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July 31, 2016

2940.7月のシネマ(5)

 今月の作品数は11本、邦画は3本と相変わらず外国映画が多い。
 国内の作品は、若者向けのものが多いから仕方がない。
 ドキュメンタリー映画(「AMY」)は別の機会として、紹介できなかった劇映画6本を、メモとして並べる。
 
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   「10クローバーフィールドレーン」
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 監督・製作・脚本・俳優・作曲家、ハリウッドの鬼才といわれるJ.J.エイブラムスがプロデュースした作品。
 彼は、8年前にも「クローバーフィールド」と題したSFパニック映画をプロデュースしている。
 
 今作は、続編ではないがDNAは同じだと話す。
 
355424_003_640  原因不明の交通事故で気を失ったヒロイン(メアリー・エリザベス・ウインステッド)、気が付いた時はシェルターの中だった。
 
 持ち主(ジョン・グッドマン)は、外の恐怖の世界から君を助けたという。
 もう一人、逃げ込んできた男(ジョン・ギャガラー・ジュニア)がいた。
 3人の地下での奇妙な暮らしが始まったが・・・・・、それはというストーリー。 
 
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  「ダーク・プレイス」
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 映画「ゴーン・ガール」(ブログ2566号'15.1.9)の原作者として知られる、アメリカの女性作家ギリアン・フリンが書いたミステリー の映画化。
 
 ダーク・プレイス(闇の中)の記憶が、事件を狂わせた。
355924_001_640  チラシに書かれているように「一家惨殺事件で生き残った少女 。あの夜、彼女が≪見なかった≫ものとは」が鍵となる。
 
 その少女の28年後を、オスカー女優(「モンスター」'03)のシャリーズ・セロンが演じ、自分の証言で終身刑となった兄の無実を、解き明かしていく。
 
 監督は「サラの鍵」('10)で、東京国際映画祭最優秀監督賞を受賞したフランスノジル・パケ=ブランネール。
 兄をタイ・シェルダン(コリー・ストール)、彼の恋人をクロエ=グレース・モレッツ、ヒロインと共に事件を追う若者をニコラス・ホルトが演じる。
 
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  「裸足の季節」
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 昨年のカンヌ国際映画祭監督週間に出品され、絶賛を浴びた作品。
 今年のアカデミー賞外国語映画賞に、フランス代表として出品されノミネイトされた。
 
 フランス映画だが撮ったのは、トルコ出身の女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュベン、デビュー作である。
 言語はもちろんトルコ語、自国語以外でアカデミー賞に出品された作品は、ポルトガル語の「黒いオルフェ」('59)以来だった。
 
355431_005_640  黒海に面した、トルコの小さな村が舞台。
 いまだに戒律と因習に縛られる村人たちの日々を、両親を亡くした5人姉妹を中心に、13歳の末娘の目を通して描いていく。
 歴史・宗教・家父長制、少女たちは自由を求め抵抗し、大人になっていく。
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    「レジェンド」
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 「レヴェナント:蘇えりし者」でデカプリオの敵役として出演、アカデミー賞助演男優賞にノミネイトされたイギリスの俳優トム・ハーディが、カリスマ的なギャングの兄と凶暴な双子の弟の二役を、演じ分けた。
 
355560_008_640  副題は「狂気の美学」。 
 '60年代のロンドンで、その頭脳と暴力で一大犯罪帝国を築いた双子のギャングスター、クレイ兄弟の半生を描いた実話である。
 
 物語は、兄を愛し自死したヒロイン(エミリー・ブラウニング)の語りによって、綴られていく。
 監督・脚本は、「L.A.コンフィデンシャル」('97)でアカデミー賞脚色賞を受賞したブライアン・ヘルゲランド。
 
 タロン・エガートンらイギリスの若手俳優と、デヴィッド・シューリスらのベテランが出演している。
 
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  「日本で一番悪い奴ら」
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 神奈川県警と並んでワルが多いと云われる北海道警、2002年の「稲葉事件」は、それを象徴する「組織犯罪」だった。
 
355482_002_640  銃刀法違反・覚せい剤取締法違反で懲役9年の刑を受けた稲葉元警部が出所後に書いた手記を元に、「凶悪」('13)の白石和彌が撮った。
 
 大学の柔道部で鳴らした主人公(綾野剛)が、請われて道警に入り刑事の道を歩む。
 やがて組織の命により裏社会に潜り込み、「銃器対策のエース」と呼ばれる。
 
 腐敗した警察社会で、ひとりの若者が転落していくさまを、毒々しい笑いとともに哀しく描く。
 出演は他に、中村獅童・ピエール瀧・YANG DAIS・矢吹春奈。
 
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  「嫌な女」
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 桂望実が書いた原作に惚れ込んだ女優の黒木瞳が、テレビ「とと姉ちゃん」の西田征史の脚本で監督デビューした作品。
 性格も生き方も全く異なる二人の女性を主人公に、笑いと涙の人生を描いていく。
 
