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December 27, 2016

2985.観世流・能

 ユネスコの世界無形文化遺産に指定されている「能楽」、久しぶりの観賞である。
 いつも招いてくださるのは、東大観世会出身の元日銀マン。地銀頭取を退任後は、能楽三昧の日々を過ごされている。
 
20633_logo_640  今回観賞したのは「朋之会定期公演」、彼の師匠である武田志房率いる観世流トップの能楽師たちが演ずる。
 
 以前は渋谷にあった観世会館で催されていたが、現在観世会館は銀座に新築中。水道橋にある宝生能楽堂を借りての公演だった。
 
87040c8d7f2da60bb84eb33fc6cb9564_64  能楽では演じられるタイトルを「曲目」といい、構成は「能」「狂言」「仕舞」「舞囃子」「能」。15分の休憩を2回はさんで5時間の長番組だった。
 
 能楽は同じタイトルで歌舞伎化されたものも多いが、内容は演劇というより音楽に近いと言える。だから「演目」ではなく「曲目」と呼ばれるのだろう。
 
 その「曲目」、最初は「白楽天」。
 
 白楽天とは中国・唐時代の詩人・白居易(772~846)の「字」、多作な詩人で「長恨歌」で知られる。
 彼の作品は日本にも伝来して、平安文学にも多大な影響を与えている。
 
Yjimagee22qyyo6_640  その彼がこの「能」では脇役、いわゆる「ワキ」(殿田謙吉)として登場する。
 白楽天が、唐の皇帝から「日本の文化や実力」を調べて来いと命じられ、九州・松浦に上陸する。
 
 そこで出会った漁翁(前シテ・武田文志)に漢詩をうたって、唐の文化を誇る。
 対して翁は和歌を詠み、後段では優美な舞楽をもって日本の文化力を見せる。
 最後は神風を吹かせて、白楽天の乗った船を唐に「追い返す」というストーリー。
 
20151109070628bed_640_2  実は翁は「住吉明神」、航海の守り神であり外敵調伏の軍神。伊勢や石清水の神々や八大竜王も現れて神風を吹かしたというから、「文永・弘安の役」のイメージである。
 
 2時間という長番組、囃子にカケ声だけのシーンも多く少々退屈するが、「国粋主義」的な曲の筆頭に挙げられる作品である。
 
 長時間の「能」の後に一息つくために、「狂言」が入る。
 狂言「寝音曲」、続いて「羽衣」など3曲の「仕舞」、舞囃子「葛城」を舞って最後の曲目「鉢木」となる。
 
 鎌倉幕府の5代執権・北条時頼が、引退後に諸国を遊行したと「太平記」に書かれているが、その伝説をもとに観阿弥・世阿弥が書いた曲といわれるが確かではない。
 
Kumiko2_640  歌舞伎や浄瑠璃などでも同じ題材で演じられているので、250曲ある「能」では最もポピュラーな作品である。
 
 舞台は上野の国・佐野の荘、ある大雪の夕暮れ一夜の宿を乞うた旅の僧(ワキ・森常好)。
 あばら家の主・佐野源左衛門常世(シテ・武田尚浩)は、秘蔵の盆栽を薪にして暖をとってもてなす。
 
Yjimage4uyckbbd_640  常世はもともと鎌倉の御家人、以前は三十余の郷を所領としていたが一族に騙されてほとんどを失ったと、身の上を話す。
 しかし、いったん事あらば鎌倉に馳せ参じると、決意を語る。
 
 年が明けて、突然鎌倉から招集の触れが出た。
 錆びた長刀、綻びた鎧、痩せ馬に乗っていち早く駆け付けた常世は、殿の御前に召し出された。
 
20101023175703_640  実はあの旅の僧は前の執権・北条時頼、雪の日のもてなしと忠義を守った常世を褒め、本領安堵だけでなく、あの日火にくべた「梅」「桜」「松」に因んだ三か所の領地を、新たに恩賞として授けた。
 
 「メデタシ、メデタシ」という名曲「鉢木」は、1時間40分の大作だった。

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