« October 2013 | Main | December 2013 »

November 29, 2013

2390.マラヴィータ

Img301_640 世界の映画界を代表する、超大物3人の初のコラボ。

 製作総指揮はアカデミー賞ノミネイト9回、「ディパーテッド」('06)で監督賞を受賞したマーティン・スコセッシ、71歳。
 主演は同じく7回ノミネイト、「レイジング・ブル」('80)など2回オスカー受賞したロバート・デ・ニーロ、70歳。
 二人は、イタリア系アメリカ人である。

 そして監督が「レオン」('94)で知られるフランスのリュック・ベッソン、二人よりは一回り若い54歳だが同じラテン系の血が流れる。
346657_100x100_005
 「真夜中のピアニスト」('05)の脚本でも知られるイタリア在住のフランス人作家、トニーノ・ブナキスタの小説「マラヴィータ 隣のマフィア」を、ベッソン監督自身が脚本を書いて撮った、ユーモア満載のエンタメムービーである。

346657_100x100_001_2 「ファミリー」を売った元マフィアのドン(ロバート・デ・ニーロ)、FBIの「証人保護プログラム」によって家族3人とともにフランスの片田舎に逃れる。
 名前を替え作家と偽り、近隣のコミュニティーに溶け込もうとするが、どうしてもマフィアの血が騒ぎ、トラブルが続く。

Img302_640 家族だって只者ではない。
 美人で料理も上手い良妻賢母(ミシェル・ファイファー)も、キレると何でも爆破する放火癖。
 キュートな女子学生の娘(ディアナ・アグロン)は、父親譲りの凄腕。手を出す男はコテンパンにされる。
 大人しそうな息子(ジョン・ディレオ)だって、裏では同級生たちを仕切って稼いでいる。

346657_100x100_003 そしてとうとう、ニューヨークのマフィアたちに居所がばれてしまった。
 さ~、絆の固い元マフィア一家対現役マフィアたちとの闘いの行く末は?

 見守るのは、元マフィアの監視役・FBI捜査官(トミー・リー・ジョーンズ)と元マフィアの愛犬、その名も「マラヴィータ」。

6159odesll__sl160_ カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「タクシードライバー」('06)以来、「レイジングブル」「グッドフェローズ」('90)と数々の名作でコンビを組んできたスコセッシとデ・ニーロ。
 今回はシリアスを超えた遊び心いっぱいの作品をつくった。

 加えてそこに、ベッソンのフランス流のブラック・ユーモアが軽妙にちりばめられる。

346657_100x100_002 「ゴッドファーザー」('74)「アンタッチャブル」('87)「グッドフェローズ」と、マフィアのボス役をやらしたら右に出る者はいないデ・ニーロ。
 70歳を迎えて撮った「マラヴィータ」は、久しぶりに自然体で演じた作品になったようだ。

51pxfofxnpl__sl160_ 劇中劇として流された「グッドフェローズ」を、フランスの田舎の映画会で解説するデ・ニーロのユーモアたっぷりのシーン。

 マフィアの実態をリアルに描き、ヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞したスコセッシ監督とデ・ニーロ主演のこの作品の登場は、オマージュでもありパロディ、そして観客への大サービスなのだ。

 そのあとは「グッドフェローズ」の作法通りに、マフィアの殺し屋集団と元マフィア一家との「壮絶」な闘いの幕が切って落とされる。

 「MALA」とはイタリア語で「悪」、「VITA」は「人生」、転じて「裏社会=ファミリー」。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

November 27, 2013

2389.江戸の狩野派

Img311_640_2 およそ4世紀にわたって日本の画壇に君臨した「狩野派」、血族関係を主軸にしたこの「画家集団」の存在は世界でも例を見ない。

 これまで幾つかの美術展で、「狩野派」との関連ある絵師たちの作品を見たことがあったが、出光美術館開催されている本展では江戸に進出した「狩野派」に焦点をあて、その魅力に迫っている。

200pxzhou_maoshu_appreciating_lot_2 狩野派の始祖は、室町幕府の御用絵師・正信(1434~1530)に始まる(右の掛け軸は正信の作品・国宝)。
 狩野正信はもともと伊豆の地侍、将軍家に出入りして「漢画」の日本化で功績をあげた。

 そしてその子・元信(1476~1559)が、禅宗的な水墨画の要素を薄め、大和絵の技法を取り入れた装飾性のある様式を創造する。
 これが戦国時代の新興武家の共感を呼び、元信の孫・永徳(1543~90)さらにはその子・光信(1565~1608)と、信長や秀吉など武家政権と結んで専門絵師としての正当性を誇る様になった。

Img312_640_2 左の屏風絵は狩野探幽の作品(「叭々鳥・小禽図屏風」)。
 秀吉亡き後、伯父・正信と共に徳川家康に召された探幽(1602~74)は、江戸城近くの鍛冶橋に屋敷を与えられて、江戸幕府の御用絵師となる。
 彼はこれまでの「家法」を一変させ新時代の武家絵画を確立、狩野派中興の祖と呼ばれる。

Img315_640_2 一方、京都に残った狩野派は永徳の次男・孝信(1571~1618)が継ぐが、実権は永徳の一番弟子・山楽(1559~1635)にあった。
 その後は山楽の婿・山雪(1589~1651)その子・永納(1631~1697)と続き、京の寺院や公家と結びつき華麗な彩色法の技を伝えていった(右は永納作「遊鶴図屏風」部分)。

 今回の展示は、探幽の作品を中心に京狩野との画風を比較しながら、狩野派の継承と革新に焦点を当てているが、展示作品は35点と少ない。

 そこで思い出したのが、若いころボストン美術館で見たフェノロサが持ち帰った「狩野派の屏風絵」。
 以下は当時の写真を探して掲載してみたが、残念ながら色は褪せている。