Yjimage3_640  真面目一徹の堅物弁護士を吉田羊、天才詐欺師の楽天女性を木村佳乃と、初のWヒロイン。
 
 幼少時の「ある事」がトラウマとなり、傷つく事を恐れて他人との関わりを拒否してきた女性が、そのトラウマの原因を作った従妹に振り回されることで、人間性を取り戻していく。
 女性の敵は女性、そして女性の最高の友人も女性。

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July 28, 2016

2939.7月のシネマ(4)

136702772093213206283_640  ドイツを代表する女性監督マルガレーテ・フォン・トロッタ、私より2歳若いが誕生日が同じ日である。
 そんな親しみもあって、日本で公開された彼女の作品はほぼ見ている。
 
 ベルリン生まれの彼女は、若いころにはパリでフランス映画の女優として活躍、帰国後フォルカー・シュレンドルフと結婚して、「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」('75)を共同監督した。
 
Buriki_640  夫のシュレンドルフ監督は「ニュー・ジャーマン・シネマ」の旗手、1979年に製作した「ブリキの太鼓」はカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、アカデミー賞外国語映画賞も受賞している。
 
 彼女の長編映画単独監督デビューは「第二の目覚め」('78)、そして三作目の「鉛の時代」('81)はヴェネチュア国際映画祭で金獅子賞を受賞して、名実ともにニュー・ジャーマン・シネマの監督と評価された。
 
51f7gwjhbll__sl500__640  彼女の作品が日本で話題となったのは、ドイツ系ユダヤ人の哲学者ハンナ・アーレントの伝記映画「ハンナ・アーレント」('12)。
 東京国際映画祭のコンペテイション部門で上映された後、岩波ホールで公開され連日満席が続いた。
 
Hannaharendt_640  この作品でアーレントを演じたのが、ドイツを代表する女優といわれるバルバラ・スコヴァ。
 
 トロッタ監督の「鉛の時代」でヴェネチア国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞、続く同監督の作品「ローザ・ルクセンブルク」('85)ではカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞している。
 
 今回紹介する「生きうつしのプリマ」は、二人の4回目のコンビによる作品となる。
 
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    「生うつしのプリマ」
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 一人暮らしの父(マティアス・ハービッヒ)がネットで見つけた一枚の画像。
 それは、ニューヨークのメトロポリタン・オペラで歌う有名なプリマドンナ(バルバラ・スコヴァ)の写真だった。
 
400x267_640  父に呼び出された売れないジャズ歌手の娘(カッチャ・リーマン)があ然としたのは、それが一年前に亡くなった最愛の母(バルバラ・スコヴィアの二役)と生き写しだったからだ。
 
356876_002_640  父に強く押されニューヨクに渡った娘、気まぐれでミステリアスなプリマドンナに振り回されながら、彼女と母の関係を探っていく・・・・・・・。
 
Ikiutushinoprima_sub1760x507_640  作品は、二つの音楽で彩られる。
 スコヴィアの歌うオペラとリーマンの唄うジャズ、スコヴィアは本物のオペラ歌手でもあり、リーマンはジャズ・バンドを率いてシンガーソングライターとして活躍している女優である。
 
 作品はまた、トロッタ監督自身の半自伝的なもので、40年近く前にアルツハイマーを患って亡くなった母へのオマージュとなっている。

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July 25, 2016

2938.「江戸絵画への視線」展

Imgp0001_640Imgp0003_640 東京・広尾にある山種美術館、開館50周年を記念した特別展「江戸絵画への視線~岩佐又兵衛から江戸琳派へ~」が開催されている。
 
Yjimage1_640  山種美術館は、希代の相場師と言われた山崎種二(1893~1983)が、日本橋・兜町に創設した日本初の日本画専門美術館。
 
Img16070207_640  彼は、横山大観や上村松園、川合玉堂など当時活躍していた日本画家や、奥村土牛ら新進画家たちを公私ともに支援して作品を収集し、美術館を開設した(左は横山大観「喜撰山」)。
 
