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September 30, 2013

2360.サイド・エフェクト

346151_02_01_02 「麻薬戦争」(トラフィック・'00)、「革命」(チェ・ゲバラ2部作・'08)、「企業の内部告発」(インフォーマント・'09)、「感染パニック」(コンティジョン・'11)と、次々に新たなテーマと切り口でエンターテインメントを撮ってきたスティーブン・ソダバーグ。
 今回は「クスリ漬け社会アメリカ」をテーマにした、ミステリックなサスペンス映画「サイド・エフェクト=副作用」。
 これが最後の「劇映画」だそうだ。

346151_100x100_006_2 抗鬱剤の新薬の副作用で夢遊病になってしまい、愛する夫を殺害してしまった女性。
 夫は、インサイダー取引で収監されようやく出所した直後だった。

 新薬を投与したのは彼女の主治医、製薬会社から報酬を受けてその新薬の治験中であり、マスコミは彼をたたく。
 しかしその事件の裏には、隠された「真実」があった。

346151_100x100_004 若手・ベテラン4大スターの競演である。

 ヒロインの殺人犯の女性は、「ドラゴン・タトゥーの女」('11)で一躍注目を集め、アカデミー賞にノミネイトされたルーニー・マーラ。
 ドレスアップした美しい女、しかしその虚ろな目の奥底に女の怖さを秘める。

346151_100x100_008_3 対する主治医がオスカー俳優(「リブリー」'99)のジュード・ロウ、「コンヂジョン」に続くソダーバーグ監督作品である。
 薬害の加害者と非難され医師生命を守るために、まさに「ウツ」に執り付かれたように「真実」を追う。

 その好敵手が前任の主治医、同じくオスカー俳優(「シカゴ」'02)のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。
 彼女もまた「トラフィック」でソダーバーグと組んだ。

346151_100x100_014 もうひとり、殺された夫役のチャニング・ティタムも、「エージェント・マロニー」('11)「マジック・マイク」('12)とソダーバーグ組の一員である。

 そして脚本が、スコット・バーンズ。監督とのコンビはこれで3作になる。

51kuffdubul__aa160__2 1989年に「セックスと嘘とビデオテープ」で監督デビューしたソダーバーグ、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したのが25歳の時。
 2000年には、「エリン・ブロコビチ」と「トラフィック」がアカデミー賞ダブル・ノミネイトして後者が受賞している。

 まだまだ50歳と油が乗り切った年だけに、劇映画からの退場は首をかしげるが、プロデューサーから関連ビジネスまで多彩にこなしている彼だけに、余裕をもっての事だろう。

346151_100x100_001 「精神科医にかかると、イギリスでは病人扱いされる。しかしアメリカでは支援を受ける」と、イギリス出身の主治医に語らせる。
 皆保険制度でクスリは抑えられる彼の国と、「カウセリング」に「クスリ漬け」と製薬ビジネスサマサマのこの国、ソダーバーグもあきれ返ったのかも知れない。

 アルフレッド・ヒッチコック作品を思い出す「二転三転」のストーリー展開、ドンパチの派手さはないがサスペンスとしては結構楽しめる。

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September 28, 2013

2359.秋・浜離宮

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 四季ごとに訪ねる浜離宮恩賜庭園。

 「秋桜」を愛でる秋の散策は、例年10月の第1週と決めていたが、今年は旅を予定しているので今週出かけた。
 年間パスポート(65歳以上600円)を持参して。

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 大正時代に日本に渡来した「キバナコスモス」、浜離宮の名物として有名だが、今年はもう咲き終わっていた。

 例年なら黄色い絨緞のお花畑、その代わりに今年は「オオハルシャギク」や「サニー・イエロー」の可憐な花をカメラに収めた。

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 猛暑の影響で、今が見ごろとなったのが「ヒガンバナ」。
 群生はしていないが、広い庭園のあちこちで咲く。
 緑の芝生とのコントラストがいい。

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 「ノウゼンカズラ」に「スイフヨウ」はそろそろ終わり、「ウスギモウセイ」や「キンモクセイ」、「ハギ」はこれから花を付ける。

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September 26, 2013

2358.そして父になる

Img247_640_2  今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した、是枝裕和監督の「LIKE FATHER,LIKE SON(そして父になる)」。
 スペインのサン・セバスチャン国際映画祭とカナダのトロント国際映画祭にも出品されるなど、国際的な注目も高い。

 国内でも「早く見たい」との声が多く、予定を1週間前倒しにして明後日からロードショー、一部の劇場では先行公開も始まった。

 出生時に病院で子どもを取り違えられた事を、6年後に知った2組の家族。
 「血のつながり」か「共に過ごした時間」か、突き付けられた選択を前にした家族たちの葛藤が描かれていく。

345678_100x100_004 主人公役は福山雅治。初の父親役、人生で初めて壁にぶつかり苦悩する難役を強く優しく演じた。

345678_100x100_005 彼の妻には尾野真千子、相手側夫婦がリリー・フランキーと真木よう子。

 福山の父親が夏八木勲、継母が風吹ジュン、尾野の母親が樹木希林とベテランが脇を固める。

345678_100x100_002 二つの家庭を、対照的に設定した。

 主人公は、ゼネコンに勤めるエリート社員。専業主婦の妻は、留守がちな夫の代わりに一人息子の教育に専念する。
 他人の子とわかって、それに気づかなかった自分を責める。

