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October 29, 2014

2540.10月のシネマ(5)

 日本映画を代表する監督たちが撮った作品、現在公開中の話題作2編紹介する。


Img759_640  「舞妓はレディ」

 「それでもボクはやっていない」('07)「終の信託」('12)など、社会派監督として知られる周防正行監督が、大ヒットした「Shall we ダンス」('96)以来久々のコメディを撮った。
 20年来温めてきた念願の企画である。

348578_004 舞妓を夢見て京都にやってきた少女(上白石萌音)と、舞妓に仕立て上げようとする言語学の大学教授(長谷川博巳)。
 
 津軽弁と鹿児島弁をしゃべる田舎の少女は、はたして「舞妓修行」に耐えうるのだろうか。

348578_001 やがて美しい京ことばを学んだ少女は、花街の人々(富司純子・田畑智子・草刈民代・渡辺えり・竹中直人・岸部一徳・・・)に見守られながら「本物のレディ」に成長していく。
 ハートフルなミュージカル・エンターティンメントである。

F279426ad040712358e7b887b8acd51b タイトルでお分かりのように、オードリー・ヘップパーン主演「マイ・フェア・レディ」('64)の周防版。
 ジョージ・バーナード・ショーの戯曲を原作に、ブロードウエイでは'56年以来2717回も上演されたミュージカルでもある。

318887a4410b3a2b794c1b9186384c9f 日本でも、'63年に東京宝塚劇場で江利チエミ・高島忠夫主演で上演されのが始まりで、ヒロインを那智わたるや上月晃、雪村いずみ・栗原小巻・大地真央・真飛聖と交代しながら、昨年まで続いてきた。

348578_005348578_002 「舞妓はレディ」のヒロイン・上白石萌音は16歳の現役高校生。
 鹿児島出身の彼女は、800人の中からオーディションで選ばれたが、三つの「方言」を使いながら歌って踊って初々しく演じた。

 私と同郷で舞台女優の後輩が、「鹿児島弁」の指導を担当していたこともあり、少しハラハラしながらも楽しく鑑賞した。

Img776_640  「ふしぎな岬の物語」

 先月カナダのモントリオールで開催された世界映画祭で、「審査員特別グランプリ」を受賞した映画である。
 受賞の喜びをフランス語でスピーチした吉永小百合さんが、たびたびニュースで紹介されたからご存知の方は多いだろう。

 
Thl3la1705 女優・吉永小百合が初めてプロデュースした作品である。
 「アクションでも、サスペンスでもない、小さな村を舞台にした何でもないお話」だが、そこに流れる日本の庶民の日常と文化が、国際映画祭で高く評価されたと言えよう。

349294_008 原作は、映画化された「津軽百年食堂」('11)や「あなたへ」('12)で知られる森沢明夫の「虹の岬の喫茶店」。
 千葉・鋸南町の明鐘岬にあるカフェを題材にして書いた、オムニバス形式の物語、千葉出身の森沢がカフェを訪れる人たちと店主との交流を、丁寧に綴った。

349294_004 吉永と共同で作品をプロデュースし監督を務めたのは、「八日目の蝉」('11)「草原の椅子」('13)で知られる成島出、彼もまた日本を代表する監督の一人だ。

 多くのベテラン俳優たちが、吉永のキャスティングに応えて出演している。
 彼らは、カフェ店主(吉永小百合が)入れる美味しいコーヒーとともに、それぞれのエピソードを紡ぐ。

349294_003 30年も片思いの不動屋さん(笑福亭鶴瓶)は、プロポーズも出来ずに大阪に転勤する。
 ベテラン漁師(笹野高史)は、突然帰ってきた娘(竹内結子)に戸惑う。彼女は親の反対を押し切って東京に出ていったのだ。
 花屋の跡取り(春風亭昇太)は、村人総出で祝福された結婚相手(小池栄子)に逃げられる。

349294_005 カフェの常連客は、他に和尚(石橋蓮司)・牧師(中原丈雄)・教師(吉幾三)、それに遠くからやってきた陶芸家親子(井浦新)・・・・。

349294_006 エピソードを繋ぐ物語のキーは、吉永を慕うケタ外れの甥(阿部寛)との関わり。
 彼を前にして、心の奥に秘めていた苦しみを一気に吐き出すクライマックスは、長い長い独白だった。

349294_007 カメラはベテラン・長沼六男、衣裳デザインに鳥居ユキ、メインテーマは・村治佳織のギター演奏、杉田二郎・堀内孝雄らの「ブラザーズ5」が劇中歌を唄って出演、吉永プロデュースならではの顔ぶれである。

 モデルとなったカフェの岬をはじめ房総半島各地でロケして、ローカルの味わいを漂わす。

Img750_640 今月見た日本映画は「蜩ノ記」と上記2作品、そして他に「海を感じる時」 の4本。

 「海を感じる時」は、中沢けいが18歳の時書いて「群像新人賞」を受賞('78)した同名小説が原作。
 現役女子高校生が書いたスキャンダラスな小説と、大きな反響をよんだ。

 一人の少女が大人の女性へと成長していく姿を、精緻に描いた作品で、主役は市川由衣、恋の相手が池松壮亮、監督は「僕は妹に恋をする」('06)の安藤尋。
 市川の大胆なセックスシーンが、話題となっている。