Img318_640_2Img319_640Img320_640Img321_640

 左から、伝・山楽作「二十四孝図」、尚信(探幽の弟)作「高山四皓図」二双、右が山雪の「雪景山水図」。
 いずれも屏風の部分を写したものである。

Img314_640 「琳派」や「土佐派」「円山四条派」など、腕のいい弟子たちが継いでいった流派と異なり、権威と地位を世襲していった「狩野派」は伝統を墨守して陳腐に流れたとの評もある。
 ただ時代時代に伝統を革新して、新しい技法を加えていった絵師たちも存在しており、日本の絵画へ大きな影響を与えたことは間違いない。(右は探幽の弟・安信の「群鶴図屏風」部分)。

 「江戸の狩野派」展は、12月15日まで日比谷・出光美術館で。入館料1000円。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 25, 2013

2388.清須会議

Img300_640 下の写真は、三谷幸喜原作・脚本・監督作品「清須会議」のチラシ。

 一段目は、左から織田信長(篠井英介)、弟・信包(伊勢谷友介)、次男・信雄(妻夫木聡)、三男・信孝(坂東巳之助)。
 「本能寺の変」で信長と長男・信忠(中村勘九郎)を失った後の、跡目相続をめぐる騒動が今回の映画のテーマ。
 うつけ者の信雄か、聡明だが出自に問題のある信孝か。

Img299_640_2 二段目は、信長の妹・お市様(鈴木京香)、筆頭家老・柴田勝家(役所広司)、信長の仇を討った羽柴秀吉(大泉洋)、秀吉の妻・寧(中谷美紀)。
 お市様にぞっこんの勝家と秀吉の主導権争いが、今回の映画のストーリー。
 秀吉に夫と子を殺されたお市が、勝家を上手く抱き込んで秀吉復讐をたくらむ。

345033_100x100_009 三段目は、勝家の右腕・前田利家(浅野忠信)、打倒秀吉の丹羽長秀(小日向文代)、日和見家老・池田恒興(佐藤浩市)、秀吉の軍師・黒田官兵衛(寺島進)。
 勝家・秀吉・長秀・恒興の織田家四天王による5日間の会議の駆け引きが140分の映画の流れ。
 これは、会議という名の「戦(いくさ)」である。

345033_100x100_008 そして四段目、織田家家臣・前田玄以(でんでん)、秀吉の家臣・堀秀政(松山ケンイチ)、故信忠の正室・松姫(剛力彩芽)、三日天下の明智光秀(浅野和之)。
 ドンデン返しは歴史が事実として語っているが、武田信玄の息女・松姫と信忠との子・三法師(津島美羽)の存在が映画のキーポイント。
 かくして時代の覇者・信長と信玄のDNAは、江戸時代を経て現代まで続いているのだ。

345033_100x100_006 今年の東京国際映画祭クロージング作品として上映され、話題となった三谷幸喜の「清須会議」だが、「ザ・マジックアワー」('08)「ステキな金縛り」('10)等これまでの彼の作品に比べて、喜劇性は薄い。
 思いのほか真面目に綴った歴史劇と言える。

345033_100x100_005 しかし既に史実として明らかな人物像やエピソードを、三谷なりの新しい解釈を加えたのはさすがだ。

 正直者で無骨、一本気の武将だが大局が読めない勝家。
 皆を楽しませるムードメーカーだが、実は冷酷で腹黒い秀吉。
 冷静沈着、機をみるのが上手い長秀。
 
 二股膏薬で、利に聡い恒興。

345033_100x100_010 結局「清須会議」の4人の出席者のうち、江戸時代までお家が安泰だったのは後者の二人だけ、そこに今の「政治家」の顔をみる。
 作品公開前に三谷は、有楽町で政治家の「街頭演説」をパロディにした映画宣伝を行ったが、「人間喜劇」を自ら演じたのだろう。

345033_100x100_003 もうひとつ、この作品の「人間喜劇」。
 結局「歴史を動かしたのは彼女たちだった」と、三谷はお市と松姫の存在で女の怖さを見せる。

 その先の歴史はご存知の通り。

Img121220 お市と再婚した勝家は、翌年「賤ヶ岳の戦い」で秀吉軍に敗れ自刃。お市もまた、先夫・浅井長政との3人の娘だけを逃して自殺。
 勝者・秀吉は、その長女・茶々を側室にしてようやく「お市様」への想いを遂げる。
 しかし、お市の血を引く秀吉の子・秀頼もまた歴史の渦の中に消えていった。

 総勢26名の豪華キャスト、三谷による新しい歴史エンタテインメントの誕生である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 23, 2013

2387.悪の法則

Img303_640 5人のオールスターキャストが競演した「悪の法則」。

 映画のチラシの写真、左からアメリカの女優キャメロン・ディアス(「ギャング・オブ・ニューヨーク」'02でゴールデン・グローブ賞にノミネイト)。
 スペインの女優ペネロペ・クルス(「ボールベール」'06でカンヌ国際映画祭女優賞)。
 アメリカの俳優ブラッド・ピット(「ジェーシー・ジェームズの暗殺」'07デヴェネチア国際映画祭男優賞)。
 スペインの俳優ハビエル・バルデム(「ビューティフル」'10でカンヌ国際映画祭男優賞)。
 ドイツの俳優マイケル・ファスベンダー(「SHAME」'11でヴェネチア国際映画祭男優賞)。

346480_100x100_001 これだけの大物俳優を集めて撮ったのが、イギリスで「ナイト」の称号を持つ巨匠リドリー・スコット。

 イギリスBBCのディレクターから映画界に転じて、初めて撮った「デュエリスト」('77)でカンヌ国際映画祭新人賞受賞。
 次回作「エイリアン」('79)が世界的にヒットした後は、もっぱらハリウッドで活躍している。
 27歳で弟と共同設立したプロダクションの製作者としても数々の話題作を発表、「グラディエーター」('00)はアカデミー賞作品賞を受賞した。
 今回も20世紀フォックスの作品だが、製作は彼の会社である。

