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April 29, 2013

2282.「貴婦人と一角獣」展

Img031_640 中世ヨーロッパ美術の至宝「貴婦人と一角獣」。
 全長22mにもおよぶ6面1組の「つづれ織り(タピスリー)」である。
 フランス・パリの国立クリュニー中世美術館が秘蔵するこの織物が初来日、六本木・国立新美術館で公開されている。

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 タピスリーはフランス語。
 丈夫な麻や木綿を縦糸に、金糸・銀糸や染め抜いた毛や絹糸を横糸にして図柄を生み出す織物で、3m四方のものなどは完成するまで数年を要するといわれている。

 まさに芸術品ともいわれる緻密なこの織物は、14世紀後半から16世紀初頭にかけ、フランドル地方で主に製作された。
 用途は、王侯貴族が城や教会の石壁を装飾する調度品として使われ、同時に防寒の用もなしている。

Img032_640 今回展示されているタピスリーは、フランス北部のある貴族が所有していたもので製作年は1500年頃。
 18世紀に入って、この織物の芸術性の高さを作家のジョルジュ・サンドらが言及し、国が買い上げて保存することになった。

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 「貴婦人と一角獣」は、それぞれのテーマを持った6面からなる連作である。

 まず左は「触覚」、貴婦人が一角獣の角を手で触っている。

 右は「味覚」、貴婦人がオウムに餌を与えている。
 獅子や一角獣が支え持つ旗には、貴族の家の紋章が織り込まれている。

Img041_640 右下は「嗅覚」、侍女が支える皿から花びらを選び花冠を編む貴婦人、その傍らで猿が花の香りを嗅いでいるという図柄。

Img042_640 左のタピスリーは「聴覚」、パイプオルガンを弾く貴婦人、一角獣と獅子がその音色に耳を傾ける。

 全ての図柄に登場する一角獣は、宗教的・神話的な架空の動物で聖書にも登場する。
 純潔やキリストを象徴する一方で、傲慢や憤怒を表し悪魔の化身ともいわれる。
 中世のヨーロッパのタピスリーには、千花文様(ミル・フルール)を背景に、こうした動物たちが織り込まれているものが多い。

Img043_640 右の5枚目が「視覚」、草地に腰をおろす貴婦人の膝に一角獣は前足を乗せて甘えている。その一角獣は、貴婦人が手にする鏡の中に自らの姿を見る。

Img044_640_2 これら5点のタピスリーは人間の五感をシンボリック化したものだが、最も大きな六枚目については様々な解釈がなされ、謎も多い。

 青い大きな天蓋の前で宝石を手にする貴婦人、身に付けているのか外しているのか、一角獣や獅子の表情、犬や兎たち小動物の動き、題して「我が唯一の望み」は「五感を超えた謎」と言われている。

003 会場にはこのほか、「受胎告知」など「聖母の生涯」を描いたタピスリーの連作や透明ガラスに描かれた宗教画、一角獣を象ったブロンズの水差しなど関連する文物40点も展示されている。

 「貴婦人と一角獣」展は、7月15日まで六本木・国立新美術館で。入館料は1500円。
 (このタピスリーが、これまでにフランス国外に貸し出されたのは1974年のアメリカ・メトロポリタン美術館のみ。多くの人たちに鑑賞の機会をと、展示の期間は普段より長い。)

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April 27, 2013

2281.舟を編む

133_6 「ハラがコレなんで」('11)の石井裕也監督が、「マジメ」に撮った作品。PFFアワード出身でラジカルな彼にしては、珍しく「善人」だけが登場する。
 今回は脚本を渡辺謙作にまかせ、職人に徹した。

  タイトルの「舟」とは辞書の事である。
 「言葉という大海の中を、手漕ぎの船で目的地に向かう」
 辞書編集とは、地味な作業だが時間をかけて確実に言葉を選び、編んでいくことなのだ。

343711_100x100_001 華やかさは無いが、コクのある味わい深い作品である。
 主役の辞書オタクの編集者・松田龍平とその妻となる宮崎あおいが、「マジメ」に「マジメな役」を演ずる。

343711_100x100_005_2 その脇を固めるベテランたちの演技も、また「味わ深い」。
 主人公とは対照的なトッポい先輩編集者が、オダギリジョー。
 定年で編集長を退いたその道一筋に、小山薫。
 契約社員だが編集室のゴッドマザーは、伊佐山ひろ子。
 女性誌から異動してきたのが、黒木華。
 そして辞書監修の大先生が、加藤剛。
 さらに渡辺美佐子、池脇千鶴、八千草薫、鶴見信吾・・・・。

343711_100x100_006 ストーリーは、新しい辞書「大渡海」編纂の企画が立てられた15年前から始まる。そして完成・出版された2008年で終わる。
 そこには、出版界を襲った電子化の波という脅威が重なる。
 しかし紙の辞書にとことん拘る編集者たちの、アナログの温かみが「手漕ぎの船」を導く。