 一方は地方都市の小さな電気屋さん、がさつだが心優しく子煩悩の父親と3人子持ちの肝っ玉かあさん。
 家計を助けるためパートで働く母親と、多額の慰謝料を狙う父親。

 映画の主題は、子どもに対する二つの家庭の距離感を比較することで、主人公が「本当の父親」へと変わっていく姿を見せることにある。

345678_100x100_007 テレビマンユニオンで、ドキュメンタリーのディレクターだった是枝監督。
 劇映画を制作するようになっても、若いころの経験を活かし絵空事ではない作品を撮る。

 「幻の光」('95)・ベネチア国際映画祭脚本賞、「誰も知らない」('04)
・カンヌ国際映画祭最優秀男優賞、「奇跡」('11)・サンセバスチャン映画祭最優秀脚本賞。
 今回の「そして父になる」で、彼の国際的な評価はさらに高まった。

345678_100x100_003_3 撮影は、写真家・CMカメラマンとして独特の「空気感」を表現してきた瀧本幹也が担当した。劇映画は初めてである。

 二宮慶多と黄升炫、二人の子役がのびのびと演技する。そこがまさに是枝監督ならではである。

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September 24, 2013

2357.エリジウム

Img243_640 南アフリカのアパルトヘイトを、SFエンターテインメントで痛烈に批判した「第9地区」('09)。
 アカデミー賞作品賞脚色賞など4部門にノミネイトされ、注目を集めた南アフリカ出身の監督ニール・ブロムカンプが、今度は舞台をアメリカに移し「現実の格差社会」を描いた。
 141年後の近未来を時間軸にしたSFアクション映画だが、それが昨日・今日の「先進国」にダブる。

Img244_640 タイトルとなった「エリジウム」とは、ギリシャ神話に登場する理想郷。
 神に選ばれた人々だけが幸せに暮らせる、永遠の世界である。

Img246_640 物語は、一握りの富裕層だけが贅沢に暮らすスペース・コロニーと、スラム化した地球に残された圧倒的な人々との「格差」が主題。
 SFだがCGによるSFXを可能な限り抑え、バンクーヴァーとメキシコ・シティの邸宅やスラムでロケした、現実の映像を多用している。

Imgbtmnavhometour つまり「格差社会」は1世紀先の出来事ではなく、今我々の目の前に存在している事を、ブロムカンプ監督は映像で主張するのだ。

345620_100x100_001 主役の二人は豪華だ。

 人生の大半を「地球」でムショ暮らししたワルガキ、今は労働者として何とか稼いでいる主人公をマッド・デイモン(「グッド・ウイル・ハンティング」'98・アカデミー賞脚本賞)が、坊主頭で演じる。
 ロボット生産工場で放射能を浴びて余命5日、「エリジウム」にしか生きる道はない。

345620_100x100_003 その「エリジウム」で、地球からの不法移民を取り締まる防衛長官がジョディ・フォスター。
 オスカー女優(「告発の行方」'88、「羊たちの沈黙」'91)の彼女が、ジョルジオ・アルマーニのスーツを着こなして初めての敵役である。
 凶暴な傭兵やヒューマノイドを使って、容赦なく「駆除」する。

345620_100x100_005_2 その傭兵が、南アフリカの俳優シャルート・コプラー。
 プロデューサー・監督としても活躍する彼は、ブロムカンプ監督の親友で、「第9地区」では主役を演じた。
 今回は日本のゲームキャラクターそっくりの悪役、日本刀・手裏剣を使う「ニンジャもどき」として登場した。

1 そしてもう一人、ブラジルの女優アリシー・ブラガ(「オン・ザ・ロード」'13)が主人公の幼馴染の看護婦として顔を見せる。
 一人娘が不治の病で先がない。助ける望みは「エリジウム」移住しかない。 

345620_100x100_009_2 と、4人の出演者を紹介することでストーリーの展開は想像できるだろう。
 「人種差別」「貧富による差別」「医療差別」「南北差別」・・・、このSFアクションは、エンターテインメントとして楽しみながら、現実の社会に対する怒りをも生み出していく。

Imgbtmnavleadership 「格差社会」を徹底的に表現すべく、監督は各種のデザインに拘った。
 先に述べたフォスターのスーツもそうだが、「エリジウム」の外観は工業デザイナーとして有名なシド・ミードが、シャトルのデザインは芸術的な美しい自動車を生み出してきたブガッティが担当。
 ヴェルサーチやアルマーニなど一流デザイナーの協力で、「理想郷」とそこに住む人々の「富」をイメージしている。

 ソニー・ピクチャーの作品だからというわけではないが、ドロイドやパワード・スーツ、小道具類にクール・ジャパンの匂いがするのも面白い。

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September 22, 2013

2356.竹内栖鳳展

Img233_640 京都画壇の近代化の旗手と言われた竹内栖鳳(1864~1942)、上村松園、小野竹喬、橋本関雪ら日本画壇の錚々たる巨匠を育てた彼は、第1回文化勲章受章者でもある。

001 これまで、個展として彼の画業全てを知る機会はなかったが、今回長らく展覧会に出品されてこなかった作品を中心に100点が、東京国立近代美術館に並んだ。
 またスケッチや素描、下絵など50点も同時に展示されている。

