のカメラ販売店社長(西村雅彦)は、真っ正直に生きてきたつもりだったが浮気相手に脅かされるなど、このところ上手くいかない。会社の先行きにも不安を感じ始めた。

 佐藤とひょんな事で知り合った陶芸店の主人(吉瀬美智子)もバツ一、子どもを成せないと婚家を追い出された。生きていく意味を見出せず、気持ちを酒に紛らせる。

 生みの母親に虐待され、義理の父親に捨てられた4歳の少年(貞光泰風)は佐藤の家に転がり込む羽目に。彼はそのトラウマで、言葉も満足に出せない。

 現代日本の社会・家族状況をシンボリックに体現する男女4人が、世界最後の桃源郷・パキスタンのブンザへ旅する。
 4人がそこで出会った人、目に焼き付いた自然の偉大さ、その旅によって生まれた新たな日々への出発が語られていく。

303_013_640  作品を盛り上げたのは、ちょっと顔を見せた脇役たちの存在感でもある。
 子供を虐待し育児放棄する母親役の小池栄子の怪演振り。
 エゴまるだしのいい加減な義父役・中村靖、佐藤の元妻・若村麻由美、そして西村の田舎に住む父親・井川比佐志。

 政情不安定なパキスタンロケで、しっかりとしたカメラワークを見せたのは長沼六男。
 「たそがれ清兵衛」('02)「武士の一分」('04)で日本アカデミー賞を受賞した、ベテランカメラマンである。 

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March 24, 2013

2264.江戸博20周年

130321_029_640130321_014_640  両国にある江戸東京博物館が、この28日で20周年を迎える。
 博物館では、それを記念してさまざまなイベントを開催している。
 昨日は花見を兼ねて半日、両国で過ごした。

130321_031_640_4    まずは1階展示室で開催されているのが、特別展「八重の桜」。
 会津の教えを胸に幕末を生き抜いた新島八重の生涯が、ゆかりの品々200点で綴られる。

 八重が子どものころ、藩校で学んだ「日新館童子訓」。戊辰戦争で鶴ヶ城に籠城して新政府軍と闘った時のスペンサー銃。

130321_033_640  鳥羽伏見の戦いで、薩摩に捕らえられたが、無事生き残った兄・覚馬の「建白」状。兄を頼って京都に行き、覚馬の友人・新島襄と結婚した八重の「回顧談」。

 山本覚馬遺言状草稿。新島八重英文書簡草稿。新島から八重宛の書簡。新島襄遺言状。赤十字篤志看護婦としての従軍記章。茶道許状と茶号授与書(宗竹)。
 新島八重筆和歌懐紙「もののふの」、等々。

 合せて、京都守護職時代の会津藩主・松平容保関係文書から戊辰戦争関連まで、八重と会津が語られる。

130321_034_640 5階の常設展示室では、20周年記念スペシャル展示「全部見せます・北斎冨嶽三十六景」。
 館蔵コレクションの中でも特に人気の、「冨嶽三十六景・全46点」が一堂に並べられている。

Image_640Image1_640 ポスターにある「凱風快晴」はもちろん、「深川万年橋下」「東都浅草本願寺」など、1831~34(天保2~5)の間に、葛飾北斎が描いた富士が見える江戸・関東の風景である。

 「北斎ブルー」についての解説や、ドビッシーやゴッホとの関連文書も展示されているが、先日のブログ「あっぱれ北斎!光の王国」(2260号)で紹介したので省略する。

130321_032_640130321_006_640   記念イベントは他に「特別公開・旧江戸城写真ガラス原板」や「花江戸四季色彩」(歌舞伎舞踊)の実演、名作落語を楽しむ「江戸の人情・笑いと涙」、大神楽、新内流し、昭和の名作映画復活上演など盛りだくさん。
 博物館周辺の桜も満開なので、いろいろと楽しめる。

 江戸東京博物館20周年記念の催しは、31日まで。「八重の桜」展は、5月6日まで開催される。

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March 22, 2013

2263.クラウド アトラス

303_014_640  「マトリックス・シリーズ」のラナ&アンディ・ウオシャウスキー姉弟、「パフューム ある人殺しの物語」('06)のトム・ティクヴァ。
 アメリカ・ドイツの奇才監督3人が練りに練った脚本を書き、楽しみながら撮った172分のエンタテインメント大作である。