346480_100x100_004 「悪の法則」は邦題、原題は「THE COUNSELOR(弁護士)」。
 若く有能な弁護士が、ちょっと稼ごうと裏社会ビジネスに手を染めたことから、彼を取り巻く人たちと共に取り返しのつかない闇の世界に追い込まれていく、心理サスペンス映画である。

346480_100x100_002_3 弁護士役はマイケル・ファスベンダー、そのフィアンセがペネロペ・クルス。
 一緒に組んだ実業家はハビエル・バルデム、その愛人がキャメロン・ディアス。
 そして裏社会に強い「ヤク」の仲買人を、ブラッド・ピットが扮する。

346480_100x100_008 5人のセレブたちが、巨大な「悪」の罠にかかっていくストーリーだが、スターたちがこれまでなかった異色の役を演じる意外感が面白い。

 なかでも猛獣チーターをペットにして、野うさぎ狩りを楽しむキャメロンの存在が大きい。
 彼女は全身にヒョウ柄のタトゥーを彫り、大胆なセックスシーンを見せる。

346480_100x100_006 この映画が話題を集めているのは、豪華な出演者や大監督の演出力だけでなく、初めて脚本を書いたコーマック・マッカーシーの存在である。
 彼は、ノーベル文学賞候補にも名の挙がる現代アメリカ文学の巨匠。ピューリッツアー賞を受賞した「ザ・ロード」や「ノーカントリー」の作者である。

346480_100x100_009 メキシコ国境を舞台に、麻薬密輸をめぐるこのサスペンス映画は、わずかな金で人の命が奪われる世界とセレブたちの豪勢な社交世界とがやがて交錯していく様を見せつけていく。
 つまり現代は、まさに弱肉強食の世界であり、個々の事情など顧みられる事などないのだと、マッカーシーは書く。

 さて、主役5人のスーパースターたち、生き残ったのは誰か。
 最後まで息を抜くことなく、緊張感を強いられる作品である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 21, 2013

2386.ターナー展

Img304_640_2 イギリス絵画の巨匠として、ヨーロッパ絵画史にその名を残すジョセフ・マロード・ウイリアム・ターナー(1775~1851)。

 ロマン主義を代表する彼の風景画は、後のモネらフランス印象派の画家たちにも大きな影響を残している。

 10代の頃からイギリス国内の風土や名所旧跡を水彩で描き、やがて文学や神話、実際の出来事を題材に油彩による風景画の可能性を追求、晩年には「光と大気」をカンヴァスの上に描き出していった。

002_640 そのターナーの大回顧展が、はじめて上野の東京都美術館で開かれている。
 作品は、ターナーの風景画の世界最大のコレクションを誇る、ロンドン・テート美術館の所蔵品。

 300点の油彩画の中から名品38点、2万点を数える水彩画や素描の中からターナーの栄光の軌跡をたどる70点あまりが、「初期」から「晩年」までの10のパートで展示されている。

 ターナー作品の見どころをを分類すると、以下の五つに分けられる。

Thcabilbx12_640 〈「絵になる英国」を探して〉
 10代半ばから度々国内旅行に出かけたターナー、「絵になる風景」を探して描いた水彩画。やがて20代に入ると単なる風光明媚を超え、自然の持つ壮大さを油彩で描いていく。(左の作品は「バターミア湖・にわか雨」1798年)

Img309_640_2 〈「海洋国家」の精神を誇る〉
 ターナーにとって「海」は、生涯にわたって重要なテーマ。躍動感あふれる波の表現、風をはらんで進む船、多くの作品の中から今回は20点ちかくが並ぶ。(右の作品は「スピットヘッド」1808年)

Img306_640 〈イタリアに魅せられて〉
 40代になってからターナーは、度々イタリアを旅した。古代の歴史、ルネサンスの文化、彼にとってここは「憧れの地」だった。
 晩年には、とくにヴェネチアを愛し数多くの油彩や水彩スケッチを残している。(左の作品は「ヴェネチア、嘆きの橋」1840年)

Img308_640 〈光と大気を描く〉
 50歳を超えたターナーがたどり着いた最大のテーマが、「光と大気」だった。
 もやがかかった大気の中に、形あるものが溶け込んでいく。鮮やかな色彩と光で満ちた作品は、高い評価を得ている。(右の作品は「レグルス」1837年加筆)

Thca5msrl41_640 〈大自然への畏怖〉
 雄大な自然の景観や、その自然が引き起こす災厄に畏怖や敬意をみたロマン主義の画家たち。
 ターナーの風景画の中にも、嵐の海やアルプスの雪崩など峻厳な自然が描かれたものは多い。(左の作品は「グリゾン州の雪崩」1910年)

Img307_640_2
 そして今回の目玉になる作品が、右の「チャイルド・ハロルドの巡礼ーイタリア」。
 

 ブログ2303号「夏目漱石の美術世界展」(13.6.6)でも紹介したが、イギリスに留学した漱石が愛した、「ターナーの美」を代表する作品である。

 横幅約2.5mもあるカンバスのなかでひときわ目立つのが、傘のように枝を広げた松だ。
 「『あの松を見給え、幹が真直ぐで、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね』と赤シャツが野だにいう・・・・・。」(夏目漱石「坊ちゃん」から)

Th3_640 松山市の名勝「四十島」の松を眺める、教頭と画教師との会話。今この島は「ターナー島」と呼ばれる。
 一説には「金枝」という作品がモデルともいわれるが、バイロンの詩に霊感を得て描いた大作だけに、日本の文豪の心にも深く刻まれたようだ。

001 昨日の美術館、第3水曜日ということで都民のシニアは観覧料が無料。夕方を狙って出かけたが10分待ちの盛況だった。

 「ターナー展」は12月18日まで上野公園・東京都美術館で、観覧料は1600円。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 19, 2013

