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January 16, 2017

2991.1月のシネマ(2)

20160125110025_640  ブログ2976号('16.11.22)でも紹介したように、ナチス・ドイツの残虐性、アウシュヴィッツなどホロコーストを題材にした作品を、昨年は9本見た。


 とくに12月に紹介した「シークレット・オブ・モンスター」は、ヒトラーのような独裁者=モンスターが出現する家庭的・社会的環境をミステリックに暴き、衝撃を受けた作品だった。

 今年に入っても、同じバックボーンを持った作品が2本も公開されている。
 いずれも「実話」に基づく「歴史映画」で、1本はデンマークとドイツの合作、もう一本はドイツ映画である。

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   「ヒトラーの忘れもの」

  一昨年の東京国際映画祭で上映されて、二人の出演者が最優秀男優賞を受賞した作品。

354569_002_640  第二次世界大戦直後のデンマークで、ナチスが海岸線に埋めた200万個の地雷の撤去作業に駆り出された、ドイツの少年兵たちの「ドキュメント」である。

 1945年5月、ナチスによる5年間の占領から解放されたデンマーク。
 捕虜となったドイツ兵たちの多くは送還されたが、地雷除去のために1000人を超える少年兵たちが徴用され、危険な任務に従事させられた。

30645443223_6cdfc64bf1_640  異国に置き去りにされた少年兵たちは、ナチスが残した「忘れもの」を撤去する作業中に、ほぼ半数が命を失ったという。

 この事実は、明らかに捕虜虐待を禁止した「ジュネーブ条約」に違反しており、デンマーク政府はこれまで口をつぐんできた。

News_header_land_of_mine_201610_01_  闇に埋もれていたデンマークの「恥部」を明らかにしたのは、同国人のドキュメンタリストであるマーチン・サントフリート。
 11人の少年兵と指揮するデンマーク軍の軍曹を主人公に、一触即発の地雷除去シーンを生々しくスリルに描いた。

News_xlarge_land_of_mine_201610_06_  「いかなる残酷な状況においても、生きるための希望を抱き続けることが可能なのか?」
 帰郷を夢見る少年たちと、その純粋な心にほだされていく指揮官。
 美しい海が広がる白い浜辺、残酷な史実がここで再現された。

 東京国際映画祭で受賞したのは、指揮官の軍曹に扮したデンマークの俳優ローラン・ムラと、少年兵のリーダー格を演じたドイツの俳優ルイス・ホフマン。
 作品は、デンマーク・アカデミー賞で作品賞・監督賞など6部門で受賞している。

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   「アイヒマンを追え」

 1960年、イスラエルの諜報機関モサドが逃亡先のアルゼンチンで拘束したアドルフ・アイヒマン。
 数百万のユダヤ人を強制収容所に送り、ホロコーストの中心的役割を担ったアイヒマンの逮捕には、これまで知られられなかった影のヒーローがいた。

640_640  その男の名はフィリッツ・バウワー、ドイツの州検事長である。
 社会民主主義者であり、ユダヤ人であり、そしてゲイ、その彼がいかにして消息不明のアイヒマンを発見し、追い詰めていったのか。
 そして、その極秘情報をなぜモサドに提供したのか。

551275_640  ドイツ国内に巣食うナチスの残党の妨害や、連邦政府の圧力にさらされながら、孤立無援の闘いを強いられた検事長の苦悩が、サスペンスフルなタッチで描かれていく。

Hqdefault_640_2  検事長を演ずるのはドイツの名優ブルクハルト・クラウスナー(「白いリボン」'16)、手足となって動いた部下の検事にロナルト・ツエアフルト(「東ベルリンからきた女」'13)が出演している。

 監督は、セミドキュメンタリー作品を撮ってきたラース・クラウメ。
 作品はドイツのアカデミー賞で作品・監督・脚本賞など最多6部門を受賞した。

 ブログ2763号で紹介した「ハンナ・アーレント」と「顔のないヒトラー」は、この作品の「後日談」ともいえる映画である。

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