 栖鳳は京都の川魚料理屋に生まれたが、13歳で四条派の絵師のもとに弟子入りして日本画を学ぶ。
 青年時代には画塾の塾長になるほど腕をあげ、京都若手画家の先鋭として名を挙げた。

Img239_640 彼の画風は四条派の軽妙洒脱な筆遣いをもとにしているが、円山派の実物観察、狩野派の細部描写など、他流派の筆法を積極的に取り込み、画壇の古い習慣を打ち破った。

 とくに1900年のパリ万博視察は、彼の画風に大きな影響を与えている。
 左の「金獅」(1901年作)はドイツの動物園で見たライオンがモデル、彼は実物観察という西洋美術の手法も取り込み、伝統絵画としての日本画の近代化・革新に挑戦している。

Img235_640 右は栖鳳の代表作のひとつ「班猫」(1924年作・重要文化財)。
 滞在先の沼津の八百屋の店先で猫を見て「そうだ!猫を描こう」と、八百屋のおかみさんから譲り受け、部屋で自由に遊ばせながら丹念に観察して作品に仕上げた。

Img240_640Img241_640 今回の展覧会でも、動物の画が多い。
 どれも可愛らしく愛情たっぷりに描かれている。
 「動物を描けば、その匂いまで描く」と評された栖鳳である。

Img236_640_3 展覧会は、「画家としての出発」(1882~1891)「京都から世界へ」(1892~1908)「新たなる試みの時代」(1909~1926)「新天地を求めて」(1927~1942)の4章で構成し、特別展示として美術染色の仕事や日本国内はもちろん中国やヨーロッパを旅して描いたスケッチが並べられる。

 「竹内栖鳳展~近代日本画の巨人」は、来月14日まで東京国立美術館で。入場料は、1300円。
 また10月22日からは「京都展」が、京都市美術館で開催される。

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September 20, 2013

2355.許されざる者

Img229_640  アメリカ映画史上不朽の名作といわれる「許されざる者」('92)。
 クリント・イーストウッド監督・主演の映画は、アカデミー9部門にノミネイトされ作品・監督・助演男優・編集賞の4冠に輝いた。

41nybanpgal__sl500_aa300__2  作品は、「荒野の用心棒」('64)で彼をスターの地位につけたイタリアの監督セルジオ・レオーネと、ハリウッドで大ヒットした「ダーティーハリー]('71)のドン・シーゲル監督に捧げた、イーストウッド監督の「最後の西部劇」だった。

 不可能といわれたリメイク版が実現したのは、イーストウッドと渡辺謙との深い信頼関係の賜物である。
 李相日監督やプロデューサーたちは、当初から渡辺を主役に構想を練っていた。もちろん製作は、版権を持つワーナー・ブラザーズピクチャーの日本法人である。

Img230_640_2 注目されたのはメインとなる3人の出演者と、日本版としてのオリジナリティだった。

 時代の背景はオリジナルと同じ1880(明治13)年にして、舞台を北海道の開拓地に。
 アウトロー(クリント・イーストウッド)は幕府敗残兵の元人斬り(渡辺謙)、その元相棒(モーガン・フリーマン)は敗残兵元仲間(柄本明)、敵役となる保安官(ジーン・ハックマン)は開拓村の警察署長(佐藤浩一)とした。

G_3 オリジナリティ部分としてアダプテーション脚本を書いた李相日は、元人斬り等に加わる賞金目当ての3人目の男に、アイヌと和人の混血青年(柳楽優弥)を配し、北海道開拓時代の先住民差別を背景に置いた。
 そこが先住民(インディアン)の登場しなかった「西部劇と、今回の「時代劇」との違いだった。

344445_01_03_03 しかし物語のベースは変わらない。
 ストーリーは映画ファンならだれでも知っているので省くが、時代に取り残されたアウトローたちの顛末記。

344445_01_18_03 貧しい女郎(娼婦)を傷つけた男たちに対する報復という大義はあっても、そこには正義はない。
 まさに罪深い殺しの宿命を背負った、「許されざる」哀しい男の物語である。

344445_01_02_03 二度と銃は持たないと愛する妻に誓った男(イーストウッド)と、二度と刀は抜かないとアイヌの妻に誓った男(渡辺謙)の行き着く果ては、同じだった。

344445_01_10_03 アメリカ西部の原野に変わる、北海道の大地は美しい。
 大雪山山麓上川町にオープンセットを組み、9月末から11月末までロケした。
 そこで秋の紅葉から、冬の吹雪までが描かれる。

 ラスト、大火に包まれるオープンセットの紅蓮の炎は、「許されざる者」への怨歌か。これも日本版オリジナリティーである。

344445_01_11_03 李監督は「フラガール」('06)で日本アカデミー賞作品賞、時代劇は初めてである。
 出演は他に、忽那汐里、小池栄子、国村隼、小澤征悦、三浦貴大・・・。
 音楽は、岩代太郎。
 今年のヴェネチア国際映画祭で、特別招待上映された。

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September 18, 2013

2354.共喰い

Img228_640_2 第146回芥川賞を受賞した、田中慎弥の同名小説が原作。

 「17歳の少年が、父と義母の性行為を盗み見る。自慰にひたりつづけ、一つ年上の女友達とはただ性交のみ。田中さんは、そんな描写によって何を表現したかったのか。」
 審査員でただひとり受賞に反対した、宮本輝はこう選評した。