2385.ある愛へと続く旅

Img289_640 冬季オリンピックが開催された旧ユーゴの街サラエボ、出会った瞬間に恋におちたイタリアの女子学生とアメリカ人のカメラマン。
 しかし二人の恋は、「ボスニア紛争」に巻き込まれ、悲運の道をたどる。

 あれから16年、ヒロインは息子とともにサラエボへの旅に出る。
 それは、青春のあの頃、彼の地に集い、巡り合い、愛し合った人々との記憶を辿る旅だった。

346363_100x100_002 ヒロインを演じたペネロペ・クルスの演技が光る作品である。
 「それでも恋するバルセロナ」('08)でオスカーを手にした彼女は、スペインを代表する世界的女優。
 今回は初々しいイタリアの女子学生から、高校生の息子と向き合う母親と、長い年月をリアルに体現した。

 撮影の直前、彼女はハビエル・バルデム夫人として出産を体験している。映画では、その豊満なバストを最初は「恋した男」の前で、二度目は「恋した男の子供」の前で晒す。

346363_100x100_003 その恋した男、カメラマンを演じたのがアメリカの若手俳優エミール・ハーシュ。
 「イントゥ・ザ・ワイルド」('07)で見せた若い放浪青年は、精悍な戦場カメラマンの苦悩を滲ませる。

 そして衝撃のラスト、ヒロインが旅の終わりに見たものは。

516218r2myl__sl160_ 今回製作にあたたのは、ペネロペ・クルスが出演した「赤いアモーレ」('05)のスタッフたち。

 監督のセルジオ・カステリットは、前作では主役も兼ねたが今回はヒロインの再婚相手と、脇役に徹した。
 さらに原作・脚本も、前作と同じマーガレット・マッツアンティーニ。彼女は、イタリアの著名な作家として知られる監督夫人である。

346363_100x100_005_2 また息子役に、監督夫妻の実子ピエトロ・カステリットが出演しているのが微笑ましい。

 「ボスニア紛争(1992~1995)」を題材にした映画は多い。
 「ボスニア」('96)にはじまって「サラエボの花」('05)「最後の大地」('11)など、これまで12本を数える。
 それはこの紛争が、第2次世界大戦後にヨーロッパが経験した、最も危機的な状況だったからだろう。

346363_100x100_007 ユーゴ解体とボスニア・ヘルツェゴビナの独立宣言、国内に住むムスリム系・セルビア系・クロアチア系の住民が独立をめぐって対立、血と血で争う内戦となった。

 民族浄化の名のもとに、レイプや暴行、虐殺が日常化し、20万人が犠牲。200万人が難民となってボスニアを離れた。
 ボスニアの古都サラエボは、独立に反対したセルビア軍と旧ユーゴ軍によって無残にも破壊された。

 映画は、今日のイタリア~ボスニア~クロアチアをロケ、時を超えて紡がれる真実の愛の姿を綴っていく。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 17, 2013

2384.恋するリベラーチェ

Img290_640_2 ヴワツィーヴ・ヴァレンティノ・リベラーチェ(1919~1987)、アメリカで一世を風靡してエイズで他界した天才ピアニスト。
 「世界が恋したピアニスト」と呼ばれた彼は、プレスリーが憧れエルトン・ジョンやマドンナたちに大きな影響を与えたミスター・エンターテイナーでもあった。

Th 4歳からピアノを学び、20歳でシカゴ交響楽団のソリストとしてデビューする。
 ジャズからクラシックまで華麗にこなす彼は、その後ラスベガスを拠点に世界中の高級クラブでショーを催し、「世界で最もギャラの高い音楽家」としてギネスブクに記録された。

 彼を有名にしたのは、ピアノの腕はもとより豪華絢爛たる舞台衣装とパーフォーマンスだった。
 黒ダイヤモンドのついた75万ドルのミンクのケープ、純金や宝石をちりばめたため90キロにもなった衣装、派手なロールスロイスでの舞台登場、そしてグランドピアノの上には、トレードマークとなった派手な燭台が置かれた。

346664_100x100_001_2 そのミスター・エンターティナー・リベラーチェの晩年の恋を描いたのが、この作品である。

 原作は彼の恋人だったスコット・ソーソンの回想記。

346664_100x100_004 17歳の「少年」スコットが、57歳のリベラーチェと出会い、誘惑されて囲われる。
 性関係はもちろん、整形でリベラーチェの若き頃の顔に変えさせられる。そして同性愛を隠すための「養子縁組」、やがてヤクに溺れたスコットの狂乱で破局をむかえる・・・・。

346664_100x100_009_2 監督は、もう映画は撮らないと宣言したスティーヴン・ソダーバーグ。

 詳しくは、ブログ2360号「サイドエフェクト」で紹介したので省くが、そのアカデミー賞受賞監督が選んだ主役が、マイケル・ダグラスとマット・ディモンのオスカー俳優二人というのがすごい。

346664_100x100_006_2
 69歳のマイケルが57歳のリベラーチェを怪演し、43歳のマットが17歳のスコットになって彼との恋模様をこなす。
 この二人の全裸も辞さない体当たり演技は、まさに感動的ともいえる。
 この時マイケルは喉頭がんに罹っており、抗がん剤や放射線による苦しい治療の中で撮影は行われたという。

346664_100x100_008_3 さらに81歳のデビー・レイノルズ(「雨に唄えば」'52)が、マイケルの母親役。
 ロブ・ロウ(「サンキュー・スモーキング」'06)が整形医として脇を固めた。

346664_100x100_007_2 実はこの映画、カンヌ国際映画祭のコンペに特別招待されたが、アメリカでは「テレビ映画」の位置づけで、劇場では上映されていない。
 同性愛に強く反対しているキリスト教保守派の声が強くなっている昨今の情勢から、配給会社が二の足を踏んでいるのだ。
 ソダーバーグ監督が、劇場用映画は当分撮らないと宣言した背景もここにあるのかもしれない。