343488_100x100_001_2  作品は、「ヒューマン」「ラブストーリー」「サスペンス」「コメディ」「SF」「アクション」とジャンルの異なる6っの物語で構成される。

 といってもオムニバスではない。
 19世紀から24世紀にわたり、時と舞台も異なるドラマがモザイク状に絡み合って同時進行で進む。

 出演者も多彩だ。その上ひとり6役・5役と、姿と役割を変えて登場する。

343488_100x100_002  主役は一応、オスカー俳優のトム・ハンクス(「フォレスト・ガンプ/一期一会」'94)とハル・ベリー(「チュコレート」'01)なのだが、物語によっては脇役となる。

 さらにオスカー俳優ではジム・ブロードベント(「アイリス」'01)やスーザン・サランドン(「デッドマン・ウオーキング」'95)、ヴェネチア国際映画祭男優賞のヒュー・グラント(「モーリス」'87)も。

343488_100x100_004_2   アメリカ・ヨーロッパの実力派スターに加えて、日本映画「空気人形」で知られる韓国のペ・ドウナが6役、中国のジョウ・シュン(「女帝」'06)も3役、まさに人種・性別を超えて変身していくところが面白い。

 6つの物語を簡単に紹介しておこう。

343488_100x100_011_3  奴隷解放に目覚める若き弁護士の物語は、1849年の南太平洋の大海原が舞台。
 主役は、「ブーリン家の姉妹」('08)のジム・スタージェス。彼も他の物語全てにチョイ役登場する。

343488_100x100_007_2  弁護士の航海日誌にインスパイアされて、「クラウドどアトラス6重奏」を作曲した若き音楽家の数奇な運命は、1936年のスコットランドが舞台。
 主役はベン・ウイショー、ティクヴァ監督の「パフューム」に出演したイギリスの若手俳優、ほか4役をこなす。

343488_100x100_009  原子力発電の陰謀にせまるジャーナリストの正義感は、1973年のサンフランシスコで語られる。
 女性ジャーナリストの主役がハル・ベリーで、内部告発して殺される研究者がトム・ハンクスなのだ。

343488_100x100_008  大もうけした出版編集者が、作家の弟に脅迫されるドタバタ・コメディは、2012年のイングランドが舞台。
 主役は、ジム・ブロードベント。

343488_100x100_006  クーロン人間の少女が恋に目覚めて革命家となるのは、2144年のネオ・ソウル。
 このSF映画の主役がペ・ドウナで、恋の相手はジム・スタージェス。

 そして超未来の2321年、地球が崩壊して106度目の冬を迎えたハワイでは、ヤギ使いのトム・ハンクスが別世界からやってきたハル・ベリーの助けを借りて人食い人種と闘う。

343488_100x100_010 絵画のような太平洋諸島の海岸から、古きよき時代のイギリスの街並み、超高層ビルが林立する韓国など、その壮大なスケールとビジュアルに目を見張る。

 「過去の人間の行為が、未来の人間の運命を決める」
 「輪廻転生」という東洋的な思想を色濃く配しながら、時空を超えた愛の物語を3人の奇才たちが紡ぐ。

 エンドロールで種明かされる俳優たちの変身もまた、その象徴なのだろう。
 久しぶりに、繰り返してみた映画だった。

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March 20, 2013

2262.春・浜離宮

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 左は昨年の「菜の花」、右は今年の写真。

 毎年、春分の日の前日に浜離宮を散策して、春の花々を撮る。
 その年の、「季節」の動きがよく解るからだ。
 公園の係員によると、今年は昨年に比べ20日間ほど春の歩みが早いそうだ。

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 そういえば、他の花々も元気がいい。
 「ソメイヨシノ」「カンヒザクラ」「レンギョウ」「ユキヤナギ」と色鮮やかな花々が、高層ビルをバックに競う。

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 昨日は、新しく手に入れたカメラの撮影テスト。
 これまでの「コンパクトデジカメ」(ペンタックスRZ10)と異なり、「ミラーレス一眼カメラ」(ペンタックスQ10)は多様な機能と性能を有しているが、使いこなすのが難しい。

