« October 2016 | Main | December 2016 »

November 30, 2016

2978.11月のシネマ(4)

 今月は、後半に旅行やケガというアクシデントがあり、映画の本数は少ない。
 気になった作品は個別に紹介したので、残り6本をメモとして記録する。 
 
320_640
 
  「SCOOP!」
.
 かって数々のスクープを飛ばしてきた伝説的カメラマン(福山雅治)、いまは中年のパパラッチに落ちぶれ芸能スキャンダルを追っている。
 その彼に、写真週刊誌「SCOOP!」副編集長(吉田羊)は、ド素人の新人記者(二階堂ふみ)を助手に配した。
 
356636_008_640  一枚の写真が日本中をパニックに陥れる「写真週刊誌」の世界、「モテキ」('11)の大根仁監督はイケメンスターを「ヨゴレ役」に配して、スキャンダル・スクープ合戦の舞台裏を描いていく。
 
 出演は他に滝藤賢一(副編集長)、リリー・フランキー(情報屋)、斎藤工(若手代議士)・・・。
 
51m4tllwhzl__sl500__640
 
  「われらが背きし者」
.
 組織を裏切ったロシア・マフィア(ステラン・スカルスガルド)から、極秘資料の入ったUSBを預かった大学教授(ユアン・マクレガー)とその妻(ナオミ・ハリス)。
 
 それを手にしたMI6のエージェント(ダミアン・ルイス)との、世界を股にかけた亡命劇が始まった。
 
Yjimage9lvf1ln3_640  「裏切りのサーカス」で知られる、MI6出身の作家ジョン・ル・カレが書いたスパイ小説を、BBCでドキュメンタリーを製作してきた女性監督、スザンナ・ホワイトが映画化した。
 
 ロシア~モロッコ~イギリス~フランス~スイスと、国家を揺るがす大事件が展開する。
 
29735_640
 
  「ベストセラー」
.
 フィッツジェラルド(「グレート・ギャッビー」)やヘミングウェイ(「老人と海」)を世に送り出したカリスマ編集者パーキンズと、37歳でこの世を去った天才作家トマス・ウルフ。
 
 処女作にして大ベストセラーとなった「天使よ故郷を見よ」誕生の裏側に隠された、二人の友情の絆と相克を描く実話の映画化である。
 
1013491_02_640  編集者にオスカー俳優のコリン・ファースト、若き天才作家にジュード・ロウ、作家のパトロンにして愛人をニコール・キッドマン、編集者を支えた妻をローラ・リニーが演じた。
 
 ふたりが父と息子のように惹かれあい反発するエピソードは、今もアメリカ文学史上稀な出来事として語り継がれている。
 
320_3_640
 
   「インフェルノ」
.
 「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に次ぐダン・ブラウンの原作を、同じくロン・ハワード監督が映画化したミステリー巨編である。
 
 主役は、前・前々作と同じくハーバード大のラングドン教授(トム・ハンクス)。
 今回彼に挑戦したのは、アメリカの大富豪にして生化学者ゾブリスト(ベン・フォスター)。
 人口増による環境破壊を防ぐために人口淘汰をもくろみ、ウイルスを仕込んだ。
 
Viainfernointernational1_640  それを防ぐには、ダンテの「地獄編=インフェルノ」の謎を解き明かすしかない。
 教授は自分を危機から救ってくれた女性医師(フェリシティ・ジョーンズ)の協力を得て、フレンツェ~ヴェネツイア~イスタンブールと駆け回る。
 
218836_640
 
  「湯を沸かすほどの熱い愛」
.
 癌が転移して余命2か月と宣告されたお母さん(宮沢りえ)、「絶対にやるべきこと」を決めて動き始めた。
 
20160406atsuiai_640  ひとつは蒸発した夫(オダギリジョー)を連れ戻し、家業の銭湯を再開すること。
 ひとつは高校でイジメにあっている娘(杉咲花)を、強く独り立ちさせること。
 そして、その娘をある人に会わせること。
 
