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September 28, 2016

2959.9月のシネマ(5)

 今月は、日本映画に話題作が多かった。まだ見てはいないがアニメ「君の名は」、予想以上に大ヒットした。
 注目している監督二人の作品、「後妻業の女」と「怒り」は個別に紹介したが、今月見た残りの邦画2本と洋画3本をまとめてメモする。
 
Img511_640_2   
 「ジャングル・ブック」
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 故ウオルト・ディズニーが、最後に手掛けたアニメーション映画が「ジャングル・ブック」。
 
 「インドのジャングルにひとり取り残された人間の赤ちゃんが、黒ヒョウに助けられてオオカミに育てられた」というストーリーは、多くの人たちを感動させた。
Junglebook2016postersmowglibaloo_64  この名作が初めて実写で製作されたのが、今回の映画。
 
 しかし、実写と言っても出演したのは、オーディションで選ばれた12歳の少年ニール・セディただひとり。
 登場する動物たちやジャングルの背景は、最先端技術によって生まれたCGによって「創作」されている。
 
 監督は「アイアンマンシリーズ」のジョン・ファヴロー、ベン・キングスレーやビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソンなどハリウッドの名優たちが声の出演。
 
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  「ゆずの葉ゆれて」
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 松原智恵子芸歴55周年記念主演作。
 
 鹿児島の美しい田園を舞台に、激動の昭和を生き抜いた老夫婦(津川雅彦・松原智恵子)の想いを、可愛がられた少年(山崎聰真)の目を通して描いた佳作。
 
357069_001_640  「老い」と「死」を前に人はどう「生」と向かえばいいのか、人と人の絆、本当の幸せとは何かが静かに語られていく。
 
 監督は宮崎出身の神園浩司、長編劇映画デビュー作品である。
 
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  「グランドイリュージョン」
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 イリュージョンを駆使して、不正な金をだまし取る義賊集団「フォー・ホースメン」。
 彼らが活躍する同名映画('13)の続編、副題が「見破られたトリック」。
 
356150_013_640  今回のミッションは、ハイテク企業の不正を暴くことだが、そこには天才エンジニアが立ちはだかった。
 壮大に仕掛けたトリック、勝負はどちらに。
 
 ホースメンは前作に引き続いて、ジェーシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、ディヴ・フランコにリジー・キャプランが加わる。
 敵役のエンジニアに、「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドクリフが扮して話題に。
 
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   「リトル・ボーイ」
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 副題は「小さなボクと戦争」。
 メキシコ出身の新鋭監督アレハンドロ・モンテヴェルデが、終戦前後のアメリカ・カルフォルニア州の漁村を舞台に、リトル・ボーイと日系人との友情を通して描いた戦争へのメッセージ。
 
356540_008_640  相棒だった父親が戦場に駆り出されフィリピンで捕虜に、その父親を呼び戻そうとリトル・ボーイがトライしたのは何だったか。
 
 広島に投下された原子爆弾が「リトル・ボーイ」を呼ばれたことを知った監督が、少年の視点から「戦争と平和」を描いた。
 イギリスの名優トム・ウイルキンソンとエミリー・ワトソンが出演。
 
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   「超高速参勤交代
      リターンズ」
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 老中からの無理難題を突破して、江戸への参勤を成功させた小藩の藩主以下、行き(参勤)より帰り(交代)はもっとピンチだった。
 大ヒットした前作に続いて、続編も本木克英監督が「超高速」に仕上げた歴史エンターテインメントである。
 
Gallery013327_4_640  前作と同じ佐々木蔵之介(殿様)、西村雅彦(知恵者の家老)、寺脇康文(剛腕の側近)、伊原剛志(抜け忍び)、柄本時生(二刀流の側近)に深田恭子(飯盛り女)ら一行と、対するは敵役の陣内孝則(悪老中)。
 
  市川猿之助(将軍吉宗)、石橋蓮司(老中首座)も同じく出演して、芸達者なところを見せる。

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September 25, 2016

2958.秋・浜離宮

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  四季ごとに訪ねる「浜離宮恩賜庭園」、秋は毎年「秋分の日」前後に散策する。
 
 いわば定点観測、その年の気候変動が「お花畑」に現れる。
 今年は秋雨前線の影響か雨の日が多く、昨日も生憎の天気だった。
 
 上・左の写真が昨日の「お花畑」、続いて昨年23日、そして一昨年の22日。
 今年も夏に高温が続いたせいか、「キバナコスモス」の開花も早くもう終盤だった。
 
040_640038_640  浜離宮の秋のシンボルカラーとして、来園者の目を楽しませてくれる15万本の「キバナコスモス」はメキシコが原産地、大正時代に日本に輸入された植物で花期が長く育てやすい。
 
