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December 19, 2016

2983.12月のブックから

2149_640_2  時代小説家・北原亜以子が亡くなってから3年になる。
 NHK時代劇「慶次郎縁側日記」('04.8~'06.12)のDVDを店頭で見て、原作者である彼女を思い出し著作を手に取った。
 
B2df5dc596f7477f27b9b28438d63eab_64  1938年新橋の家具職人の家に生まれた北原は、高校生の頃から小説家を目指して、OLを続けながら書き続けた。
 31歳の時、同人誌に発表した「ママは知らなかったのよ」が新潮社新人賞を受賞したが、その後は日の目を見ず20年が過ぎた。
 
51hjrxvo6zl__uy250__640  時代小説に転じて初めて出版したのが「小説春日局」と「歳三からの伝言」('88)、その出版パーティーで彼女が「小説新潮」に掲載していた連作が話題となり、短編集「深川澪通り木戸番小屋」として出版されベストセラーとなった。
 
D0065324_20131587_640  この作品集は「泉鏡花文学賞」を受賞するが、4年後には「恋忘れ草」で直木賞、さらに4年後「江戸風狂伝」で女流文学賞、'05年には「夜の明けるまで」で吉川英治文学賞を受賞して、文壇に揺るぎない地位を確立した。
 
 今回読んだのは北原亜以子の遺作となった「ぎやまん物語」、秀吉への貢ぎ物としてポルトガルから渡来した「ぎやまんの手鏡」をつなぎ役に、豊臣政権末期から江戸時代、明治維新までを舞台に、その時代時代を生きた人々の心模様を写しだす「歴史絵巻」である。
 
Img489_640     「ぎやまん物語」
.
 「オール読物」に掲載された16の短編集で構成され、文庫版では上・下2冊で刊行された。
 
 秀吉の側室・茶々に嫉妬した正室・於祢の手から「ぎやまんの鏡」は、茶々の手に渡ってしまう「妬心」。
 
 それから20年、大阪城落城により鏡は常高院の手によって家康の手になる「因果」。
 
Img_2d1026a358df84eae579eb35abab2b6  秀忠夫人お江の手に渡った鏡が見たのは、娘・和子を参内させた彼女の天下「制覇」。
 
 お江と春日局との確執は家光による弟・忠長への死罪の命、鏡は忠長夫人の手に残された「葛藤」。
 
 綱吉の手から鏡は三井家を通じて雁金屋の尾形光琳に・・・「かりがね」(前・後編)。
 
 三井・越後屋の小僧が捨てた鏡が、「赤穂義士」を捨てた毛利小平太の手に。
 
Img_6cb975bbf879db9703be16470beaf7b  平賀源内にわたって田沼意次へ(「あこがれ」)、そして愛妾・由布の手元に(「嵐の前」)。
 
 失脚した田沼家から勘定奉行久世広民に渡り、人脈を通じて最上徳内~シーボルトのものになる「浮き沈み」(前・後編)。
 シーボルト事件により鏡は「阿蘭陀宿長崎屋」
 
に置かれたままに、そして通詞・森山栄之助の手からヒュースケンに(「黒船」)。
 
 ヒュースケンを暗殺した清河八郎が奪った鏡は芹沢鴨に渡るが、彼を斬った沖田総司がそれを手にした「落日」(前・後編)。
 
Img488_640  近藤勇から上野彰義隊員に渡った鏡は流弾で破損、「ぎやまんの鏡」は「終焉」をむかえる。
 
 「鏡は人の顔だけでなく、様々なものを映します。鏡がそれを持っている人のどういう様子を映すかで、その人の内面まで描くことができたらと思っています。そして人から人へ渡り、時代から時代へ受け継がれた鏡が映し出すものはどんな色合いだろうか。それがこの語り手を選んだ狙いです。」(まえがきに代えて「ぎやまん鏡」との出会い)

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