Img227_640_2 誰が、何時、どんな表現を駆使して映画化するのか。映画は、宮本の批評を乗り越えられるのか。
 そんな気持ちで待っていた作品である。

 「EUREKA ユリイカ」('00)でカンヌ国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞した青山真治が、それに挑戦した。
 原作者は下関出身、物語の舞台も下関郊外のさびれた漁村。
 青山もまた海峡を挟んだ北九州出身、「サッドヴァケイション」('07)など「北九州サーガ」と呼ばれる土俗性の強い映画を撮ってきた。

344802_100x100_001 実はこの作品、最初に映画化を企画し青山を誘ったのは荒井晴彦。
 日本を代表するベテラン脚本家で、現在季刊誌「映画芸術」の発行・編集人。
 かって書いた日活ロマンポルノ「赫い髪の女」('79)に倣って、「純文学のポルノ化」を試みようとしたのだ。
 

 そして二人は、原作通りセリフも忠実に並べながら、最後に三つのエピソードを新たに加えた。
 それは作品の時代「昭和63年」の意味と、次の時代の若者たちの「愛と希望」を描くことだった。

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 主人公の17歳の高校生は「仮面ライダー」役者の菅田将暉。
 思春期の若者は、その内なる性と暴力に苦しみながら、父親からの血の呪縛を乗り越えようともがく。

344802_100x100_006 青山作品デビュー作からの常連、「ユリイカ」にも出演した光石研が父親。相手を殴り首を絞めなければタタない暴力男は、出演した「ヒミズ」('11)に通じる。
 その後妻となった女が篠原友希子、主人公の恋人が木下美咲。

344802_100x100_003 しかし物語のキーは田中裕子が演じる主人公の母親。夫の暴力に耐えかねて離婚し、近所で魚屋を営む。
 彼女によって父と子の負の連鎖は断ち切られ、「昭和」は終焉する。

 暴力と性描写など、数々のタブーを乗り越えた作品は、なぜか「女性賛歌」の映画に仕上がっている。
 三人の逞しい女たちの。

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September 16, 2013

2353.敬老の日

001_640006_640_2 台風襲来中だが、今日は「敬老の日」。

 「国民の祝日に関する法律」によって、10年前から9月の第3月曜日が祝日となった。
 いわゆるハッピーマンデー制度、皆さん連休を利用してお出かけください、というわけだ。

 面白くないのはお年寄りたち、これまでは15日に祝ってもらったのに最近は我々を留守番にして、孫たちは旅行に出かける。
 いろいろと陳情もあったので、政府は「老人福祉法」を改正して15日を「老人の日」と名付け以後一週間を「老人福祉週間」とした。
 ややこしいのだが、昨日の15日は祝日ではないが「皆さんお年寄りを大事にしましょう」という日にした。

003_640_2 私の住む東京・中央区は、毎年人口が増えている。
 今年9月現在、昨年より8,569人増の131,367人となった。

004_640 人口増の要因は、近隣に次々と建つ高層マンションだが入居者は30~40代の働き盛りなので、老人の割合は年々減ってきている。

 老人福祉法上は65歳以上を「老人」として括るが、そのデータをもとに人口を比べると、全国25%・東京都21%そして中央区は16%が「老人」である。つまりここは「現役と子供の多い若い街」なのだ。

 働き盛りの増は、特別区民税の増収につながる。
 中央区ではそうした予算を生かして、戦前・戦後とこの街を支えてきた「老人」たちに報いる施策を進めてきた。

008_640010_640 そのシンボリックなイベントが、敬老大会と銘打った観劇会である。
 46年前から続いているこのイベントは、区内にある三つの大劇場を順繰りに借り切って、70歳以上を招待する。

005_640013_640_2 今年は新装なった歌舞伎座が会場。
 先週、昼の部を5日間借り切り、8,900人が歌舞伎を楽しんだ。幕の内のお弁当も付いて。

 ただ今年は初めて70・71歳が抽選となった。
 70歳以上15,271人に招待状を送ったが、観劇希望者が10,105名、例年より1000人以上も増えた。
 久しぶりの歌舞伎座招待だったからだろう。

Img219_640 私には一応3階席後ろのチケットが届いたが、連れ合いの方はキャンセル待ち。区のホームページを毎日チェックして、ギリギリ滑り込んだ。
 3階席一列目と、私より良い席に。

 毎回の事だが、1階は桟敷席もふくめ80代以上、2階席が75歳以上、3階は「若い!」私たちという配席。
 3年後の歌舞伎座の時は、もっと良い席がと期待しているが。

 「敬老の日」の招待は「観劇」だけではない。
 先週末には、近くの敬老会の「寄席」にも招かれた。金原亭馬生の落語や色物を楽しみ、帰りには町内の子供たちから花のプレゼント。

002_640 そうそう、「町会」からもお祝の「お赤飯」と「お小遣い」が届いた。
 ただ、これまで送られてきた「中央区」からの「お小遣い」は、75歳以上になってしまった。
 「老人」向けを節約して、増えてきた子供たちへのサービスに、予算を充てるためだそうだ。