 後に旧安宅コレクションの速水御舟作品を一括購入、東山魁夷らに作品制作を依頼するなどして1.800の所蔵品を備え、名実ともに近代日本画の代表的な美術館となった。
 
Img473_640 今回の記念展は、山種コレクションのもう一つの名品といわれる「江戸絵画」の作品群。
 
 山崎が絵画に目覚めたのが、小僧時代に見た酒井抱一作品だったことから、美術館には数は少ないが琳派を中心とする質の高い作品が揃っている。
 
 まずは「秘蔵の江戸絵画コレクション」、6年ぶりの一挙公開である。
 
 ポスターになった今話題の伊藤若冲の「伏見人形図」(右)と鈴木其一の「四季花鳥図」、この二つが並ぶのは史上初という。
 
Img474_640  さらには琳派の祖、俵屋宗達の「槙楓図」(左)や「鹿下絵新古今和歌巻断簡」が並ぶ。
 
Img16070201_640_2  話題の作品の一つが、重要文化財に指定されている岩佐又兵衛の「官女寒菊図」。
 岩佐は、戦国時代に信長に謀反して一族郎党を殺された荒井村重の遺児。彼の描く官能的な美女にファンは多い。
 
Img476_640_2 大名家の出身で、琳派の代表的な画家となったのが酒井抱一。
 左の「秋草鶉図」は、重要美術品に指定されている彼の作品。
 ほか「飛雪白鷺図」や「月梅図」など、5点が並ぶ。
 
 また幕府の御用絵師である狩野一派からは、常信の「明皇花陣図」や永岳の「雉子と時鳥図」など3点。
 
Imgp0005_640Imgp0014_640  さらに池大雅、谷文晁、田能村竹田、椿椿春と合わせて41点の作品が展示された。
 
Img16070209_640_2  なお、山種美術館と近代日本画家の章も設けられ、山崎種二との交友が深かった横山大観や川合玉堂、上村松園、安田靫彦ら6人の日本画家の作品も並べられていた。
 
 「江戸絵画への視線~岩佐又兵衛から江戸琳派~」は、8月21日まで東京・広尾の山種美術館で。
 入館料は1200円。

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July 22, 2016

2937.7月のシネマ(3)

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 今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネイトされた5人。

 「キャロル」のケイト・ブランシェット(ブログ2886号2.22)、「ルーム」のブリー・ラーソン(2905号4.19)、「さざなみ」のシャーロット・ランブリング(2921号6.5)の3作品はすでに紹介した。
 


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 今月公開されたのが、シアーシャ・ローナン主演のアイルランド作品(イギリス・カナダ合作)「ブルックリン」。

 
 シアーシャは、「つぐない」('07)で史上最年少の13歳で助演女優賞にノミネイトされたアイルランドの女優、今回は主演女優でノミネイトされた。
 彼女の最近作では、「グランド・ブタベスト・ホテル」('13)が印象に残る。
 
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(アカデミー賞の主演女優賞は「ルーム」のブリー・ラーソンが受賞した。ノミネイトされた最後のひとり、ジェニファー・ローレンスの主演作品「JOY」は、何時どこで公開されたか宣伝もなく不明)

 
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  「ブルックリン」
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 ブッカー賞にたびたび名前が挙がるアイルランドの作家、コルム・トビーンの同名小説の映画化である。
 
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 1950年代、アイルランドの片田舎からニューヨークに移住した少女(シアーシャ・ローナン)がヒロイン。

 ブルックリンのデパートで働くが、純粋無垢な彼女は都会の喧騒に馴染めずホームシックにかかった。
 
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 そんな彼女の心を支えたのがイタリア系の配管工の若者(エモリー・コーエン)、二人は愛し合い将来を誓う。

 
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 しかし彼女に悲報が届いた。母と二人、故郷に残った姉の死である。

 故郷に帰った彼女を待っていたのは、幼馴染の裕福な青年(ドーナル・グリーソン)。
 
 二つの故郷と二つの愛 、ひとりの女性が迷いながらも幸せな未来にむけて、心を決めていく物語である。
 
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 監督はアイルランドのジョン・クローリー、「BOY」('07)でベルリン国際映画祭審査員賞を受賞した俊英。

 脚本は、「17歳の肖像」('09)でアカデミー賞脚色賞にもノミネイトされたイギリスの作家・ニック・ホーンビィ、今回も「作品賞」「脚色賞」にノミネイトされている。
 

 アイルランドのナショナルカラーである「グリーン」が、象徴的に登場する。

 
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 はじめて一人で、ブルックリンの地に足を着いた彼女のコートは、身を守る鎧のようなグリーン。
 そして彼女が恋人を得て、ニューヨーカーに変貌していくたびに、コートやブラウスは黄色や赤に変わっていく。

 


 ラストシーン、彼女が羽織るカーデガンはグリーン。しかしスカートは華やかな色彩の花模様だった。

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July 19, 2016

2936.海と日本in晴海

100515_021_640100515_042_640   昨日は国民の祝日「海の日」、海の恵みに感謝し海洋国日本の繁栄を願って、1995年に制定された。
 
 もともと7月20日だったのが、「ハッピーマンデー制度」により7月の第3月曜日になってしまった。
 
100515_057_640_2100515_053_640_2  祝日化される前は、「海の記念日」だった。
 1876年、明治天皇が「明治丸」に乗って東北地方を巡幸、横浜港に帰着した日が 7月20日だったことから、それに因んで記念日とした。
 