 自主映画を撮ってきた中野量太監督のメジャーデビュー作、泣かせる「難病もの」の殻を破って、普通のお母さんの強さと優しさを、そして哀しさを描いた。
 
320_4_640
 
  「続・深夜食堂」
.
 安部夜郎の大ヒットコミック、「深夜食堂」の映画化第2弾。
 繁華街の路地裏にある小さな食堂、オールナイトの店のマスター(小林薫)と常連客の物語。
 
Shinyashokudo_sub06760x507_640  今回は、香典泥(佐藤浩市)に騙されて失恋した編集者(河井青葉)や、「来い来いサギ」に騙されて上京した老婆(渡辺美佐子)、近所の蕎麦屋の親子(キムラ緑子・池松壮亮)と息子の年上の女(小島聖)のエピソードが、「豚汁定食」や「焼うどん」の味とともに綴られる。
 
 監督は「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」の松岡錠司。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 26, 2016

2977.国立歌舞伎

Imgp0002_640  1966(昭和41)年に開場した半蔵門の「国立劇場」、今月で満50周年になる。
 これを記念して先月から三か月間、義太夫狂言の大作「仮名手本忠臣蔵」の全段が、完全通し上演されている。
 
Imgp0003_640  赤穂浪士の討ち入り事件を題材にした作品は、1748(寛延元)年夏に大坂竹本座で人形浄瑠璃として初演されたが、早くもその年の暮れには大坂嵐座で歌舞伎化、翌年には江戸・三座(森田座・市村座・中村座)でも上演され大当たりを記録した。
 
Img044_640  以来今日まで数多く上演されてきたが、江戸時代には「必ず大入りになる」「芝居の独参湯(どくじんとう)」(起死回生の特効藥)と呼ばれてきた。
 
 同じ事件を題材にした真山青果の「元禄忠臣蔵」は、浅野内匠頭・吉良上野介・大石内蔵助と実名が登場するが、「仮名手本」の方は幕府の干渉もあって室町時代の「太平記」の世界に仮託して描かれている。
 
 つまり「主君・塩冶判官(えんやはんがん)の無念を晴らすために、大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)を始め浪士たちは、敵の高師直(こうのもろのう)を討ち果たす」という物語である。
 
Img041_640  11段にわたる物語には、浪士たちの苦難や、浪士の夫や恋人を想う女性たちの心情、周囲の武士や町人の苦衷も描かれており、観る人の心を捉えてきた。
 
 先月の上演は、物語の発端から判官(中村梅玉)の切腹、由良之助(松本幸四郎)が討ち入りを決意するまでの幕。
 
 大序「兜改め」、二段目「桃井館」、三段目「松の間刃傷」、四段目「判官切腹」「城渡し」と続くが、二段目と三段目の「裏門」はこれまで省略されてきた演目である。
 
Imgp0005_640  さて今回鑑賞した「第二部」は、役者が代わって由良之助を中村吉右衛門が演じるとあって、彼の大ファンである連れ合いと同伴した。
 
 物語は、塩冶浪士のその後。
 早野勘平(尾上菊五郎)と恋人おかる(尾上菊之助)が辿る運命の悲劇、師直への復讐の機会を窺う由良之助の苦衷が描かれる。
 
Img042_640_2  最初の幕は、浄瑠璃「道行旅路の花聟」。
 三段目「裏門」を書き換えた所作事で、主君の大事に居合わせなかった勘平が、おかるとともに落ち延びていく姿を、清元の名曲で綴られる。
 
 五段目は「山崎街道」、朋輩の千崎弥五郎(河原崎権十郎)から討ち入り計画を聞く勘平。
 その資金50両をめぐり、斧定九郎(尾上松緑)にだまし取られるという悲劇が展開し、六段目「勘平腹切」では舅を誤って殺したと思い込む勘平の複雑な心境を、菊五郎が極上の演技で見せる。
 
 おかる(中村雀右衛門)が、遊女として働く祇園の廓を舞台にしたのが、七段目「一力茶屋」。
 おかると兄の足軽・平右衛門、中村又五郎が初役で熱演、兄妹の情が大きく盛り上がる。
 