 下の4枚は、「汐入の池」を撮った「デジタルフイルター」のテスト。

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March 19, 2013

2261.インターミッション

130308_004_640   三原橋の地下にある名画劇場「銀座シネパトス」、月に3~4回はここに通う。
  地下鉄の走行音を聞きながら、アート系やインディペンデント系映画を楽しむ。
 この劇場が、今月末で閉鎖されるという。耐震性がないというのがその理由らしい。
51pe5suhzyl_sl160__640 シネパトス最後の封切映画が「インターミッション」、ここ三原橋地下街と映画館の客席を舞台に撮った異色のブラックコメディである。
 館の名画編成などを手伝ってきた映画評論家・樋口尚文が脚本を書いて初監督した。
130308_013_640_2  作品は、映画館の休憩時間(インターミッション)に展開される14の物語。
 映画館支配人・秋吉久美子と夫のフリーター・染谷将太、モギリの佐伯日菜子、映写技師の奥野瑛太が案内役となって、コメディ、ラブ、ホラーの数々が展開していく。
130308_023_640130308_022_640   出演者が凄い。名優・ベテラン・ロマンポルノ女優までおよそ30人。
 顔と名前が一致する役者だけでも、香川京子・小山明子・水野久美・竹中直人・佐野史郎・中川安奈・ひし美ゆり子。畑中葉子・夏樹陽子・大瀬康一・古谷敏・・・・。

 そして音楽が、"画家"でもあり映画音楽では第一人者の菅野祐悟。映画封切にあわせて、彼の秘蔵の作品は近くのギャラリーで展示される。
130308_029_640_2   終戦直後まで、銀座と木挽町の間を流れていたのが三十間堀川。
 1949年にはこの川も東京大空襲の瓦礫で埋められ、道路と商店街になった。
130308_003_640   晴海通りに沿ってその掘川に架かっていた橋が三原橋、埋立てと同時にそこだけが地下街となった。
 そして1952年、地下街の一角に「テアトルニュース」が開館する。やがて向い側に「銀座東映1・2」も開館、地下は映画街となる。
344564_100x100_004_640  3っの映画館が合併して「銀座シネパトス1・2・3」となったのは、1988年のこと。
 他の直営館では見られない個性的な作品や反権力的な作品など、異色の番組編成が評判となってコアな映画フアンを惹きつけてきた。
 そして今月末、「インターミッション」に入る。 
  

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March 17, 2013

2260.あっぱれ北斎!光の王国展

303_010_640   銀座ソトコトロハス館の2フロワーにオープンした「フェルメール・センター銀座」。
  昨年は、世界中に散らばっているフェルメールの作品37点を、デジタル修復技術で「リ・クリエイト」して展示し話題をよんだ。
 そして今回は、「東洋のダ・ヴィンチ」と云われる北斎である。

Image_640   葛飾北斎(1760~1849)は、江戸後期の化成文化を代表する絵師。
 通称「赤富士」と呼ばれる右の「凱風快晴」などでお馴染みだが、肉筆浮世絵から黄表紙・洒落本の挿絵など、生涯3万点を超える作品を発表している。

03448x_640  彼の作品は海外へ渡って、マネやドガ、ゴッホ、ルノワール、ゴーギャンなどフランス印象派の画家たちに大きな影響を与えたというが、左の「神奈川沖浪裏」などは音楽家ドビュッシーが交響曲「海」を作曲するきっかけとなった。

 そして彼は、1999年に「ライフ」が選んだ「この1000年で最も重要な功績を残した100人」に、日本人としてはただ一人紹介されている。

Image_640_2  今回の「光の王国展」に展示されている作品は、「富嶽三十六景」の46点と「諸国瀧廻り」の8点。
 大英博物館など世界有数の美術館が所蔵している版画原画像をもとに、最新のデジタル印刷技術で拡大版と原寸版に「リ・クリエイト」して、印象派の画家たちを魅惑した180年前の色調を再現している。

206_015_640303_012_640  「リ・クリエイト」の技術には目を見張る。
 右上の「武陽佃島」もそうだが、左の「江戸日本橋」など、現在残されている版画(左)に比べ「リ・クリエイト」版(右)は鮮やかだ。
 まさに「フェルメール・ブルー」で描きあげた瞬間の再現である。

 会場では、北斎の娘「お栄」に扮した宮沢りえと「北斎」の小林薫による「音声ガイド」も借用でき、江戸末期の粋な世界が楽しめる。

 「あっぱれ北斎! 光の王国展」は、フェルメール・センター銀座で31日まで。入館料は1000円。 

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March 15, 2013

2259.愛、アムール

303_010_640 冷徹な世界観で見るものを圧倒するオーストリアの巨匠、ミヒャエル・ハネケ。
 「白いリボン」('09)に続いて、カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した彼の監督作品「愛、アムール」は、今年のアカデミー賞に主演女優賞や作品賞、監督賞など5部門にノミネイトされ、「外国語映画賞」を受賞した。