 中央区も、都内各自治体の様子を覗いながら、サービスの濃淡を考え始めたようだ。

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September 14, 2013

2352.マン・オブ・スティール

Img223_640 「ダークナイト三部作」('05~'12)を製作・脚本・監督し、これまでのコミック・ヒーロー映画に新しい光を当てたクリストファー・ノーランが、またまた「悩めるアメリカン・ヒーロー」映画を作った。
 今回はそのヒーローを代表するスーパーマンが、出生の秘密と超能力に悩むのだ。

343546_100x100_005 「秘密の星(クリプトン)」の滅亡を悟った父から、希望を託されて地球に送り込まれたヒーロー。
 超能力を隠して育てられたため、反って仲間たちに苛められ孤独と葛藤のなかで幼年期を送る。
 しかし地球での養父母は、彼を慈しんだ。
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 やがて彼は自分探しの旅に出かけ、新聞記者のヒロインと出会った・・・・。
 初めて明かされる、ヒーロー誕生の瞬間。一人の男が「スーパーマン」になるまでの物語が綴られていく。

 ヒーローはイギリスの若手俳優ヘンリー・カビル(「インモータルズ神々の闘い」'11)、ヒロインはアカデミー賞4回ノミネイトの実力派女優エイミー・アダムス(「人生の特等席」'12)。

343546_100x100_004_2 父親と養父が、オスカー俳優のラッセル・クロウ(「グラディエーター」'00)とケビン・コスナー(「ダンス・ウイズ・ウルブス」'90)の豪華版。
 養母も演技派女優のダイアン・レイン(「運命の女」'02)、さらにローレンス・フイッシュバーン、マイケル・シャノンと個性派が並ぶ。

Img224_640 「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「いや、スーパーマンだ!」
 子どもの頃、コミック雑誌やテレビで親しんできた「スーパーマン」も、実写映画は8作目になる。
 新聞記者として日常を送るヒーローが、あの派手なコスチュームを身に付けた途端ストロングでスマート、そしてスピーディーな「スーパーマン」に変身して悪を退治する。

343546_100x100_006 1938年ジョー・シャスターとジェリー・シーゲルによって生み出された「スーパーマン」は、コミック・ゴールデン・エイジの幕を開いた最初の「アメリカン・ヒーロー」だった。
 そして「バットマン」「ワンダーウーマン」「キャットウーマン」「キャップテン・アメリカ」と続く。

343546_100x100_002 戦後のシルバー・エイジ、プロンズ・エイジは、「スパイダーマン」「ウオッチメン」そして「アイアンマン」が引き継ぐ。
 しかし世界的な「アメコミヒーロー」の人気は、やはり元祖スーパー・ヒーローである「スーパーマン」には敵わない。

 143分の超大作、世界最速のアクションシーンと巨大都市の破壊の連続、このハイパー・スペクタルを監督したのは、「300<スリーハンドレッド>」('07)のザック・スナイダー。

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September 12, 2013

2351.九月花形歌舞伎

009_640  新しくなった歌舞伎座、昼夜2部制には戻ったが「柿葺落」のスペシャルは続いている。
 今月は「九月花形歌舞伎・昼の部」、次の歌舞伎界を担う若手のスターたちによる「古典の大作」と「舞踊の名曲」を鑑賞した。

006_640 演じる主役級の俳優たち、年齢順に紹介すると片岡愛之助(41)・市川染五郎(40)・尾上松緑(38)・尾上菊之助(36)・市川海老蔵(35)・中村勘九郎(32)・中村七之助(31)・・・。
 まさに30代を中心とした「花形役者」たちである。

Img219_640 最初の演目は「通し狂言 新薄雪物語」(3幕4場)、1741(寛保元)年人形浄瑠璃として大阪竹本座で初演された古典である。
 歌舞伎化はその同じ年だが、第一幕の「花見の場」をふくらまし歌舞伎の様式美をたっぷりと取り入れている。

 作品は登場人物が多くそれぞれが大役であるため、主役級の役者を多く配しなければならない。
 そのため上演の機会は少なく、今回は5年振りだという。

007_640_3 江戸のころは、弥生三月にこの演目がしばしば上演されたらしい。
 この月は、大奥をはじめ武家屋敷では奥女中たちの「宿下がり」が多く、彼女たちが花形役者たちを一目見ようと、芝居小屋を埋め尽くしたからだ。

Img220_640 さて物語の概要、舞台は鎌倉時代の京。
 「花見の場」(78分)は春爛漫の清水を舞台に、若い恋人たち(勘九郎+梅枝)の出会いと、奉納太刀をめぐる陰謀が展開する。

 武家の子息と姫の恋を仲立ちする奴(愛之助)と腰元(七之助)、姫に横恋慕する男(海老蔵)が二人に罠を仕掛け、奴と男の家来たちとの大立ち回りで歌舞伎の「タテ」全てを見せる。

016_640 2幕目は「詮議」(48分)。
 六波羅探題の執権(海老蔵)が、謀反の罪に問われた若い二人を、粋な計らいでお屋敷預かりとするお話。
 男の父(染五郎)の屋敷には姫が、姫の父(松緑)の屋敷には男と、それぞれを囲い詮議するというが。

Img222_640Img221_640 3幕目は「広間」で始まり「合腹」でクライマックスに向かう(78分)。
 わが子を救うために双方の父親が腹を切り、悲しみの末に笑いあう「三人笑」。