 そのアナログの作業とは、①用例採集②カード選別・見出し語選定③語釈執筆④レイアウト⑤校正。
 映画は、この過程をきちんと綴っていく。そこにも「マジメ」な拘りがあった。

343711_100x100_004 原作は有名になった昨年の「本屋大賞の第1位」、直木賞作家・三浦しをんの同名小説。
 大辞書編纂という地味な世界を繊細に「編んで」、感動作に仕上げベストセラーとなった。

 15年前にある国語辞典の7年ぶりの改訂版編纂を、最後の場面で手伝った経験がある。
 辞書編集者たちが、決してオタクではなく明るい若者たちだったことを思い出す。

 「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かび上がる小さな光を集める。
  もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。」

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April 25, 2013

2280.天使の分け前

Img010_640 「麦の穂をゆらす風」('06)で、カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞したイギリスの巨匠ケン・ローチ。
 前作「ルート・アイリッシュ」(ブログ2082号・'12.4.11)でも紹介したように、一貫して労働者階級や移民たちの日常をリアルに描いてきた監督である。

Img03 今回は珍しくユーモアたっぷりの人生賛歌、ヒューマン・コメディ「天使の分け前」を撮った。
 社会から疎外された「札つき」の青年が、「人生の大逆転」を賭け、仲間たちと一世一代の大勝負にでる物語だ。

344306_100x100_003 舞台は、スコッチウイスキーの故郷スコットランド。
 ウイスキーのティスティングに才があることに目覚めた主人公、ひと樽1億4000万円以上もする年代物のウイスキー「モルト・ミル」から、「天使の分け前」を頂こうというもの。

 「天使の分け前」とは、ウイスキーを樽で熟成させる際の目減り分のこと。
 大金持ちたちが、札束にあかせてセリ落とすのなら、ちょっぴり頂いても文句はあるまいというのが、「落ちこぼれ天使」の言い分か。

Img02 映画製作のきっかけは、イギリスの若者たちの失業率が急激に増大している事だった。
 「普通に働き、尊厳ある最低限の暮らしをする。なぜ、そんなことすら難しい経済システムを許してしまったのか」
 ケン・ローチ監督は憤る。

Img01 脚本を書いたのは、「麦の穂をゆらす風」などいつもコンビを組む盟友ポール・ラバティ。
 その彼が見つけてきたのが、主役を演じたポール・ブラニガンだった。
 地元グラスゴー出身、両親はヤク中、顔には殴られた傷を持つブラニガン自身、物語の主人公と同じ少年院出身だった。
 彼のまさに地をいく演技が、素人とは思わせないリアルさを生む。

 彼が傷害の償いとして命じられた、社会奉仕先で知り合った矯正官役ジョン・ヘンショウ(「エリックを探して」'09)ほか、「麦の穂をゆらす風」に出演したロジャー・アダムやウイリアム・ルアンなどが脇を固めた。

344306_100x100_002 「希少なウイスキーはバカみたいに高い。だが、高いからおいしいに決まっている、と思い込んでいる人もいる」
 ロシアの新興成金にセリ勝って高額のウイスキーを買ったアメリカ人、騙されているとも知らず」とケン・ローチは皮肉る。

 この映画は、「銀座テアトルシネマ」のクロージング作品。
 「声をかくす人」「シェフ!」「堀の中のジュリアス・シーザー」「愛、アムール」と、「さよならカウントダウン5」を見た。
 ヨーロッパを中心に、ハリウッドとはひと味違う映画を上映してきた劇場だったが。

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April 23, 2013

2279.源氏絵と伊勢絵

133_16_2 安土桃山時代の大和絵土佐派の総師・土佐光吉(1539~1613)、今年は彼の没後400年にあたる。
 東京丸の内・出光美術館では館所蔵の土佐派の作品を中心に、屏風・画帳・色紙20数点と関連する工芸品10点余りを展示、「描かれた恋物語」と題した展覧会を催している。

Dt1671_3 土佐光吉といえば、アメリカ・メトロポリタン美術館にある「源氏物語図屏風」で有名だが、国内でも同名の作品を京都国立博物館(六曲一隻)や出光美術館(伝・六曲一双)も所蔵している。

 今回の展示では、「源氏物語」全54帖を一望する上記の屏風をはじめ、光吉晩年の傑作と言われる「源氏物語手鑑」(重要文化財・和泉市久保惣記念美術館蔵)など、彼の繊細な筆が冴えわたる源氏絵の数々が並ぶ。

133_17_4133_18_2 タイトルにもあるように、展覧会のみどころは平安王朝文化を代表する二つの文学作品と、それを絵画化した「源氏絵と伊勢絵」の交錯である。

 左は江戸時代の絵師・岩佐又兵衛が描いた「在原業平図」、右は同じく「源氏物語 野々宮図」つまり光源氏を描いた人物画。
 いずれも重要美術品に指定されている作品だが、その描き方は同一人物と見まごう。