 「老いと死と愛」をテーマに、一組の夫婦の「人生の旅の終わり」を丁寧に描くこの作品は、私たちの胸に深く深く突き刺さる。

344164_100x100_003 「最後まで完璧な女でありたい」と、麻痺の身体を抱えながらも病院や施設での介護を拒否する妻。
 「人間の尊厳と愛妻の願いを最後まで叶えさせよう」と、自宅での老老介護をまっとうする夫。

 ハネケ監督は老夫婦二人の日々を、安直なヒューマニズムやエモーションを排し、徹底したリアリズムで描いていく。

344164_100x100_005  「愛、アムール」はそのタイトル通り、老老介護の苦悩と悲劇を描くのではなく、愛し愛され、ともに生き、ともに逝った物語なのだ。

 老夫婦をフランスの名優が、リアルに演ずる。

20121031007fl00007viewrsz150x  妻は、「ヒロシマ・モナムール」('59)のヒロインとして日本でも知られるエマニュエル・リヴァ86歳。
 この作品で、アカデミー賞主演女優賞に史上最高齢でノミネイトされた。

344164_100x100_007  夫は、ジャン=ルイ・トランティニヤン83歳。
 名曲とともに記憶に残る「男と女」('66)の、あの俳優である。
 彼をイメージして、この作品の脚本が書かれただけに、トランティニヤンの表現力は胸に迫る。

344164_100x100_006  夫妻の一人娘の役が、ハネケ監督作品「ピアニスト」('01)でカンヌ国際映画祭女優賞受賞のイザベル・ユペール。
 夫妻の愛弟子であるピアニストを、ヨーロッパで活躍する現職のピアニストのアレクサンドル・タローが実名で登場する。

Image_3  「愛、アムール」で熱演したエマニュエル・リヴァには、深い思い入れがある。

 54年前、彼女が主演したアラン・レネ監督の「ヒロシマ、モナムール(二十四時間の情事)」の広島ロケを、私は助監督補佐として手伝った。
 当時大学寮の寮長の任にあり、主要なシーンのひとつとなった「学生デモ」のエキストラ動員を頼まれたのが、きっかけだった。
 およそ一ヶ月間、市当局や被爆関係者との折衝ほか、ヒロインの彼女やフランス側スタッフのガイド役を務めた。

Image_4  5年前に広島と東京で、エマニュエル・リヴァ写真展が開かれた。あの時広島で、撮影の合間に個人的に撮った写真の展覧会である。
 写真は、ヒロシマの風景、そこに住む人々、子どもたち、ロケのシーンやスタッフたちの姿が写し出されている。
 その中に、大学生だった私も紛れ込んでいる。

 洒落た老婦人となったリヴァとの半世紀ぶりの再会だったが、岡田英次をメロメロにした若き頃の美貌の面影は、しっかりと残っていた。
 あの時は一回り年上だった彼女、ただ肩に手を置かれただけで「ときめいた」事を思い出す。

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March 13, 2013

2258.ジャンゴ 繋がれざる者

303_005_640_2   今年のアカデミー賞受賞作品シリーズ、「アルゴ」「世界にひとつのプレイブック」に続いて、助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)と脚本賞(クエンティン・タランティーノ)を受賞した「ジャンゴ 繋がれざる者」。

303_006_640  南北戦争前夜のアメリカ南部を舞台に、元黒人奴隷ジャンゴと賞金稼ぎの元歯科医のコンビが、ジャンゴの妻を奪い返すお話。

 この解り易いストーリーでもって、165分間という長時間を最後まで飽きさせずに見せるのだから凄い。

 監督タランティーノは、前作「イングロリアス・バスターズ」でナチスの戦争犯罪を痛烈に批判し、ナチスの軍人を皆殺しにした。
 今回はアメリカの恥部、黒人奴隷制度を徹底的に批判して、南部の農場主や白人カーボウイたちを皆殺しにする。
 
342722_100x100_001_1  冒頭からあの「続・荒野の用心棒」(原題「ジャンゴ」'66)のテーマミュージックが流れる。
 そしてタイトルは、真っ赤な大文字のレタリング。