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October 26, 2014

2539.猿の惑星(10月のシネマ・4)

Img742_640 先月の朝日新聞に三谷幸喜が、「猿の惑星・新世紀」についてのエッセイを書いていた。
いわゆる「サルワク」ファンとして、これは絶対に映画館で観なければならないと。

 私もまた三谷と同じ「サルワク」ファンである。
  シリーズが始まって46年、これまで製作された7本の作品を、全てリアルタイムで観ている。

Th0vqmx67p_640 第1作目の「猿の惑星」が公開されたのが1968年、私は渋谷の劇場の大スクリーンで見た。
 今や伝説となったあのエンディング(右の写真)に、衝撃を受け感動したことは忘れられない。

Img743_640_2 シリーズ8作目が「猿の惑星・新世紀」、’68年のオリジナル版を進化させた前作「創世記(ジェネシス)」('11)に始まる新しい物語である。
 原題は「Dawn」だが邦題は「ライジング」と、日本人好みのタイトルにした。

348154_004_640 人類の大半を滅ぼしたエイプ・ウイルスの流行から10年、進化した新世代のエイプ(類人猿)たちは、シーザー(アンディ・サーキス)をリーダーにコミュニティを築き、サンフランシスコ郊外の森の中で平和に暮らしていた。

348154_005_640 一方で廃墟となった市内には、ウイルスに対する免疫を持ったわずかな人間たちが生きていた。
 しかし燃料も尽きたため、新たなエネルギー源として水力発電所を再建しようと、人間たち(ジェイソン・クラークほか)はエイプのテレトリーに入った。

348154_003_640 監督のマット・リーブス(「モールス」'10)は、エイプの視点から見た状況を描く。

 侵入してきた人間たちとどう付き合うか、選択を迫られるエイプたち。「拒絶するのか、それとも共存するのか」、エイプの社会も人間社会も穏健派と過激派の思惑が対立し、やがて爆発する。

348154_002_640 作品は、現代社会を見事に暗示する。

 チンパンジーから始まった「エボラ出血熱」、やがて人類は抗ウイルスを持った一握りの人たちしか生存できなくなるのか。

 エイプと人間たちの戦い、徹底抗戦を叫ぶ過激派を抑えられないリーダーたち、どちらがどちらかは別として、「ウクライナ対ロシア」「パレスチナ対イスラエル」「イスラム国対欧米大国」の争いと重なる。

Fafacba8_640 前作「猿の惑星・創世記」については、ブログ1998号(11.01.'11)で紹介した。
 今回の作品の「リプート(起点)」となるので、その一部を再録しておこう。

 アルツハイマー病の新薬開発のため飼っていた「試検用チンパンジー」から生まれたシーザーが主人公。
 母親は、試薬を注射され凶暴化し射殺された。

 シーザーは、神経科学者と獣医の夫妻に育てられ知性に目覚めていくが、人間たちによる実験動物への虐待に怒り、やがてエイプたちを率いてゴールデン・ブリッジで人間との壮絶な闘いに突入する。

 科学者夫妻は森に籠ったシーザーを説得するが、「シーザー、うち、ここ」と拒否されて終わる。

Thv8c0rlo3_640 「猿の惑星」('68)シリーズの見どころのひとつが、特殊技術の進歩である。
 第1作目で驚いたのは、「エイプ」に扮する俳優たちの特殊メークだった。

 「続・猿の惑星」('70)「新・猿の惑星」('71)「猿の惑星・征服」('72)「最後の猿の惑星」('73)と、ロディ・マクドウオール(チンパンジー)やモーリス・エヴァンス(オランウータン)らが見事な「エイプの演技」を見せた。

2014091200000030flix0001view_640_2 しかし「創世記」「新世紀」になると、特殊メークは「CG」に変わる。
 「パーフォーマンス・キャプター」を身に付けて演技する俳優たちの姿が、映像では「エイプ」の姿になる。
 とくに「エモーション・キャプター」の技術を使うと、エイプたちの微妙な感情の表現までリアルに創造できる。

348154_001_640 なかでも、シーザーを演じたイギリスの俳優アンディ・サーキスの演技の評判が高い。
 「キング・コング」('05)のキング・コング、「ロード・オブ・ザ・リング・シリーズ」「ホビット]('12)のゴラムなどでモーション・アクターを務めたが、野生保護区などに出かけゴリラやチンパンジーの生態を研究するなど、徹底した役作りを行っている。
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 フランスの小説家ピエール・プールが、1963年に発表したSF小説「Planet of the Apes」。
 それまで類を見ない設定とスト-リー展開、そして人間社会への辛辣な風刺は今も高く評価されている。

 映画もまた、技術的にも内容的にも進化を遂げながら、我々「サルワク」ファンを楽しませてくれる。

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October 23, 2014

2538.菱田春草展

Img810_640 「私の名前は、黒き猫。
  明治時代を代表する日本画家、菱田春草の筆から生まれ、
  こう見えて肩書は、重要文化財です。」

Img808_640 「黒き猫」で知られる菱田春草(1874~1911)の、生誕140年を記念する「大回顧展」が、東京国立近代美術館で開催されている。

Cont_2186_1_640 草創期の東京美術学校を卒業後、岡倉天心の日本美術院創立に参加、「線を描かない色彩画」いわゆる「朦朧体」を試み、それまでの「日本画」を色彩の絵画へと変貌させた画家として知られている。

