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January 20, 2017

2992.1月のブックから

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 時代小説のヒットメーカー、佐伯泰英の代表作は「居眠り磐根 江戸双紙」。
 この作品を原作としたNHKドラマ「陽炎の辻」は、2007年から2010年まで3部にわたるシリーズと、2本の正月時代劇で放送された。
 そして今年の正月時代劇では、「完結編」が放送され幕を閉じた。
 
81tcygumuql_640 シリーズの第1作が刊行されたのは2002年、以後3か月に1巻のペースで書き綴られ、昨年の正月に第51巻「旅立ノ朝」で完結した。
 出版総数は2.000万部、平成の大ベストセラーである。
 
 物語の展開についてはブログ2797号で紹介したので省くが、最後は武者修行に旅立つ一子・空也を見送る朝が描かれる。
 「坂崎空也は、・・・・南に向かった。
  行く手にまだ見ぬ薩摩国があった。
  寛政七年夏、空也の旅は始まったばかりだ」
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 それから1年、著者渾身の青春時代小説「空也十番勝負 青春篇」が新たにスタートした。
 上・下巻同時刊行である。
 
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   「声なき蝉」(上・下)
 
 物語は、薩摩藩江戸藩邸用人から伝えられた「空也の死」から始まる。
 
 肥後・日向と薩摩との国境で起こった騒ぎで、国境見廻り衆の「外城衆徒」と旅の若い武芸者が戦い、空也らしいその武芸者は身罷ったと。ただ亡骸と遺品は無い・・・。

11656653701583499_640_2 上巻は、豊後や日向の国境に住む人々から、「陰の者」「山ん者」として恐れられている外城衆徒との鮮烈な戦いが描かれる。
 
 国境を超えて暗躍する「山ん者」に、一夜世話になった親子三人連れを殺された空也が、名を捨て己に「無言の行」を課して闘いを挑む。
 しかし多勢の敵に毒矢を射られ、滝壺に落下して終わる。
 
Img007_640 下巻は、川内川の源流である滝壺に落ち、中流の薩摩・菱刈郷に流れ着いた瀕死の空也から始まる。
 彼は、この地を治める渋谷兼重と孫娘の眉月に助けられ、麓(外城)の館で療養する。
 
20150429_1006503_640 およそ一年、体力を回復した空也はこの地で「野太刀流(薬丸自顕流)」を学ぶ。
 
 野太刀流は、空也が薩摩で学びたかった「東郷示現流」と同根同流の剣術だが、御家流儀示現流として他国人には秘した剣法だった。
 
 やがて彼は薩摩藩内部の派閥抗争、先代藩主島津重豪と若い藩主斉宣との確執に巻き込まれていく・・・。
 
523aae66b10b2fd46da2209f86cecfca_64 この物語に登場する肥後・薩摩の国境は、作者・佐伯泰英の亡父の故郷である。
 彼が空也の物語をここから始めたのは、そんな望郷の念があったからかもしれない。
 そして川内川流域は、私の亡父の故郷である。
 
S90872_640 たびたび本文に登場する「菱刈・曾木の滝」、川内川河口「京泊」「鹿児島城下」はもちろん、最後に空也が薩摩を離れる「久七峠」、いずれも馴染みの土地である。
 
 だからこの作品は、わたしの「センチメンタル・ジャーニー」といってもよい。
 
 佐伯泰英著「声なき蝉」(上・下)、双葉文庫各巻648円+税。

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