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August 07, 2013

2333.終戦のエンペラー

Img174_640 1945(昭和20)年9月27日、アメリカ大使館公邸で会見した連合国軍総司令長官ダグラス・マッカーサーと昭和天皇の写真。
 我々の世代以上の人たちは誰もが知っている、衝撃の写真だった。日本人はこの一枚で、日本帝国が敗れたことを実感した。

Image アメリカ映画「終戦のエンペラー」は、マッカーサーの厚木飛行場到着からこの会見に至るまでを忠実に描く。
 テーマは「天皇の戦争責任」、ただしあくまでもアメリカの視点で。

344808_100x100_001 日本を舞台に日本人を描いたハリウッド作品は多い。しかし日本の観客は、どことなく違和感を感じてきた。
 それは長い歴史と伝統文化に根差した日本人の「ものの考え方」が、完全には理解されなかったからである。
 この映画は、その「限界」をようやく乗り越えた。

344808_02_01_03_640_2 背景に、映画の企画者が日本人女性プロデューサーだった事実がある。
 奈良橋陽子、作詞家・映画監督・舞台演出家としても知られる彼女は、「ラストサムライ」('03)や「SAYURI」('05)「バベル」('07)のキャスティング・ディレクターとしてハリウッドとも深く関わってきた。

 さらに彼女は、宮内次官・関谷貞三郎(映画では夏八木勲が演じた)の孫で、子供の頃祖父からいつも「終戦秘話」を聞かされていた。

344808_100x100_007 もうひとつ、脚本のベースとなった元毎日新聞記者・岡本嗣郎のノンフィクションがある。
 そこには、YWCAの指導者のひとりで恵泉女学院を創設した河井道(1877~1953)と、マッカーサーの補佐官フェラーズ准将との戦前からの交友が描かれていた。

344808_100x100_003 奈良橋プロデューサーは、河井の愛弟子でフェラーズのアメリカでの学友だった一色ゆりの存在を知り、歴史的事実の中にフィクションとしての「悲恋物語」を加えた。

 アメリカ側のプロデューサー、ゲイリー・フォスターは作品に客観性を持たせようと、監督にはイギリスのピーター・ウエバー(「ハンニバル・ライジング」'07)を、また脚本にはブラジル出身の女性ヴェラ・ブラシを加えてストーリーを練り上げていく。
 キャスティングはもちろん奈良橋、それを息子で俳優の野村佑人が支える。

344808_100x100_002 そのキャスティング。

 主人公のフェラーズ准将にはアメリカのテレビで活躍するマシュー・フォックス、マッカーサーはオスカー俳優トミー・リー・ジョーンズ。
 野心家マッカーサーのもう一つの側面を、ジョーンズが上手く演じる。

Img173_640 日本側は実在の人物たち、東條英機(火野正平)、近衛文麿(中村雅俊)、木戸幸一(伊武雅刀)、そして先述の関谷貞三郎(夏八木勲)。
 注目の昭和天皇には、歌舞伎界から片岡孝太郎を招いた。役者としての気合いがこもる。
 今思うと、終戦までの24時間を描いた名作「日本の一番長い日」('67)も、天皇役は歌舞伎界から、八代目松本幸四郎(白鴎)をもってきた。

 フィクションの部分は、フェラーズの恋人に初音英莉子(「ノルウエーの森」'12)、その叔父で駐在武官出身の大将・西田敏行、その妻・桃井かおり、フェラーズの通訳・羽田昌義。
 主人公に日本人の精神文化を教える、西田の流暢な英語が特に印象に残る。

344808_100x100_004 ロケは、ほとんどニュージーランドで行われた。
 オークランド郊外の火災跡地につくられた、焼け野原の東京のセットが痛々しい。
 日本での実写は皇居周辺のみだったようだが、連合国軍総司令部(GHQ)が置かれた第一生命ビルも、見事にセットとして復元されている。

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Comments

この映画ぜひ観たいです。
終戦の天皇の姿、どのように撮っているのか、興味しんしんです。( ^ω^)おっおっおっ

Posted by: 根保孝栄・石塚邦男 | August 07, 2013 04:32 PM

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