Img043_640  七段目は、討ち入りという由良之助の真意が、登場人物たちとの会話を通して、次第に明らかになっていく幕である。
 「忠臣」としての性根と廓で遊ぶ男の色気、吉右衛門の演じ分けが見どころである。
 
 なお来月は「第三部」、討ち入りを陰から支えた人物たちのドラマと、浪士悲願達成となる十一段目「高家討ち入り」で大円団となる。
 12月の大星由良之助は、中村梅玉が演じる。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 22, 2016

2976.11月のシネマ(3)

 ナチス・ドイツの残虐性、アウシュヴィッツのホロコーストを題材にした映画は、毎年のように製作されている。

 今年だけでも、これまでブログで紹介した作品は7本にのぼる。

Sugi1512_640  ユダヤ人にビザを与えて逃した、在リトアニアの日本外交官を描いた「杉原千畝」(ブログ2871号・1.09)。
 ナチスがユダヤ人から略奪した美術品、それを奪い返す物語「黄金のアデーレ」「ミケランジェロ・プロジェクト」(2872号・1.12)。
 アウシュビッツで虐殺された作家の遺作、「フランス組曲」(2878号・1.30)。

200_640  アウシュビッツに囚われた男のレジスタンス、「サウルの息子」(2882号・2.10)
 ナチスの将校アイヒマンを裁く法廷の中継、「アイヒマン・ショー」(2919号・5.30)
 現代にタイムスリップしたヒトラーと、彼を迎える大衆を描いた「帰ってきたヒトラー」(2950号・8.30)。

 そして今号で紹介する「手紙は憶えている」が、8本目となる。

20160125110025_640_2  以上の作品の中で、見る人に最も衝撃を与えた傑作が「サウルの息子」と「手紙は憶えている」の2本。

 前者はポーランド・アウシュビッツを舞台にした1940年代の物語、後者はカナダとアメリカを舞台にした現代の物語である。

B2b1b5cecc6ef99e_640
  「手紙は憶えている」
.
 原題は「REMEMBER」、このタイトルには二つの意味が込められている。
 ひとつは目覚める度に失う記憶、もうひとつは決して忘れられないアウシュヴィッツの記憶。

357968_004_640  愛妻を失ったことも忘れてしまった、認知症の主人公(クリストファー・プラマー)は90歳。

 体の自由を失った友人(マーティン・ランドー)から、大切な家族を殺された敵を討ってくれと頼まれる。
 友人は、数少ないアウシュヴィッツの生き残り仲間である。

357968_003_640  復讐を忘れないように友人から託された手紙を頼りに、男は老人ホームを抜け出し、絞り込んだ4人の容疑者を求めて旅にでる。

 一人目は元ドイツ兵士(ブルーノ・ガンツ)だったが別人、二人目は同性愛者として収容されていた男、三人目は陸軍の料理人だったヒトラー信奉者、しかしもう亡くなっていた。
 そして四人目は・・・・・。

357968_007_640  次々と起こる予測不可能な展開が、この復讐の旅の謎を増幅していく。
 彼の記憶にかすかに残る「クリスタル・ナハト」、彼のピアノの腕が覚えている「ワグナーの旋律」、衝撃的なラスト5分に観客は沈黙する。

 監督は、カナダで活躍するエジプト出身のアトム・エゴヤン(「スイートヒアアフター」'97でカンヌ・グランプリ)。
 練りに練った脚本はアメリカ出身のベンジャミン・オーガスト、TVプロデューサーの彼はこの作品によって脚本家デビューした。

357968_006_640_2  主人公を演じたクリストファー・プラマーは、「人生はビギナーズ」('10)で史上最高齢のオスカーを受賞したカナダの名優である。

 また友人役のマーティン・ランドーは、「エド・ウッド」('94)でオスカーを受賞したアメリカの演技派。
 容疑者のひとりを演じたブルーノ・ガンツは、「ヒトラー最後の12日間」('05)でアカデミー賞にノミネイトされたスイスの名優である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 18, 2016

