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November 13, 2013

2382.もうひとりの息子

Img285_640 壁の〈向こう側〉と〈こちら側〉。
 紛争によって引き裂かれてきたイスラエルとパレスチナの子どもが、取り違えられて育てられた時、母は父はそして兄弟は・・・。
 宗教・民族・政治の対立によって憎しみ合ってきた二つの家族は、どんな選択をするのだろうか。

 一昨年の東京国際映画祭で、審査員全員が一致して「サクラグランプリ」に選んだフランス映画である。

346092_02_01_03 撮ったのはフランス人の女性監督ロレーヌ・レヴィ、舞台劇の脚本家として知られる彼女にとっては、3本目の長篇映画である。

 彼女自身の出自はユダヤ系だが、作品は決してイスラエル側のプロパガンダではない。
 イスラエル人・パレスチナ人合同の撮影スタッフと、日々議論を重ねながら撮ったという。

346092_01_01_03 なかでも重要な役割を果たしたのが、それぞれの母親役を演じた大女優たちである。

 イスラエル人一家の母親は、フランスから嫁いできたという設定でフランスのトップ女優といわれるエマニュエル・ドゥヴォス(「風にそよぐ草」'09)が演じる。

346092_01_07_03 一方、パレスチナ人一家の母親役は、マリーン・オマリ(「ライラの誕生日」'09)。
 パレスチナ難民出身の監督で世界的な巨匠といわれるラシード・マシャラーウィの夫人、ガザ出身の彼女は夫の作品のプロデューサーをいつも務める。

Intro_img それぞれの夫、つまり父親の存在がイスラエルとパレスチナの現実的な対立を象徴する。
 イスラエル国防軍の大佐役、パスカル・エルベはフランスで活躍するユダヤ系アルジェリア人。
 壁の向こうに追いやられたパレスチナの父親もフランスで活躍するアラブ系俳優のハリファ・ナトゥール、という配役なのだ。

346092_01_02_03 ぎこちなく始まった二つの家族の交流だが、取り違えられた息子たちが意外と早く心を通じるのが救いだ。
 フランスの若手ジュール・シトリュック(「リトル・ランボーズ」'07)とベルギーのマハディ・ザハビが、自分のアイデンティティーに悩む息子を演じて、二つの家族を結ぶ。
 レヴィ監督が作品に込めた「未来への希望」が、二人の息子なのだ。

346092_01_03_03 いまカンヌ国際映画祭で審査委員賞を受賞した日本映画「そして父になる」が、大ヒットしている。
 同じ「幼児取り違え事件」をベースにした作品だが、「もうひとりの息子」が投げかける重い問いにはかなわない。

 メッセージ性の強い作品ではあるが、親子・兄弟の愛情を丁寧に描いた人情劇でもある。

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