 マカロニウエスタンの異才、セルジオ・コルブッチ監督へのオマージュを装いながら、タランティーノはアメリカの暗い過去を抉り出したのだ。
342722_100x100_004 342722_100x100_008 過激なエンターテインメント映画に仕立てるため、出演者は彼の作品の常連を中心に、大物を並べる。
 まずヒーロー・ジャンゴは、オスカー俳優ジェイミー・フォックス(「RAY」'04で主演男優賞)。
 コンビの歯科医は、前作「イングロリアス・バスターズ」で冷酷なナチスの大佐を演じ助演男優賞受賞のクリスト・ヴァルツ。彼は今回で、2度目のオスカーとなる。
342722_02_06_03 342722_02_03_03  奴隷を虐げる残酷な農場主になったのが、レオナルド・ディカブリオ(「ブラック・ダイヤモンド」'06など3回アカデミー賞ノミネイト)。
 初めての敵役を快演する。
 さらに彼の忠実な部下、奴隷頭がサミュエル・L・ジャクソン
 彼はタランティーノ監督「パルプ・フィクション」('94)に出演してアカデミー賞にノミネイト、前作「イングロリアス・バスターズ」ではナレーションを務めた。
342722_02_05_03_2  そしてヒロインは、ディカブリオの農場で奴隷として酷使されるジャンゴの妻ケリー・ワシントン(「愛する人」'09)である。
 5人の主要人物ののなかで、クリストフ・ヴァルツはもちろんだが、サミュエル・ジャクソンのの存在感が凄い。
 幼年時代の農場主を育てた黒人は、白人以上の差別主義者だった事を、クールに見せる。
342722_100x100_006  半世紀前のマカロニウエスタンは、白人のアウトローたちの戦いだった。
 棺おけを引きずるジャンゴも白人のフランコ・ネロ、先住民虐殺や奴隷制度批判など社会的視点はなかった。

 タランティーノは「150年前のどん底の社会の真ん中に、21世紀の観客を叩き込みたい」という。
 だから「UNCHAINED(繋がれざる者)」と副題をつけた。
 農場主の豪邸のバーで、ジェイミー・フォックスとフランコ・ネロの新旧ジャンゴが並んで酒を飲むワンカット。
 タランティーノは、観客へのサービスも忘れない。

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March 11, 2013

2257.日中水墨画合同展

130310_008_640130310_029_640  恒例の日本・中国水墨画合同展、公募30回を記念する展覧会が上野・東京都美術館で開催されている。

 日中共通の文化である水墨画の交流によって、相互理解と平和を希求する催しである。

 会場には日本在住の中国人作家12人と中国から参加した9人、日本の招待作家13人の作品をふくむ438点が展示されていた。

130310_024_640130310_023_640 右の作品は、中学時代の親友・神園睦峰の作品「釈迦堂切り通し」。
 これまでも努力賞や佳作を受賞してきたが、今回は「現代水墨画賞」という大賞を受賞した。
 彼から届いた葉書には「そろそろ水墨画も卒業しようかな・・・」とあったが、まだまだ筆のタッチも元気。
 来年も頑張って欲しい。

130310_015_640130310_017_640  左は同じ故郷の大先輩・橋口加寿さんの作品「月の精」。
 今年84歳の橋口さんは、ますます華麗な作品を描きあげている。
 毎回大賞を受賞してきた彼女の作品、今年は「中国大使館賞」である。

 会場を回ると、鹿児島在住の作家の作品が目に付く。
 事務局の資料によると、公募入選作品404点のうち45点と一割を超える。
 総務大臣賞や可成賞など特別賞を受賞している作家も多い。
 きっと故郷では、良き指導者に恵まれているのだろう。

 左から中釜幹敬「生きる」(無審査)、大村笑恵「道標」(無審査)、宮地梅香「神話の故郷」(可成賞)、竹迫文味「歓び」(特選)。郷里の作家たちの作品である。

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「第30回 日中水墨画合同展」は、今月17日まで上野・東京都美術館で。入場無料。      

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March 09, 2013

2256.世界にひとつのプレイブック

303_640  「アルゴ」に続いて、こちらも作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞など、今年のアカデミー賞全演技部門にノミネイトされ話題を呼んだ作品。
 そしてヒロインを演じたジェニファー・ローレンスが、見事オスカーを手にした。