 しかしテレビ番組を対象ににしたエミー賞では、15部門にノミネイトされ作品賞・主演男優賞など14部門で受賞している。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

November 15, 2013

2383.印象派を超えて~点描の画家たち

Img292_640 絵画の真髄は色彩の探求、風景や人物を再現して描く絵画から解放され、描くことを一つの表現として自立していった画家たちを新印象派と呼ぶ。

Img297_640 その代表がフランス人画家のジョルジュ・スーラとポール・シニャック、彼らの絵画技法から大きな影響を受けたのがファン・ゴッホやポール・ゴーギャン、さらには抽象絵画で名高いピート・モンドリアンと続く。(右はゴッホの「自画像」)

 六本木の国立新美術館で開催されている「印象派を超えて~点描の作家たち」展は、オランダのクラレー=ミューラー美術館所蔵の作品を中心に、国内の美術館の作品93点が並ぶ。

Img293_640 左の絵が、スーラの「ポール=アン=ベッサンの日曜日」。
 分割主義、点描画法と呼ばれる新印象派の代表作である。

 感覚的に光や空気感を表現した「筆触分割」の技法をさらに押し進め、当時の色彩理論や科学的解明の影響を受けて鮮明な色彩を探求した。

Img296_640 その画法は、絵の具を混ぜ合わせて「色」を作るのではなく、太陽のスペクトルに基づいた純粋色を点描し、その補色を隣り合わせることで視覚混合を生み出す方法である。
 右のシニャックの「ダイニングルーム作品152」も、近づいて絵を見ると無数の原色の「点」で描かれているのがよくわかる。

Img294_640 上右の「自画像」もそうだが、左のゴッホの「麦束のある月の出の風景」など、新印象派の影響を受けているのがよくわかる。
 彼はオランダからパリに出てスーラやシニャックらと交流する中で、絵はこれまでのくすんだ色調から、生き生きとした色彩へと大きく変貌していく。

Img295_640 点描のタッチはスーラたちより太いが、ゴッホの代表作のひとつ「種まく人」は、ミレーの同名作品に感銘を受けた彼が「点描画法」そのもので見事に描いた作品で、印象派ミレーと比較すれば「新」の意味がよく理解できる。

Img298_640 ゴッホと同じオランダ出身の画家モンドリアンは、ゴッホやスーラの影響を受けながらも、キュビスムの理論を取り入れた抽象表現の世界へと進んでいく。
 左の「コンポジションNoⅡ」のように、上下左右の垂直線と三色からなる四角形の色面は「冷たい抽象」と呼ばれるが、点描画法を乗り越えたリアリティの調和の実現だった。

004_640_2001_640 今回の展覧会は、スーラ・シニヤック・ゴッホ・モンドリアンなど「分割主義」の理念で描かれた作品が、それぞれまとまった点数で出品されているのが特徴である。

 それはゴッホの作品269点をはじめ、「分割主義」画家の表現を高く評価し彼らの作品を集中的に購入した、クレラー=ミューラー美術館の創設者ヘレーネ・クレラーのコレクションが中心となったからである。

 「印象派を超えて~点描の画家たち」展は、12月23日まで六本木・国立新美術館で。観覧料は1500円。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

November 13, 2013

2382.もうひとりの息子

Img285_640 壁の〈向こう側〉と〈こちら側〉。
 紛争によって引き裂かれてきたイスラエルとパレスチナの子どもが、取り違えられて育てられた時、母は父はそして兄弟は・・・。
 宗教・民族・政治の対立によって憎しみ合ってきた二つの家族は、どんな選択をするのだろうか。

 一昨年の東京国際映画祭で、審査員全員が一致して「サクラグランプリ」に選んだフランス映画である。

346092_02_01_03 撮ったのはフランス人の女性監督ロレーヌ・レヴィ、舞台劇の脚本家として知られる彼女にとっては、3本目の長篇映画である。

 彼女自身の出自はユダヤ系だが、作品は決してイスラエル側のプロパガンダではない。
 イスラエル人・パレスチナ人合同の撮影スタッフと、日々議論を重ねながら撮ったという。

346092_01_01_03 なかでも重要な役割を果たしたのが、それぞれの母親役を演じた大女優たちである。

 イスラエル人一家の母親は、フランスから嫁いできたという設定でフランスのトップ女優といわれるエマニュエル・ドゥヴォス(「風にそよぐ草」'09)が演じる。

346092_01_07_03 一方、パレスチナ人一家の母親役は、マリーン・オマリ(「ライラの誕生日」'09)。
 パレスチナ難民出身の監督で世界的な巨匠といわれるラシード・マシャラーウィの夫人、ガザ出身の彼女は夫の作品のプロデューサーをいつも務める。

Intro_img それぞれの夫、つまり父親の存在がイスラエルとパレスチナの現実的な対立を象徴する。
 イスラエル国防軍の大佐役、パスカル・エルベはフランスで活躍するユダヤ系アルジェリア人。
 壁の向こうに追いやられたパレスチナの父親もフランスで活躍するアラブ系俳優のハリファ・ナトゥール、という配役なのだ。

346092_01_02_03 ぎこちなく始まった二つの家族の交流だが、取り違えられた息子たちが意外と早く心を通じるのが救いだ。
 フランスの若手ジュール・シトリュック(「リトル・ランボーズ」'07)とベルギーのマハディ・ザハビが、自分のアイデンティティーに悩む息子を演じて、二つの家族を結ぶ。
 レヴィ監督が作品に込めた「未来への希望」が、二人の息子なのだ。