 業平は、伊勢斎宮との密通スキャンダルで平安の貴族社会に衝撃を与えた実在人物で六歌仙のひとり。「伊勢物語」のモデルとなった人物である。
 一方の光源氏はご存じ紫式部の「源氏物語」の主人公、フィクション上の人物。ただ源氏がもともと伊勢物語から発想を得ているので、そのモデルも業平といえる。

 江戸時代の「源氏物語解説書」には、「(光源氏の)好色の事は、在中将(=在原業平)の風を学べり」との一節もあるように、東まで下った業平の一生はまさに「いろごのみ」一色だった。

133_20_3133_19_2 文学上の密接な関係は当然ながら、物語絵にも表れる。

 室町時代もっぱら土佐派によって描かれた「源氏絵」は、やがて狩野派など他派の絵師たちも筆をとるようになり新しい表現の作品が桃山から江戸時代にかけて生まれる。

133_21_2133_22_2  一方、古活字版「伊勢物語・嵯峨本」の誕生で、光吉をはじめとする土佐派が、伊勢絵に近い構図で源氏絵を描き始める。

 さらに江戸時代に入ると、もっぱら伊勢絵を中心んとしてきた俵屋宗達や岩佐又兵衛らが、源氏絵にも参画し二つの物語絵は、完全に交錯していくのである。

 今回の作品展は、ふたつの恋物語が交錯して豊かなイメージの物語絵が生まれていく姿を、見事に見せてくれるのだ。

1959055_640_3 土佐光吉没後400年記念「源氏絵と伊勢絵~描かれた恋物語」展は、5月19日まで東京丸の内・出光美術館で。入館料は1000円。

追記:出光美術館は出光石油の創始者・出光佐三(1905~1970)が、若いころから収集したコレクションを中心に設立した美術館。
 佐三は、今年の本屋大賞を受賞した百田尚樹の小説「海賊と呼ばれた男」のモデルとして知られている。

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April 21, 2013

2278.汚れなき祈り

516vl8ormil__sl500_aa300_ チャウスキカ独裁政権下のルーマニアを舞台に、妊娠した友達の違法中絶を手助けするヒロインの1日を描いた「「4ヶ月、3週と2日」('07)。
 カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したこの作品の監督(脚本も)、クリスティアン・ムンジュウの次回作が「汚れなき祈り」(邦題)である。

Img007_640_2  原題が「Beyond the Hills」、下界とは隔離された丘の上の修道院で起きた悲劇を緻密に描写することで、孤独で無関心、閉塞感のある現代社会そのものを描いた。

Production_img   この作品もまたカンヌ国際映画祭で、主演した二人が女優賞、監督・脚本のムンジウが脚本賞とW受賞し、アカデミー賞外国語映画賞のルーマニア代表となった。

 2005年にルーマニアのある田舎の修道院で、実際に起こった「エクソシスム(悪魔祓い)」による不法監禁致死事件が題材になっている。

 孤児院で共に育ち友達以上の愛で結ばれた少女二人、一人は修道院で神を愛し一人はその神から友を奪い返そうとする。
 信仰と愛の狭間で揺れる少女たちの前に、悲劇は訪れたのだった。

344475_100x100_001 魔女狩りなど中世のヨーロッパの事件はともかく、現代に於いても信仰の名のもとに人々が行う「エクソシスム」。
 善と悪とを区別することの難しさ、そうした狂信的な行為に無関心な人々、「汚れなき祈り」によって人間の命が奪われていくことを、ムンジウ監督は重厚に描き、宗教の本質を問いかけた。

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 映画祭で女優賞を受賞したコスミナ・ストラタンとクリスティナ・フルトゥルは全くの新人。
 監督の友人で、アイルランド在のヴァレリュ・アンドリウツァが司祭の役で作品をしめる。

344475_01_06_02 実在したアイルランドの修道院での、修道女虐待事件を扱った「マグダレンの祈り」('02)。
 「薔薇の名前」('87)「闇の入口」('89)「マンク破戒僧」('11)「神々と男たち」('11)など、修道院を舞台にした映画は多い。
 ヨーロッパにおけるキリスト教の存在の重みが、その背景にある。

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April 19, 2013

2277.ヒッチコック

Img006 サー・アルフレッド・ジョセフ・ヒッチコック(1899~1980)、イギリス出身の映画監督、映画プロデューサー。
 1939年からはハリウッドで活躍し、「サスペンス映画の神様」「ヌーヴェルヴァーグの神様」と呼ばれた。

 その神様を創った女がアルマ・レベル(1926~1980)。
 同じイギリス生まれの名編集者・脚本家、そしてヒッチコックの生涯の伴侶であり女優パトリシア・ヒッチコックの母親だった。

 この作品は、ふたりの天才の知られざる物語を、ドラマチックに時にユーモラスに綴った伝記映画である。

Photo_3 「バルカン超特急」('38)「レベッカ」('40)はテレビで、「ダイヤルMを回せ]('54)「裏窓」('54)「泥棒成金」('55)「めまい」('58)「北北西に進路を取れ」('59)「サイコ」('60)「鳥」('63)は劇場で。
 ストーリーを思い出せるヒッチコック監督作品を並べるだけでも、こんなに多い。