344429_100x100_008  ジェニファーはまだ22歳という若い女優、「ウインターズ・ボーン」('10)でも演技が光りアカデミー賞にノミネイトされたが、前作の「ハンガー・ゲーム」('12)も世界中で大ヒットして「全米一の興行収入を稼ぐ女優」と呼ばれるようになった。

 今回の役は、夫を交通事故で亡くしその喪失感で精神のバランスを失った若妻。
 その彼女が寂しさからアタックしたのが、妻の浮気現場に出くわしキレてしまい躁鬱症になった男。
 主演男優賞にノミネイトされた「世界一セクシーな男」ブラッドリー・クーパー(「ハングオーバー!」シリーズ)が演ずる。

344429_100x100_006  イカれたふたりを囲む人たちも、少々イカれている。

 アメフト狂で「賭け依存症」の父親がロバート・デ・ニーロ、息子に甘い母親がジャッキー・ウイーヴァー。
 デ・ニーロは、今回21年ぶりのアカデミー賞ノミネイトされた名優。
 ウイーヴァーは、オーストラリア映画「アニマル・キングダム」('10)でゴッドマザーを演じ、今回が二度目のノミネイトというベテラン女優である。

 そしてもうひとり、クリス・タッカー(「ラッシュアワー」シリーズ)が躁鬱男の病友!、マシンガントークはお馴染みだ。

344429_100x100_001  登場人物は皆どこか「不完全」な人間たち、そしてお話もシリアスに展開していくが、なぜかユーモラスでニヤリとさせる。
 そこが、脚本・監督デビッド・O・ラッセルの得意とするところである。

 彼は、アカデミー賞6部門にノミネイトされた前作「ザ・ファイター」('10)でも、一癖も二癖もある家族を描きながら狂気をユーモアに包み込んだ。
 自らも躁鬱症の息子を持つだけに、心を病む人たちへの視線は温かい。

344429_100x100_005_2  原題は「SILVER LIININGS PLAYBOOK」 。
 シルバー・ライニングとは、「すべての雲の裏は(日光を受けて)銀色に光っている」という諺。
 つまり、どんな不幸にも何かよい所があるという意味。
 プレイブックとは、直訳すれば脚本だがアメフトの「戦術本」の意味もある。

 アメリカの観客はすぐ理解出来るタイトルなのだが、日本ではちょっと。
 配給会社も工夫したようだが、ますます意味不明の「邦題」になってしまった。

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March 07, 2013

2255.アルゴ

343336_02_01_03  「1980年、カナダの映画製作プロダクション『スタジオ6』は、超大作アクション・アドベンチャー映画『宇宙戦争・アルゴ』の製作を発表した。
 しかしその作品は、30年以上たった今もまだ完成していない。出演者たちの台本読み合わせやロケハンも終わったのに。」

 今年のアカデミー賞7部門にノミネイトされ、作品賞・脚色賞・編集賞を受賞した「アルゴ」。
 日本では昨年秋に公開された作品であるが、オスカー受賞を記念して、再び公開された。

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 冒頭に紹介したように、これは映画製作と偽ってCIAが敢行した「テヘラン・アメリカ大使館人質救出作戦」を、フィクションとして描いたものである。
 事実を丹念に調べて脚色、実在のCIA工作員を主人公に、イラン・アメリカそしてCIAの動きを同時進行で追っていったリアルタイムのサスペンスである。

343336_100x100_001  ホメイニ体制となったイランで、アメリカに逃げたシャーの引渡しを要求してアメリカ大使館を占拠、館員を人質にしたのが後の革命防衛隊となる過激派。
 1979年の11月に起きた衝撃的事件だった。

343336_100x100_005  その時、6人の館員が大使館を脱出してカナダ大使の公邸に隠れた。
 彼らを国外に脱出させようとCIAがとった策が、ハリウッドをも巻き込んだ「偽映画製作作戦」だった。
 その救出の事実は、その後の国際関係もあって秘匿されてきたが、クリントン大統領時代にようやく明らかにされた。

343336_100x100_004  前代未聞とも云われる作戦の全貌を映画化したのは、ジョージ・クルーニーとベン・アフレック。
 友人のマット・デイモンと共同で脚本を書いた「グッド・ウイル・ハンティング」('97)でアカデミー賞を受賞したアフレックは、「ザ・タウン」('10)に続く監督・主演作品で作品賞を受賞したのだ。