 所縁の「明治丸」は、現在も東京海洋大学の校庭に保存されている。

Imgp0030_640_2Imgp0036_640_2 昨日は全国の主要な港で、様々なイベントが行われたようだ。
 
 東京・晴海ふ頭でも、「海と日本PROJECTin晴海」と題して、普段は見学できない専用船や官庁船を一般公開した。
 
Imgp0002_640Imgp0023_640  右は、商船三井がチャーターしている自動車運搬船「AQUAMARINE ACE」(ケイマン諸島船籍)60.143t。
 
 神戸の三菱重工で8年前に建造されたこの船は、全長200m、幅32m、およそ6.300台の自動車が積載できる。
 普段は横浜港をベースにして、北米へ輸出車を運んでいる。
 
Imgp0040_640Imgp0037_640 左は、水産庁の漁業調査船「開洋丸」と海洋研究開発機構の「よこすか」。
 
Img482_640 「よこすか」は、有人潜水調査船「しんかい6500」や深海巡航探査機「うらしま」を支援する母船として、26年前に建造された。
 
Imgp0039_640 総トン数4.439、全長105m、潜水要員18名など研究員合わせて60名が乗船して、東太平洋海膨・大西洋中央海嶺などで「しんかい6500」による潜航調査を支援。
 
 12年前には、環太平洋で世界最大の海底溶岩流を発見するなど、話題をよんだ。
 今回初めて船内が公開され、人気を集めていた。

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 練習帆船「日本丸」や海上保安庁巡視船「いず」なども一般公開されていたが、今回は初めて水産庁の漁業取締船を見学した。
 
Imgp0007_640_2Imgp0013_640 乗船したのは「東光丸」(2071t)と「白竜丸」(1598t)。
 
 テレビなどでは不法操業の漁船の拿捕に、海上保安庁の巡視船が活躍するので誤解するが、法的には水産庁の職責で、巡視船は協力している立場なのだそうだ。
 
Imgp0018_640Imgp0008_640  だから漁業取締船には、特別司法警察職員が乗船して漁船を臨検、違法者の逮捕・送検も行っている。
 ただ海上保安官とは異なり、けん銃や銃器の武装は認められない。
 
Imgp0015_640Imgp0014_640  そのため乗組員は、護身術の訓練を受け、特殊警棒による逮捕術を学んでいる。
 
 船内には、防刀手袋やプロテクター、特殊警棒や手錠も展示され、排他的経済水域で増えている違法操業への対応をアピールしていた。
 
Imgp0005_640Imgp0003_640  漁業取締船の隣には、海技教育機構の練習帆船「海王丸」が停泊していた。
 
 朝から展帆訓練が行われていたそうだが、午後には晴海ふ頭を出港する。
 私が訪れたときは、畳帆作業が行われていた。
 
 冒頭の写真は6年前の晴海ふ頭、姉妹船「日本丸」の展帆である。
 
 

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July 16, 2016

2935.7月のシネマ(2)

 先月のブログ2923号でも紹介したように、ヨーロッパの映画界で注目を集める日本人監督を「4K」と呼んでいる。
 
Yjimageprtbnr2e_640  その一人が黒沢清、神戸出身の60歳。
 立教大学で自主映画サークルで活躍、「ぴあフイルムフェスティバル」に入選したのち助監督を経て、1983年に「神田川淫乱戦争」でデビューした。
 
 5作目のホラー映画「CURE」('97)で国際的な注目を集め、同じホラー映画「回路」('00)でカンヌ国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞した。
 
Yjimage12xsksg8_640  その後、香川照之を主演に撮った「トウキョウソナタ」('08)がカンヌ国際映画祭「ある視点部門」で審査員賞、前田敦子主演の「Seventh Code」('13)がローマ映画祭最優秀監督賞、そして昨年浅野忠信・深津絵里主演「岸辺の旅」でカンヌ国際映画祭「ある視点部門」監督賞を受賞した(ブログ2769号で紹介)。
 
 黒沢は監督・脚本・映画批評を続ける中、東京藝大大学院教授として若い映画人を育てるなど幅広く活躍し、映像文化に貢献したとして今年は川喜多賞を受賞した。
 
Img468_640  その黒沢は、現在日・仏・ベルギー共同製作の作品を撮っている。
 「ダゲレオタイプの女」、黒沢監督以外のスタッフはヨーロッパの映画人、もちろん出演者もフランスの俳優、彼にとって海外初進出作品で、10月公開予定。
 