1344728349 なかでも印象が強いのが、のちにサスペンスの金字塔と言われた「サイコ」。
  マザコンのアンソニー・パーキンスとシャワールームで殺されるヒロイン、ジャネット・リーの恐怖の顔は、今も忘れられない。
 伝記映画は、この「恐怖」が撮られる舞台裏を描くことで、「天才」が生涯追い続けてきた夢とそれを支えた「もうひとりの天才」の夢を私たちに伝える。

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 まだ多くの人たちの記憶に残る実在人物を描くのだから、俳優たちも豪華になる。

344434_100x100_004_4 「天才」二人は、いずれも貴族の称号を持つイギリスの名優が初めて共演する。
 アカデミー賞に4回ノミネイトされ「羊たちの沈黙」('91)でオスカーを受賞したナイト・アンソニー・ホプキンスと、アカデミー賞に5回ノミネイトされ「クイーン」('06)でオスカー女優となったディム・ヘレン・ミレンである。

344434_100x100_003 そして「サイコ」の出演者、ヒロインのジャネット・リーに北欧系美女のスカーレット・ヨハンソン(「幸せのキセキ」'11)、アンソニー・パーキンスがそっくりさんのジェームズ・ダーシー(「クラウドアトラス」'12)という配役。
 監督はドキュメンタリー映画出身で脚本家(「ターミナル」)としても知られる、サーシャ・ガヴァン。

200pxalfred_hitchcock_nywts 「サイコ」は監督賞などアカデミー賞5部門にノミネイト、「レベッカ」は作品賞を受賞、ほかヒッチコックの監督作品は多くの部門でノミネイトされ受賞してきたが、彼自身は賞とは全く無縁だった。
 なぜ彼は「アカデミー賞」に嫌われ無冠の帝王だったのか、今回の作品はそれに答える。

 マザコン・ブロンド好み・倒錯性・覗き趣味・嫉妬深さ・・・、描かれる天才ヒッチコックの実像が、映画を生み出すエネルギーのもとだったのだ。

200pxto_catch_a_thief4 「裏窓」に出演したブロンド女優グレイス・ケリーを、モナコ王妃になった後も追っかけたヒッチコック。
 ドタバタ映画のハリウッドの中で、イギリス風の皮肉たっぷりのユーモアを忘れなかったヒッチコック。
 彼は本当の映画の神様だった。

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April 17, 2013

2276.鹿児島学

Img009  近代日本をつくった鹿児島。
 いまだ「独立国」かと思わせる独自の文化・風土。
 「県民性」研究の第一人者が「不思議の国・鹿児島」の魅力と謎を解明。
                 (「鹿児島学」帯封より)

003  出版プロデューサー・ノンフィクション作家として知られる岩中祥史さんと、焼酎バー「黒瀬」で杯を交わした。
 肴はキビナゴとツケアゲ(薩摩揚げ)。

 話題は、彼が昨年暮れに出版した表記の「鹿児島学」。
「名古屋学」「博多学」「札幌学」「広島学」に続く、5冊目の「地域・都市文化論」である。
 これまでは、東京に対する地方都市の有様に視点を置いてきたが、今回は地域全体をテーマにした。

005  一昨年の秋から昨年の秋まで、ほぼ一年間鹿児島に出かけ取材を続けたという。のべ宿泊日数は50泊を超え、沖永良部の2町村以外は全て足を運んだそうだ。
 書いたメモだけでも20センチ以上、それを287ページの本にまとめた。

Img008 プロローグに始まって6つのキーワードでまとめた「広~い、広い鹿児島」「やさしい・・・」「意外な・・・」「固い、硬い、そして堅い・・・」「奥が深い・・・」「ひと味違う・・・」、この括りがなかなか面白い。
 県民性の研究では第一人者と言われている岩中さんらしいユニークな筆さばきである。

 私も45年ほど前に、「さつま今昔」と題した鹿児島「論」を編集・出版したが、その後の半世紀が「変えたもの・変わらなかったもの」を「鹿児島学」は楽しく読ませる。

100516_032_640 第2章「やさしい鹿児島」で紹介される「おはら祭り」、毎年渋谷で催されるこの祭りには企画の段階から関わってきただけに、興味深々である。
 「なぜか渋谷で」と、その歴史的背景を紐解く。そして「おはら節」と「東京音頭」の前奏が同じという謎にたどり着く。

002_640 
  遠く離れた庄内(山形県)に、なぜ西郷さんを祀る南洲神社があるのか。筆者は、ここにもまた鹿児島の「やさしさ」を見た。
 そして鹿児島の南洲墓地(写真右)に、庄内の若者のお墓があることに驚く。
 一昨年、私も庄内を訪ねこのエピソードをブログで紹介したので省略するが、ほとんど知られていない「絆」である。