343336_100x100_003 アメリカ側の登場人物が実在しているので、人質6人はそっくりさんのTV俳優を起用しているが、キーマンの大物プロデューサーと特殊メイクの第一人者にはアラン・アーキン(「リトル・ミス・サンシャイン」'06でオスカー受賞)とジョン・グッドマン(「人生の特等席」'12)を配した。
 アーキンは、この「アルゴ」でも助演男優賞にノミネイトされている。

343336_100x100_002  CIAの活躍を描いているだけに「アメリカ万歳」のプロパガンダの要素はあるが、「実録スパイ大作戦」として見ると、スリリングなエンターティンメント映画としての質は高い。

 ただ「愛、アムール」や「レ・ミゼラブル」、「リンカーン」「ゼロ・ダーク・サーティ」など話題作に伍して、トップの賞を受賞した事に異論もなくはない。
 アカデミー賞はアメリカの映画人が投票で選ぶもの、「ハリウッドが協力した」ストーリーの作品だからと、穿った見方もある。

 当時のニュース映像など生かしながら、事件を忠実に再現することでリアリティを持たせたベン・アレックの腕は冴えていた。

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March 05, 2013

2254.春・古都鎌倉

130226_131_640130226_109_640  鎌倉の名刹で満開の紅梅と黄梅、今月の「ひとまくウオーキング」は、春を告げる梅を訪ねて古都の「花寺」を散策した。

130226_059_640  JR鎌倉駅に集まった歌舞伎同好の仲間たち、まずはお馴染みの「宝戒寺」を訪ねる。

  ここは元々鎌倉幕府の執権・北条得宗家の屋敷跡。
 このブログでもたびたび紹介したように、新田義貞に攻められて北条一門が滅亡した後、その霊を弔うため後醍醐天皇が創建した寺である。

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 秋は萩で埋まる宝戒寺だが、春は梅の寺に姿を変える。
 残念ながら、鎌倉随一と言われる枝垂れ梅は、まだ蕾が固かった。

130226_081_640_2130226_065_640_2   時宗の寺「来迎寺」に立ち寄って「荏柄天神社」へ。
 昨年の春のブログでも紹介したが、天神の名の通りここの梅は壮観だ。
 京都・北野天満宮、福岡・大宰府天満宮と並ぶ日本三天神、有名な「古代青軸」など100本を超える梅が植えられている。

 ただ今回は、私たちの前に200人を超える団体客が押し寄せ境内を埋め尽くしていたので、参詣は諦めた。

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 鎌倉一の「花の寺」と呼ばれているのが「瑞泉寺」。
 夢想国師が鎌倉時代末期に創建した臨済宗の寺である。

 鎌倉公方・足利基氏が深く帰依し、公方代々の菩提寺となった。

130226_099_640_2130226_101_640_2130226_134_640  多くの文人に愛された寺としても知られ、境内には吉野秀雄や久保田万太郎、山崎方代、大宅壮一の碑がある。

 右の吉田松陰留跡碑は、彼が黒船での密航を企てた前日に、叔父である当時の住職を訪ねた由縁を記している。

130226_123_640130226_116_640  瑞泉寺の本堂裏にある「岩庭」。
 夢想国師は、鎌倉石の岩盤を地質に応じて彫刻し、座禅屈や道場、瀧や池を拵えた。
 これは、初期禅宗庭園を代表するものとされ、国の名勝に指定されている。

 今月の「ひとまくウオーキング」、この後は鎌倉宮まで。途中、頼朝が奥州の中尊寺や毛越寺を模して建立した「永福寺跡発掘現場」も見学して終える。
 歩いた距離は凡そ5キロ、ドアtoドアで1万4564歩、3時間強の散策だった。       

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March 03, 2013

2253.ムーンライズ・キングダム

302_009_640_2  「ダージリン急行」('07)でコンビを組んだコッポラ監督の息子ロマンとウエス・アンダーソンが共同で脚本を書き、アンダーソンが監督したのが「ムーンライズ・キングダム」と題する小さな恋の物語。

 「ダージリン急行」もそうだったが、ワンカット・ワンシーンが計算しつくされたカメラワーク、絵本の様な色彩の映像も「映画オタク」アンダーソンの面目躍如たるところだろう。

343239_100x100_002_5   キュートな女の子とオタク少年のナマイキでピュアな初恋、駆け落ちした二人に振り回される大人たちのドタバタが描かれていくのだが、そのコミカルなお話のなかにシュールな毒が塗されるている。