 そして黒沢清の最近作が、先月から公開されている「クリーピー偽りの隣人」である。
 ヨーロッパ映画ファン好みのタッチ、ベルリン国際映画祭に正式出品され香港映画祭ではクロージング上映された。
 
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  「クリーピー偽りの隣人」
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 クリーピーとは、「ぞっと身の毛がよだつような、気味が悪い」を意味する。
 日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した、法政大学教授・前川裕の同名小説が原作である。
 
353643_011_640  ある夫婦が「奇妙な隣人」と関係を持つことで、深い闇へと引きずり込まれていく恐怖を描く「サイコ・スリラー」映画。
 近所付き合いが希薄な日常社会、描かれる「恐怖」は誰もが経験するかもしれない。
 
353643_004_640  主人公は刑事出身の犯罪心理学者(西島秀俊)、6年前に発生した未解決の「一家失踪事件」を、後輩刑事(東出昌大)と追う。
 学問的興味からだったが、生き残りの長女(川口春奈)の記憶があいまいで、核心に迫れない。
 
353643_013_640  一方、妻(竹内結子)と引っ越ししてきた新居の隣人(香川照之)と娘(藤野涼子)は、どこか奇妙な家族だった。
 
 「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」
 娘の叫びから、物語は「深い闇」へと突き進んでいく。
 
353643_001_640  黒沢作品4回目の出演となる西島秀俊と香川照之、しかし共演は初めてである。
 
 闇を追う西島と闇に引き込む香川、その香川に心理的に支配されていく竹内、個性派俳優たちの演技が、サスペンス・スリラーの醍醐味を味合わせてくれる。
 

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July 13, 2016

2934.7月のブックから(2)

Yjimage_640  森村誠一83歳、推理小説の大家であり、ノンフィクション作家でもある。
 
 「高層の死角」('69)で江戸川乱歩賞、「腐食の構造」('73)で日本推理作家協会賞、「人間の証明」('76)で角川小説賞を受賞するなど、次々とヒット作を生み出した。
 
 その森村が、'80年代ころから時代小説を書き始めた事は知っていたが、推理小説家としての彼のファンだったためか、読むのは敬遠してきた。
 
 先日ふと図書館の棚を眺めて、彼の時代小説を手にとってみた。
 面白い。一気に読める。とことんエンターテインメントにこだわる。
 荒唐無稽な筋立てもあるが、一応実在人物も登場させて時代背景を語る。
 それが吉川英治文学賞受賞作「悪道」('10)だった。
 
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  「悪道」
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 「悪道ー現世で悪事を犯した者が、死後、落ちて行くところ。地獄、餓鬼、畜生、阿修羅の四悪道の意味」
 こんな書き出しから始まる時代小説だが、「悪」にプラスのイメージを想像させる。
 
 悪源太、悪五郎など、その人が抜群の能力、気力、体力、超常の能力を持つ人の名。
 また「悪道」は通常の道ではなく、常に危険や、困難や、敵などと戦い、これを克服しなければ生き残れない「超常の道」である。
 後にシリーズとなる「悪道」の主人公・流英次郎は、そんな人物であり「悪道」を歩き続ける。
 
Imgp0018_640_2  時代は五代将軍・徳川綱吉の治世、あの悪名高い犬公方である。
 そして彼を取り巻くのが柳沢吉保であり寵僧・隆光、この物語の悪役となる。
Imgp0002_640  柳沢邸に御成りになった綱吉が、脳卒中で急死したというフィクションから物語は始まる。
 
 柳沢は将軍の影武者を立てて権力の保持を策すが、それを見破ったのが主人公・栄次郎。
 伊賀者の彼は、上様の添番として駕籠脇についていたのだ。
 
 その栄次郎を亡き者にしようと、柳沢が放った暗殺集団「猿蓑衆」との壮絶な闘い、小説はクライマックスへ。
 
 闘いの中で栄次郎と縁を結んだのが、将軍の最後を看取った奥医師の娘・おそで、累代影武者の教育を務めた幕臣の遺児・道之介、夜盗の頭目・雨宮主膳、猿蓑衆を離れ栄次郎側についた霧雨、掏摸の名人・銀蔵、雲助の弥ノ助と愛馬「かさね」。
 