Photo 第4章の「固い、硬い、そして堅い鹿児島」では、徹底しておこなわれた「廃仏毀釈」や「郷中教育」が生んだ独特の教育風土が語られる。
 彼は「つまるところ、旧来の伝統を守って自己を抑えながらも、お上(役所や政治)には過剰な信頼を置かず自立を志向する」と、硬い鹿児島人の人物像を描く。(写真は旧鶴丸城)

Image 「日本全国を均一化しようとする強烈な波動にもびくともせず、その独自性・独立性を保ってきた鹿児島だが、その一方で日本全体に及ぼした影響も計り知れないほど大きし、強い。」と、岩中さんは「鹿児島学」をまとめている。

 岩中祥史著「鹿児島学」(草思社刊)は定価1600円+税。

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April 15, 2013

2275.ボクたちの交換日記

Img001_566x800 久々に、共同テレビジョンが製作した映画。「お笑い映画」と躊躇していたが、同社に勤める友人からチケットを貰ったし新聞紙上でも評判がいいので、出かけた。

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 ピュアで残酷な「お笑い界」の舞台裏を綴った放送作家・鈴木おさむの「芸人交換日誌~イエローハーツの物語」が原作。

 それを映画化したのがウッチャンナッチャンの内村光良。
 監督自らがお笑い芸人だけに、描かれる世界は濃くシビアである。
 監督のオファーを受けた時は、同じお笑い芸人として抵抗もあったが、世代の違う若い人たちなら客観的に描けるかなと、引き受けた。

344425_100x100_006 結成12年を迎えた売れない「お笑いコンビ」が主人公、伊藤淳史と小出恵介が演ずる。
 二人は、高校時代同じ水泳部の仲間だった。しかしこうマンネリ化すると、口をきくのも億劫になる。
 本音を吐きだそうと始めたのが「交換日記」だった。しかしその事が、やがてコンビ解散という事態を呼ぶ。

344425_100x100_010 「お笑いの世界」を描いているが、むしろ地味といっていい「人間ドラマ」である。
 小出の妻役・長澤まゆみや伊藤の妻・木村文乃が生活感そのものを見せ、カンニング竹山や多くのお笑いコンビがそのままの役で登場する。

344425_100x100_001 この世界でコンビは、特殊な関係であり特殊な感情を持つ。
 コンビとして協力しなければならないが、お互いがまたライバルなのだ。
 また興行手段として、意に沿わないコンビを組まされることもある。
 芸人たちは、「売れるコンビ」の世界を崩さないために、大人の関係を持とうとする。

 かって、この世界と仕事の上で関わった経験がある。
 「夢路いとし喜味こいし」「鳳啓介・京唄子」「オール阪神巨人」たちが、第一線で活躍していた時代である。
 彼らが、舞台の外では驚くほどクールな関係だったことを思い出す。

344425_100x100_011 「(スターになる)夢をあきらめる時は、自分の夢を捨てても幸せにしたい人が現れた時」
 映画は、特殊な芸人の世界から普遍的な男と女の愛の物語となって
エンドロールになる。
 ファンキーモンキーベイビーズの「サヨナラじゃない」を聞きながら。

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April 13, 2013

2274.ザ・マスター

Img004_565x800 トム・クルーズやジョン・トラヴォルタが、信者になって話題をよんだ新興宗教「サイエントロジー」。
 SF作家L・ロン・ハバートが1954年にアメリカで創設した教会は、世界各国に800万の信者を有する。

 「基本的に人間は善である」と、ハバートが書いた「ダイアネックス」の愛読者が中心となった自己啓発型の宗教で、他者に対する排他的攻撃やマインドコントロールなどから「カルト教団」として、各国政府とたびたび衝突している。

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 「ザ・マスター(教祖)」は、ハバートや教団をモデルにした作品だが、新興宗教の内面や問題性を抉ったものではなく教祖とその右腕となる男の魂の相克を描いたものである。

 主人公は、戦争の後遺症でPTSDを患っている海軍帰還兵。酒と暴力とセックスだけの堕落した日々を過ごしている。
 その彼が偶然に出会ったのがマスター、なぜか二人は惹かれあい「ソウルメイト」になっていく。
 そのマスターを御しているのが妻、三人の魂の絡み合いが観る者の「既存の価値観」を揺さぶっていく。

Epson001_641x800 帰還兵とマスターを演じた二人の役者の怪演が、作品を重厚にする。

 「グラディエーター」('00)などこれまで2回アカデミー賞にノミネイトされたホアキン・フェニックスと、「カポーティ」('05)でオスカーを受賞したフィ
リップ・シーモア・ホフマンの組み合わせである。

Epson002_639x800 もう一人、マスターの妻が「ダウト」('08)など5回アカデミー賞にノミネイトされたエイミー・アダムアス。
 この3人が、今回もアカデミー賞にノミネイトされた。