343239_100x100_008_2 主役の子供たち(カーラ・イイワードとジャレッド・ギルマン)は新人だが、二人を取り巻く大人たちは錚々たる顔ぶれなのが面白い。

 舞台となったアメリカ・ニューイングランド沖合いの小島、島でたったひとりのお巡りさんが、あのブルース・ウイルス。
 ただいま公開中の「ダイ・ハード ラスト・デイ」や「ファイヤー ウイズ ファイヤー」とは全く別人のような優しいおじさんを演じていた。

 少女のヒステリックなママさんが、「ファーゴ」('96)でアカデミー賞を受賞したフランシス・マクドーマンドだから凄い。
 ジョエル・コーエン監督夫人としても知られる彼女、今回はブルース・ウイルスと不倫中という役。

343239_100x100_003  少女のパパは弁護士、「ロスト・イン・トランスレーション」('03)でアカデミー賞にノミネイトされたビル・マーレイが扮する。
 さらに恐いソーシャル・ワーカー役が、ティルダ・スウイントン。「フィクサー」('07)でアカデミー賞を受賞したオスカー女優なのだ。

343239_100x100_004  そして作品の狂言回し役、弱気なボーイスカウトの隊長が、「アメリカン・ヒストリーX」('95)など2回アカデミー賞にノミネイトされたエドワード・ノートン。

 彼ら、今ハリウッドで活躍しているベテランたちが、アンダーソン監督作品への出演を熱望して参加、不器用でいとおしい大人たちを演じている。

343239_100x100_011 「こんな子供時代を送りたかったな~」と、監督の願望を映像化しただけに、衣装・美術には遊び心がいっぱい。
 アライグマのワッペンからボーイスカウトの制服、特注のテントやカヌー、トーテムポートまでキュウートなアイディアで埋まる。

 主題となるクラシック音楽は、ニューヨーク・フィルハーモニックやロンドン交響楽団が演奏する豪華版。
 カンヌ国際映画祭でオープニングに上映され、拍手喝さいを得た作品である。

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March 01, 2013

2252.生誕100年・杉岡華邨展

303_003_640  現代かな書を代表する書家・杉岡華邨、昨年100歳を前にして逝去された彼を追悼する回顧展が、昨日から松屋銀座で開催されている。

Image   書家であると同時に書の研究家、大学教授としても多くの後進を育ててきた華邨は、文化勲章受賞後も生涯現役を貫き通してきた芸術家として知られている。

  出版社で編集に携わっている私の若い友人が、彼の書研究の集大成ともいうべき「源氏物語と書生活」の出版を担当した。
 そして回顧展の企画を手伝ったと、招待券を届けてくれた。

303_006_640 会場には華邨の代表作100点余りが並ぶ。

 平安朝の古典を華麗な筆の冴えと散らしで展開した初期の作品「香具山」(日展特選)や「妹が庭」、日本芸術院賞受賞の「玉藻」(チラシ上)など筆力の強さと全体の調和が見事な中期、重厚な大字の作品や流麗でありながら空間を圧する後期の作品。

303_009_640_2  なかでも楽しく見た作品は、日本画家・中路融人との合作の「最上川」(チラシ下)や「子どもと遊ぶ」(右)の数点。
 清書した華邨の作品そのものに絵を描いたり、先に描かれた融人の絵に添って歌や俳句を描いて軸装する、その合作によってかな書の美はさらに華麗になっている。

303_004_640  「古の人にわれあれや さざなみの 故き京をみれば悲しき」(万葉集・高市古人)

 左は「近江京感傷」、昨年の1月17日に「日本書芸院展」のために書かれた作品で「絶筆」となった。
 華邨は、この書を書き上げた36日後に息をひきとる。
 99歳の誕生日まじか、華邨は最後まで現役の書家だった。

303_001_640 友人からは回顧展の招待券と一緒に、彼女が編集した華邨夫人の手記「一旦辞するにあたり」も送られてきた。
 42歳の時、65歳の華邨の後添えとして嫁いだ杉岡和子さんが、彼と過ごした34年間の日々を「鮮烈」に描いた「笑いと涙の感動の物語」である。

 その昔、大阪勤務時代にあるパーティーでお会いした杉岡華邨の、「可愛い笑顔」を思い出しながらページを捲った。

 「追悼 生誕100年杉岡華邨展」は、11日まで松屋銀座で。入場料は1000円。

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