 彼ら「流軍団」が、影将軍に忠誠を誓い公儀隠密として活躍するのが、以下のシリーズである。
 
Img420_640_3Img421_640_5Img422_640 「西国謀反」は中国地方の大藩・浅尾家(モデルは安芸藩・浅野家?)が舞台。
 
  歴代当主の不審死、柳沢と手を組み お家乗っ取りを図る家老、その配下である残忍な暗殺集団「風炎衆」と「流軍団」との死闘が綴られる。
 
 「御三家の刺客」は、紀州藩・尾州藩がからむ陰謀との闘い。登場するのは紀伊の「根来衆」であり 、尾張の「甲賀忍軍」。
 
 第4集の「五右衛門の復讐」は、百十余年前に釜茹でにされた石川五右衛門所縁?の者たちとの「決戦」となる。
 
Img447_640Img446_640Img445_640 改めて 森村誠一の「棚」をチェックした。
 
 剣の腕はピカ一の脱藩浪人が活躍する「刺客請負人シリーズ」、大名のご落胤が主人公の「暗殺請負人シリーズ」、そしてこの「悪道シリーズ」。
 
 ここ10年森村は、その歳を忘れさせるように、精力的に「爽快時代小説」を書き続けている。

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July 10, 2016

2933.7月のシネマ(1)

Yjimagebxehy8hb_640  リメイク作品というジャンルを知ったのは、黒澤明の「用心棒」('61)をセルジオ・レオーネが「荒野の用心棒」('64)として作品化した時だった。
 これは無断でリメイクしたので、東宝がイタリアの製作会社を訴えて勝訴している。
 
 それより以前、同じ黒沢の「七人の侍」('54)をハリウッドが「荒野の七人」('60)でリメイク、こちらは黒沢らを原案としてクレジットしていた。
 
 逆のケースで思い出すのは、クリント・イーストウッド監督・主演の「許されざる者」('92)を、李相日監督が渡辺謙主演でリメイクした同名作品('13)がある。
 ベースとなったハリウッド作品のテイストを残しながら、日本映画らしい仕上がりとなっていた。
 
Img_9231_640  今号で紹介するハリウッド映画「シークレット・アイズ」も、リメイク作品の傑作といえよう。
 
 ベースとなったのは、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」('10)である。
 
 とくに受賞作品を監督・脚本・編集、製作も担当したファン・ホセ・カンパネラが、リメイク版の製作総指揮に当たっているのが注目されるが、「瞳の奥の秘密」で絶賛された驚愕のラストシーンを、本作はさらに捻って新時代のサスペンス映画を生み出した。
 
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  「シークレット・アイズ」
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 オスカー二大女優ジュリア・ロバーツ(「エリン・ブロコビッチ」'00)とニコール・キッドマン (「めぐりあう時間たち」'02)、「それでも夜は明ける」('13)でアカデミー賞にノミネイトされたイギリスの俳優キウェテル・イジョフォーが競演する「極上のサスペンス!」が惹句。
 
 「キャップテン・フィリップス」('13) でアカデミー賞脚本賞にもノミネイトされた、ビリー・レイの監督3作品目 である
 
355954_001_640  9.11後のロサンゼルスで、テロ対策合同捜査班にNYから派遣されているFBI捜査官(キウェテル・イジョフォー)が、殺人事件現場で見た被害者は、親友である検察局捜査官(ジュリア・ロバーツ)の愛娘だった。
 
 彼は、エリート検事補(ニコール・キッドマン)と共に捜査に乗り出し容疑者の男を逮捕したが、検察上層部は男を釈放する。
 容疑者が、モスクに潜む過激派にもぐり込ませたスパイだったからだ。
 
355954_007_640  それから13年、検察の姿勢に反発してFBIをやめた元捜査官が、今や検事に昇進した彼女や娘をなくした捜査官のもとに、再び帰ってきた。
 
 警備員をしながら全米の受刑者を調べ、刑期を終えた男のたちの中に「あの男」を見つけたからだ。
 
355954_004_640_2  しかし、未解決殺人事件の謎に迫れば迫るほど、真相は遠ざかっていく。
 そして捜査チームがたどり着いたのは、予想だにしない「事実」だった・・・・。
 
Bbd35087s_640  検事ニコールの凄みと色気、やつれたジュリアの入神の演技、そしてひたむきなキウェテル。
 3人の演技派が見せる人間ドラマと衝撃のラストが、この映画の見どころである。
 ほぼ満席だった劇場、ラストタイトルが流れるなか席を立つ人はいなかった。

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July 07, 2016

2932.入谷朝顔まつり

014_640017_640_2 「恐れ入谷の鬼子母神、そうで有馬の水天宮」
 大田蜀山人の狂歌で知られる仏立山真源寺は、「明暦の大火」(1657年)の2年後に、ここ入谷の里に建立された日蓮宗の寺院である。
 
020_640  この寺の境内と参道で、毎年開かれているのが「入谷の朝顔まつり」。
 
 下町の夏の風物詩といわれ、明治の中頃から始まったが大正に入って廃れ、戦後再開され今に続いている。
 
 参道に並ぶのは、近郊の農家や植木屋が育てた8万鉢の朝顔。
 120の屋台が、自慢の「花鉢」を競っていた。
 
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 「桔梗咲」「斑点紋」「牡丹咲」・・・・。
 変わり咲きした朝顔を品種改良して育て、入谷の名物にしていく。
 