 本展は、「黒き猫」(熊本県立美術館・永青文庫所蔵)をはじめとする様々な「猫作品」や、初めて公開された個人蔵の作品など、前後期合わせて108点が展示された。

Img801_640  今回の展覧会の見どころは、重要文化財に指定されている春草作品4点すべてが出品されていること。

 上左の作品は1907年に描かれた「賢首菩薩」(近代美術館蔵)、中央上の「王昭君」(善寶寺蔵)は1902年、中央下の「落葉」(永青文庫蔵)は1909年、そして右の「黒き猫」は亡くなる一年前の作品である。

Img807_640 「黒き猫」は、近代日本画で最も有名な猫だといわれる。
 この作品が後世の画家たちに与えたインパクトは大きく、竹久夢二や速水御舟が「黒猫」をモデルにした作品を描いたのも、そのひとつである。

Img811_640 展覧会では、重要文化財の「黒き猫」だけでなく、「白猫」「ぶち」「他の黒猫」など、9匹が並んだ。
 それぞれを比べてみると、春草の画風の変遷を知ることが出来る。

Img812_640 「黒き猫」と並ぶ春草の代表作が、文展に出品された「落葉」である。
 前期展示作品だったので見ることが出来なかったが、同時期に書かれた4点が並んでいた。
 全国各地の美術館に分散していた「落葉」連作が、今回一堂に会した。

 春草の作品は個人が秘蔵しているものが多く、美術史上重要な作品もなかなか鑑賞する機会がない。
 今展では、収蔵家の協力を得て多数の作品が初出品された。

Cont_2185_2_640_2 右の「夕の森」もそのひとつで、1906年に家族を連れて茨城・五浦に転居した時の作品である。
 この年、日本美術院は組織を縮小して、岡倉天心ら主要なメンバーはこの地で作家活動を行っている。

Cont_2180_2_640_2 ブログ2426号('14.2.6)「日本美術の祭典」でも紹介したように、昨年は「岡倉天心没後100年」「下村観山生誕140年」そして今年が「日本美術院再興100年」と、それぞれを回顧する展覧会が続いた。

 今回の「菱田春草展」もそのひとつで、日本近代美術史を俯瞰する大回顧展となっている。

 展覧会は、来月3日まで東京国立近代美術館で開催されるが、「黒き猫」を含め20数点が、先週新たに展示された。
 入館料は1.400円。

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October 20, 2014

2537.10月のシネマ(3)

  アカデミー賞を受賞している名優・名監督の作品を3本。

Img744_640  「Frankie & Alice」

 「チョコレート」('01)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したハル・ベリーが、自らプロデュースして主演した4年前のカナダ映画。

349631_018_640 70年代のアメリカ、解離性同一性障害を抱えるストリッパー・フランキー(ハル・ベリー)が主人公。
 彼女の体の中には、アリス(ハル・ベリー)という人種差別主義者も棲みついていた。

 フランキーの存在を否定するアリス、アリスは過去のトラウマが生み出したもう一人の自分だった・・・・。

349631_004_640 実話である。
 アフリカ系アメリカ人の父親と白人の母親の間に生まれたハル・ベリーが、10年かけて映画化権を手にした作品である。
 差別された幼少期のトラウマを抱える彼女は、現在は看護婦として生きるフランキーに自分の姿を重ねた。
 自分は何者か、そのアイデンティティを賭けて。

349631_002_640_2 フランキー+アリス+子ども、3人の人格をきっちりと切り分けて見せるハルの演技は流石である。
 この時彼女は44歳、70年代のゴーゴー・ダンスを4分間、フルレングスで踊る。出産直後だとは信じられない見事な肢体だった。

349631_003 監督は、BBCの人気番組「ドクター・フー」で知られるジェフリー・サックス。

 実在の人物でもあるサイコ・セラピストを、スエーデンの俳優ステラン・スカルスガイド(「ドラゴン・タトゥーの女」'11)が渋く演じる。

Img758_640  「ジャージー・ボーイズ」

「許されざる者」('92)「ミリオンダラー・ベイビー」('04)と、2回にわたって
アカデミー賞監督賞・作品賞をW受賞したクリント・イーストウッドの監督作品。

349344_001 「シェリー」「レットイットビー」「君の瞳に恋してる」(ソロ)と次々に大ヒットを飛ばし、’60年代のアメリカン・ポップミュージック界を席巻した「ザ・フォー・シーズンズ」。
 一億枚以上のレコードを売り上げた4人組の若者たちの栄光と挫折、そして再生の物語である。

349344_003 もちろん「実話」である。
 ニュージャージーの貧民街で生まれ育ち、コソ泥で刑務所に出入りした若者たちが、音楽だけでつかみ取ったスターの座。
 しかしその栄光故に、争い・裏切り・別離は襲う。
 その真実の姿を、84歳のイーストウッド監督は暖かく明るく、そして楽しく描く。