2975.晩秋・山陰路

 晩秋の山陰路を巡る。
 松江~玉造~出雲~安来~三朝~倉吉~鳥取、半世紀ぶりに訪ねた地、15年ぶりに再訪した街、そして初めての名所も。
 
Imgp0030_640    「松江城」
 
 「天守」が国宝に指定されている五つの名城の一つが、千鳥城と呼ばれる「松江城」。
 
Imgp0027_640  秀吉・家康と二人の天下人に仕えた掘尾吉晴が、出雲・壱岐の領主となった孫・忠晴を助けて、29mの小高い岡に築城(1611年)、周囲を城下町として整備した。
 
Imgp0038_640_3  天守は外から見ると高さ30m、4重の入母屋造りだが、中に入ると5階建てとなっている。
 
 食料や武器の貯蔵庫だった地下室には、井戸も掘られており、豊臣政権三中老の一人として戦国武将の名を馳せた堀尾吉晴らしい城造りである。
 
Imgp0041_640  戦前は天守も国宝に指定されていたが、戦後の文化財保護法により重要文化財に改称された。
 
 7年前に「松江城を国宝にする市民の会」が結成され、懸賞金付きで史料調査がされた結果、築城時期を記した「祈祷札」が見つかり、昨年の夏念願の「国宝」に再指定された。
 
 国内の城跡で天守が国宝に指定されたのは63年ぶり、5件目である。
 
Imgp0025_640Imgp0023_640   「堀川めぐり」
 
 松江城を囲む内堀・外堀は、江戸時代の築城時のまま残っている。
 
 宍道湖の水を利用した堀川には17もの橋がかかり、周囲には武家屋敷や森の自然が残されている。
 
Imgp0013_640Imgp0004_640  この堀川を小舟で巡航する「堀川めぐり」が、観光客の評判を呼んでいる。
 なかでも、低い橋げたを潜るために屋根を下げ客は這いつくばるのが話題。
 
 この季節は豆炭の入ったこたつ船、およそ50分の船旅である。
 
Imgp0034_640Imgp0032_640    「出雲大社」
 
 旧暦10月は「神無月」、八百万の神々が出雲大社に集まるために各地は「神無」となる。
 一方「全国神様総会」が開かれる出雲地方だけは、「神在月」と呼ばれる。
 
Imgp0043_640  八雲立つ大社の祭神は、「因幡の白うさぎ」で馴染みの「だいこくさん」。
 正式には、出雲王朝を繁栄に導いた「大国主大神」である。
 
Imgp0035_640  天津神(天皇家)の求めに応じ国を譲ったので、その代わりとして国津神(大国主神)は宮の創建を求めたのが、大社の起源(「古事記」)。
 
 「出雲風土記」には皇神が集まって宮を築いたと記されているし、垂仁天皇が「神宮」を造らせた(「古事記」)とも書かれ、社伝では垂仁が創建、斉明天皇の時2回目の造営がなされたとしている。
 
Imgp0050_640   創建以来、祭祀を担ってきたのが出雲国造家の千家。
 天照大神の子・天穂日尊を祖とする千家84代の尊祐が、現在宮司を務めている。
 その長男、権宮司の国麿さんは、2年前に高円宮典子女王と結婚した。
 
Imgp0048_640Imgp0038_640_4  一昨日までの一週間は「神在祭」が行われ、境内では全国から独身男女4.000人が集まって、2回にわたる「縁結び大会」も開催された。
 
 左の写真は、参道とこの時期だけオープンする八百万の神々の宿舎「十九社」である。
 
Imgp0070_640Imgp0077_640    「足立美術館」
 
 アメリカの庭園専門誌による「ジャパニーズ・ガーデニング」で、毎年TOPに挙げられるのが安来市にある「足立美術館」。
 
Imgp0091_640Imgp0095_640  130点におよぶ横山大観コレクションも見事だが、訪れる人々の第一の目的はこの広大な日本庭園である。
 
 「枯山水庭」「白砂青松庭」「苔庭」など5万坪に及ぶ庭園は、専属の庭師9人と美術館学芸員の手で守られている。
 
Imgp0063_640Imgp0098_640  裸一貫から大阪で財をなした安来出身の足立全幸(1899~1990)が、1970年に膨大な資産を投じて開館した。
 