346092_01_03_03 いまカンヌ国際映画祭で審査委員賞を受賞した日本映画「そして父になる」が、大ヒットしている。
 同じ「幼児取り違え事件」をベースにした作品だが、「もうひとりの息子」が投げかける重い問いにはかなわない。

 メッセージ性の強い作品ではあるが、親子・兄弟の愛情を丁寧に描いた人情劇でもある。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 11, 2013

2381.ダイアナ

Img283_640 「プリンセス・ダイアナ~最後の一年」('98)「ダイアナ妃の小説家」('02)「ダイアナ~プリンセス最後の日々」('07)、イギリスの元皇太子妃ダイアナを主人公にした過去の作品。
 これまでは一本も見ていなかったが、今回は劇場に足を運んだ。日本でのモデル経験もある主演のナオミ・ワッツに興味を抱いたからだ。

Img284_640 イギリス生まれ、オーストラリアに移住し女優に、のちハリウッドでも同郷のニコール・キッドマンと共に活躍している。

 そのナオミも45歳、これまで薄幸な女性を演じることが多かった彼女が、36歳のダイアナを演じる。
 165センチのナオミと177センチのダイアナ、その差を埋めるのはナオミの演技力だった。

346296_100x100_002 世界中の誰もが知っているダイアナのシンデレラストーリー、そして謎の多い死。
 すでに語りつくされた「伝説」に、どんな新しい光をあてるのか。

 プロデューサーのロバート・バースタインは、ウイリアム王子とキャサリン妃のロイヤル・ウエディングに沸くイギリスの観客に、ダイアナが求めた新しい王室の在り方を問う。
 そして今年、ダイアナの初めての孫、ロイヤルベビーが誕生した。

346296_100x100_003 「伝記映画」ではなく「恋愛映画」だとバースタインは企画の意図を語り、パキスタン人心臓外科医との最後の恋だけにポイントを絞った。

 しかし、ドイツ人監督オリバー・ヒルシュビーゲル監督を指名したのは、「イギリスの観客」への配慮があったからだという。
 彼は、アカデミー賞にもノミネイトされた「ヒットラー~最後の12日間」('04)を撮り、歴史的に著名な人物を描く能力に優れているとの評判だった。

346296_100x100_004 
 ヒルシュビーゲル監督は、ダイアナの「事実」に拘る。
 地雷廃絶運動やエイズ撲滅など、ダイアナが歩いた場所、その日時に合わせて、パキスタン~モザンピーク~クロアチア~ロンドンとロケを行った。
 ダイアナが最後を過ごしたケンジントン宮殿や、ジョギングした公園での撮影許可を、王室に求めたのもそのためだった。

346296_100x100_001 監督はファッションにも拘った。
 ダイアナが愛用したドレスの数々、同じブランドでナオミに合わせる。
 ヴェルサーチのブルーのドレスにアザグリーが誕生日に贈った黒のドレス。
 ディオールの靴とバックにショパールのジェリー。
 そしてヘアメイクは、日本人の渡辺典子が担当する。

346296view005 20歳で皇室に嫁いだ若い魅力的な女性ダイアナ、イギリスの元首相プレアは語る。
 「ダイアナは国民に最も愛され、そして王室という古い伝統を壊した」

 当時のエリザベス女王とプレア首相を描いた映画「クイーン」('07)を思い出しながら、ダイアナと二重写しになるナオミ・ワッツの「覚悟の演技」を見る。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 09, 2013

2380.散策・小江戸川越

153_640_3  国の重要無形民俗文化財「川越氷川神社の山車行事」、先月の19日~20日の「川越祭」では、蔵の家並みの旧城下町を、山車29台が子供衆や警護方の手で曳まわされた。

Img291_640_3 「弁慶」「秀郷」「翁」「鈿女」など、江戸時代から明治にかけて名人の手によって造られた山車は絢爛豪華、江戸天下祭を川越に伝えようと時の藩主のお声がかりで町衆が自主的に始めて362年になる。

 今年はその祭りに、56万2000人の見物客が押し寄せた。

 久しぶりの「ひとまく会」(歌舞伎同好の集まり)、「散策&グルメ・イベント」はその川越を会場に、地元在住の仲間が幹事となって催した。

045_640038_640031_640015_640
 川越の見どころ、まずは「川越大師・喜多院」。
 その山門から散策はスタートした。

043_640032_640026_640022_640
 もともと平安時代に創建された勅願所だったが、たびたびの戦乱の兵火で焼失、徳川家康が帰依した第二七世の天海僧正(慈眼大師)のとき、仏蔵院北院を喜多院と改めて再建された。 

 その後の川越大火でまたもや大伽藍のほとんどを失ったが、三代将軍家光の命で江戸城紅葉山にあった別院を移築して客殿・書院・庫裡とした。
 ここに「家光誕生の間」や「春日局の旧居室」が残され国の重要文化財となっているのは、そのためである。

062_640051_640057_640068_640
 最近は写真集などで有名になっているのが、山門近くに並ぶ「五百羅漢」。

 1782(天明8)年から50年かけて彫られたもので、釈迦の十大弟子・十六羅漢を含め五百三十三尊者が並ぶ。

069_640072_640074_640075_640
 「羅漢」とは、仏教の修行を極め最高の悟りに達した聖者・阿羅漢をさす。

 何事かささやき合う羅漢、酒を酌み交わす羅漢、恥ずかしいと顔を伏せる羅漢、おおらかな羅漢たちに、同じ像はひとつもない。

105_640114_640116_640120_640

 喜多院から歩いて10分、「仲町」から「札の辻」の500mが、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている「蔵造りの町並み」である。

 たびたびの大火に見舞われた川越の商人たちは、類焼を防ぐために巧妙な耐火建築で江戸の町家を残した。
 右の蔵は国の「重要文化財」に指定されている「大沢家住宅」。川越では最も古い蔵で、呉服・太物を扱った豪商・大宮半右衛門が1792(寛政4年)に建てたものである。