 花は一重咲きと八重咲があるが、ここでは八重が多い。
 
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 お花畑に見るピンク色の一重のコスモスは「オオハルシャギク」、コスモス属だが別種でお互い交配はできない。
 
 品種改良によって、「白」「赤」「オレンジ」の花をつける。
 
025_640065_640  広い庭園の所々に、鮮やかな赤い花を見せるのは「ヒガンバナ」。
 
 群生はしていないが、緑の芝生とのコントラスが映える。
 
036_640039_640  右の写真は「スイフヨウ」、アオイ科の落葉低木にさくフヨウの変種で、朝咲き始めた花弁は白いがお日様に当たるにつれてピンクに代わる。
 
 日本では酒に酔って赤くなるに例えて、「酔芙蓉」と書く。
 
041_640042_640  同じアオイ科の「ムクゲ」も見ごろ、白の一重咲で中心が赤い「底紅種」は茶花に欠かせない。
 千家三代目の宗旦が好んだことから、「宗旦木槿」と呼ばれる。
 
 中国語で「ムーチン(木槿)」、韓国では「ムグンファ(無窮花)」、旧約聖書には「シャロンのバラ」と書かれているから、中東からアジアにかけて広く栽培されているのだろう。
 
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庭園は他に「ウスギモウセイ」や「キンモクセイ」、そして「ハギ」が満開。
 
 「キョウチクトウ」「サルスベリ」足元は「ホトトギス」。
 「ハゼノキ」や「イチョウ」「カエデ」が色ずくのは来月下旬となる。
 
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 今年は高校同窓の仲間たち23人を案内しての、浜離宮庭園散策だった。

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September 22, 2016

2957.9月のシネマ(4)

Topp2_640  李相日(イ・サンイル)監督42歳、新潟出身の在日三世。
 長編映画5作品目の「フラガール」('06)で、日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞・脚本賞ほか、同年の映画賞を総なめして注目を浴びた。
 
Main_640  さらに4年後に撮った「悪人」も、日本アカデミー賞優秀作品賞・監督賞・脚本賞、キネマ旬報ベスト・テン1位など数多くの賞を受賞して、日本映画界での地位を確立した。
 
 その「悪人」の原作を書いたのが、長崎出身の作家・吉田修一48歳。
Nifth6hftvo2o2j_pd9qf_108_640_3  「パレード」('02)で山本周五郎賞、「パークライフ」('02)で芥川賞、「悪人」('07)は毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞している。
 
 吉田作品の映画化は、「7月24日通りのクリスマス」('06村上正典監督)、「パレード」('10行定勲監督)、「悪人」('10)、「横道世之介」('13沖田修一監督)、「さよなら渓谷」('13大森立嗣監督)と、高い評価を受けた話題作が多い。
 
598f3b25569a8fff25ec603ea2d4439b_64  「パレード」はベルリン国際映画祭で批評家連盟賞、「悪人」は前述の通り、「横道世之介」はブルーリボン賞作品賞、「さよなら渓谷」はモスクワ国際映画祭審査員特別賞を受賞している。
 
20140212yoshidashuichi20ikari_640  今号で紹介する「怒り」は、吉田修一と李相日監督がタッグを組む2本目の作品である。
 
 すでにトロント国際映画祭やサンセバスチャン国際映画祭で上映され、国際的にも話題を呼んでいる。
 
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  「怒り」
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 「残忍な夫婦殺人事件から一年、犯人は整形し逃亡を続けていた。
 そして現れた3人の謎の男、愛した人は殺人犯なのか?
 それでもあなたを信じたい・・・・・・・・」
 ネット公式サイトは、こうつぶやく。
 
356389_003_640  3人の男が現れたのは千葉と東京と沖縄。
 
 一人は千葉の漁港に仕事を求めてきた、前歴不詳の男(松山ケンイチ)。
 その彼に、漁協に勤める男(渡辺謙)が男手一つで育てた娘(宮崎あおい)が恋をした。
 
356389_002_640  東京の大手通信社に勤めるゲイ、エリートサラリーマン(妻夫木聰)が出会い同居したのは、住所不定・無職の男(綾野剛士)だった。
 サラリーマンには、末期ガンの母親(原日出子)がいる。
 