015_640 染五郎と妻役・菊之助に松緑、三人の花形役者が痛み・苦しみ・悲しみを笑いに隠す名場面は、唐の故事「虎渓の三笑」に倣うが意味は深い。
 二人は命を捨てて、子供たちの恋を成就させたのだ。

 今回はここまでの「通し狂言」だが、人形浄瑠璃では若い二人が敵討ちをするまでが語られる。

014_640 もう一つの演目は「吉原雀」(23分)。
 もともとは、安倍宗任の妻善知鳥(うとう)が鳥売りに姿を替え、八幡太郎義家の本性を探るという舞踊劇だったが、およそ50年後にはくだけた清元曲となって鳥売り男女の「吉原案内」になってしまった。

013_640 「吉原雀」とは鳥のヨシキリの別名。吉原の廓を冷かして歩く男をいう。
 今回は勘九郎・七之助の兄弟が夫婦役で、粋で華やかに踊る。

 この日は、地元中央区の貸切興業。歌舞伎座は色とりどりの「奥女中」ではなく、70歳以上の「高齢者」で埋め尽くされた。

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September 10, 2013

2350.キャピトル・ゲート・プレイス

009_640  2011年9月から始まった「月島・市街地再開発事業」、まる2年経った今月第1期の工事が完了して旧住民たちの入居が始まった。
 新しい市街地名は「キャピトル・ゲイト・プレイス」、地上5~11階の住宅分80戸が「レジデンス」、老人ホームや保育園、クリニックや商店が入る1~4階が「モール」と名付けられた。
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 再開発事業は、月島1丁目の清澄通りに面した約5,700㎡を更地にして、ここに地上53階地下2階の超高層マンションと11階の中層マンションを建てる「商住一体複合再開発」。

 事業が完成する2年後には、ここに延床面積8万4000㎡、住居戸数702、公益施設や店舗等35区画の「プレイス」が誕生する。

111030_003_640076_640083_640012_640 左から工事の進捗を6ヵ月ごとに撮った写真。
 左が更地工事直前、右が完成2ヵ月前。
 開発現場が、私の住むマンションの隣なので、時々シャッターを押してみた。

 関東大震災後に建った2階長屋や戦後建てられたアパートが2~3ヶ月で壊される。更地には杭が地下には40m先まで打たれる。
 地下2階部分に基礎底が築かれ、その上に週1階のペースでコンクリートのフロアーが積み上がる。

043_640034_640Imgp0580_640006_640 こちらは我が家のテラスから撮った工事現場。
 始めてみる高層ビル建築の流れは、興味深かった。

 トップゼネコンによる建築工事だけに、徹底した機械化とトヨタ方式を思い浮かべるジャスト・イン・タイムの機材の導入。
 人通りの多い市街地だけに、周辺への影響を最小限に抑える仕組みは流石だった。

016_640 工事はいよいよ、タワー部分に移っていく。およそ1年半かけて地下の基礎部分の工事を終え、現在1階が建ち上がった。
 1フロワー1週間としても53週、躯体が完成するのは早くても再来年春になるだろう。
 内装工事、外構工事を終え再開発事業全てが竣工するのは、その年の7月になるようだ。

014_640 旧住民(地権者)たちの住居を除いて、一般に売り出されたのが約500戸。
 ㎡あたり平均100万円といわれるマンションは、ほぼ全て予約登録されているという。

 有楽町線・大江戸線月島駅にエレベーターで直結、銀座や大手町まで5~6分、この便利さが30代~40代の人たちの関心を引いている様だ。

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September 08, 2013

2349.夏の終り

Img213_640 久しぶりに「大人の日本映画」を見た。
 「夏の終り」、1963年に女流文学賞を受賞した瀬戸内寂聴が、最も愛着を持つ私小説が原作。
 妻子ある作家を愛してしまった不倫の顛末、自伝ともいえる作品である。 

344303_100x100_007 前号の「オン・ザ・ロード」も、作者のジャック・ケルアックが主人公として登場するモデル小説だったが、今回も瀬戸内自身がヒロインである。
 奇しくも彼女とケルアックは、同じ年に生まれている。

344303_100x100_004 前号に倣って、今回もモデルとなった実在人物で紹介しよう。

 満島ひかりのヒロイン役は、瀬戸内晴美(1922~)。
 文化勲章も受章('06)した大作家、法名「寂聴」(のちに実名もこの名に)、徳島高女を卒業して東京女子大に在学中に結婚、夫の任地北京で暮らす。

 戦後引き揚げたのち、夫の教え子と恋に落ち夫と長女を捨てて家を去る。
 作家活動を始めたころ、同人誌の仲間だった売れない作家と半同棲生活に入る。
 映画は、この時代の物語である。

344303_100x100_001_2 その売れない作家が小田仁二郎(1910~1979)、小林薫が演じる。
 丹羽文雄門下で「文学者」同人、'52-'53と芥川賞落選、'54には直木賞にもはずれ虚無的な日々を過ごしていた。
 瀬戸内との不倫は、この頃から始まる。

 
344303_100x100_002 映画でも描かれたシーン。
 「知り合った頃の彼は収入もなく、奥さんがミシンを踏んで養ってましたからね。『一緒に死んでくれ』と迫られたこともありましたよ。『奥さんに頼めば』と断ったら、『それはあんまり、可愛そうだ』って言うの。」
 91歳、寂聴僧正の述懐である。