349344_004 8年間も上演が続く、トニー賞受賞の同名ミュージカルの映画化である。
 出演も、ほとんどミュージカルと同じ舞台俳優・歌手が務める。
 それだけに、アテレコではない「地声」の歌唱力が素晴らしい。

 映画に登場する馴染みの俳優は、彼らの後ろ盾になったマフィアのボス役クリストファー・ウオーケンだけだろう。
 「ディア・ハンター」('68)でアカデミー賞を受賞した彼も、ラストでは唄って踊る。ウオーケンもまた、若いころはミュージカル俳優だった。

349344_002 60代以上のオールディーズのフアンには、たまらない映画。
 リード・ボーカルのフランキー・ヴァリは今も健在で、最近ツアーで来日している。

 ジャズ音楽に造詣が深く、「マディソン郡の橋」('95)「ミスティック・リバー」('03)「父親たちの星条旗」('06)など、自ら主演したり監督した作品の音楽を担当しているクリント・イーストウッド。
 はじめて監督した音楽映画である。

163935_02_640  「プロミスト・ランド」

 「グッド・ウイル・ハンティング/旅立ち」('98)でアカデミー賞脚本賞を受賞し主演男優賞にもノミネイトされたマット・ディモンが、製作・脚本・主演した作品。
 監督も、「グッド・ウイル」で監督賞ノミネイトの盟友ガス・ヴァン・サントが務めた。

349081_001_640 夢のエネルギーと言われる「シェールガス」の採掘の是非をめぐる、田舎町の人間模様を描いたヒューマン・ドラマ。

349081_002_640 出世コースを歩いてきた主人公(マット・ディモン)、仕事への信念を揺るがす事態に遭遇したとき彼がどう判断して行動したか、今アメリカのコミュニティを分断している社会問題が、見事に抉り出されていく。

349081_005_640 共演しているのは、ガス掘削会社の同僚役フランシス・マクドーマンド(「ファーゴ」'96でアカデミー賞受賞)と環境保護運動家役のジョン・クラシンスキー(「誰でもクジラを愛している」'12)。
 クラシンスキーは、ディモンと共同で脚本も書いている。

349081_004_640 もともとこの作品は、マット・ディモン自身が監督する予定だった。
 しかしスケジュールに無理があって、急遽ガス・ヴァン・サントに依頼したという。

 「グッド・ウイル」以来、「小説家を見つけたら」('01)「ジェリー」('04)と脚本・出演+監督と二人はコンビを組んできただけに、息の合った作品が生まれた。

 日本の観客にとっては、原発問題ともダブルイメージをもつ佳作である。

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October 17, 2014

2536.10月のブックから(2)

Img764_640 葉室麟の時代小説を読了したので、先週は佐伯泰英の新刊文庫を手にする。
 一冊は「交代寄合伊那衆異聞(21)・暗殺」、そして新シリーズ「新・酔いどれ小藤次(1)・神隠し」、「夏目影二郎始末旅(最終巻)・神君狩り」。

Thjdotgbaf 「暗殺」は、桜田門外での井伊大老暗殺事件を背景に、海外に雄飛する交代寄合伊那衆だった元旗本・座光寺藤之助の活躍が描かれる。
 舞台は江戸・横浜・ペナン・マラッカ・セイロンと広がる。
 今作で、佐伯文庫199冊目となる。

Img761 新シリーズ「酔いどれ」は、NHKテレビ時代劇としても放送された「小藤次留書」の再登場である。
 旧作は、昨年2月に刊行された「状箱騒動」(19)以来なぜか筆を下ろしていた。
 その経緯は不明だが、「神隠し」のあとがきに作者は不明と不徳を詫びている。

Thfnzmrnec 佐伯泰英は1942年福岡生まれ、映像ジャーナリストとしてヨーロッパで活躍していたが、帰国後「ユダの季節」「テロルの季節」など、国際謀略小説を書いていた。
 しかし、作品がヒットせず編集者の薦めで時代小説に転じる。

 以来15年、月一冊以上のペースで「文庫本」を出版、時代小説の旗手として高い評価を得ている。

Img762_3 佐伯泰英の時代小説を読み始めたのは、7年前に連れ合いが骨折で聖路加病院に入院した時からである。
 入院患者の無聊を慰めるためか、ナースステーションに「居眠り磐音 江戸双紙」など佐伯の作品20数冊が並んでいた。

Img766_2 以後10シリーズを超える彼の作品を図書館から借りて、脈絡なく読んでいた。
 ある日ハッと気が付いた。それは、彼のシリーズが江戸時代の歴史的ポイントをそれぞれ舞台に選んでいる事だった。
 つまり、それぞれの作品の展開を読めば、「時代の通史」を知ることになる。

 以来、歴史を振り返りながら「切り絵図」を片手に、小説の舞台となった「江戸」を歩いている。

 物語は、徳川家康の江戸入府(1590年・天正18年)のおよそ100年後から始まる。
 次回の「ブックから」では、そのシリーズを時代順に紹介しよう。

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October 14, 2014

2535.蜩ノ記(10月のシネマ・2)