356389_005_640  夜逃げ同然に離島に移り住んだ高校生(広瀬すず)が遭遇したのは、無人島に籠るバックパッカー(森山未来)。
 彼は、高校生の同級生(知念辰哉)の両親が営む民宿で働き始めた。
 
356389_001_640  物語は3人の殺人容疑者らしい男たちと、彼らに関わった人たちの不安や疑念を、あぶりだすようにミステリックに展開していく。
 
 家族や友人、さらには愛する人さえ簡単に疑ってしまう「不信の時代」、人が人を信じるということの根源的な問いかけが、一つの殺人事件をきっかけに描かれていく。
 

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September 19, 2016

2956.敬老の日

Imgp0004_640 Imgp0002_1_640  今日は「敬老の日」。
 「国民の祝日に関する法律」によって、13年前から9月の第3月曜日が祝日となった。
 いわゆる「ハッピーマンデー制度」、皆さん連休を利用してお、というわけだ。
 
 スタート当初、お年寄りたちは戸惑った。
 これまでは15日に家族皆で祝ってもらったのに、最近は我々を留守番にして孫たちは連休旅行に出かける。
 
 「元に戻すべき」等の陳情もあったので、政府は「老人福祉法」を改正して15日を「老人の日」と名付け、以後1週間を「老人福祉週間」とした。
 
Img869_640  ところで、私の住む東京・中央区は、毎年人口が増えている。
 今年の9月1日現在、昨年より4.718人増えて14万1.580人となった。
 
013_640  人口増の要因は、ベイエリアを中心に高層マンションが次々と建設されたためである。
 
Imgp0004_2_640  昨年は、我が家の隣に52階700世帯のマンション、今年の春には目の前の晴海に2棟1400世帯のマンションがオープンした。
 さらに来年春には、52階建てがもう1棟建つ。
 
 ただこうしたマンションには、働き盛りの30~40代の入居者が多いので、中央区の老人比率は年々減ってきている。
 
035_640  老人福祉法では65歳以上を「老人」として括るが、そのデータを基にして老人比率を比べると、全国27.3%(+0.6)、東京都23.1%(+1.2)と高齢化が進むが、中央区は15.9%(-0.3)と前年比は下がっている。
 つまりここは、「現役と子供の多い若い街」なのである。
 
 働き盛りの増は、特別区民税の増収につながる。
 区では児童対策はもちろん、こうした税収を生かして戦前・戦後とこの街を支えてきた「老人たち」に報いる施策を進めてきた。
 
Imgp0001_2_640 Imgp0002_2_640  そのシンボリックなイベントが、「敬老大会」と銘打った観劇会である。
 半世紀ほど前から続いているこのイベントは、中央区内にある三つの大劇場を順繰りに借り切って、70歳以上を招待する。
 
Imgp0019_1_640  今年は歌舞伎座の番で、先々週と先週に秀山祭大歌舞伎・昼の部を5日間借り切り、8.600人が楽しんだ。もちろん、幕の内弁当とお茶も付く。
 
Imgp0027_640_3  3年前の歌舞伎座もそうだったが、観劇希望者が1万人を超えたので70代前半は抽選となった。
 このとき私は3階席後ろのチケットが届いたが、連れ合いはキャンセル待ち、結果としてはペアで観劇ができた。
 
Imgp0014_1_640  毎回の事だが、1階は桟敷席をふくめ80代以上、2階席が70代後半、3階席が前半と、年齢順に見やすい席を用意するのが面白い。
 区役所の係の方は、大変な作業になるようだが。
 
Imgp0006_640  「敬老の日」のお祝いは「観劇」だけでなく、後期高齢者には「買物券3.000円分」が届く。
 さらに今年は「喜寿」(「米寿」の方も)ということで、「お寿司券5.000円」がプラスされた。
 
 そうそう、月島西町会からも「お小遣い」が届く。昨年までは「お赤飯」も付いていたが、なぜか今年からは「現金」だけとなった。

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September 16, 2016

2955.9月のシネマ(3)

Yjimage0bswpk0a_640  フランスの演技派女優といわれるイザベル・ユペール63歳、パリのコンセルヴァトワール(国立演劇学校)を卒業後、「夏の日のフォスティーヌ」('72)で映画デビューした。
 
 フランスのアカデミー賞、セザール賞の主演女優賞に史上最多の13回ノミネイトされ、「沈黙の女」('95)で受賞している。
 
 ヨーロッパの三大映画祭では、それぞれ女優賞を獲得しているのも異例である。
 
Yjimage5b7xkybw_640  両親殺しの少女を演じた「ヴァイオレット・ノジエール」('78)でカンヌ国際映画祭女優賞、ナチ占領下のフランスでギロチン処刑された平凡な主婦を演じた「主婦マリーがしたこと」('88)でヴェネツィア国際映画祭受有賞、「8人の女たち」('02)でベルリン国際映画祭銀熊(女優)賞を受賞した。
 