 そして監督。
 「マグノリア」('99)「ゼア・ウイル・ビー・ブラッド」('07)でベルリン国際映画祭金熊賞・銀熊賞、「パンチドランク・ラブ」('07)でカンヌ国際映画祭監督賞、今回の「ザ・マスター」でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞と、世界三大映画祭を制覇したPTAである。

343684_100x100_007 PTAとは、コアな映画ファンが鬼才ポール・トーマス・アンダーソンにつけた愛称。
 「ポール・トーマス・アンダーソンは、僕にとって、オーソン・ウエルズだ」と、「アルゴ」で今年のアカデミー賞作品賞を受賞したベン・アフレック監督は、賛辞を贈る。343684_100x100_004

 フェニックスにとってのマスターがホフマンとすれば、ホフマンにとってのマスターはアダムス。
 誰もがマスターを求め、やがていつかマスターに反撥し離れていく。
 この人間の「業」を、新興宗教の「狂信性」のなかで描くことで、観るものに衝撃を与えた。

 狂気とセクシー、ホアキン・フェニックスの猫背の後ろ姿こそ現代社会なのかもしれない。

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April 11, 2013

2273.桜・浜離宮

Imgp0445_800x600Imgp0521_800x600Imgp0455_800x600 毎年桜の季節には、都内の名所を順繰りに散策してきた。

 今年は将軍・吉宗が植えさせた「飛鳥山の桜」を予定していたが、天候不順でタイミングを逃してしまった。

 そこで、近所の浜離宮で八重などの遅咲きの桜ということにした。しかし、雨の日や風の日が多くきれいな写真が撮れない。
 晴れ間を縫って出かけた、先週と今週の2回分をまとめてアップしよう。

Imgp0443_800x600Imgp0456_800x600Imgp0473_800x600 左から「白妙」「白雪」「駿河台匂」。
 いわゆる園芸種サトザクラの仲間たちである。

 江戸時代に庶民を楽しませた飛鳥山の桜はヤマザクラだったが、将軍家の庭園である「浜御殿」には品種改良や突然変異で生まれたサトザクラが多い。

Imgp0482_800x600Imgp0509_800x600Imgp0511_800x600 「一葉」はほぼ満開だったが、つぎの「ウコン」や花弁が緑色の「御衣黄」は、来週あたりが見ごろだろう。

 因みに、「日本三大桜」として天然記念物に指定されている「淡墨桜」(岐阜)「神代桜」(山梨)は、「エドヒカン」の1500~2000年の古木。
 福島の「三春滝桜」は、樹齢千年を超す「ベニシダレ」。いまこの桜の子孫の苗木が、全国各地に送られているという。原発事故の避難先へのお礼にと。

Imgp0454_800x600Imgp0458_800x600Imgp0497_800x600 今年は、久しぶりに陸奥の「桜街道」を巡ってみようと思っているが、例年と異なり開花の予想がつきにくいい。
 うまく満開に出会えたら、このブログで紹介する。

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April 09, 2013

2272.シャドー・ダンサー

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 IRAとイギリスとの闘いを描いた作品は多い。古くはジョン・フォード監督の「男の敵」('35)、そして「クライング・ゲーム」「パトリオット・ゲーム」('92)「父の祈りを」('93)「ジャッカル」('97)と、現実の騒乱と同時進行形で映画が製作されてきた。

Photo_2 今世紀に入っても、カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドール受賞の「麦の穂をゆらす風」('06・ケン・ローチ監督)という傑作があり、東京国際映画祭でも上映された「レクイエム」('09)と続く。

 今回の「シャドウ・ダンサー」は、ロンドンデリー「血の日曜日事件」直後のロンドン地下鉄爆破未遂事件」(1973年)が舞台となる。
 この事件で容疑者となったIRA女性活動家が、幼い息子を守るためにMI5のスパイになってしまった運命が描かれる。

 それは「北アイルランド独立」の大義と、子供を守る母親としての葛藤であり、弾圧とテロの応酬に翻弄される女性たちの悲しみの記録となる。

344576_01_03_03 原作は、当時北アイルランド・ベルファストに駐在していたテレビ・ジャーナリスト、トム・ブラッドビーの同名小説。
 脚本家でもある彼が自作を脚色して、製作総指揮も執った。

 監督したジェームズ・マーシュは、「マン・オン・ワイヤー」('08)でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したドキュメンタリストで、今回久々に劇映画を撮った。
344576_01_02_03 ハリウッドのスパイ映画とは異なり、アクションや銃撃戦はほとんどなく、サスペンスを人間ドラマとして描いたのは、さすがマーシュといえる。

 出演はヒロインの女性活動家に、「英国王冠をかけた恋」('11)でシンプソン夫人を演じたアンドレア・ライズブロー。
 彼女をスパイに引き込んだMI5の捜査官に、「クローサー」('04)でアカデミー賞にノミネイトされたクライヴ・オーエンと、イギリスのベテラン俳優たちが扮している。