 「庭園もまた一幅の絵画である」、名園と名画の絶妙なる調和、創設者の庭づくりの情熱に感動する。
 
Imgp0028_640Imgp0017_640    「倉吉まち歩き」
 
 「白壁土蔵のまち」として知られる倉吉は、南北朝時代から続く城下・陣屋町として栄えてきた。
 
 当時の面影は、玉川沿いの白壁土蔵群や商家の街並みに見ることが出来る。
 
Imgp0032_640_2Imgp0034_640_2  白い漆喰壁に黒の焼き杉板、屋根には赤い石州瓦、そしてゆるやかなそりを持つ一枚石の石橋、倉吉独特の景観が訪れる人たちに安らぎを与える。
 
Imgp0023_640_2  町の一角にある大岳院、ここには安房国最後の藩主・里見忠義と八賢士の墓がある。
 
Imgp0024_640  江戸のはじめ、大久保長安事件に縁坐して安房を追われ倉吉で憤死、8人の家臣も追い腹を切った。
 滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」は、彼らをモデル(賢→犬)として書かれた。
 
Imgp0020_640Imgp0019_640  先月の地震は、この地が震源だった。
 道路は波打ち、ブルーシートの屋根が随所に見られる。漆喰の土蔵にも皹が入った。
 あれから4週間、「まち歩き」する人々も少しずつだが増えてきたと、ガイドは話していた。
 
Img048_640Img047_640    「鳥取砂丘」
 
 吹上浜・九十九里浜と並ぶ、三大砂丘のひとつ「鳥取砂丘」。
 
Imgp0062_640Imgp0066_640  南北2.4キロ、東西16キロ、高低差90m、風化した中国山地の花崗岩が砂となって千代川に流れ、日本海の荒波と風で吹き戻されて砂丘を築いた。
 
Imgp0071_640  砂丘の一角にある「砂の美術館」では、「砂で世界旅行」展が開催されていた。
 
Imgp0088_640Imgp0079_640  今年で9回目になる砂像展はオリンピックに因んで南米がテーマ、「繁栄の記憶を留める奇蹟の新大陸を訪ねて」と題して19の砂像が並ぶ。
 
Imgp0080_640  製作したのは、総合プロデューサーの茶園勝彦ほか18人の海外彫刻家たち。
 
Imgp0085_640_2Imgp0095_640_2  「輝く黄金郷エルドラド」をはじめ、世界中の人たちが訪れる絶景や世界遺産、歴史・文化にちなんだ作品を築いた。
 
 毎年砂像展を企画・プロデュースしている茶園君は、私の高校の後輩。
 南さつまの吹上浜で「砂の祭典」を制作指導し、日本では唯一の砂像彫刻家として国際的に活躍している。
 
 「晩秋の山陰路」、最終地で故郷を想い起すことが出来た。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 14, 2016

2974.11月のシネマ(2)

Photo02_640  西川美和42歳、広島出身の作家・脚本家・映画監督。
 
 早大在学中から是枝祐和監督のスタッフに加わるなど、フリーで働きながら映画を学び、オリジナル脚本の「蛇イチゴ」('02)で監督デビューした。
 
Img_0_640  この作品は、新人監督賞など国内の映画コンクールで数々の賞を受賞したが、長編第2作目の「ゆれる」('06)がカンヌ国際映画祭監督週間に正式出品。
 続く「ディア・ドクター」('09)もモントリオール世界映画祭のコンペ、4作目の「夢売るふたり」はトロント国際映画祭と、国内外で注目を浴びてきた。
 