1_640  またミヒャエル・ハネケ監督の「ピアニスト」('01)では、倒錯した性癖を持つ中年のピアノ教師役で、2度目のカンヌ・女優賞、審査員グランプリを受賞している。
 
 彼女は、NHKが放送した「ルーブル美術館」のナビゲーターとしてお馴染みだが、今年東京で開催された「フランス映画祭」では、団長として来日している。
 
 今回紹介する「アスファルト」は、その「映画祭」で上映された作品の1本。
 「落ちぶれた元大女優」という役、若いスターを相手にした演技が見ものだった。
 
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  「アスファルト」
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  舞台はパリ郊外のオンボロ団地、壁にはヒビがはいりエレベーターは度々故障する。
 夜になると、異様な音が団地を揺るがす。
 
 登場するのは3組の不器用な男女たち。
 
237603_640  役探しで駆け回る落ちぶれた大女優と、同じフロアーに住む鍵っ子高校生(ジュール・ベンシェトリ)、何とか世話の焼ける彼女を高校生はあれこれ手助けするが・・・・。
 
06asphalte_3_sub2_640  自転車漕ぎマシーンのやりすぎで車いす生活を送るハメになった自称カメラマン(ギュスタヴ・ケルヴァン)と、深夜勤務のワケあり看護婦(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)。
 ひょんな事で出会い恋心が・・・・・。
 
356571_004_640  なぜか団地の屋上に不時着してしまったNASAの宇宙飛行士(マイケル・ピット)と、最上階に住む移民のおばさん(タサディット・マンディ)。
 英語がわからないおばさんとフランス語が分からない飛行士、おばさんの息子は刑務所暮らし・・・・。
 
 平凡で孤独な日常に、ふと訪れた2日間だけの幸せ、「風変わりで愛すべきアーバンドラマ」である。
 
237599_640  イザベルの相手役の高校生は、この作品の監督サミュエル・ベンシェトリの息子。名優ジャン=ルイ・トランティニアンの孫というサラブレッドである。
 
29006100976_ae8dbc5d3d_640_2  また看護婦役ヴァレリアは、イタリア出身だがフランスのサルコジ元大統領の義姉。
 
 宇宙飛行士役マイケルはハリウッドから参加したミュージシャン、移民のおばさんタサディットはソルボンヌ大学出身の名バイプレイヤーである。
 

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September 13, 2016

2954.秀山祭九月大歌舞伎

Imgp0010_1_640  「秀山」とは、昭和の歌舞伎界を代表する名優、中村吉右衛門の「俳号」。
 その功績を顕彰するために、吉右衛門の生誕120年にあたる2006(平成18)年から、歌舞伎座で「秀山祭」は始まった 
 
Img537_640  公演の座頭はもちろん二代目吉右衛門、初代白鷗の次男に生まれ母方の祖父である初代の養子となって芸を引き継いだ。
 
 秀山祭10年目の今年は、また吉右衛門2代目襲名から50年という区切りの年でもある。
 
Img533_640_2  中村歌六・中村又五郎・中村歌昇ら播磨屋をはじめ、初代の弟・時蔵の流れをくむ萬屋を中心に、秀山のひ孫の市川染五郎、ひ孫の婿の尾上菊之助、ゲストに坂東玉三郎も加わり豪華な舞台となった。
 
 今回は中央区から招待された昼の部・三演目、2階一等席からの鑑賞だった。
 
Imgp0004_1_640  最初の演目は新歌舞伎「碁盤忠信」、およそ100年前に7代目松本幸四郎襲名公演のために、右田寅彦が書きおろした「義経もの」である。
 
 源義経の忠臣・佐藤忠信が、碁盤を持って戦ったとされる伝説は、昔から浄瑠璃などで取り上げられてきた。
 
 7代目のひ孫にあたる市川染五郎が、5年前に右田台本を基に「碁盤忠信」を日生劇場で復活上演し、今回再演となった。
 
Img538_640_3  義経を欧州に逃した忠信(染五郎)が、追ってきた山法師たちを倒す第一幕。
 隠れ住んだ京の堀川御所で、裏切った舅の浄雲(歌六)や頼朝方の番場の忠太(亀蔵)と闘う第二幕。
 