Img716_640 先週のブログ「ブックから」でも紹介したが、葉室麟の25冊を超える著作のなかで、最高傑作と称賛されているのが「蜩ノ記」。
 146回直木賞('11年後期)では、審査委員満票で受賞が決まった。

Th 審査員のひとり浅田次郎は「定められた命を感情表現に頼らず写し取った技は秀逸」と評した。

 映画監督・小泉堯文が作品の映画化を考えたのは、単行本が刊行された直後のこと。作者と直接会って、感触を確かめたという。
 そして13年の4月にクランクイン、遠野の「ふるさと村」をはじめ全国の寺社など2ヵ月かけてロケして完成させた。

 江戸時代の九州の小藩を舞台に、清冽な生きざまを見せたひとりの武士の物語である。

Img768 無実の罪で家族とともに山村に幽閉された前の藩主の側近・秋谷(役所広司)、10年間「家譜」(藩史)編纂を行った後に切腹、と命じられる。

 7年過ぎたある日、その村に監視役としてやってきたのが、家老(串田和美)の命を受けた若侍(岡田准一)。

347266_004_2 秋谷の妻(原田美枝子)や娘(堀北真希)息子(吉田晴登)と共に暮らす中で、若侍は秋谷の死を恐れぬ凛とした姿や彼を支える家族に感銘を受ける。
 やがて無実の「罪」の真実が、明らかにされていくが・・・・。

Img770 作品の基調にあるのは秋谷と若侍の「師弟の愛」、それに「夫婦の愛」「家族の愛」、さらには若侍と娘との「初めての愛」が描かれる。

 とくに「師弟の愛」の描き方には、小泉監督の想いが籠る。
 「影武者」('80)以来黒沢監督の助監督を務めた小泉は、脚本作りから仕上げまで黒沢に師事して様々な手法を学んだ。

 黒沢の愛弟子と言われた彼の監督デビュー作が、黒沢脚本による「雨あがる]('00)。
 以後自ら脚本を書いて「阿弥陀堂だより」('02)「博士の愛した数式]('06)「明日への遺言」('08)と撮ってきた。
 「人と人との出会いによって、人生は大きく変わる」と、黒沢監督と出会うことで人生の道を定めた小泉は、全ての作品にその想いを込めている。

347266_005_2 蜩とは、夏の終わりに寂しげに鳴く蝉。
 「一日、一日を懸命に生きる身の上でござれば、その日暮らしの意味合いをこめ、『蜩ノ記』と名付けました」
 そして歴史とは。
 「都合良きことも、悪しきことも、子々孫々に伝えられてこそ、世の指針となりうる」と、若侍に語る。

 「歴史の中に、美しい姿を見つけたい。それが僕たちの今を豊かにしてくれるのではないか」
 私とほぼ同世代の小泉監督もまた、こう語っている。

 役所広司、岡田准一、原田美枝子の演技については言うことはない。彼らの存在が「心ある時代劇」を生んだ。

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October 11, 2014

2534.江戸・深川、散策&グルメ(2)

046_640047_640 庭園から清澄通りを渡ると、「東海院霊巌寺」に着く。
 1624(寛永元)年に創建された浄土宗の寺で、もともとは日本橋近くの葦原を埋め立てた霊巌島にあった。
 しかし「明暦の大火」で全焼し、深川に移転した。

051_640050_640 寺には、寛政の改革で知られる「老中・松平定信の墓」がある。
 吉宗の孫でもある定信は、陸奥・白河藩主となり11代将軍家斉の時の老中首座に就いた。
 この地が「白河」と呼ばれる所以である。

 彼は、田沼時代の重商中心の幕政を改革し、農村の窮乏、武士の経済破綻を救済した。
 国の史跡となっている定信の簡素な墓は、その象徴ともいえる。

002_640_3Img754_640 伊達藩蔵屋敷由来の「仙台堀」を渡って、門前仲町に。

 掘りを左に遡ると「木場」がある。
 広重の浮世絵にも描かれているように、6条の掘割があり材木問屋のの贅沢な屋敷や庭園、木材置き場があった。
 現在材木市場は「新木場」に移転、跡地は「東京都現代美術館」と「木場公園」になっている。

 今回は散策コースから外したが、秋も深まる頃にこのブログで紹介しよう。

056_640057_640  歌舞伎「髪結新三」で知られる「閻魔堂橋」、「東海道四谷怪談」の舞台「三角屋敷の場」を通って「深川モダン館」に。

 元「東京市営食堂」の建物で、昭和初期のモダンな建築様式を伝える。
 国の登録有形文化財にしてされている建物は、街歩きの情報発信館となっている。

Img752_640_2 広重の浮世絵「深川八まん山ひらき」。
 江戸三大八幡の別当寺「永代寺」の広大な庭は、弘法大師の命日である3月21日から4月15日まで庶民に開放されていた。
 しかし明治の「廃仏毀釈」によって永代寺は廃寺となり、庭園は「深川公園」になっている。

061_640062_640_3 跡地の一角に建てられたのが「深川不動尊」。
 6代将軍綱吉の生母・桂昌院のために、成田山・新勝寺が出開帳をしたのが始まりで、明治の中頃に千葉から不動堂を移設し別院とした。
 もともとの「永代寺」は、お不動さん通り一角にひっそりと建つ。