Deardoctor_head_640  西川は、映画界での活躍ほか小説・エッセイも手掛けており、「ゆれる」のノベライズで三島由紀夫賞候補、「ディア・ドクター」の原作となった「きのうの神様」が直木賞候補。
 今号で紹介する「永い言い訳」の原作も、直木賞候補に挙がった。
 
 西川は、第一作目からオリジナルストーリーに拘り、映画監督としても作家ととしても、今注目を集めている才媛である。
 
320_2_640
 
 
    「永い言い訳」
.
 スキーバス旅行事故で妻(深津理恵)を失った、タレント作家(本木雅弘)が主人公。
 
356113_005_640  その時間に、若い女(黒田華)との情事に溺れていた彼は、心から悲しむことは出来なかった。
 
 ある日、同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族に会った時から、彼の心の中で何かが弾けた。
 
356113_004_640  彼は、トラック運転手として留守がちな父親(竹原ピストル)に代わり、幼い二人の子供たち(藤田健心・白鳥玉季)の世話を買って出た・・・・。
 
 妻を亡くした男と母を亡くした子供たち、その不思議な出会いから「新しい家族」の物語が動き始める。
 
Gallery013353_3_640  二人の子役の演技が素直で自然、冬から翌年の冬まで、四季折々のロケで成長を遂げていく子供たちをそのまま撮った。
 そこには、原作者であり監督の優しい目があり、見入る人たちに感動を呼ぶ。
 
356113_001_640  「おくりびと」以来7年ぶりの主役となった本木雅弘が、屈折した男の情けなさを、素の演技で見せる。
 
 広島カープファンの西川監督は、その本木の役名を「衣笠幸夫」と名付けた。
 「鉄人・衣笠幸雄にはなれない」といじける「幸夫」のセリフが、なぜか愛おしい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 10, 2016

2973.特別展「禅・心をかたちに」

Imgp0004_640_2  鎌倉時代から南北朝にかけて、中国から伝えられた「禅」。
 とくに主要な流派である「臨済宗」は、北条や足利など時の権力と結びついて全国に広がった。
 
Img020_640_3  今年は臨済禅の祖・臨済禅師の1150年、臨済宗中興の祖・白隠禅師250年遠諱、それを記念して東博に禅の名宝が終結した。
 
 「禅・心をかたちに」、国宝22点、重文102点、臨済・黄檗十五派が主催する特別展である。
 
 300点を超える展示物は、5章で構成される。
 
Img023_640_2  第一章「禅宗の成立」は、達磨(だるま)がインドから中国に渡来して、禅宗が誕生する流れを歴代の祖師像でたどる。
 
Img022_640_2  右の雪舟筆の国宝「慧可断臂図」(室町時代)は、座禅する達磨と己の左腕を切り落として弟子入りを願う僧・慧可。
 
 左の一休賛の重文「臨済義玄像」(室町時代)は、棒や喝による峻烈な指導を行った宗祖・臨済の激しい表情が描かれる。
 
Uid000067_201608291424481ef4dcbc_64  第二章「臨済禅の導入と展開」は、臨済・黄檗十五派の開祖の肖像や墨蹟をはじめとする寺宝が並ぶ。
 
 右は、ブログ2953号('16.09.07)でも紹介した鎌倉五山の一位・建長寺の開山、鋭い眼光を放つ「蘭渓道隆座像」(重文・鎌倉時代)である。
 
 第三章「戦国武将と近世の高僧」は、武将の像やブレーンとして活躍した禅僧たちの書・禅画の項。
 
Uid000067_20160829142452688cdb04_64  ポスターとなった「達磨像」(江戸時代)は白隠禅師筆、縦2m近い画面いっぱいに描かれた巨大な顔は、数多くの禅画を残した白隠の晩年の傑作である。
 
 第四章「禅の仏たち」は、禅宗特有の威容や作風を示す仏像や仏画が展示される。
 
Uid000067_20160829142503aacce731_64  「十八羅漢のうち羅怙羅尊者」(江戸時代)は、「仏は皆の心の中に宿る」と胸を開く珍しい像である。
 本像は中国人仏師の作で、黄檗宗を日本に伝えた隠元の寺、京都・満福寺に伝わる。
 