 最後は大鉄棒をもって現れた覚範(松緑)を相手に、江戸荒事の立ち廻り。
 筋隈を取り碁盤を手にした忠信の登場が、見どころとなる。
 
Imgp0005_1_640  次の演目は舞踊劇「太刀盗人」、狂言「太刀奪い」を舞踊化した岡村柿紅作の「松羽目もの」で、1917(大正6)年市村座で初演された。
 
 初演時は6代尾上菊五郎と7代坂東三津五郎が主演、今回は中村又五郎と中村錦之助がコンビを演じた。
 
Img535_640 Img540_640  田舎者の万兵衛(錦之助)と、彼の持つ黄金の太刀を盗むすっぱの九郎兵衛(又五郎)との、ユーモアあふれる踊りが見どころだった。
 
Imgp0006_1_640  最後の演目が、中村吉右衛門が登場する「一條大蔵譚」、「檜垣」「奥殿」の二幕である。
 
 この演目は、初代・当代と二代にわたる播磨屋の当たり役だが、「秀山祭」には初めて登場した。
 
Img536_640  私はこれまで、吉右衛門演じる一條大蔵長成を3回鑑賞しており、このブログでも紹介してきた(825号「初春歌舞伎」08.1.2、2211号「国立歌舞伎」12.12.15、2455号「鳳凰祭歌舞伎」14.4.5)。
 
 物語は源義経に関した説話・史実を題材にした、義太夫狂言の名作「鬼一法眼三略巻」(全五段)の四段目。
 
Img534_640  義経の母・常盤御前(魁春)を妻にした公卿・一條大蔵卿(吉右衛門)が、平家全盛の世を生き抜くために「作り阿呆」を装うというもの。
 
 「檜垣」では、大蔵卿の徹底した阿呆ぶりが見もので、表はうつけ者のふりをしながらも、一方では公家の品格を保ち、それとなく本心を見せる難しい場面である。
 
Ichijoohkura_poster_640  そして「奥殿」、大蔵卿が阿呆と正気、愚者と賢者を演じ分けるところが見どころとなる。
 
 吉右衛門は、演じれば演じるほど「いろいろなことを、考えさせる役」と語る。
 
Imgp0027_640_2  「やりたいことを隠し、阿呆の振りをしなければならない。己の人生を悲しみながらも楽しんでいる。活躍できる素質を持ちながら、時勢がそれを許さなかった悲しさが、その台詞ひとつで伝えられればと思います。初代は『ハムレット』のような心情を取り入れました」
 
 「秀山祭九月大歌舞伎」、中央区は先週から今週にかけ昼の部を5回にわたって借り切り、70歳以上の区民8.600人を招待した。
 会場には、なじみの顔ぶれがあちこちに。 

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September 10, 2016

2953.9月のシネマ(2)

Essential_photo_640  アンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキ、クシシュトフ・キエシロフスキと並ぶポーランド映画界の巨匠、イエジー・スコリモフスキ78歳。
 
 スターリン批判や「連帯」のメンバーとなって国を追われ、ベルギーやイギリスで監督や脚本家として活躍してきた。
 
Ledepart_640  ワイダ監督の「夜の終わりに」('60)やポランスキ監督の「水の中のナイフ」('62)の脚本家として頭角を現し、1967年の「出発」を監督してベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した。
 
Anna_640  「出発」はベルギーで製作したヌーヴェル・ヴァーグ作品だったが、2008年に17年ぶりに祖国で撮った「アンナと過ごした4日間」が、東京国際映画祭審査員特別賞を受賞し、ポーランド映画界に復帰した。
 
Eskithumbnail2_640  さらに2010年、「エッセンシャル・キリング」でヴェネツィア国際映画祭で2回目(「ライトシップ」'85)の審査員特別賞を受賞する。
 そして今年、ヴェネツィア国際映画祭・生涯功労金獅子賞を受賞した。
 
 スコリモフスキは、脚本家・監督のほか俳優としても活躍している。
 最近作では、主演のヴィゴ・モーテンセンがアカデミー賞にノミネイトされた「イースタン・プロミス」('08)でヒロインのナオミ・ワッツの伯父役を、「アベンジャーズ」('12)ではロシア人スパイを演じている。
 
 先月公開された「イレブン・ミニッツ」は、スコリモフスキ監督5年ぶりのポーランド映画である。
 
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  「イレブン・ミニッツ」
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 ある一日の午後5時からから5時11分までの「日常」を描いた、リアルタイム・群像サスペンスである。
 