069_640066_640_3 もと永代寺の境内に、1627(寛永4年)創建された「富岡八幡宮」。
 源氏の氏神・八幡さまだけに、将軍家だけでなく庶民の信仰もあつく、周辺は江戸屈指の門前町として栄えた。

052_640012_640 「水掛け祭り」として知られる八幡さまの夏祭りは、神田・山王と並ぶ江戸三大祭。
 54基の神輿が、2キロの隊列を組んで深川を一周する総渡御は、圧巻である。
 2年ぶりの今年の本祭りは、天候にも恵まれ多くの人でで賑わった。

073_640071_640 「ひとまく会・秋の散策&グルメ」、終点はこの富岡八幡宮境内にある「深川宿」。
 ここから測量の旅に出た伊能忠敬に迎えられて、3時間の深川散策を終えた。

Img735_640 グルメは、江戸の味を伝える「名代・深川めし」。
 その昔、漁師たちが食べた「みそ仕立てのあさり汁のぶっかけ丼」である。
 明治に入ると、あさり炊き込みご飯も「労働者諸君」の弁当になった。

Img734_640001_640_2 深川めしを酒の肴に、江戸・深川の歴史に想いをはせて、ひとまく会一同秋の夜長を楽しんだ。

 今回の散策、歩数は9.71歩。

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October 10, 2014

2533.江戸・深川、散策&グルメ

Img756 江戸の下町、本所・深川。
 竪川を境に、北の両国側を本所、南の森下から門前仲町が深川である。

005_640 歌舞伎好きの仲間「ひとまく会」では、春秋に「散策&グルメの会」を催している。
 今回は、私が企画とガイドを仰せつかったので、皆さんをご案内して秋のひと時を深川界隈で楽しんだ。

 スタートは午後2時、地下鉄大江戸線と新宿線が交わる森下駅から。

Img757_640 広重が描いた「名所江戸百景・深川洲崎十万坪」(右)、際限なく生い茂る葦と荻の中に散在する浮洲、この湿地を家康の命で干拓したのが摂津出身の深川八郎右衛門、「深川」の名はここから付いた。

007_640_2 掘を掘削して運河を引き、掘り上げた土で葦原を埋める。
 森下駅を右折したすぐ近くにある「深川神明宮」は、深川発祥の地で八郎右衛門を讃える。

 一帯が大きく変わったのは「明暦の大火」(1657年)、江戸市中の大名や御家人の屋敷、寺社・材木屋などが強制的に
移転させられ、この地も江戸となった。
 もちろん多くの町人たちも移住、長屋ができて下町が生まれる。
 

008_640009_640 神明宮の先、隅田川を背に「江東区芭蕉記念館」がある。
 1680(延宝8)年、松尾芭蕉は日本橋での宗匠生活を捨てて、深川に庵を結んだ。

026_640023_640 「ふる池や 蛙飛びこむ 水の音」

 彼の有名な句が読まれた「ふる池」の跡からは、芭蕉遺愛の「石の蛙」も発掘されて現在は「芭蕉稲荷神社」となっている。

001_640014_640_2 隅田川と小名木川が交わる堤の上には「史跡庭園」が、海辺橋の南詰には「採茶庵跡」の遺跡が残されている。
 芭蕉は深川の庵を人に譲り、ここから「おくのほそ道」に旅立っていった。

Img751_640028_640_2 歌川広重の亀と欄干の浮世絵で有名な「萬年橋」、今は鉄製のアーチになった。
 家康の命で、庄屋の小名木氏が掘削した小名木川が、隅田川にそそぐ口に架かる。

 利根川の関宿から綾瀬川・中川を経て江戸・大川に、奥州や常陸・下総の産物はこの運河を利用して江戸に運ばれた。

037_640035_640 萬年橋を渡って左に折れると、横綱通りに。
 「北の湖部屋」「大嶽(大鵬)部屋」「錣山部屋」「高田川部屋」「尾車部屋」、両国から多くの相撲部屋が移ってきた。

040_640045_640 その突き当りが「清澄庭園」、日本有数の回遊式泉水庭園として知られる。
 もともと豪商・紀伊国屋文左衛門の屋敷跡で、後に下総・関宿藩久世家の下屋敷になった。

042_640043_640_2 明治に入ると岩崎弥太郎がこの地を買収、大三菱の迎賓館として庭園を造成した。
 園内に点在する銘石は、その折に日本中から運ばれてきたもの。
 1979(昭和54)年、東京都の名勝1号に選定された都立庭園である。( 続 )

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October 07, 2014

2532.10月のブックから

 先月に続いて葉室麟の時代小説に熱中。これまで20冊読んだが、図書館にはあと数冊しか残っていない。今月で読了できるか。

Img745_640   「風渡る」(講談社・'08)