 第五章は「禅文化の広がり」、茶の湯・水墨画・障壁画と禅寺が育んだ美の広がりが紹介される。
 
Img031_640  南禅寺本坊の障壁画「群虎図」(重文・江戸時代)は、幕府御用絵師・狩野探幽の筆。
 「水呑みの虎」として知られる障壁画は、襖八面ひと続きの画面で、前期・後期と展示替えで紹介される。
 
 「建長寺散策」(ブログ2953号)でも紹介したように、禅宗の大きな流派は「臨済宗」と「曹洞宗」。
 曹洞は達磨の教えの通り「只管打坐」、壁面に向かってただひたすら座る。
 
Img021_640  一方臨済は「公案」、いわゆる「禅問答」で「心とは何か」「心はどこにあるか」を問う。
 
 京都・退蔵院にある国宝「瓢鮎図」(室町時代)は、時の将軍・足利義時が「瓢箪で泥中の鮎(なまず)を抑え込むことが出来るか」と問い、三十一人の禅僧が漢詩で答えを書き如拙が絵を描いたもの。
 「心で心はとらえられない」の意である。
 
 特別展「禅・心をかたちに」は、上野・東京国立博物館で今月27日まで。入館料は、1.600円。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 06, 2016

2972.11月のシネマ(1)

Ori_20161018_130541_size640wh_7310_  ブログ2968号「10月のシネマ(4)」で、ヨーロッパで評価の高い日本人監督、頭文字が「K」で始まる4人の事を書いた。

 その「4K」の長老!北野武(69歳)が、先月フランス国家勲章「レジオン・ドヌール」を受賞した。
 彼の映画制作活動が、ヨーロッパの文化向上に貢献したのが受賞の理由だった。

2015122622204565a_640  その北野監督に次ぐ「4K」監督が、今年61歳になる黒沢清である。(残りのお二人、是枝監督54歳、河瀨監督47歳)

 彼については、ブログ2935号「7月のシネマ(2)」で経歴や作品を紹介したが、今号でも改めてヨーロッパでの評価を記しておきたい。

51yu4crxmil_640  黒沢の作品が国際的な注目を集めるきっかけとなったのが、5作目のホラー映画「CURE」('97)。東京国際映画祭に出品されて、役所広司が最優秀主演男優賞を受賞した。

 3年後には、カンヌ国際映画祭に出品されたホラー映画「回路」が国際批評家連盟賞。2年後にも「アカルイミライ」がカンヌのコンペに正式出品、さらに「トウキョウソナタ」('08)が「ある視点部門」で審査委員賞を受賞するなど、カンヌの常連となった。

Fa1a3ecb07a64da1b172897346fe04ca_64  そして昨年、「浜辺の旅」でカンヌ国際映画祭「ある視点部門」監督賞を受賞するのである。

 そのほかの主な映画祭では、ホラー映画「叫」('06)がヴェネチェアで公式上映、「Seven Code」('13)がローマで最優秀監督賞、ブログ2935号で紹介した「クルーピー 偽りの隣人」がベルリンでクロージング上映されている。

 今号で紹介する作品は、国際的に高い評価を集めている黒沢監督による初めての「フランス映画」である。

 

6d76a2686173dd5d850cf88f252d0a19_64
   「ダゲレオタイプの女」

 「ダゲレオタイプ」とは、世界で最も古い写真の撮影方法である。 
 長時間の露光が必要なために、肖像写真の場合はモデルの身体を長時間拘束しなければならない。

News_header_dagereo_20160628_03_640  また今日のネガやデジタルとは異なり、、画像を直接銀板に焼き付けるために、その写真は世界に一つしか残らない。

 作品は「銀板に刻まれる永遠の命」を、美しく、悲しく、狂おしいほで切なく描き、写真と映像の原点を幻影として見せていく。

355488_005_640  物語の主人公は、写真家助手に雇われた青年(タハール・ラヒム)。
 旧い屋敷にある撮影スタジオには、タゲレオタイプ写真家(オリヴィエ・グルメ)と写真のモデルとなる娘(コンスタンス・ルソー)が住んでいた。