 朝顔づくりが始まったのは 「文化・文政の時代」(1804~1829) 、災害が多発し飢餓が激化した天保時代には一時衰えたが、「嘉永・安政時代」(1848~1859)には第二流行期を迎える。
 
004_640_2030_640 そして明治維新で中絶したが、国内が落ち着くにつれ第三流行期の時代が続く。
 さしずめ現在は、第四流行期と言える。
 
025_640032_640 入谷は、江戸時代から朝顔つくりが盛んだったところ。
 
 「入谷の田圃」と呼ばれる土壌が栽培に適しており、近くの御徒町に住む御家人たちが、内職として朝顔を育て「珍品・奇品」を競った、と記録に残されている。
 
024_640023_640 現代の「珍品」は「団十郎」、歌舞伎・成田屋のシンボルカラー 「柿茶色」の花が咲く。
 ここ10年、「入谷の朝顔まつり」では最も売れ行きの良い品種で、他より値も張る
 
Imgp0010_640Imgp0014_640 今年もまた、「団十郎」を一本加えた4色咲を買ったが、おまけに矮性の珍しい「団十郎」の小鉢もいただいた。
 
 「入谷の朝顔まつり」は明8日まで、交通は地下鉄日比谷線「入谷駅」下車が便利。
 「4色」は一鉢2.000円、「団十郎のみ」は3.000円、小鉢1.000円。

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July 05, 2016

2931.猛暑・甲斐路

Imgp0004_640_2Imgp0001_640_2 恒例の「月島一之部西町会」日帰りバス旅行、猛暑の予報がでた日曜日に中央道を走った。
 
 近所に新築マンションが完成して町内会員も増えたので、若い家族連れが多い。
 今回はバス3台、90名の旅である。
 
Imgp0007_640Imgp0010_640  月島を出発して2時間、最初の目的地甲州市の「シャトー勝沼」に到着。
 ここ鳥居平は、ワイン用の葡萄産地としては日本一の生産量を誇る。
 
Imgp0017_640Imgp0019_640  ビン詰工場やワインセーラーを見学して 、みなさんは試飲コーナーへ。
 こちらは周囲の葡萄畑で、今秋の実りを想像した。
 
Imgp0022_640_2Imgp0023_640  葡萄畑の中から、突然お湯が噴出した。
 
 笛吹川沿いにある「石和温泉郷」は、湧出してから55年と歴史は浅い。
 時あたかも高度成長期、JRで1時間半前後、中央自動車道も開通して東京の奥座敷になった。
 
 町会参加者一同はここで昼食、「温泉」を楽しみながらひと時を過ごす。
 
Imgp0046_640Imgp0031_640 食後のデザートは「白桃」、バス旅行のハイライトは園内食べ放題の「桃狩り」である。
 
 日本一の「桃源郷」といわれる笛吹市一宮、7月上旬は「日川白桃」が完熟している。
 およそ30か所の農園には、39度を超える猛暑の中観光客で賑わっていた。
 
Imgp0041_640Imgp0036_640 園内でもいだ桃は、何個でも無料で食べられる。
 持ち帰る場合は量り売り、日によって価格は変わるが今回はキロ890円、4個弱の値段だった。
 
Imgp0053_640Imgp0048_640 帰途、同じ一宮にある「桔梗屋」に立ち寄る。
 
 一個一個を手で包装し、最後は風呂敷包みにした「信玄餅」の工場である。
 一個を包むのに6秒、一日約10万個が生産されるという。
 
Imgp0029_640_2Imgp0005_640  町会の「日帰りバス旅行」は、年1回のイベント。
 参加費は、バス代・食事・桃狩りをふくめ4.000円。
 町内会費や区の地域活動活性化補助などもあり、実費の半分で済む。
 
Imgp0060_640Imgp0061_640 「談合坂」で休憩をとり東京へ。
 
 小仏トンネルあたりから渋滞が始まり、八王子JCでは動くなった。
 人身事故による交通規制のためらしい。
 
 16時に笛吹を出発して中央自動車道に、自宅に着いたのは21時15分だった。
 予定より3時間遅れ、楽しかったが年寄りには少々堪えた旅行となった。
 

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July 02, 2016

2930.7月のブックから

Main_photo_01_640  「新しい戦場を感じろ」
 いま旬の歴史・時代小説作家7人が、同じ日・同じ舞台にまみえた7人の武将を描いた。
 
 彼らは何を考えてどう行動したのか、競作短編集「決戦!関ケ原」は乱世を終わらせる運命を背負った男たちを描く。
 
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     「決戦!関ケ原」
 
  「人を致して」、東軍の将・徳川家康を描いたのは伊東潤(1960~)。
 
 物語は、深夜密室での謀議から始まる。
 密かに顔を合せたのは家康と本田正信そして石田三成と島左近、武断派といわれる加藤清正や福島正則ら豊臣家大名を誅するためのシナリオ、「関ケ原合戦」の出来レースを図ったのである。
 