 播州・御着城主小寺政職の小姓だった官兵衛19歳、信長・秀吉に仕え稀代の軍師とよばれた彼の40代までを描いた歴史長篇。

 物語に登場するもう一人の主人公は、イエズス会の日本人修道士ジョアン。
 
Th_640
 キリシタン大名・大友宗麟(右銅像)が、若き頃ポルトガル・明の混血女性に産ませた子供で、動乱の時代を官兵衛と折々に関わりながら生きていく。

 信長からキリシタン禁止令までの戦国の世、時代の風を受けて生き抜いた二人の交歓が爽やかに綴られていく。

Img749_640 信長を裏切った摂津の荒木村重を説得に向かったが、逆に土牢に幽閉されたエピソード。
 竹中半兵衛との交遊、中国大返しなど、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で描かれた物語も登場するが、葉室が主題としたのはキリシタン武将となった官兵衛の「夢」である。

Img748_640 長政に家督を譲り「如水」と名乗った官兵衛、水の如く自在に生きようという意味だが、「ジョスエ」はユダヤの民を率いたモーゼの子の名前でもある。
 洗礼名「ジョスエ・シメオン」、如水が夢みたこの国の姿は・・・・。

 この作品と対になる「風の王国」(講談社・'09)は、狂人の如く朝鮮出兵にのめり込む秀吉の暗殺を示唆する官兵衛の姿が、ダイナミックに描かれている。
 官兵衛、ジョアン、そして細川ガラシャ、三人のキリシタンとしての生きざまが綴られる連作集である。 


Img746_640    「星火瞬く(またたく)」(講談社・’11)

 葉室麟の作品としては珍しく、主人公は外国人である。
 アレクサンダー・フォン・シーボルト、元オランダ商館医師で「シーボルト事件」を起こしたフィリップ・シーボルト(右下写真)の長男、あの「おイネさん」の異母姉弟である。

Siebold_stamp_japan シーボルト事件から30年、再入国を許された父親に連れられ維新前夜の横浜にフランスからやってきた。
 父親が、諸外国と通商条約を結び開国した幕府の外交顧問として招かれたからだ。
 この年アレクサンダーは、13歳だった。

 彼は維新後も日本に残り、明治政府の「お雇い外国人」として井上馨・青木周蔵ら外交官の通訳兼秘書を務めた。
 40年にわたる彼の功績に対して、政府は勲2等瑞宝章を与えている 。

250pxbakunin_nadar 物語は、15歳の彼が父親と離れて横浜のホテルに滞在していたひと月の出来事が描かれる。
 それは、アナキストのミハイル・バクーニン(左)との不思議な交遊だった。

 ウイーン体制を崩壊させた「三月革命」の「ドレスデン蜂起」に失敗して捕まり、死刑を宣告されたバクーニン。
 ロシアに身柄を引き渡された後、7年近い獄中生活を送る。そしてシベリアに流罪となった4年後、ロシアを脱出して日本に逃れてきたのだ。

Th 物語に登場するのは、友人となる帰化アメリカ人浜田彦蔵(ジョセフ・ヒコ・右写真)を中心に、後に浪士組を結成した清河八郎、外国奉行・小栗忠順、咸臨丸でアメリカから帰国した勝麟太郎、そして高杉晋作。

 動乱期の幕末で、バクーニンが彼らに与えた影響とは。
 フィクションではあるが、アレクサンダー・シーボルトが書いた日本滞在記などにも、バクーニンとの横浜での交遊が記録されており、葉室はその事実を膨らませて動乱の時代を描いた。

 バクーニンは、その後アメリカを経由してヨーロッパに帰る。
 ロンドンで結成された「第1インターナショナル」に参加するが、マルクスのプロレタリア独裁に反対して除名されている。

Img747_640  「この君なくば」(朝日新聞出版・'12)

 勤王佐幕で揺れ動く九州・日向の小藩が舞台(延岡藩7万石がモデル)。
 軽格の家の次男に生まれたが、大坂で蘭学者・緒方洪庵の適塾に学び、のち藩主の側近となった主人公が、幕末・維新の動乱の中でも志を曲げずに、まっすぐに歩く姿が描かれる。

 その彼を支えるのは、国学を学んだ師の愛娘。
 横恋慕した攘夷過激派の脅迫にもめげず、藩のために奔走する夫の留守を、娘や姑と守る。

 勤王家として知られる久留米・水天宮の神官・真木和泉との出会い、薩摩藩・大久保市蔵、さらには榎本武揚などとの交流の中で、禁門の変、長州征伐、戊辰戦争を生き抜いた主人公の物語である。

 今日、「オランダ宿の娘」「天の光」「蛍草」を図書館から借り出した。
 今月出版された「風花帖」は、何時図書館にはいるのだろうか。

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October 04, 2014

2531.10月のシネマ

 今月最初の「シネマ紹介」は日本映画2本、といっても先月見た作品である。
 本数的には洋画を見る機会が多いので、邦画だけは忘れずに記録しておこうと。

Img736_640   「伝説の最後~るろうに剣心」

 8月に「アクション・チャンバラ作品」と紹介した「るろうに剣心~京都大火編」の後編は、先月中旬に公開された。

 映画は、前後編2部作を30億円かけて一気に撮影した。
 といっても合わせて5時間近い映画、6ヵ月かけて10の府県24の市町村でロケしている。
 名城・古刹・山奥の寺社・砂丘・海岸・岬そして庄内や茨城の映画村と、ワンシーンごとにロケ地を選んだ。
 各地で参加したエキストラは、のべ5.000人を超えたという。