344576_01_01_03 ベルファストが物語の舞台だが、この20年で街の様子がすっかり変わっており、ロケはもっぱら古いアイルランドの建物が残るダブリンで行われた。
 しかし出演者の多くは、ベルファストにその時代住んでいた人たちが選ばれた。
 時代の雰囲気をリアルに描きたいという、ドキュメンタリストらしい配役である。

 昨年6月、ベルファストを初めて訪れたエリザベス女王が、元IRA司令官だった北アイルランド州政府副首相と歴史的な握手を交わした。
 そのことが、この映画を製作するきっかけとなったという。

 しかし北アイルランドで今、カソリックとプロテスタントとの「本物の和平」が実現しているとは言い難い。
 「シャドウ・ダンサー」(スパイのコードネイム)たちが、今も彼の地でうごめいている。

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April 07, 2013

2271.プラチナデータ

130323_042_640  「プラチナデータ」とは、極秘裏に集められた全国民のDNAデータをいう。
 このDNAデータによって犯罪者は特定され、検挙率100%、冤罪はゼロになる。
 しかし国家権力がひた隠す、もうひとつの「プラチナデータ」があった。

344074_100x100_001_3  映画化を前提に、ベストセラー作家・東野圭吾が書いた同名ミステリーが原作。

 舞台は近未来の日本、自らが開発したDNA捜査システムによって追われる身になった天才科学者(二宮和也)と、現場叩き上げの刑事(豊川悦司)が繰り広げる、逃亡・追跡劇である。

 近未来というが、現実はもうそこまで迫っている。
 DNA鑑定が元になって、冤罪から救われた人々はここ数年続出している。
 また作品の中で、容疑者追跡のキーとなった防犯カメラによる認証システムは、江ノ島・猫事件でその有効性が喧伝されている。
 そんな現実感が、「プラチナデータ」を単なるSFサスペンスではない作品に仕上げている。

303_016 監督は、朝ドラ「ちゅらさん」や大河「龍馬伝」のディレクターから、映画界に転じた大友啓史。
 「ハゲタカ('09)「るろうに剣心」('12)に続いて3作目となる。

 役者の感情を最大限引き出すためのテストなし本番と、複数のカメラで長まわしする大友演出が、二宮×豊川を生き生きと動かしている。
 いま最も勢いのある監督と評される由縁なのだろう。

344074_100x100_006344074_100x100_005   ほか主な出演者は、DNAデータ・システム開発に協力した遺伝子学教授・鈴木保奈美と天才数学者・水原希子。
 警察庁の遺伝子捜査研究所所長・生瀬勝久と二宮の同僚研究員・杏。

 韓国系アメリカ人のモデル、「ノルウエイの森」('11)で映画デビューした水原希子の存在感が印象的だ。

 「白夜行」('10)「夜明けの街で」('11)「麒麟の翼」('11)など、次々と映画化される東野圭吾作品のなかでは少々異質な物語である。 

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April 05, 2013

2270.第50回「麺食の世界へ」展

Imgp0524_600x800Imgp0526_600x800 久しぶりに東京ビッグサイトに出かけ、今開催されている「食品関連展」をのぞいてみた。
 「ファべックス2013」は外食業界の専門展、「デザート・スイーツ&ドリンク展」はその名の通り、そして「ワイン&グルメ展」「食肉産業展」「食品&飲料ビジネスフェア」。

Imgp0527_800x600_2 目指したのは、最も歴史がある「2013麺産業展~麺食の世界へ」。

 今年は「日本の伝統食“麺”を創造する」をメインテーマに、麺類飲食業界と商社・食品総合卸・製粉会社など関係業者が集まり情報を交換していた。

Imgp0533_800x600Imgp0532_800x600Imgp0570_800x600Imgp0531_800x600 展示を一回りした後、目的のひとつ、「全国高校生そば打ち選手権大会」の会場へ。
 郷里の加世田常潤高校が、九州からは唯一の高校として参加しているのだ。

Imgp0542_800x600_2Imgp0543_800x600 この「そば打ち選手権」は、日本の伝統食の一つである麺類食の普及とその継承を目的に、3年前から始めたイベント。

 近年、北海道や長野など「そばの産地」がある高校の食品工学科などで、授業やクラブ活動として「手打ちそば」を学んでいる生徒が増えてきており、その技術を競うことで日本の食文化としての「そば」を普及させようという試みである。

Imgp0549_800x600Imgp0555_800x600Imgp0558_800x600Imgp0556_800x600 選手権は、30人の生徒が競う個人戦と、4名ひと組全国10の高校が参加した団体戦で行われた。

 1回のそば打ちの制限時間は40分、主催者側が用意したそば粉500gと小麦粉200gに全員同じ「練り鉢」や「そば打ち台」で打つ。
 「水回し」「こね」「延し」「切り」の4工程に加えて、意気込みや服装、衛生面などが審査の対象となるだけに、参加した生徒は真剣にその腕を披露していた。