Yjimage_640  同床異夢、合戦は結果としてシナリオ通りとはならず、家康の策謀が勝った。
 これまでは他人に致されてばかりいた人生だったが、家康は遂に致す立場に立たのだ。
 
   「笹を噛ませよ」、福島正則の臣・槍の可児才蔵を、吉川永青(1968~)が描く。
 
 岐阜城攻めで池田輝政に先陣を獲られた福島隊、天下分け目の一線では先陣を約束されたが、火ぶたを切ったのは徳川第一の臣・井伊直政。
 
0028_640  「井伊を探せ!兵部(直政)めを殺せ!あのものの首を左衛門尉様(福島正則)に献じるのだ」と、井伊の赤備えを追ったのが可児才蔵。
 
 戦い終わって家康の前に並べられた首、口に笹の葉を噛んでいた。
 それは・・・・。
 
   「有楽斎の城」、茶人・織田有楽斎の戦場を、天野純希(1979~)が描く。
 
002_640  織田信長12人兄弟の11番目、13歳離れた長益は賢兄愚弟の見本と言われる。戦嫌いの彼が千利休と出会って、生きる道を見つけた。
 茶人・有楽斎の誕生である。
 
 仕方なく東軍に加わって参戦した陣は、加藤や黒田の背後さらに後ろには徳川の本陣があった。
 乱戦の中落馬したが辛うじて命拾いした有楽斎、家康から命じられた次の仕事が・・・・。
 
Yjimage29z7k744_640    「無為秀家」、秀吉の猶子で西軍の将・宇喜多秀家を、上田秀人(1959~)が描く。
 
 豊臣恩顧の大名同士が徳川の思惑通り潰しあう関ケ原合戦、秀頼の将来を守るためには家康を討つしかないと、1万8千の兵を擁して最前線に陣取った秀家。
 
 しかし隣に陣した小早川秀秋の裏切りにより敗退、島津家に匿われたが自訴して八丈島に流罪。
 秀吉恩顧を裏切って東軍についた大名たちが滅亡した中、秀家の子孫は数百年を息抜き、今に続いている。
 
Img_0834_640    「丸に十文字」、西軍に名を連ねたものの戦わなかった島津義弘を、矢野隆(1976~)が描く。
 
 1.500の手勢を率い西軍側に陣を備えた義弘、しかし彼にとって関ケ原合戦は「他所人の戦」だった。
 毛利や小早川など、西軍に数えられる4万4千の将兵も戦いを傍観しているが、義弘が動かない理由は「己が戦いではない」、それだけだった。
 
Image_640  勝敗の決した戦場の中、彼は動いた。義弘率いる1.500人の薩摩者だけが、雄たけび挙げてまっしぐらに徳川本陣に向かった。
 
 生き残った武者は80人、彼らの末裔が徳川を倒したのは、この戦いから267年後のことである。
 
   「真紅の米」、勝敗のキーマンとなった秀吉の養子・小早川秀秋を、冲方丁(1977~)が描く。
 
Pb010021_640_2  北政所の甥、やがて毛利一族・小早川家を継いだ秀秋、後世には凡愚の代名詞のようにい語られる彼だが、関ケ原の戦いは一世一代の大勝負」だったといえる。
 
 豊臣の姓を与えられ関白・秀次についで豊臣家の後継者と目された彼が、秀秋一族の処刑を見て、「凡庸な存在」になるよう努めた。
 関ケ原での「裏切り」はその結果でしかない。しかし「大阪夏の陣」を前に、彼は毒を食らって凡庸な人生に終止符を打った。
 
   「孤狼なり」、最後は西軍の大将・石田三成を、葉室麟が描く。
 
Yjimagey8v6g7s0_640  物語は、六条河原での斬首を前にした毛利方の使僧・安国寺恵瓊への、石田三成のモノローグで終わる。
 
 「私は負けたのではない。自ら負けてやったのだ」
 「小早川秀秋が寝返るように、北政所様を動かしたのは私だ」
 「秀秋の醜悪さを目にした徳川恩顧の大名たちは、大阪城の秀頼をたやすくは裏切れない」
 
 「関ケ原の戦いはわたしだけでなく、徳川も毛利も負けた。勝ったものなどいない戦だった」
 

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