2972.11月のシネマ(1)
ブログ2968号「10月のシネマ(4)」で、ヨーロッパで評価の高い日本人監督、頭文字が「K」で始まる4人の事を書いた。
その「4K」の長老!北野武(69歳)が、先月フランス国家勲章「レジオン・ドヌール」を受賞した。
彼の映画制作活動が、ヨーロッパの文化向上に貢献したのが受賞の理由だった。
その北野監督に次ぐ「4K」監督が、今年61歳になる黒沢清である。(残りのお二人、是枝監督54歳、河瀨監督47歳)
彼については、ブログ2935号「7月のシネマ(2)」で経歴や作品を紹介したが、今号でも改めてヨーロッパでの評価を記しておきたい。
黒沢の作品が国際的な注目を集めるきっかけとなったのが、5作目のホラー映画「CURE」('97)。東京国際映画祭に出品されて、役所広司が最優秀主演男優賞を受賞した。
3年後には、カンヌ国際映画祭に出品されたホラー映画「回路」が国際批評家連盟賞。2年後にも「アカルイミライ」がカンヌのコンペに正式出品、さらに「トウキョウソナタ」('08)が「ある視点部門」で審査委員賞を受賞するなど、カンヌの常連となった。
そして昨年、「浜辺の旅」でカンヌ国際映画祭「ある視点部門」監督賞を受賞するのである。
そのほかの主な映画祭では、ホラー映画「叫」('06)がヴェネチェアで公式上映、「Seven Code」('13)がローマで最優秀監督賞、ブログ2935号で紹介した「クルーピー 偽りの隣人」がベルリンでクロージング上映されている。
今号で紹介する作品は、国際的に高い評価を集めている黒沢監督による初めての「フランス映画」である。
「ダゲレオタイプ」とは、世界で最も古い写真の撮影方法である。
長時間の露光が必要なために、肖像写真の場合はモデルの身体を長時間拘束しなければならない。
また今日のネガやデジタルとは異なり、、画像を直接銀板に焼き付けるために、その写真は世界に一つしか残らない。
作品は「銀板に刻まれる永遠の命」を、美しく、悲しく、狂おしいほで切なく描き、写真と映像の原点を幻影として見せていく。
物語の主人公は、写真家助手に雇われた青年(タハール・ラヒム)。
旧い屋敷にある撮影スタジオには、タゲレオタイプ写真家(オリヴィエ・グルメ)と写真のモデルとなる娘(コンスタンス・ルソー)が住んでいた。
同じモデルとなっていた彼女の母親は狂死、たびたび父親の幻想の世界に出現するが、その存在がやがて愛し合うようになった青年と娘の間に悲劇を生む。
「永遠の愛」を夢見る写真家の狂気は、死者と生者の垣根をなくすホラー・ラブロマンスの世界へと導いていく。
全編フランス語のオリジナルストーリー、オールフランスロケ、キャスト・スタッフもフランス・ベルギーから。
テイストはフランス映画だが、間違いなく黒沢作品である。
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