2538.菱田春草展
「私の名前は、黒き猫。
明治時代を代表する日本画家、菱田春草の筆から生まれ、
こう見えて肩書は、重要文化財です。」
「黒き猫」で知られる菱田春草(1874~1911)の、生誕140年を記念する「大回顧展」が、東京国立近代美術館で開催されている。
草創期の東京美術学校を卒業後、岡倉天心の日本美術院創立に参加、「線を描かない色彩画」いわゆる「朦朧体」を試み、それまでの「日本画」を色彩の絵画へと変貌させた画家として知られている。
本展は、「黒き猫」(熊本県立美術館・永青文庫所蔵)をはじめとする様々な「猫作品」や、初めて公開された個人蔵の作品など、前後期合わせて108点が展示された。
今回の展覧会の見どころは、重要文化財に指定されている春草作品4点すべてが出品されていること。
上左の作品は1907年に描かれた「賢首菩薩」(近代美術館蔵)、中央上の「王昭君」(善寶寺蔵)は1902年、中央下の「落葉」(永青文庫蔵)は1909年、そして右の「黒き猫」は亡くなる一年前の作品である。
「黒き猫」は、近代日本画で最も有名な猫だといわれる。
この作品が後世の画家たちに与えたインパクトは大きく、竹久夢二や速水御舟が「黒猫」をモデルにした作品を描いたのも、そのひとつである。
展覧会では、重要文化財の「黒き猫」だけでなく、「白猫」「ぶち」「他の黒猫」など、9匹が並んだ。
それぞれを比べてみると、春草の画風の変遷を知ることが出来る。
「黒き猫」と並ぶ春草の代表作が、文展に出品された「落葉」である。
前期展示作品だったので見ることが出来なかったが、同時期に書かれた4点が並んでいた。
全国各地の美術館に分散していた「落葉」連作が、今回一堂に会した。
春草の作品は個人が秘蔵しているものが多く、美術史上重要な作品もなかなか鑑賞する機会がない。
今展では、収蔵家の協力を得て多数の作品が初出品された。
右の「夕の森」もそのひとつで、1906年に家族を連れて茨城・五浦に転居した時の作品である。
この年、日本美術院は組織を縮小して、岡倉天心ら主要なメンバーはこの地で作家活動を行っている。
ブログ2426号('14.2.6)「日本美術の祭典」でも紹介したように、昨年は「岡倉天心没後100年」「下村観山生誕140年」そして今年が「日本美術院再興100年」と、それぞれを回顧する展覧会が続いた。
今回の「菱田春草展」もそのひとつで、日本近代美術史を俯瞰する大回顧展となっている。
展覧会は、来月3日まで東京国立近代美術館で開催されるが、「黒き猫」を含め20数点が、先週新たに展示された。
入館料は1.400円。


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