344303_100x100_003 家族を捨てる羽目になった若い恋人が、綾野剛の役。冴えないサラリーマンからやがて実業家になった人物だが、本名は伏せる。

 妻子ある作家との長年の愛人生活に疲れ果て、ヒロインは昔の恋人との激しい愛欲の世界に溺れる。
 しかし彼女の心は、決して満たされないのだ。
 映画「夏の終り」は、男女の三角関係見事に描き切ったラブストーリーといえる。

344303_100x100_005 瀬戸内晴美が中尊寺で得度を受け、「寂聴」となって「男を絶った」のは、「夏の終り」を書き上げた10年後である。
 100万部を超えるロングセラー「夏の終り」、今年は刊行50周年を迎えたが、「ひとりの女の愛の迷いは、半世紀を経ても色あせない」と著者自ら語る。

 瀬戸内寂聴の愛と恋を描いた映像作品は、これまでも宮沢りえ主演のテレビドラマがある。
 今回の初めての映画化は、大阪芸術大学トリオがトライする。
 監督は「海岸市叙実景」('10)の熊切和嘉、脚本が同じく宇治田隆文、カメラも同じく近藤龍人、息の合った仲間たちである。

 舞台は1950年代の後半、小道具・大道具そして街並みはノスタルジックな「昭和の映像」となる。
 静かで味のある作品だった。

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September 06, 2013

2348.オン・ザ・ロード

Img211_640 アメリカのビート・ジェネレーションの「バイブル」と言われる青春文学「オン・ザ・ロード」。
 1957年に刊行されたこの本は、ボブ・ディランやジム・モリソン、デニス・ホッパー、ジョニー・ディップらミュージシャンや映画人たちに大きな影響を与えた。
 日本でも1959年翻訳され、「路上」とのタイトルで出版されてその後のヒッピー文化を支えた。

Ph01 セックスやドラッグにと奔放に生きる青年と出会った主人公が、自由を求めて充てのない放浪の旅を続ける物語で、そこにはほろ苦くとも輝かしい青春の日々が鮮烈に描かれている。

Ph13 主人公のモデルが作者ジャック・ケルアック、登場する人物は仮名だがすべて実在していた人たちである。
 作者は広大なアメリカをヒッチハイクで旅するが、そこでのかけがえのない出会いや体験を常にメモに残し、ニューヨークに戻ったのち僅か3週間で一冊の小説に仕上げた。

Ph15 10数年前にこの小説の映画化権を得たフランシス・F・コッポラ(「ゴッドファーザーⅠ・Ⅱ」'72~'74でアカデミー賞監督賞・脚色賞受賞)は、ブラジルの監督ウォルター・サレスをオファー、ようやく映画化を実現した。

Ph03 サレス監督は、若き日のチェ・ゲバラを描く「モーターサイクル・ダイアリー」('04)でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞するなど、青春物語やロードムービーを得意とする。
 今回はアメリカ本土はもちろん、カナダ・アルゼンチンなどでロケを行い、ジャック・ケルアックの「路上の日々」を見事に描いた。

Ph04 イギリスの俳優サム・ライリー(「ロシアン・ルーレット」'10)が演じた主人公、作家のジャック・ケルアック(1922~1969)。
 フランス系カナダ移民の子としてマサチューセッツ州に生まれコロンビア大学で学ぶ。
 第2次世界大戦中は船員として世界中をまわり、戦後は親友の作家ウイリアム・バローやニール・キャサディらとアメリカ・メキシコを放浪した。
 作品は「オン・ザ・ロード」のほか「孤独な旅人」など。「ヒッピーの父」と尊敬されながらも、若くしてアル中で逝去した。

Ph06 ケルアックに大きな影響を与えたのが、ヒッピーそのものの生き方でカリスマとなったニール・キャサディ(1926~1968)。
 アメリカの若手ギャレット・ヘドランド(「トロン・レガシー」'10)が、奔放で精細な青年を演じる。
 キャサディについては、16年前に映画「死にたいほどの夜」でその生涯が描かれたが、彼もケルアックより1年前にメキシコで亡くなっている。線路上に裸体で横たわっていたという。

Ph05 映画では、キャサディの16歳の若妻にクリステン・スチュワート(「トワイライト・サーガ」'10)、年上の愛人としてキルスティン・ダンスト(「メランコリア」'11でカンヌ・女優賞)が出演している。

Ph12 「裸のランチ」('59)で知られるウイリアム・バロウズ(1914~1997)も、ビート・ジェネレーションを代表する作家。
 主人公の友人の一人で、ヴィゴ・モーテンセン(「イースタン・プロミス」'07)が演じた。
 妻を誤って射殺したり、ヘロイン中毒になったりと話題をまいたが長寿を全うしている。

Ph14 もう一人、詩集「吠える」('56)で知られるアレン・ギンスバーク(1926~1997)。
 主人公たちと放浪の旅を続けた詩人は、イギリスの若手トム・スターリッジ(「パイレーツ・ロック」'09)の役。
 ロシア系ユダヤ人の彼は、のちのウオルト・ホイットマンらに影響を与えたビート文学の代表者の一人だった。