Cuwqwqfxeaayav6_640  同じモデルとなっていた彼女の母親は狂死、たびたび父親の幻想の世界に出現するが、その存在がやがて愛し合うようになった青年と娘の間に悲劇を生む。

 「永遠の愛」を夢見る写真家の狂気は、死者と生者の垣根をなくすホラー・ラブロマンスの世界へと導いていく。

Director_pic02_640  全編フランス語のオリジナルストーリー、オールフランスロケ、キャスト・スタッフもフランス・ベルギーから。

 テイストはフランス映画だが、間違いなく黒沢作品である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

November 03, 2016

2971.特別展「瑞巌寺と政宗」

Imgp0002_640  恒例の「中央区まるごとミュージアム」、解説付きの特別展観覧に応募したら当選した。
 三井記念美術館で開催中の「松島 瑞巌寺と伊達政宗」展である。
 
Otakamori_640  日本三景のひとつ松島、点在する島々を前にして仙台藩伊達家の菩提寺だった「瑞巌寺」がある。
 
Photolarge_01_640  その本堂が国宝に指定されたのが1895(明治28)年、8年前から「平成の大修理」が始まりほぼ完成した。
 
Img034_640  さらに今年は、瑞巌寺を再興した仙台藩初代藩主伊達政宗の生誕450年にあたり、それを記念して特別展が開催された。
 
 また、33年に一度しか開帳されない秘仏「五大明王」も、東日本大震災復興を祈念して特別に出品されている。
 これは瑞巌寺にとっても、歴史上はじめての「出開帳」になる。
 
 展示された「至宝」は70点、国宝や国の重要文化財が多いため文化庁の指示で展示期間が制約され入れ替えられる。
 9月から始まった特別展も、最終週の現在は52点が7つの展示室に並んだ。
 
Img036_640  右は前期に展示された「本堂」(国宝)の障壁画「松孔雀図」(重文)、伊達政宗が江戸から招いた狩野派の絵師・左京の筆によるもの。
 
Main1_640  後期には、長谷川等伯の弟子・等胤の障壁画が展示された。
 
Img035_640_2   仙台市博物館からも青葉城の至宝が、20数点出品された。
 
 右の重要美術品「菊花図屏風」には、政宗の華麗な筆による詩歌が金箔の上に踊る。
 「道の記」もまた、政宗が書いた歌日記である。
 
Sendai2_640  秘仏「五大明王」(重文)は、828(天長5)年慈覚大師円仁が天台宗円福寺・五大堂を開創したとき祀られたもの。
 
Cty8dg7vuaaeyn7_640  中央に不動明王を、東に降三世明王(ごうざんぜ)、南に軍茶利明王(ぐんだり)、西に大威徳明王(だいいとく)、北に金剛夜叉(きんごうやしゃ)を配する密教の本尊である。
 
147533811196312636180_640_3  いずれもケヤキの一本造り、左の大威徳明王が跨っている水牛はそれだけで一本造りとなっている。
 
 作風から平安時代中期のもので、地元で彫られた像と推定されている。
 五大堂そのものは、1901年に国宝に指定されている
 
Img039_640  木像と言えば右の「伊達政宗甲冑倚像」がある。
 正室愛姫や息女五六八姫の像と並んで展示されていた。
 この木像は政宗十七回忌(1652年)に、髪を下した愛姫・陽徳院が造らしたもので、在りし日の政宗そのものの姿と言われる。
 
Img038_640  また昨年発見された「梅小禽図」は政宗の筆によるもので、下げ渡された家臣の末裔が所蔵していた紙本淡彩の一幅である。
 
 特別展「松島 瑞巌寺と伊達政宗」は、今月13日まで日本橋・三井記念美術館で。入館料1.300円。
 
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« October 2016 | Main | December 2016 »