1470967443_1_640  登場人物は、好色な映画監督と役を狙う女優に嫉妬深い夫、ムショ帰りのホットドック屋やヤク中のバイク便配達屋、ビルメンテナンスのバイトをしている登山家とその仲間の女、画家に犬を連れた女などなど・・・。
 
1470967443_2_640  大都会に暮らす曰くありげな11人と犬一匹の11分が、モザイク状に 絡みながら物語は展開していく。
 そして11分後には彼らのありふれた日常が、突如不条理の世界に巻き込まれてしまうのだ。
 
356042_003_640  監視カメラやスマホのカメラ、WEB映像にCG、現代社会の巷にあふれるメディア技術を巧みに扱いながら、スローモーション、ローアングル、大俯瞰と、多様な質感を駆使して映像化する一方、バイクの疾走音や低空を飛ぶジエット旅客機の爆音、救急車のサイレンなど、都会のノイズをバックに配する。
 
News_xlarge_11minutes_201606_04_640  出演者は、映画監督に扮したアイルランドの俳優リチャード・ドーマ(「ベルファスト71」('14))と、ホットドッグ屋のポーランド人俳優アンジェイ・ヒラ(「カティンの森」'07)以外は、馴染はない。
 
 テロや天災が日常化してしまった現代、「最後は何か恐ろしいことが起こる」と監督の「仕掛」を期待してか、公開初日初回の映画館は満席だった。
 

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September 07, 2016

2953.再訪・建長寺

029_640 024_640  ひとまくウオーキング、先月末に「鎌倉・建長寺境内」だけを散策した。
 
 昨年の夏は、「三門」が特別拝観できるとあって、豪雨の中を参拝した(ブログ2626号「雨の建長寺」)。
 
 ということで、この名刹の訪問は5回目になる。
 今回は、これまで紹介しなかった塔頭やエピソードなどを中心に綴る。
 
Imgp0006_640Imgp0008_640 「鎌倉五山の第一位」
 
 鎌倉末期、執権北条氏は南宋の「五山制度」にならい、京都・鎌倉の臨済宗の寺院から五つを選び「寺格」を定めた。
 
 南北朝時代になると、足利氏は鎌倉と京都を分けて、それぞれ五山を制定した。
 
Imgp0003_640  因みに鎌倉は建長寺・円覚寺・寿福寺・浄智寺・浄妙寺の順、京都は南禅寺(別格)・天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺。
 
 ただ足利義満の時代は、相国寺が第一位となったように、権力者の意向で順位は代わった(左の写真は鎌倉第二位・円覚寺山門)。
 
Imgp0018_640  「巨福山建長興国禅寺」
 
Imgp0013_640_3 Imgp0014_640_2  総門と三門の頭上に掲げられた扁額。
 三門は、後深草天皇の御宸筆。
 
 山号はこの一帯の地名「巨福坂」から、建長は創設年号、興国は開基・北条時頼の願による。
 
 第十世住職・一山一寧による総門の筆は、巨の字に筆勢による一点を加えて、百貫点とした。
 
6a811f42c68322c5dc73529de02405ab_40  「蘭渓道隆」
 
 鎌倉幕府五代執権・北条時頼が、禅によって国の興隆を図るため、宋から招いた禅僧が蘭渓道隆、建長寺の開山となった。
 
20120509163516_129612_640  1246(寛元4)年に33歳で来日、筑前・円覚寺、京都・泉涌寺で禅を教えていた蘭渓を、鎌倉に招き寿福寺に愚居を設けた。
 そして常楽寺を開き、のち建長寺の開山となった。
 
 その後蘭渓は、京都・建仁寺の住職となったが、晩年は再び鎌倉で過ごしている。
 
Imgp0070_640 Imgp0071_640  「碧巌録」
 
 三門を右に進むと、専門道場「西来庵」がある。ここからは修行僧しか入れない。
 入り口には「碧巌録」の文字が、墨黒々と書かれてる。
 
 碧巌録とは「公案集」のこと、いわゆる「禅問答」で修行者が悟りを開くため課題として与えられる「無理難題」を、まとめたものである。
 
 中国から伝わった禅宗の大きな潮流は、「臨済宗」と「曹洞宗」。
 建長寺は臨済宗の禅林名刹であり公案禅が基本、永平寺などの曹洞宗はただひたすら座る「只管打坐」となる。
 
Imgp0024_640_2  「崇源院の御霊屋」
 
 国の重要文化財「仏殿」は、もともと江戸・芝増上寺にあった建物。
 二代将軍秀忠正室・崇源院(お江)の御霊屋を、1647(正保4)年に移設した。
 
Imgp0028_640_2Imgp0064_640_2 Imgp0065_640  その「仏殿」の前にあった門が、勅使門ともいわれる「唐門」で、現在は「方丈」の前に移されている。
 