Imgp0552_800x600Imgp0551_800x600 会場では、インターネットによる中継も行われており、応援団も加わり熱気につつまれていた。

 同時開催している6つの食品展は、今日の17時で終了する。

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April 03, 2013

2269.客船「ふじ丸」引退

Imgp0468_768x1024Imgp0477_768x1024 霧雨に煙る東京港・晴海埠頭、寄港しているのは客船「ふじ丸」。
 

 「海を走るビル」と称された「ふじ丸」が、この6月に25年間にわたる航海を終え、引退するという。
 取材で何回か乗船した懐かしい船なので、「さよならディナーパーティー」に参加した。

 たまたまこの日、ふじ丸の後方には帆船「日本丸」も停泊していた。
 この帆船の「初代」でも、37年前にニューヨークまでの75日間の航海を共にしている。

Imgp0489_800x600Imgp0483_800x600Imgp0482_800x600Imgp0480_800x600 
 当時としてはわが国最大の外航クルーザー「ふじ丸」、進水したのは1988(昭和63)年の9月。
 2年後に進水した「にっぽん丸」を姉妹船に、世界の海をクルージングした。

 総トン数23,235t、全長167m、全幅24m、8層のデッキには、客室が168室あり乗客定員603人を135人のクルーが誘う。

 これまでの日本最大の客船が1930年就航した秩父丸(のちの鎌倉丸17,498t)だから、およそ60年ぶりの記録更新となった。

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 最高速力は21ノット、プールやシアター、ジム、レストランなどはもちろん、日本の客船だけが備える大浴場が評判だった。
 ふじ丸は、日本にも本格的なクルーズ時代が始まる事を告げた豪華客船だったのだ。

 2002年以降、ふじ丸はチャータークルーズ船として世界を駆け巡る。
 国が主催する「世界青年の船」、「国際見本市船」などなど、私が乗船したのもその取材だった。

Imgp0501_1024x768Imgp0499_1024x768 2年前の3月11日、ふじ丸はフィリッピン・クルージングからの帰途にあった。
 神戸で乗客が下船した後は支援物資を満載して、大船渡~釜石~宮古とまわり、被災者たちに温かい料理を提供、大浴場や客室を解放している。

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 「ふじ丸」は、今週日曜日に鎮海~釜山の「さくらクルーズ」に出発、そのあと「日本一周」や「小笠原クルーズ」を実施し、6月30日晴海ふ頭発「初島」までのワンナイト・トクルーズで最期を飾る。

 これまでの総運航距離は地球約70周分、50万人の船客が楽しんだ。

 「ふじ丸」の引退によって日本国籍のクルーズ客船は、'90年就航の「にっぽん丸」(21,903t)「おりえんとびーなす」(21,884t)「飛鳥Ⅱ」(旧クリスタル・ハーモニー50,142t)、'98就航の「ぱしふいっくびいなす」(26.518t)の4隻だけとなった。

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April 01, 2013

2268.フライト

343694_02_01_03  奇跡的な緊急着陸を成功させて多くの人々を救い、国民的ヒーローとなったパイロット。しかし彼はヤク中でアル中という、破滅への道を歩く男だった。

343694_100x100_002  その主人公をデンゼル・ワシントンが演じて、今年のアカデミー賞主演男優賞にノミネイトされた。
 彼は今回をふくめこれまで7回ノミネイトされ、「グローリー」('89)「トレーニングデイ」('01)と2回オスカーを手にした名優である。

 ワシントンの演技のうまさが、今回も作品を支える。
 墜落直前の機体を操る神々しい顔、アル中で堕落しきったホウケタ顔、人間としての最後の選択をせまられた時の真摯な顔、同じ顔が物語をきちんと繋ぐ。

343694_100x100_004  「フォレスト・ガンプ/一期一会」('94)でアカデミー賞監督賞を受賞したロバート・ゼメキスが、久しぶりにメガホンを執った。
 人間の弱さと業に、とことんまで迫った彼らしい作品である。

343694_100x100_003  ワシントンと絡む脇役たちも、演技派俳優が顔をそろえる。

343694_100x100_008  ひょんな事で主人公と知り合ったヤク中の女性が、イギリス女優のケリー・ライリー(「シャーロック・ホームズ」'11)。
 主人公の酔っ払い操縦をもみ消そうとする弁護士が、「ホテル・ルワンダ」('04)のオスカー俳優ドン・チードル。
 主人公の友人でヤクの配達人が、名脇役のジョン・グッドマン(「アルゴ」'12)。
 航空事故主任調査官に、「ザ・ファイター」('10)のオスカー女優メリッサ・レオ。

Intro65  映画前半、墜落寸前の機内・機外のシーンの緊迫感は凄い。
 後半は、嫌気が出るほどにデンゼル・ワシントンのだらしなさと、等身大の人間の葛藤を見せる。

 タイトルの「フライト」は「飛ぶこと」ではなく、人生からの「逃避」とも読める。

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