140_640126_640124_640138_640
 蔵造りの通りの裏にある「菓子屋横丁」。
 川越は江戸の頃から菓子造りの街でもあった。

 地元産の「芋菓子」が有名だが、この横丁には20数軒の駄菓子屋が並ぶ。関東大震災直後は、東京から多くの菓子屋が引っ越してきて70軒も並んだそうだ。

155_640 寛永の頃から390年、美しい音色で「時」を告げてきた川越のシンボル「時の鐘」。
 一日4回、今でも鐘の音を響かせる。

160_640132_640_2 ぐるっと町並みを散策して、お昼のグルメは「うなっ子」の鰻の蒲焼。
 芋を炊き込んだご飯に、鰻のたれがからんで美味。

 川越みやげは、もちろん「芋ようかん」だった。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 07, 2013

2379.グランド イリュージョン

Img282_640 「トランスポーター」シリーズを撮ったフランスの若手監督が、ハリウッドと組んで製作したマジシャン映画。
 仕掛けが大掛かりなので、奇術・トリックを超えた「グランド・イリュージョン」の世界、CGを生かした映画ならではの面白さを見せてくれる。

346052_100x100_008 プロのマジシャンとして世界的に有名な、デヴィッド・カッパーフィールドが監修したのは三つのイリュージョンのアイディア。

 一つはラスベガスを舞台に、遠く離れたパリの銀行から瞬時に320万ユーローを強奪し、ベガスの観客の頭にユーロー紙幣の雨を降らすマジック。

 続いてニューオーリンズが舞台、大富豪の預金資産1億4000万ドルを本人の目の前でかすめ取り、ハリケーン被害者たちの預金通帳振り込むトリック。

 最後のグランドイリュージョンはニューヨーク、不正で手にした隠し資金5億ドルを会社の金庫から奪って、市民にバラまくトリック。

346052_100x100_001 お話は、4人のスーパー・イリュージョニストと、彼らを強奪容疑で手配したFBIとインターポールとの、追いつ追われつの展開となる。

346052_100x100_005 その4人、リーダーはジェーシー・アイゼンバーグ(「ソーシャル・ネットワーク」'10でアカデミー賞ノミネイト)。
 催眠術(メンタリスト)を得意とするウディ・ハレルソン(「メッセンジャー」'09で同じくノミネイト)。
 脱出の天才はアイラ・フイッシャー(「華麗なるギャッピー」'12)。
 カード奇術のディヴ・フランコ(「ウオーム・ボディーズ」'13)。

346052_100x100_002 4人を追っかける方は、FBI捜査官マーク・ラファロ(「キッズ・オールライト」'10でアカデミー賞ノミネイト)とインターポール美人捜査官メラニー・ロラン(「イングロリアス・バスターズ」'09)。

346052_100x100_003  さらにオスカー俳優2人も登場する。
 FBIに協力するモーガン・フリーマンは、トリック暴き専門のテレビタレントで元マジシャン。
 4人のイリュージョン・ショーのスポンサーなのに、彼らに資産を奪われる大富豪が、マイケル・ケインという豪華な顔ぶれである。

 大掛かりで華麗な映像トリックが見ものだが、それらをキチンとモーガン・フリーマンが種明かししてくれるから面白い。

 彼らの犯行動機・目的は、そして黒幕は誰か?
 それはフリーマンでも見抜けなかった。
 

 誰も殺されず、ベッドシーンもない映画だが、エンタテインメントとしては上々。
 最後まで「目の前にあるのに見えなかった」トリック映画である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 05, 2013

2378.中央区・まるごとミュージアム

Img287_640   銀座・京橋・日本橋・人形町・築地・月島・晴海・明石町・・・、私の住む中央区が昨日「まるごとミュージアム」になった。
 今年で6回目となったこのイベントは、江戸開府から410年にわたって日本の文化・商業・情報のキーポイントだった中央区を、「歴史と文化が出会う街」として再認識する試みである。

Img288_640  イベントの数は26、ギャラリーや建物の公開、講談やシャンソン、ライブにクラッシック野外コンサートなど盛りだくさん。
 一日では回れないので、毎年地域を限定して歩きまわている。

121104_033_640099_640  交通手段は、「船」が3コース、「バス」が4ルート、いずれも無料となる。
 昨年は晴海~箱崎を船で巡り、講談を聞き日本橋界隈のイベントに参加、江戸時代からの名店を訪ねた。
 そこで今年は、無料バスで銀座に直行。

094_640089_640092_640088_640
  歩行者天国の銀座中央通り、ブランド店が並ぶ1丁目・2丁目の一本裏通りが最初の目的地である。

083_640073_640075_640079_640

 「銀座奥野ビル306号室プロジェクト」、銀座に現存する最も古いビル「旧銀座アパート」でのイベントである。

 ここは手動エレベーターをはじめ竣工当時の面影を色濃く残しており、昨日はビルのオーナーだった実業家・奥野治助のドキュメンタリー上映、美容室だった306号室では「カットイベント」も行われていた。

106_640104_640103_640105_640

 コーヒー一杯頂いて「銀ブラ」。
 数寄屋橋公園で催されている「銀座将棋まつり」を覗く。

 ここででは「縁台将棋」に因んで、プロの棋士たちによる指導対局。女流名人になった若い女性棋士は、大人や子ども3人を相手に駒をすすめていた。

134_640112_640 無料バスで晴海に。
 トリトンの玄関で風に吹かれるTシャツは、都心の川と運河を船で巡り環境や橋の構造を勉強した子供たちのワークショップ。
 中央区水辺実行委員会の展示会である。

120_640121_640_2 その隣では「中央区まるごとフェスタ」。
 「あんみつ」「末広手巻」「お子様ランチ」「味付海苔」「いなり寿司」など、それぞれの「発祥の店」が「歴史的な味」を並べる。