 門を飾るのは秀忠の「紋」、「六つ葵」である。
 
Imgp0063_640_2 Imgp0062_640_2  「方丈庭園」
 
 唐門の先、「竜王殿」から眺める庭園は、蘭渓道隆の作庭による。
 池の中に島を置き橋を架け、池の周りには石と松を配した。
 
 国の史跡・名勝、禅寺を象徴する瀟洒な名園である。
 
Imgp0030_640 Imgp0035_640_2  「塔頭・正統院」
 
 今回初めて拝観できた塔頭である。
 
 建長寺の十四世住職・高峰顕日が、1300(正安2)年に浄智寺内に庵居として建てたものだが、1335(兼務2)年に顕日の高弟・夢想礎石が建長寺内に移した。
 
Imgp0038_640  顕日は後嵯峨天皇の皇子で、16歳で出家(京・東福寺)、20歳の時に鎌倉に入り円覚寺の開山・無学祖元に学んだ。
 のちに疎石ら、鎌倉禅宗の多くの名僧を育てている。
 
 寺の裏山にある顕日の墓所は「陵」、皇族の墓なので鎌倉では珍しく宮内庁が管理している。
 
Imgp0031_640 Imgp0032_640  また塔頭の墓地の一角には、海軍の特攻隊「神雷舞台」の戦死者829名の名を刻んだ墓碑が建つ。
 ロケット・エンジン「桜花」で太平洋の戦場の露と消えた、学徒兵たちを祀る。
 
 海軍特攻隊の生き残りだった正統院住職が建立し、1965(昭和40)年に川端康成や山岡壮八ら従軍した作家らも参列して除幕された。
 
 「塔頭・回春院」
 
Imgp0051_640  建長寺の奥、昔は地獄谷とよばれた刑場跡に建てられた寺。
 塔頭の前の池は、蘭渓の諡号に因んで「大覚池」と名付けた。
 
Imgp0048_640 Imgp0050_640  開山した仏覚禅師は信濃の人、蘭渓に学んだ二十一世の住職。
 
 回春院で禅籍中国古文学書を刊行、関東における仏教書籍の出版事業の中心となった。
 
 ここには、処刑された人たちを祀る地蔵堂もあったが、その建物は横浜・三渓園に移築されている。
 
 今回の「ひとまくウオーキング」は建長寺境内だけの3時間、歩数は9.886歩だった。
 

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September 04, 2016

2952.9月のシネマ(1)

234635_640  鶴橋康夫76歳、私と同年齢である。
 大学卒業後読売テレビ(大阪)に入社、東京支社でドラマ・ディレクター、「木曜ゴールデンドラマ」などで社会派ドラマを製作、数多くの賞を受賞した。
 
517txbj2phl_sx327_bo1204203200__640  印象に残る作品に、芸術選奨文部大臣新人賞を受賞した「五辨の椿」('81)がある。
 野村芳太郎監督で映画化された山本周五郎の時代小説だが、大原麗子を主人公にした鶴橋作品は、情感あふれていた。
 
 その後「仮の宿なるを」('83)で芸術祭優秀賞、「愛の世界」('90)で芸術作品賞ほか、ギャラクシー賞や放送文化基金賞など数多くのテレビ関連賞を受賞し、「芸術祭男」の異名も取る。
 
 読売テレビを定年退職した後は、東北新社に席を置いてドラマ制作を続けている。
 2005年「砦なき者」で芸術選奨文部大臣賞、'07年紫綬褒章、'13年旭日小綬章。
 
Img_0  鶴橋康夫が映画を撮ったのは、2007年の「愛の流刑地」が初めてである。
 渡辺淳一の新聞連載小説を、豊川悦司と寺島しのぶ主演で映画化、愛とエロスの極致を描いて話題となった。
 
 続いて「源氏物語 千年の謎」('11)、そして3本目の作品が今回の「後妻業の女」である。
 
Img513_640 
   「後妻業の女」
.
 65歳以上で再婚した人が、2年前7千人を超えた。全体の4%、30年前の5倍になるという。
 それだけに、中高年に的を絞った結婚相談所は大流行り、様々なイベントがメディアで紹介される。
 
209x300_640  ブームの陰には、必ず犯罪の臭いが漂う。
 「色と欲」、高齢者の財産を狙った事件、直木賞作家・黒川博行はそれを題材に、「後妻業」を書いた。
 
