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July 02, 2016

2930.7月のブックから

Main_photo_01_640  「新しい戦場を感じろ」
 いま旬の歴史・時代小説作家7人が、同じ日・同じ舞台にまみえた7人の武将を描いた。
 
 彼らは何を考えてどう行動したのか、競作短編集「決戦!関ケ原」は乱世を終わらせる運命を背負った男たちを描く。
 
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     「決戦!関ケ原」
 
  「人を致して」、東軍の将・徳川家康を描いたのは伊東潤(1960~)。
 
 物語は、深夜密室での謀議から始まる。
 密かに顔を合せたのは家康と本田正信そして石田三成と島左近、武断派といわれる加藤清正や福島正則ら豊臣家大名を誅するためのシナリオ、「関ケ原合戦」の出来レースを図ったのである。
 
Yjimage_640  同床異夢、合戦は結果としてシナリオ通りとはならず、家康の策謀が勝った。
 これまでは他人に致されてばかりいた人生だったが、家康は遂に致す立場に立たのだ。
 
   「笹を噛ませよ」、福島正則の臣・槍の可児才蔵を、吉川永青(1968~)が描く。
 
 岐阜城攻めで池田輝政に先陣を獲られた福島隊、天下分け目の一線では先陣を約束されたが、火ぶたを切ったのは徳川第一の臣・井伊直政。
 
0028_640  「井伊を探せ!兵部(直政)めを殺せ!あのものの首を左衛門尉様(福島正則)に献じるのだ」と、井伊の赤備えを追ったのが可児才蔵。
 
 戦い終わって家康の前に並べられた首、口に笹の葉を噛んでいた。
 それは・・・・。
 
   「有楽斎の城」、茶人・織田有楽斎の戦場を、天野純希(1979~)が描く。
 
002_640  織田信長12人兄弟の11番目、13歳離れた長益は賢兄愚弟の見本と言われる。戦嫌いの彼が千利休と出会って、生きる道を見つけた。
 茶人・有楽斎の誕生である。
 
 仕方なく東軍に加わって参戦した陣は、加藤や黒田の背後さらに後ろには徳川の本陣があった。
 乱戦の中落馬したが辛うじて命拾いした有楽斎、家康から命じられた次の仕事が・・・・。
 
Yjimage29z7k744_640    「無為秀家」、秀吉の猶子で西軍の将・宇喜多秀家を、上田秀人(1959~)が描く。
 
 豊臣恩顧の大名同士が徳川の思惑通り潰しあう関ケ原合戦、秀頼の将来を守るためには家康を討つしかないと、1万8千の兵を擁して最前線に陣取った秀家。
 
 しかし隣に陣した小早川秀秋の裏切りにより敗退、島津家に匿われたが自訴して八丈島に流罪。
 秀吉恩顧を裏切って東軍についた大名たちが滅亡した中、秀家の子孫は数百年を息抜き、今に続いている。
 
Img_0834_640    「丸に十文字」、西軍に名を連ねたものの戦わなかった島津義弘を、矢野隆(1976~)が描く。
 
 1.500の手勢を率い西軍側に陣を備えた義弘、しかし彼にとって関ケ原合戦は「他所人の戦」だった。
 毛利や小早川など、西軍に数えられる4万4千の将兵も戦いを傍観しているが、義弘が動かない理由は「己が戦いではない」、それだけだった。
 
Image_640  勝敗の決した戦場の中、彼は動いた。義弘率いる1.500人の薩摩者だけが、雄たけび挙げてまっしぐらに徳川本陣に向かった。
 
 生き残った武者は80人、彼らの末裔が徳川を倒したのは、この戦いから267年後のことである。
 
   「真紅の米」、勝敗のキーマンとなった秀吉の養子・小早川秀秋を、冲方丁(1977~)が描く。
 
Pb010021_640_2  北政所の甥、やがて毛利一族・小早川家を継いだ秀秋、後世には凡愚の代名詞のようにい語られる彼だが、関ケ原の戦いは一世一代の大勝負」だったといえる。
 
 豊臣の姓を与えられ関白・秀次についで豊臣家の後継者と目された彼が、秀秋一族の処刑を見て、「凡庸な存在」になるよう努めた。
 関ケ原での「裏切り」はその結果でしかない。しかし「大阪夏の陣」を前に、彼は毒を食らって凡庸な人生に終止符を打った。
 
   「孤狼なり」、最後は西軍の大将・石田三成を、葉室麟が描く。
 
Yjimagey8v6g7s0_640  物語は、六条河原での斬首を前にした毛利方の使僧・安国寺恵瓊への、石田三成のモノローグで終わる。
 
 「私は負けたのではない。自ら負けてやったのだ」
 「小早川秀秋が寝返るように、北政所様を動かしたのは私だ」
 「秀秋の醜悪さを目にした徳川恩顧の大名たちは、大阪城の秀頼をたやすくは裏切れない」
 
 「関ケ原の戦いはわたしだけでなく、徳川も毛利も負けた。勝ったものなどいない戦だった」
 

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