346394_001_640 作品の原作、和月仲宏が「週刊少年ジャンプ」に連載した「明治剣客浪漫譚」については前回紹介したので省く。

 しかし255話の長大作だけにに、映画の脚本化には苦労したようだ。
 主人公・剣心(佐藤健)と剣を交わす敵役でも、ひとりひとりに出自があり所以がある。
 登場人物のエピソードなどは、ギリギリにしぼって話を展開していくが、原作ファンにとっては不満は残る。

346394_002_640 後編2時間19分の半分は「殺陣」である。
 

 まず剣の師(福山雅治)から奥義を得ようと、真剣勝負を挑むアクション。
 大河テレビ「龍馬伝」でも見せた福山の技は、佐藤を上回る。

346394_006_640_2346394_003_640_2 幕府最後の御庭番頭目(伊勢谷友介)との山中での戦いは、香港仕込みのワイヤーアクションが冴える。

 テロ集団が乗り込む甲鉄艦「煉獄」上では、まず感情を失った侍(神木隆之介)と戦う。
 前編では彼に敗れた剣心、師から引き継いだ奥義が生きる。

346394_007_640 そしてクライマックス、日本征服を目指すテロ集団の頭目(藤原竜也)との最後の決戦。
 るろうに剣心の「伝説の最後」は・・・・・・・。

 壮大なフィクション、単純明快・痛快娯楽映画であるが、内務卿・伊藤博文(小澤征悦)や新撰組出身の警視庁警部・斎藤一(江口洋介)、警視庁長官・川路利良など実在の人物も配して、明治初期の社会状況に敷衍している。

 大友啓史監督、次の「サムライ・アクション映画」は?

Img709_640   「喰女~クイメ」

 「十三人の刺客]('10)「一命」('11)など、こちらも「時代劇」を得意とする三池崇史監督の作品。
 といってもジャンルは幅広く、むしろバイオレンスものに特徴がある、と言った方が良いだろう。

347267_006_640 その三池が今回撮った「喰女」は、時代劇+ホラー=現代劇である。
 歌舞伎役者・市川海老蔵が企画して自ら主演した。

 題材としたのは歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」、あのお岩さんで知られる日本三大怪談のひとつである。
 1825(文政8)年、江戸・中村座で初演されたこの歌舞伎は、元御家人・田宮家の悲劇をもとに鶴屋南北が書いたもので、「忠臣蔵」の世界が下敷きとなっている。

Thrixd7g32 「貞女・お岩が、夫・伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐を果たす」というものだが、今回の作品ではそれが「劇中劇」となる。

 伊右衛門を演じる舞台役者が市川海老蔵、白塗りの「色悪」は得意とするところ。
 お岩を演ずる柴咲コウのメイキャップもみどころ。

 舞台劇にキャスティングされた男と女は恋人同士、ただ二人の間には嫉妬・疑惑・怨みの渦が。

 虚構と現実、それに妄想の世界が交錯して、男女の愛と憎しみが惨劇を生み出す。

347267_007_640 「男が女に喰われるのか、女が男に喰われるのか」
 「男が狂っているのか、女が狂っているのか」
 「現実なのか、それとも妄想なのか」

347267_001_640 三池監督らしく、鮮血バンバンのグロさはあるが、それほど怖くはない。

 劇中劇の舞台稽古風景は、セットも照明もカメラワークも上手い。そのシーンで海老蔵は、歌舞伎役者ならではの演技を見せた。

Tho0qa69fp 実話の世界では、因縁の地がいくつかある。
 新宿・左門町元田宮家屋敷の「於岩稲荷田宮神社」と「於岩稲荷陽運寺」、中央区・新川にある「於岩稲荷社」、そして巣鴨・妙行寺の「お岩の墓」。

 映画を撮ったり芝居の初日の前に、役者たちは必ず「お岩所縁」の地に詣でる。 事故無く芝居が進み、作品のヒットを祈願するためである。

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October 01, 2014

2530.秋・浜離宮

016_640044_640 四季ごとに訪ねる「浜離宮恩賜庭園」、このブログの息抜きに季節の花を紹介している。
 今日は生憎の小雨だが、昨日は好天気だった。

039_640019_640 秋といえば浜離宮は「秋桜」。
 大正時代に日本に渡来した「キバナコスモス」15万本が先月からお花畑を埋め尽くす。
 黄花といっても橙色に近い。

041_640038_640 続いてお花畑は「オオハルシャギク」や「サニー・エロー」と、同じコスモスの仲間が占める。
 いずれも原産地はメキシコ、キク科の一年草である。

065_640_2025_640 広い庭園の所々に、鮮やかな赤い花を見せるのは「ヒガンバナ」、群生はしてないが緑の芝生とのコントラストがきれいだ。

055_640059_640 「スイフヨウ」に「ムクゲ」は、そろそろ花も終わる。
 続いて「ウスギモウセイ」「キンモクセイ」そして「ハギ」が満開。

020_640030_640_2 「キョウチクトウ」や「サルスベリ」を見上げ、足元には「ホトトギス」。

 「ハゼノキ」や「イチョウ」、「カエデ」が色ずくのは、来月下旬から。
 そのころになると、雪吊りや冬囲いも始まる。

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