 本を出版したのち、ストーリーを地で行くような事件が明るみになった。
 「関西連続不審死事件」、再婚相手6人が不審死して千佐子容疑者は、遺産8億円を手にしていた。
 
355381_009_640  黒川の小説を原作とした映画「後妻業の女」の主人公は、佐代子(大竹しのぶ)。
 結婚相談所長(豊川悦司)と手を組んで、「後妻業」に励む。
 
355381_003_640  彼女は、元害虫駆除会社社長(六平直政)・元不動産会社社長(森本レオ)・元テレビ局役員(伊武雅刀)・元大学教授(津川雅彦)ら9人と再婚を繰り返して、遺産を手に入れた。
 
355381_004_640  そして10人目のターゲットが不動産王(笑福亭鶴瓶)、しかし大学教授の娘(尾野眞千子)が私立探偵(永瀬正敏)に依頼して、「後妻業」の闇を暴き始めた・・・・・。
 
 大竹しのぶが、希代の悪女をチャーミングに演じる。
 鼻歌を歌いながら夫を殺したり事故死を装う日々、遺族に追及されてもどこ吹く風。
 
355381_006_640  しかし、焼肉屋で尾野眞千子と取っ組み合う長回しのバトルシーンに、爆笑しながらも一人で生きる女の悲しみを見る。
 
 出演者は他に、風間俊介(放蕩息子)、余貴美子(後妻業)、泉谷しげる(金庫屋)、柄本明(ヤミ医師)と多士済々。
 
355381_002_640  現在、65歳以上の一人暮らしは600万人、男性は5人に1人、女性は2人に1人が独身。
 長寿化・核家族化・熟年離婚の増加、時代は「後妻業」を生んだ。
 全国に結婚相談所が4.000社、利用者60万人。
 「資産」を持ち「持病」を持つ男性高齢者が、今最もモテる時代となった。.

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September 01, 2016

2951.101回・二科展

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 左の作品は、友人・西健吉画伯の「浜の娘」(F150)。
 昨年は大分の漁港を描いた作品を出品したが、今年は郷里の浜辺を舞台に描き続けている「浜の娘」シリーズに戻った。
 
 描いた浜辺は私の故郷に近い「入来浜」、西君のアトリエがある鹿児島からも車で30分で着く吹上浜である。
 
Imgp0008_1_640_2 Imgp0007_1_640  今回の絵には二つの遊び!?がある、と西君はいう。
 ひとつは、流木に寝そべる娘のローウエストのジーンズ、もう一つは入来浜の砂を直接カンバスに塗り込んで質感を高めた事だそうだ。
 
Imgp0006_1_640 西君は高校の同窓、東京の美大を卒業後は鹿児島に帰省して、高校の美術教師になった。
 
 地元の美術展で数々の実績を残しパリにも留学、30数年前に二科会会員に推挙されて、現在は15人の理事の一人として郷里で若い画家たちを育てている。
 
Imgp0003_1_640 今回101回の公募展を開催したように、二科会は在野の美術団体では最も古い。
 
 石井伯亭・梅原龍三郎・有島生馬らパリ留学組の新進芸術家たちが、1914年に創設した。
 戦時中は公募展を休会したが、戦後は絵画・彫刻部門にデザイン・写真も加わって今日に至っている。
 
013_640 戦後は、東郷青児や吉井淳二ら鹿児島出身の画家たちが、理事長として二科会を率いてきたこともあり、会員には同郷の画家たちが多い。
 
Imgp0037_640Imgp0039_640 毎年紹介しているが、大長老である右の犬童次男95歳の作品「降りそそぐ陽光(伊佐の棚田)」や、鳥取征昭89歳の作品「津軽富士(岩木山)」。
 
Imgp0035_640 ベテランでは会員の祝迫正豊の「大地回想」(左)などが並ぶ。
 
Imgp0016_640  また中堅では、西君や私と同郷の画家・有馬広文君(会友)が、毎年精力的に作品を出品している(右「月夜のアトリエ」)。
 
 同郷の若手、三人の作品も印象的だったので紹介しておこう。
 
Imgp0033_640_2 Imgp0020_640_2 Imgp0022_640_2  左から
 源川貴美子「アトリエの回想」
 二川礼子「風譜Ⅰ」
 白澤榮一「帆船飛行Ⅱ」
 
 
Imgp0001_1_640  第101回二科展は今月12日(月)まで、六本木・国立新美術館で。入場料は1.000円。
 このあとは、大阪~金沢~京都~名古屋~広島~鹿児島~福岡と巡回する。
 

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