Ph16 映画を見ながら思い出したのが、若い頃のヒッピー・コミュニティの取材。
 屋久島や諏訪ノ瀬島に住む彼らの理念と現実の生活を追った。たしかに共感する部分もあったが、やはり社会からの逃避としか受け取れなかった。
 そのころ読んだ「路上」を改めて映画で見て、懐かしい青春の感傷に浸ったのだった。

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September 04, 2013

2347.第98回二科展

Img218_640 左は、今年の二科展で最高賞の総理大臣賞を受賞した作品。
 入り口のメイン会場に展示されている西健吉画伯の「浜の娘」(F150)、この5月に筆を執った。

98_004_640 先月末、親友・西健吉君から嬉しい電話をもらった。「今回、総理大臣賞をいただきました」と、そしていつものように招待状も届いた。
 今日が初日、一言お祝いの言葉をと、六本木・国立新美術館のオープニングセレモニーに駆けつけた。

98_019_640 西君は高校の一年後輩、同じサークル仲間。
 多摩美大卒業後、故郷の高校で美術教師を務めながら腕を磨き数々の美術展に入賞、パリ留学後の30年ほど前に二科会会員に推挙されている。
 現在は14人の理事の一人として二科会の運営に当たりながら、地元では若い画家たちを育てている。

Img214Img215 彼は、「桜島」など鹿児島の自然と風景を描くのを得意とするが、二科展では一つのテーマに拘る。
 高校教師時代に目にした漁村の風景と、そこで働く若い女性の躍動である。

Img217Img216 左上から「浜の人々」(79回)「浜」(89回)、右は「浜の娘」(91回)「浜の休息」(97回)、彼の過去の作品の一部である。

9889f193f189c893w8360838983v_955c1_ 二科会は、在野の美術団体としては最も古い。
 1914年、石井伯亭・梅原龍三郎・有島生馬らパリ留学組の新進芸術家たちが設立した。
 当初は絵画・彫刻の2部門だったが、戦後になってデザイン部門・写真部門が加わり、今日に至っている。

98_021_640 戦後、二科会を指導したのが東郷青児や吉井淳二ら鹿児島出身の画家たち、その縁か会員には同郷の画家たちが多い。
 今回も犬童次男(91歳)・鳥取政昭(85歳)ら、大長老たちの作品が並んでいた。(右は犬童次男「棚田の陽光<伊佐>」)

98_029_640 若手では西君と同郷(南さつま市在住)の画家で、会友の有馬広文君の作品「記憶の淵Ⅲ」(左)が展示されていた。
 彼も西君と同じく、南日本美術展で海老原賞を受賞してパリに留学している。

98_001_640 今年の二科展、絵画部門の応募総数は2,804点、入賞は731人、鹿児島からは17名が選ばれている。

 「第98回二科展」は、今月16日まで六本木・国立新美術館で。
 そのあと大阪~金沢~京都~広島~鹿児島~福岡と全国を巡回する。

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September 02, 2013

2346.クロワッサンで朝食を

_640 初めて見たエストニア映画、「老いと性」をテーマにしたシリアスな物語だが、後味はいい。
 ある人は「パリの異邦人の物語」といい、ある人は「三人の女と男の静かな愛情物語」と評する。
 「初めてのパリ、もう一つの人生に出逢う」が、キャッチ・フレーズである。

345631_100x100_003 その「パリに出逢う」中年の女性が主人公、エストニアのベテラン女優ライネ・マギが初めて主役を演じた。

 11年前に夫と離婚、二人の子供は家を巣立ち、長く看護していた母も失う。
 抜け殻のようになった彼女に、家政婦の求人が届く。若い頃から憧れていたパリでの仕事、同郷の大金持ちの未亡人の世話だった。

345631_100x100_004 その「未亡人」、歳は85歳。85歳の名優ジャンヌ・モローの役、気難しく暴君的な老女、朝は本物のクロワッサンと紅茶しか受け付けない。

 もう一人準主役が登場する。
 未亡人の元「若いツバメ」、フランスの舞台俳優パトリック・ビノーが演じるカフェのオーナーで、家政婦の求人は彼からのものだった。

345631_100x100_005 年齢も性格も環境も全く異なる二人の女性、ひとりの男を間にはさみながら、物語はぶつかり合いながらも次第に心を通わせていく日々を丁寧に描いていく。

345631_100x100_001_2 何と言っても見どころは、ジャンヌ・モローの圧倒的な存在感である。
 彼女自身の華麗な過去をふくめ、その生き様を「老女」につぎ込む。それは迫真の演技を超え、「神々しさ」ともいえる輝きを見せるのだ

345631_100x100_007_3 初めて知るライネ・マギの演技も、素晴らしい。
 ラスト近くキャリーバックを引いて夜のパリを歩く主人公、エストニアの暗い冬の国でみせた老婦人に近い姿が、ここでは若々しい女性に変身する。
 彼女も実年齢54歳、晴れやかな微笑みが余韻を残す。

 エストニアのテレビ・ディレクター、脚本家として知られるイルマル・ラーグが長篇映画初監督。母の実話をもとに脚本を書いている。

345631_100x100_008 東京でただ一館上映している「シネスイッチ銀座」は、午前10時前から切符売り場は大行列だった。
 二つのスクリーンでほぼ同時上映である。

 ほとんどが60代後半から80代、いつもと違い老夫婦のカップルは見当たらず、女性ばかりである。
 前号に続いて、今回も身を縮めて席に着いた。

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