124_640135_640 区内に出店している6つの県のアンテナショップも一か所に集結して、ふるさとの味のPR。
 ご当地「ゆるキャラ」も登場して、賑わいを見せていた。

063_640047_640044_640008_640
 そしてハイライトは「晴海フラワーフェスティバル2013」。
 イタリアのジェンツァーノ市で中世の頃から続いている感謝祭、「インフィオラータ」の日本版である。

055_640056_640 13年前に始まった「インフィオラータ in Triton」、今回は東京藝大の先生や大学院生が下絵のデザインを描き、地元の子どもたちや市民500人が参加して、「花の絨緞」17枚を造った。

 今年のテーマは「愛の都市」、8万本のバラからとった花びらで、会場はバラの香りに埋まる。
 この展示は、明日まで続く。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 03, 2013

2377.危険なプロット

Img271_640 ベルリン国際映画祭で、主演女優8人が銀熊賞を受賞して注目を集めたミュージカル映画「8人の女」('02)。
 その監督フランソワ・オゾンの最新作が「危険なプロット」、ユーモアセンスにあふれたサスペンス・ドラマである。

345930_100x100_008 作家になる夢を捨てた教師が出会った一人の高校生、類まれなる文才を持った彼が紡ぎだす物語に教師は引き込まれ、抜き差しならない状況に追い込まれていく。

 クラスメイトの家庭をモデルにした小説は、他人の生活を覗き見する快感をもたらし、それに溺れた教師の家庭もやがて破滅へとすすむ。

345930_100x100_009 ベースになったのは、スペインの作家ファン・マヨルガの戯曲。
 オゾン監督は、人間が持つ毒と日常に潜む狂気を、教師と生徒、読者と書き手の心理戦として描き、極上の知的サスペンスを観客に提供した。

345930_100x100_005 教師を演じたのはフランス演劇界の大御所、ファブリス・ルキーニ。オゾン作品は「しあわせの雨傘」('10)に続く2作目の出演である。

 教師とともに「読者」になってしまった妻役は、「イングリッシュ・ペエイシェント」('96)でアカデミー賞にノミネイトされたクリスティン・スコット・トーマス。
 イギリスの大女優だが、フランス語が得意でたびたびフランス映画にも出演している。最近作としては「サラの鍵」('10)に主演した。

345930_100x100_002 覗き見されたクラスメイトの母親、やがて主人公と深い関係に陥る魅惑的な女性は、エマニュエル・セニエ(「エッセンシャル・キリング」'10)。
 ロマン・ポランスキー夫人として、彼の作品の常連でもある。

345930_100x100_004 そして主人公、オゾン監督が発掘したのは新人エルンスト・ウンハウワー。
 ゲイである事をカミングアウトしている監督が選んだだけに、クールな美貌を持った青年である。
 作品の中でも、ルキーニが小説を個人指導する役だが、演技もまた名優ルキーニの個人指導によるものだったという。

345930_100x100_001 フランソワ・オゾンは、私の好きな監督のひとりである。私の子供と同じ年代だが、彼の作品は老成している。
 「8人の女」に続いて「スイミングプール」('03)「ぼくを葬る」('05)「エンジェル」('08)「しあわせの雨傘」とほとんど見ている。

345930_100x100_006 彼が私淑しているウディ・アレン同様、サスペンスをユーモアで包み込むところが上手い。その上、アレンのように斜に構えたところがない。
 今回の作品のように、現実とフィクションの狭間に観客を追い込んでいく手法は、見事だ。

 原作にはないフランソワ・オゾンが仕掛けた結末は、それが彼の全てを語る。

 サンセバスチャン国際映画祭最優秀作品賞・脚本賞受賞、トロント国際映画祭批評家連盟賞受賞作品。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

November 01, 2013

2376.国宝「卯花墻」と桃山の名陶

Img272_640 三井記念美術館が所蔵している桃山時代に焼かれた志野茶碗、国宝銘「卯花墻」を中心に、およそ100点の名陶が並ぶ。
 いずれも岐阜県美濃地方で、慶長・元和年間(1596~1623)に焼造された茶碗や香合・向付・小鉢・水指である。

Img278_640 卯の花が垣の間から見えるような色合い、美濃地方独特の白土に長石釉が掛けられ、釉下の文様や赤みが濃く淡く現れる。

 この時代に日本では初めて焼かれた装飾的なやきもの「桃山陶」は、その色合いから四つに分類される。

Img273_640 まずは「志野」。
 左の重要文化財・銘「広沢」は湯木美術館蔵、右の鼠志野檜垣文茶碗「さざ浪」は個人蔵。

 素地前面に施した化粧を箆で掻き落として文様を現した志野には、「鼠」が振られる。

Img274_640 平安時代から美濃地方で焼造されたやきものは、当時から「瀬戸焼」と呼ばれていた。日常使用する陶磁器を「セトモノ」と称する語源はここからきている。

Img275_640 なかでも鮮やかな黄釉に緑の肝礬釉(硫酸銅)が滲むものを「黄瀬戸」(右上)、黒釉が掛けられた重厚な瀬戸茶碗を「瀬戸黒」(左)と分けて呼んだ。

Img277_640_3 
 また慶長年間の後期に入ると、時代の風潮を繁栄した楽しい器が量産される。
 白と黒、白と緑、赤と緑など、釉と土を使い分けた色彩豊かな「織部」である。
 「織部」はまた轆轤だけでない成形法が編み出され、右の器のような様々な形の食器が造られる。

 「志野」「黄瀬戸」「瀬戸黒」「織部」は、この時代に活躍した戦国武将や豪商たちの「茶の湯」の世界で重宝され、創造力豊かな名陶が次々と生み出されていく。

 特別展「国宝『卯花墻』と桃山の名陶」は、日本橋・三井記念美術館で11月24日まで開催。入館料は1200円。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« October 2013 | Main | December 2013 »